特許第6774343号(P6774343)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774343
(24)【登録日】2020年10月6日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23B 39/16 20060101AFI20201012BHJP
   B23Q 1/48 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   B23B39/16 Z
   B23Q1/48 C
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-9567(P2017-9567)
(22)【出願日】2017年1月23日
(65)【公開番号】特開2018-118328(P2018-118328A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2019年3月20日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 展示会名 インターナショナル マニュファクチャリング テクノロジーショー (アイエムティーエス2016)、展示日 平成28年9月13日 (日本時間)
(73)【特許権者】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小杉 将人
(72)【発明者】
【氏名】池田 吉隆
(72)【発明者】
【氏名】押田 淳
【審査官】 久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第02393696(US,A)
【文献】 実開昭60−062903(JP,U)
【文献】 特開2008−093796(JP,A)
【文献】 特開2002−331411(JP,A)
【文献】 米国特許第02651975(US,A)
【文献】 米国特許第03077128(US,A)
【文献】 特開平07−040113(JP,A)
【文献】 特開昭50−153379(JP,A)
【文献】 特開平09−207011(JP,A)
【文献】 特開平07−009201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 39/00 − 39/28
B23B 49/00 − 49/06
B23Q 1/00 − 1/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械であって、
架台と、
前記架台に設けられた加工テーブルと、
前記架台に設けられた主軸頭と、
前記加工テーブルと前記主軸頭とを相対的に移動させる移動装置と、
前記主軸頭に鉛直方向に設けられた少なくとも1つの鉛直方向主軸と、
前記主軸頭に水平方向に設けられた少なくとも1つの水平方向主軸と、を備え
前記主軸頭は、
垂直方向に延びて設けられた鉛直プレートと、
前記鉛直プレートの上部から前記加工テーブル側に水平方向に延びて設けられた水平プレートと、を有し、
前記鉛直方向主軸は、前記水平プレートに設けられ、
前記水平方向主軸は、前記鉛直プレートに設けられており、
前記鉛直プレートと前記水平プレートとで、前記鉛直方向主軸および前記水平方向主軸に直交する方向から見て逆L字状を成しており、
前記移動装置は、前記鉛直プレート、前記水平プレート、前記鉛直方向主軸および前記水平方向主軸を一体として移動させる
工作機械。
【請求項2】
請求項1の工作機械であって、
前記移動装置は、前記加工テーブルに対して前記主軸を上下方向、左右方向および前後方向に移動させる、
工作機械。
【請求項3】
請求項1または請求項2の工作機械であって、
前記少なくとも1つの鉛直方向主軸は、前記鉛直方向主軸および前記水平方向主軸に直交する配列方向に所定の間隔をあけて設けられた複数の前記鉛直方向主軸であって、
前記少なくとも1つの水平方向主軸は、前記配列方向に沿って前記間隔と同一の間隔をあけて設けられた、前記鉛直方向主軸と同数の前記水平方向主軸であって、
前記加工テーブルは、前記配列方向に沿って前記間隔と同一の間隔をあけて、加工対象物を固定する載置台を備えている、
工作機械。
【請求項4】
請求項の工作機械であって、
前記複数の鉛直方向主軸および前記複数の水平方向主軸は、それぞれ前記配列方向に沿って交互に並んで設けられている、
工作機械。
【請求項5】
請求項1ないし請求項のいずれか1項の工作機械であって、
