【実施例1】
【0021】
図1は、本発明の実施例1に係る金属ベローズ型アキュムレータ1の縦断面を示しており、中心軸cが左右に延びた水平状態に置かれ、金属ベローズ2が伸張された蓄液状態にある。
【0022】
図1において、金属ベローズ型アキュムレータ1は、ベローズ2として金属ベローズを用いる金属ベローズ型アキュムレータであって図示しない圧力配管に接続されるオイルポート3を一端(図では左端)に備えるとともにガス封入口4を他端(図では右端)に備えたハウジング5を有している。ガス封入口4は、ガス注入後、ガスプラグ6で閉じられる。
【0023】
このハウジング5の内部に金属ベローズ2およびベローズキャップ7が配置されてハウジング5の内部が高圧ガス(例えば窒素ガス)を封入するガス室8と、オイルポート3に連通する液室9とに仕切られる。
【0024】
金属ベローズ2は、その固定端2aをハウジング5のオイルポート3側内面であるオイルポート部材10の内面に固定(溶接)されるとともにその遊動端2bに円盤状のベローズキャップ7を固定(溶接)している。
これにより、金属ベローズ2の外周側がガス室8、金属ベローズ2の内周側が液室9となっている。
【0025】
ベローズキャップ7の外周部には、ハウジング5の内面に対して金属ベローズ2およびベローズキャップ7が接触しないように制振リング11が取り付けられる。
なお、この制振リング11はシール作用を奏するものではない。
【0026】
また、金属ベローズ2の内周側であってハウジング5のオイルポート3側内面であるオイルポート部材10の内面にステー(内部台座)12が配置され、このステー12の外周側に上記金属ベローズ2が配置されている。
ステー12は、金属成形品よりなり、段差12b付きの筒状部12aの形状を有し、オイルポート部材10の内面に固定(溶接)され、円盤状を呈する端面部12cの中央には液体出入口12dが設けられている。
【0027】
ベローズキャップ7におけるステー12側の面に、環状のシールホルダ13を介して円盤状のシール部材14が保持されており、ベローズキャップ7がステー12に近付く方向(図では左方)へ移動すると、シール部材14がステー12の端面部12cに密接し、これによりベローズキャップ7およびステー12の間がこのシール部材14を介して密閉されて液体出入口12dが閉塞される。
したがって液室9内に一部の液体が閉じ込められ、この閉じ込められた液体の圧力とガス室8のガス圧力とが均衡するので、金属ベローズ2に過大な応力が作用して金属ベローズ2が破損するのが抑制される。
シール部材14は、円盤状の金属板14aの表面の一部または全部にゴム状弾性体14bを被覆したものである。
【0028】
ベローズキャップ7は、金属ベローズ2の伸縮に伴い共に移動する可動部材の重心Gを金属ベローズ2の遊動端2b側に可及的に近づけるために金属ベローズ2の遊動端2bよりもガス室8側に位置するように配設される。
図1において、可動部材は、金属ベローズ2、ベローズキャップ7、制振リング11、シールホルダ13及びシール部材14から構成されている。
【0029】
図1において、ベローズキャップ7は、外周部7a及び外周部7aに対してガス室8側に突出した中央部7bを有し、外周部7aの液室9側の面が金属ベローズ2の遊動端2bに当接され、この当接部において溶接等
により金属ベローズ2に固定されている。そして、ベローズキャップ7の外周部7a及び金属ベローズ2の遊動端2bを内周側において挟み込むと共に外周側がハウジング5の内壁に僅かな間隙を持って対峙するように形成された制振リング11が装着されている。
【0030】
また、ベローズキャップ7の中央部7bはガス室側に突出し、液室9側には凹部7cが形成され、該凹部7c内にシール部材14が収納されるようになっている。さらに、凹部7cの外周にはシールホルダ13を装着するための中間凹部7dが形成され、この中間凹部7dにシールホルダ13が装着されている。中間凹部7dの深さはシールホルダ13の厚みより大きく設定され、シールホルダ13が外周部7aの液室9の面より液室側に突出しないようにされている。
このように構成することにより、金属ベローズ2の遊動端2b側に装着される可動部材のうち、ベローズキャップ7、シールホルダ13及びシール部材14を金属ベローズ2の遊動端2bよりもガス室8側に位置するように構成することができる。
【0031】
さらに、ベローズキャップ7には金属ベローズ2の伸縮に伴い共に移動する可動部材の重心Gを金属ベローズ2の遊動端2b側に可及的に近づけるための重し手段が施されている。
図1に示す実施例1の場合、重し手段は、ベローズキャップ7のガス室8側に溶接等の固着手段により装着される重錘15により構成されている。
重錘15の材料としては、比重の大きい材料、例えば、鉄(錬鉄及び鋳鉄)が好ましいが、鉄に限らず、鉄以上の比重を有する金属材料であれば、より好ましい。
また、重錘15の形状は、例えば、円筒体、直方体、または、断面T字状部材(この場合、T字の垂直部分の底部がベローズキャップ7のガス室側の面に当接するように配設される。)など、任意の形状を採ることができる。また、重錘15の大きさは、金属ベローズ型アキュムレータに入力される振動の周波数などを考慮して設計的に決められる。
【0032】
次に、
図2を参照しながら、本発明の実施例1に係る金属ベローズ型アキュムレータが振動を受けた場合の状態を説明する。
