(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774423
(24)【登録日】2020年10月6日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】エアロゾル発生装置用のフィードバック制御式RTD調節
(51)【国際特許分類】
A24F 40/485 20200101AFI20201012BHJP
A24F 40/50 20200101ALI20201012BHJP
A24F 47/00 20200101ALI20201012BHJP
A61M 15/06 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
A24F40/485
A24F40/50
A24F47/00
A61M15/06 A
A61M15/06 C
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-545579(P2017-545579)
(86)(22)【出願日】2016年2月25日
(65)【公表番号】特表2018-508211(P2018-508211A)
(43)【公表日】2018年3月29日
(86)【国際出願番号】EP2016054035
(87)【国際公開番号】WO2016135271
(87)【国際公開日】20160901
【審査請求日】2019年2月25日
(31)【優先権主張番号】15156923.3
(32)【優先日】2015年2月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100158551
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 貴明
(72)【発明者】
【氏名】ヨッホノヴィッツ エヴァン
【審査官】
河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/133091(WO,A1)
【文献】
特表2011−515093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00−47/00
A61M 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気加熱式エアロゾル発生装置であって、
エアロゾル発生基体を受けるためのくぼみを有する外側ハウジングと、
前記くぼみ内の前記エアロゾル発生基体を加熱してエアロゾルを発生するための少なくとも一つの発熱体を含む電気ヒーターと、
少なくとも一つの空気吸込み口と、
少なくとも一つの空気出口と、
前記少なくとも一つの空気吸込み口から前記くぼみを通って、前記少なくとも一つの空気出口へ延びる気流経路と、
前記気流経路の引き出し抵抗を決定するための手段と、
前記決定された引き出し抵抗に基づき前記気流経路の前記引き出し抵抗を自動的に調節する手段とを備える、電気加熱式エアロゾル発生装置。
【請求項2】
前記調節手段が前記気流経路の前記引き出し抵抗を範囲内に維持するよう構成された、請求項1に記載の電気加熱式エアロゾル発生装置。
【請求項3】
前記引き出し抵抗の範囲が約80mm WG〜約100mm WGである、請求項2に記載の電気加熱式エアロゾル発生装置。
【請求項4】
前記調節手段が調節可能なオリフィスを備える、請求項1、2または3に記載の電気加熱式エアロゾル発生装置。
【請求項5】
前記調節可能なオリフィスがアイリス絞りである、請求項4に記載の電気加熱式エアロゾル発生装置。
【請求項6】
前記電気ヒーターに電力を供給するための電源と、前記電源および前記電気ヒーターに接続する電気的ハードウェアと、前記電源から前記電気ヒーターへの電力供給を制御するよう構成されたコントローラとをさらに備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気加熱式エアロゾル発生システム。
【請求項7】
前記引き出し抵抗を決定するための前記手段が圧力センサーを含む、請求項6に記載の電気加熱式エアロゾル発生装置。
【請求項8】
前記引き出し抵抗が、ルックアップテーブルを使用して前記圧力センサー出力を引き出し抵抗に相関付けることによるか、または前記圧力センサー出力に基づき多項式を評価することによって決定される、請求項7に記載の電気加熱式エアロゾル発生装置。
【請求項9】
前記コントローラがさらに前記調節手段を制御するように構成され、前記調節手段が電気的に動作する、請求項6、7または8に記載の電気加熱式エアロゾル発生システム。
