特許第6774290号(P6774290)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774290
(24)【登録日】2020年10月6日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】水中油型睫毛用化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9794 20170101AFI20201012BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20201012BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20201012BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20201012BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20201012BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20201012BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   A61K8/9794
   A61K8/92
   A61K8/31
   A61K8/06
   A61K8/81
   A61K8/73
   A61Q1/10
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-197773(P2016-197773)
(22)【出願日】2016年10月6日
(65)【公開番号】特開2017-71601(P2017-71601A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2019年7月17日
(31)【優先権主張番号】特願2015-199905(P2015-199905)
(32)【優先日】2015年10月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 竜太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴也
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−234978(JP,A)
【文献】 特開2009−040715(JP,A)
【文献】 特開2012−188394(JP,A)
【文献】 新化粧品ハンドブック,2006年10月30日,第26−27頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(a)〜(c)
(a)カルナウバロウ
(b)融点30〜55℃の炭化水素であるワセリン
(c)繊維
を含有する水中油型睫毛用化粧料。
【請求項2】
成分(c)は、少なくともポリプロピレン繊維を含む請求項1記載の水中油型睫毛用化粧料。
【請求項3】
成分(c)は、更にレーヨン繊維を含む請求項2記載の水中油型睫毛用化粧料。
【請求項4】
成分(a)と成分(b)の含有質量比(a/b)が3〜10である請求項1〜3の何れかの項に記載の水中油型睫毛用化粧料。
【請求項5】
成分(c)と成分(b)の含有質量比(c/b)が0.5〜7である請求項1〜の何れかの項に記載の水中油型睫毛用化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(a)カルナウバロウ、(b)融点30〜55℃の炭化水素、(c)繊維を含有する水中油型睫毛用化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
睫毛用化粧料は、睫毛を上にカールすることや睫毛を太く、長くみせることで、目元をはっきりさせるといった化粧効果を有するものである。
【0003】
従来、これらの睫毛用化粧料は、固形状油分、例えばワックス、及び粉体、被膜形成剤、水溶性高分子等を中心に構成されており、化粧品として求められる様々な使用性、使用感、及び機能性をもたせるために、種々の剤型、及び原料の配合検討が行われてきた。
【0004】
例えば、機能性の点については、乳化タイプの睫毛用化粧料が挙げられ、これらは比較的融点の低いワックスや樹脂及び種々の被膜形成剤の含有量を増加させることにより、睫毛への密着性が高まるため、睫毛を太く目立たせるといった化粧効果や睫毛を上にカールしたまま固定することで目元をきわだたせるといった化粧効果を高めることができる(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。また特定のサイズのポリプロピレン繊維と油溶性樹脂を組み合わせることにより、ロングラッシュ効果を高めることができる(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−106313号公報
【特許文献2】特開2001−31526号公報
【特許文献3】特開2004−83577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これまで睫毛用化粧料でカール効果、ロングラッシュ効果のそれぞれに優れているものの、例えば、ロングラッシュ効果があるものにカール効果を付与するためにワックスを多量に含有すると、その感触が化粧料自体の官能に大きく影響し、塗布時の伸び広がりが重くなり均一に塗布できなくなるという欠点があった。つまり、ロングラッシュ効果とカール効果のどちらの効果も下げずに両立する化粧料の具現化は困難であった。
