特許第6774308号(P6774308)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774308
(24)【登録日】2020年10月6日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】吸収体の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20201012BHJP
   D04H 1/732 20120101ALI20201012BHJP
   D04H 1/736 20120101ALI20201012BHJP
【FI】
   A61F13/15 380
   D04H1/732
   D04H1/736
   A61F13/15 321
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-219258(P2016-219258)
(22)【出願日】2016年11月9日
(65)【公開番号】特開2018-75200(P2018-75200A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2019年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 進之介
(72)【発明者】
【氏名】木崎 康泰
(72)【発明者】
【氏名】横堀 一男
(72)【発明者】
【氏名】飯田 政敏
(72)【発明者】
【氏名】長野 良哉
【審査官】 大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−116860(JP,A)
【文献】 特開2014−108319(JP,A)
【文献】 特開2006−081888(JP,A)
【文献】 特開2007−282972(JP,A)
【文献】 特開2015−181785(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/087902(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15−13/84
D04H 1/732
D04H 1/736
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料シートを解繊機で解繊して得られる繊維材料を、外周面に集積用凹部が形成された回転ドラムに空気流に載せて供給し、供給した前記繊維材料を、吸引して該集積用凹部内に堆積させ、該集積用凹部から所定形状に成形された堆積物を離型して吸収体を得る、吸収体の製造方法であって、
原反ロールから巻き出された前記原料シートを、第1の送り装置により下流に一定の速度で送る第1工程、及び下流に送られた前記原料シートを、第2の送り装置により供給速度を周期的に変化させながら前記解繊機に供給する第2工程を具備し、
前記堆積物として、繊維材料の坪量が相対的に高い部分と繊維材料の坪量が相対的に低い部分とを有する繊維堆積体を得る、吸収体の製造方法。
【請求項2】
前記第1の送り装置による前記原料シートの送り速度を、前記第2の送り装置による前記原料シートの送り速度の平均速度よりも速くする、請求項1に記載の吸収体の製造方法。
【請求項3】
前記第1の送り装置による前記原料シートの送り速度を、前記第2の送り装置による前記原料シートの供給速度の平均速度の100%超110%以下とする、請求項2に記載の吸収体の製造方法。
【請求項4】
前記原料シートの前記原反ロールと前記第2の送り装置との間に、前記原料シートを一定の速度で下流に送る前記第1の送り装置を複数配置する、請求項1〜3の何れか1項に記載の吸収体の製造方法。
【請求項5】
前記繊維材料を搬送する空気流中に吸水性ポリマーを供給し、吸水性ポリマーを含む繊維堆積体を得る、請求項1〜4の何れか1項に記載の吸収体の製造方法。
【請求項6】
前記空気流に対する前記吸水性ポリマーの単位時間当たりの供給量を周期的に変化させる、請求項5に記載の吸収体の製造方法。
【請求項7】
前記集積用凹部は、底面全体に均一な吸引力を生じるものである、請求項1〜6の何れか1項に記載の吸収体の製造方法。
【請求項8】
前記集積用凹部は、底面に、相対的に高い吸引力を生じる領域と相対的に低い吸引力を生じる領域とを有する、請求項1〜7の何れか1項に記載の吸収体の製造方法。
【請求項9】
原料シートを解繊機で解繊して得られた繊維材料を、外周面に集積用凹部が形成された回転ドラムに空気流に載せて供給し、供給した前記繊維材料を、吸引して該集積用凹部内に堆積させ、その堆積物を離型して、所定形状の繊維堆積体を得る繊維堆積体の製造装置であって、
原反ロールを従動回転可能に支持する支持機構を具備する原反ロール保持部、前記原反ロールから巻き出した前記原料シートを、下流に一定の速度で送る第1の送り装置、前記第1の送り装置により下流に送られた前記原料シートを、供給速度を周期的に変化させながら前記解繊機に供給する第2の送り装置、及び前記第2の送り装置の供給速度を、前記繊維堆積体として、繊維材料の坪量が相対的に高い部分と繊維材料の坪量が相対的に低い部分とを有する繊維堆積体が得られるように変化させる制御部を具備する、吸収体の製造装置。
【請求項10】
前記原反ロールから前記第1の送り装置までの距離が、前記原反ロールから前記第2の送り装置までの距離の半分以上である、請求項9に記載の繊維堆積体の製造装置。
【請求項11】
前記原反ロール保持部と前記第2の送り装置との間に、前記原料シートを一定の速度で下流に送る第1の送り装置を複数具備する、請求項9又は10に記載の吸収体の製造装置。
【請求項12】
前記繊維材料を搬送する空気流中に吸水性ポリマーを供給する装置を具備し、吸水性ポリマーを含む繊維堆積体を得る、請求項9〜11の何れか1項に記載の吸収体の製造装置。
【請求項13】
前記吸水性ポリマーを供給する装置は、前記空気流に対する前記吸水性ポリマーの単位時間当たりの供給量を周期的に変化させる制御部を具備する、請求項12に記載の吸収体の製造装置。
【請求項14】