【請求項10】
前記コントローラが、第一の吸煙時に前記引き出し抵抗を決定し、前記第一の吸煙と第二の吸煙の間で前記調節手段を自動的に制御して、前記第一の吸煙の前記決定された引き出し抵抗に基づき前記第二の吸煙についての前記引き出し抵抗を調節するように構成される、請求項9に記載の電気加熱式エアロゾル発生装置。
【請求項11】
機械的に動作する圧力補正流量弁を通過する空気流量を、前記機械的に動作する圧力補正流量弁の前後での圧力差に基づき維持するように構成された前記機械的に動作する圧力補正流量弁をさらに備える、請求項1〜10のいずれか1項に記載の電気加熱式エアロゾル発生装置。
【請求項12】
前記機械的に動作する圧力補正流量弁が前記機械的に動作する圧力補正流量弁の前後での前記圧力差を定めるばね係数を有するばねを備える、請求項11に記載の電気加熱式エアロゾル発生装置。
【請求項13】
前記電気ヒーターが前記くぼみの少なくとも一つの壁に隣接して提供される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の電気加熱式エアロゾル発生装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の電気加熱式エアロゾル発生装置と、たばこを含むエアロゾル発生基体とを備えた、電気加熱式エアロゾル発生システム。
【請求項15】
前記たばこが、パイプたばこ、カットフィラー、再構成たばこ、および均質化したたばこのうち少なくとも一つである、請求項14に記載の電気加熱式エアロゾル発生システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、喫煙装置などの、電気加熱式エアロゾル発生装置に関連する。特に、本発明は、使用時に装置の引き出し抵抗を調節するためのフィードバック制御式システムを有する装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
電気加熱式の喫煙システムは一般に、エアロゾル形成基体を加熱して喫煙者に提供されるエアロゾルを形成するヒーターに接続された電源(電池など)を備える。動作時に、これらの電気加熱式の喫煙システムは一般に、動作のために望ましい温度範囲を提供して揮発性化合物を放出する高電力パルスをヒーターに供給する。電気加熱式の喫煙システムは、再使用可能としてもよく、またエアロゾルを形成するために、エアロゾル形成基体を含む使い捨て喫煙物品を受けるように配置されてもよい。別の方法として、電気ヒーターに隣接してルースたばこを提供してもよい。ルースたばこが使用される場合、通常、ユーザーは、装置を使用する前に要求される量のたばこをくぼみに充填する。それから、ルースたばこは、たばこの燃焼に十分な温度に達することなく、たばこ内の望ましい揮発性化合物が揮発するのに十分な温度に加熱される。
【0003】
こうしたシステムは、使用するたばこの固有の属性、およびタイプ、くぼみ内に入れたたばこの量、くぼみに入れる際にユーザーがたばこをどの程度圧縮したか、など、ユーザーのコントロール下のみにある多くの要因に応じて、非常に異なる結果を生む。特に、引き出し抵抗は、これらの要因と共に著しく変化しかねず、これは望ましくない。
【0004】
ユーザーによって変化させることができる引き出し抵抗を持つエアロゾル発生装置が周知である。ところが、これらの装置は回転可能な要素によるなど、手動で調節可能であり、一般的に、使用時に簡単には調節できないか、または特定の任意の精度や一貫性をもって調節できない。
【0005】
したがって、エアロゾル発生装置の単回の使用時、および使用中のどちらでも、引き出し抵抗の可変性を低減することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一態様によれば、電気加熱式エアロゾル発生装置が提供されている。装置は、エアロゾル発生基体を受けるためのくぼみを有する外側ハウジングと、くぼみ内のエアロゾル発生基体を加熱してエアロゾルを発生するための少なくとも一つの発熱体を含む電気ヒーターと、少なくとも一つの空気吸込み口と、少なくとも一つの空気出口と、少なくとも一つの空気吸込み口からくぼみを通って、少なくとも一つの空気出口へ延びる気流経路と、気流経路の引き出し抵抗を決定するための手段と、決定された引き出し抵抗に基づき気流経路の引き出し抵抗を自動的に調節する手段とを備える。
【0007】
