特許第6774434号(P6774434)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774434
(24)【登録日】2020年10月6日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】薬物送達デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/20 20060101AFI20201012BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   A61M5/20 510
   A61M5/315 550
【請求項の数】13
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-562775(P2017-562775)
(86)(22)【出願日】2016年6月2日
(65)【公表番号】特表2019-503207(P2019-503207A)
(43)【公表日】2019年2月7日
(86)【国際出願番号】EP2016062456
(87)【国際公開番号】WO2016193350
(87)【国際公開日】20161208
【審査請求日】2019年5月20日
(31)【優先権主張番号】15170593.6
(32)【優先日】2015年6月3日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・マーク・ケンプ
(72)【発明者】
【氏名】ヒューゴー・リヴェラット
【審査官】 竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/146209(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/004052(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20
A61M 5/31
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達デバイス(1)であって:
薬剤容器(3)を保持するように適用されたケース(2)と、
該ケース(2)内に配設され、薬剤容器(3)から薬剤(M)を送達するために近位位置(P1)から遠位位置(P2)へと摺動可能なプランジャ(10)と、
該プランジャ(10)と動作可能に連結している少なくとも1つのフィードバック機構(13)とを含み、
該フィードバック機構(13)は、
カラー(14)と、
ニードルシュラウド(7)と、
カラー(14)に対してニードルシュラウド(7)を遠位方向(D)に付勢する制御ばね(8)と
を含み、カラー(14)はケース(2)に軸方向において動作可能に結合しておりかつ近位位置(P1)にあるときケース(2)から軸方向に解除されることがプランジャ(10)によって防止され、該プランジャ(10)は、近位位置(P1)から遠位位置(P2)に向かって動いている間、カラー(14)の運動が止められて可聴および/または触覚フィードバックが生じるまで、カラー(14)が、制御ばね(8)により駆動され、ケース(2)から軸方向に解除することを可能にするように適用されていて、
ここで、ニードルシュラウド(7)が遠位位置(S1)にあるときプランジャ(10)の解放を防止するように適用されており、ニードルシュラウド(7)が近位位置(S2)にあるときプランジャ(10)を解放するように適用されているプランジャ解放機構(12、120)を薬物送達デバイス(1)は含み、そして、プランジャ解放機構(12、120)はカラー(14)上のカム表面(14.1)、および該カム表面(14.1)に係合するように適用されたプランジャ(10)上のボス(10.1)を含み、プランジャ(10)に加えられた遠位方向に向かう力により、ボス(10.1)がカム表面(14.1)に当接してカラー(14)を回転方向(R1、R2)に付勢するようになっている、前記薬物送達デバイス(1)。
【請求項2】
カラー(14)は、ケース(2)に当接して可聴および/または触覚フィードバックを
生じさせるように適用されている、請求項1に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項3】
