(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上流側では曝気量の増減制御を行い、下流側では曝気のON−OFF制御を実施する上記従来の技術では、曝気のON−OFF制御がなされる下流側の区画において亜硝酸型硝化反応と嫌気性アンモニア酸化反応とを同時にバランス良く起こすことができず(曝気のON時には亜硝酸型硝化反応が優勢になる一方で曝気のOFF時には嫌気性アンモニア酸化反応が優勢になり)、全体として窒素除去速度を十分に高めることができなかった。
【0007】
そこで、本発明は、窒素除去速度に優れる窒素除去システムおよび窒素除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の窒素除去システムは、窒素含有排水から窒素を除去する窒素除去システムであって、第1反応槽と、前記第1反応槽の下流側に直列接続された第2反応槽とを備え、前記第1反応槽および前記第2反応槽は、それぞれ、反応槽内を曝気する曝気装置を有し、前記第1反応槽および前記第2反応槽には、それぞれ、亜硝酸型硝化細菌と嫌気性アンモニア酸化細菌との少なくとも2種を優占種として含む微生物膜を担持させた担体が充填されており、前記第2反応槽内に有機炭素を添加する炭素源供給機構と、前記第1反応槽の曝気量および前記第2反応槽の曝気量を制御する制御装置とを更に備え、前記制御装置は、前記第1反応槽では、第1反応槽から流出する第1反応槽流出水のアンモニア性窒素(NH
4−N)濃度、亜硝酸性窒素(NO
2−N)濃度および硝酸性窒素(NO
3−N)濃度の一つ以上を計測し、下記(a)と(b)と(c)との組み合わせ、下記(a)と(c)との組み合わせ、下記(b)と(c)との組み合わせ、下記(d)単独および下記(e)単独からなる群より選択される何れかの基準を用いて曝気量の調整を行い、前記第2反応槽では、第2反応槽から流出する第2反応槽流出水のアンモニア性窒素(NH
4−N)濃度、亜硝酸性窒素(NO
2−N)濃度および硝酸性窒素(NO
3−N)濃度の一つ以上を計測し、下記(a)と(b)と(c)との組み合わせ、下記(a)と(c)との組み合わせ、下記(b)と(c)との組み合わせ、下記(d)単独および下記(e)単独からなる群より選択される何れかの基準を用いて曝気量の調整を行うことを特徴とする。
(a)NO
3−N濃度がある設定値以上になったら曝気量を減少させる。
(b)NO
2−N濃度がある設定値以上になったら曝気量を減少させる。
(c)NH
4−N濃度がある設定値以上になったら曝気量を増加させる。
(d)NO
3−N濃度がある設定値以上になったら曝気量を減少させ、ある設定値以下になったら曝気量を増加させる。
(e)NO
2−N濃度がある設定値以上になったら曝気量を減少させ、ある設定値以下になったら曝気量を増加させる。
このように、有機炭素を第2反応槽に添加すると共に第2反応槽でも曝気量の増減制御を実施することにより、第2反応槽で曝気のON−OFF制御を実施した場合と比較して、窒素除去速度を向上させることができる。
【0009】
ここで、本発明の窒素除去システムは、前記窒素含有排水が有機炭素を含有し、前記炭素源供給機構が前記窒素含有排水を前記第2反応槽に添加することが好ましい。有機炭素源として窒素含有排水を使用すれば、メタノール等の有機炭素源を別途準備して添加する場合と比較し、低コストで窒素除去が可能になるからである。
【0010】
なお、炭素源供給機構が窒素含有排水を第2反応槽に添加する場合、前記第2反応槽の容積は前記第1反応槽の容積よりも大きいことが好ましい。第2反応槽の容積を大きくすれば、担体投入率、有機物負荷および溶解性窒素負荷を容易に調整することができるからである。
【0011】
また、本発明の窒素除去システムは、前記第1反応槽および前記第2反応槽における有機物負荷が、それぞれ、110mg−BOD/m
