特許第6774433号(P6774433)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774433
(24)【登録日】2020年10月6日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】自動車群
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/00 20060101AFI20201012BHJP
   B62D 65/00 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   B62D25/00
   B62D65/00 Z
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-562761(P2017-562761)
(86)(22)【出願日】2016年5月4日
(65)【公表番号】特表2018-516203(P2018-516203A)
(43)【公表日】2018年6月21日
(86)【国際出願番号】EP2016060052
(87)【国際公開番号】WO2016192921
(87)【国際公開日】20161208
【審査請求日】2019年4月25日
(31)【優先権主張番号】102015210330.7
(32)【優先日】2015年6月3日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(72)【発明者】
【氏名】ハウク・ヴォルフラム
(72)【発明者】
【氏名】ライヒェルト・ミケ
(72)【発明者】
【氏名】ケーン・フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】アーラーズ・ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】クッチュバッハ・イェルク
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−044400(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102009050470(DE,A1)
【文献】 国際公開第99/032346(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00 − 25/08
B62D 25/14 − 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一パーツとして形成されている少なくとも一つのモジュールを各グループの自動車が共通の基本骨格部品として有している自動車群において、
少なくとも二つの異なる車両前部モジュール(V,V1,V2)は、少なくとも大きさが異なる駆動ユニット(4,6)を収容するように、異なるエンジンマウント(2)間隔(D1,D2)がそれぞれ設けられているとともに、少なくとも二つの異なるキャビンモジュール(F,F1,F2)は、異なるフロントシート(20)間隔がそれぞれ設けられており、
クラスが異なる少なくとも二つの自動車のグループができるように、車両前部モジュール(V,V1,V2)とキャビンモジュール(F,F1,F2)とが組み合わせ可能とされていることを特徴とする自動車群。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車群において、クラスが異なる三つの自動車のグループが、二つの車両前部モジュール(V,V1,V2)と二つのキャビンモジュール(F,F1,F2)とから製造可能とされていることを特徴とする自動車群。
【請求項3】
請求項1または2に記載の自動車群において、車両前部モジュール(V,V1,V2)は、種類が異なる駆動システム、駆動ユニット(4,6)、変速機およびフロントアクスルシステム(8,10)のうち少なくともいずれかを収容するように構成されていることを特徴とする自動車群。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の自動車群において、キャビンモジュール(F,F1,F2)は、運転席および助手席(20)の位置が異なるように且つ/又は異なる空調ユニット(26,28)、センターコンソール、先進運転支援ユニット(30,32)およびエンターテインメントユニットの少なくともいずれかを収容するように構成されていることを特徴とする自動車群。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の自動車群において、キャビンモジュール(F,F1,F2)は、共通のダッシュパネル部(S,S1,S2,S3,S4)を有し、当該ダッシュパネル部は、異なる車両前部モジュール(V,V1,V2)を連結するように構成されていることを特徴とする自動車群。
【請求項6】
請求項5に記載の自動車群において、ダッシュパネル部(S,S1,S2,S3,S4)は、車両前部モジュール(V,V1,V2)との共通の連結部と、ステアリングのための共通の貫口部との少なくともいずれかを有することを特徴とする自動車群。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の自動車群において、少なくとも二つの車両後部モジュール(H1,H2)が付加的に備えられていることを特徴とする自動車群。
【請求項8】
請求項7に記載の自動車群において、後部モジュール(H1,H2)は、異なるリアアクスルシステム(40,42)、マフラー、燃料添加剤システムおよびリアアクスル制御システムの少なくともいずれかを収容するように且つ/又はスペアタイヤを収容ないし省略するように構成されていることを特徴とする自動車群。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の自動車群において、キャビンモジュール(F,F1,F2)と後部モジュール(H1,H2)との間の境界部分にエネルギー蓄積モジュール(50)が備えられていることを特徴とする自動車群。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の自動車群において、キャビンモジュール(F,F1,F2)のフロアパネル(B)は、同一パーツとして形成されていることを特徴とする自動車群。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の自動車群に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車は、その形、大きさ、価格設定の少なくともいずれかによって異なるクラス(車両クラス)に分類されている。その際に、“クラス”という概念の代わりに“セグメント”という概念も用いられる。例えば、欧州委員会は、競争法上の市場区分に関して次のクラス:ミニカー、スモールカー、ロアーミディアムクラス、アッパーミディアムクラス、エグゼクティブクラス、ラグジュアリークラスを定めた。ドイツ連邦自動車庁は、次のクラス:ミニ、スモールカー、コンパクトクラス、ミディアムクラス、アッパーミディアムクラス、エグゼクティブクラスに分けている。この他にもさらに、例えばオフロード車、スポーツ車、カブリオレ、ミニバン、多目的車といったカテゴリーがある。
