(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774345
(24)【登録日】2020年10月6日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】ガス処理装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/32 20060101AFI20201012BHJP
B01D 53/38 20060101ALI20201012BHJP
B01D 53/44 20060101ALI20201012BHJP
B01D 53/50 20060101ALI20201012BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20201012BHJP
B01D 53/76 20060101ALI20201012BHJP
B01F 15/04 20060101ALI20201012BHJP
B01D 53/56 20060101ALI20201012BHJP
B01D 53/70 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
B01D53/32
B01D53/38 100
B01D53/44 100
B01D53/50ZAB
B01D53/62
B01D53/76
B01F15/04 D
B01D53/56 400
B01D53/70
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-12381(P2017-12381)
(22)【出願日】2017年1月26日
(65)【公開番号】特開2018-118219(P2018-118219A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2019年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】大矢 康裕
(72)【発明者】
【氏名】岩田 昌之
(72)【発明者】
【氏名】井口 俊丸
【審査官】
壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−018231(JP,A)
【文献】
特開2012−213721(JP,A)
【文献】
特開平10−015051(JP,A)
【文献】
特開2010−234258(JP,A)
【文献】
特開2007−021290(JP,A)
【文献】
特開昭59−200719(JP,A)
【文献】
特開2011−152260(JP,A)
【文献】
特開2001−239239(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0158778(US,A1)
【文献】
特開2017−023974(JP,A)
【文献】
特開2018−118220(JP,A)
【文献】
特開2018−118221(JP,A)
【文献】
特開2004−275926(JP,A)
【文献】
特開2012−202637(JP,A)
【文献】
特開2013−170792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/34−53/73,53/74−53/85,53/92,53/96
B01F15/00−15/06
H05H1/00−1/54
A61L9/00−9/22
B01D53/00,53/24,53/30,53/32
B01J10/00−12/02,14/00−19/32
F24F6/00−6/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象ガスを浄化し処理済みガスとして出力するように構成されたガス処理装置において、
通風路に配置され、前記通風路を流れる前記処理対象ガスに加湿を行うように構成された水処理部と、
前記水処理部よりも前記通風路の下流側に設けられ、前記水処理部によって加湿された処理対象ガスを第1のガスとし、前記水処理部によって加湿される前の処理対象ガスあるいは前記処理済みガスを第2のガスとし、前記第1のガスと前記第2のガスとを混合することによって湿度調整を行うように構成された混合部と、