カラー(14)は、ケース(2)と軸方向に相互作用するように適用された1つまたはそれ以上の弾性接合部(14.6)を含み、該接合部(14.6)は内向きに付勢され、プランジャ(10)は近位位置(P1)において、接合部(14.6)を内向きに支持してこれらの内向きの運動を防止するように適用されており、プランジャ(10)は遠位位置(P2)において、接合部(14.6)から軸方向に外されて、これらの内向きの運動を可能にし、この結果ケース(2)からの接合部(14.6)の解除が可能になる、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項4】
プランジャボス(10.1)はケース(2)の中で長手方向のスロット(2.3)内で案内される、請求項1に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項5】
スロット(2.3)はプランジャボス(10.1)よりも広く、ケース(2)に対するプランジャボス(10.1)およびプランジャ(10)の回転運動を可能にする、請求項4に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項6】
シュラウドボス(7.3)はニードルシュラウド(7)上に配置されており、薬物送達デバイス(1)の組み立て中にカラー(14)上の第1のカラーリブ(14.2)に接触するように適用されており、シュラウドボス(7.3)および/または第1のカラーリブ(14.2)は、ニードルシュラウド(7)の近位方向への動きによりカラー(14)が回転方向(R1、R2)に回転するように傾斜している、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項7】
カム表面(14.1)は先端部を画成している2つの斜面を含み、薬物送達デバイス(1)の組み立て中のニードルシュラウド(7)の近位方向への動きに起因する回転方向(R1、R2)へのカラー(14)の回転により、プランジャボス(10.1)が移動してカム表面(14.1)の先端部を通過する、請求項6に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項8】
カラー(14)上に、ニードルシュラウド(7)が遠位位置(S1)にあるときに、シュラウドボス(7.3)に側方で当接してカラー(14)のさらなる回転を防止するように、およびプランジャボス(10.1)へのカム表面(14.1)の結合を維持するように適用された、L字形状の第2のカラーリブ(14.3)が設けられており、ニードルシュラウド(7)が近位位置(S2)にあるときに、シュラウドボス(7.3)は第2のカラーリブ(14.3)を係合解除し、カラー(14)のさらなる回転を可能にして、プランジャボス(10.1)をカム表面(14.1)から解除させてプランジャ(10)を解放する、請求項6または7に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項9】
カラー(14)上の接触面(14.10)は、ケース(2)上のケースリブ(2.10)に係合するように適用されており、接触面(14.10)は、ケースリブ(2.10)に動作可能に当接して、ケース(2)に対するカラー(14)の回転を可能にするように適用された、2つの側面(14.14、14.15)を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項10】
接触面(14.10)は、ケースリブ(2.10)に当接してケース(2)に対するカラー(14)の遠位方向(D)への運動を防止するように適用された、遠位表面(14.16)を含む、請求項9に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項11】
傾斜表面(2.11)は、カラー(14)がフィードバック機構(13)の解放後に移動する際にカラー(14)に当接するように適用されており、傾斜表面(2.11)の当
接により、カラー(14)に対してトルクが与えられ、近位位置(S2)から遠位位置(S1)へのニードルシュラウド(7)の伸長後にシュラウドボス(7.3)の軸方向経路内で第2のカラーリブ(14.3)を位置合わせする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項12】
角度止め具(2.13)は、カラー(14)に当接し、シュラウドボス(7.3)の軸方向経路内での第2のカラーリブ(14.3)の位置合わせを越えるカラー(14)の回転を防止するように適用されている、請求項11に記載の薬物送達デバイス(1)。