【0003】
製造工程の経済効率を向上させるために、自動車メーカーは、自社の自動車の骨格ボディ(Rohbaukarosserie)に、できるだけ共通の骨格部品を用いている。目指すのは、このときにこの種の“同一パーツ”が異なるクラスの自動車にも包括的に使用できることである。同一パーツを用いることで、プレス加工およびボディ骨格組立てにおいて、工作機械と設備への投資を著しく低減できる。同一パーツの利用は、いくつかの自動車メーカーにおいては、例えば“プラットフォーム戦略”の名前で知られている。
【0004】
例えば、特許文献1より、別々に作られた少なくとも二つの後部モジュール(自動車の“後部構造体”)によって、異なるクラスに属する一群の自動車を作ることが知られている。ここでは、後部モジュールのリアサイドメンバーが、その中央および後方の一部分が共通、つまりは同一パーツとして形成されている。リアサイドメンバーの前方の一部分だけがクラス毎に異なるようにして作られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2013/076016号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、異なるクラスの自動車用の基本骨格ボディを製造する新たな着想であって、自動車支持構造の特に前方と中央の部分(“車両前部モジュール”ないし“キャビンモジュール”)においてできるだけ幅広く同一パーツを用いながらも、異なるクラス間における明確な差別化を可能にする着想を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1の特徴部を有する自動車群により解決される。
【0008】
本発明に係る一の自動車群とは、少なくとも一つの第一の車両シリーズの自動車および少なくとも一つの第二の車両シリーズの自動車の全体のことである。ここで、二つの車両シリーズは、異なるクラスに属する。もちろん、二つよりも多い車両シリーズの基本骨格ボディ(Rohbaukarosserie)が一の自動車群にまとめられるのでもよい。
【0009】
本発明の思想の核心は、“車両前部モジュール”と“キャビンモジュール”を用意し、形態が異なるにもかかわらずこれら二つのモジュールを制限なく組み合わせることができ、それによりクラスが異なる自動車を作り出せるという点にある。このとき、一方では車両前部モジュールに異なるエンジンマウント間隔が設けられ、他方ではキャビンモジュールに異なるフロントシート間隔が設けられているが、さらに、これら二つのモジュールに、できるだけ多くの接続寸法(Anschlussmasse)が共通に装備されているというのが基本的思想である。従って、二つのモジュールがその異なる形態にもかかわらず互いに組み合わせることができるよう、標準化(共通化)されたインターフェースを用意することができる。
【0010】
ここで、少なくとも四つのモジュールのそれぞれは、“同一パーツ”として形成されている。つまり、これらのモジュールの一つの全変形態様(全ヴァリエーション)が“同一パーツ”である(以下に示す定義を参照)。
【0011】
エンジンマウントやフロントシートの間隔は、いずれも車両の幅の拡がりY(つまり車両長手方向Xに交差)に関するものである。
【0012】
本発明により、特に効果的な方法で、異なる駆動ユニットのために車両前部モジュールの幅を拡張したり、異なる室内空間幅のためにキャビンモジュールの幅を拡張したりすることができる。これら二つの手段は、もちろんこれに限ったわけではないものの、異なるクラスの自動車の違いを出すのに適している点で重要である。
【0013】
“異なるフロントシート間隔”は、搭乗者の座席位置を実際に決めるものである。つまり、フロントシート間隔が大きいと搭乗者同士の隔たりも大きくなる。すなわち、異なるフロントシート間隔により、車両方向Yにおける搭乗者のいわゆるH点(ヒップポイント)やR点(シーティングレファレンスポイント)は、互いに異なる距離で位置する。重要なことは、クラスに応じて適切な座席間隔を作り出すことである。キャビンモジュールは、フロントシート相互の間隔に加えて車両長手方向Xにおける座席位置も異なっていてよい。
【0014】
本発明により、三つのクラスの自動車、例えば、エグゼクティブカークラス、アッパーミディアムカークラスおよびミディアムカークラスの自動車を有利な方法で体現することができる。ここには、個々のクラスから派生したオフロード車、スポーツカー、カブリオレ、ミニバン、多目的車等々といった自動車も含まれる。
【0015】
自動車の外見と全体設計に大事なのは、前側両輪の中間からインストルメントパネルまでの距離(“ダッシュボード−アクスル距離”)である。個々のクラスの自動車同士の間で違いを出すために、スケーリング(Skalierung)が可能な範囲内でこの距離を適宜変更することができる。
【0016】
本発明の実施形態では、車両前部モジュールは、当該モジュールが、様式の異なる駆動システム(後輪駆動または全輪駆動)、駆動ユニット(例えば、必要によりそれぞれ異なる気筒数を有するV型エンジン、直列型エンジン、オットー或いはディーゼル形式による内燃機関)、変速機(手動変速機、自動変速機、デュアルクラッチトランスミッション)およびフロントアクスルシステム(例えば、ストラット式サスペンション、ダブルウィッシュボーン式サスペンション)のための共通の収容部を有するように考えられている。本発明の実施形態により、各車両前部モジュールに任意のユニットおよびシステムのための共通の収容部だけがあるようになる。そのため、例えば最大部類の駆動ユニット用の“スペース”が“小さな”車両前部モジュールに無く、その結果この組み合わせが除かれているといった類の制限に結びついていることもあるが、これは経済的な理由から受け入れる。もっとも、こういった技術的な理由から生じる特定の組み合わせの可能性の排除は、モジュールの共通化によるメリットと、それに伴う経済効率的な生産によって相殺される。