前記加工テーブルは、
前記架台に対して鉛直方向又は水平方向の回転軸回りに回転自在に設けられる載置台と、
前記載置台を回転させる駆動モータと、を有する、
工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の穴加工を効率よく行うために、複数の主軸に工具を装着した多軸ボール盤が知られている(例えば、特許文献1)。一般に、多軸ボール盤は、複数の主軸で同時に複数の穴加工を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−166292号公報(図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一つの加工対象物に対して、多方向からの穴加工を行う場合、複数の多軸ボール盤を用いるか、又は加工テーブルに対して、加工対象物を、その向きを変えて設置し直す必要があった。本発明は、一つの加工対象物を一度設置すれば、複数の方向からの穴加工を行う工作機械を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に鑑みて、代表的な本発明は、工作機械であって、架台と、前記架台に設けられた加工テーブルと、前記架台に設けられた主軸頭と、前記加工テーブルと前記主軸頭とを相対的に移動させる移動装置と、前記主軸頭に鉛直方向に設けられた少なくとも1つの鉛直方向主軸と、前記主軸頭に水平方向に設けられた少なくとも1つの水平方向主軸と、を備え、前記主軸頭は、垂直方向に延びて設けられた鉛直プレートと、前記鉛直プレートの上部から前記加工テーブル側に水平方向に延びて設けられた水平プレートと、を有し、前記鉛直方向主軸は、前記水平プレートに設けられ、前記水平方向主軸は、前記鉛直プレートに設けられており、前記鉛直プレートと前記水平プレートとで、前記鉛直方向主軸および前記水平方向主軸に直交する方向から見て逆L字状を成しており、前記移動装置は、前記鉛直プレート、前記水平プレート、前記鉛直方向主軸および前記水平方向主軸を一体として移動させる
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、鉛直方向主軸と水平方向主軸が設けられているため、加工対象物に対してワンチャックで2方向からの加工ができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態の工作機械の前方からの斜視図を示す。
図2図1のII方向からみた主軸頭の主要な構成を示す。
図3図2のIII−III線断面図を示す。
図4図3のIV−IV線断面図を示す。
図5】第1実施形態の主軸頭の一部分解図を示す。
図6】第1実施形態の工作機械における最大の加工対象物4を工具5が加工する様子を示す前方から見た図である。
図7】第2実施形態の工作機械の前方からの斜視図を示す。
図8図7のVIII方向から見た主軸頭の主要な構成を示す。
図9図8のIX−IX線断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、2つの非限定的な実施形態について説明する。
(第1実施形態)
【0009】
図1を参照して、本実施形態の工作機械1について説明する。図1は工作機械1の主要な構成を示し、鉛直方向主軸25の駆動装置等の細部の構成(図3参照)を省略している。
工作機械1は、架台11と、加工テーブル12と、主軸頭23と、加工テーブル12に対して主軸頭23を相対的に移動する移動装置10と、を備えている。主軸頭23には、少なくとも1(本実施形態では4)の鉛直方向主軸25と、少なくとも1(本実施形態では4)の水平方向主軸333を有する。
【0010】
架台11の前方に、加工テーブル12が設けられている。加工テーブル12には、少なくとも1の加工対象物4が固定できる。好ましくは複数(本実施形態では4つ)の加工対象物4が固定される。複数の加工対象物4が設けられるときは、所定の配列方向である左右方向に1列に加工対象物4が等しい間隔35を開けて並べられる。
ここで、所定の配列方向は、鉛直方向主軸25および水平方向主軸333に直交する方向であり、本実施形態では左右方向として例示する。
【0011】