【0007】
従って、本発明の課題は、高いカール効果をそのままに、ロングラッシュ効果を付与し、塗布した際に睫毛が自然に長く伸びたように感じ、さらに化粧持ちの良さの全てに満足のいく睫毛用化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、カルナウバロウと、特定の融点を有する炭化水素と、繊維とを組み合わせて、水中油型の化粧料とすることにより、カール効果、化粧持ち、ロングラッシュ効果の全てに満足のいく水中油型睫毛用化粧料となることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の成分(a)〜(c)
(a)カルナウバロウ
(b)融点30〜55℃の炭化水素
(c)繊維
を含有する水中油型睫毛用化粧料である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水中油型睫毛用化粧料は、塗布した際にカール効果を得やすくなり、また、ロングラッシュ効果が得られ、さらに、滑らかな伸び広がりが得られ、均一な化粧膜となる上、にじみもない。
【0011】
そのため、本発明の水中油型睫毛用化粧料は、カール効果、化粧持ち、ロングラッシュ効果に優れたものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の水中油型睫毛用化粧料(以下、「本発明化粧料」という)は、以下の成分(a)〜(c)を含有するものである。
【0013】
本発明化粧料に用いられる成分(a)のカルナウバロウは通常化粧料に用いられるものであれば、特に制限されず使用することができる。この成分(a)の本発明化粧料における含有量は特に限定されないが、本発明化粧料のカール効果を得る点で、好ましくは1〜10%、より好ましくは2〜7%である。
【0014】
本発明化粧料に用いられる成分(b)の融点30〜55℃の炭化水素は、前記性質を有していれば特に限定されないが、例えば、融点が30〜55℃にあるワセリン等が挙げられる。この成分(b)の本発明化粧料における含有量は特に限定されないが、本発明化粧料の化粧膜の均一性を得る点で、好ましくは0.1〜5%、より好ましくは0.3〜3%である。
【0015】
上記融点は日本薬局方収載の融点測定法第3法で測定することができる。
【0016】
なお、成分(b)は、本発明化粧料に上記量で含有させればよいが、成分(a)と成分(b)の質量比(a/b)を3〜10となるように含有させることが本発明化粧料を塗布した際に、カール効果に優れ、均一な化粧膜を形成する点から好ましい。
【0017】
本発明化粧料に用いられる成分(c)の繊維は、通常化粧料に用いられるものであれば、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル等の合成繊維、セルロース等の天然繊維、レーヨン等の人造繊維等が挙げられる。この繊維は、少なくともポリプロピレン繊維を含むことが好ましく、ポリプロピレン繊維と他の繊維を含むことがより好ましく、ポリプロピレン繊維とレーヨン繊維を含むことが特に好ましい。このように繊維を2種以上含むことにより、マスカラが睫毛へより絡みやすくなり、睫毛への付着性が良くなる。
【0018】
上記ポリプロピレン繊維としては、例えば、太さが0.1〜12デニール、好ましくは0.5〜10デニール、長さが0.1〜3mm、好ましくは0.5〜2mmのもの等が挙げられる。また、このポリプロピレン繊維は、必要に応じて一般油剤、シリコーン油、フッ素化合物、界面活性剤や、無水ケイ酸等の粉体類で処理したものも使用することができる。特に、無水ケイ酸やフッ素化合物で表面処理した繊維は分散性、安定性及び化粧膜の均一性の点で最も好ましい。このようなポリプロピレン繊維は、例えば、P.Pファイバー5.6D−2MMとしてコスメテリアルズ社から販売されている。
【0019】
この成分(c)の本発明化粧料における含有量は特に限定されないが、本発明化粧料のロングラッシュ効果を得る点で、好ましくは0.5〜10%、より好ましくは1〜7%である。特に成分(c)として少なくともポリプロピレン繊維を使用する場合には、本発明化粧料にポリプロピレン繊維を好ましくは0.5〜5%、より好ましくは1〜4%となるように含有させればよい。また、成分(c)として少なくともポリプロピレン繊維を使用する場合には、成分(c)中、ポリプロピレン繊維の含有量を、好ましくは40〜100%、より好ましくは50〜100%とすればよい。
【0020】
なお、成分(c)は、本発明化粧料に上記量で含有させればよいが、成分(c)と成分(b)の質量比(c/b)を0.5〜7となるように含有させることがカール効果をそのままに、睫毛を自然に長く伸ばし、均一な化粧膜を得る点から好ましい。
【0021】
本発明化粧料には、上記成分(a)〜(c)に加えて水を必須とし、更に、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(a)および成分(b)に該当しない油性成分、乳化剤としての界面活性剤、皮膜形成剤、粉体、保湿としての水性成分、紫外線吸収剤、保湿剤、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、美容成分、防腐剤、香料等を含有させることができる。