2−担体/時間以上または40mg−TOC/m
2−担体/時間以上であることが好ましい。有機物負荷を上記範囲内にすれば、担体上に生物膜を良好に形成して窒素除去速度を更に向上させることができるからである。
【0012】
更に、本発明の窒素除去システムは、前記第1反応槽および前記第2反応槽における溶解性窒素負荷が、それぞれ、2.5g/m
2−担体/日以上11.5g/m
2−担体/日以下であることが好ましい。溶解性窒素負荷を上記範囲内にすれば、嫌気性アンモニア酸化反応を良好に進めることができるからである。
【0013】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の窒素除去方法は、窒素含有排水から窒素を除去する窒素除去方法であって、亜硝酸型硝化細菌と嫌気性アンモニア酸化細菌との少なくとも2種を優占種として含む微生物膜を担持させた担体が充填された第1の反応槽において、曝気下、嫌気性アンモニア酸化反応を利用して脱窒を行う第1脱窒工程と、前記第1反応槽の下流側に直列接続され、且つ、亜硝酸型硝化細菌と嫌気性アンモニア酸化細菌との少なくとも2種を優占種として含む微生物膜を担持させた担体が充填された第2の反応槽において、曝気下、嫌気性アンモニア酸化反応を利用して脱窒を行う第2脱窒工程とを含み、前記第2脱窒工程では、前記第2反応槽内に有機炭素を添加しつつ脱窒を行い、前記第1脱窒工程および前記第2脱窒工程では、それぞれ、各反応槽から流出する反応槽流出水のアンモニア性窒素(NH
4−N)濃度、亜硝酸性窒素(NO
2−N)濃度および硝酸性窒素(NO
3−N)濃度の一つ以上を計測し、下記(a)と(b)と(c)との組み合わせ、下記(a)と(c)との組み合わせ、下記(b)と(c)との組み合わせ、下記(d)単独および下記(e)単独からなる群より選択される何れかの基準を用いて曝気量の調整を行うことを特徴とする。
(a)NO
3−N濃度がある設定値以上になったら曝気量を減少させる。
(b)NO
2−N濃度がある設定値以上になったら曝気量を減少させる。
(c)NH
4−N濃度がある設定値以上になったら曝気量を増加させる。
(d)NO
3−N濃度がある設定値以上になったら曝気量を減少させ、ある設定値以下になったら曝気量を増加させる。
(e)NO
2−N濃度がある設定値以上になったら曝気量を減少させ、ある設定値以下になったら曝気量を増加させる。
このように、有機炭素を第2反応槽に添加すると共に第2反応槽でも曝気量の増減制御を実施することにより、第2反応槽で曝気のON−OFF制御を実施した場合と比較して、窒素除去速度を向上させることができる。
【0014】
ここで、本発明の窒素除去方法は、前記窒素含有排水が有機炭素を含有し、前記第2脱窒工程では、前記窒素含有排水を前記第2反応槽に添加することが好ましい。有機炭素源として窒素含有排水を使用すれば、メタノール等の有機炭素源を別途準備して添加する場合と比較し、低コストで窒素除去が可能になるからである。
【0015】
なお、窒素含有排水を第2反応槽に添加する場合、前記第2反応槽の容積は前記第1反応槽の容積よりも大きいことが好ましい。第2反応槽の容積を大きくすれば、担体投入率、有機物負荷および溶解性窒素負荷を容易に調整することができるからである。
【0016】
また、本発明の窒素除去方法は、前記第1反応槽および前記第2反応槽における有機物負荷を、それぞれ、110mg−BOD/m
2−担体/時間以上または40mg−TOC/m
2−担体/時間以上とすることが好ましい。有機物負荷を上記範囲内にすれば、担体上に生物膜を良好に形成して窒素除去速度を更に向上させることができるからである。
【0017】
更に、本発明の窒素除去方法は、前記第1反応槽および前記第2反応槽における溶解性窒素負荷を、それぞれ、2.5g/m
2−担体/日以上11.5g/m
