特許第6774427号(P6774427)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6774427金属製抗摩耗コーティング及び潤滑剤層を備えたねじ状管状部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774427
(24)【登録日】2020年10月6日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】金属製抗摩耗コーティング及び潤滑剤層を備えたねじ状管状部材
(51)【国際特許分類】
   F16L 15/04 20060101AFI20201012BHJP
   C10M 107/38 20060101ALI20201012BHJP
   C10M 105/72 20060101ALI20201012BHJP
   C10M 103/06 20060101ALI20201012BHJP
   C10M 103/02 20060101ALI20201012BHJP
   E21B 17/042 20060101ALI20201012BHJP
   C10N 10/12 20060101ALN20201012BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20201012BHJP
   C10N 30/12 20060101ALN20201012BHJP
   C10N 40/00 20060101ALN20201012BHJP
【FI】
   F16L15/04 B
   C10M107/38
   C10M105/72
   C10M103/06 C
   C10M103/02 Z
   C10M103/02 A
   E21B17/042
   C10N10:12
   C10N30:06
   C10N30:12
   C10N40:00 G
【請求項の数】12
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-554363(P2017-554363)
(86)(22)【出願日】2016年4月21日
(65)【公表番号】特表2018-513327(P2018-513327A)
(43)【公表日】2018年5月24日
(86)【国際出願番号】EP2016058848
(87)【国際公開番号】WO2016170032
(87)【国際公開日】20161027
【審査請求日】2017年10月16日
(31)【優先権主張番号】15/53662
(32)【優先日】2015年4月23日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】504255249
【氏名又は名称】ヴァルレック オイル アンド ガス フランス
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルレーヌ,アルノー
(72)【発明者】
【氏名】ボーダン,ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】フォークト,セドリック
(72)【発明者】
【氏名】ジャファール,アディル
【審査官】 大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−069883(JP,A)
【文献】 特表2008−519907(JP,A)
【文献】 特開2003−042353(JP,A)
【文献】 特開昭62−258283(JP,A)
【文献】 特表2008−527249(JP,A)
【文献】 特開昭61−087890(JP,A)
【文献】 特表2006−502355(JP,A)
【文献】 特開平08−074063(JP,A)
【文献】 特開平09−119564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L15/00−15/08
E21B17/042
C23C24/00−30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素坑井を掘削し操作するための管状部材であり、かつ、回転軸を有するねじ状管状連結部のための管状部材におけるねじ部であって、
前記ねじ部の内周面にわたって延在するねじ切りと、
前記ねじ部の外周面又は前記内周面上に設けられ、相補的ねじ部に属する対応する第2シール面との金属−金属干渉を生じさせ得る第1シール面と、
を備え、
前記ねじ切り及び前記第1シール面は、亜鉛(Zn)が重量基準で主元素である金属製防食及び抗摩耗層でコーティングされ、
前記金属製防食及び抗摩耗層は、樹脂と該樹脂に分散させられる乾燥固体潤滑剤粉末とを含む潤滑剤層で少なくとも部分的にコーティングされ、
前記金属製防食及び抗摩耗層は、電解により堆積され、
前記金属製防食及び抗摩耗層は、Zn−Xタイプの亜鉛(Zn)の二元合金(Xは、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)及びマンガン(Mn)から選択される)により構成されるグループから選択された物質を含む、ねじ部。
【請求項2】
前記金属製防食及び抗摩耗層は、少なくとも50重量%の亜鉛(Zn)を含む、
請求項1に記載のねじ部。
【請求項3】
前記金属製防食及び抗摩耗層は、4μmから20μmの範囲の厚さを有する、
請求項1または2に記載のねじ部。
【請求項4】
前記潤滑剤層は、5μmから50μmの範囲の厚さを有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載のねじ部。
【請求項5】
前記金属製防食及び抗摩耗層は、ニッケル(Ni)含有量が12から15重量%であり、微細構造が単相でガンマ(γ)層にある二元ニッケル−亜鉛(Zn−Ni)である、
請求項1から4のいずれか1項に記載のねじ部。
【請求項6】
三価クロム(Cr(III))を含んでなり、金属製防食及び抗摩耗層と潤滑剤層の間に形成されたパッシベーション層をさらに備える、
請求項1から5のいずれか1項に記載のねじ部。
【請求項7】
前記乾燥固体潤滑剤粉末は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、モリブデンジチオカーバメート(MoDTC)、二硫化モリブデン(MoS)、カーボンブラック(C)、フッ化グラファイト(CF)、又はそれらの混合物により構成されるグループから選択される、
請求項1から6のいずれか1項に記載のねじ部。
【請求項8】
前記樹脂は、ポリビニル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、及びポリアミドイミド樹脂により構成されるグループから選択される、
請求項1から7のいずれか1項に記載のねじ部。
【請求項9】
前記樹脂は、アクリルタイプであり、前記乾燥固体潤滑剤粉末は、単独又は組み合わせとして用いられる3%から15%のカーボンブラック、二硫化モリブデン(MoS)、又はモリブデンジチオカーバメート(MoDTC)を含む、
請求項1から8のいずれか1項に記載のねじ部。
【請求項10】
前記ねじ部は、組み立て後に、相補的ねじ状管部に属する対応する第2当接部に接触可能な第1当接部をさらに備える、
請求項1から9のいずれか1項に記載のねじ部。
