(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
(基本実施形態の概要)
本発明に係る内装材の一実施形態について、
図1〜
図3を参照しつつ説明する。
なお、
図1は、本発明に係る内装材の一実施形態であるインパネ1を備えた車両100を示す斜視概略図である。また、
図2は、
図1の内装材1のみを示す斜視概略図である。
図3は、
図2に示した内装材1の断面I−Iにおける断面概略図である。
図4は、
図3におけるエアバッグ装置が駆動した内装材を示す断面概略図である。
【0016】
図1に示すように、車両100の車室前部には、フロントサイドフレーム101、フロントピラー102、及びサイドシル103が車体の骨格部材として左右両側にそれぞれ配置されている。フロントサイドフレーム101は、車両100の前室から車室前端部まで延在している。フロントピラー102は、フロントサイドフレーム101より上側で斜め後方に延在すると共に、フロントサイドフレーム101より下側で上下に延在している。フロントピラー102の上下に延在している領域においては、車両100の前室と車室とを仕切るために、板状部材であるトーボード104が一対のフロントピラー102の間に左右に渡されて設けられている。フロントサイドフレーム101の後端部と、フロントピラー102の前端部とが接続されている。また、サイドシル103は、フロントピラー102の下端部から略水平方向に沿って後方に延在している。
【0017】
インパネ1は、トーボード104の後側において左右一対のフロントピラー102の間に渡されるように、固定的に配置される。なお、インパネ1の固定態様としては、例えばフロントピラー102への固定、及び、トーボード104への固定等が挙げられる。接合又は溶接されて組み上がった状態の上記骨格部材及びトーボード104に対して、インパネ1等の内装材が係止部材、係合部材、リベット又はボルト等により固定されることとなる。
【0018】
インパネ1は、内部に空間を有し、機器類、配線類、及びエアバッグ等が内部に配置可能となっている。インパネ1の表面には、複数の吹出口2、表示部材3、及びメータパネル4等が設けられている。吹出口2は、インパネ1内に配置される暖房換気空調(以下、「HVAC」と称する)装置から供給される空調気流が吹き出す部位である。表示部材3は、ナビ情報及び車両の駆動情報等を表示可能な部材であり、本実施形態では接触操作でナビ操作だけでなく空調操作等も可能な液晶パネルを採用している。メータパネル4は、車両の速度情報等を示す表示用の部材である。
【0019】
インパネ1の左右両端部には内部の機器類等を隠すための蓋部材5が取付けられ、本実施形態では蓋部材5の前側部分と車両100の骨格部材とが接続されている。また、インパネ1には開口部6が形成されている。開口部6については、
図2及び
図3を参照しつつ後述する。
【0020】
ここで、
図2及び
図3を参照してインパネ1の構造について詳述する。なお、
図2及び
図3では、インパネ1の内部構造を示すために蓋部材5を取外した状態で図示している。
図2は、
図1に示したインパネ1の斜視概略図である。
図3は、
図2に示した断面I−Iにおけるインパネ1の断面概略図である。
【0021】
図2に示すように、インパネ1は、本体部7と高剛性部8とエアバッグ装置9を備える。
【0022】
本体部7は、車両幅方向に延在する筒状部材である。本体部7は、インパネ1の外表面を構成する部材であり、基本的に板状である。本体部7の車両幅方向に直交する断面での断面形状は、
図3に示すように略円形状の一部を変形させた形状を有している。
なお、本発明における本体部の断面形状としては、車室内の内装材の意匠に応じて様々な形状が採用可能であり、例えば円形状、楕円形状、及び多角形状等を挙げることができる。
【0023】
図2に示すように、本体部7には複数の開口部6が形成されている。開口部6として具体的には、吹出口用開口部61、表示部材用開口部62、メータパネル用開口部63、運転席側開口部64、及び助手席側開口部65等が設けられている。
【0024】
吹出口用開口部61は、車室側からは上記吹出口2の風向及び風量の調整のためのルーバーが取付けられると共に、インパネ1の内側からは空調気流を吹出口2まで案内するダクトが取付けられる。表示部材用開口部62は、上記表示部材3を嵌め込んで固定的に支持するための支持部材と、表示部材3に電力を供給し、適宜の電気信号の入出力を行うためのハーネスとが付設される。メータパネル用開口部63は、上記メータパネル4を固定的に支持するための支持部材と、メータパネル4に電力を供給し、適宜の電気信号の入出力を行うためのハーネスとが付設される。
【0025】
