特許第6774293号(P6774293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774293
(24)【登録日】2020年10月6日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】食品検査補助器
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/84 20060101AFI20201012BHJP
【FI】
   G01N21/84 D
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-201478(P2016-201478)
(22)【出願日】2016年10月13日
(65)【公開番号】特開2018-63170(P2018-63170A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2019年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】301043199
【氏名又は名称】東信水産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小菅 將光
【審査官】 藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/018111(WO,A1)
【文献】 特開平8−327555(JP,A)
【文献】 特開2016−153752(JP,A)
【文献】 特開昭63−298140(JP,A)
【文献】 米国特許第5572319(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面に開口を備えた箱型の装置本体と、該装置本体の内部に光を照射する内部光照射装置と、前記装置本体の内部を外側から観察するための視認部とを備え、検査面に載置した検査対象物に前記内部光照射装置からの光を照射するよう構成され、且つ、
前記装置本体の底面が検査面に対して斜めの角度をなすよう前記装置本体を検査面に斜め置きすることで、前記装置本体の底面と検査面との間の隙間から検査対象物にアクセスできるよう構成されていることを特徴とする食品検査補助器。
【請求項2】
前記内部光照射装置はブラックライト発生装置であることを特徴とする請求項1に記載の食品検査補助器。
【請求項3】
前記装置本体に遮光体を取り付け、前記装置本体を斜め置きした際、前記装置本体の底面と検査面との間に生じる隙間に前記遮光体が垂れ下がるよう構成したことを特徴とする請求項1または2に記載の食品検査補助器。
【請求項4】
前記装置本体の外面に、前記内部光照射装置とは異なる成分の光を発する外部光照射装置を備えたことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の食品検査補助器。
【請求項5】
前記外部光照射装置の光源は、物体の接近を感知するセンサスイッチによりオンオフを切替可能に構成したことを特徴とする請求項に記載の食品検査補助器。
【請求項6】
前記視認部は前記装置本体の側面又は上面に備えた覗き窓であり、該覗き窓は所定値未満の波長の光を遮断し且つ前記所定値以上の光を透過させるUVカットフィルムによって覆われていることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の食品検査補助器。
【請求項7】
前記視認部は前記装置本体の側面又は上面に備えた覗き窓であり、該覗き窓の周囲に、前記装置本体の外側に突出して前記覗き窓から前記装置本体内部に侵入する光を遮るガードを備えたことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の食品検査補助器。
【請求項8】
前記装置本体の内部に、前記内部光照射装置の光源と前記装置本体の底面との間を隔てる遮熱板を備えたことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の食品検査補助器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物である食品に光を照射することで、検査対象物中の寄生虫等の異物の発見を容易にし、検査を補助するための器具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、食品に混入する異物を除去することは、衛生上、健康上の問題から必要であるのみならず、食する者の心理面においても重大事である。