前記集積用凹部は、底面に、相対的に高い吸引力を生じる領域と相対的に低い吸引力を生じる領域とを有する、請求項9〜13の何れか1項に記載の吸収体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収体の製造方法及び製造装置に関する。
【0002】
使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品の吸収体の製造装置として、外周面に集積用凹部を有する回転ドラムを備え、該回転ドラムを回転させつつ該外周面にパルプ等の吸収体材料を飛散状態にて供給し、吸引孔が多数形成された多孔性部材からなる該集積用凹部の底面からの吸引により、吸収体材料を該集積用凹部内に堆積させ、この集積用凹部内から所定形状に成形された堆積物を離型して吸収体を得る吸収体の製造装置が知られている。その吸収体は、そのまま、あるいは紙や通気性不織布等の被覆シートで被覆されて、吸収性物品の吸収体として用いられる。
【0003】
また、このような吸収体の製造装置として、吸収体材料の分布が平面方向において一様ではない吸収体を製造するものも種々提案されている。
例えば、特許文献1には、集積用凹部の底面に、開口面積率の高い第1吸引領域と第1吸引領域よりも開口面積率の低い第2吸引領域を設けて、吸収容量を部分的に高く設計した部位を有する吸収体を製造する装置が提案されている(特許文献1参照)。
また、本出願人は、外周面に集積用凹部が形成された回転ドラムに飛散状態にて供給する繊維材料の量を、周期的に変化させることによって、繊維材料の坪量が相対的に高い部分と繊維材料の坪量が相対的に低い部分とを有する吸収体を得る方法を提案した(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−65930号公報
【特許文献2】特開2016−116860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の吸収体の製造装置は、集積用凹部内の吸収体材料の堆積量の部分的な調整が可能で、吸収体材料の坪量が部分的に異なる吸収体を製造することが可能ではあるものの、坪量が異なる領域の面積割合等の仕様を変更する際には、集積用凹部自体を改造しなければならず、多大な労力が必要であった。
【0006】
特許文献2に記載の方法によれば、繊維材料の単位時間当たりの供給量を変化させるだけで、容易に繊維材料の坪量が相対的に高い部分と繊維材料の坪量が相対的に低い部分とを有する吸収体を製造することができる等の利点がある。
しかし、本発明者は、繊維材料の単位時間当たりの供給量を、繊維材料の原料となる原料シートの解繊機に対する供給速度を増減して変化させると、変化が急激な場合等に、その速度変化により、解繊機より上流において原料シートがバタつくように上下に変位し、それが、原料シートの解繊機に対する供給量の正確な制御に影響を与える場合があることを知見した。
【0007】
本発明の課題は、上述した従来技術の課題を解決し得る吸収体の製造方法及び製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、原料シートを解繊機で解繊して得られる繊維材料を、外周面に集積用凹部が形成された回転ドラムに空気流に載せて供給し、供給した前記繊維材料を、吸引して該集積用凹部内に堆積させ、該集積用凹部から所定形状に成形された堆積物を離型して吸収体を得る、吸収体の製造方法であって、原反ロールから巻き出された前記原料シートを、第1の送り装置により下流に一定の速度で送る第1工程、及び下流に送られた前記原料シートを、第2の送り装置により供給速度を周期的に変化させながら前記解繊機に供給する第2工程を具備し、前記堆積物として、繊維材料の坪量が相対的に高い部分と繊維材料の坪量が相対的に低い部分とを有する繊維堆積体を得る、吸収体の製造方法を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、原料シートを解繊機で解繊して得られた繊維材料を、外周面に集積用凹部が形成された回転ドラムに空気流に載せて供給し、供給した前記繊維材料を、吸引して該集積用凹部内に堆積させ、その堆積物を離型して、所定形状の繊維堆積体を得る繊維堆積体の製造装置であって、原反ロールを従動回転可能に支持する支持機構を具備する原反ロール保持部、前記原反ロールから巻き出した前記原料シートを、下流に一定の速度で送る第1の送り装置、前記第1の送り装置により下流に送られた前記原料シートを、供給速度を周期的に変化させながら前記解繊機に供給する第2の送り装置、及び前記第2の送り装置の供給速度を、前記繊維堆積体として、繊維材料の坪量が相対的に高い部分と繊維材料の坪量が相対的に低い部分とを有する繊維堆積体が得られるように変化させる制御部を具備する、吸収体の製造装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の吸収体の製造方法及び製造装置によれば、解繊機に対する原料シートの供給量を変化させたときに生じる不都合を抑制することができ、繊維材料の坪量が相対的に高い部分と繊維材料の坪量が相対的に低い部分とを有する吸収体を安定的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の吸収体の製造方法の実施に好ましく用いられる吸収体の製造装置の一実施形態を示す概略図である。
図2図2は、図1に示す製造装置における集積用凹部の構成を示す分解斜視図である。
図3図3(a)は、好ましい実施態様における第1の送り装置の送り速度の変化のさせ方を示すグラフであり、図3(b)及び図3(c)は、好ましい実施態様における第2の送り装置の送り速度の変化のさせ方を示すグラフであり、図3(d)は、ダクト開口部のドラム周方向の長さ等の説明図である。
図4図4は、本発明で得られる吸収体の一例を示す斜視図である。
図5図5(a)は、本発明で製造する吸収体の一例を示す側面図及び斜視図であり、図5(b)は、本発明で製造する吸収体の他の例を示す側面図及び斜視図であり、図5(c)は、本発明で製造する吸収体の他の例を示す側面図である。
図6図6(a)及び図6(b)は、本発明で製造する吸収体の更に他の例を示す側面図である。
