特許第6774331号(P6774331)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774331
(24)【登録日】2020年10月6日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】熱変色性筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 24/08 20060101AFI20201012BHJP
   B43K 29/02 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   B43K24/08 110
   B43K29/02 F
   B43K24/08 150
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-256741(P2016-256741)
(22)【出願日】2016年12月28日
(65)【公開番号】特開2018-108669(P2018-108669A)
(43)【公開日】2018年7月12日
【審査請求日】2019年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】飯島 達也
【審査官】 金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−037087(JP,A)
【文献】 特開2013−184477(JP,A)
【文献】 特開2008−168443(JP,A)
【文献】 特開2012−223950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 21/00 − 21/26
24/00 − 24/18
27/00 − 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記体の内部に熱変色性インキを収容し、前記筆記体の前端に前記熱変色性インキが吐出可能なペン先を設け、前記筆記体を軸筒内に前後方向に移動可能に収容し、前記軸筒の後端孔より後方にノック部材を突出させ、前記ノック部材を前方に押圧することによりペン先を軸筒の前端孔から突出状態にし、再度、前記ノック部材を前方に押圧することにより前記ペン先突出状態を解除しペン先を軸筒の前端孔より軸筒内に没入状態にする出没機構を備え、前記ノック部材の後端部外面に、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱変色可能な摩擦部を設けた熱変色性筆記具であって、
前記出没機構が、前記軸筒内面に形成され、円周方向に沿って交互に配置された前後方向に延びる複数のカム歯及びカム溝と、前記筆記体の後方に前記軸筒に対して回転可能に配置され、前記カム歯または前記カム溝に交互に係合可能な複数の突条を有する回転部材と、前記回転部材の後方に、前記軸筒に対して回転不能且つ前後方向に移動可能に配置され、前記回転部材を回動させる複数のカム突起を有するとともに前記軸筒内面のカム溝に前後動自在に係合される複数の係合突起を有するカム部材と、前記カム部材を前方に押圧するノック部材と、前記筆記体を後方に付勢する弾発体と、を備え、
前記軸筒の後端孔の開口部内面の横断面形状を非円形状とするとともに、
前記ノック部材の側壁に、前記後端孔に挿入可能な規制壁部が形成され、前記規制壁部の外面の横断面形状を、前記後端孔の内面の形状に対応した非円形状とし、
前記ノック部材の規制壁部が前記後端孔内にあるとき、前記ノック部材の前方への押圧操作が可能となり、
前記ノック部材の規制壁部が前記後端孔の開口部より後方に位置されたとき、前記ノック部材が前記軸筒に対して回転可能となり、
前記ノック部材が前記軸筒に対して回転操作され、前記ノック部材の規制壁部の前端が前記軸筒の後端孔の開口縁部に当接された状態のとき、前記ノック部材の前方移動が阻止されることを特徴とする熱変色性筆記具。
【請求項2】
