【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 展示会名 インターナショナル マニュファクチャリング テクノロジーショー (アイエムティーエス2016)、展示日 平成28年9月13日 (日本時間)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、2つの非限定的な実施形態について説明する。
(第1実施形態)
【0009】
図1を参照して、本実施形態の工作機械1について説明する。
図1は工作機械1の主要な構成を示し、鉛直方向主軸25の駆動装置等の細部の構成(
図3参照)を省略している。
工作機械1は、架台11と、加工テーブル12と、主軸頭23と、加工テーブル12に対して主軸頭23を相対的に移動する移動装置10と、を備えている。主軸頭23には、少なくとも1(本実施形態では4)の鉛直方向主軸25と、少なくとも1(本実施形態では4)の水平方向主軸333を有する。
【0010】
架台11の前方に、加工テーブル12が設けられている。加工テーブル12には、少なくとも1の加工対象物4が固定できる。好ましくは複数(本実施形態では4つ)の加工対象物4が固定される。複数の加工対象物4が設けられるときは、所定の配列方向である左右方向に1列に加工対象物4が等しい間隔35を開けて並べられる。
ここで、所定の配列方向は、鉛直方向主軸25および水平方向主軸333に直交する方向であり、本実施形態では左右方向として例示する。
【0011】
好ましくは、加工テーブル12には、鉛直方向の回転軸3を中心に回転可能に設けられた載置台121が設置される。加工テーブル12は、サーボモータである駆動モータ122を有している。駆動モータ122には、駆動側の歯付プーリ123Aが固定される。載置台121は、加工テーブル12に回転可能に軸支される。載置台121には、従動側の歯付プーリ123Bが固定されている。2種類の歯付プーリ123A,123Bの間には、無端歯付ベルト123Cが張られている。駆動モータ122の動力は、歯付プーリ123A,123Bおよび無端歯付ベルト123Cにより載置台121に伝達される。なお、伝達機構は、本実施形態のようなベルト伝達機構に替えて歯車伝達機構(不図示)を利用できる。
【0012】
載置台121は、加工対象物4を把持するためのコレットチャック、3つ爪クランプその他のクランプ装置128を備えている。加工対象物4は、それぞれのクランプ装置128によって、載置台121に固定される。
【0013】
加工テーブル12には、回転軸3と平行な方向に駆動できる流体圧シリンダ124を設けても良い。この場合、流体圧シリンダ124に回転軸3と垂直方向に延びるクランプアーム126を設ける。そして、クランプアーム126の先端に、クランプ体127が回転軸3を中心として回転可能に設けられる。流体圧シリンダ124が伸びたときに、クランプ体127は、加工対象物4をアンクランプする。流体圧シリンダ124が縮んだときに、クランプ体127は、加工対象物4をクランプする。そして、クランプ体127は、加工対象物4、載置台121と一体として回転軸3のまわりに回転する。このようなクランプ装置128としては、適宜種々のクランプ装置、例えば特開2015−182149号の装置を利用できる。
【0014】
なお
図1では、回転軸3は鉛直方向に設けられているが、回転軸3を水平方向に設けても良い。加工テーブル12は、架台11上に垂直方向のまわりに回転するように設けられたターンテーブル上に設けても良い。また、加工テーブル12は、テーブル交換装置によって交換可能に設けられても良い。
【0015】
載置台121のみで十分に加工対象物4を固定できるときは、クランプアーム126、流体圧シリンダ124を設けることを要しない。
【0016】
以下の説明では、前後方向奥行き方向をZ軸、左右方向右向きをX軸、上下方向下向きをY軸と表記する場合がある。勿論、軸名称はこの例に限定される趣旨ではない。