運転席側開口部64は、ステアリングコラム等のステアリング装置の一部が挿入配置される。また、助手席側開口部65は、適宜の物を収容可能なグローブボックスGが装荷される。
図2に示す開口部の配置はいわゆる右ハンドル車用の配置となっているが、本発明を左ハンドル車に適用する場合は車両幅方向の中央部を対称軸として逆配置となる。
なお、ステアリングコラム及びグローブボックスGは、本発明における本体部の内側に配置される内側部材の一例である。
【0026】
高剛性部8は、本体部7の内面に設けられ、車両幅方向に延在する。高剛性部8は、本体部7を車両幅方向に沿って支持する。更に具体的には、高剛性部8は、筒状部81及びフランジ部82を有している。高剛性部8は、エアバッグ装置9の支持、他の内側部材の取付け、及び、インパネ1の剛性確保等を目的として設けられる部材であり、剛性の高い構造及び/又は材料が採用される。
【0027】
筒状部81は、筒形状を成す部位であり、該筒体の外面の少なくとも一部を本体部7の内面と共有している。フランジ部82は、略板形状を成す部位であり、本体部7の内面から本体部7の内側に向かって突設される。本実施形態における本体部7と筒状部81及びフランジ部82とは、樹脂材料を用いて一体成形等によりそれぞれ一体的に形成されている。
【0028】
図2に示すように、本実施形態において、運転席側開口部64と助手席側開口部65とが略同一高さに形成されていると共に、本体部7におけるこれらの開口部6に近接した上側部位に筒状部81の一つが設けられている。例えばステアリングコラムは運転席側開口部64に近接した上方に配置される筒状部81に固定的に取付けられ、
図3に破線で示したグローブボックスGは助手席側開口部65に近接した前方に配置されるフランジ部82に固定的に取付けられる。つまり、開口部6を介してインパネ1に取付けられる内側部材は、該開口部6近傍に配置される高剛性部8に対して固定的に取付けられる。
【0029】
筒状部81及びフランジ部82は、内側部材の支持だけでなく、本体部7内における内側部材の配置領域を分画することができる。具体的に、筒状部81は、内側部材である適宜の機器類に接続されるハーネスの引き回し通路として利用することができる。フランジ部82は、フランジ部82を境界として一方側と他方側とで別々の内側部材を取付けることができる。更に、筒状部81及びフランジ部82は、内側部材同士が接触しないための仕切り板、並びに、内側部材同士の摩擦、接触及び近接による電波ノイズの発生、伝達を抑制する保護壁等として用いることもできる。
なお、筒状部81及びフランジ部82は、当接部83及び被係合部84を有する。当接部83及び被係合部84については、エアバッグ装置9の説明と共に後述する。
【0030】
エアバッグ装置9は、インフレータ91と、エアバッグ袋体92と、収容部93と、係合部94とを有する。
インフレータ91は、エアバッグ装置9の駆動により点火されることで高圧のガスを発生する部材である。
エアバッグ袋体92は、エアバッグ装置9の駆動により膨張展開可能な袋状の部材であり、インフレータ91からの高圧ガスが圧入される。また、エアバッグ袋体92はフロントエアバッグ袋体921及びニーエアバッグ袋体922を有する。フロントエアバッグ袋体921は乗員の上体近傍に展開すると共に、ニーエアバッグ袋体922は乗員の下肢近傍に展開する。フロントエアバッグ袋体921とニーエアバッグ袋体922とは、根元部分、つまりインフレータ91に接続されてガスが圧入される部分の近傍で両袋体が相互に連通して二股に分かれるように形成されている。換言すると、フロントエアバッグ袋体921とニーエアバッグ袋体922との接続部位には袋体が分岐して展開する股部923が形成されている。
収容部93は、インフレータ91と駆動前のエアバッグ袋体92とを収容する筐体である。本実施形態における収容部93は、展開するエアバッグ袋体92によって上面及び下面が破断可能に形成される。
係合部94は、収容部93に設けられる部材であり、高剛性部8に設けられた被係合部84に係合可能となっている。係合部94は収容部93の前側と後側とで上下方向に互い違いに突出する凸部である。被係合部84及び係合部94は車両幅方向に所定の大きさを有するように形成されることで、係合が強固なものとなるので好ましい。このような被係合部84及び係合部94の組付け方法としては、係合部94の凸部が被係合部84の凹部に装入されるように位置合わせした上で、収容部93を車両幅方向にスライドさせて係合させるのが簡便で良い。なお、エアバッグ装置9は、係合部94と被係合部84との係合だけでなく、接着、溶着又は締結部材等によって固定的に取付けるのが好ましい。
【0031】