【請求項11】
前記ねじ部は、鋼鉄から作られる、
請求項1から10のいずれか1項に記載のねじ部。
【請求項12】
前記ねじ部は、前記内周面上の第1シール面と同様に、その内周面にわたって延在するねじ切りを有する雌型である、
請求項1から11のいずれか1項に記載のねじ部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素坑井を掘削したり、操作したりするための管状部材に関し、より正確には、このタイプの部材のねじ状端部に関する。この端部は、雄型又は雌型であればよく、結合部又は連結部を形成するために、類似の部材の対応する端部に連結させることができる。
【0002】
また、本発明は、組み立てによって2つの管状部材を連結して得られるねじ状連結部に関する。その管状部材の1つは、2つの雌型端部との結合部であってよい。
【背景技術】
【0003】
「炭化水素坑井を掘削し操作するための管状部材」という用語は、炭化水素坑井ドリルストリングもしくは改修ライザーのいずれかの構成あるいはライザーなどのこの種のストリング又は坑井を操作する際に使用するケーシングもしくはチュービングストリングの操作という特定の目的で、実質的に管状の形状の任意の部材であって、同じタイプでもそうでなくてもよい別の部材と連結させることができる部材を意味する。また、本発明は、例えば、ドリルパイプ、重量ドリルパイプ、ドリルカラー及びツール結合部などのドリルストリングで用いられる部材にも適用可能である。
【0004】
各管状部材は、類似部材の対応する末端部分と組み立てることを意図した雄ねじ状ゾーン又は雌ねじ状ゾーンを有する末端部分を含む。連結されると、その部材は、結合部又は連結部と知られるものを構成する。
【0005】
連結部のこれらのねじ状管状コンポーネントは、使用条件によって課されるクランピング及びシール要求に対応するために、所定の負荷の下で連結される。より詳細には、所定のトルクが目標とされる。また、ねじ状管状コンポーネントは、特に稼働中に、組み立て及び分解を数回繰り返して受けなければならないことが知られている。
【0006】
これらのねじ状管状コンポーネントの使用条件は、異なるタイプの負荷を生じさせる。特に、ねじ状ゾーン、当接ゾーン、又は実際には金属/金属シール面などのこれらのコンポーネントの繊細な部分にフィルム又はグリースを使用することによって、負荷を軽減させてきた。
【0007】
誘導される制約には、特に、倉庫で保存するための制約が含まれ、保存用グリース(使用開始前に塗布する組み立て用グリースとは異なる)の塗布が必要とされる。しかしながら、有機コーティングの使用からなる他の解決策も存在する。
【0008】
このように、例えば、ねじ状連結部を介して連結される長さ数メートルの管の重量のために、組み立て操作は、通常、高い軸荷重下で実施され、連結されるねじ状部材の軸のわずかなずれによって悪化する可能性がある。これは、ねじ状ゾーンと金属/金属シール面との少なくとも一方で摩耗のリスクを誘発する。したがって、金属/金属シール面と同様に、ねじ状ゾーンは、常に潤滑剤でコーティングされる。
【0009】
さらに、ねじ状管状コンポーネントは、多くの場合、浸食環境中で保存した後に組み立てられる。これは、例えば塩水の霧が存在する「沖合」の状況、又は、砂や埃や他の汚染物質が存在する「陸上」の状況に当てはまる。したがって、ねじ状ゾーンの場合、組み立ての間に負荷が加えられる表面上で、又は実際には、金属/金属シール面及び当接の場合、締め付け接触ゾーンで、腐食に対して異なるタイプのコーティングを用いることが必要である。
【0010】
しかしながら、環境基準を考慮すると、標準API RP 5A3(米国石油協会)に準拠したグリースを使用することは、そのようなグリースが管状部材から押し出され、環境中又は坑井中に放出され、閉塞を起こし、特別な洗浄操作が必要となるので、長期的解決策とはならないようである。
【0011】
腐食や摩耗に対して長時間持続する耐性の問題、及び環境への配慮に関連する権限に対応するために、グリースの代替物が開発されてきた。それらは、腐食耐性性能及び摩耗性能に対する対応を提供するだけではなく、ねじ状端部の製造に関係する工業的制約に対する対応も提供している。
【0012】
1969年以来、WHITFORD(登録商標)は、迅速な組み立て/分解操作での摩擦に順応することを必要とする、ねじ状締め具用の、ポリアミド−イミド樹脂及びフルオロポリマーの混合物から製造した高性能コーティングを提案している。
【0013】
さらに、2002年以来、ねじ状連結部に関連して、欧州特許出願第1378698号及び欧州特許出願第1959179号に記載されているように、潤滑するとともに、組み立ての間の摩耗に対する耐性を保証するために、ポリアミド−イミド樹脂に基づくコーティングが提案されてきた。
【0014】
その先行技術は、主に、極性溶媒中又はエタノール/トルエン混合物中に溶解させたポリアミド−アミド酸前駆体から乾燥フィルムを得ることを提案している。ねじ切りにおいて接触圧の機能として潤滑を保証するために、乾燥フィルムを一般に施用する。充填剤の割合は、比較的高く、顔料/結合剤の重量比は、0.25〜4の範囲であり、好ましくは3を上回る。このように、乾燥フィルムは、有利には、固体潤滑剤が機能する間に犠牲になり、摩耗に対して十分に耐性である。
【0015】
国際公開公報第WO2004/033951号は、その表面が処理され、金属表面が2.0μm〜6μmの範囲の表面粗さ(Ra)を有するねじ状端部を備える石油抽出産業用のねじ状金属管に関する。この金属表面は、乾燥防食コーティングの均一層及び乾燥潤滑剤コーティングの第2の均一層で覆われている。その代わりに、2つの層は、乾燥潤滑剤の粒子の分散体を含む乾燥防食コーティングの単層に組み合わせられてもよい。それにもかかわらず、基板上に堆積させた防食層上の粒子の分散体は、ある程度の不均一性を導入する。
【0016】
さらに、欧州特許出願第2128506号は、ねじ部と、ねじを付けていない金属同士の接触部分とを備える接触面を有する鋼鉄管用雄/雌型のねじ状連結部に関する。雄型部材及び雌型部材の少なくとも一方の表面は、Cu−Zn合金又はCu−Zn−M1合金(ここで、M1は、Sn、Bi、及びInから選択される少なくとも1つの元素である)から製造される第1ラミネート層でコーティングされる。銅を含むこれらの層に関する興味深い結果にもかかわらず、それらに関連する防食特性は、克服することが望まれる制限を有することが示されている。
【0017】
したがって、それらの開示の腐食及び摩耗挙動は、腐食性能の機能特性及び良好な摩耗耐性に加えて、以下で開示する本発明の連結部の気体及び液体に対するシールを提案することによって改善することができる。この概念に基づいて、本発明は、炭化水素坑井を掘削したり、操作したりすることを意図するねじ状部材を連結することによって形成されるねじ状部材又は連結部をコーティングすることを提案する。
【発明の開示】
【0018】
第1の態様では、本発明は、回転軸を有し、炭化水素坑井を掘削し操作するためのねじ状管状連結部のための管状部材のねじ部に関する。このねじ部は、その外周面又は内周面にわたって延在するねじ切りと、外周面又は内周面上に設けられ、管の相補的ねじ部に属する対応する第2シール面との金属−金属干渉を生じさせ得る第1シール面とを備える。そして、ねじ切り及び第1シール面は、亜鉛(Zn)が重量基準で主元素である金属製防食及び抗摩耗層でコーティングされることを特徴とする。