【請求項13】
ケース(2)は、互いに結合されるように適用された前方ケース(2.1)および後方ケース(2.2)を備える、請求項1〜12のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、薬物送達デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
注射の投与は、使用者および医療専門家にとって、精神的にも身体的にも、いくつかのリスクおよび困難を呈する工程である。注射デバイスは通常、2つのカテゴリ−手動デバイスおよび自動注射器−に収まる。従来の手動デバイスでは、針を通して薬剤を押し進めるために、人力を必要とする。これは通常は、注射中プランジャを連続的に押圧することによって行われる。多数の欠点がこの手法に伴う。たとえば、プランジャが解放されるのが早すぎると、注射が止まることになり、意図する用量が送達されない場合がある。さらに、プランジャを押すために必要な力が大き過ぎる場合がある(たとえば、使用者が年配者または子供である場合)。また、注射デバイスの位置合わせ、注射の投与、および注射中に注射デバイスを動かないように維持することには器用さが必要とされ得るが、患者によってはこれを持ち合わせていない場合がある。
【0003】
自動注射デバイスは、自己注射を患者にとって容易にすることが意図されている。従来の自動注射器は、注射を実施するための力をばねによって提供でき、また、注射を起動するためにトリガボタンまたは他の機構を使用できる。自動注射器は、単回使用のデバイスまたは再利用可能なデバイスであってよい。
【0004】
さらに、患者の中で薬剤の有効性を完全に実現するために、全用量を投与するのが望ましい。
【0005】
したがって、改善された薬物送達デバイスが依然として求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、改善された薬物送達デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1に記載の薬物送達デバイスによって達成される。
【0008】
本開示によれば、薬物送達デバイスは、
−薬剤容器を保持するように適用されたケースと、
−ケース内に配設され、薬剤容器から薬剤を送達するために近位位置から遠位位置へと摺動可能なプランジャと、
−プランジャと動作可能に連結している少なくとも1つのフィードバック機構と、を含み、
フィードバック機構は、
カラーと、
ニードルシュラウドと、
カラーに対して遠位方向にニードルシュラウドを付勢する制御ばねと
を含み、カラーはケースに軸方向において動作可能に結合しておりかつ近位位置にあるときケースから軸方向にデカップリングされることがプランジャによって防止され、プランジャは、近位位置から遠位位置に向かって動いている間、カラーの運動が止められて可聴および/または触覚フィードバックが生じるまで、カラーが、制御ばねにより駆動されて、ケースから軸方向にデカップリングすることを可能にするように適用されている。
【0009】
例示的な実施形態では、カラーは、ケースに当接して可聴および/または触覚フィードバックを生じさせるように適用されている。
【0010】
薬物送達デバイスは、患者または使用者に薬剤の全用量が使われたことを示すために使用されるフィードバック機構によって改善される。
【0011】
例示的な実施形態では、カラーは、ケースと軸方向に相互作用するように適用された1つまたはそれ以上の弾性接合部、たとえばスナップ嵌め接合部を含み、接合部は内向きに付勢され、プランジャは近位位置では、接合部を内向きに支持してこれらの内向きの運動を防止するように適用されており、また、プランジャは遠位位置では、接合部から軸方向に外されて、これらの内向きの運動を可能にし、この結果ケースからの接合部のデカップリングが可能になる。
【0012】
例示的な実施形態では、制御ばねは圧縮ばねとして配置されている。
【0013】
例示的な実施形態では、薬物送達デバイスは、ニードルシュラウドが遠位位置にあるときプランジャの解放を防止するように適用されており、ニードルシュラウドが近位位置にあるときプランジャを解放するように適用されているプランジャ解放機構をさらに含む。
【0014】
例示的な実施形態では、プランジャ解放機構は、カラー上のカム表面、およびカム表面に係合するように適用されたプランジャ上のボスを含み、プランジャに加えられた遠位方向に向かう力により、ボスがカム表面に当接してカラーを回転方向に付勢するようになっている。