有利なことに、気流経路の引き出し抵抗(RTD)を決定するための手段、およびその決定されたRTDに基づきRTDを調節するための手段の両方を提供することで、使用間および使用時の両方に、装置はユーザーにより一貫性のあるユーザー体験を提供できるようになる。空隙率、湿度、およびサイズなど、エアロゾル形成基体に一貫性がないことで、装置の使用間でRTDが変化しうることが分かっている。さらに、毎回の使用時にエアロゾル形成基体が乾燥する際にRTDは変化しうることが分かっている。本発明は、使用時にユーザーの介入なしにRTDが変化されうるようにすることで、これらの欠点を軽減する。
【0008】
本明細書で使用される「エアロゾル発生装置」という用語は、エアロゾル形成基体と相互作用して、ユーザーの口を通してユーザーの肺に直接吸入可能なエアロゾルを発生するエアロゾル発生装置を記述するために使用される。
【0009】
好ましい一つの実施形態では、調節手段は、気流経路の引き出し抵抗が範囲内に自動的に維持されるように構成される。調節手段は、引き出し抵抗が約75mmWG〜約110mmWGの範囲内に自動的に維持されることが好ましく、また約80mmWG〜約100mmWGの範囲内であることがより好ましい。RTDの範囲は、従来的な点火端のある紙巻たばこと近似するように構成されうる。
【0010】
本明細書で使用される場合、「引き出し抵抗」という用語は、試験下の物体の全長にわたり空気を17.5 ml/秒、22℃および101kPa(760 Torr)のレートで強制的に通すために必要な圧力を意味し、一般にミリメートル水位計(mmWG)の単位で表現され、またISO 6565:2011に従い測定される。
【0011】
理解されるとおり、エアロゾル発生装置の使用時に、規格ISO 6565:2011の方法を使用してRTDを測定することはできない。したがって、装置に提供されているRTDを決定するための手段は、実際のRTDの近似値を提供するように、ISO 6565:2011の方法に対して補正される。
【0012】
より一貫性のあるユーザー体験を提供することに加えて、装置のRTDを制御されるようにすることで、エアロゾル化されるエアロゾル形成基体の量が制御されうる。装置のRTDと形成されるエアロゾルの量との間には相関があることが分かっている。さらに、装置のRTDが制御されるようにすることで、エアロゾルの液滴サイズが制御されるようになりうる。装置のRTDと形成されるエアロゾルの液滴サイズとの間には相関があることが分かっている。例えば、これは吸入されたエアロゾルの口当たりに影響しうる。
【0013】
調節手段は気流経路内に調節可能な狭窄部を備えうるが、特に調節可能な狭窄部は調節可能なオリフィスとしうる。調節可能な狭窄部は、柔軟な部分に外力がかけられて気流経路内に制御可能な狭窄が生じうるように、気流経路の柔軟な部分としうる。調節可能な狭窄部が調節可能なオリフィスである場合、調節可能なオリフィスは、アイリス、アイリス絞り、またはシャッターとしうる。好ましい一つの実施形態では、調節可能なオリフィスはアイリス絞りである。アイリス絞りは、例えば5〜11枚またはそれ以上の適切な任意の数の羽根を持ちうる。
【0014】
電気加熱式エアロゾル発生システムはさらに、電気ヒーターに電力を供給するための電源と、電源および電気ヒーターに接続する電気的ハードウェアと、電源から電気ヒーターへの電力供給を制御するよう構成されたコントローラとを備えることが好ましい。
【0015】
引き出し抵抗を決定するための手段は、圧力センサーを含むことが好ましい。圧力センサーは、静電容量センサー、圧電センサーまたは電磁センサーとしうる。特に、測定される低圧に最も適切であるため、静電容量センサーが使用されうる。
【0016】
引き出し抵抗は、ルックアップテーブルを使用して圧力センサー出力を引き出し抵抗に相関付けるか、または圧力センサー出力に基づき多項式を評価することによって決定されうる。
【0017】
気流経路のRTDを決定するための手段は、くぼみの下流に提供されることが好ましい。RTDを調節するための手段は、くぼみの上流または下流に提供されうる。
【0018】
本明細書で使用される場合、「下流」という用語は、空気吸込み口から空気出口への空気の流れの方向を意味するために使用され、「上流」という用語は「下流」と反対の方向である。従って、エアロゾル発生装置の下流端は、マウスピース端など、ユーザーが吸う端部である。
【0019】
少なくとも一つの空気吸込み口がくぼみの上流の任意の位置に提供されうる。一つの実施形態で、少なくとも一つの空気吸込み口はくぼみの側壁に提供される。装置は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上の空気吸込み口を備えうる。