前記混合部よりも前記通風路の下流側に設けられ、前記混合部において湿度調整が行われた前記処理対象ガスが混合処理対象ガスとして通過する多数の貫通孔を有するハニカム構造体、および前記混合処理対象ガスが通過する方向に対して前記ハニカム構造体の上流側と下流側にそれぞれ配置された電極を有し、この電極間に印加される電圧によって前記ハニカム構造体の前記貫通孔にプラズマを発生させるように構成されたプラズマ処理部と、
前記混合部から前記プラズマ処理部に向かう前記混合処理対象ガスの絶対湿度を第1の絶対湿度として計測するように構成された第1の湿度計測部と、
前記プラズマ処理部を通過した前記混合処理対象ガスを前記処理済みガスとし、この処理済みガスの絶対湿度を第2の絶対湿度として計測するように構成された第2の湿度計測部と、
前記第1の絶対湿度が目標値となるように前記混合部における前記第1のガスと前記第2のガスとの混合比を制御するように構成された混合比制御部と、
前記第1の絶対湿度と前記第2の絶対湿度との差が所定の湿度差の範囲に入るように前記プラズマ処理部に印加される電圧を制御するように構成された印加電圧制御部と
を備えることを特徴とするガス処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたガス処理装置において、
前記印加電圧制御部は、
前記第1の絶対湿度と前記第2の絶対湿度との差が大きく、前記所定の湿度差の範囲を外れている場合、前記プラズマ処理部における前記混合処理対象ガスに対するガス処理能力を抑制するように前記プラズマ処理部に印加される電圧を制御するように構成されている
ことを特徴とするガス処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載されたガス処理装置において、
前記印加電圧制御部は、
前記第1の絶対湿度と前記第2の絶対湿度との差が小さく、前記所定の湿度差範囲を外れている場合、前記プラズマ処理部における前記混合処理対象ガスに対するガス処理能力を高めるように前記プラズマ処理部に印加される電圧を制御するように構成されている
ことを特徴とするガス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理対象ガスを浄化するガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、排気ガス中で高電圧放電を行ってプラズマ状態を作ることで、排気ガスを浄化する技術が知られている。近年、この技術は、脱臭を目的として、工場の排気を浄化する浄化装置や室内の空気を浄化する空気清浄機に応用されつつある。
【0003】
熱的に非平衡な状態、つまり気体の温度やイオン温度に比べ、電子温度が非常に高い状態のプラズマ(非平衡プラズマ(以下、単にプラズマと言う))は、電子衝突でつくられるイオンやラジカルが常温では起こらない化学反応を促進させるので、有害ガスを効率的に除去あるいは分解することが可能な媒体として有害ガス処理において有用であると考えられている。この技術の実用化上で肝心なことは、処理時のエネルギーの効率の向上と、プラズマで処理した後に完全に安全な生成物質へと変換されることである。
【0004】
一般に、大気圧でのプラズマは気体放電や電子ビームなどによって生成される。現在において、適用が考えられているものに、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、フロン、二酸化炭素(CO
2)
,揮発性有機溶剤(VOC)などがある。中でもNOxは車の排ガスなどに含まれているので早急な実用化が必要となっている。
【0005】
この種の処理対象ガスを浄化するガス処理装置として、多数の貫通孔を有するハニカム構造体を通風路内に配置し、ハニカム構造体の両端に配置された電極間に高電圧を印加し、ハニカム構造体の貫通孔内にプラズマを発生させるタイプのものがある。このガス処理装置では、ハニカム構造体の貫通孔に発生しているプラズマにより、この貫通孔を通過する処理対象ガスに含まれている有害ガスが無害な物質に分解される(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
このタイプのガス処理装置では、ハニカム構造体内において全体として均一なプラズマを発生させる技術が確立されておらず、ガス処理能力が不安定となる。一方、ハニカム構造体の内部でのプラズマの発生状態は、処理対象ガス中の水分が多いほど活発に行われ、水分が少ないと抑制されるという特性がある。すなわち、処理対象ガス中の水分が多いほどガス処理能力が高まり、水分が少ないとガス処理能力が低下するという特性がある。