【0015】
例示的な実施形態では、プランジャボスは、ケースの中で長手方向のスロット内で案内される。
【0016】
例示的な実施形態では、スロットはプランジャボスよりも広く、ケースに対するプランジャボスおよびプランジャの回転運動を可能にする。
【0017】
例示的な実施形態では、シュラウドボスがニードルシュラウド上に配置されておりかつ薬物送達デバイスの組み立て中にカラー上の第1のカラーリブに接触するように適用されており、シュラウドボスおよび/または第1のカラーリブは、ニードルシュラウドの近位方向への動きによりカラーが回転方向に回転するように傾斜している。
【0018】
例示的な実施形態では、カム表面は先端部を画成している2つの斜面を含み、薬物送達デバイスの組み立て中のニードルシュラウドの近位方向への動きに起因する回転方向へのカラーの回転により、プランジャボスが移動してカム表面の先端部を通過する。
【0019】
例示的な実施形態では、カラー上に、ニードルシュラウドが遠位位置にあるときに、シュラウドボスに側方で当接してカラーのさらなる回転を防止するように、およびプランジャボスへのカム表面の結合を維持するように適用された、L字形状の第2のカラーリブが設けられ、シュラウドボスはニードルシュラウドが近位位置にあるときに第2のカラーリブを係合解除し、プランジャボスをカム表面からデカップリングさせてプランジャを解放するためのカラーのさらなる回転を可能にする。
【0020】
例示的な実施形態では、カラー上の接触面がケース上のケースリブに係合するように適用されており、接触面は、ケースリブに動作可能に当接してケースに対するカラーの回転を可能にするように適用された、2つの側面を含む。
【0021】
例示的な実施形態では、接触面は、ケースリブに当接してケースに対する遠位方向へのカラーの運動を防止するように適用された遠位表面を含む。
【0022】
例示的な実施形態では、たとえばケース上に配置された、傾斜表面は、フィードバック機構の解放後にカラーが移動する際にカラーに当接するように適用されており、傾斜表面の当接により、カラーに対してトルクが与えられ、近位位置から遠位位置へのニードルシュラウドの伸長後にシュラウドボスの軸方向経路内で第2のカラーリブを位置合わせする。
【0023】
例示的な実施形態では、たとえばケース内に配置された、角度止め具は、カラーに当接し、シュラウドボスの軸方向経路内での第2のカラーリブの位置合わせを越えるカラーの回転を防止するように適用されている。
【0024】
例示的な実施形態では、ケースは、互いに結合されるように適用された前方ケースおよび後方ケースを含む。
【0025】
従属請求項では例示的な実施形態が提供される。
【0026】
本開示のさらなる適用可能範囲は、以下に与えられる詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、当業者には詳細な説明から本開示の精神および範囲内のさまざまな変形および修正が明らかであるので、詳細な説明および具体的な例は、本開示の例示的な実施形態を示してはいるものの、例示として与えられているに過ぎないことが理解されるべきである。
【0027】
本開示は、例示としてのみ与えられており本開示を限定しない、以下に与える詳細な説明および添付の図面から、より十分に理解されることになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】自動注射器の例示的な実施形態の斜視図である。
図2】制御サブアセンブリの斜視図である。
図3】制御サブアセンブリの分解斜視図である。
図4】駆動サブアセンブリの斜視図である。
図5】駆動サブアセンブリの分解斜視図である。
図6】組み立て中の自動注射器の概略分解図である。
図7】プランジャ解放機構を示している、自動注射器の半透明の概略詳細側面図である。
図8A】組み立て前または使用前の状態の、プランジャ解放機構の概略図である。
図8B】組み立て中のプランジャ解放機構の概略図である。
図8C】組み立て中のプランジャ解放機構の概略図である。
図8D】使用前の状態のプランジャ解放機構の概略図である。
図8E】プランジャの解放中のプランジャ解放機構の概略図である。
図9A】第1のシュラウドロック機構の概略図である。
図9B】第1のシュラウドロック機構の概略図である。
図9C】第1のシュラウドロック機構の概略図である。
図9D】第1のシュラウドロック機構の概略図である。