【0022】
上記成分(a)および成分(b)に該当しない油性成分としては、例えば、スクワラン、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、エチレンプロピレンコポリマー、モンタンワックス、フィッシャトロプスワックス等の炭化水素類、モクロウ、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、ミツロウ、キャンデリラワックス、ゲイロウ等のロウ類、ホホバ油、セチルイソオクタネート、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のエステル類、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、メチルフェニルポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン等のシリコーン類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体、オクタン酸デキストリン、ラウリン酸デキストリン、パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、ベヘニン酸デキストリン、ヤシ油脂肪酸デキストリン、(パルミチン酸/ オクタン酸) デキストリン、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、12−ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸カルシウム等の油性ゲル化剤類、テルペン酸系樹脂(ロジン酸ペンタエリスリット等)、トリメチルシロキシケイ酸、キャンデリラレジン(ここで、キャンデリラレジンとは、キャンデリラワックスを有機溶剤にて分別抽出して得られる樹脂分で、樹脂分が好ましくは65%以上、更に好ましくは85%以上の割合で含有されるものである。)、ポリイソブチレン、水添ロジン酸ペンタエリスリチル、特定のアクリル酸アルキルメチルポリシロキサンエステル等の油溶性樹脂、軽質流動イソパラフィン、イソドデカン等の炭化水素油、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、メチルトリメチコン、低重合度ジメチルポリシロキサン等のシリコーン類等の揮発性油剤等が挙げられる。これら成分(a)および成分(b)に該当しない油性成分は本発明化粧料に、好ましくは1〜10%程度、より好ましくは2〜8%程度含有させることができる。
【0023】
なお、これらの油性成分のうち、例えば、成分(a)よりも融点の低いワックス、例えば、ミツロウ等を含有させることにより、睫毛に対する櫛通りが良くなる上、化粧料を伸ばしやすくなり、また、成分(b)よりも融点が高い炭化水素、例えば、ポリエチレンワックス等を含有させることにより、成分(b)による可塑効果を得やすくなる上、均一性の高い化粧膜が得られるようになるため、これらを含有させることが好ましい。
【0024】
上記界面活性剤としては、水中油型化粧料一般に用いられている界面活性剤であればいずれのものも使用でき、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
【0025】
上記非イオン界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビトールの脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ラノリンのアルキレングリコール付加物、ポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン等が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸のような脂肪酸の無機及び有機塩、アルキルベンゼン硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、α−スルホン化脂肪酸塩、アシルメチルタウリン塩、N−メチル−N−アルキルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩、N−アシルアミノ酸塩、N−アシル−N−アルキルアミノ酸塩、ο−アルキル置換リンゴ酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等が挙げられる。カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、ポリアミン及びアルカノールアミン脂肪酸誘導体、アルキル四級アンモニウム塩、環式四級アンモニウム塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、アミノ酸タイプやベタインタイプのカルボン酸型、硫酸エステル型、スルホン酸型、リン酸エステル型のものがあり、人体に対して安全とされるものが使用できる。例えば、N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシルメチルアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸、N,N,N−トリアルキル−N−スルフォアルキレンアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキル−N,N−ビス(ポリオキシエチレン硫酸)アンモニウムベタイン、2−アルキル−1−ヒドロキシエチル−1−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン、レシチン等が挙げられる。これら界面活性剤は本発明化粧料に、好ましくは1〜10%程度、より好ましくは2〜8%程度含有させることができる。