好ましくは、加工テーブル12には、鉛直方向の回転軸3を中心に回転可能に設けられた載置台121が設置される。加工テーブル12は、サーボモータである駆動モータ122を有している。駆動モータ122には、駆動側の歯付プーリ123Aが固定される。載置台121は、加工テーブル12に回転可能に軸支される。載置台121には、従動側の歯付プーリ123Bが固定されている。2種類の歯付プーリ123A,123Bの間には、無端歯付ベルト123Cが張られている。駆動モータ122の動力は、歯付プーリ123A,123Bおよび無端歯付ベルト123Cにより載置台121に伝達される。なお、伝達機構は、本実施形態のようなベルト伝達機構に替えて歯車伝達機構(不図示)を利用できる。
【0012】
載置台121は、加工対象物4を把持するためのコレットチャック、3つ爪クランプその他のクランプ装置128を備えている。加工対象物4は、それぞれのクランプ装置128によって、載置台121に固定される。
【0013】
加工テーブル12には、回転軸3と平行な方向に駆動できる流体圧シリンダ124を設けても良い。この場合、流体圧シリンダ124に回転軸3と垂直方向に延びるクランプアーム126を設ける。そして、クランプアーム126の先端に、クランプ体127が回転軸3を中心として回転可能に設けられる。流体圧シリンダ124が伸びたときに、クランプ体127は、加工対象物4をアンクランプする。流体圧シリンダ124が縮んだときに、クランプ体127は、加工対象物4をクランプする。そして、クランプ体127は、加工対象物4、載置台121と一体として回転軸3のまわりに回転する。このようなクランプ装置128としては、適宜種々のクランプ装置、例えば特開2015−182149号の装置を利用できる。
【0014】
なお図1では、回転軸3は鉛直方向に設けられているが、回転軸3を水平方向に設けても良い。加工テーブル12は、架台11上に垂直方向のまわりに回転するように設けられたターンテーブル上に設けても良い。また、加工テーブル12は、テーブル交換装置によって交換可能に設けられても良い。
【0015】
載置台121のみで十分に加工対象物4を固定できるときは、クランプアーム126、流体圧シリンダ124を設けることを要しない。
【0016】
以下の説明では、前後方向奥行き方向をZ軸、左右方向右向きをX軸、上下方向下向きをY軸と表記する場合がある。勿論、軸名称はこの例に限定される趣旨ではない。
【0017】
移動装置10は、主軸頭23をX軸方向に移動させるX軸移動装置10Aと、主軸頭23をZ軸方向に移動させるZ軸移動装置10Bと、主軸頭23をY軸方向に移動させるY軸移動装置10Cと、を含む。
【0018】
X軸移動装置10Aは、Z軸移動装置10Bを左右方向に移動させる左右方向直線ガイド15と、左右方向直線ガイド15上を摺動するガイドブロック15aと、左右方向移動サドル18と、左右方向駆動装置13と、を含む。
具体的には、架台11の後方寄り、架台11の上面には、2本の左右方向直線ガイド15が左右方向に平行に設けられている。左右方向直線ガイド15上には、ガイドブロック15aを介して左右方向移動サドル18が左右方向に移動可能に設けられている。架台11には、左右方向移動サドル18を駆動する左右方向駆動装置13が設けられている。
かかる構成により、X軸移動装置10Aは、Z軸移動装置10Bを左右方向に移動させることで、Z軸移動装置10Bに載置された移動コラム20を左右方向に移動させる。
【0019】
Z軸移動装置10Bは、前後方向直線ガイド19と、前後方向直線ガイド19上を摺動するガイドブロック19aと、前後方向駆動装置17と、を含む。
具体的には、左右方向移動サドル18の上面には、2本の前後方向直線ガイド19が前後方向に平行に設けられている。前後方向直線ガイド19には、ガイドブロック19aを介して移動コラム20が前後方向に移動可能に設けられている。左右方向移動サドル18の上面には、移動コラム20を駆動する前後方向駆動装置17が設けられている。
【0020】
Y軸移動装置10Cは、移動コラム20上に設けられる。Y軸移動装置10Cは、上下方向直線ガイド21と、上下方向直線ガイド21に沿って摺動するガイドブロック21a(図4参照)と、上下方向駆動装置22と、を含む。
具体的には、移動コラム20の正面には、上下方向に平行に2本の上下方向直線ガイド21が設けられている。上下方向直線ガイド21には、ガイドブロック21a(図4参照)を介して主軸頭23が上下方向に移動可能に設けられている。移動コラム20の前面側には、主軸頭23を上下方向に駆動する上下方向駆動装置22が設けられている。
【0021】