【0007】
そこで、特許文献2には、電極とハニカム構造体との間の空間へ加湿装置によって水分を送り込み、処理対象ガス中の水分濃度を高め、プラズマ放電を活性化させて、ガス処理能力を高めるようにしたガス処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−140562号公報
【特許文献2】特開2004−089708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2に開示された技術では、加湿装置によって送り込む水分量を制御していないため、供給する水分量が過小であれば、プラズマ放電の発生が不十分でガス処理能力が不足し、処理物質が完全に分解されずに副生成物が発生する虞がある。供給する水分量が過多であれば、ガス処理能力は高まるが、放電が激しくなり、火花放電のような異常放電が発生する虞がある。また、プラズマ処理後の空気を室内に供給するものとした場合、室内に供給される空気の湿度が高くなってしまい、室内にいる人に不快な思いを感じさせてしまうという問題も生じる。
【0010】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、ハニカム構造体内の湿度環境を一定に保ち、ガス処理能力の安定化を図ることが可能なガス処理装置を提供することにある。
また、プラズマ処理後の空気の湿度が高くなって室内にいる人に不快な思いを感じさせてしまうということがないガス処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的を達成するために本発明は、処理対象ガスを浄化し処理済みガスとして出力するように構成されたガス処理装置(100)において、通風路(A)に配置され、通風路を流れる処理対象ガスに加湿を行うように構成された水処理部(1)と、水処理部よりも通風路の下流側に設けられ、水処理部によって加湿された処理対象ガスを第1のガスとし、水処理部によって加湿される前の処理対象ガスあるいは処理済みガスを第2のガスとし、第1のガスと第2のガスとを混合することによって湿度調整を行うように構成された混合部(2)と、混合部よりも通風路の下流側に設けられ、混合部において湿度調整が行われた処理対象ガスが混合処理対象ガスとして通過する多数の貫通孔(31a)を有するハニカム構造体(31)、および混合処理対象ガスが通過する方向に対してハニカム構造体の上流側と下流側にそれぞれ配置された電極(32,33)を有し、この電極間に印加される電圧によってハニカム構造体の貫通孔にプラズマを発生させるように構成されたプラズマ処理部(3)と、混合部からプラズマ処理部に向かう混合処理対象ガスの絶対湿度を第1の絶対湿度として計測するように構成された第1の湿度計測部(S1)と、プラズマ処理部を通過した混合処理対象ガスを処理済みガスとし、この処理済みガスの絶対湿度を第2の絶対湿度として計測するように構成された第2の湿度計測部(S2)と、第1の絶対湿度が目標値となるように混合部における第1のガスと第2のガスとの混合比を制御するように構成された混合比制御部(6)と、第1の絶対湿度と第2の絶対湿度との差が所定の湿度差の範囲に入るようにプラズマ処理部に印加される電圧を制御するように構成された印加電圧制御部(7)とを備えることを特徴とする。
【0012】
この発明において、第1の湿度計測部は、混合部からプラズマ処理部に向かう混合処理対象ガスの絶対湿度を第1の絶対湿度(hF)として計測し、第2の湿度制御部は、プラズマ処理部を通過した混合処理対象ガス(処理済みガス)の絶対湿度を第2の絶対湿度(hR)として計測する。混合比制御部は、第1の絶対湿度(hF)が目標値(hsp)となるように、第1のガス(水処理部によって加湿された処理対象ガス)と第2のガス(水処理部によって加湿される前の処理対象ガスあるいは処理済みガス)との混合比(M)を制御する。これにより、混合部からプラズマ処理部に向かう混合処理対象ガスの絶対湿度(hF)が目標値(hsp)とされ、この絶対湿度(hF)が目標値(hsp)とされた混合処理対象ガスがプラズマ処理部に送り込まれる。
【0013】
一方、印加電圧制御部は、第1の絶対湿度(hF)と第2の絶対湿度(hR)との差(Δh=hF−hR)が所定の湿度差の範囲(ΔhB±α)に入るように、プラズマ処理部の電極間に印加される電圧(V)を制御する。