【0020】
少なくとも一つの空気出口が、気流経路の下流端に提供される。装置は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上の空気吸込み口を備えうる。
【0021】
コントローラはさらに、調節手段を制御するように構成されることが好ましく、調節手段は電気的に動作する。コントローラは、比例制御装置として動作するように構成されることが好ましい。すなわち、決定されたRTDと目標のRTDの間の差が大きいほど、補正するために調節手段に加える変化が大きい。このように、装置は目標のRTDを過度に上回ったり過度に下回ったりする可能性が少なく、従ってユーザー体験を向上させうる。
【0022】
使用時、ユーザーは装置の空気出口を吸う。エアロゾル形成基体の気流経路の制限、RTDを調節するための手段、および気流経路それ自体の残りの部分のため、装置全体で圧力降下が発生する。上述の通り、RTDを決定するための手段は、圧力降下を利用してRTDを決定するように補正される。決定されたRTDに基づき、調節手段は、気流経路を調節して、RTDを所定値に、または所定値の範囲内に維持する。
【0023】
コントローラは、第一の吸煙時に引き出し抵抗を決定し、第一の吸煙と第二の吸煙との間で調節手段を自動的に制御して、決定された第一の吸煙の引き出し抵抗に基づき第二の吸煙の引き出し抵抗を調節するように構成されうる。理解されるとおり、この制御方法は、前の吸煙が次の吸煙に情報を与えるように、毎回の吸煙について実施されうる。
【0024】
本明細書で使用される場合、「吸煙」という用語は、ユーザーがエアロゾル発生装置を吸う事象に言及するために使用される。毎回の吸煙は、約1秒〜約3秒間持続しうるが、一例では約2秒間持続する。使用時に、ユーザーは、吸煙を約20秒〜約60秒毎に開始しうるが、一例ではユーザーは約40秒毎に吸煙を開始する。
【0025】
コントローラは、複数の所定のRTD(またはRTD範囲)のうち1つをユーザーが選択できるように構成されうる。複数の所定の範囲は、ユーザーの好みに基づきユーザーによって選択可能な第一の範囲、第二の範囲、および第三の範囲としうる。有利なことに、これにより、単一の装置を、高めのRTDを望むユーザーと低めのRTDを求めるユーザーの両方に対して提供できるようになる。範囲は、例えば、要求される所定値のプラスマイナス5%など、所定値の前後の定まった誤差幅としうる。
【0026】
調節手段が調節可能な狭窄部である場合に、RTDが要求される値よりも高い場合、または範囲の上限よりも高い場合、狭窄部は開く。RTDが要求される値よりも低い場合、または範囲の下限よりも低い場合、狭窄部は閉じる。
【0027】
別の実施形態では、エアロゾル発生装置は、弁の前後での圧力差に基づき、弁を通る空気流量を維持するように構成された機械的に動作する圧力補正流量弁を備える。圧力補正流量弁は、RTDを決定する手段と、RTDを調節する手段の両方を備える。こうした制御弁は、補正装置(決定手段)と直列に配置された調節可能な可変オリフィス(調節手段)を備えることが好ましい。補正装置は、さまざまな入口および負荷の圧力に応じて自動的に調節し、これらの動作状態下で基本的に一定の流量を維持する。したがって、この弁のタイプは、空気吸込み口から空気出口までの実質的に一定の圧力降下を可能にする。
【0028】
械的に動作する圧力補正流量弁は、弁の前後での圧力差を定めるばね係数を有するばね(コイルばねなど)を備えることが好ましい。有利なことに、それぞれが異なるばね係数を持つ広範なばねを利用して、ユーザーに異なるRTDを有する広範な装置を提供しうる。
【0029】
電気ヒーターは、少なくとも一つの壁に、好ましくはくぼみの側壁に隣接して提供されることが好ましい。電気ヒーターは、実質的にくぼみの周辺部の周り全体に提供されうる。さらに、または別の方法として、電気ヒーターはくぼみの底部壁に提供されうる。底部壁は、エアロゾル形成基体を受けるためのくぼみの開放端の反対側の壁である。
【0030】
電気ヒーターは、一つ以上の発熱体を備えうる。例えば、電気ヒーターは、2個、3個、4個、5個、6個、7個、または8個もしくはそれ以上の発熱体を含みうる。
【0031】
電気ヒーターは、箔ヒーターであることが好ましい。電気ヒーターは、ポリイミドヒーターなどの薄膜ヒーターでもよい。電気ヒーターは、くぼみの外部壁(または複数の壁)に結合されることが好ましい。
【0032】