2−担体/日以下とすることが好ましい。溶解性窒素負荷を上記範囲内にすれば、嫌気性アンモニア酸化反応を良好に進めることができるからである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、窒素除去速度に優れる窒素除去システムおよび窒素除去方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。
ここで、本発明の窒素除去システムおよび窒素除去方法は、少なくともアンモニア性窒素を含有し、任意に亜硝酸性窒素、硝酸性窒素および有機性窒素などのその他の窒素を更に含有し得る窒素含有排水の処理に用いることができる。具体的には、本発明の窒素除去システムおよび窒素除去方法は、特に限定されることなく、例えば、下水、し尿、食品排水、工場排水、その他の産業排水等の窒素含有排水の処理に用いることができる。
なお、本発明の窒素除去システムおよび窒素除去方法で処理される窒素含有排水は、有機物などの有機炭素を更に含有していることが好ましい。
【0021】
(窒素除去システム)
図1に、本発明の窒素除去システムの一例の概略構成を示す。
図1に示す窒素除去システム100は、一次処理装置10と、一次処理装置10の下流側に設けられた第1反応槽20と、第1反応槽20の下流側に設けられた第2反応槽30と、曝気装置のブロア22,32の動作を制御する制御装置40とを備えている。
【0022】
<一次処理装置>
ここで、一次処理装置10からは、被処理水としての窒素含有排水が流出する。具体的には、
図1に示す窒素除去システム100では、少なくともアンモニア性窒素および有機炭素を含有する窒素含有排水が一次処理装置10から流出する。なお、一次処理装置としては、特に限定されることなく、例えば浮上ろ材を用いて固液分離を行う固液分離槽等の任意の固液分離装置などが挙げられる。
【0023】
そして、一次処理装置10から流出した窒素含有排水は、第1ポンプ11を用いて第1反応槽20へと送られる。また、一次処理装置10から流出した窒素含有排水は、第2ポンプ12を用いて第2反応槽30へも送られる。具体的には、
図1に示す窒素除去システム100では、第2ポンプ12を使用して一次処理装置10から送出された窒素含有排水は、第1反応槽から流出した第1反応槽流出水と混合された後に第2反応槽30へと供給される。
なお、窒素含有排水は、第2反応槽30内へと直接供給されてもよい。また、窒素含有排水は、第1ポンプ11および/または第2ポンプ12を使用せずに自然流下によって第1反応槽20および/または第2反応槽30へと送られてもよい。
【0024】
<第1反応槽>
第1反応槽20は、撹拌装置21と、ブロア22および散気管23で構成される曝気装置と、センサ24とを備えている。また、第1反応槽20内には、微生物膜を担持させた複数の担体25が充填されている。そして、第1反応槽20では、第1ポンプ11を使用して一次処理装置10から送出された窒素含有排水が脱窒処理される。
【0025】
ここで、撹拌装置21は、攪拌翼などの、第1反応槽20内を撹拌する装置である。そして、第1反応槽20では、撹拌装置21による撹拌および曝気装置による曝気により担体25が槽内を良好に流動する。
【0026】
曝気装置は、ブロア22から送られてくる空気等の酸素含有気体を第1反応槽20の下部に設けられた散気管23から散気する装置である。
【0027】
センサ24は、第1反応槽20から流出する第1反応槽流出水について、アンモニア性窒素(NH
4−N)濃度、亜硝酸性窒素(NO
2−N)濃度および硝酸性窒素(NO
3−N)濃度の一つ以上を計測する濃度計を含んでいる。なお、センサ24は、DO計、BOD測定装置および酸化還元電位計などを更に含んでいてもよい。また、センサ24の設置位置は第1反応槽20内に限定されるものではない。
【0028】