図4に示す展開後のエアバッグ装置9は、股部923を分岐点として本体部7の上側及び下側に向かって、本体部7内側から車室側にエアバッグ袋体92が膨出している。フロントエアバッグ袋体921は衝突時に前方に変位する乗員の上体を保護すると共に、ニーエアバッグ袋体922は乗員の下肢がグローブボックスGの下方に潜り込む現象、いわゆるサブマリン現象を抑制して乗員の下肢を保護することができる。
【0032】
エアバッグ袋体92の展開の際に上下両方向への反力がエアバッグ装置9に作用することとなるが、係合部94及び被係合部84が上下両方向に対するストッパとして機能する。更に、エアバッグ袋体92は後方に向かって展開するので前方への反力がエアバッグ装置9に作用することとなるが、エアバッグ装置9の前後に取付けられる高剛性部8が前後方向に対するストッパとして機能する。よって、収容部93及びインフレータ91は展開前後で位置の変位が生じない又は生じ難い。
【0033】
本実施形態においては、
図4に示すように、フロントエアバッグ袋体921は本体部7の上側に設けられた2つの筒状部81の間から展開し、ニーエアバッグ袋体922は本体部7の下側に設けられた筒状部81とフランジ部82との間から展開する。複数の高剛性部8を設けてその間からエアバッグ袋体92を展開させることで、本体部7の内面における高剛性部8の配置を予め決定しておけば、本体部7を形成する際にエアバッグ袋体92による破断箇所の設定が容易となる。
【0034】
また、高剛性部8においてニーエアバッグ袋体922が当接する部位に当接部83が設けられている。当接部83はエアバッグ袋体92の展開を規制する部材である。本実施形態の場合は、ニーエアバッグ袋体922が収容部93から膨出し始めたときに、ニーエアバッグ袋体922が下側の筒状部81の後面部とフランジ部82の前面部とに形成された当接部83に当接し、その表面を摺動しつつ本体部7の下面まで案内される。つまり、本実施形態における当接部83はエアバッグ袋体92の展開軌道を規制して、本体部7の好適な膨出部位まで案内することができる。
なお、本発明において当接部は上記展開軌道の規制だけではなく、対向する当接部間の間隙の大きさを調整することでエアバッグ袋体の展開のし易さ、すなわち展開速度を調整することもできる。エアバッグ装置9の展開の規制を行うことで展開の安定性向上に寄与することとなり、より一層の良好な乗員保護性能を確保することができる。
【0035】
既存のステアリングサポートビームは様々な内側部材が取付けられ、それらを支持している。つまり、既存のステアリングサポートビームは内側部材の支持機能を有している。
【0036】
これに対して、本実施形態で示す筒状部81及びフランジ部82に内側部材を取付けることで、ステアリングサポートビームにおける内側部材の支持機能を筒状部81及びフランジ部82が担うことができるようになる。
特にエアバッグ装置9は駆動時に大きな反力が生じると共に、駆動時にエアバッグ装置9の取付け位置がズレると乗員保護性能が大きく低下する可能性があるので、強度の高い部材への取付け及び支持が求められていた。これに鑑みて筒状部81及びフランジ部82から成る高剛性部8にエアバッグ装置9を取付けることで、車両幅方向に沿った高い剛性を有する高剛性部8がエアバッグ装置9を固定的に支持することができる。更に、上述したように係合部94と被係合部84との係合等も併せることで、より一層ステアリングサポートビームに依存しないエアバッグ装置9の反力支持が可能となる。
【0037】
既存の車両であれば、車室前部における車両幅方向の耐荷重性は、ステアリングサポートビームによって確保されている。すなわち、車両幅方向に沿った荷重、例えば側突等で生じる荷重が車室前部に生じた場合、ステアリングサポートビームによる車両幅方向の突張り作用で耐荷重性能に寄与していた。この場合、ステアリングサポートビームという一本の棒状部材のみで耐荷重性を確保するために、ステアリングサポートビームは強度の高い金属材料を用い、ある程度の径を有する棒状又は筒状部材として形成される。更に、インパネの乗員側に臨む表面部位、及び多数の内側部材を取付けるために、複数のブラケット等がステアリングサポートビームに取付けられることとなる。これにより、ステアリングサポートビームは重量物となっていた。
【0038】
なお、既存のインパネの表面部位は、ステアリングサポートビームにブラケット等を介して内側部材の上側から被せるように単に係止されているに過ぎず、インパネの表面部位自体には耐荷重性を持たせるような補強がなされていないことが多かった。また、従来では強度確保のためのステアリングサポートビームと、内側部材の配置領域及び通路等を確保する部材とが別部材として設けられ、結果として衝突時にはステアリングサポートビームのみで耐荷重性能を担うこととなっていた。