左右方向駆動装置13、前後方向駆動装置17および上下方向駆動装置22は、それぞれいわゆるサーボモータ・ボールねじ機構又はリニアモータ機構が用いられる。図3に示すように、上下方向駆動装置22は、駆動源となるサーボモータ22aと、サーボモータ22aに連結されたボールねじ22bと、ボールねじ22bに螺合されたボールナット22cと、を備えている。ボールナット22cは、主軸頭23の背面に固定されている。左右方向駆動装置13、および前後方向駆動装置17は、上下方向駆動装置22と同様の構成であるため、重複する詳細な説明は省略する。
【0022】
主軸頭23は、加工テーブル12に対して相対的に、前後、左右、上下方向に自在に移動できる。本実施形態では、工作機械1は、固定された加工テーブル12と、前後、左右、上下方向に移動できる主軸頭23を持つ。このような軸構成は、特に、加工テーブル12をターンテーブル上に配置した場合に好適である。
【0023】
なお、本実施形態においては、X軸移動装置10A上にX軸方向に移動可能にZ軸移動装置10Bを設けて、Z軸移動装置10B上にZ軸方向に移動可能に移動コラム20を設け、移動コラム20上にY軸方向に移動可能に主軸頭23を設けたが、これに限定されない。例えば次のように構成できる。架台11前方に、前後方向(Z軸方向)、左右方向(X軸方向)に移動できるように加工テーブル12を設ける。更に架台11後方に固定された移動コラム20を設け、移動コラム20上に上下方向(Y軸方向)に移動できる主軸頭23を設けても良い。主軸頭23のサイズ、加工テーブル12の設置方法に応じて、自由に軸構成を選択できる。
【0024】
工作機械1は、移動コラム20を設け、移動コラム20に上下方向に移動できる主軸頭を備えている。このため、本実施形態によれば、幅が狭い小型の工作機械1を提供できる。
【0025】
図2及び図3に従って、主軸頭23について説明する。図2図1のII方向からみた図であり、主軸モータ等の主軸駆動装置の細部の構成を一部省略している。図3図2のIII−III線断面図を示す。
主軸頭23は、垂直方向に延びて設けられた鉛直プレート231と、水平プレート232を有している。水平プレート232は、鉛直プレート231の上方に、鉛直プレート231の前記加工テーブルの方向に水平に延びて設けられている。そのため、主軸頭23は、横方向から見て、逆L字状を成している。水平プレート232および鉛直プレート231は、直方体状をなしている。鉛直プレート231の下方端部に、主軸体33が前後方向(Z軸)に延びて設けられている。水平プレート232の前方端部には、円筒状のハウジング233が鉛直方向に延びて設けられている。ハウジング233の内部に鉛直方向主軸25が上下方向(Y軸)のまわりに回転可能に設けられている。
【0026】
鉛直方向主軸25は、配列方向である左右方向に一列に並べて配置できる。好ましくは、加工対象物4(図1参照)の間隔35と同一間隔で、加工対象物4と同数設けられる。
【0027】
以下、鉛直方向主軸25が4つ設けられている場合について説明する。鉛直方向主軸25は、ハウジング233内に設けられた主軸受251に支持されている。鉛直方向主軸25の先端部(鉛直方向下側)には、回転工具である工具5が設けられている。鉛直方向主軸25の基端部には、従動プーリ31A,31Bが設けられている。水平プレート232の後方側には、テーブル状の主軸モータ台235が設けられている。主軸モータ台235の上部には、主軸モータ27が上下方向に延びて設けられている。主軸モータ27の出力軸には、上段の駆動プーリ29Aと、下段の駆動プーリ29Bが上下に2つ並べて設けられている。上段の駆動プーリ29Aと従動プーリ31Aの間には、ベルト30Aが張られている。下段の駆動プーリ29Bと従動プーリ31Bの間には、ベルト30Bが張られている。
【0028】
図4は、図2のIV方向から見た図である。図4に示すように、ベルト30A,30Bの張力は、それぞれアイドラプーリ32A,32Bによって調整されている。ここで、図2の左から1番目と3番目の鉛直方向主軸25については、下段のベルト30Bによって、下段の駆動プーリ29Bと連結している。そして、図2の左から2番目と4番目の鉛直方向主軸25については、上段のベルト30Aによって、上段の駆動プーリ29Aと連結している。
【0029】
なお、鉛直方向主軸25の構造は、ビルトインモータを備える主軸を用いても良い。また、ベルト伝達機構に替えて、歯車機構によって主軸モータ27の駆動力を伝達しても良い。
【0030】
図5を参照しながら、主軸体33について説明する。主軸体33は、ケース331と、モータ332と、水平方向主軸333とを有している。ケース331は、円筒状をなしている。ケース331の内部の後方端部には、モータ332が組み込まれている。そして、モータ332のロータと一体となった水平方向主軸333がケース331の内部に回転可能に設けられている。