【0017】
本発明による自動車群にとって重要な基盤は、ガソリンエンジンなのかそれともディーゼルエンジンなのか、自動車が後輪駆動あるいは全輪駆動のいずれを備えて構成されているのか、自動車が内燃機関に加えて電気モータを駆動ユニットとして有している(ハイブリッドカー)かどうか等々とは関係なく、エンジン及び/又は変速機の共通の支持位置と、エンジンの共通の傾斜角とを持つ車両前部モジュール内に、共通の自動車用パワートレインを使用するということである。
【0018】
パワートレインの共通化における別の基盤は、例えば、ギヤ式トランスファーの代わりに、効率、価格および重さに関するメリットがあり且つトランスファーからフロントアクスル変速機(Vorderachsgetriebe)までの“変速機に近い”従動軸を伴うと好ましいチェーン式トランスファーを一貫して使用することである。フロントアクスルシステム、ステアリングギア、トランスファー出力部およびフロントアクスル変速機の少なくともいずれか一つの位置も共通化されることが好ましい。
【0019】
パワートレインの共通位置は、例えば、前側両輪の中間と駆動ユニットの確定された座標位置との間の寸法によって定められている。同様に、例えば駆動ユニットの後方エッジとトランスファーの出力位置との間の寸法が共通化されていてもよい。特に好ましい方法では、エンジン支持部と変速機支持部の少なくともいずれか一方の位置が共通化されている。
【0020】
エンジン固有のインターフェース、例えば排気装置のエンジン出口側端部(“ホットエンド”)とエアインテークシステムの少なくともいずれか一方の境界のアウトライン、変速機とフロントアクスル変速機の少なくともいずれか一方の位置等々は、あらゆる動力部搭載(モータリゼーション)(Motorisierung)の変形態様に対し、一つのモジュール内で同一である。
【0021】
本発明の構成において、キャビンモジュールは、運転席および助手席をクラス毎に異なる位置に、つまり車両横手方向においてもそうだが、さらに/または車両長手方向においても異なる位置にするような構成とされている。さらに、キャビンモジュールが異なると運転席および助手席の高さ位置も違っていて、それにより、一方ではセダン、クーペ等の間で、他方ではオフロード車、多目的車等の間で違いが得られるようになっていてもよい。
【0022】
既述したように、車両横手方向には、ドライバーと助手席同乗者間におけるHポイントないしRポイント間の異なる距離が与えられる。自動車の二名の前側搭乗者間のこの間隔は、各クラスにおける室内感の決め手になる。しかもこのとき、センターコンソールと“センタースタック”の少なくともいずれか一方の設計が重要な役割を果たす。
【0023】
フロントシート同士の間隔は、例えば空調ユニットおよび/またはヘッドアップディスプレイの大きさ、ペダルおよび/またはステアリング装置の位置といった室内に組み込まれるものの寸法決めや位置決めに影響を与え得るので、これらの組み込み物は、クラスに適った設計と配置を行なうことができる。このことは、空調ユニットとヘッドアップディスプレイの場合には、車両長手方向Xにおける位置を左右する。ペダルとステアリング装置の位置は、主として車両横手方向Yに関係してくる。さらに、キャビンモジュールは、必要であれば、いわゆる“セントラル・バス”つまり、低い周波数を再生するために中央に配置されるスピーカを収容できるように構成することができる。
【0024】
車両長手方向では、前側搭乗者用の座席配置により、キャビン部分において、クラスが異なる自動車の大きさの格付け(Groessenabstufung)(スケーリング(Skalierung))が行なわれる。これは、ダッシュパネルに対する運転席・助手席用のシートフロアクロスメンバ(Sitzquertraeger)の位置が異なることにより実現される。このスケーリングによって、車両の外形寸法と車両内部のスペース提供の少なくともいずれかが体現される。そのための大きさが、前方両輪の中間とRポイントの間の間隔である。同じように、Rポイントのエンジンまでの距離が基準として参照できる。
【0025】
さらに、キャビンモジュールは、異なる空調ユニット、例えば2ゾーン式空調ユニット(フロントシートに空調の調節部を有したもので、リアシート用の空調の制限付き調節部を有したものは、いわゆる2.5ゾーン式空調ユニットである。)或いは前部座席と後部座席に独立した空調の調節部を有した4ゾーン式空調ユニットを収容するように構成されていてもよい。空調ユニットは、空冷式であることが好ましい。
【0026】
空調ユニットとは、車両室内の暖房と冷房の少なくともいずれか一方のためのシステムである。
【0027】
さらに、(幅と長さの少なくともいずれか一方に関して)異なる大きさのセンターコンソールを有したキャビンモジュールが構成されていてもよい。このとき重要なのは、車両長手方向Xの寸法である。加えて、キャビンモジュールは、異なる先進運転支援ユニット(例えばヘッドアップディスプレイなど)を収容することができる。同様に、異なるエンターテインメントユニット(例えば異なるスピーカ設備など)が設けられていてもよい。
【0028】
本発明の好適な形態では、キャビンモジュールは、共通のダッシュパネル部を有することで、異なる車両前部モジュールと連結することができるようになっている。従って、ダッシュパネルは、一種の“コモナリティセンター(Kommunalitaetszentrum)”、つまり異なる車両前部モジュールとキャビンモジュールとの間の共通のインターフェースを形成する。この場合、ダッシュパネル部が、組立部品(例えばステアリング、空調ユニット、ブレーキ装置、配線・配管用の接続部等々の構成要素)用と配線・配管用の共通の貫口部を有していると有利である。配線・配管は、電気的なケーブル、特にハーネスの一部や媒体を通す導管である。組立部品は、例えばステアリングコラムやブレーキ装置のペダルの部品などでもよい。ダッシュパネルは、エンジンマウントの間隔が異なる少なくとも二つの車両前部モジュールが制限なしでダッシュパネルに前側で連接できるように形成されている。