担体25は、亜硝酸型硝化細菌と嫌気性アンモニア酸化細菌との少なくとも2種を優占種として含む微生物膜を担持している。そして、担体25としては、特に限定されることなく、例えば、発泡性の吸水性ポリウレタンなどを用いることができる。また、第1反応槽20への担体投入率は、特に限定されることなく、例えば4〜55m
2/m
3とすることが好ましい。
なお、担体25には、BOD酸化細菌やアンモニア以外の溶解性窒素を分解しアンモニアとする好気性細菌などが更に担持されていてもよく、少なくともBOD酸化細菌が更に担持されていることが好ましい。また、担体25に担持された微生物膜においては、通常、亜硝酸型硝化反応に寄与する亜硝酸型硝化細菌が優占種として外側に存在し、該亜硝酸型硝化細菌に取り囲まれる形態で嫌気性アンモニア酸化反応に寄与する嫌気性アンモニア酸化細菌が優占種として内側に存在している。このような微生物膜の担体への担持は、例えば、担体の表面に、それらの菌を含む汚泥を少量付着させた後、その担体を、下水等の溶解性窒素を含有する水を収容した槽に投入して、数日間放置し、菌を増殖させることにより行うことができる。
【0029】
<第2反応槽>
第2反応槽30は、第1反応槽20に直列接続されており、第2反応槽30では、第1反応槽流出水と第2ポンプ12を使用して一次処理装置10から送出された窒素含有排水との混合液が脱窒処理される。即ち、
図1に示す窒素除去システム100では、第2ポンプ12は、有機炭素を含む窒素含有排水を第2反応槽30内に添加する炭素源供給機構として機能する。
そして、第2反応槽30は、撹拌装置31と、ブロア32および散気管33で構成される曝気装置と、センサ34とを備えている。また、第2反応槽30内には、微生物膜を担持させた複数の担体35が充填されている。
【0030】
ここで、撹拌装置31は、攪拌翼などの、第2反応槽30内を撹拌する装置である。そして、第2反応槽30では、撹拌装置31による撹拌および曝気装置による曝気により担体35が槽内を良好に流動する。
【0031】
曝気装置は、ブロア32から送られてくる空気等の酸素含有気体を第2反応槽30の下部に設けられた散気管33から散気する装置である。
【0032】
センサ34は、第2反応槽30から流出する第2反応槽流出水について、アンモニア性窒素(NH
4−N)濃度、亜硝酸性窒素(NO
2−N)濃度および硝酸性窒素(NO
3−N)濃度の一つ以上を計測する濃度計を含んでいる。なお、センサ34は、DO計、BOD測定装置および酸化還元電位計などを更に含んでいてもよい。また、センサ34の設置位置は第2反応槽30内に限定されるものではない。
【0033】
担体35は、亜硝酸型硝化細菌と嫌気性アンモニア酸化細菌との少なくとも2種を優占種として含む微生物膜を担持している。そして、担体35としては、特に限定されることなく、例えば、発泡性の吸水性ポリウレタンなどを用いることができる。また、第2反応槽30への担体投入率は、特に限定されることなく、例えば4〜55m
2/m
3とすることが好ましい。
なお、担体35には、BOD酸化細菌やアンモニア以外の溶解性窒素を分解しアンモニアとする好気性細菌などが更に担持されていてもよく、少なくともBOD酸化細菌が更に担持されていることが好ましい。また、担体35に担持された微生物膜においては、通常、亜硝酸型硝化反応に寄与する亜硝酸型硝化細菌が優占種として外側に存在し、該亜硝酸型硝化細菌に取り囲まれる形態で嫌気性アンモニア酸化反応に寄与する嫌気性アンモニア酸化細菌が優占種として内側に存在している。このような微生物膜の担体への担持は、上述した担体25と同様にして行うことができる。
【0034】
<制御装置>
制御装置40は、ブロア22を制御して第1反応槽20の曝気量を制御する。また、制御装置40は、ブロア32を制御して第2反応槽30の曝気量も制御する。
具体的には、制御装置40は、第1反応槽20では、第1反応槽20から流出する第1反応槽流出水のアンモニア性窒素(NH
4−N)濃度、亜硝酸性窒素(NO
2−N)濃度および硝酸性窒素(NO