【0019】
好ましくは、金属製防食及び抗摩耗層は、電解により堆積される。
【0020】
好ましくは、金属製防食及び抗摩耗層は、少なくとも50重量%の亜鉛(Zn)を含む。
【0021】
好ましくは、金属製防食及び抗摩耗層は、4μmから20μmの範囲の厚さを有する。
【0022】
好ましくは、金属製防食及び抗摩耗層は、純亜鉛(Zn)及びZn−Xタイプの亜鉛(Zn)の二元合金(Xは、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)及びマンガン(Mn)から選択される)により構成されるグループから選択された物質を含む。好ましくは、金属製防食及び抗摩耗層は、ニッケル(Ni)含有量が12から15重量%であり、微細構造が単相でガンマ(γ)層にあるニッケル−亜鉛(Zn−Ni)合金である。
【0023】
好ましくは、金属製防食及び抗摩耗層は、樹脂と、該樹脂に分散させられる乾燥固体潤滑剤粉末とを含む潤滑剤層でコーティングされる。
【0024】
好ましくは、金属製防食及び抗摩耗層は、三価クロム(Cr(III))を含んでなり、金属製防食及び抗摩耗層と潤滑剤層との間に形成されるパッシベーション層でコーティングされる。
【0025】
好ましくは、金属製防食及び抗摩耗層は、三価クロム(Cr(III))を含むパッシベーション層でコーティングされる。
【0026】
好ましくは、パッシベーション層は、二酸化ケイ素(SiO)の粒子を含む無機マトリックス層により構成されるバリア層でコーティングされる。
【0027】
好ましくは、パッシベーション層は、二酸化ケイ素(SiO)の粒子を含む有機−無機マトリックス層により構成されるバリア層でコーティングされる。
【0028】
好ましくは、ねじ部は、組み立て後に、相補的ねじ状管部に属する対応する第2当接部と接触可能な第1当接部をさらに備える。
【0029】
好ましくは、ねじ部は、鋼鉄から作られる。
【0030】
ある代替では、ねじ部は、外周面上の第1シール面と同様に、その外周面にわたって延在するねじ切りを有する雄型である。
【0031】
別の代替では、ねじ部は、内周面上の第1シール面と同様に、その内周面にわたって延在するねじ切りを有する雌型である。
【0032】
第2の態様では、本発明は、回転軸を有し、炭化水素坑井を掘削し操作するためのねじ状管状連結部のための管状部材のねじ部に関する。このねじ部は、その外周面又は内周面にわたって延在するねじ切りと、外周面又は内周面上に設けられ、相補的ねじ部に属する対応する第2シール面との金属−金属干渉を生じさせ得る第1シール面を備える。ねじ切り及び第1シール面は、亜鉛(Zn)が重量基準で主元素である金属製抗摩耗層でコーティングされており、この金属製抗摩耗層は、樹脂と該樹脂に分散させられる乾燥固体潤滑剤粉末とを含む潤滑剤層で少なくとも部分的にコーティングされていることを特徴とする。
【0033】
好ましい方法では、このねじ部の金属製抗摩耗層は、電解により堆積される。
【0034】
好ましい方法では、金属製抗摩耗層は、少なくとも50重量%の亜鉛(Zn)を含む。
【0035】
好ましい方法では、金属製抗摩耗層は、4μmから20μmの範囲の厚さを有する。
【0036】
好ましい方法では、潤滑剤層は、5μmから50μmの範囲の厚さを有する。
【0037】
好ましい方法では、金属製抗摩耗層は、純亜鉛(Zn)及びZn−Xタイプの亜鉛(Zn)の二元合金(Xは、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)及びマンガン(Mn)から選択される)により構成されるグループから選択された物質を含む。好ましい方法では、金属製抗摩耗層は、ニッケル(Ni)含有量が12から15重量%であり、微細構造が単相でガンマ(γ)層にある二元ニッケル−亜鉛(Zn−Ni)である。
【0038】
好ましい方法では、本発明のねじ部は、三価クロム(Cr(III))を含んでなり、金属製抗摩耗層と潤滑剤層の間に形成されたパッシベーション層を備える。
【0039】
好ましい方法では、乾燥固体潤滑剤粉末は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、モリブデンジチオカーバメート(MoDTC)、二硫化モリブデン(MoS)、カーボンブラック(C)、フッ化グラファイト(CF)、又はそれらの混合物により構成されるグループから選択される。
【0040】
好ましい方法では、樹脂は、ポリビニル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、及びポリアミドイミド樹脂により構成されるグループから選択される。
【0041】
好ましい方法では、樹脂は、アクリルタイプであり、乾燥固体潤滑剤粉末は、3%から15%のカーボンブラック、MoS、又はモリブデンジチオカーバメート(MoDTC)を単独又は組み合わせで含む。
【0042】
好ましい方法では、本発明のねじ部は、組み立て後に、相補的ねじ部に属する対応する第2当接部に接触可能な第1当接部をさらに備える。
【0043】
好ましい方法では、ねじ部が鋼鉄から生成される。
【0044】
ある場合には、ねじ部は、外周面上の第1シール面と同様に、その外周面にわたって延在するねじ切りを有する雄型である。
【0045】
別の場合には、本発明のねじ部は、内周面上の第1シール面と同様に、その内周面にわたって延在するねじ切りを有する雌型である。
【0046】
第3の態様では、本発明は、炭化水素坑井を掘削し操作するためのねじ状管状連結部に関する。ねじ状管状連結部は、回転軸を有する雄型端と、その回転軸の周りに延在する第1ねじ切りとを備える管状部材の一部を含む。雄型端部は、回転軸を有する雌型端と、その回転軸の周りに延在する第2ねじ切りとを備える管状部材の一部を補完する。雄型端部及び雌型端部は、組み立てにより連結可能である。雄型端部及び雌型端部のそれぞれは、金属−金属干渉を生じ得るシール面をさらに備える。雄型端部及び雌型端部の2つのうち一方のねじ切り及びシール面は、亜鉛(Zn)が重量基準で主元素である第1金属製防食及び抗摩耗層でコーティングされることを特徴とする。第1金属製防食及び抗摩耗層は、第1パッシベーション層でコーティングされる。雄型又は雌型相補的ねじ部のねじ切り及びシール面は、亜鉛(Zn)が重量基準で主元素である第2金属製抗摩耗層でコーティングされる。第2金属製抗摩耗層は、樹脂と該樹脂に分散させられる乾燥固体潤滑剤粉末とを含む潤滑剤層で少なくとも部分的にコーティングされる。
【0047】
好ましくは、本発明のねじ状管状連結部は、第1及び第2金属層の少なくとも一方が電解により堆積されるようになっている。
【0048】
好ましくは、本発明のねじ状管状連結部は、第1及び第2金属層の少なくとも一方が少なくとも50重量%の亜鉛(Zn)を含む。
【0049】
好ましくは、本発明のねじ状管状連結部は、第1及び第2金属層の少なくとも一方が4μmから20μmの範囲の厚さを有するようになっている。
【0050】
好ましくは、潤滑剤層は、5μmから50μmの範囲の厚さを有する。
【0051】