例えば、第1の絶対湿度(hF)と第2の絶対湿度(hR)との差(Δh)が大きく、所定の湿度差の範囲を外れている場合(Δh>ΔhB+α)、プラズマ処理部における混合処理対象ガスに対するガス処理能力を抑制するように、プラズマ処理部の電極間に印加される電圧(V)を制御する。ガス処理能力が抑制されると、プラズマ処理部での水分の消費量が減り、第2の絶対湿度(hR)が高くなり、第1の絶対湿度(hF)と第2の絶対湿度(hR)との差(Δh)が小さくなって、第1の絶対湿度(hF)と第2の絶対湿度(hR)との差(Δh)が所定の湿度差の範囲(ΔhB±α)に入るようになる。
例えば、第1の絶対湿度(hF)と第2の絶対湿度(hR)との差(Δh)が小さく、所定の湿度差範囲を外れている場合(Δh<ΔhB−α)、プラズマ処理部における混合処理対象ガスに対するガス処理能力を高めるように、プラズマ処理部の電極間に印加される電圧(V)を制御する。ガス処理能力が高められると、プラズマ処理部での水分の消費量が増え、第2の絶対湿度(hR)が低くなり、第1の絶対湿度(hF)と第2の絶対湿度(hR)との差(Δh)が大きくなって、第1の絶対湿度(hF)と第2の絶対湿度(hR)との差(Δh)が所定の湿度差の範囲(ΔhB±α)に入るようになる。
【0014】
このようにして、本発明では、第1の絶対湿度(hF)が目標値(hsp)となるように第1のガスと第2のガスとの混合比(M)が制御され、第1の絶対湿度(hF)と第2の絶対湿度(hR)との差(Δh)が所定の湿度差の範囲(ΔhB±α)に入るようにプラズマ処理部の電極間に印加される電圧(V)が制御される。これにより、ハニカム構造体内の湿度環境が一定に保たれ、ガス処理能力の安定化が図られるものとなる。また、プラズマ処理後の空気の湿度が高くなって室内にいる人に不快な思いを感じさせてしまうというような問題も生じないものとなる。
【0015】
なお、上記説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の構成要素を、括弧を付した参照符号によって示している。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したことにより、本発明によれば、第1の絶対湿度が目標値となるように混合部における第1のガスと第2のガスとの混合比を制御し、第1の絶対湿度と第2の絶対湿度との差が所定の湿度差の範囲に入るようにプラズマ処理部の電極間に印加される電圧を制御するようにしたので、ハニカム構造体内の湿度環境を一定に保ち、ガス処理能力の安定化を図ることが可能となる。また、プラズマ処理後の空気の湿度が高くなって室内にいる人に不快な思いを感じさせてしまうというような問題も生じないものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係るガス処理装置の要部を示す図である。
【
図2】
図2は、このガス処理装置におけるスクラバーユニットの構成を示す概略図である。
【
図3】
図3は、このガス処理装置におけるプラズマ処理部の構成を示す概略図である。
【
図4】
図4は、このガス処理装置における制御装置のハードウェア構成の概略を示す図である。
【
図5】
図5は、制御装置のCPUが実行する処理動作(ミキシング制御部が行う処理動作)を説明するためのフローチャートである。
【
図6】
図6は、制御装置のCPUが実行する処理動作(印加電圧制御部が行う処理動作)を説明するためのフローチャートである。
【
図7A】
図7Aは、第1の絶対湿度hFと第2の絶対湿度hRとの差Δhが大きく、基準湿度差範囲ΔhB±αを外れている状態(Δh>ΔhB+α)を示す図である。
【
図7B】
図7Bは、第1の絶対湿度hFと第2の絶対湿度hRとの差Δhが基準湿度差範囲ΔhB±αに入った状態を示す図である。
【
図8A】
図8Aは、第1の絶対湿度hFと第2の絶対湿度hRとの差Δhが小さく、基準湿度差範囲ΔhB±αを外れている状態(Δh<ΔhB−α)を示す図である。
【
図8B】
図8Bは、第1の絶対湿度hFと第2の絶対湿度hRとの差Δhが基準湿度差範囲ΔhB±αに入った状態を示す図である。
【
図9】
図9は、ミキシング制御部の要部の機能ブロック図である。
【
図10】
図10は、印加電圧制御部の要部の機能ブロック図である。
【
図11】
図11は、スクラバーユニットによって加湿される前の処理対象ガスを第2のガスとしてミキシング部に供給するようにした例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態に係るガス処理装置100の要部を示す図である。