【0031】
鉛直プレート231は、その下端部に前後方向に設けられた水平主軸取付け穴234を有している。水平主軸取付け穴234は、主軸体33と嵌合するように設けられている。主軸体33は、水平主軸取付け穴234内に挿入されて固定される。
【0032】
図2を参照して、好ましくは、水平方向主軸333は、配列方向(図では左右方向(X軸方向))に一列に並んで設けられる。このとき、水平方向主軸333は、加工対象物4の配置される間隔35と同一の間隔をあけて配置される。
【0033】
さらに望ましくは、鉛直方向主軸25と、水平方向主軸333は、前面から見て交互に配置される。即ち、最も左の鉛直方向主軸25から最も左の水平方向主軸333との水平方向の間隔37は、間隔35の半分となっている。
【0034】
更に望ましくは、加工対象物4の大きさは、工具5が加工対象物4の縁部を加工するときに、工具6が加工対象物4と干渉しない程度の大きさに抑える。図6は、前方から見た最大の加工対象物4を工具5が加工する様子を示している。図6を参照して、加工対象物4の最大の回転半径をR、間隔35をP、工具5の直径をD1、工具6の直径をD2とすれば、
R<(P−D1−D2)/4 (式1)
となるように、間隔35を設計できる。
【0035】
式1を満たせば、工具5が加工対象物4を加工するときに、工具6が加工対象物4又は回転載置台121と干渉しない。同様に、工具6が加工対象物4を加工するときに、工具5が加工対象物4又は回転載置台121と干渉しない。
【0036】
工具5、工具6は、ドリル、リーマ、タップ、ミルその他の回転工具が用いられる。
【0037】
なお、主軸頭23に対する鉛直方向主軸25および水平方向主軸333の固定方法は変更できる。例えば、鉛直方向主軸25は、水平方向主軸333と同様にビルトインモータの主軸体33を使用できる。
【0038】
なお、鉛直方向主軸25および水平方向主軸333は、単一の回転工具を装着しているが、鉛直方向主軸25又は水平方向主軸333に多軸ドリルヘッドを装着できる。
【0039】
主として図1を参照しながら、上述のように構成された工作機械1の作用および効果について説明する。工作機械1は、鉛直方向主軸25と水平方向主軸333を備えているため、水平方向の揺動軸回りに揺動する揺動テーブルを設けなくても加工対象物4を加工テーブル12に一度固定するだけで縦横2方向から加工できる。
【0040】
主軸頭23は、加工テーブル12に対して上下方向、左右方向および前後方向に移動できるため、工作機械1は、加工対象物4に対して自在な位置に加工できる。
【0041】
従来技術における、一方向の主軸と、揺動テーブルを備える工作機械(不図示)によれば、2方向の加工を行う場合、次の工程を取る。加工対象物を一方向に位置決めする。次に主軸頭を加工対象物に近接させて加工を行った後、主軸頭をZ方向に一旦逃がす。その後、加工テーブル12を揺動装置によって90度傾けた後に、再び主軸頭を加工対象物に近接させて加工を行う。そして、主軸頭をZ方向に逃がした後に、加工が完了する。
【0042】
これに対して、工作機械1によれば、水平方向の揺動軸回りに揺動する揺動テーブル(不図示)によって加工対象物4の姿勢を変えることなく、加工対象物4に主軸頭23を近接させたまま、鉛直方向および水平方向に次々に加工できる。すなわち、非加工時間を大幅に削減できる。
【0043】
主軸頭23は、垂直方向に延びて設けられた鉛直プレート231と、水平プレート232を有している。この水平プレート232は、鉛直プレート231の上方に設けられ、鉛直プレート231の加工テーブル12寄りに延びて設けられている。更に、鉛直方向主軸25は、水平プレート232の一方の端部に設けられ、水平方向主軸333は、鉛直プレート231の下端部に設けられている。その結果、左右方向から見て、工具5および工具6が加工対象物4を囲むように配置される。そのため、主軸頭23を左右、上下、前後方向に動かして垂直および水平方向に加工対象物4を加工するときに、前後方向および上下方向の移動ストロークを小さくできる。ここで前後方向直線ガイド19、前後方向駆動装置17、上下方向直線ガイド21および左右方向直線ガイド15は、ストロークに応じて長さが決まるため、工作機械1は、非常にコンパクトに構成できる。
【0044】
工作機械1は、垂直方向に設けられた垂直方向主軸25と、水平方向に設けられた水平方向主軸333とを備えている。2方向に備えられている主軸が、それぞれ水平方向と垂直方向であり、それらが直交しているため、工作機械1は操作しやすい。