【0039】
これに対して、本実施形態では本体部7及び高剛性部8によってインパネ1全体の車両幅方向に沿った耐荷重性を確保することができる。つまり、本体部7の筒形状という形状由来の強度と、良好な剛性を有する高剛性部8による本体部7の支持と、インパネ1の各部材の相互に一体的な構成とによって、車両幅方向に沿った強度を確保し易くなる。これにより、車室前部の車両幅方向の耐荷重性は、ステアリングサポートビームを設けていた従来と比較して、ステアリングサポートビームを設けない本実施形態であっても低減し難い又はしない。更に、本実施形態は、ステアリングサポートビームを設けないことでインパネ1の軽量化に寄与することもできる。
【0040】
本実施形態に係る高剛性部8の筒状部81は、内側部材の配置領域を分画することで、インパネ1及びその内部の構造、配置、形状等の最適化、統合及び合理化が可能となる。インパネ1の構成が合理化等されることで取付用のブラケット等の様々な部材の最適化も図ることができるので、更なるインパネ1の軽量化を図ることができる。
【0041】
(変形例)
以下に、本発明の変形例及び好適例等について説明する。
図5〜
図8には、本発明に係る内装材の変形例を示した。
なお、
図5は、他の実施形態に係る内装材であるインパネ21を示す断面概略図である。
図6は、更に他の実施形態に係るインパネ31の一部を拡大図示した概略図である。
図7は、別の実施形態に係るインパネ41を示す斜視概略図である。
図8は、
図7に示したインパネ41の断面II−IIにおける断面概略図である。
図5〜
図8に示すインパネと、
図1〜
図4に示したインパネとにおいて共通する部材については、共通の参照符号を付すこととし、詳細な説明を省略する。
【0042】
図5に示すインパネ21における上記インパネ1との相違点は、エアバッグ装置90の構成及び配置である。具体的には、エアバッグ装置90は、本体部7内で後方に位置する筒状部81内に配置され、エアバッグ袋体92が筒状部81内から車室側に展開可能となっている。上記インパネ1は本体部7における高剛性部8以外の部位からエアバッグ袋体92が展開していたのに対して、本変形例は高剛性部8内から展開することとなる。
【0043】
エアバッグ装置90は、収容部931に適宜の固定手段による固定がなされているだけであり、上記係合部94及び上記被係合部84の係合手段は採用していない。エアバッグ装置90は筒状部81内に配置されていることで取付け及び駆動時の反力支持が容易となると共に、係合部94等の固定支持手段が不要となるので部材の簡略化に寄与する。更に、本体部7におけるエアバッグ袋体92の膨出位置が筒状部81及びその近傍に限定されるのでエアバッグ袋体92による本体部7の破断部位等を容易に設定可能となり、好ましい。
【0044】
続いて
図6に示す変形例は、
図5に示したインパネ21と同様に、高剛性部80内からエアバッグ袋体92が展開する形態である。なお、
図6はインパネ31の高剛性部80及びエアバッグ装置9の一部を俯瞰して拡大図示している。
【0045】
具体的には、高剛性部80は、エアバッグ装置9の大きさに合わせて筒状部801を仕切るための仕切板85が筒状部801内に2枚立設されている。
図6に示す変形例において、エアバッグ装置9の取付位置は
図2〜
図4に示した実施形態と同位置であり、本体部7の内側で、かつ高剛性部80の外側である。仕切板85によって、筒状部801には車両幅方向の所定の領域が分画された分画部86が形成される。また、エアバッグ装置9が当接している筒状部801の外面には分画部86に望む位置において、周辺部位より強度の低い脆弱部87が形成されている。なお、仕切板85の相互に対向する面と展開時のエアバッグ袋体92とが当接するので、該当接する部位は当接部831と成る。
【0046】
図6に示すエアバッグ装置9は、駆動の際にエアバッグ袋体92が筒状部801の脆弱部87に向かって展開する。次いで、エアバッグ袋体92は脆弱部87を破断させて筒状部801内で展開し始める。更に、エアバッグ袋体92は、仕切板85の当接部831に当接しつつ、筒状部801内の分画部86から本体部7を介して車室側に展開する。
【0047】
本変形例によると、例えばハーネス等ではなくグローブボックスG等の車両幅方向において局所的に配置される内側部材が取付けられる筒状部801であれば、筒状部801の内部空間の一部を分画部86として有効活用することできるので好ましい。更に、本体部7におけるエアバッグ袋体92の膨出位置が筒状部801及びその近傍に限定されるのでエアバッグ袋体92による本体部7の破断部位等を容易に設定可能となり、好ましい。
【0048】
図7及び