【0019】
このガス処理装置100は、通風路Aに配置された、スクラバーユニット(水処理部)1、ミキシング部(混合部)2およびプラズマ処理部3と、ミキシング部2に供給する処理済みガスEの流量の制御およびプラズマ処理部3の電極間に印加される電圧(以下、印加電圧とも呼ぶ。)Vの制御を行う制御装置4とを備えている。
【0020】
このガス処理装置100において、通風路AにはダクトA1が接続されている。ダクトA1は、プラズマ処理部3の下流側からミキシング部2に延びるダクトであり、処理済みガスEの一部をミキシング部2に戻す役割を果たす。ダクトA1には、ミキシング部2へ戻す処理済みガスEの流量を調整するための給気弁5が設けられている。
【0021】
また、このガス処理装置100において、スクラバーユニット1は、通風路Aを流れる処理対象ガスBに加湿を行う。ミキシング部2は、スクラバーユニット1よりも通風路Aの下流側に設けられ、スクラバーユニット1によって加湿された処理対象ガスCを第1のガスG1とし、ダクトA1を介する処理済みガスEを第2のガスG2とし、第1のガスG1と第2のガスG2とを混合することによって湿度調整を行う。プラズマ処理部3は、ミキシング部2よりも通風路Aの下流側に設けられ、ミキシング部2において湿度調整が行われた処理対象ガスを混合処理対象ガスDとして入力し、この入力される混合処理対象ガスDを浄化して処理済みガスEとする。
【0022】
また、このガス処理装置100において、ミキシング部2とプラズマ処理部3との間の通風路Aには、ミキシング部2からプラズマ処理部3に向かう混合処理対象ガスDの絶対湿度を第1の絶対湿度hFとして計測する湿度センサS1が設けられている。また、プラズマ処理部3の下流側の通風路Aには、プラズマ処理部3を通過した処理済みガスEの絶対湿度を第2の絶対湿度hRとして計測する湿度センサS2が設けられている。
【0023】
なお、処理対象ガスBに含まれる有毒ガスには、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、フロン、二酸化炭素(CO
2)
,揮発性有機溶剤(VOC)などがある。また、処理対象ガスBに含まれる粉塵には、金属粉、岩石粉などの無機粉塵、綿埃などの有機粉塵があり、本発明では、物の燃焼に伴い発生する煤塵や、自動車などの排気ガスに含まれる粒子状物質なども粉塵に含むものとする。
【0024】
図2は、このガス処理装置100におけるスクラバーユニット1の構成を示す概略図である。
図2に示されるように、スクラバーユニット1の槽11の内部は、仕切板12によって下部が連通した状態の2つの空間13−1,13−2に仕切られている。一方の空間13−1には、槽11の内壁11aと仕切板12とにより充填材14が支持され、充填材14の上方に、充填材14に向けて水を霧状に散布する散布部15が設けられている。
【0025】
また、散布部15の上方の位置の槽11には、充填材14を通過した相対湿度100%の処理対象ガスCを通風路Aに排気する排気口16が設けられている。また、充填材14が支持されている空間13−1とは他方の空間13−2を形成する槽11には、通風路Aに接続され、処理対象ガスBを吸気する吸気口17が設けられている。また、充填材14は、繊維状に加工されたポリエステル、ポリプロピレンなどの樹脂により構成され、繊維状の樹脂間には空隙が形成されている。
【0026】
槽11の底部には、水を貯留する水槽18が設けられており、水槽18に対してはこの水槽18の水を散布部15に揚水するポンプ19が設けられている。また、水槽18の底面には、排水ホース20が接続されており、排水ホース20には、排水弁21が設けられている。また、槽11には、給水口22が設けられ、給水口22には給水ホース23が接続されている。
【0027】
水槽18に貯留される水は循環水として利用され、ポンプ19により揚水され、散布部15により散布されるサイクルを繰り返す。汚れなどにより、循環水を交換する必要が生じた際には、排水弁21を開いて排水ホース20より排水し、給水ホース23が接続された給水口22より新たな水を供給する。
【0028】
このように構成されたスクラバーユニット1では、吸気口17から槽11内に送り込まれた処理対象ガスBが、充填材14内の空隙を上昇する際に、散布部15より散布される霧状の水と気液接触する。本実施の形態では、処理対象ガスBを水と気液接触させることにより、流入した処理対象ガスBの相対湿度を100%とする。相対湿度100%の処理対象ガスCはスクラバーユニット1の排気口16から排気される。