図7図7は、繊維材料の坪量が最も低い部分と繊維材料の坪量が最も高い部分の坪量の測定方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づいて説明する。
先ず、本発明の吸収体の製造方法の一実施態様に好ましく用いられる吸収体の製造装置について、図1を参照して説明する。図1に示す吸収体の製造装置1は、本発明の吸収体の製造装置の一実施形態でもある。
図1に示す吸収体の製造装置1は、図1に示すように、外周面に複数の集積用凹部22が所定の間隔で形成された回転ドラム2と、回転ドラム2の外周面2fに向けて、吸収体材料としての繊維材料31及び吸水性ポリマー32を飛散状態にて供給するダクト4と、ダクト4内に繊維材料31を供給する繊維材料供給部5と、集積用凹部22内に、繊維材料31及び吸水性ポリマー32が堆積して生じた堆積物を、吸収体3として該集積用凹部22から離型させる離型用エアブロー装置10と、回転ドラム2の下方に配された搬送手段としてのバキュームコンベア7とを備えている。
【0013】
回転ドラム2は、金属製の剛体からなる円筒状のドラム本体20と、該ドラム本体20の外周部に重ねて配され、回転ドラム2の外周面2fを形成する外周部材21とを含んで構成されている。外周部材21は、モーター等の原動機(図示せず)からの動力を受けて、水平軸回りを矢印R方向に回転する一方、ドラム本体20は固定されていて回転しない。
外周部材21は、その外周部に、図2に示すように、多孔性プレート27(多孔性部材)と、該多孔性プレート27の外面27a側に重ねて固定されたパターン形成プレート28とを有する。集積用凹部22の底面は、多孔性プレート27から形成されている。
【0014】
パターン形成プレート28は、回転ドラム2の外周面2fを形成する外面28aと、回転ドラム2の回転軸側に向けられる内面28bとを有し、外面28aと内面28bとの間に、集積用凹部22内の立体形状に対応する形状の空間部280を有している。この空間部280の輪郭線22Lは、集積用凹部22の輪郭線に一致する。パターン形成プレート28としては、例えば、ステンレスあるいはアルミ等の金属又は樹脂製の板に機械加工を施し開口部(集積用凹部22内の立体形状に対応する形状の空間部280)を形成したプレート、あるいは金型を用いて該開口部を一体成形したプレート、あるいはパンチング、エッチングしたプレート、それらのプレートを重ね合わせたもの等を用いることができる。
【0015】
多孔性プレート27は、ドラム本体20側からの吸引によって生じた空気流を回転ドラム2の外方に伝え、該空気流に乗って運ばれてくる吸収体材料を通過させずに保持し、空気のみを通過させる通気性のプレートである。多孔性プレート27には、該プレート27を厚み方向に貫通する吸引孔(細孔)が、該プレート27の全体に均一な分布で複数(多数)形成されており、集積用凹部22が回転ドラム2内における負圧に維持された空間A上を通過している間、該吸引孔が空気流の通気孔として機能する。吸収体の製造装置1における多孔性プレート27は、全域に亘って開口率が一定であり、また、多孔性プレート27の下側に吸引力を部分的に異ならせる吸引力制御プレート等も配置されていない。即ち、吸収体の製造装置1における集積用凹部22は、底面全体に均一な吸引力を生じるものである。
多孔性プレート27としては、例えば、金属又は樹脂製のメッシュプレート、あるいは金属又は樹脂製の板にエッチング、パンチングで複数(多数)の細孔を形成したもの等を用いることができる。
【0016】
ドラム本体20は、図1に示すように、回転ドラム2の中心軸側から外周面2f側に向かって設けられた仕切板20pにより仕切られた相互に独立した複数の空間A,B,C,Dを有している。ドラム本体20の中心軸部222には、吸気ファン(図示せず)が接続されており、該吸気ファンの駆動により、回転ドラム2内の仕切られた空間A〜Dの圧力が調整できるようになっており、吸収体の製造装置1においては、外周面2fがダクト4で覆われた領域に位置する空間Aの領域の吸引力が、空間B〜Dの領域の吸引力よりも強い。なお、空間C及びDは、集積用凹部22内の吸収体3の転写位置及びその前後を含む領域であるので、圧力ゼロ又は陽圧が好ましい。
【0017】
ダクト4は、図1に示すように、繊維材料供給部5から回転ドラム2に亘って延びており、ダクト4の下流側の開口部は、負圧に維持される回転ドラム2内の空間A上に位置する外周面2fを覆っている。
繊維材料供給部5は、解繊機51を備えている。解繊機51は、パルプシート等の原料シート31Aを粉砕してパルプ繊維等の繊維材料31とするものであり、生じた繊維材料31が、ダクト4内に向けて開孔した材料供給口51dからダクト4内に供給される。
解繊機51は、解繊ロール51aとケーシング51bとを備えている。解繊ロール51aは、その周面に、原料シート31Aの先端縁を接触して解繊する多数の解繊刃を有している。解繊ロール51aは、ケーシング51bから突出した回転軸の両端部を軸受によって支持されており、且つモーター等の動力源からの動力が、ギアやベルト等の任意の動力伝達手段で回転軸に伝達されて回転駆動される。解繊ロール51aは、一定の速度で一方向に回転駆動される。
ケーシング51bは、原料シート31Aが導入される導入ロと解繊ロール51aの外周面との間を連通する原料シート31Aの導入路51cと、前述した材料供給口51dを備えている。また、ケーシング51b内には、解繊ロール51aの外周面に沿う断面円弧状のフードが設けられている。
【0018】
吸収体の製造装置1は、原料シート31Aの搬送経路に沿ってみたときに、図1に示すように、上流側から順に、原反ロール保持部6A、第1の送り装置6B、及び第2の送り装置6Cを備えている。原反ロール保持部6Aは、原料シート31Aのロール状の巻回物である原反ロール31Rを、従動回転可能に支持する支持機構61を備えており、第1の送り装置6Bにより、原料シート31Aを引っ張ることにより原反ロール31Rが回転して、原料シート31Aが巻き出される。第1の送り装置6Bは、公知のニップロール62を備えており、一対のニップロール62で原料シート31Aを挟んだ状態で、駆動モーター63によりニップロール62を回転させることで、原反ロール31Rから原料シート31Aから巻き出されるとともに、ニップロール62の回転速度に応じた一定の速度で、第2の送り装置6Cが配された下流に向かって送り出される。