3−N)濃度の一つ以上をセンサ24で計測し、下記(a)と(b)と(c)との組み合わせ、下記(a)と(c)との組み合わせ、下記(b)と(c)との組み合わせ、下記(d)単独および下記(e)単独からなる群より選択される何れかの基準を用いて曝気量の調整を行う。
また、制御装置40は、第2反応槽30では、第2反応槽30から流出する第2反応槽流出水のアンモニア性窒素(NH
4−N)濃度、亜硝酸性窒素(NO
2−N)濃度および硝酸性窒素(NO
3−N)濃度の一つ以上をセンサ34で計測し、下記(a)と(b)と(c)との組み合わせ、下記(a)と(c)との組み合わせ、下記(b)と(c)との組み合わせ、下記(d)単独および下記(e)単独からなる群より選択される何れかの基準を用いて曝気量の調整を行う。
(a)NO
3−N濃度がある設定値以上になったら曝気量を減少させる。
(b)NO
2−N濃度がある設定値以上になったら曝気量を減少させる。
(c)NH
4−N濃度がある設定値以上になったら曝気量を増加させる。
(d)NO
3−N濃度がある設定値以上になったら曝気量を減少させ、ある設定値以下になったら曝気量を増加させる。
(e)NO
2−N濃度がある設定値以上になったら曝気量を減少させ、ある設定値以下になったら曝気量を増加させる。
【0035】
なお、本発明において、(a)〜(e)の「ある設定値」は、原水の性状に応じて所望の処理水性状および所望の窒素除去速度などが得られる値を予備実験により求めることで設定することができる。
【0036】
そして、上述した構成を有する窒素除去システム100では、有機炭素を含む窒素含有排水を第2反応槽30内に添加し、且つ、第1反応槽20および第2反応槽30の双方において上述した基準に基づく曝気量の増減制御を実施しているので、第1の反応槽で曝気量の増減制御を行い、有機炭素を添加しない第2反応槽で曝気のON−OFF制御を実施する場合と比較して、窒素除去速度を向上させることができる。
【0037】
なお、有機炭素を第2反応槽30内に添加すると共に上述した曝気量の制御を実施することで窒素除去速度を向上させることができる理由は、明らかではないが、以下の通りであると推察される。
即ち、第2反応槽への有機炭素の添加を実施せず、且つ、第2反応槽で曝気のON−OFF制御を実施した場合には、第2反応槽において、BOD酸化細菌などの従属栄養細菌量が少ないことに起因して担体の微生物膜が薄くなるとともに、曝気時には、好気性従属栄養細菌(BOD酸化細菌)によるDO消費がほとんど期待できない。従って、担体に担持された微生物膜内に無酸素域を確保できなくなる。そのため、曝気時には、NO
2−Nが消費されず、バルクのNO
2−N濃度は増加する。一方、無曝気状態では、生物膜全域が無酸素域となり、曝気時に生成して残留したNO
2−Nが嫌気性アンモニア酸化反応により消費される。そして、第2反応槽においてこれらの反応(アンモニアの亜硝酸型硝化反応と嫌気性アンモニア酸化反応)が交互に繰り返し行われるため、窒素除去速度が十分には向上しない。
一方、第2反応槽への有機炭素の添加を実施し、且つ、第2反応槽で上記制御(曝気量の増減制御)を実施した場合には、従属栄養細菌量が多いことに起因して担体の微生物膜が厚くなる。また、アンモニアの亜硝酸型硝化反応に加えて、有機炭素の酸化にもDOが消費される。従って、担体に担持された微生物膜内に無酸素域が確保される。そのため、アンモニアの亜硝酸型硝化反応と嫌気性アンモニア酸化反応とを同時に進行させ、窒素除去速度を十分に向上させることができる。
【0038】
(窒素除去方法)
また、本発明の窒素除去方法は、特に限定されることなく、上述した窒素除去システム100などの本発明の窒素除去システムにおいて実施することができる。
【0039】