【0017】
移動装置10は、主軸頭23をX軸方向に移動させるX軸移動装置10Aと、主軸頭23をZ軸方向に移動させるZ軸移動装置10Bと、主軸頭23をY軸方向に移動させるY軸移動装置10Cと、を含む。
【0018】
X軸移動装置10Aは、Z軸移動装置10Bを左右方向に移動させる左右方向直線ガイド15と、左右方向直線ガイド15上を摺動するガイドブロック15aと、左右方向移動サドル18と、左右方向駆動装置13と、を含む。
具体的には、架台11の後方寄り、架台11の上面には、2本の左右方向直線ガイド15が左右方向に平行に設けられている。左右方向直線ガイド15上には、ガイドブロック15aを介して左右方向移動サドル18が左右方向に移動可能に設けられている。架台11には、左右方向移動サドル18を駆動する左右方向駆動装置13が設けられている。
かかる構成により、X軸移動装置10Aは、Z軸移動装置10Bを左右方向に移動させることで、Z軸移動装置10Bに載置された移動コラム20を左右方向に移動させる。
【0019】
Z軸移動装置10Bは、前後方向直線ガイド19と、前後方向直線ガイド19上を摺動するガイドブロック19aと、前後方向駆動装置17と、を含む。
具体的には、左右方向移動サドル18の上面には、2本の前後方向直線ガイド19が前後方向に平行に設けられている。前後方向直線ガイド19には、ガイドブロック19aを介して移動コラム20が前後方向に移動可能に設けられている。左右方向移動サドル18の上面には、移動コラム20を駆動する前後方向駆動装置17が設けられている。
【0020】
Y軸移動装置10Cは、移動コラム20上に設けられる。Y軸移動装置10Cは、上下方向直線ガイド21と、上下方向直線ガイド21に沿って摺動するガイドブロック21a(
図4参照)と、上下方向駆動装置22と、を含む。
具体的には、移動コラム20の正面には、上下方向に平行に2本の上下方向直線ガイド21が設けられている。上下方向直線ガイド21には、ガイドブロック21a(
図4参照)を介して主軸頭23が上下方向に移動可能に設けられている。移動コラム20の前面側には、主軸頭23を上下方向に駆動する上下方向駆動装置22が設けられている。
【0021】
左右方向駆動装置13、前後方向駆動装置17および上下方向駆動装置22は、それぞれいわゆるサーボモータ・ボールねじ機構又はリニアモータ機構が用いられる。
図3に示すように、上下方向駆動装置22は、駆動源となるサーボモータ22aと、サーボモータ22aに連結されたボールねじ22bと、ボールねじ22bに螺合されたボールナット22cと、を備えている。ボールナット22cは、主軸頭23の背面に固定されている。左右方向駆動装置13、および前後方向駆動装置17は、上下方向駆動装置22と同様の構成であるため、重複する詳細な説明は省略する。
【0022】
主軸頭23は、加工テーブル12に対して相対的に、前後、左右、上下方向に自在に移動できる。本実施形態では、工作機械1は、固定された加工テーブル12と、前後、左右、上下方向に移動できる主軸頭23を持つ。このような軸構成は、特に、加工テーブル12をターンテーブル上に配置した場合に好適である。
【0023】
なお、本実施形態においては、X軸移動装置10A上にX軸方向に移動可能にZ軸移動装置10Bを設けて、Z軸移動装置10B上にZ軸方向に移動可能に移動コラム20を設け、移動コラム20上にY軸方向に移動可能に主軸頭23を設けたが、これに限定されない。例えば次のように構成できる。架台11前方に、前後方向(Z軸方向)、左右方向(X軸方向)に移動できるように加工テーブル12を設ける。更に架台11後方に固定された移動コラム20を設け、移動コラム20上に上下方向(Y軸方向)に移動できる主軸頭23を設けても良い。主軸頭23のサイズ、加工テーブル12の設置方法に応じて、自由に軸構成を選択できる。
【0024】
工作機械1は、移動コラム20を設け、移動コラム20に上下方向に移動できる主軸頭を備えている。このため、本実施形態によれば、幅が狭い小型の工作機械1を提供できる。