第2の送り装置6Cも、公知のニップロール64を備えており、一対のニップロール64で原料シート31Aを挟んだ状態で、駆動モーター65によりニップロール64を回転させることで、第1の送り装置6Bから送られてき原料シート31Aを、制御部8により制御された送り速度で、その下流に位置する解繊機51に向けて送り出す。原料シート31Aは、ニップロール64の回転速度に応じた送り速度で、解繊機51の解繊ロール51aの周面に供給され、解繊ロール51aの周面に接触して繊維状材料となる。したがって、この第2の送り装置6Cによる送り速度が、ダクト4に対する繊維状材料の供給速度、及び回転ドラム2の外周面に対する繊維状材料の供給速度となる。
【0019】
ダクト4における回転ドラム2と繊維材料供給部5との間には、吸収体材料の他の一種である吸水性ポリマー32をダクト4に供給する散布管55が設けられている。回転ドラム2の吸気ファン(図示せず)の作動により、ダクト4内の空間には、回転ドラム2の外周面2fに向けて吸収体材料(繊維材料31及び吸水性ポリマー32)を流す空気流が生じるようになっている。
【0020】
押さえベルト24は、無端状の通気性又は非通気性のベルトであり、ロール25、ロール26及び図示しない他のロールに架け渡されて、回転ドラム2の回転と共に連れ回るようになっている。押さえベルト24が、通気性のベルトである場合には、集積用凹部22内の吸収体材料(繊維材料31及び吸水性ポリマー32)を通過させないものであることが好ましい。押さえベルト24により、空間Bの圧力を大気圧に設定しても、集積用凹部22内の堆積物をバキュームコンベア7上に転写するまで、集積用凹部22内に保持できる。
【0021】
バキュームコンベア7(搬送手段)は、回転ドラム2の下方に配されており、回転ドラム2の弱い陽圧又は圧力ゼロ(大気圧)に設定されている空間Cに位置する外周面2fに近接して配されている。バキュームコンベア7は、無端状の通気性ベルト73と、通気性ベルト73を挟んで回転ドラム2の外周面2fと対向する位置に配されたバキュームボックス74とを備えている。バキュームコンベア7上には、薄葉紙(ティッシュペーパ)や不織布等からなる通気性の被覆シート35が導入されるようになっている。この通気性の被覆シート35は、液透過性の被覆シートでもある。
【0022】
離型用エアブロー装置10は、集積用凹部22内に、吸収体材料(繊維材料31及び吸水性ポリマー32)が堆積して得られる堆積物を、該集積用凹部22から離型させる離型手段として機能する。離型用エアブロー装置10は、空間C内において、外周部材21よりも内側に配されており、吸収体材料が堆積する集積用凹部22の底面を形成する多孔性プレート(多孔性部材)の内面側から外面27a側に向けてエアを吹き付けることができ、そのエアによって堆積物の集積用凹部22からの離型が促進される。
【0023】
吸収体の製造装置1は、図1に示すように、繊維材料供給部5からダクト4内に供給される繊維材料31の量を制御する制御部8を備えている。制御部8は、詳細は図示しないが、表示部を備えたコンピュータ、該コンピュータと他の装置等とを電気的に接続するインターフェース、及びコンピュータに組み込まれた所定のプログラム等から構成されている。また、制御部8のコンピュータは、第2の送り装置6Cの駆動モーター65に対して制御信号を出力して駆動モーター65の回転を制御することにより、解繊機51に対する原料シート31Aの供給量を制御し、ダクト4内への繊維材料31の供給量を制御することができる。
また制御部8のコンピュータは、第1の送り装置6Bの駆動モーター63に対して制御信号を出力して、駆動モーター63の回転速度を一定に維持し、原料シート31Aの送り速度を一定の速度に安定に維持することができる。制御部8は、コンピュータに代えて、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)や他の類似の装置を用いることもできる。
【0024】
また、吸収体の製造装置1は、集積用凹部22から離型された吸収体3の上下面を被覆シート35,36で被覆し、吸収体連続体30Aを得る機構を備えている。吸収体3における、バキュームコンベア7上に供給された被覆シート35側とは反対側の面を被覆する被覆シート36は、被覆シート35の片面における幅方向中央部に吸収体3を載置した後、他面側に折り返された該被覆シート35の両側部であっても良いし、バキュームコンベア7上に供給された被覆シート35とは別の被覆シート36であっても良い。被覆シート36としては、被覆シート35と同様に薄葉紙(ティッシュペーパ)や不織布等を用いることができ、通気性を有することが好ましい。この通気性の被覆シート36は、液透過性の被覆シートでもある。
また、吸収体の製造装置1は、その吸収体連続体30Aを、個々の吸収性物品に使用される長さ(以下、吸収性物品一枚分の長さともいう)の吸収体30に切断する切断装置9を備えている。切断装置9としては、吸収性物品や吸収体の製造に用いられる各種公知の切断手段を用いることができ、例えば、図1に示すように、切断刃92を有するカッターロール91とその刃を受けるアンビルロール93とを有しており、両ロールの回転により一定の周期で、吸収体連続体30Aを順次切断するものを用いることができる。
【0025】
上述した吸収体の製造装置1を用いて吸収体3を連続的に製造する方法、即ち、本発明の吸収体の製造方法の一実施態様について説明する。
上述した製造装置1を用いて吸収体3を製造するためには、回転ドラム2を回転させると共に、上記吸気ファンを作動させて空間Aを負圧とする。また離型用エアブロー装置6、バキュームコンベア7、バキュームコンベア7に隣接して配置したベルトコンベア7A、及び切断装置9を作動させる。
吸気ファンの作動により、空間A上に位置する集積用凹部22の底面に、底面の全域に亘って均一な吸引力が生じると共に、ダクト4内に、回転ドラム2の外周面に向けて流れる空気流が生じる。
【0026】