そして、本発明の窒素除去方法は、亜硝酸型硝化細菌と嫌気性アンモニア酸化細菌との少なくとも2種を優占種として含む微生物膜を担持させた担体が充填された第1の反応槽において、曝気下、嫌気性アンモニア酸化反応を利用して脱窒を行う第1脱窒工程と、第1反応槽の下流側に直列接続され、且つ、亜硝酸型硝化細菌と嫌気性アンモニア酸化細菌との少なくとも2種を優占種として含む微生物膜を担持させた担体が充填された第2の反応槽において、曝気下、嫌気性アンモニア酸化反応を利用して脱窒を行う第2脱窒工程とを含む。
また、本発明の窒素除去方法は、第2脱窒工程では、第2反応槽内に有機炭素を添加しつつ脱窒を行い、第1脱窒工程および第2脱窒工程では、それぞれ、各反応槽から流出する反応槽流出水のアンモニア性窒素(NH
4−N)濃度、亜硝酸性窒素(NO
2−N)濃度および硝酸性窒素(NO
3−N)濃度の一つ以上を計測し、下記(a)と(b)と(c)との組み合わせ、下記(a)と(c)との組み合わせ、下記(b)と(c)との組み合わせ、下記(d)単独および下記(e)単独からなる群より選択される何れかの基準を用いて曝気量の調整を行う。
(a)NO
3−N濃度がある設定値以上になったら曝気量を減少させる。
(b)NO
2−N濃度がある設定値以上になったら曝気量を減少させる。
(c)NH
4−N濃度がある設定値以上になったら曝気量を増加させる。
(d)NO
3−N濃度がある設定値以上になったら曝気量を減少させ、ある設定値以下になったら曝気量を増加させる。
(e)NO
2−N濃度がある設定値以上になったら曝気量を減少させ、ある設定値以下になったら曝気量を増加させる。
【0040】
なお、本発明の窒素除去方法において、曝気量の調整は、制御装置を用いて行ってもよいし、手動で行ってもよい。
【0041】
そして、本発明の窒素除去方法では、上述した本発明の窒素除去システムと同様に、有機炭素を第2反応槽内に添加し、且つ、第1反応槽および第2反応槽の双方において上述した基準に基づく曝気量の増減制御を実施しているので、第1の反応槽で曝気量の増減制御を行い、有機炭素を添加しない第2反応槽で曝気のON−OFF制御を実施する場合と比較して、窒素除去速度を向上させることができる。
【0042】
なお、本発明の窒素除去システムおよび窒素除去方法では、被処理水である窒素含有排水のORP(酸化還元電位)を−150mV以下とした状態で脱窒を行うことが好ましい。
また、被処理水である窒素含有排水は、アルカリ性となるよう調整した状態で脱窒処理されることが好ましく、pHを7.3〜8.5にした状態で脱窒処理されることがより好ましい。
【0043】
更に、本発明の窒素除去システムおよび窒素除去方法では、第2反応槽の容積が第1反応槽の容積よりも大きいことが好ましい。第2反応槽の容積を大きくすれば、担体投入率、有機物負荷および溶解性窒素負荷を容易に調整することができるからである。
なお、第2反応槽の容積は、第1反応槽の容積の1.4倍以上2.0倍以下であることが好ましく、1.6倍以上1.8倍以下であることがより好ましい。
【0044】
また、嫌気性アンモニア酸化反応を良好に進める観点からは、本発明の窒素除去システムおよび窒素除去方法では、第1反応槽および第2反応槽に流入する溶解性窒素の負荷(溶解性窒素負荷)が、それぞれ、2.5〜11.5g/m
2−担体/日であることが好ましい。
【0045】
更に、本発明の窒素除去システムおよび窒素除去方法では、第1反応槽および第2反応槽における有機物負荷を、それぞれ、110mg−BOD/m
2−担体/時間以上または40mg−TOC/m
2−担体/時間以上とすることが好ましい。通常、独立栄養細菌である嫌気性アンモニア酸化細菌を用いた嫌気性アンモニア酸化反応においては、有機物の流入を低減することが求められる。しかし、本発明においては、有機物負荷を上記範囲内にすることで、担体の微生物膜厚を十分に確保し、アンモニアの亜硝酸型硝化反応と嫌気性アンモニア酸化反応との双方を同時にバランス良く起こすことができるからである。なお、第1反応槽および第2反応槽における有機物負荷は、80mg−TOC/m