【0003】
食品から除去すべき異物の代表例に寄生虫が挙げられる。中でも、魚介類の内臓や筋肉に潜むアニサキスは、生きて人の消化器に侵入すると激しい腹痛等を伴うアニサキス症と呼ばれる食中毒を引き起こす場合がある。アニサキスはサバやタラ、イカといった食用の魚介類の体内にごく普通に見られる線虫であり、特に1999年に食品衛生法施行規則が改正され、アニサキス症の届け出が義務づけられてからは健康被害の報告も非常に多い。
【0004】
アニサキスは加熱又は冷凍により死滅するため、生のままで食さなければ健康上の問題はないが、近年における魚の生食の広まりに伴い、生きた状態で人の口に運ばれる機会が増えており、アニサキス症の被害件数は増加傾向にある。また、終宿主であるクジラやイルカ等の数の増加により、アニサキスないしアニサキスの寄生した魚介類の数自体が増加していることを一因とする指摘もある。
【0005】
一方、近年では、食の安全に対する意識が巷間で高まっており、消費者全般が食品中の異物等に対し敏感になっている。こうした状況の下では、具体的な健康被害が生じないようにすることは勿論であるが、仮に健康上問題がなくとも、消費者を不安あるいは不快にさせるような異物は可能な限り発見し、従来と比較しても一層慎重に除去することが求められる。
【0006】
従来、こうした食品の検査は、例えば飲食店の調理場において、魚介類等の検査対象物をまな板上で調理中、検査対象物を調理者が持ち上げ、天井の蛍光灯等の室内灯にかざして光を透過させることで行われていた。
【0007】
また、特定の異物(例えば、アニサキス)の蛍光を励起する波長の光を対象物に照射することで、異物を発光させて発見しやすくする技術も開発されている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016−153752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の如き蛍光灯等による検査方法では、調理中の食材をその都度調理者の頭上に持ち上げるような手間が必要で、調理者にとって負担であると同時に調理の効率も低下してしまう。また、対象物としての食材には、魚介類に限っても例えばサバやアジ、サンマ等の赤身魚、タラやヒラメ、マダイのような白身魚、さらにはイカや貝類等、様々な色や肉質のものがあり、種類によっては蛍光灯による透過光では異物を視認しにくいという問題もある。
【0010】
上記特許文献1に記載の異物検査装置は、こうした諸問題への対策の一つとして開発されたものであるが、外部からの光を遮断してブラックライトを照射する検査室を形成するために装置全体が大型化してしまい、小規模な飲食店の調理場のような設備での使用には向かないという問題がある。また、検査対象物としての食材や異物の種類によっては、ブラックライトを照射するよりも、従来の如く蛍光灯の光を透過させる方が視認しやすい場合もあり、必ずしも上述の問題を十全に解消するには至っていなかった。
【0011】
本発明は、斯かる実情に鑑み、簡単な構成で食品中の異物を簡便に検査し、異物を好適に除去し得る食品検査補助器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、底面に開口を備えた箱型の装置本体と、該装置本体の内部に光を照射する内部光照射装置と、前記装置本体の内部を外側から観察するための視認部とを備え、検査面に載置した検査対象物に前記内部光照射装置からの光を照射するよう構成され、且つ、前記装置本体の底面が検査面に対して斜めの角度をなすよう前記装置本体を検査面に斜め置きすることで、前記装置本体の底面と検査面との間の隙間から検査対象物にアクセスできるよう構成されていることを特徴とする食品検査補助器にかかるものである。
【0013】
而して、このようにすれば、小型の装置により検査対象物に近い位置から光を照射し、異物を発見しやすくすることができる。そして、検査対象物に異物が発見された際、前記装置本体を斜め置きするだけで、検査対象物に前記内部光照射装置からの光を照射したまま検査対象物にアクセスし、異物の除去作業を実行できる。したがって、観察から除去作業までの作業効率を高めることができる。
【0014】
本発明の食品検査補助器において、前記内部光照射装置はブラックライト発生装置とすることが好ましく、このようにすれば、検査対象物中のアニサキスのような異物を発光させ、発見を一層容易にすることができる。