そして、繊維材料供給部5の第1の送り装置6B及び第2の送り装置6Cを作動させて、繊維材料31の原料シート31Aを原反ロール31Rから巻き出し、巻き出した原料シート31Aを、第1の送り装置6B及び第2の送り装置6Cにより搬送して解繊機51に導入すると、解繊機51により解繊されて生じた繊維材料31がダクト4内に供給される。ダクト4内に供給された繊維材料31は、飛散状態となって、ダクト4内を流れる空気流に載って、回転ドラム2の外周面に向けて供給される。
【0027】
本実施態様においては、原反ロール31Rから巻き出された原料シート31Aを、第2の送り装置2Cが配された下流に向けて送り出す第1の送り装置6Bの送り速度を一定に維持する一方、第1の送り装置6Bから送り出された原料シート31Aを解繊機51に送る第2の送り装置C2の送り速度を周期的に変化させる。
より具体的には、制御部8に含まれるコンピュータにより、第1の送り装置6Bのニップロール62の周速を一定に維持しながら、第2の送り装置6Cのニップロール64の周速を周期的に変化させる。
第2の送り装置6Cのニップロール64の周速を周期的に変化させることによって、繊維材料の原料シート31Aを解繊機51に供給する速度が周期的に変化し、ダクト4内に供給される繊維材料31の単位時間当たりの供給量も周期的に変化する。
制御部8のコンピュータには、第2の送り装置6Cのニップロール64の回転速度に、そのような変化を生じさせるためのプログラムをインストールしておく。プログラマブルロジックコンピュータを用いて、ニップロール64の回転速度を周期的に変化させても良い。
【0028】
一例を示すと、第1の送り装置6Bによる原料シートの送り速度(ニップロール62の周速)を、図3(a)に示すグラフ中、「B」で示すパターンで一定に維持する一方、第2の送り装置6Cによる原料シートの送り速度(ニップロール64の周速)を、図3(b)中、「C1」で示すパターンで周期的に変化させる。第2の送り装置6Cによる原料シートの送り速度(ニップロール64の周速)を、「C1」で示すパターンで周期的に変化させると、制御部8によりダクト4へと供給される繊維材料31の質量aも、同様のパターンで周期的に変化する。
第1の送り装置6Bによる原料シートの送り速度(ニップロール64の周速)を、図3(a)に示すグラフ中、「B」で示すパターンで一定に維持する一方、第2の送り装置6Cによる原料シートの送り速度(ニップロール64の周速)を、図3(c)中、「C2」に示すパターンで周期的に変化させることもできる。
【0029】
図3(b)中、「C1」で示すパターンは、ダクト4に繊維材料31を供給するステップと、ダクト4に繊維材料31を供給しないステップとが交互に繰り返されるパターンであり、最大速度を維持する供給する時間と停止時間とがほぼ同じ長さである。図3(c)中、「C2」で示すパターンは、「C1」で示すパターンと同様に、ダクト4に繊維材料31を供給するステップと、ダクト4に繊維材料31を供給しないステップとが交互に繰り返されるパターンであるが、「C1」で示すパターンに対して最大速度を1.5倍、最大速度の維持時間を2/3倍としてある。
なお、図3(b)中の「C1」又は図3(c)中の「C2」で示すパターンのように、ダクト4に繊維材料31を供給しないステップを有するパターンに代えて、ダクト4に相対的に少ない量の繊維材料31を供給するステップとダクト4に相対的に多い量の繊維材料31を供給するステップとが交互に繰り返して、繊維材料31を連続して供給するパターンとしても良い。
【0030】
図3(a)に示すグラフの縦軸は、第1の送り装置6Bによる原料シート31Aの送り速度であり、第1の送り装置6Bのニップロール62の周速に一致し、図3(b)及び図3(c)に示す各グラフの縦軸は、第2の送り装置6Cによる原料シート31Aの送り速度であり、第2の送り装置6Cのニップロール64の周速に一致する。
図3(a)〜図3(c)に示す各グラフの横軸は、集積用凹部22が、ダクト4に覆われた部分を通過する周期(以下「集積用凹部の通過周期」ともいう)との関係において時間を示すものであり、集積用凹部の通過周期の一周期Tは、例えば図3(d)に示すように、一つの集積用凹部22aの特定位置P1、例えば回転方向Rの前端が、ダクト4の回転ドラム2の周方向に沿う方向の特定位置P2を通過した後、その次の集積用凹部22bの共通する特定位置P1が、同特定位置P2を通過するまでの時間に相当する。
製造装置1の運転中には、製造装置1の制御部8によって、図3(b)及び図3(c)に示すように、第2の送り装置により原料シート31Aの送り速度を変化させる周期と、集積用凹部22の通過周期とを一致させることが好ましい。その場合、原料シート31Aの送り速度を変化させる周期と、集積用凹部22の通過周期の位相は、適宜に決定し得る。
【0031】
図4及び図5(a)は、本実施形態の製造方法及び製造装置1により製造される吸収体3の一例を示す斜視図である。
図4及び図5(a)に示す吸収体3においては、集積用凹部22の回転方向前端fに対応する一端3a側に、相対的に繊維材料の坪量が多い高坪量部33が形成され、集積用凹部22の回転方向後端rに対応する他端3b側に、相対的に繊維材料の坪量が少ない低坪量部34が形成されている。吸収体3は、回転ドラム2の周方向に対応する長手方向3X及び該長手方向に直交する幅方向3Yを有している。吸収体3は、搬送手段としてのバキュームコンベア7やベルトコンベア7Aにより搬送される際には、図1に示すように、長手方向3Xが搬送方向Xに沿い、高坪量部33を有する一端3a側が、搬送方向の下流側に向けられている。
このようにして得られた吸収体3は、図1に示すように、被覆シート35,36で被覆されて吸収体連続体30Aとされた後、切断装置9により所定長さに切断されて、被覆シートで被覆された吸収体30として、使い捨ておむつ等の吸収性物品に組み込まれる。
【0032】
本実施形態の製造方法及び製造装置1によれば、第2の送り装置6Cによる原料シート31Aの送り速度を変化させること、好ましくは、原料シート31Aの送り速度を集積用凹部の通過周期に合わせて周期的に変化させ、解繊機51から、ダクト4内に供給される繊維材料31の単位時間当たりの供給量を周期的に変化させることによって、集積用凹部22に堆積させる堆積物に、繊維材料31の堆積量が少ない部位と繊維材料31の堆積量が多い部位とを形成することができ、それにより、集積用凹部22から離型して得られる個々の吸収体中に、繊維材料の坪量が相対的に多い部分と繊維材料の坪量が相対的に少ない部分とを形成することができる。