【0025】
図2及び
図3に従って、主軸頭23について説明する。
図2は
図1のII方向からみた図であり、主軸モータ等の主軸駆動装置の細部の構成を一部省略している。
図3は
図2のIII−III線断面図を示す。
主軸頭23は、垂直方向に延びて設けられた鉛直プレート231と、水平プレート232を有している。水平プレート232は、鉛直プレート231の上方に、鉛直プレート231の前記加工テーブルの方向に水平に延びて設けられている。そのため、主軸頭23は、横方向から見て、逆L字状を成している。水平プレート232および鉛直プレート231は、直方体状をなしている。鉛直プレート231の下方端部に、主軸体33が前後方向(Z軸)に延びて設けられている。水平プレート232の前方端部には、円筒状のハウジング233が鉛直方向に延びて設けられている。ハウジング233の内部に鉛直方向主軸25が上下方向(Y軸)のまわりに回転可能に設けられている。
【0026】
鉛直方向主軸25は、配列方向である左右方向に一列に並べて配置できる。好ましくは、加工対象物4(
図1参照)の間隔35と同一間隔で、加工対象物4と同数設けられる。
【0027】
以下、鉛直方向主軸25が4つ設けられている場合について説明する。鉛直方向主軸25は、ハウジング233内に設けられた主軸受251に支持されている。鉛直方向主軸25の先端部(鉛直方向下側)には、回転工具である工具5が設けられている。鉛直方向主軸25の基端部には、従動プーリ31A,31Bが設けられている。水平プレート232の後方側には、テーブル状の主軸モータ台235が設けられている。主軸モータ台235の上部には、主軸モータ27が上下方向に延びて設けられている。主軸モータ27の出力軸には、上段の駆動プーリ29Aと、下段の駆動プーリ29Bが上下に2つ並べて設けられている。上段の駆動プーリ29Aと従動プーリ31Aの間には、ベルト30Aが張られている。下段の駆動プーリ29Bと従動プーリ31Bの間には、ベルト30Bが張られている。
【0028】
図4は、
図2のIV方向から見た図である。
図4に示すように、ベルト30A,30Bの張力は、それぞれアイドラプーリ32A,32Bによって調整されている。ここで、
図2の左から1番目と3番目の鉛直方向主軸25については、下段のベルト30Bによって、下段の駆動プーリ29Bと連結している。そして、
図2の左から2番目と4番目の鉛直方向主軸25については、上段のベルト30Aによって、上段の駆動プーリ29Aと連結している。
【0029】
なお、鉛直方向主軸25の構造は、ビルトインモータを備える主軸を用いても良い。また、ベルト伝達機構に替えて、歯車機構によって主軸モータ27の駆動力を伝達しても良い。
【0030】
図5を参照しながら、主軸体33について説明する。主軸体33は、ケース331と、モータ332と、水平方向主軸333とを有している。ケース331は、円筒状をなしている。ケース331の内部の後方端部には、モータ332が組み込まれている。そして、モータ332のロータと一体となった水平方向主軸333がケース331の内部に回転可能に設けられている。
【0031】
鉛直プレート231は、その下端部に前後方向に設けられた水平主軸取付け穴234を有している。水平主軸取付け穴234は、主軸体33と嵌合するように設けられている。主軸体33は、水平主軸取付け穴234内に挿入されて固定される。
【0032】
図2を参照して、好ましくは、水平方向主軸333は、配列方向(図では左右方向(X軸方向))に一列に並んで設けられる。このとき、水平方向主軸333は、加工対象物4の配置される間隔35と同一の間隔をあけて配置される。
【0033】
さらに望ましくは、鉛直方向主軸25と、水平方向主軸333は、前面から見て交互に配置される。即ち、最も左の鉛直方向主軸25から最も左の水平方向主軸333との水平方向の間隔37は、間隔35の半分となっている。
