(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774303
(24)【登録日】2020年10月6日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】レーザろう付け装置、及びレーザろう付け装置を用いたろう付けワイヤの切断方法
(51)【国際特許分類】
B23K 3/06 20060101AFI20201012BHJP
B23K 1/005 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
B23K3/06 K
B23K3/06 N
B23K3/06 P
B23K1/005 A
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-214984(P2016-214984)
(22)【出願日】2016年11月2日
(65)【公開番号】特開2018-69315(P2018-69315A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】山中 康平
(72)【発明者】
【氏名】三上 聡巳
(72)【発明者】
【氏名】森岡 諒
(72)【発明者】
【氏名】石関 清一
【審査官】
奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開平2−127989(JP,A)
【文献】
実開昭61−182667(JP,U)
【文献】
特開昭58−161396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 3/06
B23K 1/005
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろう付けワイヤを送給するワイヤ送給部と、
ワークの継目部に照射ポイントを設定し、該照射ポイントにレーザ光を集光させるレーザトーチ部と、
前記ワイヤ送給部から送給される前記ろう付けワイヤを挿通するワイヤガイド部を有し、その先端から突出する該ろう付けワイヤの端部を前記照射ポイントに供出させるワイヤ送出部と
を有し、前記照射ポイントに供出した前記ろう付けワイヤの端部を前記レーザトーチ部からのレーザ光で溶融させて前記ワークの継目部を接合するレーザろう付け装置において、
圧縮気体を発生させる圧縮気体源と、
前記ろう付けワイヤの端部が突出する前記ワイヤ送出部の先端に開口する気体ガイド通路と、
前記圧縮気体源と前記気体ガイド通路とを連通する圧縮気体導入路と、
前記圧縮気体導入路に介装されて前記圧縮気体の流動を断続する開閉機構と、
前記レーザトーチ部からのレーザ光の照射と前記ワイヤ送給部からの前記ろう付けワイヤの送給と前記開閉機構の開閉を制御する制御手段と
を更に有し、
前記制御手段は、レーザろう付けの中断或いは停止を検出した場合、前記ワイヤ送給部による前記ろう付けワイヤの送給を停止し、前記開閉機構を開動作させて前記圧縮気体を前記気体ガイド通路を経て前記ワイヤ送出部の端部から吐出させ、更に前記ワイヤ送給部を動作させ前記ろう付けワイヤの端部を前記照射ポイントから引き上げて切断させる
ことを特徴とするレーザろう付け装置。
【請求項2】
前記気体ガイド通路は前記ワイヤ送出部内に前記ワイヤガイド部に沿って形成されている
ことを特徴とする請求項1記載のレーザろう付け装置。
【請求項3】
請求項1に記載のレーザろう付け装置を用いたろう付けワイヤの切断方法において、
前前記制御手段は、レーザろう付けの中断或いは停止を検出した場合、前記ワイヤ送給部による前記ろう付けワイヤの送給を停止し、前記開閉機構を開動作させて前記圧縮気体を前記気体ガイド通路を経て前記ワイヤ送出部の端部から吐出させ、その状態で前記ワイヤ送給部を動作させ前記ろう付けワイヤの端部を前記照射ポイントから引き上げて切断させる