【0016】
本発明の食品検査補助器においては、前記装置本体に遮光体を取り付け、前記装置本体を斜め置きした際、前記装置本体の底面と検査面との間に生じる隙間に前記遮光体が垂れ下がるよう構成することが好ましく、このようにすれば、検査対象物からの異物の除去作業の間、外部からの光の侵入を極力防ぎ、良好な観察状態を保つことができる。
【0017】
本発明の食品検査補助器においては、前記装置本体の外面に、前記内部光照射装置とは異なる成分の光を発する外部光照射装置を備えることが好ましく、このようにすれば、前記内部光照射装置とは異なる成分の光によっても検査対象物を検査し、異物の発見の確実性を高めることができる。
【0018】
本発明の食品検査補助器において、前記外部光照射装置の光源は、物体の接近を感知するセンサスイッチによりオンオフを切替可能に構成することが好ましく、このようにすれば、前記外部光照射装置の光源のオンオフにあたって手を食品検査補助器に触れる必要がなく、衛生面で好適である。
【0019】
本発明の食品検査補助器において、前記視認部は前記装置本体の側面又は上面に備えた覗き窓とし、該覗き窓は所定値未満の波長の光を遮断し且つ前記所定値以上の光を透過させるUVカットフィルムによって覆うことが好ましく、このようにすれば、作業者の目に有害な紫外線をカットして安全に前記装置本体内を観察できる。
【0020】
本発明の食品検査補助器において、前記視認部は前記装置本体の側面又は上面に備えた覗き窓とし、該覗き窓の周囲に、前記装置本体の外側に突出して前記覗き窓から前記装置本体内部に侵入する光を遮るガードを備えることが好ましく、このようにすれば、外部から前記覗き窓に侵入する光を少なくして前記装置本体内を良好に観察することができる。
【0021】
本発明の食品検査補助器においては、前記装置本体の内部に、前記内部光照射装置の光源と前記装置本体の底面との間を隔てる遮熱板を備えることが好ましく、このようにすれば、前記内部光照射装置の光源からの熱が検査対象物に直接伝わることを防止すると同時に、水滴等が前記光源に達することがないよう遮り、前記光源の破損等を防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の食品検査補助器によれば、簡単な構成で食品中の異物を簡便に検査し、異物を好適に除去し得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施による食品検査補助器の形態の一例を示す斜視図であり、装置本体を平置きにした状態を示している。
図2】本発明の実施による食品検査補助器の形態の一例を示す平面図である。
図3】本発明の実施による食品検査補助器の形態の一例を示す底面図である。
図4】本発明の実施による食品検査補助器の形態の一例を示す右側面図であり、図1のIV−IV矢視相当図である。
図5】本発明の実施による食品検査補助器の形態の一例を示す左側面図であり、図1のV−V矢視相当図である。
図6】本発明の実施による食品検査補助器の形態の一例を示す斜視図であり、装置本体を斜め置きにした状態を示している。
図7】本発明の実施による食品検査補助器を斜め置きにした状態を示す右側面図であり、図6のVII−VII矢視相当図である。
図8】本発明の実施に用いる内部光照射装置の形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0025】
図1図8は本発明の実施による食品検査補助器の形態の一例を示している。図1図3に示す如く、本実施例の食品検査補助器1は、箱型の装置本体2に、該装置本体2の内部に光を照射する内部光照射装置としてのブラックライト発生装置3を備えてなる。
【0026】
装置本体2は、全体として六角柱を横倒しにした形状の箱型の物体であり、六角柱の軸に沿った水平方向を長手方向として構成される。装置本体2の材質は、金属や木材、プラスチック樹脂等、ブラックライト発生装置3からの熱に耐え得る素材であれば何でも良いが、後述するガード7や遮光体8といった各部品の脱着の都合上、磁石を吸着可能なステンレス鋼等の素材が特に好ましい。
【0027】
装置本体2のなす六角柱を軸方向から見ると、図4図5に示す如く、長方形の上側の二角を斜めに裁ち落とした形状であり、底面2aと上面2bは互いに平行である。底面2aは図3図6に示す如く開口となっており、この開口に向かってブラックライト発生装置3から検査光としてのブラックライトが照射されるようになっている。尚、図6では、説明の都合上、後述する遮光体8を仮想線にて図示している。