【0026】
上記皮膜形成剤としては、例えば、アクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸アルキル重合体、メタクリル酸アルキル共重合体、メタクリル酸アルキル重合体、アクリル酸アルキル・メタクリル酸アルキル共重合体、酢酸ビニル重合体、アクリル酸アルキル・スチレン共重合、メタアクリル酸アルキル・スチレン共重合体、ビニルピロリドン・スチレン共重合体、オルガノポリシロキサン重合体等が挙げられ、これら重合体または共重合体の1種または2種以上を水性溶媒に分散させたポリマーエマルションとして使用することができる。上記皮膜形成剤は必要に応じ、1種又は2種以上を使用することができる。これら皮膜形成剤は本発明化粧料に、ポリマーエマルションとして好ましくは10〜60%程度、より好ましくは15〜50%程度含有させることができる。
【0027】
上記粉体としては、板状、紡錘状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級などの粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的には、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成マイカ、合成セリサイト、セリサイト、タルク、カオリン、シリカ、炭化珪素、硫酸バリウム、窒化硼素等の無機粉体類、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、酸化鉄コーティング雲母、酸化鉄雲母チタン、有機顔料処理雲母チタン、アルミニウムパウダー等の光輝性粉体類、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、N−アシルリジン、ナイロン等の有機粉体類、有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体類、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を用いることができる。また、これら粉体は1種又は2種以上の複合化したものを用いても良く、フッ素化合物、シリコーン系油剤、金属石ケン、界面活性剤、油脂、炭化水素等を用いて公知の方法により表面処理したものを用いても良い。これら粉体は本発明化粧料に、好ましくは1〜20%程度、より好ましくは3〜15%程度含有させることができる。
【0028】
上記水性成分としては、水に可溶な成分であれば何れでもよく、例えば、エチルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液が挙げられる。水溶性高分子としては、グアーガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン等の天然系のもの、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の半合成系のもの、カルボキシビニルポリマー、アルキル付加カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成系のものを挙げられる。これら水性成分は本発明化粧料に、好ましくは10〜60%程度、より好ましくは15〜50%程度含有させることができる。
【0029】
上記紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、ケイ皮酸系、サリチル酸系、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等、保湿剤としては、例えば、タンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等が挙げられ、酸化防止剤としては、例えば、α−トコフェロール、アスコルビン酸等、美容成分としては、例えば、ビタミン類、消炎剤、生薬等、防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0030】
本発明化粧料は、常法に従って製造することができる。具体的には、成分(a)、成分(b)を含む油性成分と水性成分をそれぞれ加熱し、油性成分を水性成分に添加して乳化する方法等で製造することができる。なお、成分(c)はいずれかの段階で添加すればよい。
【0031】
本発明化粧料の形態としては、特に限定されないが、水中油型の固形状、クリーム状、ゲル状のもの等である。
【0032】
以上説明した本発明化粧料は、いわゆるマスカラや睫毛用美容液等として睫毛に塗布することができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0034】
実施例1〜9および比較例1〜5
水中油型マスカラ:
表1に示す処方および以下の製法で水中油型マスカラを調製した。これらのマスカラを睫毛に塗布し、カール効果、化粧膜の均一性、ロングラッシュ効果、にじみのなさ、睫毛が自然に伸びたような化粧効果について以下の方法で評価した。この評価結果も表1に示した。