【0029】
ダッシュパネルは、好ましくは共通の通過面、つまり組立部品と配線・配管を通すために設けられている領域を持ち、これにより正確な貫通口を個別の場合に必要に応じて作り込むことができる。その他に、ダッシュパネルは、例えば空調ユニットの異なる高さ位置を実現できるようにするために(例えば車両群の中でスポーツ仕様の車両とスポーツ・ユーティリティ・ビークルの間の違いを出すために)“変更可能”な領域がある。また、車両に合わせた各調整、例えばフロントガラスの位置および/またはカウルの位置に関する各調整は、共通のダッシュパネルの変更可能な領域を使って実現することができる。
【0030】
Rポイントの異なる高さのスケーリングは、車両内の高さ方向(Z)におけるダッシュパネルの異なる配置により行なわれる。特殊な方法では、高さ方向Zのスケーリングは、ダッシュパネルの高さに沿って貫口部の配置を変えることで実現される。
【0031】
自動車の全体設計と外見にとって重要なのは、前側両輪の中間とインストルメントパネル(“ダッシュボード−アクスル距離”)の間の距離である。個々のクラスの車両同士の間で違いを出すために、スケーリング(等級分け・格付け)の可能な範囲内でこの距離を然るべく変更することができる。
【0032】
本発明の他の形態において、少なくとも二つの異なる後部モジュールを有するキャビンモジュールと車両前部モジュールを組み合わせることができる。後部モジュールは、異なるリアアクスルシステム(例えば異なる構成のマルチリンク式リアアクスル)及び/又は異なる種類のマフラー(例えば隔壁タイプのサイレンサ(Schalendaempfer)、ストレートタイプのサイレンサ(Wickeldaempfer)))、燃料添加剤システム(例えば尿素添加)、リアアクスル制御システム(エアサスペンションの場合)、スペアタイヤコンセプト(タイヤとして完全なスペアタイヤを用いる或いは“応急用タイヤ”を用いる或いはスペアタイヤ無し)の少なくともいずれかのための共通の収容部を有して構成されている。
【0033】
後部モジュールには、本発明の形態において、制御・操作装置、媒体タンク等々のための“収容槽(収容受け)”が設けられている。収容槽のための組立スペースは、全ての後部モジュールにおいて予め確保してある。収容槽のための接続ポイントは、全ての後部モジュールにおいて共通化されている。
【0034】
好ましくは、横切るように位置している排気装置のマフラー(例えばストレートタイプのサイレンサとしての実施形態によるもの)が収容槽に隣接して設けられている。
【0035】
特に有利であるのは、エネルギー蓄積モジュールのための接続ポイントが、リアシートの下側の領域に、本発明による全ての自動車において同じ方法で設けられている場合である。こうして、本発明による群の全ての自動車に対し、電気エネルギー蓄積部に必要なスペースが予め用意されていて、それにより基本的には制限なく“ハイブリッド化”、つまり内燃機関に加えて電気モータを一緒にして構成することもできる。こうして、エネルギー蓄積モジュールは、上述の異なる車両前部モジュールとキャビンモジュールの間の“コモナリティセンター”としてのダッシュパネルに比肩し得る後部モジュールにおける“コモナリティセンター”を構成する。
【0036】
本発明は、基本的に、後輪駆動(“標準駆動”)を有して構成されている自動車、選択的に(必要があれば専ら少なくとも一つのモデル変形態様において)全輪駆動が備えられている自動車に関することが好ましい。
【0037】
複数のキャビンモジュールについて、従って自動車群全体について、一つの共通のフロアパネル(Bodengruppe)が用いられる点が重要である。共通のフロアパネルは、この群全ての車両に関する幅が同じである点に特徴を有する。異なる車幅は、例えば異なるサイドステップ(Schwellerverkleidung)により体現される。同じように異なるサイドフレームを使用することもできる。フロアパネルは、それらにエンジンマウントの間隔が異なる車両前部モジュールを接続することができるようなものでなければならない。フロントシートとリアシートの少なくともいずれか一方の位置は、異なるシートフロアクロスメンバにより広げられるが、このシートフロアクロスメンバは、場合によっては、高さ位置を設定するためのコンソールをさらに有することができる。また、フロアパネルにおける中央トンネル部(フロアトンネル)は、標準駆動の自動車に対してだけでなく、全輪駆動の自動車に対しても適しているように構成することができる。この群の個々の車両の様々な長さは、共通のフロアパネルを使用しつつ、好ましくはリアシートの領域において必要に応じて裁断したり継ぎ足したりすることで実現される。
【0038】
本発明による自動車群の個々のモジュールにおいて実現されている基本的な特徴は、以下に挙げられる:それは共通のパワートレインおよび/またはハイブリッド駆動を実現するための一貫したコンセプトであり、それは、蓄電部と、共通のフロアパネル(後輪駆動および全輪駆動の車両に同等に適しているもの)と、共通のダッシュパネルと、好ましくは空冷式の(luftgeregelte)空調ユニット(空冷式にすることで空調ユニットはダッシュパネルに配置することができる)と、様々な構成による独立懸架マルチリンク式サスペンション(Raumlenkerachse)を有するリアアクスルシステムと、後部モジュールにおける収容槽(必要であれば、横に位置するマフラーも一緒)との少なくともいずれかひとつのための組立スペースを設けることによるものである。
【0039】
上述したように、特別な態様でメリットがもたらされるのは、標準駆動の自動車の場合であって、これらの自動車が全輪駆動を有して構成されていても使用できるように作られているフロアパネルを有している自動車の場合である。従って、自動車の駆動の変形態様(ヴァリエーション)に対するフロアパネルの変形態様(ヴァリエーション)を前もって確保しておく必要はない。
【0040】
さらに、特別な態様でメリットがもたらされるのは、駆動ユニットとして内燃機関を有して構成されている自動車の場合であって、これらの自動車が付加的な駆動ユニットとして電気モータを有していても使用できるように作られている一つのフロアパネルを有している自動車の場合である。この場合には、専らダッシュパネル部から所謂ヒールプレートまでのフロアパネルを共通に構成する一方で、他方でヒールプレートの後ろ側のフロアプレートの領域は、内燃機関(後部座席の下側の領域の燃料タンク)だけを有した実施形態なのか、それともハイブリッド駆動(後部座席の下側の領域の電池とヒールプレートの後ろ側の領域の燃料タンク)を有した実施形態なのかに応じて、異なるように構成されていることが有利となり得る。