【0028】
上面2bと底面2aを除いた装置本体2の4つの側面のうち、長手方向に沿った2つの側面を第一の側面2c及び第二の側面2dとすると、該第一の側面2c及び第二の側面2dは、図1図4図5に示す如く底面2aを水平面に接した状態で、各々垂直面2e,2f(第一の垂直面2e及び第二の垂直面2f)と、その上方にそれぞれ斜面2g,2h(第一の斜面2g及び第二の斜面2h)とを有している。ブラックライト発生装置3は、図6に示す如く第一の斜面2gに備えた開口2iを外側から覆うように取り付けられており、該開口2iから装置本体2の内部に向かってブラックライトを照射するようになっている。尚、ここで「ブラックライト」とは、わずかに人の目に視認可能な波長を有する紫外線を指し、一般におおよそ350nm〜400nm程度の範囲にピーク波長を有する光である。
【0029】
図1に示す如く、第一の斜面2gと対向する第二の斜面2hには視認部としての覗き窓4が備えられており、ここから装置本体2の内部を外側から視覚的に把握することができるようになっている。覗き窓4は、所定値未満の波長の光を遮断し且つそれ以上の波長の光を透過させるUVカットフィルム4aにて覆われており、作業者の目に有害な紫外線をカットして安全に装置本体2内を観察できるようにしてある。ここで、前記「所定値」とは、それ以下の波長の光が作業者の目に悪影響を及ぼし得る紫外線領域の波長であり、例えば360nm〜400nmの適当な値である。尚、この視認部4としては、ここに図示した如き覗き窓以外にも、例えばCCDカメラのような撮像装置を搭載して装置本体2内部を撮影し、前記撮像装置からの映像を外部に備えたモニタに映し出すように構成することもできる。
【0030】
図2図5に示す如く、第一の側面2cの垂直面2eの外面には支持脚5が取り付けられている。この支持脚5は、第一の垂直面2eの外面から、装置本体2の外側に向かって突出する二本の連結部材5aと、該連結部材5aの先端に、装置本体2の長手方向に沿って取り付けられた接地部材5bとを備えている。そして、接地部材5bを水平面に接することで、図6図7に示す如く、第一の垂直面2eの下端を支点に装置本体2を第一の側面2c側に傾け、底面2aを水平面に対し所定の角度で傾斜させた斜め置きの状態で、装置本体2を支持できるようになっている。
【0031】
装置本体2の側面のうち、残り2つの側面である第三の側面2j及び第四の側面2kは、装置本体2の長手方向の両端面をなしている。この第三、第四の側面2j,2kは、図1図4図5に示す如く底面2aが水平面に接した状態でそれぞれが垂直面をなしており、各々の外面には、装置本体2を持ち運び又は操作するための把手6が備えられている。
【0032】
ブラックライト発生装置3は、図8に示す如く、回路ボックス3aの一側の外面に光源としてのブラックライトランプ3bを備えてなる。回路ボックス3aは、ブラックライトランプ3bへの電気の供給やオンオフの制御を行うほか、後述する通気ファン9や外部光照射装置11の動作等を制御する装置や電気回路を内蔵した装置であり、エネルギー源としての電気を外部から供給する電源ケーブル3cが接続されている。
【0033】
回路ボックス3aのブラックライトランプ3bを備えた面には、左右の縁から張り出すようにフランジ3d,3dを備えており、該フランジ3d,3dを装置本体2の第一の斜面2gに備えた開口2i(図3図6参照)の縁に外側から締結することで、回路ボックス3aが開口2iを覆うように第一の斜面2gに対して取り付けられる。この際、ブラックライトランプ3bが開口2iから装置本体2の内部に露出する形となる。
【0034】
電源ケーブル3cは、一端は回路ボックス3aの外殻を貫通して該回路ボックス3a内に収容した制御機器に接続され、他端は外部の図示しない電源に延びて回路ボックス3a内の制御機器に電気を供給するようになっている。電源ケーブル3cの途中には、ブラックライトランプ3bの発光をオンオフする電源スイッチ3eが備えられている。電源スイッチ3eには、濡れた手で操作しても問題のないよう、水の浸入を防止する防水型のスイッチが用いられる。また、回路ボックス3aの外殻における電源ケーブル3cの貫通位置には防水型のケーブルクランプ3fが介装されており(図2図3参照)、水がこの位置から回路ボックス3a内へ浸入することを防止するようになっている。
【0035】