一つ以上の発熱体は電気抵抗性の材料を含むことが好ましい。適切な電気抵抗性の材料としては、ドープされたセラミックなどの半導体、「導電性」のセラミック(例えば、二ケイ化モリブデンなど)、炭素、黒鉛、金属、合金およびセラミック材料および金属材料でできた複合材料が挙げられるが、これに限定されない。こうした複合材料は、ドープされたセラミックまたはドープされていないセラミックを含む場合がある。適切なドープされたセラミックの例としては、ドープシリコン炭化物が挙げられる。適切な金属の例としては、チタン、ジルコニウム、タンタル、および白金族の金属が挙げられる。適切な合金の例は、ステンレス鋼、ニッケル−、コバルト−、クロミウム−、アルミニウム−チタン−ジルコニウム−、ハフニウム−、ニオビウム−、モリブデン−、タンタル−、タングステン−、スズ−、ガリウム−、マンガン−および鉄を含有する合金、およびニッケル、鉄、コバルト、ステンレス鋼系の超合金、Timetal(登録商標)および鉄−マンガン−アルミニウム系の合金を含む。複合材料では、電気抵抗性の材料は、必要なエネルギー移動の動態学および外部の物理化学的性質に応じて、随意に断熱材料へ埋込、封入、または塗布されてもよく、あるいはその逆であってもよい。適切な化合物発熱体の例は、第US−A−5 498 855号、第WO−A−03/095688号および第US−A−5 514 630号に開示されている。
【0033】
コントローラは、電気ヒーターの温度を約180℃〜約300℃の使用温度に維持するように構成されていることが好ましい。一つの実施形態で、装置はさらに、ユーザーの好みを受け取るように構成されたユーザー入力を含む。この実施形態では、コントローラは、ユーザー入力に基づいて、電気ヒーターの温度を制御するように構成されうる。コントローラは、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上の信号を入力から受信するように構成されうるが、各信号は明確なユーザーの好みに対応する。例えば、コントローラは、電気ヒーターの温度約190℃、約200℃および約210℃に対応した3つの信号を受信するように構成されうる。コントローラは、その他の任意の組の適切な温度で電気ヒーターの温度を制御するように構成されうる。
【0034】
コントローラは、電気ヒーターに電力を連続的に提供するように構成されうる。別の方法として、または追加的に、装置はさらにユーザーが装置を吸煙する時を検出するように構成された吸煙検出器を備えてもよい。RTDを決定するための手段はさらに、吸煙検出器としても動作するように、ユーザーが装置を吸煙する時点を検出するよう構成されることが好ましい。ユーザーが装置を吸煙する時、コントローラは電気ヒーターに電力を提供するように構成される。一つの実施形態では、コントローラは、電気ヒーターを第一の温度に加熱した後、吸煙が検出された時に追加的な電力を電気ヒーターに提供して、温度を第二の温度に上昇させるように構成される。さらに、コントローラは、吸煙が検出された時に調節手段を制御するようにのみ構成されうる。
【0035】
コントローラは、電気ヒーターの動作を制御するためのプログラマブルコントローラ(例えば、マイクロコントローラ)であり、かつ気流経路のRTDを調節するための手段であることが好ましい。一つの実施形態で、コントローラは、ソフトウェアによってプログラムしうる。別の方法として、コントローラは、特定用途向け集積回路(ASIC)などの用途が特定されたハードウェアを含みうるが、これは特定用途用のハードウェア内にある論理ブロックをカスタム化することによりプログラムしうる。電気的ハードウェアはプロセッサを含むことが好ましい。追加的に、電気的ハードウェアは、特定のエアロゾル形成基体についての加熱設定、ユーザーの嗜好、ユーザーの喫煙習慣またはその他の情報を格納するためのメモリを含みうる。格納された情報は、喫煙システムとの併用が可能な特定のエアロゾル形成基体に応じて更新および交換が可能であることが好ましい。また、情報はシステムからダウンロードされうる。
【0036】
エアロゾル発生装置は、電気ヒーターに供給される電力を起動するためのユーザー起動式のスイッチを備えることが好ましい。
【0037】
くぼみの開かれた側と反対のくぼみの底部壁は、多孔性でもよく、または空気吸込み口を備えてもよい。
【0038】
エアロゾル発生装置は、少なくとも一つの空気出口有するマウスピースを備えうる。一つの実施形態では、マウスピースは装置の近位端に提供され、くぼみは遠位端に提供される。このように、空気の流れ経路の長さは最大化され、それにより、エアロゾルがユーザーによる吸入のためにより適切な温度に冷却される。