前記ノック部材が前記軸筒に対して前方に付勢され、前記ノック部材の規制壁部が前後方向に移動可能に前記後端孔内に配置される請求項1記載の熱変色性筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱変色性筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1には、筆記体の内部に熱変色性インキを収容し、前記筆記体の前端に前記熱変色性インキが吐出可能なペン先を設け、前記筆記体を軸筒内に前後方向に移動可能に収容し、前記軸筒の後端部にノック体を設け、前記ノック体を前方に押圧することによりペン先を軸筒の前端孔から突出状態にし、再度、前記ノック体を前方に押圧することにより前記ペン先突出状態を解除しペン先を軸筒の前端孔より軸筒内に没入状態にする出没機構を備え、前記ノック体の後端部外面に、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱変色可能な摩擦体を設け、前記摩擦体に係合部を設けるとともに前記摩擦体の係合部と係合可能な被係合部を設け、前記摩擦体を用いた摩擦操作の際、前記係合部と前記被係合部とを係合させ、軸筒に対する摩擦体の前後方向の移動を阻止してなることを特徴とする熱変色性筆記具が開示されている。
【0003】
さらに、特許文献1には、ペン先突出状態において、前記摩擦体の係合部と前記軸筒の係合部(L字状の溝の周方向に延びる溝)に係合させ、軸筒に対する摩擦体の前後方向の移動を阻止してなる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−37087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1の熱変色性筆記具は、ペン先突出状態で摩擦体の前後方向の移動を阻止してなり、ペン先没入状態では、摩擦体の前後方向の移動を阻止については考慮されていない。そのため、ペン先没入状態では摩擦体を用いた安定した摩擦操作が困難であるとともに、非使用時にノック体を不用意に押圧してペン先を誤って突出状態にさせるおそれがある。
【0006】
本発明は、前記従来の問題点を解決するものであって、ペン先没入状態及びペン先突出状態のいずれであっても、摩擦体を用いた安定した摩擦操作が可能であり、しかも非使用時にノック部材を不用意に押圧してペン先を誤って突出状態にさせることを回避できる熱変色性筆記具を提供しようとするものである。
【0007】
尚、本発明において、「前」とはペン体側を指し、「後」とはその反対側を指す。尚、本発明で、「ペン先没入状態」とは、ペン先が軸筒内に没入した状態をいい、「ペン先突出状態」とは、ペン先が軸筒の前端より外部に突出した状態をいう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の第1の発明に係る熱変色性筆記具1は、筆記体3の内部に熱変色性インキを収容し、前記筆記体3の前端に前記熱変色性インキが吐出可能なペン先31を設け、前記筆記体3を軸筒2内に前後方向に移動可能に収容し、前記軸筒2の後端孔22より後方にノック部材6を突出させ、前記ノック部材6を前方に押圧することによりペン先31を軸筒2の前端孔21から突出状態にし、再度、前記ノック部材6を前方に押圧することにより前記ペン先突出状態を解除しペン先31を軸筒2の前端孔21より軸筒2内に没入状態にする出没機構を備え、前記ノック部材6の後端部外面に、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱変色可能な摩擦部8を設けた熱変色性筆記具であって、
前記出没機構が、前記軸筒2内面に形成され、円周方向に沿って交互に配置された前後方向に延びる複数のカム歯24及びカム溝25と、前記筆記体3の後方に前記軸筒2に対して回転可能に配置され、前記カム歯24または前記カム溝25に交互に係合可能な複数の突条41を有する回転部材4と、前記回転部材4の後方に、前記軸筒2に対して回転不能且つ前後方向に移動可能に配置され、前記回転部材4を回動させる複数のカム突起51を有するとともに前記軸筒2内面のカム溝25に前後動自在に係合される複数の係合突起52を有するカム部材5と、前記カム部材5を前方に押圧するノック部材6と、前記筆記体3を後方に付勢する弾発体7と、を備え、
前記軸筒2の後端孔22の開口部内面の横断面形状を非円形状とするとともに、
前記ノック部材6の側壁に、前記後端孔22に挿入可能な規制壁部61が形成され、前記規制壁部61の外面の横断面形状を、前記後端孔22の内面の形状に対応した非円形状とし、