好ましくは、本発明のねじ状管状連結部は、第1及び第2金属層の少なくとも一方が、純亜鉛(Zn)及びZn−Xタイプの亜鉛(Zn)の二元合金(Xは、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、及びマンガン(Mn)から選択される)により構成されるグループから選択された物質を含むようになっている。好ましくは、本発明のねじ状管状連結部は、第1及び第2金属層の少なくとも一方が、ニッケル(Ni)含有量が12から15重量%であり、微細構造が単相でガンマ(γ)層にある二元ニッケル−亜鉛(Zn−Ni)合金であるようになっている。
【0052】
好ましくは、第1パッシベーション層は、三価クロム(Cr(III))を含む。
【0053】
好ましくは、本発明のねじ状管状連結部は、三価クロム(Cr(III))を含む第2パッシベーション層が、第2金属製抗摩耗層と潤滑剤層の間に形成されるようになっている。
【0054】
好ましくは、乾燥固体潤滑剤粉末は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、二硫化モリブデン(MoS)、モリブデンジチオカーバメート(MoDTC)、カーボンブラック(C)、フッ化グラファイト(CF)、又はそれらの混合物により構成されるグループから選択される。
【0055】
好ましくは、本発明に係るねじ状管状連結部は、樹脂が、ポリビニル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、及びポリアミドイミド樹脂により構成されるグループから選択されるようになっている。
【0056】
好ましくは、樹脂は、アクリルタイプであり、乾燥固体潤滑剤粉末は、3%から15%のカーボンブラック、MoS、又はモリブデンジチオカーバメート(MoDTC)を単独又は組み合わせで含む。
【0057】
好ましくは、本発明のねじ状管状連結部は、第1及び第2パッシベーション層の少なくとも一方が、二酸化ケイ素(SiO)の粒子を含む無機マトリックス層により構成されるバリア層でコーティングされるようになっている。
【0058】
好ましくは、無機マトリックス層は、酸化カリウムをさらに含む。
【0059】
好ましくは、本発明のねじ状管状連結部は、第1及び第2パッシベーション層の少なくとも一方が、二酸化ケイ素(SiO)の粒子を含む有機−無機マトリックス層により構成されるバリア層でコーティングされるようになっている。
【0060】
好ましくは、本発明のねじ状管状連結部は、第1及び第2パッシベーション層の少なくとも一方が乾燥潤滑剤の層でコーティングされるようになっている。
【0061】
好ましくは、本発明に係る雄型端部は、第1当接部をさらに備え、雌型端部は、第2当接部をさらに備え、第1及び第2当接部は、組み立て後に、互いに接触可能である。
【0062】
好ましくは、本発明に係るねじ状管状連結部は、雄型端部及び雌型端部が鋼鉄から作られるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】本発明の第1実施形態に係る縦軸に沿った断面におけるねじ状管端の被覆面のクローズアップ写真を表す。
図2】本発明の第2実施形態に係る縦軸に沿った断面におけるねじ状管端の被覆面のクローズアップ写真を表す。
図3】本発明の第3実施形態に係る縦軸に沿った断面におけるねじ状管端の被覆面のクローズアップ写真を表す。
図4】本発明の第4実施形態に係る縦軸に沿った断面におけるねじ状管端の被覆面のクローズアップ写真を表す。
図5】本発明の第5実施形態に係る縦軸に沿った断面におけるねじ状管端の被覆面のクローズアップ写真を表す。
図6】本発明におけるねじ状部材と、先行技術のねじ状部材の比較写真を示す。
図7】本発明の一実施形態におけるねじ状部材の写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本発明は、非限定的説明を提供する以下の記述からより良く理解されるであろう。好ましくは、本発明の様々な層を堆積させた基板は、鋼鉄から作られ、本発明は、雌型端部上と同様に、雄型端部上でも等しく実施することができることに留意されたい。
【0065】
本発明のねじ部は、体系的に、そのねじ部が各々雄型であるか又は雌型であるかに応じてその外周面又は内周面上に延在するねじ切りと、外周面又は内周面上の第1シール面とを備える。第1シール面は、相補的ねじ部に属する対応する第2シール面と金属−金属干渉を生じ得る。シール面は、本発明に係るねじ部において重要である。なぜならば、本発明においてコーティングすると、金属/金属接触で気体及び液体に対してシールを提供するからである。好ましくは、金属/金属接触は干渉で生じる。
【0066】
以下の記述では、複数の層は、本発明に係るねじ部の少なくともねじ切り上と、シール面上とに堆積される。
【0067】
本発明によれば、亜鉛(Zn)が重量基準で主元素である金属層は、好ましくは、鋼鉄から作られ、管状ねじ部の基板上に堆積される。本発明に係る金属層は、理想的には、電解により堆積される。このタイプの被覆(堆積)の原理は、以下に要約される。その機械的強度とは別に、金属層の主な利点は、その微細構造の均一性である。「微細構造の均一性」とは必ずしも単相結晶構造を意味せず、対照的に、逆もまた真であることを理解されたい。
【0068】
本発明と関連して、「金属層」という用語は、金属により構成された層を意味する。明らかに、不純物が存在する可能性があるが、好ましくは、金属層は、排他的に金属を含む。本発明の排他的に金属を含む層は、微細構造の均一性を有するという利点を有する。実際、倍率×500の光学顕微鏡下で、観察された微細構造は、均質な外観を有する。
【0069】
実際、金属層の機械的強度及び微細構造の均一性のどちらも、温度に対する安定性もさらに低い有機コーティングのものよりも実質的に高い。
【0070】
電解による堆積は、本発明に関連して、1amp/dm2〜100amp/dm2であり得る電流密度を印加することにより、金属イオン又は酸化物の純金属への混入を低減するためにここで用いられる技術である。電解浴は、18℃〜50℃の範囲の温度である。18℃未満では、電解浴の効率が不十分である。50℃超では、電解浴の化学成分(例えば添加剤)が劣化される。一例として、緩衝電解として知られる金属コーティングを堆積させる方法は、上記範囲の上限で非常に高い電流を必要とする可能性がある。
【0071】
電解質は、導電率を提供するために必要であり、水溶液又は溶融塩であればよい。亜鉛(Zn)が重量基準で主元素である金属層は、電解により堆積させればよい。これは、本発明で用いられる技術である。銅又はさらにはニッケルなどの他の金属も電解により堆積させてもよい。
【0072】
水性媒体中の電解は、アノード及びカソードから構成される2電極系で実施される。イオン還元がカソードで起こり、次のように定義される:
【数1】
(ここで、Mは、金属を表し、nは整数である)。
【0073】
電解蒸着の場合、カソードは、その上で堆積が起こる基板である。実際、理想的には、これは、本発明の場合には鋼鉄である。
【0074】
アノードでは、得られる反応は、媒体がそれぞれ酸性であるか又はアルカリ性であるかに応じて、以下の2つの式に従って気体酸素を形成するために、水の酸化である:
(1)
【数2】
又は
(2)
【数3】
【0075】
水性媒体中での電解の主な問題の1つは、カソードでの金属イオンの還元と溶媒の還元との間に存在する競合である。それは、以下の反応によって定義される:
(3)
【数4】