【0035】
【表1】
※1:TOWAX−1F6(東亜化成社製)
※2:WHITE BEES WAX(三木化学社製)
※3:高融点キャンデリラワックスFR100(日本ナチュラルプロダクツ製)
※4:SNOW WHITE SPECIAL(融点30〜55℃)(SONNEBORN社製)
※5:エルデュウ PS−306(融点50〜60℃)(味の素社製)
※6:コスモール168ARNV(融点40〜50℃)(日清オイリオグループ社製)
※7:KLEAROL WHITE MINERAL OIL(SONNEBORN社製)
※8:YODOSOL 810F(アクゾノーベル社製)
※9:P.Pファイバー5.6D−2MM(コスメテリアルズ社製)
※10:レーヨンファイバー7D−2MM(中部パイル社製)
【0036】
<製法>
A.成分(1)〜(12)を90℃に加熱し溶解する。
B.成分(13)〜(20)を均一に混合し、80℃に加熱する。
C.BにAを加え80℃で乳化する。
D.Cを40℃に冷却、脱泡し、容器に充填して製品とする。
【0037】
<評価方法>
10名の化粧品専門の官能検査パネルにより、各試料を下記a〜eについて、絶対評価にて7段階に評価し、各試料のパネル全員の評価の平均値から4段階判定基準により判定した。なお、dについては、試料を睫毛に塗布し、パネルに通常の生活をしてもらい、6時間後のにじみのなさについて評価した。
【0038】
(評価項目)
a.カール効果
b.化粧膜の均一性
c.ロングラッシュ効果
d.にじみのなさ
e.睫毛が自然に伸びたような化粧効果
【0039】
(評価基準)
(1)絶対評価基準
(評点):(内容)
6 : 非常に良い
5 : 良い
4 : やや良い
3 : 普通
2 : やや悪い
1 : 悪い
0 : 非常に悪い
【0040】
(2)4段階判定基準
5点を超える :非常に良好:◎
3点を超えて5点以下:良好 :○
2点を超えて3点以下:やや不良 :△
2点以下 :不良 :×
【0041】
表1の結果から明らかなように、本発明品である実施例1〜9のマスカラは、比較例1〜5のマスカラに比較し、ダマにならない化粧膜の均一性、睫毛が上向きにカールし、睫毛を長く見せ、目元を際立たせるといった化粧効果、及びにじまない化粧効果の持続性、睫毛が自然に伸びたような化粧効果のすべての面で、はるかに優れた特性を有していることが分かった。また、本発明品の中でも、特にa/bの質量比が7の場合や、c/bの質量比が3の場合、評価項目全てにおいて非常に良好という結果を示していた。これは、カルナウバロウと繊維に対し、ワセリンを適量含有することにより、高いカール効果をそのままに、マスカラを滑らかに伸ばすことができ、塗布した際に睫毛が自然に長く伸び、さらに綺麗な化粧膜を形成することができたためである。
【0042】
一方、カルナウバロウを含有せず、ミツロウやキャンデリラロウを含有する比較例1、2では、睫毛が上向きにカールし、睫毛を長く見せ、目元を際立たせるといった化粧効果及びダマにならない化粧膜の均一性の点で、満足のいくものが得られなかった。また、ワセリンではなく、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル・フィトステリル・ベヘニル)を含有する比較例3や、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸・ステアリン酸・ロジン酸)ジペンタエリスリチルを含有する比較例4では、睫毛が上向きにカールし、睫毛を長く見せ、目元を際立たせるといった化粧効果の点で、満足のいくものが得られなかった。流動パラフィンを含有する比較例5では、睫毛が上向きにカールし、睫毛を長く見せ、目元を際立たせるといった化粧効果、にじみのなさ、睫毛が自然に伸びた化粧効果の点で、満足のいくものが得られなかった。
【0043】
より詳細には、比較例1、2は含有するワックスはカルナウバロウではないため、カルナウバロウ程、化粧料のベースの硬さが出ず、カール効果が得られず、睫毛が自然に伸びたような化粧効果も得られなかった。比較例2のカール効果について、ミツロウと比べ、キャンデリラロウは融点も高く、比較例1よりもベースが硬くなるため、やや不良という評価になった。また、比較例3、4はエステルワックスとエステルペースト油の組合せで、ワックスの結晶生成阻害による可塑効果がワセリンよりも大きく、結晶生成が阻害されることで、ベースの硬さが出ずカール効果が得られなかった。また、比較例5は液状の流動パラフィンの含有によりにじんでしまい、睫毛が自然に伸びたような化粧効果は得られず、ワックスの結晶生成阻害による可塑効果はエステルペースト油よりも弱いため、カール効果はやや不良という評価になった。
【0044】
実施例10
水中油型マスカラ:
以下の組成の水中油型マスカラを調製した。
【0045】
(成分) (%)
(1)ステアリン酸 1.5
(2)ポリソルベート80 1.3
(3)ポリステアリン酸スクロース 1.5
(4)ステアリン酸グリセリル 1
(5)セテアリルアルコール 0.5
(6)カルナウバロウ(融点:80〜86℃)※1 6.5
(7)ポリエチレン(融点:83〜95℃) 3
(8)ミツロウ(融点:60〜67℃)※2 0.5
(9)ワセリン(融点:30〜55℃)※5 1
(10)アクリル酸アルキル共重合体エマルション※9 40
(11)トリエタノールアミン 1.3
(12)ポリプロピレン繊維※10 3
(13)黒酸化鉄 7