【0029】
ミキシング部2は、スクラバーユニット1側から吸気された相対湿度100%の処理対象ガスCを第1のガスG1とし、ダクトA1を介する処理済みガスEを第2のガスG2とし、第1のガスG1と第2のガスG2とを混合することによって、湿度が調整された混合処理対象ガスDを作る。
【0030】
ミキシング部2において、第2のガスG2として供給される処理済みガスEは、混合処理対象ガスDよりも湿度が低下している。すなわち、プラズマ処理部3で混合処理対象ガスDの水分が消費されることによって、処理済みガスE中の水分濃度は混合処理対象ガスDの水分濃度よりも低下する。ミキシング部2は、この混合処理対象ガスDよりも湿度の低い処理済みガスEと相対湿度100%の処理対象ガスCと混合する。この場合、混合処理対象ガスDの湿度は、第1のガスG1と第2のガスG2との混合比M(M=G1/G2)によって定められる。この混合比Mを制御装置4中のミキシング制御部6が制御する。ミキシング制御部6による混合比Mの制御については後述する。
【0031】
図3は、このガス処理装置100におけるプラズマ処理部3の構成を示す概略図である。
図3に示されるように、プラズマ処理部3は、混合処理対象ガスDが通過するハニカム構造体31と、ハニカム構造体31の上流側に配置される第1の電極32と、ハニカム構造体31の下流側に配置される第2の電極33と、第1の電極32と第2の電極33との間に高電圧を印加する高電圧電源34とを備えている。
【0032】
ハニカム構造体31は、通風路Aを流れる混合処理対象ガスDを通過させる方向に、蜂の巣状に形成された多数の貫通孔31aを有し、セラミックなどで構成されている。第1の電極32は、導線を介して高電圧電源34のプラス極に接続され、金属製メッシュなどで構成されている。第2の電極33は、導線を介して高電圧電源34のマイナス極に接続され、金属製メッシュなどで構成されている。第1の電極32および第2の電極33のメッシュ形状は、ハニカム構造体31に形成されている貫通孔31aより粗いものとされている。高電圧電源34は、第1の電極32と第2の電極33との間に数kV〜数10kVの高電圧を電圧Vとして印加する。
【0033】
このプラズマ処理部3において、第1の電極32と第2の電極33との間に高電圧が印加されると、ハニカム構造体31の貫通孔31aの内部にプラズマが発生する。これにより、プラズマ中に生成されるイオンやラジカルによって、混合処理対象ガスDに含まれる有害ガスが無害な物質に分解される。また、混合処理対象ガスDに含まれる粉塵が、第1の電極32および第2の電極33に帯電付着し、吸着除去される。プラズマ処理部3によって処理されたガスは、処理済みガスEとして通風路Aの下流側に排気される。
【0034】
このガス処理装置100において、制御装置4は、ミキシング制御部6と印加電圧制御部7とを備えている。
図4に制御装置4のハードウェア構成の概略を示す。
【0035】
制御装置4は、中央演算処理装置(CPU)4−1と、ランダムアクセスメモリ(RAM)4−2と、読み出し専用メモリ(ROM)4−3と、インタフェース4−4,4−5と、これらを接続する母線4−6とを備えている。また、この制御装置4には、本実施の形態特有のプログラムとして、混合比印加電圧制御プログラムがインストールされている。
【0036】
CPU4−1は、インタフェース4−4を介して入力される情報を処理することで、RAM4−2やROM4−3にアクセスしながら、制御装置4にインストールされている混合比印加電圧制御プログラムに従って動作する。この制御装置4において、ミキシング制御部6および印加電圧制御部7は、CPU4−1の処理機能として実現される。
【0037】
以下、この混合比印加電圧制御プログラムに従うCPU4−1の処理動作について、
図5および
図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、ここでは、ミキシング制御部6が
図6に示したフローチャートに従う処理動作を、印加電圧制御部7が
図7に示したフローチャートに従う処理動作を行うものとして説明する。
【0038】
〔混合比の制御〕
ミキシング制御部6は、湿度センサS1が計測する第1の絶対湿度hFを取り込み(
図5:ステップS101)、また予め設定されている目標値hspを読み出し(ステップS102)、この取り込んだ第1の絶対湿度hFと読み出した目標値hspとを比較する(ステップS103)。