今、金属ベローズ型アキュムレータ1に対して下向きの振動が入力されたとすると、金属ベローズ2内部の蓄液の質量が金属ベローズ2に働き、金属ベローズ2の中央部を矢印W1に示すように下向きに押す。この下向きの力が作用すると、金属ベローズ2の可動端部側の下側を矢印Xで示すような広げる方向にモーメントM1が働く。
【0033】
下向きの振動は、同時に、金属ベローズの可動端部にも作用し、可動端部の質量が金属ベローズ2に働き、金属ベローズ2の可動端部側の下側を矢印W2で示すように下向きに押す。この下向きの力が作用すると、金属ベローズ2の可動端部側の下側を矢印Yで示すような縮める方向にモーメントM2が働く。
金属ベローズ2の可動端部側の下側を広げる方向に作用するモーメントM1と縮める方向に作用するモーメントM2の向きは逆であるため、金属ベローズの中間部(腹部)における中心軸cに対して直交する方向の振幅は抑制される。
【0034】
その際、金属ベローズ2の遊動端2b側に装着される可動部材の大部分を金属ベローズ2の遊動端2bよりもガス室8側に位置するように構成されていること、及び、ベローズキャップ7のガス室8側に重錘15が装着されていることにより、金属ベローズの伸縮に伴い共に移動する可動部材の重心Gは金属ベローズ2の遊動端2b側に近づけられているため、金属ベローズの中間部(腹部)における中心軸cに対して直交する方向の振幅を大幅に抑制することができる。
【0035】
次に、本発明の実施例1に係る金属ベローズ型アキュムレータと
図3に示した従来技術の金属ベローズ型アキュムレータとの実験結果を以下の表に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
以上の結果から、従来技術に比べ、本発明の実施例1に係る金属ベローズ型アキュムレータにおいては、金属ベローズ2の遊動端2b側に装着される可動部材の大部分を金属ベローズ2の遊動端2bよりもガス室8側に位置するように構成されていること、及び、ベローズキャップ7のガス室8側に重錘15が装着されていることにより、金属ベローズの伸縮に伴い共に移動する可動部材の重心Gは金属ベローズ2の遊動端2b側に近づけられているため、中間部(腹部)の振幅を大幅に抑制できることが確認された。
【0038】
また、金属ベローズ2の伸縮に伴い共に移動する可動部材の重心Gを金属ベローズ2の遊動端2b側に可及的に近づけるための重し手段としてベローズキャップ7のガス室8側に重錘15を装着する構成とした場合、重錘15の大きさを調整することにより、特定周波数における金属ベローズの振幅の低減が可能である。さらに、重錘15の大きさを変えることにより、金属ベローズの振動周波数も変化させることができる。
さらに、ガス室8に重錘15を装着することで、ガス室8の容積を調整するためにガス室8に体積調整液を充填することを不要とすることができ、あるいは、樹脂製の体積調整用スペーサを挿入することを不要とすることができる。
【0039】
上記した実施例1においては、金属ベローズ2の伸縮に伴い共に移動する可動部材の重心を金属ベローズ2の遊動端
2b側に可及的に近づけるため、ベローズキャップ7、シール部材14及びシールホルダー13は金属ベローズ2の遊動端2bよりもガス室側に配設されると共にベローズキャップ7にはガス室8側に装着される重錘15により構成される重し手段が施されることにより、以下のような効果を奏する。
(1)金属ベローズ2の中間部(腹部)の振幅を大幅に抑制でき、金属ベローズの破損を防止するようにした金属ベローズ型アキュムレータを提供することができる。
(2)重錘15の大きさを調整することにより、特定周波数における金属ベローズの振幅の低減が可能である。さらに、重錘15の大きさを変えることにより、金属ベローズの振動周波数も変化させることができる。
(3)ガス室8に重錘15を装着することで、ガス室8の容積を調整するためにガス室8に体積調整液を充填することを不要とすることができ、あるいは、樹脂製の体積調整用スペーサを挿入することを不要とすることができる。
【実施例4】
【0042】
実施例4においては、
図1に示す実施例1の金属ベローズ型アキュムレータにおいて、金属ベローズ2の伸縮に伴い共に移動する可動部材の重心Gを金属ベローズ2の遊動端2b側に可及的に近づけるための重し手段は、ベローズキャップ7にはガス室8側に装着される重錘15に代えて、ベローズキャップ7の外周部に装着される制振リング11の少なくとも一部が鉄の比重以上の比重からなる金属材料により形成されることで構成される点で実施例1と相違するが、その他の点では実施例1と同じである。
すなわち、実施例4の金属ベローズ型アキュムレータは、実施例1と同じく、金属ベローズ2の伸縮に伴い共に移動する可動部材の重心を金属ベローズ2の遊動端
2b側に可及的に近づけるため、ベローズキャップ7、シール部材14及びシールホルダー13は金属ベローズ2の遊動端2bよりもガス室側に配設されている。
そして、制振リング11が鉄の比重以上の比重からなる金属材料により形成されることで構成されることで、可動部材の重心を金属ベローズ2の遊動端
2b側に、一層、近づけるようにしている。制振リング11としては、例えば、鉄で全体を構成する他、鉛、銅など鉄よりも比重の大きな材料を貼付して、制振リング11の重量を大きくすることが好ましい。
本実施例によれば、重し手段として特別な部材を準備することなく、金属ベローズ2の中間部(腹部)の振幅を大幅に抑制でき、金属ベローズの破損を防止するようにした金属ベローズ型アキュムレータを提供することができる。
【0043】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。