【0034】
更に望ましくは、加工対象物4の大きさは、工具5が加工対象物4の縁部を加工するときに、工具6が加工対象物4と干渉しない程度の大きさに抑える。
図6は、前方から見た最大の加工対象物4を工具5が加工する様子を示している。
図6を参照して、加工対象物4の最大の回転半径をR、間隔35をP、工具5の直径をD1、工具6の直径をD2とすれば、
R<(P−D1−D2)/4 (式1)
となるように、間隔35を設計できる。
【0035】
式1を満たせば、工具5が加工対象物4を加工するときに、工具6が加工対象物4又は回転載置台121と干渉しない。同様に、工具6が加工対象物4を加工するときに、工具5が加工対象物4又は回転載置台121と干渉しない。
【0036】
工具5、工具6は、ドリル、リーマ、タップ、ミルその他の回転工具が用いられる。
【0037】
なお、主軸頭23に対する鉛直方向主軸25および水平方向主軸333の固定方法は変更できる。例えば、鉛直方向主軸25は、水平方向主軸333と同様にビルトインモータの主軸体33を使用できる。
【0038】
なお、鉛直方向主軸25および水平方向主軸333は、単一の回転工具を装着しているが、鉛直方向主軸25又は水平方向主軸333に多軸ドリルヘッドを装着できる。
【0039】
主として
図1を参照しながら、上述のように構成された工作機械1の作用および効果について説明する。工作機械1は、鉛直方向主軸25と水平方向主軸333を備えているため、水平方向の揺動軸回りに揺動する揺動テーブルを設けなくても加工対象物4を加工テーブル12に一度固定するだけで縦横2方向から加工できる。
【0040】
主軸頭23は、加工テーブル12に対して上下方向、左右方向および前後方向に移動できるため、工作機械1は、加工対象物4に対して自在な位置に加工できる。
【0041】
従来技術における、一方向の主軸と、揺動テーブルを備える工作機械(不図示)によれば、2方向の加工を行う場合、次の工程を取る。加工対象物を一方向に位置決めする。次に主軸頭を加工対象物に近接させて加工を行った後、主軸頭をZ方向に一旦逃がす。その後、加工テーブル12を揺動装置によって90度傾けた後に、再び主軸頭を加工対象物に近接させて加工を行う。そして、主軸頭をZ方向に逃がした後に、加工が完了する。
【0042】
これに対して、工作機械1によれば、水平方向の揺動軸回りに揺動する揺動テーブル(不図示)によって加工対象物4の姿勢を変えることなく、加工対象物4に主軸頭23を近接させたまま、鉛直方向および水平方向に次々に加工できる。すなわち、非加工時間を大幅に削減できる。
【0043】
主軸頭23は、垂直方向に延びて設けられた鉛直プレート231と、水平プレート232を有している。この水平プレート232は、鉛直プレート231の上方に設けられ、鉛直プレート231の加工テーブル12寄りに延びて設けられている。更に、鉛直方向主軸25は、水平プレート232の一方の端部に設けられ、水平方向主軸333は、鉛直プレート231の下端部に設けられている。その結果、左右方向から見て、工具5および工具6が加工対象物4を囲むように配置される。そのため、主軸頭23を左右、上下、前後方向に動かして垂直および水平方向に加工対象物4を加工するときに、前後方向および上下方向の移動ストロークを小さくできる。ここで前後方向直線ガイド19、前後方向駆動装置17、上下方向直線ガイド21および左右方向直線ガイド15は、ストロークに応じて長さが決まるため、工作機械1は、非常にコンパクトに構成できる。
【0044】
工作機械1は、垂直方向に設けられた垂直方向主軸25と、水平方向に設けられた水平方向主軸333とを備えている。2方向に備えられている主軸が、それぞれ水平方向と垂直方向であり、それらが直交しているため、工作機械1は操作しやすい。
【0045】
工作機械1は、主軸頭23に、配列方向(水平方向)に特定の間隔35(