前記ノック部材6の規制壁部61が前記後端孔22内にあるとき、前記ノック部材6の前方への押圧操作が可能となり、
前記ノック部材6の規制壁部61が前記後端孔22の開口部より後方に位置されたとき、前記ノック部材6が前記軸筒2に対して回転可能となり、
前記ノック部材6が前記軸筒2に対して回転操作され、前記ノック部材6の規制壁部61の前端が前記軸筒2の後端孔22の開口縁部に当接された状態のとき、前記ノック部材6の前方移動が阻止されることを要件とする。
【0009】
本願の第1の発明に係る熱変色性筆記具1は、前記構成により、ペン先没入状態及びペン先突出状態のいずれであっても、摩擦体を用いた安定した摩擦操作が可能であり、しかも非使用時にノック部材6を不用意に押圧してペン先31を誤って突出状態にさせることを回避できる。
【0010】
本願の第2の発明に係る熱変色性筆記具1は、前記本願の第1の発明に係る熱変色性筆記具1において、前記ノック部材6が前記軸筒2に対して前方に付勢され、前記ノック部材6の規制壁部61が前後方向に移動可能に前記後端孔22内に配置されることを要件とする。
【0011】
本願の第2の発明に係る熱変色性筆記具1は、前記構成により、通常の筆記使用時(非摩擦操作時)において、規制壁部61が常時、後端孔22内に配置されるため、摩擦部8を用いて摩擦操作するとき以外に、不用意に、規制壁部61の前端が後端孔22の開口縁部より後方に位置され、ノック部材6の規制壁部61の前端と後端孔22の開口縁部とが当接されることを回避できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の熱変色性筆記具は、ペン先没入状態及びペン先突出状態のいずれであっても、摩擦体を用いた安定した摩擦操作が可能であり、しかも非使用時にノック部材を不用意に押圧してペン先を誤って突出状態にさせることを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態の非摩擦操作時のペン先没入状態を示す縦断面図である。
図2図1の要部拡大縦断面図である。
図3図1の摩擦操作時のペン先没入状態を示す縦断面図である。
図4図3の要部拡大縦断面図である。
図5図1の非摩擦操作時のペン先突出状態を示す縦断面図である。
図6図5の要部拡大縦断面図である。
図7図1の摩擦操作時のペン先突出状態を示す縦断面図である。
図8図7の要部拡大縦断面図である。
図9】(a)は、図1のノック部材6が前後方向に移動可能な状態を示す要部斜視図であり、(b)は、図1のノック部材6の前後方向の移動が阻止された状態を示す要部斜視図である。
図10図1の出没機構を示す分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の熱変色性筆記具1の実施の形態を図面に従って説明する。(図1乃至図10参照)
【0015】
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、軸筒2と、該軸筒2内に収容される筆記体3と、該筆記体3のペン先31を軸筒2の前端孔21より出没自在にさせる出没機構とを備える。前記軸筒2は、円筒状の前軸2aと、該前軸2aの後端に連結される円筒状の中間軸2bと、該中間軸2bの後端に連結される円筒状の後軸2cとからなる。
【0016】
・前軸
前軸2aは、先細円筒状の合成樹脂の成形体である。前軸2aの前端には前端孔2131が前後方向に貫設される。前軸2aの側面には弾性材料からなる把持部が形成される。前軸2aの後端開口部外面には、オネジ部が一体に形成される。
【0017】
・中間軸
前記中間軸2bは、円筒状の合成樹脂の成形体である。前記中間軸2bの内面には、カム部が一体に形成される。中間軸2bの後端開口部の内面には、段部23が形成される。
【0018】
・後軸
前記後軸2cは、円筒状の合成樹脂の成形体である。前記後軸2cの後端には、後端孔22が前後方向に貫設される。前記後軸2cの側壁外面には、軸筒2外面とポケット等を挟持可能な前後方向に延びるクリップが設けられる。前記クリップは、後軸4の側壁外面に一体に形成されるか、または別部材の取り付けにより設けられる。
【0019】
後軸2cの後端孔22の内面の横断面形状は、正六角形の形状を有する。後端孔22の内面の横断面形状は、非円形状であれば、何れの形状であってもよく、例えば、正三角形、正四角形等の正多角形のほか、楕円形状であってもよい。