【0039】
ここで、第1の絶対湿度hFが目標値hspと一致していなければ(ステップS103のNO)、ミキシング制御部6は、第1の絶対湿度hFと目標値hspとが一致するように、給気弁5の開度θを調整する(ステップS104)。すなわち、ミキシング制御部6は、ミキシング部2に供給する処理済みガスEの流量を調整することによって、第1の絶対湿度hFと目標値hspとが一致するように、ミキシング部2における第1のガスG1と第2のガスG2との混合比Mを調整(制御)する。
【0040】
この実施の形態では、目標値hspの設定によって、混合処理対象ガスDの相対湿度が約90%となるように、第1のガスG1と第2のガスG2との混合比Mを調整する。これにより、相対湿度が約90%とされた混合処理対象ガスDがプラズマ処理部3に送りこまれる。
【0041】
ここで、混合処理対象ガスDの相対湿度として設定する約90%とは、プラズマ放電の発生に十分な水分量、且つ火花放電のような異常放電の発生を抑制する水分量である。なお、この例では、混合処理対象ガスDの相対湿度を約90%とするが、これはあくまでも一例に過ぎない。プラズマ放電の発生に十分な水分量、且つ火花放電のような異常放電を発生を抑制する水分量であれば、混合処理対象ガスDの相対湿度の設定値すなわち第1の絶対湿度hFに対して定める目標値hspは、適宜変更可能である。
【0042】
〔印加電圧の制御〕
印加電圧制御部7は、湿度センサS1が計測する第1の絶対湿度hFと湿度センサS2が計測する第2の絶対湿度hRを取り込み(
図6:ステップS201,S202)、この取り込んだ第1の絶対湿度hFと第2の絶対湿度hRとの差Δh(Δh=hF−hR)を算出する(ステップS203)。
【0043】
そして、印加電圧制御部7は、所定の温度差の範囲として予め設定されている基準湿度差範囲ΔhB±αを読み出し(ステップS204)、第1の絶対湿度hFと第2の絶対湿度hRとの差Δhがこの基準湿度差範囲ΔhB±αに入るように、プラズマ処理部3の電極間に印加される電圧Vを調整(制御)する(ステップS205〜S208)。
【0044】
すなわち、
図7Aに示すように、第1の絶対湿度hFと第2の絶対湿度hRとの差Δhが大きく、基準湿度差範囲ΔhB±αを外れている場合(Δh>ΔhB+α、ステップS205のYES)、印加電圧制御部7は、プラズマ処理部3の電極間に印加される電圧Vを下げる(ステップS206)。
【0045】
これにより、プラズマ処理部3における混合処理対象ガスDに対するガス処理能力が抑制され、プラズマ処理部3での水分の消費量が減り、第2の絶対湿度hRが高くなり、第1の絶対湿度hFと第2の絶対湿度hRとの差Δhが小さくなって、第1の絶対湿度hFと第2の絶対湿度hRとの差Δhが基準湿度差範囲ΔhB±αに入るものとなる(
図7B参照)。
【0046】
また、
図8Aに示すように、第1の絶対湿度hFと第2の絶対湿度hRとの差Δhが小さく、基準湿度差範囲ΔhB±αを外れている場合(Δh<ΔhB−α、ステップS207のYES)、印加電圧制御部7は、プラズマ処理部3の電極間に印加される電圧Vを上げる(ステップS208)。
【0047】
これにより、プラズマ処理部3における混合処理対象ガスDに対するガス処理能力が高まり、プラズマ処理部3での水分の消費量が増え、第2の絶対湿度hRが低くなり、第1の絶対湿度hFと第2の絶対湿度hRとの差Δhが大きくなって、第1の絶対湿度hFと第2の絶対湿度hRとの差Δhが基準湿度差範囲ΔhB±αに入るものとなる(
図8B参照)。
【0048】
このようにして、本実施の形態では、第1の絶対湿度hFが目標値hspとるように第1のガスG1と第2のガスG2との混合比Mが調整(制御)され、第1の絶対湿度hFと第2の絶対湿度hRとの差Δhが基準湿度差範囲ΔhB±αに入るようにプラズマ処理部3の電極間に印加される電圧Vが調整(制御)されるものとなる。
【0049】
これにより、本実施の形態では、ハニカム構造体31内の湿度環境が一定に保たれ、ガス処理能力の安定化が図られるものとなる。また、プラズマ処理後の空気を室内に供給するものとした場合、プラズマ処理後の空気の湿度が高くなって室内にいる人に不快な思いを感じさせるというようなこともなくなる。
【0050】
図9に、ミキシング制御部6の要部の機能ブロック図を示す。ミキシング制御部6は、第1の絶対湿度取込部61と、目標値記憶部62と、湿度比較部63と、開度調整部(混合比調整部)64とを備えている。