図2参照)をあけて設けられた複数の鉛直方向主軸25と、配列方向に間隔35と同一の間隔をあけて設けられた、鉛直方向主軸25と同数の水平方向主軸333を備えている。更に、加工テーブル12は、配列方向に間隔35と同一の間隔をあけて、鉛直方向主軸25と同数の加工対象物4が取付けられるように構成されている。そのため、複数の加工対象物4に対して、加工精度のばらつきを抑制して同一加工を同時に実行できる。
【0046】
工作機械1が複数の鉛直方向主軸25、複数の水平方向主軸333及び複数の加工対象物4を同数備えているときにおいて、鉛直方向主軸25と水平方向主軸333は、水平方向に見て交互に並んで設けられている。鉛直方向の加工を行うときは、工具5が加工対象物4の水平面への投影面上に位置する。そのときに工具6が加工対象物4と加工対象物4の間に抜ける。そのため、鉛直方向の工具5によって加工対象物4を加工するときには、水平方向の工具6は加工対象物4に干渉しない。そして、水平方向の工具6および加工対象物4が損傷しない。逆に水平方向の工具6が加工対象物4を加工するときに、鉛直方向の工具5が加工対象物4の間を抜けるため、工具5と加工対象物4とが干渉しない。
【0047】
加工テーブル12は、架台11に対して鉛直方向の回転軸3又は水平方向の回転軸(不図示)まわりに回転自在に設けられる載置台121と、載置台121を回転させる駆動モータ122と、を有している。そのため、加工対象物4を載置台121に一度固定するだけで、工作機械1は、鉛直方向の回転軸3又は水平方向の回転軸回りの内の任意の方向へ加工できる。
【0048】
水平方向主軸333は、主軸体33にモータ332と共に内蔵されている。この主軸体33が、一体となって主軸頭23に装着されているため、水平方向主軸333およびモータ332の交換が容易である。
【0049】
(第2実施形態)
次に、
図7を参照して、第2実施形態の工作機械500について説明する。
工作機械500は、主軸頭53に上下2列の水平方向主軸333,333Aを設けている点で工作機械500と相違する。工作機械500のその他の構成は工作機械500と同一である。以下、工作機械500と同一の構成については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0050】
主軸頭53は、鉛直プレート531と水平プレート232とを含む。鉛直プレート531には、上下2列にそれぞれ4つの水平主軸取付け穴234,234A(
図8参照)が設けられている。
【0051】
図8は、
図7のVIII方向から見た主軸頭の主要な構成を示す。
図8を参照して、下段の水平主軸取付け穴234A(
図9参照)には、主軸体33Aが嵌合して挿入される。そして、鉛直方向主軸25と水平方向主軸333とは、左右方向において、交互に取り付けられている。さらに、上下2列の水平方向主軸333、333Aは、左右方向に揃えて格子状に設けられている。鉛直方向主軸25、水平方向主軸333、333Aはそれぞれ間隔35だけ開けて配列方向(左右方向)に一直線に並んで設けられている。そして、鉛直方向主軸25と水平方向主軸333A,333Bとの間は、配列方向において、間隔35の半分である間隔37となっている。2列の水平方向主軸333A,333Bとの鉛直方向の間隔は間隔34である。
【0052】
このとき、間隔34をL、加工対象物4の高さをH、加工対象物4からクランプアーム126上面までの高さをH2とすれば、
H+H2<L (式2)
となるように、間隔34が設計できる。
【0053】
図9は、
図8のIX−IX線断面図を示す。
図9を参照して、上段の水平主軸取付け穴234には、主軸体33が嵌合して挿入される。上段の水平方向主軸333は、下段に取り付けられた水平方向主軸333Aよりも前方に突出して設けられる。下段の水平方向主軸333Aには、回転工具である工具7が装着される。
【0054】
そして、好ましくは、上段の水平方向主軸333に装着される回転工具6は、下段に取り付けられた水平方向主軸333Aに装着される回転工具7よりも前方に間隔39だけ突出する。間隔39をL2、載置台121の最大回転半径をR2とすれば、