ことを特徴とするろう付けワイヤの切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの継目部をレーザ光の照射により溶融したろう付けワイヤにて接合し、レーザろう付けの中断或いは停止後にろう付けワイヤを切断させるレーザろう付け装置、及びレーザろう付け装置を用いたろう付けワイヤの切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザろう付け(レーザブレージング)は、ワークの継目部を、レーザ光で溶融されたワイヤ(ろう材)を媒介として、ワークを溶かすことなく接合させるものであり、車体のアウタパネル同士の接合等に広く採用されている。
【0003】
レーザろう付けでは、ろう付け作業が終了した場合、ワイヤを引き上げ、そのときの伸びにより切断するが、ワイヤは、レーザ光の熱エネルギで溶融した溶融池から引き上げられるため、切断直後の先端は未だ溶融状態にあり、従って、先端に玉が表面張力によって形成され易い。そのため、次回のろう付け作業を行う際の前準備としてワイヤの先端形状を整える工程が必要となる。
【0004】
例えば特許文献1(特開2012−106270号公報)には、ろう付け作業を開始する前に、ワイヤ送出部からワイヤを所定長さ送り出し、レーザ光を照射して自重により溶断させることで、ワイヤ送出部から突出するワイヤの長さを一定の長さに調整すると共に先端形状を整える技術が開示されている。
【0005】
又、特許文献2(特開2009−297724号公報)には、ロボットアームの動作範囲にワイヤ切断エリアを設定し、当該エリアで、ワイヤを挟んでレーザ光と対向する側にエアノズルを近接させ、ワイヤにレーザ光を照射して溶断させる。同時にエアノズルから溶断部分に圧縮エアを吹き付けることで、ワイヤの溶断部分に形成される溶融物を飛散させ、この溶融物が玉状に残留することを防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−106270号公報
【特許文献2】特開2009−297724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に開示されている技術では、ろう付け作業を開始する前に必ず、所定長さのワイヤを廃棄するため、ワイヤ消費量が無駄に増加する問題がある。
【0008】
一方、特許文献2に開示されている技術では、エアブローを行う溶断エリアを別途確保する必要があり、更に、当該エリアへワイヤ送出部とレーザトーチ部とを搬送する装置が必要となるため、装置全体が大がかりとなる不都合がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、専用の作業エリアを確保する必要がなく、又、次回のレーザろう付け開始前にワイヤの先端を溶断するための前準備が不要で、ワイヤ消費量の節減、及び省スペース化を実現することのできるレーザろう付け装置、及びレーザろう付け装置を用いたろう付けワイヤの切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1は、ろう付けワイヤを送給するワイヤ送給部と、ワークの継目部に照射ポイントを設定し、該照射ポイントにレーザ光を集光させるレーザトーチ部と、前記ワイヤ送給部から送給される前記ろう付けワイヤを挿通する前記ワイヤガイド部を有し、その先端から突出する該ろう付けワイヤの端部を前記照射ポイントに供出させるワイヤ送出部とを有し、前記照射ポイントに供出した前記ろう付けワイヤの端部を前記レーザトーチ部からのレーザ光で溶融させて前記ワークの継目部を接合するレーザろう付け装置において、圧縮気体を発生させる圧縮気体源と、前記ろう付けワイヤの端部が突出する前記ワイヤ送出部の先端に開口する気体ガイド通路と、前記圧縮気体源と前記気体ガイド通路とを連通する圧縮気体導入路と、前記圧縮気体導入路に介装されて前記圧縮気体の流動を断続する開閉機構と、前記レーザトーチ部からのレーザ光の照射と前記ワイヤ送給部からの前記ろう付けワイヤの送給と前記開閉機構の開閉を制御する制御手段とを更に有し、前記制御手段は、レーザろう付けの中断或いは停止を検出した場合、前記ワイヤ送給部による前記ろう付けワイヤの送給を停止し、前記開閉機構を開動作させて前記圧縮気体を前記気体ガイド通路を経て前記ワイヤ送出部の端部から吐出させ、更に前記ワイヤ送給部を動作させ前記ろう付けワイヤの端部を前記照射ポイントから引き上げて切断させる。