【0076】
理論的には、起こるべき反応は、それ自体が選択された物質の各々に関連した電極の電位と関連するが、本発明に関連して実施した実験は、予想が困難な結果をもたらした。実際には、反応の速度論は複雑である。
【0077】
書籍「近代電気めっき」、John Wiley & Sons社、第5版、285〜307頁、第10章:亜鉛及び亜鉛合金の電着(R. Winand著、2010年)は、亜鉛又は亜鉛合金の基板上への電解蒸着に関するさらなる詳細を提供する。
【0078】
本発明に係る亜鉛(Zn)が重量基準で主元素である金属層の基板上、好ましくは鋼鉄上への堆積は、腐食挙動と、組み立ての摩耗耐性及び機械的強度との両方が同時に修正され得ることを意味する。主元素として、すなわち、合金の元素の重量基準で最も高い含有量を有する亜鉛(Zn)以外の元素との合金の堆積物の存在は、腐食挙動性能が所望の効果を得られないようになるので、望ましくない。亜鉛(Zn)が重量基準で主元素である金属層の厚さは、好ましくは、4〜20μmの範囲である。4μm未満では、金属層が不十分な腐食挙動を示すという危険があるので、防食効果が低減する。20μm超では、式(1)に従って、Hの組み合わせによりHの蓄積の危険性が高い。この蓄積は、金属層が厚いほど高くなる。したがって、Hガスが構造中にトラップされる危険性があり、その構造は、内部応力が生じるために、より脆くなる。なお一層好ましくは、金属層の厚さは、6〜15μmの範囲である。
【0079】
亜鉛(Zn)が重量基準で主元素であり、電解により堆積させた金属層は、金属層上のパッシベーション層(保護層)の形成などの追加の処理によって完了させてもよい。変形例では、金属層全体又はその一部にわたって、樹脂及びこの樹脂中に分散させた乾燥固体潤滑剤粉末を含む潤滑剤層(潤滑層)を堆積させることも可能である。その潤滑機能に加えて、この層は、防食機能に貢献する可能性がある。本発明に関連して、このタイプの潤滑剤層をパッシベーション層上に堆積させることは完全に可能である。潤滑剤層は、5μm〜50μmの範囲の厚さを有する。5μm未満では、潤滑効果が十分(満足)ではない。50μm超では、最大組み立てトルクが高くなり過ぎる可能性がある。さらに、50μm超では、損傷を受けたコーティングに由来する小片が形成される可能性があるという危険性がある。このタイプの小片は、油井の底部に落ちていき、結果として操作状態が劣化する可能性がある。好ましくは、潤滑剤層は、10μm〜30μmの範囲の厚さを有する。
【0080】
他の変形例は、形成されたパッシベーション層上に一般的にシーラーとして知られるバリア層を堆積させることからなる。
【0081】
また、別の変形例は、形成された全パッシベーション層上に又はそのごく一部に潤滑剤層を堆積させることからなる。
【0082】
防食機能の有無にかかわらず、金属層の全体又はパッシベーション層が形成されていないそのごく一部だけに潤滑剤層を堆積させることも完全に可能である。
【0083】
本発明の様々な構成の様々な層は、好ましくは金属基板上で、又はなお一層好ましくは鋼鉄上で実施される連続操作によって堆積される。以下の操作が実施される。すなわち、溶媒とアルカリ性溶液の少なくとも一方を用いて、基板の化学的又は電気化学的脱脂を行い、それに続いてリンスする。次に、表面酸化物を除去するために、好ましくは、基板を酸性溶液中に浸漬することによって、基板の表面の化学的又は電気化学的ストリッピング(除去)を実施する。
【0084】
表面は、以下の生成物、すなわち、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、フッ化水素酸、又はこれらの酸の混合物を用いて活性化させてもよい。
【0085】
本発明によれば、亜鉛(Zn)が重量基準で主元素である金属層は、ねじ切りと第1シール面とを備えるねじ状端部上に堆積される。これは、理想的には電解によって実施される金属層の堆積が、亜鉛(Zn)単独又はZn−Xタイプの亜鉛(Zn)の二元合金(ここで、Xは、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)及びマンガン(Mn)から選択される)であればよいことを意味する。
【0086】
純粋なZnは、その防食及び抗摩耗特性のために用いられる。本発明によれば、鉄と比較して、鋼鉄タイプの基板に関連して、亜鉛はより高い負の標準電位を有するので、亜鉛(Zn)が重量基準で主元素である金属層が用いられる。言い換えると、この場合、Znは、腐食に対して有効なカソード防食を提供する。
【0087】
鋼鉄タイプの基板に関連して、純粋なZnの使用は、このように問題はない。しかしながら、純粋なZnがより高速で消費(化学的に腐食)されるので、Zn−Niが好ましい。このように、特に厚い層が必要とされ、これは、ねじ切り及びシール面上では有利ではない。実際、厚い層は、ねじにおいてより小さな間隙(クリアランス)をもたらし、連結部のタイプに応じて、生じるのが好ましい接触面の最適化を損なう。Zn−Niは、その防食特性のためだけでなく、その抗摩耗特性のためにも用いられるべきである。
【0088】
また、Zn−Feは、好ましい鋼鉄タイプの基板に関する犠牲保護(犠牲防食)でもある。Zn−Feの層は、良好な接着促進剤である。Zn−Feは、純粋なZnよりも低い腐食速度をもたらす。
【0089】
Zn−Mgは興味深い。なぜならば、この合金は、好ましい基板、すなわち、鋼鉄の場合に、Mgの存在に起因する腐食速度を遅らせるからである。
【0090】
鋼鉄タイプの基板に関連して、Zn−Mnは、バリア保護を提供する。しかしながら、攻撃されず、無傷のままでとどまるので、バリア機能は、耐食性の点でも有利である。さらに、それは、自然に暴露されるとき、非常に良好な腐食挙動を有する。
【0091】
電解蒸着は、微細構造の観点から堆積物の均一性を改善するために使用可能であることが想起される。明らかに、亜鉛めっき、噴霧、あるいは、亜鉛焼き(シェラダイジング)などの金属コーティングを堆積させる他の方法が存在する。
【0092】
金属層上にパッシベーション層を形成することからなる代替法は、腐食耐性がさらに改善され得ることを意味する。
【0093】
樹脂と該樹脂中に分散された乾燥固体潤滑剤粉末とを含む潤滑剤層をねじ部の少なくとも一部の上に堆積させることからなる代替法は、連結部の組み立てトルクがより良好に制御され得、摩耗が回避され得ることを意味する。
【0094】
好ましくは、乾燥固体潤滑剤粉末は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、二硫化モリブデン(MoS)、カーボンブラック(C)、フッ化グラファイト(CF)、及びそれらの混合物からなるグループから選択される。
【0095】
PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)は、接触圧で安定な摩擦係数を有する潤滑特性を提供する。したがって、組み立てトルクは、より良好に制御される。本発明のPTFE粒子の平均粒子サイズは、15μm未満である。15μm超では、潤滑剤層の全厚さと比較して、粒子があまりにも厚過ぎるので、樹脂中の分散は、不均一になる可能性がある。
【0096】
樹脂は、ポリビニル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、及びポリアミド−イミド樹脂からなるグループから選択される。