図1図2に示す如く、第二の斜面2hに備えた覗き窓4の周囲には、該覗き窓4から装置本体2内部を観察する際、作業者の額を載置するガード7が備えられている。このガード7は、覗き窓4の下辺を除く三辺上に、該覗き窓4を取り囲むように第二の斜面2hから装置本体2の外側へ突出するコの字状の遮光板7aを備えてなる。遮光板7aのうち、覗き窓4の上辺に位置する上板7bは、第二の斜面2hと反対側の縁部が凹むように湾曲し、該湾曲した縁部にはゴムやポリウレタン等の柔軟な素材により構成されたクッション部材7cが備えられて、作業者の額を支持するのに好適な構造になっている。覗き窓4の左右の辺に位置する横板7d,7dは、第二の斜面2h側に、それぞれ覗き窓4から見て左右に張り出す脱着フランジ7e,7eを備えている。この脱着フランジ7e,7eには、図1に示す如く第二の斜面2hに対向する面に脱着材としての板磁石7f,7fが備えられており、この板磁石7f,7fにより、ガード7を第二の斜面2hに対し自在に脱着することができるようになっている。尚、脱着材7fとしては、ここでは板磁石を備えた場合を例に説明したが、これ以外にも種々の構成を取り得る。例えば、装置本体2が磁石を吸着しない樹脂等の素材で構成されている場合、脱着材7fは、第二の斜面2h、及びこれと対向する脱着フランジ7e,7eの面に備えた面ファスナーとすることもできる。ただし、衛生面や脱着のしやすさの観点からは、脱着材7fは板磁石とすることが最も簡便であると思われる。
【0036】
図1図6に示す如く、第二の垂直面2fの下端には、該垂直面2fの外面から下方へ垂れるように遮光体8が備えられている。遮光体8の本体をなす遮光幕8aは、光を透過しない幕状の物体であり、例えば、柔軟性のある平らなゴム等の素材により構成される。図1に示す如く、遮光幕8aの上部には、第二の垂直面2fと対向する面に脱着材としての板磁石8bを備えている。尚、遮光体8の構成はここに説明した例に限定されない。例えば、板状の物体を第二の垂直面2fの下端に取り付け、前記板状の物体を蝶番等の機構により装置本体2の長手方向に沿った軸を中心に回転可能に構成しても良い。また、脱着材8bは、上述したガード7の脱着材7f,7f同様、ここに示した板磁石でも良いし、例えば面ファスナーとすることもできる。
【0037】
図4図6に示す如く、装置本体2の長手方向における一端面をなす第三の側面2jには通気ファン9が取り付けられており、装置本体2内を換気してブラックライトランプ3bから発生する熱を逃がすようになっている。この通気ファン9の設置に伴い、第三の側面2jには装置本体2の内外を連通させる穴が開けられるが、この開口部は、装置本体2内に外部からの光が極力侵入しないよう、ルーバーやメッシュ等により適宜覆われる。通気ファン9は、上述のブラックライト発生装置3の電源ケーブル3cから供給される電気によって回転し、ブラックライトランプ3bのオンオフと連動して作動するようになっている。
【0038】
また、図5に示す如く、装置本体2の長手方向における他端面をなす第四の側面2kには、通気口10が開口されており、通気ファン9と共に装置本体2内を換気するようになっている。この通気口10も、第三の側面2jに開口された前記穴(図4参照)と同様、ルーバーやメッシュ等により適宜覆われる。
【0039】
図1図2に示す如く、装置本体2の上面2bの外面には、外部光照射装置としてのLED照明装置11が備えられている。LED照明装置11は、装置本体2の長手方向に沿って配された白色光を発する光源としてのLED11aと、該LED11aのオンオフを制御するセンサスイッチ11bを備えてなる。センサスイッチ11bは、物体の接近を感知する近接センサを備えており、このセンサスイッチ11bの配された装置本体2の上面2bに作業者の手等を近づけることにより、LED11aのオンオフを切り替えるようになっている。尚、ここで言う「白色光」とは、「赤緑青の成分を概ね均等に含む光」といった程度の意味であり、厳密な「全波長の可視光を均等に含む光」を意味しない。例えば、いわゆる昼白色や昼光色、電球色、青白色といった光で構わない。LED11aの電源は、上述のブラックライト発生装置3の電源ケーブル3cから供給される電気を流用するよう構成されているが、例えば電池を内蔵する等、ブラックライト発生装置3とは別の電源をLED照明装置11用に備えることもできる。また、上面2bには、LED11a及びセンサスイッチ11bを覆うように透明な樹脂等の素材で構成された蓋体11cが脱着自在に取り付けられる。この蓋体11cは、LED照明装置11全体を汚れから保護するほか、後述するようにセンサスイッチ11bを覆うことで意図しない作動を防止する機能をも果たす。
【0040】