【0011】
本発明の第2は、前記レーザろう付け装置を用いたろう付けワイヤの切断方法において、前記制御手段は、レーザろう付けの中断或いは停止を検出した場合、前記ワイヤ送給部による前記ろう付けワイヤの送給を停止し、前記開閉機構を開動作させて前記圧縮気体を前記気体ガイド通路を経て前記ワイヤ送出部の端部から吐出させ、その状態で前記ワイヤ送給部を動作させて前記ろう付けワイヤの端部を前記照射ポイントから引き上げて切断させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、レーザろう付けが中断或いは停止した場合、ろう付けワイヤの送給を停止し、圧縮気体をワイヤ送出部の端部から吐出させた状態で、ろう付けワイヤの端部を照射ポイントから引き上げて切断させるようにしたので、ろう付けワイヤの端部を切断するための専用の作業エリアを確保する必要がなく、又、次回のレーザろう付け開始前にワイヤの先端を溶断する前準備が不要で、ワイヤ消費量の節減、及び省スペース化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図5】レーザろう付け終了時の
図2相当の拡大断面図
【
図6】レーザろう付け作業ルーチンを示すフローチャート
【
図7】(a)はレーザろう付け停止時のワイヤ送給部の拡大断面図、(b)はワイヤ切断時のワイヤ送給部の拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
図1に示すレーザろう付け装置1は、レーザトーチ部2とワイヤ送出部3とを有し、この両者が支持ブラケット4を介して互いに連結されて、図示しない溶接ロボットのアームの先端に設けた手首軸に固設されている。レーザトーチ部2はレーザ光を予め設定した照射ポイントSに集光させる。尚、レーザ光Lの照射タイミングは後述するレーザろう付け制御ユニット(以下、単に「制御ユニット」と称する)21からの駆動信号によって制御される。
【0015】
レーザトーチ部2とワイヤ送出部3とを支持する溶接ロボットは、ティーチングによって照射ポイントSをワークW1,W2の継目部Wmに沿って移動させる。又、ワイヤ送出部3は先端側にコンタクトチップ3aを有している。ワイヤ送出部3にはワイヤ送給手段としてのワイヤ送給部5からろう付けワイヤ6が供給される。ワイヤ送給部5はモータの正逆動作、停止動作により、図示しないワイヤドラムからのろう付けワイヤ6の引出し量、巻戻し量を調整する。このモータは後述する制御ユニット21からの駆動信号によって制御動作されるものであり、ワイヤ送給部5の動作により、コンタクトチップ3aから照射ポイントSに向けて供出されるろう付けワイヤ6の突出長さが調整される。
【0016】
図2に示すように、コンタクトチップ3a内に、ろう付けワイヤ6を先端方向へガイドする、ワイヤガイド部としてのガイド孔3bが穿設されている。
図3に示すように、このガイド孔3bは、ろう付けワイヤ6を軸ぶれさせることなくガイドできる径に設定されており、ろう付けワイヤ6はガイド孔3bの内周にて摺動自在に支持されている。又、このガイド孔3bの上部内壁にリング状の気体溜り室3cが形成されている。
【0017】
更に、この気体溜り室3cから先端方向へ、ガイド孔3bの壁面に沿って気体ガイド通路3dが十字状に形成されており、この気体ガイド通路3dがコンタクトチップ3aの先端に開口されている。一方、気体溜り室3cよりも上部のガイド孔3eは、ろう付けワイヤ6の径に対して比較的大きく形成されており、気体溜り室3cの直上方のガイド孔3eに対し、ろう付けワイヤ6がシール部財7を介して摺動自在に支持されている。