本実施形態の製造方法及び製造装置1によれば、このように、第2の送り装置6Cによる原料シート31Aの送り速度を変化させることにより、集積用凹部やその吸引機構に特別な改変を加えなくても、繊維材料の坪量が相対的に高い部分と繊維材料の坪量が相対的に低い部分とを有する吸収体を容易に製造することができる。
【0033】
しかも、原反ロール31Rと第2の送り装置6Cとの間に、第1の送り装置6Bを配して、第1の送り装置6Bにより一定の速度で、原料シート31Aを、第2の送り装置6Cに送るようにしたため、第1の送り装置6Bを用いない場合に生じることにある解繊機51より上流側の原料シート31Aのバタつくような変位を軽減でき、原料シート31Aの解繊機51に対する供給量の制御の精度を向上させることができる。
供給量の制御の精度が向上する理由は、原料シート31Aのバタつくような変位を低減でき、それによって、第2の送り装置6Cへの原料シート供給量が安定することや、第2の送り装置6Cに加えて第1の送り装置6Bを用いることで、第2の送り装置6Cの駆動手段としてサーボモーター等の電動モーターを用いたときに、吸収体の製造中における、該電動モーターの実効負荷率を低減させることができ、電動モーターをレスポンスの良い適正な範囲で使用することが容易となり、より安定した変速制御が行える等にある。なお、第2の送り装置6Cの駆動手段は、電動モーター、特にサーボモーターが好ましい。第1の送り装置6Bの駆動手段も、電動モーター、特にサーボモーターが好ましい。
【0034】
また、原料シート31Aのバタつきの変位を確実に低減し、供給量を更に安定させる観点から、第1の送り装置6Bによる原料シート31Aの送り速度は、第2の送り装置6Cによる原料シート31Aの送り速度の平均速度よりも速くすることが好ましい。
第2の送り装置6Cによる原料シート31Aの供給速度の平均速度とは、第2の送り装置6Cの送り速度の、集積用凹部の通過周期の1周期分の積分値を、通過周期の1周期分の時間で除して得られる速度である。
例えば、図3(b)においては、集積用凹部の通過周期の1周期分の積分値はVTであり、通過周期の1周期分の時間はTで除して得られる、平均速度はVである。
同様の観点から、第1の送り装置6Bによる原料シート31Aの送り速度は、第2の送り装置6Cによる原料シート31Aの供給速度の平均速度の100%超110%以下とすることが好ましく、より好ましくは100.1%超110%以下、更に好ましくは100.5%以上105%以下である。
【0035】
集積用凹部の通過周期の一周期Tの具体的な時間的長さは、特に制限されないが、吸収体の高速生産の観点から一例を挙げれば、例えば、0.3秒以下が好ましく、より好ましくは0.1秒以下である。また、第1の送り装置による原料シートの送り速度は、特に制限されないが、吸収体の高速生産の観点から一例を挙げれば、例えば、100m/分以上が好ましく、より好ましくは200m/分以上である。
このような場合に、原料シートの変動が起こりやすく、原料シート31Aの供給量のバラツキ等の不都合が生じやすいが、本発明の方法及び装置によれば、そのような不都合を防止又は軽減することができる。
【0036】
同様の観点から、第2の送り装置6Cによる原料シート31Aの送り速度を相対的に遅くするステップにおいては、第1の送り装置6Bと第2の送り装置6Cとの間における原料シートが、下向きに凸の円弧状に撓んだ状態となることが好ましく、その場合には、第1の送り装置6Bと第2の送り装置6C間のシート走行部の下部には受け板を設置するのが好ましい。
【0037】
なお、製造された吸収体3における繊維材料の偏在状態を、表面変位計測計等により監視し、その偏在状態が所望の状態ではない場合は、集積用凹部の通過周期と第2の送り装置における原料シートの送り速度を変化させる周期との位相を調整して、繊維材料が所望の状態に偏在した吸収体が得られるように修正することが好ましい。
【0038】
吸収体3又は芯部が吸収体3から構成された吸収体30は、吸収性物品の吸収体として好ましく用いられる。吸収性物品は、主として尿、経血等の身体から排泄される体液を吸収保持するために用いられるものである。吸収性物品には、例えば使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、パンティライナー等が包含されるが、これらに限定されるものではなく、人体から排出される液の吸収に用いられる物品を広く包含する。
【0039】
また吸収体3又は芯部が吸収体3から構成された吸収体30は、吸収体3が、相対的に高坪量の高坪量部33と相対的に低坪量の低坪量部34とを含み、吸収体材料の堆積量が部分的に異なっている。使い捨ておむつに用いられる吸収体としては、高坪量部33が着用者の前側、低坪量部34が着用者の後ろ側に位置するように、吸収性物品に組み込まれて使用されることが、吸収体の性能を最大限発揮させる点で好ましい。
また、吸収体3内に繊維材料の坪量が異なる高坪量部及び低坪量部を有することは、例えば、必要な部分に高い吸収容量を確保し易い一方、必要性に劣る部分の吸収容量を減らして、全体としての原料の使用量を軽減する観点からも好ましい。なお、吸収体3は、被覆シート35,36で被覆することなく、吸収性物品の吸収体として用いることもできる。
【0040】
製造する吸収体3は、図5(b)又は図5(ca)に示す形態のものであっても良い。また、図6(a)又は図6(b)に示す形態のものであっても良い。
図5(b)に示す吸収体は、回転ドラム2の周方向に対応する長手方向3Xの中央部に、繊維材料の坪量が最も多い高坪量部33を有し、長手方向3Xにおける高坪量部33に、繊維材料の坪量が最も少ない低坪量部34を有している。図5(c)に示す吸収体は、図4及び図5(a)に示す吸収体と同様に、回転ドラム2の周方向に対応する長手方向3Xの一方の側に、繊維材料の坪量が最も多い高坪量部33を有し、他方の側に、繊維材料の高坪量部33より少ない低坪量部34を有しているが、高坪量部33と低坪量部34の位置が逆になっている。
【0041】