【0045】
工作機械1は、主軸頭23に、配列方向(水平方向)に特定の間隔35(図2参照)をあけて設けられた複数の鉛直方向主軸25と、配列方向に間隔35と同一の間隔をあけて設けられた、鉛直方向主軸25と同数の水平方向主軸333を備えている。更に、加工テーブル12は、配列方向に間隔35と同一の間隔をあけて、鉛直方向主軸25と同数の加工対象物4が取付けられるように構成されている。そのため、複数の加工対象物4に対して、加工精度のばらつきを抑制して同一加工を同時に実行できる。
【0046】
工作機械1が複数の鉛直方向主軸25、複数の水平方向主軸333及び複数の加工対象物4を同数備えているときにおいて、鉛直方向主軸25と水平方向主軸333は、水平方向に見て交互に並んで設けられている。鉛直方向の加工を行うときは、工具5が加工対象物4の水平面への投影面上に位置する。そのときに工具6が加工対象物4と加工対象物4の間に抜ける。そのため、鉛直方向の工具5によって加工対象物4を加工するときには、水平方向の工具6は加工対象物4に干渉しない。そして、水平方向の工具6および加工対象物4が損傷しない。逆に水平方向の工具6が加工対象物4を加工するときに、鉛直方向の工具5が加工対象物4の間を抜けるため、工具5と加工対象物4とが干渉しない。
【0047】
加工テーブル12は、架台11に対して鉛直方向の回転軸3又は水平方向の回転軸(不図示)まわりに回転自在に設けられる載置台121と、載置台121を回転させる駆動モータ122と、を有している。そのため、加工対象物4を載置台121に一度固定するだけで、工作機械1は、鉛直方向の回転軸3又は水平方向の回転軸回りの内の任意の方向へ加工できる。
【0048】
水平方向主軸333は、主軸体33にモータ332と共に内蔵されている。この主軸体33が、一体となって主軸頭23に装着されているため、水平方向主軸333およびモータ332の交換が容易である。
【0049】
(第2実施形態)
次に、図7を参照して、第2実施形態の工作機械500について説明する。
工作機械500は、主軸頭53に上下2列の水平方向主軸333,333Aを設けている点で工作機械500と相違する。工作機械500のその他の構成は工作機械500と同一である。以下、工作機械500と同一の構成については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0050】
主軸頭53は、鉛直プレート531と水平プレート232とを含む。鉛直プレート531には、上下2列にそれぞれ4つの水平主軸取付け穴234,234A(図8参照)が設けられている。
【0051】
図8は、図7のVIII方向から見た主軸頭の主要な構成を示す。図8を参照して、下段の水平主軸取付け穴234A(図9参照)には、主軸体33Aが嵌合して挿入される。そして、鉛直方向主軸25と水平方向主軸333とは、左右方向において、交互に取り付けられている。さらに、上下2列の水平方向主軸333、333Aは、左右方向に揃えて格子状に設けられている。鉛直方向主軸25、水平方向主軸333、333Aはそれぞれ間隔35だけ開けて配列方向(左右方向)に一直線に並んで設けられている。そして、鉛直方向主軸25と水平方向主軸333A,333Bとの間は、配列方向において、間隔35の半分である間隔37となっている。2列の水平方向主軸333A,333Bとの鉛直方向の間隔は間隔34である。
【0052】
このとき、間隔34をL、加工対象物4の高さをH、加工対象物4からクランプアーム126上面までの高さをH2とすれば、
H+H2<L (式2)
となるように、間隔34が設計できる。
【0053】
図9は、図8のIX−IX線断面図を示す。図9を参照して、上段の水平主軸取付け穴234には、主軸体33が嵌合して挿入される。上段の水平方向主軸333は、下段に取り付けられた水平方向主軸333Aよりも前方に突出して設けられる。下段の水平方向主軸333Aには、回転工具である工具7が装着される。
【0054】
そして、好ましくは、上段の水平方向主軸333に装着される回転工具6は、下段に取り付けられた水平方向主軸333Aに装着される回転工具7よりも前方に間隔39だけ突出する。間隔39をL2、載置台121の最大回転半径をR2とすれば、
(R2−R)<L2 (式3)
ただし、R<R2
となるように、間隔39が設計できる。
【0055】
式3を満たすように水平方向主軸333、333Aが設けられれば、上段の水平方向主軸333に装着された回転工具6が加工対象物4を加工するときに、下段の水平方向主軸333Aに装着された回転工具7が載置台121と干渉しない。