図10A】使用前の状態の、フィードバック機構の概略図である。
図10B】フィードバックのトリガ中の状態の、フィードバック機構の概略図である。
図10C】フィードバックの生成後の状態の、フィードバック機構の概略図である。
図11A】第2のシュラウドロック機構の概略図である。
図11B】第2のシュラウドロック機構の概略図である。
図11C】第2のシュラウドロック機構の概略図である。
図11D】第2のシュラウドロック機構の概略図である。
図11E】第2のシュラウドロック機構の概略図である。
図12A】組み立て中のプランジャ解放機構の別の例示的な実施形態の概略図である。
図12B】組み立て中のプランジャ解放機構の概略図である。
図12C】使用前の状態のプランジャ解放機構の概略図である。
図12D】ニードルシュラウドの押し下げ中のプランジャ解放機構の概略図である。
図12E】プランジャの解放中のプランジャ解放機構の概略図である。
図12F】プランジャの注射ストローク中のプランジャ解放機構の概略図である。
図12G】注射ストロークの終わりにおけるプランジャ解放機構の概略図である。
図12H】ニードルシュラウドの伸長中の注射ストローク後のプランジャ解放機構の概略図である。
図12J】延ばされたニードルシュラウドをロックアウトしたプランジャ解放機構の概略図である。
図13】キャップを取り外した状態の自動注射器の長手方向斜視断面図である。
図14】ニードルシュラウドが近位方向に移動中である自動注射器の長手方向斜視断面図である。
図15】ニードルシュラウドが近位位置にある自動注射器の長手方向斜視断面図である。
図16】フィードバック機構の解放後に薬剤を送達中の自動注射器の長手方向斜視断面図である,
図17】可聴フィードバックの生成後の投与の終わりにおける自動注射器の長手方向斜視断面図である。
図18】キャップを含むシース取り外し機構を有する自動注射器の遠位端の長手方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
すべての図において、対応する部分には同じ参照記号が付されている。
【0030】
図1は、自動注射器1の例示的な実施形態の斜視図である。自動注射器1は、スリーブ形状の前方ケース2.1および後方ケース2.2を含む、ケース2を含む。キャップ11はケース2の遠位端に取り付けられている。ケース2内にスリーブ形状のニードルシュラウド7が嵌め込まれている。ケース2は、シリンジ3などの薬剤容器3、たとえばガラスシリンジを受容するように適用されている。薬剤容器3は、本明細書では「シリンジ3」と呼ばれる。シリンジ3は、薬剤Mを収容しておりかつシリンジ3の遠位端に針4が配置されている、充填済みシリンジであってよい。別の例示的な実施形態では、薬剤容器3は、薬剤Mを含み、取り外し可能な針に(たとえば、ねじ山、スナップ、摩擦、等によって)係合する、カートリッジであってよい。自動注射器1またはシリンジ3を組み立てるとき、針4には保護ニードルシース5が取り付けられている。シリンジ3を近位において封止するために、およびシリンジ3内に収容された液体薬剤Mを中空の針4を通して変位させるために、ストッパ6が配置されている。シリンジ3はケース2内に保持され、その中でその近位端において支持されている。
【0031】
保護ニードルシース5は、キャップ11が取り外されるときに保護ニードルシース5も針4から取り外されるように、キャップ11に結合することができる。キャップ11は、キャップ11の取り外しを容易にするためのグリップ機能11.5を含んでよい。
【0032】
スリーブ形状のニードルシュラウド7は、ケース2の遠位端内に嵌め込まれている。制御ばね8は、ニードルシュラウド7をケース2に対して遠位方向Dに付勢するように配置されている。
【0033】
ケース2の近位部分内に、圧縮ばねの形状の駆動ばね9が配置されている。プランジャ10が、駆動ばね9の力をストッパ6に送る役割を果たす。例示的な実施形態では、プランジャ10は中空であり、駆動ばね9はプランジャ10内に配置されて、後方ケース2.2に対してプランジャ10を遠位方向Dに付勢している。
【0034】
自動注射器1は2つのサブアセンブリ、制御サブアセンブリ1.1および駆動サブアセンブリ1.2へと分割されてよい。このことにより、サブアセンブリ1.1、1.2の製造およびシリンジ3との最終的な組み付けの時間および場所に関して、柔軟性を改善することが可能になる。
【0035】