図3図6に示す如く、装置本体2の内側には、第一の斜面2gに取り付けたブラックライト発生装置3のブラックライトランプ3bと、底面2aとの間を隔てるように遮熱板12が備えられている。遮熱板12は、アクリル樹脂等の透明な素材で構成されており、ブラックライトランプ3bの発する光を透過させつつ、該ブラックライトランプ3bからの熱が底面2a側に直接伝わらないよう遮断するようになっている。
【0041】
遮熱板12は、第一の斜面2gに略平行な面をなして装置本体2内に配置されるが、第一の垂直面2e側の端部は該第一の垂直面2eの内面に沿うように屈曲しており、該第一の垂直面2eの内面に対向する側の面に脱着材としての板磁石12aを備えている。この板磁石12aにより、遮熱板12は装置本体2の内面に対し脱着自在に取り付けられる。脱着材12aは、上述したガード7や遮光体8の脱着材7f,8bと同様、板磁石以外に例えば面ファスナーとすることもできる。
【0042】
尚、ここでは装置本体2のうち、第一の側面2cに内部光照射装置としてのブラックライト発生装置3及び支持脚5を、第二の側面2dに視認部としての覗き窓4及びガード7と遮光体8を、上面2bに外部光照射装置としてのLED照明装置11をそれぞれ備えた場合を例示したが、装置本体2における各部品の配置はこれに限定されない。ブラックライト発生装置3は第一の側面2c以外の側面2d,2j,2k、あるいは上面2bのいずれかに備えても良いし、覗き窓4やLED照明装置11等も、後述する観察ないし異物除去の作業を好適に実行できる限りにおいて、装置本体2のどの部分に取り付けられていても良い。
【0043】
次に、上記した本実施例の作動を説明する。
【0044】
食品検査補助器1は、内部光照射装置としてのブラックライト発生装置3又は外部光照射装置としてのLED照明装置11により、検査対象物Fにおける異物の発見を視覚的に補助するようになっている。ブラックライト発生装置3による検査の際には、図1に示す如く、調理台等の面(以下では「検査面」と称する)に底面2aが接するように、装置本体2を平置きする。そして、装置本体2の底面2aの開口に位置する検査面に、魚介類等の食品である検査対象物Fを配置する。この状態で、内部光照射装置であるブラックライト発生装置3の電源スイッチ3e(図8参照)をオンにすると、ブラックライトランプ3bが点灯し、ブラックライトが検査対象物Fに照射される。
【0045】
検査対象物Fにアニサキスが存在する場合、アニサキスは特定の波長の紫外線により励起されて青色の蛍光を発するので、覗き窓4から検査対象物Fを目視することにより容易に発見することができる。
【0046】
この際、覗き窓4はUVカットフィルム4aにより被覆されているので、作業者は目を紫外線から保護しながら検査対象物Fを安全に観察することができる。また、覗き窓4は三辺をガード7の遮光板7aにより取り囲まれているので、この遮光板7a、及び作業者自身の頭部により、外部から覗き窓4に侵入する光を遮って装置本体2内を良好に観察することができる。また、作業者は遮光板7aの上板7bに備えたクッション部材7cに額を載置するので、観察に適した位置に作業者の頭部が支持され、観察、及びその後の異物の除去作業を通じて作業者の疲労が軽減される。
【0047】
アニサキスを発見したら、図6図7に示す如く、把手6を持って第一の垂直面2eの下端を支点に装置本体2を第一の側面2c側に傾け、装置本体2を支持脚5によって支持させ、検査面に対し斜め置きの状態にする。この状態では、装置本体2の底面2aが検査面に対し斜めの角度をなしており、底面2aと検査面の間に隙間が生じているので、作業者はここから両手を差し込み、検査対象物Fに対し異物の除去作業を行うことができる。このとき、検査対象物Fにブラックライトを照射して異物を発光させたままで検査対象物Fにアクセスし、除去作業を実行できるため、例えばブラックライトを照射して異物の場所を確認した後、検査対象物Fを取り出して室内灯下で異物を除去するといった面倒な手順を経る必要がなく、作業の効率が良い。また、装置本体2を傾けるだけで検査対象物Fにアクセスするための隙間を生じさせることができ、例えばドアを開閉するような手順も不要である。
【0048】
また、装置本体2を斜め置きした場合、装置本体2を傾ける向きとは反対側の第二の垂直面2fの下方で底面2aと検査面の間に大きな隙間が生じるが、第二の垂直面2fには遮光体8が取り付けてあり、斜め置き時には第二の垂直面2fから下方の検査面に遮光幕8aが垂れ下がって外部からの光を遮断するようになっている。また、第三、第四の側面2j,2kの下方に生じる隙間は、ここに作業者の腕が挿入されることで概ね塞がれる。こうして、除去作業の間も外部からの光の侵入を極力防ぎ、良好な観察状態を保つことができる。