【0039】
装置は、装置の使用時にくぼみを覆うためのリッドを備えることが好ましい。リッドは、磁石(ネオジミウム磁石など)またはねじ山などの適切な任意の手段で保持されうる。リッドは、少なくとも一つの空気吸込み口を備えうる。
【0040】
本発明のさらなる態様によれば、エアロゾル発生システムが提供されている。システムは、本明細書で説明したエアロゾル発生装置と、たばこを含むエアロゾル発生基体とを備える。たばこは、パイプたばこ、カットフィラー、再構成たばこ、および均質化したたばこのうち少なくとも1つであることが好ましい。
【0041】
本明細書に使用される場合、「エアロゾル形成基体」という用語は、エアロゾルを形成することができる揮発性化合物を加熱に応じて放出することができる基体を記述するために使用される。本発明によるエアロゾル形成基体から生成されるエアロゾルは、見えてもまたは見えなくてもよく、蒸気(例えば、気状である物質の微粒は室温にて通常、液体または固体である)、ならびに気体および凝縮された蒸気の液体の液滴を含んでもよい。
【0042】
エアロゾル形成基体はエアロゾル形成剤を含みうる。エアロゾル形成基体は、均質化したたばこ材料と、エアロゾル形成体と、水とを含むことが好ましい。均質化したたばこ材料を提供することで、エアロゾル発生、ニコチン含有量および風味プロフィールが改善される。これは、均質化したたばこを作るプロセスにたばこ葉を粉砕するプロセスが関与しているためであり、これにより、加熱によってより効果的なニコチンおよび風味の放出が可能になる。
【0043】
均質化したたばこ材料は、折り畳まれた、捲縮された、または細片に切断されたシートで提供されることが好ましい。特に好ましい実施形態では、シートは、約0.2mm〜約2mm、より好ましくは約0.4mm〜約1.2mmの幅を持つ細片に切断される。一つの実施形態では、細片の幅は約0.9mmである。
【0044】
別の方法として、均質化したたばこ材料は、球形化を使用して球形に形成してもよい。球の平均直径は約0.5mm〜約4mmであることが好ましく、約0.8mm〜約3mmであることがより好ましい。
【0045】
エアロゾル形成基体は、約55〜約75重量パーセントの均質化したたばこ材料と、約15〜約25重量パーセントのエアロゾル形成体と、約10〜約20重量パーセントの水とを含むことが好ましい。
【0046】
エアロゾル形成基体の試料を測定する前に、相対湿度50%、22℃で、48時間にわたり平衡化させた。均質化したたばこ材料の含水量を決定するためにKarl Fischer技法が使用された。
【0047】
エアロゾル形成基体はさらに、約0.1〜約10重量パーセントの風味剤を含みうる。風味剤は、メントールなど、当技術で周知の適切な任意の風味剤としうる。
【0048】
本発明で使用するための均質化したたばこ材料シートは、たばこ葉ラミナおよびたばこ葉茎の一方または両方を粉砕またはその他で細分することによって得られた粒子状たばこを凝集することにより形成されうる。
【0049】
本発明で使用するための均質化したたばこ材料のシートは、粒子状たばこの凝集を補助するために、たばこ内因性結合剤である1つ以上の内因性結合剤、たばこ外来性結合剤である1つ以上の外因性結合剤、それはまたはそれらの組み合わせを含んでもよい。別の方法として、または追加的に、本発明で使用するための均質化したたばこ材料のシートは、たばこおよび非たばこ繊維、風味剤、充填剤、水性および非水性の溶媒およびこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されないその他の添加剤を含んでもよい。
【0050】
本発明で使用するための均質化したたばこ材料のシートに含める適切な外因性結合剤は、当業界で周知であり、例えばグアーガム、キサンタンガム、アラビアゴムおよびローカストビーンガムなどのゴム、例えばヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースおよびエチルセルロースなどのセルロース結合剤、例えばデンプン、アルギン酸などの有機酸、アルギン酸ナトリウム、寒天および30ペクチンなどの有機酸の共役塩基塩などの多糖類、およびこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0051】