【0020】
・筆記体
筆記体3は、ペン先31と、該ペン先31が前端開口部に圧入固着されたインキ収容管32と、該インキ収容管内32に充填される熱変色性インキと、該熱変色性インキの後端に充填され且つ該熱変色性インキの消費に伴い前進する追従体(例えば高粘度流体)とからなる。
【0021】
前記ペン先31は、例えば、前端に回転可能にボールを抱持した金属製のボールペンのみからなる構成、または前記ボールペンチップの後部外面を保持した合成樹脂製のペン先ホルダーからなる構成のいずれであってもよい。また、前記インキ収容管32の後端開口部に、インキ収容管32と外部とが通気可能な通気孔を備えた尾栓を取り付けてもよい。
【0022】
・出没機構
出没機構(図10参照)は、回転カム機構を用いたノック式出没機構であり、前記軸筒2内面に形成され、円周方向に沿って交互に配置された前後方向に延びる複数のカム歯24及びカム溝25と、前記筆記体3の後端に当接され且つ前記軸筒2に対して回転可能に配置され、前記カム歯24または前記カム溝25に交互に係合可能な複数の突条41を有する回転部材4と、前記回転部材4の後方に、前記軸筒2に対して回転不能且つ前後方向に移動可能に配置され、前記回転部材4を回動させる複数のカム突起51を有するとともに前記軸筒2内面のカム溝25に前後動自在に係合される複数の係合突起52を有するカム部材5と、前記カム部材5を前方に押圧するノック部材6と、前記筆記体3を後方に付勢する弾発体7(例えば圧縮コイルスプリング)とからなる。出没機構は、ペン先突出操作及びペン先没入操作のいずれもがノック部材6を前方に押圧する操作のダブルノック式である。
【0023】
・回転部材
回転部材4は、その外面に長手方向に延びる3本の突条41を備え、該突条41がカム溝25と係合される。回転部材4は、円筒状の合成樹脂の成形体である。回転部材4の内壁に、常時、筆記体3の後端が当接される。
【0024】
・カム部材
カム部材5は、円筒状の合成樹脂の成形体である。カム部材5の前端部に、カム溝25内を摺動する係合突起52と、回転部材4の突条41の後端と係合するカム突起51とが設けられる。
【0025】
・ノック部材
ノック部材6が、筒状体であり、前方に開口する前側筒部と、後方に開口する後側筒部とを備える。前側筒部の開口部には、回転部材4の後端部が挿入される。前側筒部の外面には、
径方向外方に突出する係止壁部62が形成される。係止壁部62にノック部材用弾発体9の前端が係止される。後側筒部の開口部には、弾性材料(例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂、SEBS樹脂等)よりなる摩擦部8が固着される。
【0026】
ノック部材6の側壁外面には、後端孔22に挿入可能な規制壁部61が形成される。規制壁部61の外面の横断面形状が、後端孔22の内面の横断面形状と対応し、正六角形状を有する。規制壁部61の外面横断面形状は、非円形状であれば、何れの形状であってもよく、六角形状以外に、例えば、正三角形、正四角形等の正多角形のほか、楕円形状であってもよい。また、摩擦部8の外面の横断面形状が、後端孔22の内面の横断面形状と対応し、六角形状を有する。それにより、摩擦部8が規制壁部61の一部となり、後端孔22に挿入可能である。規制壁部61の外面の横断面形状が非円形状または多角形状を有するため、規制壁部61を指でつまんで回転操作することが容易となる。
【0027】
・ノック部材用弾発体
ノック部材6は、ノック部材用弾発体9(例えば圧縮コイルスプリング)により、前方付勢される。ノック部材用弾発体9の弾発力は、筆記体3を後方に付勢する弾発体7の弾発力より小さく設定される。ノック部材用弾発体9の前端は、ノック部材6の係止壁部62に係止され、ノック部材用弾発体9の後端は、軸筒2(後軸2c)の後端部の内壁に係止される。ノック部材6がノック部材用弾発体9の前方付勢されることにより、ノック部材6とカム部材5とが常時前後方向に当接状態にされる。
【0028】
・ノック部材の規制壁部の作動
図1図2図5及び図6に、ノック部材6の前方への押圧操作可能状態を示す。
この状態において、規制壁部61が後端孔22内に前後方向移動可能に配置される。ペン先31の出没操作が可能である。
【0029】