【0049】
検査対象物Fの観察、及び異物の除去作業の間、ブラックライトランプ3bは通電により熱を発するが、この熱は通気ファン9及び通気口10(図4図5参照)による換気に伴い、装置本体2内から適宜排出される。また、ブラックライトランプ3bと検査対象物Fの間は遮熱板12により隔てられているので、ブラックライトランプ3bからの熱が生鮮食品等である検査対象物Fに直接伝わることは防止され、検査対象物Fの鮮度を極力保つことができる。同時に、遮熱板12は検査対象物Fやその周辺から水滴等がブラックライトランプ3bに達することがないよう遮り、熱収縮によりブラックライトランプ3bが破損するような事態が起きないようにもなっている。作業者の手が誤って熱いブラックライトランプ3bに触れてしまうことも、遮熱板12により防止される。
【0050】
さらに、検査対象物Fの種類や厚み等によっては、上述の如きブラックライトの照射のほか、通常の白色光を透過させることによっても異物を発見できる場合もある。その際には、図1に示す如く装置本体2を平置きし、上面2bに備えた外部光照射装置であるLED照明装置11を点灯させて検査対象物Fを上面2b上にかざし、LED11aからの光を検査対象物Fに透過させることで検査を行う。こうして、内部光照射装置3とは異なる成分の光を発する外部光照射装置11によっても検査対象物F中の異物を検査することで、異物の発見の確実性を高めるようになっている。
【0051】
尤も、ブラックライトとは異なる白色光による検査は、例えば従来通り検査対象物Fを室内の蛍光灯等にかざすことによっても実行できることは勿論であるが、本実施例の食品検査補助器1では、装置本体2の上面2bにLED照明装置11を備えることで、検査対象物Fを作業者の頭上に持ち上げるような手間をかけることなく白色光の透過による検査を行うことができるようにしている。
【0052】
この際、LED11aのオンオフはセンサスイッチ11bに作業者の手等を接近させることで切り替えるので、オンオフの操作を行うにあたって手を食品検査補助器1に触れる必要がなく、衛生面で好適である。また、LED11aを点灯させたままにしたい場合や、逆にLED11aを使用せず消灯しておきたい場合には、蓋体11cによりセンサスイッチ11bを覆うことで該センサスイッチ11bが作動しないようにすることができる。すなわち、センサスイッチ11bは物体の接近を検知して作動するため、LED11のオンオフを意図しない作業者の動作にも反応してしまう場合がある。このような事態を防ぐため、例えば作業者がLED11aを点灯させたままにしたい場合には、LED11aがオフの状態から、センサスイッチ11bに蓋体11cを接近させてLED11aを点灯させ、そのままLED11a及びセンサスイッチ11bに蓋体11cを被せる。センサスイッチ11bが蓋体11cに覆われてしまえば、蓋体11cの外側からセンサスイッチ11bに手等を接近させてもセンサスイッチ11bは作動しないので、意図せぬLED11aのオンオフを防止できる。またこの際、蓋体11cは透明であるため、LED11aからの光を遮るようなこともない。
【0053】
LED11aからの光の透過により異物が発見されたら、検査対象物Fから異物を除去する作業を実行する。
【0054】
上述の如き構成により、本実施例の食品検査補助器1は、装置全体の小型化と同時に異物発見の容易化を図っている。すなわち、本実施例の食品検査補助器1は、箱型の装置本体2単体で検査室のような空間を形成することなく、検査面と共に検査対象物Fを取り囲み、そこへブラックライトを照射するようになっている。このため、装置本体2を小型なものとすることができると同時に、ブラックライトランプ3bから検査対象物Fまでの距離を極力小さくし、これにより検査対象物Fにおける検査光の照射強度を高めてアニサキスのような異物を発見しやすくしている。この際、装置本体2が小さいことや、ブラックライトランプ3bと検査対象物Fが近接配置されていることによる熱の影響の懸念は、通気ファン9や通気口10による換気や、遮熱板12による熱の遮断により解消している。
【0055】
また、ガード7や遮光体8、遮熱板12といった部品は、それぞれ脱着材としての板磁石7f,8b,12aにより装置本体2に取り付けられているので、容易に取り外して洗浄することができる。特に検査対象物Fとして食品を扱う場合、衛生面への配慮が不可欠であるが、このように簡単な脱着方式を採用したことで、装置本体2や前記各部品の清掃や洗浄を容易にし、衛生状態を保ちやすくしている。