図6(a)に示す吸収体は、回転ドラム2の周方向に対応する長手方向3Xの中央部に、繊維材料の坪量が最も多い高坪量部33を有し、長手方向3Xの一端側に、繊維材料の坪量が最も少ない低坪量部34を有し、長手方向3Xの他端側に、繊維材料の坪量が、高坪量部33より少なく低坪量部34より多い中間坪量部38を有している。
図6(b)に示す吸収体は、回転ドラム2の周方向に対応する長手方向3Xに、相互に離間した状態に複数の高坪量部33が形成されている。図6(b)に示す吸収体は、2つの高坪量部33以外の3箇所が何れも繊維材料の坪量が最も少ない低坪量部34となっているが、3箇所のうちの1又は2箇所を、繊維材料の坪量が高坪量部33より少なく低坪量部34より多い中間坪量部38とすることもできる。
【0042】
繊維材料31の供給量の変化を、吸収体3中の繊維材料の坪量差につなげる観点から、ダクト開口部のドラム周方向の長さは、集積用凹部22のドラム周方向の長さに対する比が、好ましくは2.0以下、更に好ましくは1.5以下である。また、繊維材料の堆積速度とダクト4内における同材料の空気輸送速度との大小関係の観点から、前記比は、好ましくは0超であり、更に好ましくは0.1以上である。
ダクト開口部のドラム周方向の長さは、図3(d)に示すように、ダクト4の回転ドラム側の開口部4eの、回転ドラムの周方向に沿う方向の両端4f,4r間の長さであり、回転ドラムの外周面に沿って測定する。集積用凹部22のドラム周方向の長さは、集積用凹部22の、回転ドラムの周方向に沿う方向の両端f,r間の長さであり、回転ドラムの外周面に沿って測定する。
【0043】
また本発明で製造する吸収体は、繊維材料の坪量が最も低い部分の坪量に対する、繊維材料の坪量が最も多い部分の坪量の比が、好ましくは1.5以上、更に好ましくは2以上であり、好ましくは30以下である。また、繊維材料の坪量が最も低い部分の坪量は、吸収体強度の観点から、好ましくは100g/m2以上3000g/m2以下である。
繊維材料の坪量が最も多い部分と、繊維材料の坪量が最も低い部分の坪量は、下記のようにして求める。即ち、図7に示すように、吸収体3の長手方向3Xの一端3aから30mm間隔で、幅方向3Yに沿う直線Cを引き、その直線Cを境界として吸収体3を複数の部分3A〜3Fに分割し、その分割部分のそれぞれについて面積及び含まれる繊維材料の質量を求める。そして、求めた質量及び面積から坪量を算出し、算出した坪量が最も高い分割部分の坪量を、繊維材料の坪量が最も多い部分の坪量とし、算出した坪量が最も少ない分割部分の坪量を、繊維材料の坪量が最も少ない部分の坪量とする。なお、図7に点線で示すように、吸収体3が、最後に引いた直線Ceから30mm未満の長さで延出する部分3Gを有する場合、その直線Ceでは分割せずに、該部分3Gをその前の部分3Fの一部として、該部分3Fの坪量を算出する。吸収体3の長手方向3Xの一端3aは、吸収性物品の吸収体である場合、着用者の前後方向の腹側(前側)に近い方の一端とする。着用者の前後との関係が不明の場合は、集積用凹部22の回転方向前端fに対応する一端とし、それも不明である場合は、長手方向の任意の一端を一端とする。
【0044】
本実施形態の方法においては、ダクト4に、繊維材料31を供給するのに加えて、吸水性ポリマー32を供給することも好ましい。吸水性ポリマー32は、例えば、前述した散布管55から投入し、繊維材料31を搬送する空気流中に供給する。
吸水性ポリマー32は、単位時間当たりの供給量(質量)を一定にして連続的に供給することもできる。吸水性ポリマー32を連続的に供給しても、吸水性ポリマー32は、繊維材料31を搬送する空気流のなかの繊維材料の濃度が高い部分に濃度の低い部分に比して多く吸水性ポリマー32が絡まる為、相対的に多い量が含まれる。そのため、吸収体3として、繊維材料の坪量が相対的に多い部分に、繊維材料の坪量が相対的に少ない部分より多くの吸水性ポリマーを有する吸収体が得られる。本実施形態の製造方法又は製造装置によれば、吸水性ポリマー32の供給装置に供給量を変化させる手段を設けなくても、吸水性ポリマーが偏在した吸収体が得られる。
【0045】
また、吸水性ポリマー32は、単位時間当たりの供給量(質量)を周期的に変化させて供給することもできる。その場合、繊維材料の供給と同様に、吸水性ポリマーを供給するステップと、吸水性ポリマーを供給しないステップとを繰り返すパターンで供給しても良いし、吸水性ポリマーを相対的に多く供給するステップと、吸水性ポリマーを相対的に少量供給するステップとを繰り返すパターンで供給しても良い。いずれも場合も、集積用凹部の通過周期に合わせて、吸水性ポリマーの供給量を周期的に変化させることが好ましい。集積用凹部の通過周期に合わせる態様としては、繊維材料の堆積量が多い部位に吸水性ポリマーも多く堆積させ、繊維材料の堆積量が少ない部位に吸水性ポリマーも少なく堆積させるか又は堆積させないことが好ましいが、これに限られるものではない。吸水性ポリマーの供給量を周期的に変化させる場合、吸水性ポリマーを供給する装置は、空気流に対する前記吸水性ポリマーの単位時間当たりの供給量を周期的に変化させる制御部を具備することが好ましい。吸水性ポリマーを供給する装置の制御部は、製造装置1の制御部8が兼ねていてもよいし、製造装置1の制御部8とは別に設けたものであってもよい。
【0046】
本発明の製造方法及び製造装置においては、原料シート31Aの原反ロール31Rと第2の送り装置6Cとの間に、原料シート31Aを一定の速度で下流に送る第1の送り装置6Bを複数配置することも好ましい。第1の送り装置6Bを複数配置することで、原料シート31Aをより安定的に搬送することができ、シートのバタつきの一層の抑制を期待できる。
原料シート31Aを一定の速度で下流に送る第1の送り装置6Bを複数配置する場合、それらの第1の送り装置6Bどうしは、原料シート31Aの送り速度が同じであっても異なっていても良いが、原料シートのバタつきの変位を確実に防止し、供給量を更に安定させる観点から、第2の送り装置6Cにより近い方の第1の送り装置の送り速度が、第2の送り装置6Cから遠い方の第1の送り装置の送り速度よりも速いか、もしくは同等であることが好ましい。
【0047】