図3図4図7及び図8に、ノック部材6の前方への押圧操作が阻止された状態を示す。
この状態は、前記図1図2図5及び図6の状態から、ノック部材6を軸筒2に対してノック部材用弾発体9の後方付勢に抗して後方に引くと同時に回転させることにより得る。この状態において、規制壁部61の前端が後端孔22の開口縁部に当接され、ノック部材6の前方移動が阻止される。それにより、摩擦部8を用いた安定した摩擦操作が可能となる。
【0030】
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、筆記体3の内部に熱変色性インキを収容し、前記筆記体3の前端に前記熱変色性インキが吐出可能なペン先31を設け、前記筆記体3を軸筒2内に前後方向に移動可能に収容し、前記軸筒2の後端孔22より後方にノック部材6を突出させ、前記ノック部材6を前方に押圧することによりペン先31を軸筒2の前端孔21から突出状態にし、再度、前記ノック部材6を前方に押圧することにより前記ペン先突出状態を解除しペン先31を軸筒2の前端孔21より軸筒2内に没入状態にする出没機構を備え、前記ノック部材6の後端部外面に、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で前記熱変色性インキの筆跡を熱変色可能な摩擦部8を設けた熱変色性筆記具であって、前記出没機構が、前記軸筒2内面に形成され、円周方向に沿って交互に配置された前後方向に延びる複数のカム歯24及びカム溝25と、前記筆記体3の後方に前記軸筒2に対して回転可能に配置され、前記カム歯24または前記カム溝25に交互に係合可能な複数の突条41を有する回転部材4と、前記回転部材4の後方に、前記軸筒2に対して回転不能且つ前後方向に移動可能に配置され、前記回転部材4を回動させる複数のカム突起51を有するとともに前記軸筒2内面のカム溝25に前後動自在に係合される複数の係合突起52を有するカム部材5と、前記カム部材5を前方に押圧するノック部材6と、前記筆記体3を後方に付勢する弾発体7と、を備え、前記軸筒2の後端孔22の開口部内面の横断面形状を非円形状とするとともに、前記ノック部材6の側壁に、前記後端孔22に挿入可能な規制壁部61が形成され、前記規制壁部61の外面の横断面形状を、前記後端孔22の内面の形状に対応した非円形状とし、前記ノック部材6の規制壁部61が前記後端孔22内にあるとき、前記ノック部材6の前方への押圧操作が可能となり、前記ノック部材6の規制壁部61が前記後端孔22の開口部より後方に位置されたとき、前記ノック部材6が前記軸筒2に対して回転可能となり、前記ノック部材6が前記軸筒2に対して回転操作され、前記ノック部材6の規制壁部61の前端が前記軸筒2の後端孔22の開口縁部に当接された状態のとき、前記ノック部材6の前方移動が阻止される。
【0031】
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、前記構成により、前記構成により、ペン先没入状態及びペン先突出状態のいずれであっても、摩擦体を用いた安定した摩擦操作が可能であり、しかも非使用時にノック部材6を不用意に押圧してペン先31を誤って突出状態にさせることを回避できる。
【0032】
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、前記ノック部材6が前記軸筒2に対して前方に付勢され、前記ノック部材6の規制壁部61が前後方向に移動可能に前記後端孔22内に配置される。それにより、通常の筆記使用時において、規制壁部61が常時、後端孔22内に配置されるため、摩擦部8を用いて摩擦操作するとき以外に、不用意に、規制壁部61の前端が後端孔22の開口縁部より後方に位置され、ノック部材6の規制壁部61の前端と後端孔22の開口縁部とが当接されることを回避できる。
【符号の説明】
【0033】
1 熱変色性筆記具
2 軸筒
21 前端孔
22 後端孔
23 段部
24 カム歯
25 カム溝
2a 前軸
2b 中間軸
2c 後軸
3 筆記体
31 ペン先
32 インキ収容管
4 回転部材
41 突条
5 カム部材
51 カム突起
52 係合突起
6 ノック部材
61 規制壁部
62 係止壁部
7 弾発体
8 摩擦部
9 ノック部材用弾発体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10