図8に示すインパネ41における上記インパネ1との相違点は、本体部70が分割されていることである。具体的には、
図7及び
図8に示すように、本体部70は、車両幅方向に沿って上側本体部701と下側本体部702とに分割されている。
【0049】
本変形例では、車両前方側の分割部位がフランジ部82の下側に設定されると共に、車両後方側の分割部位が筒状部81の下側でかつ開口部6の上端部に設定される。なお、該分割部位は本変形例のように必ずしも開口部6の上端部でなくとも良い。
【0050】
インパネ41を車両本体に組付ける場合は、例えば下側本体部702を先ず車両本体に取付ける。次に、下側本体部702の内面に設けられている高剛性部8に適宜の内側部材を配置する。このとき、上側本体部701の内面に設けられている高剛性部8にもエアバッグ装置9等の適宜の内側部材を配置しておく。更に、上側本体部701を下側本体部702の上から被せるようにして車両本体に取付ける。上側本体部701と下側本体部702とは、インパネ41として使用する際にガタつきが生じないように、相互に固定状態とすることが好ましい。この場合、係止又は係合する部位を上側本体部701及び下側本体部702にそれぞれ設けて係止又は係合させる形態、本体部70の分割部位に接着剤を用いて接着する形態、又は溶着する形態等、様々な固定形態を採ることができる。
【0051】
本体部70が分割されて成るインパネ41は、インパネ1に比べて内側部材の配置が容易となることで、組付け性が向上するので好ましい。また、本体部70は車両幅方向に沿って分割されることで、高剛性部8による車両幅方向に沿った本体部70の支持性能の低下、及び、インパネ21全体の車両幅方向の耐荷重性の低下を防止可能となる。
【0052】
以上のように図示した実施形態以外にも、本発明の目的を達成可能な範囲で様々な形態を採用することができる。
【0053】
上述した実施形態では、本体部7と高剛性部8とが一体成形で形成されているが、一体成形に代えて別体で形成し、内装材の組付け作業時に各部材同士の固定的な取付作業を行うようにしても良い。この場合、車両幅方向のインパネ1の強度を一体成形時と同等にするために、車両幅方向に沿って線状、面状又は複数箇所の点状の固定点によって、本体部7と高剛性部8とを固定するようにするのが好ましい。インパネの各部材を別体に作製して後で組付けることで、一体成形に比べて複雑な形状の部材が成形可能となるので、本発明を様々な構造を有する内装材に適用し易くなる。
【0054】
本発明において本体部と高剛性部とは材料を変えて形成しても良い。具体的には例えば、ハーネス等が挿通される筒状部を電波遮断効果を有する材料で形成する形態、及び、温度コントロールが必要な内側部材が配置される筒状部を断熱性を有する材料で形成する形態等が挙げられる。異種材料であっても一体的に成形可能であれば一体成形を採用しても良く、一体成形が困難であれば別体成形した上で締結部材、取付治具又はブラケット等で固定しても良い。
【0055】
本発明における高剛性部は、
図2〜
図4に示した高剛性部8のように、車両幅方向に沿って車両左右両端に亘る範囲で直線的かつ連続的に形成されることにより、車両の全幅に亘る連続した耐荷重性能が得られることとなり、好ましい。
【0056】
もっとも、本発明においては高剛性部の一部を湾曲又は屈曲させても良い。例えば
図2に示したステアリングコラムが挿入される運転席側開口部64が
図2に示したよりも上側、つまりメータパネル4側により近接して設けられる場合、運転席側の筒状部81を上側に湾曲させて運転席側開口部64を上方に迂回する形態を採ることができる。
【0057】
また、既存の車両ではインパネが運転席部分とセンターコンソール部分と助手席部分とで大きく3分割された構成及び意匠となっていることがある。この場合、本発明において例えば本体部のみを3分割して形成すると共に、高剛性部は分割せずに車両左右両端に亘る長尺部材として形成するのが良い。3つの本体部を車両幅方向に並べて接合した上で内側に高剛性部を取付けることで、高剛性部による本体部の車両幅方向に沿った支持形態を実現することができる。
【0058】
なお、本体部及び高剛性部を共に3分割しても良い。このとき、それぞれ3つの本体部及び高剛性部を車両幅方向に並べて接合する際に高剛性部が車両幅方向に亘って固定的に接続されることで、車両幅方向に沿った荷重の入力が生じたときに高剛性部全体での荷重の伝達が可能となり、耐荷重性能の低下が抑制される。
【0059】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により、本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。