均質化したたばこ材料シートを製造するための多数の再構成プロセスが当業界で周知である。これらには、例えばUS−A−3,860,012号に記載されているタイプの製紙プロセス、例えばUS−A−5,724,998号に記載されているタイプのキャスティングまたは「キャストリーフ」プロセス、例えばUS−A−3,894,544号に記載されているタイプの軟塊再構成プロセス、および例えばGB−A−983,928号に記載されているタイプの押出プロセスが含まれるが、これらに限定されない。一般に、押出プロセスおよび軟塊再構成プロセスにより製造された均質化したたばこ材料シートの密度は、キャスティングプロセスにより製造した均質化したたばこ材料シートの密度よりも大きい。
【0052】
本発明で使用するための均質化したたばこ材料シートは、粒子状たばこおよび1つ以上の結合剤を含むスラリーをコンベヤーベルトまたはその他の支持表面上にキャスティングし、キャストスラリーを乾燥させて均質化したたばこ材料シートを形成し、均質化したたばこ材料シートを支持表面から除去することを一般的に含むタイプのキャスティングプロセスにより形成されることが好ましい。
【0053】
均質化したたばこシート材料は、異なるタイプのたばこを使用して生成されうる。例えば、たばこシート材料は、数多くの異なる種類のたばこ、またはたばこ植物の異なる部位(葉や茎など)からのたばこを使用して形成されうる。処理後に、シートは一貫した属性と均質化した風味を持つ。単一シートの均質化したたばこ材料は、特定の風味を持つように生成されうる。異なる風味を持つ製品を生成するには、異なるたばこシート材料が生成される必要がある。多数の異なるきざみたばこを従来的な紙巻たばこに混合することによって生成される一部の風味は、単一の均質化したたばこシートで複製するのが困難な場合がある。例えば、バージニア種たばこおよびバーレー種たばこは、個別の風味を最適化するために異なる方法で処理される必要がありうる。特定ブレンドのバージニア種およびバーレー種のたばこを単一シートの均質化したたばこ材料内に複製することは可能でないかもしれない。そのため、サシェは第一の均質化したたばこ材料および第二の均質化したたばこ材料を備えうる。2つの異なるシートのたばこ材料を単一のサシェに組み合わせることにより、単一シートの均質化したたばこでは生成できない新しいブレンドを創出しうる。
【0054】
エアロゾル形成体は、少なくとも一つの多価アルコールを含むことが好ましい。好ましい一つの実施形態では、エアロゾル形成体は、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、プロピレングリコール、およびグリセリンのうち少なくとも一つを含む。
【0055】
本発明の1つの態様のいずれの特徴も、任意の適切な組み合わせにおいて本発明のその他の態様にも適用されうる。特に、方法の態様は装置の態様に適用でき、その逆もまた可である。さらにまた、1つの態様における任意の一部および/またはすべての特徴は、任意の適切な組み合わせにおいて、任意のその他の態様の任意の一部および/またはすべての特徴に適用されうる。
【0056】
当然ながら、本発明の任意の態様において説明および定義された種々の特徴の特定の組み合わせを独立して実施および/または供給および/または使用できる。
【0057】
本発明は以下の添付図面を参照しながら、例証としてのみであるがさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】
図1は、本発明によるエアロゾル発生装置の略図を示す。
【
図2】
図2は、
図1の装置での使用に適した4つの代替的なアイリス絞りを示す。
【
図3】
図3は、
図1のエアロゾル発生装置の制御プロセスを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1に示す通り、エアロゾル発生装置100は、エアロゾル発生基体を受けるためのくぼみ102と、くぼみ102を覆うためのリッド104と、電源106と、コントローラ108と、電気ヒーター110と、マウスピース112とを含む。装置はさらに、リッド104内に提供された空気吸込み口114と、マウスピース112内に提供された空気出口116と、空気吸込み口から空気出口までくぼみ102を介して延びる気流経路115とを備える。気流経路115を通した気流は矢印で表されている。装置はさらに、装置使用時の気流経路115内での空気圧力の変動を測定するよう構成された圧力センサー118を備える。圧力センサー118は、装置の下流端に、マウスピース端に隣接して提供される。装置の引き出し抵抗を調節するための電気的に動作する手段120も提供される。調節手段120は、気流経路115内、かつくぼみ102の下流に位置する。マウスピースは、必要に応じて、洗浄、または交換をするために取り外し可能としうる。