(14)1,3−ブチレングリコール 5.6
(15)精製水 残量
(16)フェノキシエタノール 0.8
【0046】
(製法)
A.成分(1)〜(9)を100℃に加熱し、溶解する。
B.成分(10)〜(16)を均一に混合し、80℃に加熱する。
C.BにAを加え80℃で乳化する。
D.Cを40℃に冷却、脱泡し、容器に充填して製品とする。
【0047】
以上のようにして得られた水中油型マスカラは、カルナウバロウに加えて、融点の低いミツロウを少量加えることで、睫毛に対する櫛通りが良くなり、マスカラを伸ばしやすくなった。また、融点が高く、炭化水素ワックスのポリエチレンを併用することで、ワセリンによる可塑効果を得やすくなり、均一性の高い化粧膜が得られた。なお、この水中油型マスカラは実施例1〜9のものよりも、上記点でより優れたものであった。
【0048】
実施例11
水中油型マスカラ:
以下の組成の水中油型マスカラを調製した。
【0049】
(成分) (%)
(1)ステアリン酸 1.5
(2)ポリソルベート80 1.3
(3)ポリステアリン酸スクロース 1.5
(4)ステアリン酸グリセリル 1
(5)セテアリルアルコール 0.5
(6)カルナウバロウ(融点:80〜86℃)※1 6.5
(7)ポリエチレン(融点:83〜95℃) 3
(8)ミツロウ(融点:60〜67℃)※2 0.5
(9)ワセリン(融点:30〜55℃)※5 1
(10)アクリル酸アルキル共重合体エマルション※9 40
(11)トリエタノールアミン 1.3
(12)ポリプロピレン繊維※10 3
(13)レーヨン繊維※11 1
(14)黒酸化鉄 7
(15)1,3−ブチレングリコール 5.6
(16)精製水 残量
(17)フェノキシエタノール 0.8
【0050】
(製法)
A.成分(1)〜(9)を100℃に加熱し、溶解する。
B.成分(10)〜(17)を均一に混合し、80℃に加熱する。
C.BにAを加え80℃で乳化する。
D.Cを40℃に冷却、脱泡し、容器に充填して製品とする。
【0051】
以上のようにして得られた水中油型マスカラは、カルナウバロウに加えて、融点の低いミツロウを少量加えることで、睫毛に対する櫛通りが良くなり、マスカラを伸ばしやすくなった。また、ポリプロピレン繊維に加え、レーヨン繊維を併用したため、マスカラが睫毛へより絡みやすくなり、その結果、睫毛への付着性が良くなった。なお、この水中油型マスカラは実施例1〜10のものよりも、上記点でより優れたものであった。
【0052】
実施例12
水中油型マスカラ:
以下の組成の水中油型マスカラを調製した。
【0053】
(成分) (%)
(1)ステアリン酸 1.5
(2)ポリソルベート80 1.3
(3)ポリステアリン酸スクロース 1.5
(4)ステアリン酸グリセリル 1
(5)セテアリルアルコール 0.5
(6)カルナウバロウ(融点:80〜86℃)※1 6.5
(7)ポリエチレン(融点:83〜95℃) 3
(8)ミツロウ(融点:60〜67℃)※2 0.5
(9)ワセリン(融点:30〜55℃)※5 2
(10)アクリル酸アルキル共重合体エマルション※9 40
(11)トリエタノールアミン 1.3
(12)ポリプロピレン繊維※10 6
(13)レーヨン繊維 2
(14)ナイロン繊維 2
(15)黒酸化鉄 7
(16)1,3−ブチレングリコール 5.6
(17)精製水 残量
(18)フェノキシエタノール 0.8
【0054】
(製法)
A.成分(1)〜(9)を100℃に加熱し、溶解する。
B.成分(10)〜(18)を均一に混合し、80℃に加熱する。
C.BにAを加え80℃で乳化する。
D.Cを40℃に冷却、脱泡し、容器に充填して製品とする。
【0055】
以上のようにして得られた水中油型マスカラはカール効果、ロングラッシュ効果、化粧膜の均一性、睫毛が自然に伸びたような化粧効果に優れた水中油型睫毛用化粧料であった。
【0056】
実施例13
水中油型睫毛用美容液:
以下の組成の水中油型睫毛美容液を調製した。
【0057】
(成分) (%)
(1)ステアリン酸 1.5
(2)ポリソルベート80 1.3
(3)ポリステアリン酸スクロース 1.5
(4)ステアリン酸グリセリル 1
(5)セテアリルアルコール 0.5
(6)カルナウバロウ(融点:80〜86℃)※1 6.5
(7)ポリエチレン(融点:83〜95℃) 3
(8)ミツロウ(融点:60〜67℃)※2 0.5
(9)ワセリン(融点:30〜55℃)※5 1
(10)アクリル酸アルキル共重合体エマルション※9 40
(11)トリエタノールアミン 1.3
(12)ポリプロピレン繊維※10 3
(13)レーヨン繊維※11 1
(14)パンテノール 0.1
(15)アルギニン 0.1
(16)桑白皮エキス 0.1
(17)1,3−ブチレングリコール 5.6
(18)精製水 残量
(19)フェノキシエタノール 0.8
【0058】
(製法)
A.成分(1)〜(9)を100℃に加熱し、溶解する。
B.成分(10)〜(19)を均一に混合し、80℃に加熱する。
C.BにAを加え80℃で乳化する。
D.Cを40℃に冷却、脱泡し、容器に充填して製品とする。
【0059】
以上のようにして得られた水中油型睫毛用美容液は、カール効果、ロングラッシュ効果、化粧膜の均一性、睫毛が自然に伸びたような化粧効果に優れた水中油型睫毛用化粧料であった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の水中油型睫毛用化粧料は、マスカラ等として睫毛の化粧に利用することができる。
以 上