【0041】
“同一パーツ”の概念(同じく“共通の”組立部品の概念)には、同じ深絞り加工機によって製造されるような基本骨格部品が含まれる。プレス加工での製造に続いて、これらの“同一パーツ”は、その長さ寸法を短くしたり長くしたりすることで変更を加えることができる。トリミングによる短縮加工時には、例えば、二つ或いはそれを上回るクラスの自動車に横断的に使用される深絞り加工された平らなプレート部やサイドメンバーは、クラスに応じ、小型のクラス(複数クラス)の自動車に対してはその端部部位において裁断をすることで短縮される。代替的に、サイドメンバーやプレート部は、リベット接合、溶接、ネジ止め、接着等々により延長部品を付け足すことによってクラスに応じて延長することもできる。トリミング(裁断)による、或いは延長(付け足し)によるこれらの長さ調整は、共通の深絞り加工機によって前もって製造した“同一パーツ”に対する事後処置として実行される製造工程であるので、これらの事後処置について比較的僅かな労力と工具代しかかからないことになる。
【0042】
深絞り加工されたプレート部品は、例えばダッシュパネル、フロアプレート、サイドメンバー等々である。プレート材料は、その面方向に沿って均質とすることができるし、或いは、例えば所謂“テーラードブランク”によって形成することもできる。
【0043】
さらに、“同一パーツ”の概念(同じく”共通の”組立部品の概念)には、同じ鋳造装置で製造されるような基本骨格部品が含まれる。鋳造部品の利点は、とりわけ、機能、取付け部品、連結部などを統合する多様な可能性にある。例えば、ストラットマウントは、鋳造部品によって有利に形成することができる。
【0044】
さらに、“同一パーツ”の概念(同じく“共通の”組立部品の概念)には、同じ押出成形装置により製造されるような基本骨格部品が含まれる。押出成形プロファイルは、その長手方向に沿って変わらない断面を有している。特殊な方法では、押出成形プロファイルは、サイドメンバーを形成するのに適している。押出成形プロファイルは、異なる長さに製造することができるか或いは事後的に必要な長さにトリミングして短縮することができる。さらに、押出成形プロファイルは、例えばマルチチャンバプロファイル(Mehrkammerprofil)における一室を取り除くフライス加工によるなどして、事後処理によって部分的にその断面を変更することができる。
【0045】
基本的に、個々のモジュールそれぞれの“同一パーツ”には、クラスに応じて、基本骨格ボディおよび組付部品の少なくとも一方に“同一パーツ”を接続するための様々な穴パターンが打抜き、穴あけ等々により設けられてもよい。しかしながら“同一パーツ”に重要なことは、同じ深絞り加工機において製造した後は、それ以上の成形による変更は加えられないということである。共通の深絞り加工機のクラス横断的な使用により、製造設備の投資コストが大幅に削減される。異なる穴パターンが、例えば、様々な国の所謂“左ハンドル”ないし“右ハンドル”の仕様で自動車を製造する際に必要である。ダッシュパネルにおける貫口部がステアリングやブレーキ等々のために左右入れ替わるためである。
【0046】
もちろん、“同一パーツ”は、少なくとも部分的に同じ組立部品として形成されていてもよい。
【0047】
本発明との関連で用いられる位置の呼び名“フロント/前部”および“リア/後部”並びにそれに依存した用語は、該当する組立部品の自動車内における組込み位置と、自動車の走行方向とに関係するものである。
【0048】
本発明の可能な実施形態が図面に示されており、以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】本発明による自動車群のうちの可能な組み合わせに関する概略的な平面図である。
図2】本発明による自動車群のうちの組み合わせの例を示す図である。
図3】本発明による自動車群のうちの組み合わせの例を示す図である。
図4】本発明による自動車群のうちの組み合わせの例を示す図である。
図5】本発明による自動車群のうちの様々な組み合わせを一緒にして示す図である。
図6】共通のダッシュパネルの様々な態様を示す図である。
図6a】共通のダッシュパネルの様々な態様を示す図である。
図7】本発明による自動車群のうち車両前部モジュールとキャビンモジュールの組み合わせの例を示す図である。
図8】本発明による自動車群のうち車両前部モジュールとキャビンモジュールの組み合わせの例を示す図である。
図9】本発明による自動車群のうち車両前部モジュールとキャビンモジュールの組み合わせの例を示す図である。
図10】本発明による自動車群のうち車両前部モジュールとキャビンモジュールの組み合わせの例を示す図である。
図11】本発明による自動車群のうち車両前部モジュールとキャビンモジュールの組み合わせの例を示す図である。
図12】位置を変えないようにしたパワートレインを基準にしてアウトラインを概略的に示す図である。
図13】位置を変えないようにした電気バッテリユニットを基準にして図12に対応するものを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1は、自動車の一群に関して二つの車両前部モジュールV1およびV2、二つのキャビンモジュールF1およびF2並びに二つの後部モジュールH1およびH2から得られる複数の可能な組み合わせを概略的に示す上面図である。車両前部モジュールV1またはV2とキャビンモジュールF1またはF2との間の接続は、“共有の”ダッシュパネルSを介して行なわれる。キャビンモジュールF1またはF2と後部モジュールH1またはH2との間の連結部には、共通の電気エネルギー蓄積部Eが設けられている。ここで、指標の1ないし2は、簡易な“基本ヴァリエーション(基本変形態様)”か、或いは手の込んだ“高位ヴァリエーション(高位変形態様)”をそれぞれ表している。
【0051】