【0056】
以上のように構成された工作機械500は、次のような作用効果を奏する。水平方向主軸333、333Aは左右方向に揃えて、水平方向において加工対象物4の配置間隔で設けられている。加えて、水平方向主軸333、333Aと鉛直方向主軸25とは交互に並んで配置されている。そのため、鉛直方向の加工を行うときは、工具5が加工対象物4の水平面への投影面上に位置する。そのときに工具6、7が加工対象物4と加工対象物4の間に抜ける。そのため、鉛直方向の工具5によって加工対象物4を加工するときには、水平方向の工具6、7は加工対象物4に干渉しない。そして、水平方向の工具6、7および加工対象物4が損傷しない。逆に水平方向の工具6または工具7が加工対象物4を加工するときに、鉛直方向の工具5がワークの間を抜けるため、工具5と加工対象物4とが干渉しない。
【0057】
好ましくは、上段の水平方向主軸333と、下段の水平方向主軸333Aとは、加工対象物4及びクランプアーム126の高さの和よりも大きく上下方向に間隔をあけて設けられる。上記構成によれば、上段の水平方向主軸333が加工対象物4に加工しているときに、下段の水平方向主軸333Aは、加工対象物4に干渉しない。また、同様に下段の水平方向主軸333Aが加工対象物4に加工しているときに、上段の水平方向主軸333は、加工対象物4およびクランプアーム126に干渉しない。
【0058】
上段に設けられた水平方向主軸333は、下段に設けられた水平方向主軸333Aよりも前方へ突出しているため、上段の水平方向の工具6によって加工対象物4を加工するときに、下段の水平方向の工具7は加工対象物4および載置台121に到達しない。従って、下段の水平方向の工具7は加工対象物4および載置台121に干渉しない。
【0059】
工作機械500は、上下2列の水平方向主軸333,333Aを備えているため、2種類の水平方向の工具6、7を装着できる。そのため、鉛直方向の加工に加えて、2種類の水平方向の加工工程を1台の工作機械に集約できる。
【0060】
なお、工具6又は工具7としては、回転工具の他に、回転可能な載置台121と共に、旋削用工具を用いても良い。
【0061】
また、2列の水平方向主軸333,333Aを設ける代わりに、鉛直方向主軸25が2列設けられても良い。
【0062】
本発明を、2つの実施形態に基づいて説明したが、当業者であれば、上述の実施形態の工作機械1、500を変形し、改良できる。本発明は、上述の実施形態の記述に限定されない。例えば、主軸頭23,53に設ける鉛直方向主軸25、水平方向主軸333および加工対象物4の数は自由に設定できる。加工対象物4に対する必要な加工位置、加工工程に応じて、主軸位置を変更しても良い。
【0063】
また、水平方向主軸333は、主軸頭23に対して、水平方向主軸333の軸線に沿って移動可能に構成しても良い。この場合、水平方向主軸333を送り出せるため、主軸頭23、加工テーブル12及び水平方向主軸333の設計自由度が広がる。このとき、上段の水平方向の工具6は、下段の水平方向の工具7よりも加工テーブル12の方向に突出させる必要はない。
【0064】
鉛直方向主軸25についても同様に、主軸頭23に対して、鉛直方向主軸25の軸線に沿って移動可能に構成しても良い。
【0065】
また、工作機械1、500において、鉛直方向主軸25と水平方向主軸333,333Aを縦方向に各一つのみ備えてもよい。この場合においても、鉛直方向主軸25と水平方向主軸333,333Aは左右方向に段違いに設けられ得る。
【符号の説明】
【0066】
1,500 工作機械
3 回転軸
4 加工対象物
5,6,7 工具
10 移動装置
10A X軸移動装置(移動装置)
10B Z軸移動装置(移動装置)
10C Y軸移動装置(移動装置)
11 架台
12 加工テーブル
13 左右方向駆動装置
15 左右方向直線ガイド
17 前後方向駆動装置
18 左右方向移動サドル
19 前後方向直線ガイド
20 移動コラム
21 上下方向直線ガイド
22 上下方向駆動装置
23,53 主軸頭
25 鉛直方向主軸
27 主軸モータ
32 アイドラプーリ
33,33A 主軸体
34,35,37,39 所定の間隔
121 載置台
122 駆動モータ
231,531 鉛直プレート
232 水平プレート
235 主軸モータ台
333,333A 水平方向主軸
図1
図2
図3
図4
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図6
図7
図8
図9