【0060】
コントローラ108は、電源106から電気ヒーター110に電力を供給して、エアロゾル形成基体を使用温度に加熱するよう構成される。図示した通り、電気ヒーターは、ヒーターからくぼみ壁へ、さらにはエアロゾル形成基体への熱伝導を改善するために、くぼみの周辺部付近に提供されている。
【0061】
装置はさらに、装置を起動するためのユーザー起動式スイッチ(図示せず)を備えうる。
【0062】
使用時、ユーザーはエアロゾル形成基体をくぼみ102に挿入し、リッド104を元の場所に戻してくぼみを閉じてから、装置を起動する。次に、コントローラは、電力を電気ヒーターに供給して、エアロゾル形成基体の温度を使用温度に上昇させる。一例では、使用温度は約200℃である。
【0063】
エアロゾル形成基体が使用温度に達してユーザーがマウスピースを吸うと、くぼみ102を通って、空気吸込み口114から装置を通り、調節手段120を通り、電源106に隣接した気流経路115に沿って空気が引き込まれ、マウスピース112にある空気出口116の外に出る。
【0064】
くぼみ102内のエアロゾル形成基体、および気流経路115によって、マウスピースを吸うユーザーが体験する引き出し抵抗が生じる。気流経路に起因する引き出し抵抗の成分は測定でき、使用間または単回の使用時に有意には変動しない。ところが、くぼみ102内のエアロゾル形成基体に起因する引き出し抵抗の成分は、ユーザーの制御のみによる数多くの要因に依存し、特に、くぼみ内に置かれたたばこの量、くぼみを提供する時にユーザーがたばこをどの程度圧縮するかなどである。この問題を克服するために、またユーザーに使用間での一貫した引き出し抵抗を提供するために、調節手段120は、装置のRTDが使用時に自動的に調節されるように構成される。
【0065】
図2に示す通り、この例では、調節手段はアイリス絞り200a、200b、200c、200dである。アイリス絞り200は、望ましい任意の形状を持つ適切な任意の数の羽根202a、202b、202c、202dを持つ。見て分かる通り、アイリス絞りによって形成されるオリフィスの形状は羽根202の形状に依存する。アイリス絞り200はさらに、必要に応じてアイリスを開閉するよう構成されるモーター(図示せず)(ステッパーモーターなど)を備える。理解されるとおり、アイリスは、気流経路115内に調節可能な狭窄部を提供し、装置のRTDの制御に使用されうる。
【0066】
図3は、コントローラ108の制御プロセスの流れ図を示す。使用時、ユーザーは、スイッチが提供されている場合にそれを起動するか、またはマウスピースを吸うことによって、装置を起動する(段階300)。スイッチが提供されていない場合、圧力センサーは、ユーザーがどの時点で装置を吸ったかを決定する吸煙検出器として動作するよう構成される。
【0067】
段階302では、ユーザーが装置を吸うと、気流経路115内の空気圧力が圧力センサー118によって測定される。コントローラ108は圧力センサー出力を受信し、その測定された圧力入力に基づき第一の吸煙事象のRTDを決定する。
【0068】
段階304では、一例では、コントローラ108は、ルックアップテーブルを使用して圧力センサー出力をRTDと相関付けることにより、その第一の吸煙事象のRTDを決定する。ルックアップテーブルは、RTDが変動する圧力センサー出力を、上述のRTD測定方法である規格ISO 6565:2011を使用して補正することにより生成される。
【0069】
段階306では、コントローラは、第一の吸煙事象の決定されたRTDを、所定のRTDの範囲と比較する。一例では、所定のRTDの範囲は、約80mmWG〜約100mmWGである。RTDが範囲内にある場合、プロセスは、段階302に戻り、次の吸煙事象のために、気流経路内の空気圧力を測定する。装置のRTDを変化させる調節はなされない。決定されたRTDが範囲外である場合、プロセスは段階308に続く。
【0070】
段階308では、コントローラは調節手段120に信号を送り、気流経路を調節して次の吸煙のためにRTDを変化させる。このプロセスは、吸煙事象間で発生する。決定されたRTDが範囲の下限を下回る場合、コントローラは、調節手段120に信号を送り気流経路をさらに狭窄する。決定されたRTDが範囲の上限を上回る場合、コントローラは、調節手段120に信号を送り気流経路の狭窄を低減する。次にプロセスは段階302に戻り、装置のRTDを自動的に制御するフィードバックループが生成されるように、次の吸煙事象についての気流経路内の空気圧力を測定する。