2−担体/時間以上とすることがより好ましい。
【0046】
以上、本発明の窒素除去システムおよび窒素除去方法について説明したが、本発明の窒素除去システムおよび窒素除去方法は上述した構成に限定されるものではない。
具体的には、例えば、上述した一例では第1反応槽および第2反応槽を別々の水槽として設けたが、各反応槽は一つの水槽内に窒素含有排水の流通を完全には遮断しない隔壁を設けることにより区画形成されたものであってもよい。また、第2反応槽の後段には追加の反応槽が更に設けられていてもよい。なお追加の反応槽を設ける場合、当該反応槽においては、有機炭素を添加しつつ第2反応槽と同様の曝気量の増減制御を実施することが好ましい。
また、第2反応槽に添加する有機炭素は、メタノール等であってもよい。但し、コストの観点からは有機炭素を含む窒素含有排水であることが好ましい。
【実施例】
【0047】
以下、本発明について実施例を用いて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0048】
(実施例1)
第1ポンプ11および第2ポンプ12を有さず、被処理水としての窒素含有排水を自然流下させる以外は
図1に示すのと同様の構成を有する窒素除去システムを準備した。なお、窒素除去システムでは、センサ24およびセンサ34として亜硝酸性窒素(NO
2−N)濃度計を使用し、制御装置40では以下の曝気量制御を行った。
た。
そして、以下の条件で窒素含有排水の処理を行い、溶解性窒素の除去速度を算出したところ、3.1mg/L/時であった。
[処理条件]
・第1反応槽容積:8.5L
・第2反応槽容積:15L
・被処理水量(第1反応槽への流入量と第2反応槽への流入量との合計):3.3L/時
・第1反応槽に流入させた被処理水の量:1.65L/時
・第2反応槽に直接流入させた被処理水の量:1.65L/時
・被処理水TOC濃度:31mg/L
・第1反応槽有機物負荷:154mg−TOC/m
2−担体/時
・第2反応槽有機物負荷:98mg−TOC/m
2−担体/時
・被処理水溶解性窒素濃度:30mg/L
・第1反応槽溶解性窒素負荷:3.7g−N/m
2−担体/日
・第2反応槽溶解性窒素負荷:3.3g−N/m
2−担体/日
・処理水TOC濃度:8.2mg/L
・処理水溶解性窒素濃度:9.1mg/L
[曝気量制御内容]
第1反応槽および第2反応槽のそれぞれにおいて、NO
2−N濃度が2.2mg/L以上になったら曝気量を減少させ、NO
2−N濃度が1.8mg/L以下になったら曝気量を増加させる。
【0049】
(比較例1)
処理条件および曝気量の制御内容を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして窒素含有排水の処理を行い、溶解性窒素の除去速度を算出したところ、1.6mg/L/時であった。
[処理条件]
・第1反応槽容積:15L
・第2反応槽容積:15L
・被処理水量(第1反応槽への流入量と第2反応槽への流入量との合計):3.6L/時
・第1反応槽に流入させた被処理水の量:3.6L/時
・第2反応槽に直接流入させた被処理水の量:0L/時
・被処理水TOC濃度:27mg/L
・第1反応槽有機物負荷:160mg−TOC/m
2−担体/時
・第2反応槽有機物負荷:30mg−TOC/m
2−担体/時
・被処理水溶解性窒素濃度:24mg/L
・第1反応槽溶解性窒素負荷:3.4g−N/m
2−担体/日
・第2反応槽溶解性窒素負荷:2.6g−N/m
2−担体/日
・処理水TOC濃度:7.9mg/L
・処理水溶解性窒素濃度:10.7mg/L
[曝気量制御内容]
第1反応槽では、NO
2−N濃度が2.2mg/L以上になったら曝気量を減少させ、1.8mg/L以下になったら曝気量を増加させる。
第2反応槽では、NO
2−N濃度が1.5mg/L以上になったら曝気を停止し、0.3mg/L以下になったら曝気を開始する。