【0018】
この気体溜り室3cに圧送ポンプ8が圧縮気体導入路9を介して連通されている。更に、この圧縮気体導入路9に、開閉機構としての開閉弁10が介装されていると共に、この圧縮気体導入路9と圧送ポンプ8との間にアキュムレータ11が連通されている。尚、このアキュムレータ11と圧送ポンプ8とで、圧縮気体を発生させる圧縮気体源が構成されている。
【0019】
上述した開閉弁10は常閉タイプであり、電磁ソレノイド10aのON動作によって開弁される。この開閉弁10の開閉動作は後述する制御ユニット21によって制御される。又、アキュムレータ11には圧送ポンプ8から送圧された空気或いは不活性ガスが蓄圧されており、開閉弁10の開弁により、この蓄圧された空気或いは不活性ガス(以下、「圧縮気体」と称する)が圧縮気体導入路9を経てコンタクトチップ3a内に吐出される。
【0020】
開閉弁10の電磁ソレノイド10a、ワイヤ送給部5、レーザトーチ部2を制御する、制御手段としての制御ユニット21は、CPU,RAM,ROM等を備えた周知のマイクロコンピュータを主体に構成されており、ROMにはCPUで実行される制御プログラムや固定データ等が記憶されている。
【0021】
レーザろう付け作業に際しては、溶接ロボットが予め記憶されているティーチングに従い、2つのワークW1,W2の継目部Wmに照射ポイントSを一致させた状態でレーザトーチ部2とワイヤ送出部3とを移動させる。その際、制御ユニット21は溶接ロボットによる移動に同期させて、レーザトーチ部2からレーザ光Lを照射すると共に、ワイヤ送給部5を駆動させて、ろう付けワイヤ6を照射ポイントSに供出する。そして、レーザろう付けの送りが中断し、或いはレーザロウ付けの終了等により停止した場合、直ちに、開閉弁10を開弁させてコンタクトチップ3aの先端から、アキュムレータ11に蓄圧されている圧縮気体をろう付けワイヤ6の先端に吹きかけた状態で、レーザトーチ部2からのレーザ光Lの出射を停止させる。その後、ろう付けワイヤ6を巻戻して先端を切断する。
【0022】
この制御ユニット21で実行するレーザろう付け作業は、具体的には、
図6に示すレーザろう付け作業ルーチンに従って処理される。
【0023】
このルーチンは、溶接ロボットがレーザトーチ部2とワイヤ送出部3とを移動させて、ワークW1,W2の継目部Wmの溶接開始位置に照射ポイントSが位置決めされた後に起動される。
【0024】
そして、ステップS1でワイヤ送給部5を駆動させて、ろう付けワイヤ6をコンタクトチップ3aの先端から照射ポイントSの位置に対して所定長さ突出させ、次いで、ステップS2へ進み、レーザトーチ部2からレーザ光Lを出射させて照射ポイントSに集光し、ステップS3へ進む。
【0025】
一方、溶接ロボットは、レーザトーチ部2とワイヤ送出部3とを移動させて、照射ポイントSを継目部Wmに沿って移動させる。すると、レーザ光Lの熱エネルギによってろう付けワイヤ6が継目部Wmに沿って溶融され、連続形成されたビードを媒介して継目部Wmが順次接合される。
【0026】
ステップS3では、溶接ロボットによるレーザトーチ部2とワイヤ送出部3との送りが中断したか、或いは停止したかを調べ、送りが継続している場合は、ステップS1へ戻り、レーザろう付け作業を継続させる。一方、溶接ロボットによる送りが中断、或いは停止した場合は、ステップS4へ進む。
【0027】
ステップS4では、ワイヤ送給部5を停止させてろう付けワイヤ6の照射ポイントS方向への供出を停止させ、ステップS5へ進み、制御ユニット21から開閉弁10の電磁ソレノイド10aに対してON信号を送信して、開閉弁10を開弁させる(
図5の状態)。
【0028】
すると、アキュムレータ11に蓄圧されている圧縮気体が圧縮気体導入路9を経てコンタクトチップ3a内に形成されている気体溜り室3cに流入される。そして、この気体溜り室3cから、ガイド孔3bに沿って、十字状に形成されている気体ガイド通路3dを通り、コンタクトチップ3aの下端から吐出して、ろう付けワイヤ6に対し、先端方向に沿って吹き出される。