【0097】
ポリビニル樹脂、エポキシ樹脂、及びアクリル樹脂は、満足のいくやり方で、Znを含む金属層又はパッシベーション層に付着する。
【0098】
ポリウレタン樹脂は、特に化学的に安定であるという利点を有し、硬化によってその使用が容易である。
【0099】
ポリアミド−イミド樹脂は、特に摩耗に対して耐性である。
【0100】
好ましい実施形態では、樹脂は、アクリルタイプであり、該樹脂中に分散させた乾燥固体潤滑剤粉末は、3%〜15%のカーボンブラック、MoS又はモリブデンジチオカーバメート(MoDTC)を単独又は組み合わせで含む。この組み合わせは、抗摩耗性、付着性、及び組み立てトルクの制御の観点から相乗効果を示す。
【0101】
二硫化モリブデン(MoS)、モリブデンジチオカーバメート(MoDTC)、カーボンブラック(C)、フッ化グラファイト(CF)、又はそれらの混合物は、接触圧で安定する摩擦係数を有する潤滑特性を提供する。このように、組み立てトルクは、より良好に制御される。
【0102】
MoSの誘導体も、上述の潤滑特性のすべてを有する。
【0103】
好ましい実施形態では、Znを含む金属の堆積層は、12%〜15%のNiを含む二元Zn−Ni合金であり、残りは、明らかにZnと不可避の不純物である。その合計量は、厳密に3重量%未満である。実際、12%未満のNiでは、腐食耐性は最適化されず、15%を超えるニッケルでは、コーティングの構造は、もはや単相ではなく多相となり、存在する相は、内部応力を誘発し、コーティングを脆くする。
【0104】
最後に、好ましくは、12%〜15%のニッケルを含むZn−Niのこの好ましい金属製堆積物の微細構造は、単相タイプのものであり、存在する相は、ガンマタイプである。このガンマタイプの結晶構造は、より良好な腐食耐性を保証する。
【0105】
好ましくは、パッシベーション層は、三価クロム(Cr(III))を含む。この三価クロムは、Cr(II)よりも安定であり、Cr(VI)とは異なり、健康に有害ではない。
【0106】
好ましくは、パッシベーション層は、それが存在する場合、二酸化ケイ素(SiO)の粒子を含む無機マトリックス層により構成されるバリア層でコーティングされる。このバリア層は、耐食性を改善する。
【0107】
代替法は、二酸化ケイ素(SiO)の粒子を含む有機−無機マトリックス層により構成されるバリア層でコーティングしたパッシベーション層を使用することからなる。このバリア層は、耐食性を改善する。
【0108】
一実施形態は、連結部の組み立てトルクをより良好に制御するとともに、摩耗を回避するために、パッシベーション層上に潤滑剤層を堆積させることからなる。
【0109】
本発明のねじ部の金属/金属接触は、干渉で作り出される。本発明の雄型部材と雌型部材との間の「干渉」は、2つの回転面の結合点間の直径方向の干渉に対応する。より詳細には、この直径方向の干渉は、2つの回転面の結合点で表面の規則的部分の直径の差によって定義される。この差は、雄型部材及び雌型部材を組み立てる前に測定すればよく、その後、2つの部材が互いに組み立てられたときに接触面において評価されればよい。実際には、雄型部材の外周面の一部のある直径が雌型部材の内周面の一部の直径よりも若干大きいことを確実にするのは、型通りに進められる事象である。これによって、これらの表面の接触ゾーンの物質が交換される。このように、その結合点間には、高い接触が提供される。
【実施例】
【0110】
後述の鋼鉄から形成されたねじ部(雄型もしくは雌型のいずれか又は両方)の非限定的実施例は、二元亜鉛−ニッケル合金で電解処理された。これらの実施例で使用した二元亜鉛−ニッケル合金は、ELECTROPOLI社(登録商標)から商品名ZELTEC 2.4(登録商標)で入手可能である。
【0111】
電解処理のパラメータは以下のとおりであった。
・電解浴の温度:温度=36℃、
・電解浴のpH:pH=5.4、
・印加電流密度:J=2A/dm2
・電解浴中の滞留時間:t=20分。
【0112】
このように、電解処理を酸性媒体中で実施した。
【0113】
これによって、亜鉛(Zn)を含む金属層を生成した。金属層の厚さは、4.0μm〜12.5μm(極値)の範囲であり、典型的には、6μm〜約8μmであった。ニッケル(Ni)含有量は、概して12%〜15%(極値)の範囲であった。したがって、亜鉛(Zn)含有量は、概して85%〜88%(極値)の範囲であった。金属層は、抗摩耗特性と防食特性の両方を有していた。
【0114】
バリア層が存在する場合、特に、COVENTYA社(登録商標)から名称FINIGARD 460で販売されている製品であった。
【0115】
パッシベーション層が存在する場合、特に、COVENTYA社(登録商標)から名称FINIDIP 128 CF(コバルトフリー)で販売されている製品であった。それは、ATOTECH(登録商標)Deutschland GmbH(ドイツ有限会社)から名称EcoTri(登録商標)NoCoで販売されている製品でもあり得た。これら2つの製品は、六価クロム(Cr(VI))を含まないという特別な利点を有する。
【0116】
後述する典型的な実施形態では、各ねじ部は、ねじ状管状連結部の一部を形成することを目的とする。各ねじ部は、回転軸を有し、ねじ切りを備える。雄型部材である場合、ねじ切りは、ねじ部の外周面上に延在する。対照的に、雌型部材である場合、ねじ切りは、ねじ部の内周面上に延在する。また、各ねじ部は、管の相補的ねじ部に属する対応する第2シール面と金属−金属干渉を生じるように配置された外周面又は内周面上に第1シール面も備える。雄部の相補的ねじ部は、雌型ねじ部である。雌部の相補的ねじ部は、雄型ねじ部である。
【0117】
以下の典型的実施形態では、一方を他方に組み合わせたときに管状連結部を形成し得る2つの相補的ねじ部の組み立てを体系的に参照する。表面処理、層及び仕上げ処理を雄型ねじ部又は雌型ねじ部に関係なく適用し得ると理解されたい。結果として、ある実施形態がある特定の第1コーティング(層のアンサンブル(集合体))を備えた雄部を参照し、ある特定の第2コーティング(層の他のアンサンブル)を備える雌部を参照するとき、ねじ部の特定の第1及び第2コーティングを入れ替えること、すなわち、特定の第1コーティングを雌部に適用し、特定の第2コーティングを雄部に適用することが可能であることを理解されたい。
【0118】
実施例1
図1は、鋼鉄から形成した基板100を示す。雌型ねじ部102及び雄型ねじ部104を形成するように基板100を成形する。
【0119】
第1防食及び抗摩耗層108で雄型ねじ部104をコーティングする。上述のように、第1金属層108を電解により堆積させる。第1金属層108は、二元亜鉛−ニッケル(Zn−Ni)合金により構成され、亜鉛(Zn)、すなわち85.7%の平均量の亜鉛を含む。第1金属層108は、8.3μmの平均厚さを有する。さらに、第1金属層は、単相ガンマタイプの微細構造を有する。
【0120】
上述のように、パッシベーション層110で第1金属層108をコーティングする。本質的に、パッシベーション層は、防食特性を有する。
【0121】
任意選択的に、上述のように、腐食性をも有するバリア層114でパッシベーション層110をコーティングする。
【0122】
第2金属製抗摩耗層106で雌型ねじ部102をコーティングする。第2金属層106は、二元Zn−Ni合金により構成される。