車両前部モジュールV1およびV2は、その前側サイドメンバー2(“エンジンマウント”)を用いて、特に駆動ユニット(“エンジン”)4または6と、前輪12があるフロントアクスルシステム8または10を収容する。この二つの車両前部モジュールV1およびV2は、エンジンマウント2の間隔D1またはD2が異なっている。車両前部モジュールV2が大きなエンジン4(例えばV8エンジン)を収容するように設計されていて例えば間隔D2が788mmである一方で、車両前部モジュール1は、小さなエンジン(例えば最大6気筒までの直列型エンジン)を収容するように設けられていて、この場合には、間隔D1は762mmで十分である。同様に、二つの車両前部モジュールV1およびV2は、異なるフロントアクスルシステム8を収容するように形成されている:つまり、車両前部モジュールV1が比較的簡易に組み立てられたフロントアクスルシステム8(例えばストラット式サスペンション)を収容する一方で、車両前部モジュールV2は、より手の込んだフロントアクスルシステム10(例えばダブルウィッシュボーン式サスペンション)を収容するように設計されている。しかも、車両前部モジュールV2は、コーナリング時に車体の傾きを部分的にまたは完全に防止するロール安定化システム(“アンチロールシステムARS”)、つまり二つの前輪12を接続するシステムを収容することができる。
【0052】
キャビンモジュールF1およびF2は、それぞれが特にフロントシート20、リアシート22、ステアリングホイール24、空調ユニット26または28および先進運転支援システム30または32(例えば所謂“ヘッドアップディスプレイ”など)を収容する。キャビンモジュールF1が、フロントシート20同士の間に例えば375mmの間隔B1を有しているのに対し、キャビンモジュールF2は、例えば395mmの間隔B2を有しており、これによりドライバーと助手席同乗者に提供されるより広い室内空間が生まれる。さらに、二つのキャビンモジュールF1およびF2は、空調ユニット26または28の複雑さの点で異なる:空調ユニット26がドライバーと助手席同乗者とに対して別々に操作可能で、さらに限られた範囲で後部スペースの空調も担う(所謂“2.5ゾーン空調ユニット”)のに対して、空調装置28は、ドライバー、助手席の同乗者、そして他に着席している後部座席乗客に対して別々に調整できるように“4ゾーン空調ユニット”として設計されている。ヘッドアップディスプレイ30および32は、例えば、それらの性能(例えばスクリーンのサイズ)の点で異なる。この場合、“高位の”ヘッドアップディスプレイ32は、その性能が高いためにより大きな組立スペースが必要になる。
【0053】
後部モジュールH1およびH2は、特に後輪44を有するリアアクスルシステム40または42に加え、タイヤ故障システム46およびリアアクスル制御システム48を収容する。後部モジュールV1が、比較的簡易に組み立てられたリアアクスルシステム40(例えば五つのリンクを持つ(例えば個別のスプリング部材ないしダンパ部材を持つ)独立懸架マルチリンク式サスペンションでロール安定化システムのないもの)を収容するように構成されているのに対して、後部モジュールH2は、より込み入った組立のリアアクスルシステム42で、快適性がより高められた仕組みを持つもの(例えば、独立懸架マルチリンク式サスペンションで五つのリンクを持つもの、例えばストラットユニットを持ち、このユニットが例えば必要に応じてロール安定化システムかリアアクスルステアリングシステムかの少なくともいずれかとともにトレーリングアーム(Sturzlenker)か或いはハブキャリアに設けることができるもの)を収容する。ここで特別なのは、リアアクスルシステム42である。それは、このリアアクスルシステムが、例えばコンビネーションタイプの自動車および/または所謂スポーツ・ユーティリティ・ビークル用に“室内機能的に(raumfunktional)”設計できるからである。この種の自動車の場合、リアアクスルシステムは、できるだけ大きくて幅広のトランクルームにすることができるように設計されている。タイヤ故障システム46は、タイヤとして完全な車両タイヤ12または車両タイヤ44或いは応急用タイヤを持つか、それとも全くスペアタイヤを持たない。リアアクスル制御システム48は、装備の具合に応じて例えば様々な制御・操作装置やエアサスペンションを有することができる。
【0054】
キャビンモジュールF1またはF2と後部モジュールH1またはH2との間の境界部分には、共通のエネルギー蓄積モジュール50が設けられている。
【0055】
二つの車両前部モジュールV1およびV2を二つのキャビンモジュールF1およびF2と組み合わせることで、“小”、“中”そして“大”の用語で特徴付けられる三つの異なるクラスが得られる。これらの用語は、例えば、“ミディアムカークラス”、“アッパーミディアムカークラス”および“エグゼクティブカークラス”を表す。個々のモジュールV1およびV2或いはF1およびF2が重なる領域は、組み合わせが可能であることを示している。
【0056】
二つのキャビンモジュールF1およびF2を二つの後部モジュールH1およびH2と組み合わせることで、さらにヴァリエーションが生まれる。ここでも、個々のモジュールF1およびF2或いはH1およびH2が重る領域は、組み合わせが可能であることを示す。
【0057】
これらの組み合わせの可能性を図2〜4に基づいて例を挙げながら説明する。ここで、“KKL”、“MKL”および“GKL”の符号は、“小”、“中”および“大”の呼び方に対応する。“b”や“h”の符号は、“1”や“2”の指標に対応し、より簡易な(“基本の”)或いはより手の込んだ(“高位の”)実施形態を然るべく表している。
【0058】
“小”クラスの自動車は、例えば指標1を有したモジュールの組み合わせから作られる、つまりモジュールV1,F1およびH1(“b;b;b”)から作られる。同様に、“大”クラスの自動車は、指標2を有したモジュールの組み合わせから作られる、つまりモジュールV2,F2およびH2(“h;h;h”)から作られる。
【0059】
それぞれ“水平面内での”“小”と“大”のクラスのためのこれらの好ましい組み合わせに加えて、基本的には“小”と“大”のクラスにおいて、一つのモジュールを使って次に高いレベルへ、或いは次に低いレベルへ移ることもできる。
【0060】
クラスが“中”の自動車には多くの可能性がある。
【0061】
図2には、“中”クラスの自動車で以下のモジュールを有したものが示されている:エンジンマウント2がより大きな間隔D2である車両前部モジュールV2(“h”で示されている)、“4ゾーン空調ユニット”28と“大きなヘッドアップディスプレイ”32とを有し且つフロントシート20同士の間がより大きな間隔B2であるキャビンモジュールF2(“h/h”で示されている)、そして後部モジュールH2(“h”で示されている)、つまり組み合わせ“h;h/h;h”によるものである。この自動車は、“大きな”エンジンを取り付けることができ、手の込んだフロントアクスルシステムと快適な客室空間とがあることで、非常に高価な車両(例えばセダンや(4ドアの)クーペ)である。