(R2−R)<L2 (式3)
ただし、R<R2
となるように、間隔39が設計できる。
【0055】
式3を満たすように水平方向主軸333、333Aが設けられれば、上段の水平方向主軸333に装着された回転工具6が加工対象物4を加工するときに、下段の水平方向主軸333Aに装着された回転工具7が載置台121と干渉しない。
【0056】
以上のように構成された工作機械500は、次のような作用効果を奏する。水平方向主軸333、333Aは左右方向に揃えて、水平方向において加工対象物4の配置間隔で設けられている。加えて、水平方向主軸333、333Aと鉛直方向主軸25とは交互に並んで配置されている。そのため、鉛直方向の加工を行うときは、工具5が加工対象物4の水平面への投影面上に位置する。そのときに工具6、7が加工対象物4と加工対象物4の間に抜ける。そのため、鉛直方向の工具5によって加工対象物4を加工するときには、水平方向の工具6、7は加工対象物4に干渉しない。そして、水平方向の工具6、7および加工対象物4が損傷しない。逆に水平方向の工具6または工具7が加工対象物4を加工するときに、鉛直方向の工具5がワークの間を抜けるため、工具5と加工対象物4とが干渉しない。
【0057】
好ましくは、上段の水平方向主軸333と、下段の水平方向主軸333Aとは、加工対象物4及びクランプアーム126の高さの和よりも大きく上下方向に間隔をあけて設けられる。上記構成によれば、上段の水平方向主軸333が加工対象物4に加工しているときに、下段の水平方向主軸333Aは、加工対象物4に干渉しない。また、同様に下段の水平方向主軸333Aが加工対象物4に加工しているときに、上段の水平方向主軸333は、加工対象物4およびクランプアーム126に干渉しない。
【0058】
上段に設けられた水平方向主軸333は、下段に設けられた水平方向主軸333Aよりも前方へ突出しているため、上段の水平方向の工具6によって加工対象物4を加工するときに、下段の水平方向の工具7は加工対象物4および載置台121に到達しない。従って、下段の水平方向の工具7は加工対象物4および載置台121に干渉しない。
【0059】
工作機械500は、上下2列の水平方向主軸333,333Aを備えているため、2種類の水平方向の工具6、7を装着できる。そのため、鉛直方向の加工に加えて、2種類の水平方向の加工工程を1台の工作機械に集約できる。
【0060】
なお、工具6又は工具7としては、回転工具の他に、回転可能な載置台121と共に、旋削用工具を用いても良い。
【0061】
また、2列の水平方向主軸333,333Aを設ける代わりに、鉛直方向主軸25が2列設けられても良い。
【0062】
本発明を、2つの実施形態に基づいて説明したが、当業者であれば、上述の実施形態の工作機械1、500を変形し、改良できる。本発明は、上述の実施形態の記述に限定されない。例えば、主軸頭23,53に設ける鉛直方向主軸25、水平方向主軸333および加工対象物4の数は自由に設定できる。加工対象物4に対する必要な加工位置、加工工程に応じて、主軸位置を変更しても良い。
【0063】
また、水平方向主軸333は、主軸頭23に対して、水平方向主軸333の軸線に沿って移動可能に構成しても良い。この場合、水平方向主軸333を送り出せるため、主軸頭23、加工テーブル12及び水平方向主軸333の設計自由度が広がる。このとき、上段の水平方向の工具6は、下段の水平方向の工具7よりも加工テーブル12の方向に突出させる必要はない。
【0064】
鉛直方向主軸25についても同様に、主軸頭23に対して、鉛直方向主軸25の軸線に沿って移動可能に構成しても良い。
【0065】
また、工作機械1、500において、鉛直方向主軸25と水平方向主軸333,333Aを縦方向に各一つのみ備えてもよい。この場合においても、鉛直方向主軸25と水平方向主軸333,333Aは左右方向に段違いに設けられ得る。