本発明の製造方法及び製造装置において、原反ロール31Rから第1の送り装置6Bまでの距離D1は、原反ロール31Rから第2の送り装置6Cまでの距離D2の半分以上であることが好ましい。第2の送り装置6Cと第1の送り装置6Bとの間の距離が、原反ロール31Rから第1の送り装置6Bまでの距離より長いよりも短い方が、原料シート31Aのばたつきを軽減又は防止する効果に優れている。同様の観点から、前記距離D1は、前記距離D2に対する割合が、百分率で、50%以上90%以下であることがより好ましく、更に好ましくは60%以上80%以下である。
ここで、原反ロール31Rから第1の送り装置6Bまでの距離D1とは、原反ロール31Rの原料シート31Aが巻き出される位置P6から、巻き出された原料シート31Aが第1の送り装置6Bの原料シート搬送用のロール、即ち前述したニップロール62に最初に接触する位置までの距離であり、該距離は、原料シートにたわみが生じないものとして、原料シート31Aの搬送経路に沿って測定する。また、原反ロール31Rから第2の送り装置6Cまでの距離D2とは、原反ロール31Rの原料シート31Aが巻き出される位置P6から、原料シート31Aが第2の送り装置6Cの原料シート搬送用のロール、即ち前述したニップロール64に最初に接触する位置までの距離であり、原料シートにたわみが生じないものとして、原料シートの搬送経路に沿って測定する。
【0048】
原料シート31Aの原反ロール31Rと第2の送り装置6Cとの間に、原料シート31Aを一定の速度で下流に送る第1の送り装置6Bを複数配置する場合、原反ロール31Rから第1の送り装置6Bまでの間に設置することが好ましい。また、この場合においても、原反ロール31Rから、第2の送り装置6Cの上流側に隣接して位置する第1の送り装置6Bまでの距離を距離D1とした場合、原反ロール31Rから第2の送り装置6Cまでの距離D2の半分以上であることが好ましい。
なお、第1の送り装置6Bと第2の送り装置6Cとの間の距離は、500mm以上であることが好ましく、より好ましくは1000mm以上であり、また5000mm以下であることが好ましく、より好ましくは3000mm以下である。
【0049】
吸収性物品は、典型的には、表面シート、裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を具備している。吸収体は、上下面が一枚又は複数枚の被覆シートに被覆されていても良い。裏面シートは水蒸気透過性を有していても有しなくても良い。吸収性物品は更に、該吸収性物品の具体的な用途に応じた各種部材を具備していてもよい。そのような部材は当業者に公知である。例えば吸収性物品を使い捨ておむつ、生理用ナプキンに適用する場合には、着用者の前後方向と一致する長手方向の両側部に一対又は二対以上の立体ガードを配置することができる。
【0050】
本発明で用いる繊維材料及び吸水性ポリマーとしては、従来、生理用ナプキンやパンティライナー、使い捨ておむつ等の吸収性物品の吸収体に用いられている各種のものを特に制限なく用いることができる。例えば、パルプ繊維、レーヨン繊維、コットン繊維等のセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン等の合成繊維の短繊維等が用いられる。これらの繊維は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、繊維材料は、全体又は一部がパルプ繊維であることが好ましく、繊維材料中のパルプ繊維の割合は50〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは80〜100質量%であり、更に好ましくは100質量%である。尚、ダクト内には、繊維材料以外に、消臭剤や抗菌剤等を必要に応じ供給してよい。また、吸水性ポリマーは、供給しても供給しなくても良い。
【0051】
吸水性ポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、ポリアクリル酸ナトリウム架橋体、(でんぷん−アクリル酸)グラフト共重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物、ポリアスパラギン酸等が挙げられる。繊維及び吸水性ポリマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
以上、本発明の吸収体の製造方法及び製造装置の一実施態様について説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されず、それぞれ適宜変更可能である。
例えば、図1に示す吸収体の製造装置の回転ドラムにおいては、吸収性物品1個分の吸収体を形成する集積用凹部が、回転ドラムの周方向に間隔を開けて複数形成されていたが、本発明の吸収体の製造方法又は製造装置に使用する回転ドラムは、周方向に連続する集積用凹部を有し、吸収性物品複数個分の吸収体が連なった連続吸収体を形成するものであっても良い。
また、図1に示す吸収体の製造装置1における集積用凹部は、底面全体に均一な吸引力を生じるものであったが、底面に、相対的に高い吸引力を生じる領域と相対的に低い吸引力を生じる領域とを有する集積用凹部であっても良い。例えば、本発明の方法及び装置と、特許文献1に記載の方法と組み合わせることも出来る。即ち、集積用凹部22の底面に、開口面積率の高い第1吸引領域と第1吸引領域よりも開口面積率の低い第2吸引領域を設け、これら両吸引領域に前記繊維材料を堆積させることもできる。
また、ダクトに、繊維材料を供給する一方、吸水性ポリマーを供給せずに、吸水性ポリマーを含まない吸収体を製造しても良い。
【符号の説明】
【0053】
1 吸収体の製造装置
2 回転ドラム
2f 外周面
22 集積用凹部
3 吸収体
31 繊維材料
31A 原料シート
31R 原料シートの原反ロール
32 吸水性ポリマー
33 高坪量部
34 低坪量部
30 被覆シートを有する吸収体
4 ダクト
5 繊維材料供給部
51 解繊機
6A 原反ロール保持部
6B 第1の送り装置
6C 第2の送り装置
7 バキュームコンベア
7A ベルトコンベア
8 制御部
9 切断装置
91 カッターロール
92 切断刃
93 アンビルロール
10 離型用エアブロー装置
55 吸水性ポリマーの散布管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7