【0062】
図3には、“中”クラスの自動車で以下のモジュールを有したものが示されている:エンジンマウント2がより小さな間隔D1である車両前部モジュールV1(“b”で示されている)、“4ゾーン空調ユニット”28と“大型のヘッドアップディスプレイ”32とを有し且つフロントシート20同士の間が大きな間隔B2であるキャビンモジュールF2(“h/h”で示されている)、そして後部モジュールH2(“h”で示されている)、つまり組み合わせ“b;h/h;h”によるものである。この自動車は、客室においては非常に高価な車両であるが、エンジンの取付けとフロントアクスルシステムには制限がある(例えばセダンやコンビネーションタイプの車両など)。
【0063】
図4には、“中”クラスの自動車で次のモジュールを有したものが示されている:エンジンマウント2がより小さな間隔D1である車両前部モジュールV1(“b”で示されている)、“2.5ゾーン空調ユニット”26と“小型のヘッドアップディスプレイ”30とを有しているがフロントシート20同士の間が大きな間隔B2であるキャビンモジュールF2(“b/h”で示されている)、そして後部モジュールH2(“h”で示されている)、つまり組み合わせ“b;b/h;h”によるものである。この自動車は、リアシート22に別途制御しなければならない空調装置が要らないカブリオである。
【0064】
もちろん、さらなる別の組み合わせも可能である。例えば、図4の車両は、車両前部モジュールV2が設けられていてもよい。
【0065】
後部モジュールH2について、図2ないし4におけるクラスが“中”の自動車の場合に次の特長が把握できる:つまり、例えば“セダン”や“クーペ”型の自動車のため或いは“コンビネーションタイプ”や“スポーツ・ユーティリティ・ビークル”型の自動車のために、車種に応じて“快適なリアアクスルシステム42”と“室内機能的なリアアクスルシステム42”との間で選択を行うことができる。
【0066】
リアアクスルシステム40および42は、例えばマルチリンク式サスペンション(例えば5リンク式による)として構成されており、例えば上述の異なる形態を有する:つまり、スプリングとダンパが別々のリアアクスルシステム40のどちらかというと経済性の高い構成と、より複雑な構成のリアアクスルシステム42(例えば所謂ストラットがトレーリングアームに接続している)であって一方では室内機能性と他方では快適さおよび音響性とをほどよく折衷させたものと、さらに、より複雑な構成のリアアクスルシステム42であって高い運動性のもとで快適さと音響に重点をおいたもの(例えばストラットがハブキャリアに接続している)とである。
【0067】
図5は、組み合わせのいくつかの可能性を再度分かり易く示す。
【0068】
自動車Aは、車両前部モジュールV1と後部モジュールH1を有するミディアムカークラスの車両である。
【0069】
自動車Bは、室内機能的な構成の後部モジュールH2と車両前部モジュールV1とを有するアッパーミディアムカークラスの車両であり、例えばアッパーミディアムカークラスの“スポーツ・ユーティリティ・ビークル”やアッパーミディアムカークラスの車両でコンビネーションタイプのものである。
【0070】
自動車Cは、快適さを求めた構成の後部モジュールH2と車両前部モジュールV2とを有するエグゼクティブカークラスの車両であり、例えばセダン、クーペ或いはカブリオである。
【0071】
自動車Dは、快適さを求めた構成の後部モジュールH2と車両前部モジュールV1とを有するアッパーミディアムカークラスの車両であり、例えばセダンである。
【0072】
自動車Eは、室内機能的な構成の後部モジュールH2と車両前部モジュールV2とを有するエグゼクティブカークラスの車両であり、例えばエグゼクティブカークラスの“スポーツ・ユーティリティ・ビークル”である。
【0073】
図5の個々の図から、細かな違いのないキャビンモジュールFは、基本的な違いのない共通のフロアパネルBに拠るものであることが特に見やすい方法で分かる。
【0074】
図6は、四つの実施形態S1〜S4における異なるダッシュパネルSを示す。全てのダッシュパネルS1〜S4は、エンジンルームとキャビンの間の共通した孔パターンの貫口部を持つが、異なった形状を有している。ダッシュパネルS2の例外があり、これは少なくとも一部領域において孔パターンもずれている。ダッシュパネルS1は、ミディアムカークラスの自動車に対応するものであり、ダッシュパネルS2は、“スポーツ・ユーティリティ・ビークル”型のエグゼクティブカークラスの自動車に対応するものであり、ダッシュパネルS3は、アッパーミディアムカークラスの自動車に対応するものであり、そして、ダッシュパネルS4は、エグゼクティブカークラスの自動車に対応するものである。
【0075】
図6aには、上述のダッシュパネルS1〜S4においてさらなる詳細が示されている。
ダッシュパネルS1〜S4を視る方向は、図6におけるものと同様、室内側からのものである。
【0076】
ダッシュパネルS1〜S4における個々の貫口部は、ダッシュパネルS1の例において詳しく特定されており、ここで、綴りの“L”と“R”は、“左ハンドル”または“右ハンドル”を表している:貫口部90Lおよび90Rはステアリングコラム用であることを示し、貫口部91Lおよび91Rはブレーキ装置用であることを示し、貫口部92Rおよび92Lはヒータ空気の出口用であることを示し、貫口部93Rおよび93Lはボディハーネスのグロメット用であることを示し、そして貫口部94は自動車の空調装置用の冷媒の接続部を形成することを示す。
【0077】
ダッシュパネルS1〜S4のそれぞれは、左ハンドルの変形態様用の貫口部も、右ハンドルの変形態様用の貫口部も設けることができ、その場合、必要とされなかった貫口部は、封止物等でその都度閉じられる。
【0078】
選択的に、貫口部が何もない(或いは、左ハンドルの変形態様の場合および右ハンドルの変形態様の場合の共通の貫口部だけがある)ダッシュパネルS1〜S4が、基本ボディ(ボディ・イン・ホワイト)(Rohkarosserie)に設置されるのでもよく、この場合には、左ハンドルと右ハンドルの変形態様において異なっている貫口部は、自動車の製造ラインにおける後続工程で初めて打抜き装置またはそれに類するものによりダッシュパネルS1〜S4に作り込むことができる(“事後構成(Late Configuration)”)。