【0123】
第2金属層106を電解により堆積させる。第2金属層106は、重量基準で主に亜鉛(Zn)を含む。さらに、第2金属層は、単相ガンマタイプの微細構造を有する。
【0124】
潤滑剤層112で第2金属層106をコーティングする。図1の実施形態では、潤滑剤層112は、潤滑特性と防食特性の両方を有するホットメルトタイプのものである。
【0125】
ホットメルト潤滑剤層は、重量基準で以下の組成を有する。
マトリックス:70%〜95%、
固体潤滑剤:5%〜30%。
マトリックスは、以下の組成を有する。
ポリエチレンホモポリマー:8%〜90%、
カルナウバワックス:5%〜30%、
ステアリン酸亜鉛:5%〜30%、
スルホン酸カルシウム誘導体:0〜50%、
ポリメタクリル酸アルキル:0〜15%、
着色剤:0〜1%、
抗酸化剤:0〜1%、
シリコーン(界面活性剤正文):0〜2%。
【0126】
実施例2
図2は、鋼鉄から形成された基板100を示す。雌型ねじ部102及び雄型ねじ部104を形成するように基板100を成形する。
【0127】
金属製防食及び抗摩耗層108で雄型ねじ部104をコーティングする。上述のように、金属層108を電解により堆積させる。金属層108は、二元亜鉛−ニッケル(Zn−Ni)合金により構成され、亜鉛(Zn)、すなわち86.5%の平均量の亜鉛を含む。第1金属層108は、、6.7μmの平均厚さを有する。
【0128】
上述のように、パッシベーション層110で雄型ねじ部104の金属層108をコーティングする。本質的に、パッシベーション層は防食特性を有する。
【0129】
上述のように、防食特性も有するバリア層114で雄型ねじ部104のパッシベーション層110をコーティングする。
【0130】
金属製防食及び抗摩耗層108で雌型ねじ部102をコーティングする。上述のように、金属層108を電解により堆積させる。金属層108は、二元亜鉛−ニッケル(Zn−Ni)合金により構成され、亜鉛(Zn)、すなわち86.4%の平均量の亜鉛を含む。金属層108は、7.4μmの平均厚さを有する。
【0131】
上述のように、パッシベーション層110で雌型ねじ部102の金属層108をコーティングする。本質的に、パッシベーション層は、防食特性を有する。
【0132】
雌型ねじ部102のパッシベーション層110を潤滑剤層112でコーティングする。図2の実施形態では、潤滑剤層112は、潤滑特性と防食特性の両方を有するホットメルトタイプのものである。
【0133】
実施例3
図3は、鋼鉄から形成された基板100を示す。雌型ねじ部102及び雄型ねじ部104を形成するように基板100を成形する。
【0134】
金属製防食及び抗摩耗層108で雄型ねじ部104をコーティングする。上述のように、金属層108を電解により堆積させた。金属層108は、二元亜鉛−ニッケル(Zn−Ni)合金により構成され、亜鉛(Zn)、すなわち86.5%の平均量の亜鉛(Zn)を含む。第1金属層108は、7μmの平均厚さを有する。
【0135】
上述のように、パッシベーション層110で雄型ねじ部104の金属層108をコーティングする。本質的に、パッシベーション層は、防食特性を有する。
【0136】
上述のように、防食特性をも有するバリア層114で雄型ねじ部104のパッシベーション層をコーティングする。
【0137】
雌型ねじ部102の基板100は、表面粗さを有する。表面粗さは、サンドブラスティング処理によって得られたものである。サンドブラスティング処理は、特に、1.0μm〜10μmの範囲の表面粗さ(Ra)を生成することを可能にする。図3の典型的な実施形態では、表面粗さ(Ra)は、約2μmである。
【0138】
金属製防食及び抗摩耗層108で雌型ねじ部102をコーティングする。上述のように、金属層108を電解により堆積させた。金属層108は、二元亜鉛−ニッケル(Zn−Ni)合金により構成され、亜鉛(Zn)、すなわち85.6%の平均量の亜鉛を含む。金属層108は、7μmの平均厚さを有する。
【0139】
上述のように、雌型ねじ部102の金属層108をパッシベーション層110でコーティングする。本質的に、パッシベーション層は、防食特性を有する。
【0140】
雌型ねじ部102のパッシベーション層110を潤滑剤層112でコーティングする。図3の実施形態では、潤滑剤層112は、樹脂と、この樹脂中に分散された乾燥固体潤滑剤とを含む。この場合、潤滑剤層112は、カーボンブラックの粒子が分散されたポリウレタン樹脂(タイプPU2K)により構成されている。
【0141】
実施例4
図4は、鋼鉄から形成された基板100を示す。雌型ねじ部102及び雄型ねじ部104を形成するように基板100を成形する。
【0142】
金属製防食及び抗摩耗層108で雄型ねじ部104をコーティングする。上述のように、金属層108を電解により堆積させた。金属層108は、二元亜鉛−ニッケル(Zn−Ni)合金により構成され、亜鉛(Zn)、すなわち86.3%の平均量の亜鉛(Zn)を含む。第1金属層108は、7.3μmの平均厚さを有する。
【0143】
上述のように、雄型ねじ部104の金属層108をパッシベーション層110でコーティングする。本質的に、パッシベーション層は、防食特性を有する。
【0144】
上述のように、任意選択的に、防食特性をも有するバリア層114で雄型ねじ部104のパッシベーション層110をコーティングする。
【0145】
雌型ねじ部102の基板100は、表面粗さを有する。表面粗さは、サンドブラスティング処理によって得られたものである。図4の典型的な実施形態では、表面粗さ(Ra)は、約2μmである。変形例では、後述する雌型ねじ部102の金属製防食及び抗摩耗層108上で、サンドブラスティング処理を実施してもよい。
【0146】
金属製防食及び抗摩耗層108で雌型ねじ部102をコーティングする。上述のように、金属層108を電解により堆積させた。金属層108は、二元亜鉛−ニッケル(Zn−Ni)合金により構成され、亜鉛(Zn)、すなわち86.8%の平均量の亜鉛を含む。金属層108は、7.7μmの平均厚さを有する。
【0147】
上述のように、雌型ねじ部102の金属層108上で、サンドブラスティング処理を実施してもよい。本発明の一実施形態では、金属層108は、約2μmの表面粗さ(Ra)を有する。これは、後述するパッシベーション層又は潤滑剤層112が十分に付着可能であることを意味する。
【0148】
上述のように、任意選択的に、雌型ねじ部102の金属層108をパッシベーション層110でコーティングする。本質的に、パッシベーション層は、防食特性を有する。
【0149】
雌型ねじ部102のパッシベーション層110を潤滑剤層112でコーティングする。図4の実施形態では、潤滑剤層は、エポキシ及びMoSにより構成される。
【0150】
変形例では、パッシベーション層110がなく、潤滑剤層112を雌型ねじ部102の金属層108に対して直接に(又は、必要に応じて雄型ねじ部の金属層108に対して直接に)施用(適用)することができる。
【0151】
実施例5
図5は、鋼鉄から形成された基板100を示す。雌型ねじ部102及び雄型ねじ部104を形成するように基板100を成形する。
【0152】