【0029】
次いで、ステップS6へ進み、ワイヤ送給部5を駆動させてろう付けワイヤ6を所定長さ後退させ(
図7(a)の状態)、ステップS7でレーザトーチ部2からのレーザ照射を停止させる(
図7(b)の状態)。
【0030】
すると、照射ポイントSに集光されたレーザ光Lの熱エネルギによって形成された溶融池Pから、ろう付けワイヤ6の軟化している先端が引き上げられ、そのときの伸びにより切断される。その際、この先端には圧縮気体の吹き付けにより風圧がかかっており、この風圧にて表面が急激に冷却されて軟化される。一般に、溶融池Pからろう付けワイヤ6の先端を引き上げて切断すると、その先端には表面張力によって玉が形成されるが、本実施形態のように先端を圧縮気体で冷却することで、玉の形成を阻止することができる。
【0031】
その結果、従来は次回のろう付け作業を行う際の前準備として行っていた、玉を除去する等のろう付けワイヤ6の先端形状を整える作業が不要となり、作業効率が向上するばかりでなく、ワイヤ消費量の節減を図ることができる。更に、
図7(b)に示すように、引き上げられ、そのときの伸びによって切断されたろう付けワイヤ6の先端に対し、圧縮気体の風圧がコンタクトチップ3aの先端側から吹き付けられており、この風圧が玉を形成しようとする際の抵抗となる。
【0032】
そのため、ろう付けワイヤ6の先端に対する玉の形成がより一層阻害されるばかりでなく、この風圧にて先端外形が整えられ、次回のろう付け作業を前準備なしに実行することができ、作業効率をより一層向上させることができる。
【0033】
そして、プログラムがステップS8へ進むと、開閉弁10に対する駆動信号をOFFして、ルーチンを抜ける。開閉弁10がOFFすると、
図2に示すように、コンタクトチップ3aに対する圧縮気体の供給が遮断され、次回のろう付け作業に備える。
【0034】
このように、本実施形態では、レーザろう付け作業が中断、或いは停止すると、圧縮気体を、コンタクトチップ3a内を経て、ろう付けワイヤ6の先端方向へ吹き付けるようにしたので、このろう付けワイヤ6の先端を溶融池Pから引き上げて切断しても、その先端に玉が形成されず、次回のレーザろう付け作業を行うに際して、先端を溶断する等の前準備が不要となり、作業効率の向上を図ることができる。又、次回のレーザろう付け作業を行うに際し、従来、その前準備として行っていた、ろう付けワイヤ6の先端を整形のための溶断が不要となり、ワイヤ消費量の節減を実現することができる。
【0035】
更に、本実施形態では、圧縮気体の吹き付けをコンタクトチップ3a内を経て行うようにしたので、ろう付けワイヤ6の先端部をコンタクトチップ3a内に引き込んだとしても、コンタクトチップ3aのガイド孔3bとろう付けワイヤ6の外周との間に圧縮空気が流動しているため溶着を有効に防止することができる。
【0036】
又、従来のようにろう付けワイヤの先端をエアブローにて溶断するための作業エリアを別途確保する必要がなく、従って、当該エリアへワイヤ送出部3とレーザトーチ部2とを搬送する装置を設ける必要もなく、その結果、装置全体のコンパクト化、及び作業エリアの省スペース化を実現することができる。
【0037】
尚、本発明は、上述した実施形態に限るものではなく、例えばレーザトーチ部2とワイヤ送出部3とは同期して移動するものであれば、支持ブラケット4で連結する必要はない。
【符号の説明】
【0038】
1…レーザろう付け装置、
2…レーザトーチ部、
3…ワイヤ送出部、
3a…コンタクトチップ、
3b,3e…ガイド孔、
3c…気体溜り室、
3d…気体ガイド通路、
4…支持ブラケット、
5…ワイヤ送給部、
6…ろう付けワイヤ、
7…シール部財、
8…圧送ポンプ、
9…圧縮気体導入路、
10…開閉弁、
10a…電磁ソレノイド、
11…アキュムレータ、
21…レーザろう付け制御ユニット、
L…レーザ光、
P…溶融池、
S…照射ポイント、
W1,W2…ワーク、
Wm…継目部