【0051】
このミキシング制御部6において、第1の絶対湿度取込部61は、湿度センサS1が計測する第1の絶対湿度hFを取り込む。目標値記憶部62には、予め設定される目標値hspが記憶されている。湿度比較部63は、第1の絶対湿度取込部61が取り込んだ第1の絶対湿度hFと目標値記憶部62に記憶されている目標値hspとを比較する。開度調整部(混合比調整部)64は、湿度比較部63からの比較結果に基づいて、第1の絶対湿度hFと目標値hspとが一致するように、給気弁5の開度θ(ミキシング部2における混合比M)を調整する。
【0052】
図10に、印加電圧制御部7の要部の機能ブロック図を示す。印加電圧制御部7は、第1の絶対湿度取込部71と、第2の絶対湿度取込部72と、湿度差算出部73と、基準湿度差範囲記憶部74と、印加電圧調整部75とを備えている。
【0053】
この印加電圧制御部7において、第1の絶対湿度取込部71は、湿度センサS1が計測する第1の絶対湿度hFを取り込み、第2の絶対湿度取込部72は、湿度センサS2が計測する第2の絶対湿度hRを取り込む。湿度差算出部73は、湿度センサS1によって計測された第1の絶対湿度hFと湿度センサS2によって計測された第2の絶対湿度hRとの差Δh(Δh=hF−hR)を算出する。基準湿度差範囲記憶部74には、予め設定されている基準湿度差範囲ΔhB±αが記憶されている。
【0054】
印加電圧調整部75は、湿度差算出部73によって算出された湿度の差Δhが基準湿度差範囲ΔhB±α内にあるか否かを確認し、算出された湿度の差Δhが基準湿度差範囲ΔhB+αよりも大きい場合にはプラズマ処理部3の電極間に印加される電圧Vを下げるように、算出された湿度の差Δhが基準湿度差範囲ΔhB−αよりも小さい場合にはプラズマ処理部3の電極間に印加される電圧Vを上げるように、プラズマ処理部3の電極間に印加される電圧Vを調整する。
【0055】
なお、上述した実施の形態では、印加電圧制御部7によってプラズマ処理部3の電極間に印加される電圧Vの値(レベル)を調整(制御)するようにしたが、プラズマ処理部3の電極間に周期的に電圧Vを印加するものとし、この印加される電圧Vのデューティ比(1周期内のオン時間とオフ時間との割合)を調整(制御)するなどしてもよい。
【0056】
また、上述した実施の形態では、スクラバーユニット1が処理対象ガスBの相対湿度を100%に調整するものとしたが、スクラバーユニット1が調整する相対湿度は100%に限られるものではない。すなわち、安定した高湿度の処理対象ガスBを得ることができれば、スクラバーユニット1が調整する相対湿度の設定値は適宜設定可能である。
【0057】
また、上述した実施の形態では、プラズマ処理部3の下流側からミキシング部2に延びるダクトA1を設け、処理済みガスEを第2のガスG2としてミキシング部2に供給するようにしたが、
図11に示すように、スクラバーユニット1の上流側からミキシング部2に延びるダクトA2を設け、スクラバーユニット1によって加湿される前の処理対象ガスBを第2のガスG2としてミキシング部2に供給するようにしてもよい。
【0058】
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のガス処理装置は、燃料電池等に用いられる水素を効率的に生成する目的で、炭化水素類等から水素含有ガスを生成する、いわゆる改質にも適用することができる。
例えばオクタン(ガソリンの平均分子量に比較的近い物質)C
8H
18の場合は、本ガス処理装置に供給すると下記(1)式で示される化学反応が促進され、その結果水素ガスを効率よく生成することができる。
C
8H
18+8H
2O+4(O
2+4N
2)→8CO
2+17H
2+16N
2・・・・(1)
【符号の説明】
【0060】
1…スクラバーユニット(水処理部)、2…ミキシング部(混合部)、3…プラズマ処理部、4…制御装置、4−1…CPU、4−2…RAM、4−3…ROM、4−4,4−5…インタフェース、5…給気弁、6…ミキシング制御部、7…印加電圧制御部、A…通風路、A1,A2…ダクト、S1,S2…湿度センサ、31…ハニカム構造体、32,33…電極、61…第1の絶対湿度取込部、62…目標値記憶部、63…湿度比較部、64…開度調整部(混合比調整部)、71…第1の絶対湿度取込部、72…第2の絶対湿度取込部、73…湿度差算出部、74…基準湿度差範囲記憶部、75…印加電圧調整部、100…ガス処理装置。