雄型ねじ部104の基板100は、表面粗さを有する。表面粗さは、サンドブラスティング処理によって得られたものである。図5の典型的な実施形態では、表面粗さ(Ra)は、約2μmである。変形例では、後述する雌型ねじ部102の金属製防食及び抗摩耗層108上で、サンドブラスティング処理を実施してもよい。
【0153】
金属製防食及び抗摩耗層108で雄型ねじ部104をコーティングする。上述のように、金属層108を電解により堆積させた。金属層108は、二元亜鉛−ニッケル(Zn−Ni)合金により構成され、亜鉛(Zn)、すなわち86.7%の平均量の亜鉛を含む。金属層108は、7.2μmの平均厚さを有する。
【0154】
上述のように、雄型ねじ部104の金属層108上で、サンドブラスティング処理を実施してもよい。本発明の一実施形態では、金属層108は、約2μmの表面粗さ(Ra)を有する。これは、後述するパッシベーション層又は潤滑剤層112が十分に付着可能であることを意味する。
【0155】
上述のように、任意選択的に、雄型ねじ部104の金属層108をパッシベーション層110でコーティングする。本質的に、パッシベーション層は、防食特性を有する。
【0156】
雄型ねじ部104のパッシベーション層110を潤滑剤層112でコーティングする。図5の実施形態では、潤滑剤層112は、アクリル樹脂及びカーボンブラックにより構成される。
【0157】
変形例では、パッシベーション層110がなく、雄型ねじ部104の金属層108に潤滑剤層112を直接施用することができる。
【0158】
雌型ねじ部102の基板100は、表面粗さを有する。表面粗さは、サンドブラスティング処理によって得られたものである。図5の典型的な実施形態では、表面粗さ(Ra)は、約2μmである。変形例では、後述する雌型ねじ部102の金属製防食及び抗摩耗層108上で、サンドブラスティング処理を実施してもよい。
【0159】
金属製防食及び抗摩耗層108で雌型ねじ部102をコーティングする。上述のように、金属層108を電解により堆積させた。金属層108は、二元亜鉛−ニッケル(Zn−Ni)合金により構成され、亜鉛(Zn)、すなわち86.2重量%の平均量の亜鉛を含む。金属層108は、6.7μmの平均厚さを有する。
【0160】
上述のように、雌型ねじ部102の金属層108上で、サンドブラスティング処理を実施してもよい。本発明の一実施形態では、金属層108は、約2μmの表面粗さ(Ra)を有する。これは、後述するパッシベーション層又は潤滑剤層112が十分に付着可能であることを意味する。
【0161】
上述のように、任意選択的に、雌型ねじ部102の金属層108をパッシベーション層110でコーティングする。本質的に、パッシベーション層は、防食特性を有する。
【0162】
雌型ねじ部102のパッシベーション層110を潤滑剤層112でコーティングする。図5の実施形態では、潤滑剤層112は、アクリル樹脂とカーボンブラックのその樹脂中の分散体とにより構成される。
【0163】
変形例では、パッシベーション層110がなく、雌型ねじ部102の金属層108に対して直接に(又は、必要に応じて、雄型ねじ部の金属層108に対して直接に)潤滑剤層112を施用することができる。
【0164】
特定の実施形態では、これらの層の少なくとも一部は、ねじ部の他の部材上に延在してもよい。一例として、当接部がねじ部上に存在するとき、この層は、その上に延在すればよい。
【0165】
本出願人は、本発明に係る金属層の電解蒸着前のねじ部と、本発明に係る金属層の電解蒸着後のねじ部とで粗度比較試験を実施した。その部分の機械方向に対して平行な方向で、粗度を測定した。表1にその結果を公表する。
【表1】
表1.粗度の比較
【0166】
Raは、平均偏差粗度であり、これは、粗度プロファイルで測定された山と谷との間の距離の絶対値の算術平均である。Rzは、平均最大粗度として知られ、これは、粗度プロファイルで複数(例えば、5つ)の選択された部分にわたって測定された最大高さの平均である。Rtは、全粗度として知られ、これは、粗度プロファイルの全体にわたって測定された最大高さである。
【0167】
表1は、電解蒸着前のねじ部のサンプルと比較して、電解蒸着後のねじ部のサンプルが機械方向に平行な方向に減少する粗度を有することを示す。特に、本発明に係る電解蒸着は、レベリング(水平化)効果を有する。
【0168】
図6は、光学顕微鏡で撮影したねじ状部材の写真を示す。より詳細には、図6は、本発明に係るねじ状部材の2つの選択された類似部分と比較した従来技術のねじ状部材の2つの選択された部分を示す。
【0169】
使用した顕微鏡は、光学式であった。その倍率は、500倍であった。各写真で示したスケールは、50μmである。
【0170】
従来技術のねじ状部材を写真200a及び200bに示す。エポキシ樹脂中に分散された層状亜鉛の粒子を含む層204で、鋼鉄から形成された従来技術の基板202をコーティングする。当該技術分野で公知の処理を使用して層204を施用した。従来技術の処理は、層204を基板202上に周囲温度で空気圧噴霧し、続いて、基板/層アンサンブルを熱硬化させることを含む。噴霧段階の間、層204の組成は、溶媒を含む。硬化段階を利用して、溶媒を除去し、層204を架橋させる。写真200a及び200bは、層204が不均一であることを示す。実際、従来技術のねじ状部材の層204は、非均一な微細構造を有する。
【0171】
写真300a及び300bは、本発明のねじ状部材を示す。上記実施例1に記載したタイプの二元Zn−Ni合金により構成された第1金属層108で基板100をコーティングする。均質層を形成するために、二元合金を電解により施用した。実際、図6の写真300a及び300bは、本発明のねじ状部材の第1金属層108が均一な微細構造を有することを示す。この場合、それは、単相ガンマ(γ)型の微細構造である。
【0172】
図7は、光学顕微鏡で撮影した本発明に係るねじ状部材の写真400を示す。その倍率は、500倍である。各写真で表示したスケールは、50μmである。
【0173】
上記実施例1で記載したタイプの二元Zn−Ni合金により構成された第2金属層106で基板100をコーティングした。均質層を形成するために、二元合金を電解により施用した。金属層は、約4μm〜約6μmの厚さ(平均厚さ約5μm)を有していた。実施例1で上述したように、ホットメルトHMS−3タイプの潤滑剤層112で金属層をコーティングした。潤滑剤層は、約40μm〜約43μmの厚さを有する。
【0174】
第2金属層106は、均一な微細構造を有する。実際、二元Zn−Ni合金により構成される第2金属層も、単相ガンマ(γ)型微細構造を有する。
【0175】
このように、図6及び7は、本発明の金属層が均一な微細構造を有することを実証する。
【0176】
本発明の管の部材、すなわち、雄型ねじ部又は雌型ねじ部は、これらのねじ部で製造された連結部と同様に、国際標準API RP 5C5(第3版、2003年7月)の条件に適合する。特に、管部材は、15の組み立て/分解手順に耐え、また密封(シール)条件を完全に満たした。
【0177】
本発明の管の部材、すなわち、雄型ねじ部又は雌型ねじ部は、これらのねじ部で製造された連結部と同様に、塩水ミスト試験に関する欧州標準NF EN ISO 9227の条件に完全に準拠していた。特に、管部材は、浸食環境への1000時間暴露に対する腐食耐性に関して好ましい反応を示した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7