【0056】
これに伴い、装置本体2に対してボルトやビス等の締結具を用いて取り付ける器具は、ブラックライト発生装置3や通気ファン9等に限られている。このように部品点数を削減することで、例えばビスのような細かい部品が脱落して検査対象物Fに混入してしまうような虞を極力小さくしている。
【0057】
以上のように、上記本実施例の食品検査補助器1は、底面2aに開口を備えた箱型の装置本体2と、該装置本体2の内部に光を照射する内部光照射装置3と、装置本体2の内部を外側から観察するための視認部4とを備え、検査面に載置した検査対象物Fに内部光照射装置3からの光を照射するよう構成しているので、小型の装置により検査対象物Fに近い位置から光を照射し、異物を発見しやすくすることができる。
【0058】
また、本実施例の食品検査補助器1において、内部光照射装置3はブラックライト発生装置としているので、検査対象物F中のアニサキスのような異物を発光させ、発見を一層容易にすることができる。
【0059】
また、本実施例の食品検査補助器1においては、装置本体2の底面2aが検査面に対して斜めの角度をなすよう装置本体2を検査面に斜め置きすることで、装置本体2の底面2aと検査面との間の隙間から検査対象物Fにアクセスできるよう構成しているので、検査対象物Fに異物が発見された際、装置本体2を斜め置きするだけで、検査対象物Fに内部光照射装置3からの光を照射したまま検査対象物Fにアクセスし、異物の除去作業を実行できる。したがって、観察から除去作業までの作業効率を高めることができる。
【0060】
また、本実施例の食品検査補助器1においては、装置本体2に遮光体8を取り付け、装置本体2を斜め置きした際、装置本体2の底面2aと検査面との間に生じる隙間に遮光体8が垂れ下がるよう構成しているので、検査対象物Fからの異物の除去作業の間、外部からの光の侵入を極力防ぎ、良好な観察状態を保つことができる。
【0061】
また、本実施例の食品検査補助器1においては、装置本体2の外面に、内部光照射装置3とは異なる成分の光を発する外部光照射装置11を備えているので、内部光照射装置3とは異なる成分の光によっても検査対象物Fを検査し、異物の発見の確実性を高めることができる。
【0062】
また、本実施例の食品検査補助器1において、外部光照射装置11の光源11aは、物体の接近を感知するセンサスイッチ11bによりオンオフを切替可能に構成しているので、光源11aのオンオフにあたって手を食品検査補助器1に触れる必要がなく、衛生面で好適である。
【0063】
また、本実施例の食品検査補助器1において、視認部4は装置本体2の側面(第二の側面)2dに備えた覗き窓4とし、該覗き窓4は所定値未満の波長の光を遮断し且つ前記所定値以上の光を透過させるUVカットフィルム4aによって覆っているので、作業者の目に有害な紫外線をカットして安全に装置本体2内を観察できる。
【0064】
また、本実施例の食品検査補助器1において、視認部4は装置本体2の側面(第二の側面)2dに備えた覗き窓4とし、該覗き窓4の周囲に、装置本体2の外側に突出して覗き窓4から装置本体2内部に侵入する光を遮るガード7を備えているので、外部から覗き窓4に侵入する光を少なくして装置本体2内を良好に観察することができる。
【0065】
また、本実施例の食品検査補助器1においては、装置本体2の内部に、内部光照射装置3の光源3bと装置本体2の底面2aとの間を隔てる遮熱板12を備えているので、光源3bからの熱が検査対象物Fに直接伝わることを防止すると同時に、水滴等が光源3bに達することがないよう遮り、光源3bの破損等を防止することができる。
【0066】
したがって、上記本実施例によれば、簡単な構成で食品中の異物を簡便に検査し、異物を好適に除去し得る。
【0067】
尚、本発明の食品検査補助器は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0068】
1 食品検査補助器
2 装置本体
2a 底面
2d 側面(第二の側面)
3 内部光照射装置(ブラックライト発生装置)
4 視認部(覗き窓)
4a UVカットフィルム
7 ガード
8 遮光体
11 外部光照射装置(LED照明装置)
11a 光源(LED)
11b センサスイッチ
12 遮熱板
F 検査対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8