【0079】
自動車の前側のサイドメンバー2がダッシュパネルS1〜S4の前面につながる連結部の位置が符号95aおよび95bにより示されている。このとき、連結部95aは、車両前部モジュールV1(“基本ヴァリエーション”)用であることを、また、連結部95bは、車両前部モジュールV2(“高位ヴァリエーション”)用であることを表している。ここで、ダッシュパネルS2にはまだ特長があり、連結部95bがより大きな高さ寸法を有していて、対応する自動車が“スポーツ・ユーティリティ・ビークル”型のエグゼクティブカークラスである場合に高めに形成されたサイドメンバー2の形状に適合している。
【0080】
特にダッシュパネルS2において分かるように、個々のダッシュパネルS1〜S4は、その高さ寸法について違っていてよい。“スポーツ・ユーティリティ・ビークル”型のエグゼクティブカークラスの自動車に対応するダッシュパネルS2は、“セダン”型の自動車に対応する他のダッシュパネルS1,S3,S4より高さ寸法hが大きく、特に、前側のサイドメンバー2の接続領域として用いられる下部領域96の面積がより大きい。
【0081】
さらに、左側と右側の周縁部97において及び/又は上側の周縁部98において然るべくトリミングすることで、各自動車の幅および/または幾何学的形状にダッシュパネルS1〜S4を調整して合わせることができる。こうして、ミディアムカークラスの自動車に対応するダッシュパネルS1では、この自動車タイプにおいて内側幅がより狭くなる(寸法量Δb1で表されている。)ように、周縁部97における側方のトリミングが行なわれる。逆に、ダッシュパネルS2は、その側方の周縁部97がトリミングされていて、対応する“スポーツ・ユーティリティ・ビークル”型のエグゼクティブカークラスの自動車に合せて、ダッシュパネルS2がより幅広の内側幅Δb2を上側に形成するようになっている。ダッシュパネルS3で明らかなように、上側の周縁部98におけるトリミングによって、各クラスにおいて典型的な所謂カウルの延び(曲がり)具合(Verlauf)、つまり自動車のフロントガラス下側にある車両横手方向Yに延在する保持部の延び(曲がり)具合への適合化が行なわれる。本例では、ダッシュパネルS3は、側方で僅かに下がるカウルに合わせることができる。
【0082】
ここで重要なことは、基本的に、共通のダッシュパネルS1〜S4用の出発材料が、“最大の”ダッシュパネルの幅ないし高さを有していることで、周縁部97または98における、或いは下側の周縁部(変速機ケーシングを通すための盛り上がりがある)における変更をトリミングにより加えることができるようになっていることである。
【0083】
ダッシュパネルS2は、上述したように、ダッシュパネルS1並びにS3およびS4とは部分的に違った孔パターンを有している。しかも、ダッシュパネルS2は、高さがより大きいというだけでなく、その下側の領域96にダッシュパネルS1並びにS3およびS4とは別の幾何学的形状も有している。とはいえ、基本的には、ダッシュパネルS2もまた、ダッシュパネルS1並びにS3およびS4同様に共通に形成することができる。
【0084】
図7〜11は、車両前部モジュールVとキャビンモジュールFとの様々な組み合わせの平面図である。キャビンモジュールFは、部分的にはフロアトンネルと一緒に、部分的にはフロアトンネル無しで図示されている、キャビンモジュールFの全ての図から、キャビンモジュールFが一つの共通のフロアプレートBから形成されることが看取できる。車両のタイプ次第では、フロアプレートBは補強部が設けられる。必要に応じて、より高い座席位置となるように、シートフロアクロスメンバは、コンソール式に高くされている。
【0085】
詳細には、図7〜11において、以下の点を列挙できる:変速機60がフランジ付けされたエンジン(直列4気筒ないしV型8気筒)で、変速機60がトランスファー出力部62を有し、そこに従動軸64があり、この従動軸が“近接して”変速機60の側に延在してフロントアクスル変速機66に至るもの、さらに、前輪12への駆動シャフト68 (全輪駆動)、異なるフロントアクスルキャリアを有するフロントアクスルシステム、ステアリングギア70、キャビンモジュールFの後部領域に付したプレートパン(Blechschale)72、補強支材76(特に所謂カウル78に接続されている)を有したストラット支持体74、そしてフロアトンネル82の下側に延びる排気装置80である。
【0086】
図12より、パワートレインの位置を合わせた状態で、派生した様々の自動車が見て取れる:上述のスケーリングの手法と、さらにダッシュパネルSの高さパターンとにより、異なる車種を生み出すことができる。すなわち、エグゼクティブカークラスのセダンF、アッパーミディアムカークラスのセダンG、ミディアムカークラスのセダンH並びにエグゼクティブカークラスのスポーツ・ユーティリティ・ビークルJである。
【0087】
同様の図である図13では、共用のエネルギー蓄積モジュールEの位置を合わせた状態で、派生した様々の自動車が示されている:後部車両の長さのスケーリングを行う然るべき手法により、異なる車種を生み出すことができる。つまり、ここでもやはり、エグゼクティブカークラスのセダンF、アッパーミディアムカークラスのセダンG、ミディアムカークラスのセダンH並びにエグゼクティブカークラスのスポーツ・ユーティリティ・ビークルJである。
【0088】
本発明は次のようにまとめることができる:少なくとも二つの異なる車両前部モジュールV1またはV2およびキャビンモジュールF1またはF2を組み合わせることで、異なるクラスに属する少なくとも二つのグループの自動車を作ることができる。この目的のために、二つの車両前部モジュールV1およびV2は、間隔D1およびD2が異なるエンジンマウント2が設けられ、二つのキャビンモジュールF1およびF2は、間隔B1およびB2が異なるフロントシート20が設けられている。これらの四つの各モジュールV1,V2,F1,F2の個々の変形態様は、このとき同一パーツとして構成されており、モジュールV1,V2,F1,F2ごとに共通の深絞り加工機で製造される。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図6a
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13