図2は、制御サブアセンブリ1.1の斜視図である。図3は、制御サブアセンブリ1.1の分解斜視図である。制御サブアセンブリ1.1は、針4への到達および使用者が自動注射器1を使用するときに感じることになる力を制御する、あらゆる部材および機構を含む。制御サブアセンブリ1.1は、キャップ11と、ニードルシュラウド7と、前方ケース2.1と、を含む。例示的な実施形態では、制御機構1.1は、シリンジ3を保持するためのスリーブ形状のキャリア18を追加的に含んでよい。他の実施形態では、シリンジ3は、前方ケース2.1内に直接受容されてよい。
【0036】
図4は、駆動サブアセンブリ1.2の斜視図である。図5は、駆動サブアセンブリ1.2の分解斜視図である。駆動サブアセンブリ1.2は、薬剤Mを送達するのに必要な構成要素を含む。シリンジ3内の薬剤Mの粘度または体積が変わる場合、駆動サブアセンブリ1.2の部材だけを変えればよい。駆動サブアセンブリ1.2は、プランジャ10と、駆動ばね9と、後方ケース2.2と、制御ばね8と、スリーブ形状のカラー14と、を含んでおり、これらについては以下で詳細に説明する。
【0037】
図6は、組み立て中の自動注射器1の概略分解図である。自動注射器1を組み立てるために、取り付けられた針4および保護ニードルシース5を有するシリンジ3が、遠位方向Dに制御サブアセンブリ1.1内へと挿入される。その後、駆動サブアセンブリ1.2は、遠位方向Dに制御サブアセンブリ1.1内へと挿入される。
【0038】
図7は、プランジャ解放機構12を示している、自動注射器1の半透明の概略詳細側面図である。プランジャ解放機構12は、ニードルシュラウド7の押し下げ前にはプランジャ10の解放を防止するように、およびニードルシュラウド7が十分に押し下げられればプランジャ10を解放するように、配置されている。
【0039】
プランジャ解放機構12は、シリンジの中身の放出の自動化された起動を制御するように適用されている。プランジャ解放機構12は、針が完全に挿入される直前に起動される。プランジャ解放機構12は、プランジャ10と、後方ケース2.2と、カラー14と、ニードルシュラウド7と、を含む。ニードルシュラウド7は、カラー14に動作可能に結合されており、かつカラー14を近位方向Pに押すように適用されている。
【0040】
ニードルシュラウド7、後方ケース2.2、およびカラー14は、軸方向、すなわち遠位方向Dおよび近位方向Pにのみ移動するように構成されており、一方、プランジャ10は、回転方向で回転方向R1、R2にも、軸方向で遠位方向Dおよび近位方向Pにも移動できる。例示的な実施形態では、プランジャ解放機構12にはコンプライアント部材が存在しなくてよい、すなわち、部材は、すべて剛性で、部材内での相対変形なく全体として移動してもよい。プランジャ解放機構12は、図8Aから図8Eにおいて、5つの異なる状態で概略的に示されている。
【0041】
図8Aは、組み立て前の状態のプランジャ解放機構12を示しており、プランジャ10は近位位置P1にある。組み立て前の状態では、カラー14における屋根形状のカム表面14.1、たとえば押出成形された経路上に、プランジャ10上のボス10.1が置かれている。これにより、たとえば駆動ばね9によって遠位方向Dへの力がプランジャ10に加えられるとき、プランジャ10が遠位方向Dに移動することが防止される。カム表面14.1は、プランジャ10を第1の回転方向R1へと回転させ、かつカラー14を反対の第2の回転方向R2へと僅かに回転させる、小さなトルクを誘起するように傾斜している。第1の回転方向R1へのプランジャ10の回転は、プランジャボス10.1が後方ケース2.2の長手方向のスロット2.3内に係合されることによって停止される。スロット2.3はプランジャボス10.1よりも僅かに広く、プランジャボス10.1およびプランジャ10の限定的な回転運動を可能にする。
【0042】
図8Bは、制御サブアセンブリ1.1内への駆動サブアセンブリ1.2の挿入中の状態の、プランジャ解放機構12を示している。ニードルシュラウド7上のシュラウドボス7.3は、カラー14上の第1のカラーリブ14.2と接触する。シュラウドボス7.3および第1のカラーリブ14.2は、ニードルシュラウド7の近位方向への動きによりカラー14が第1の回転方向R1に僅かに回転するように設計されている。このことにより、プランジャボス10.1は、カム表面14.1の先端部上に不安定な姿勢でセットされる。示された実施形態では、第1のカラーリブ14.2はこれを実現するように傾斜している。他の実施形態では、第1のカラーリブ14.2の代わりにシュラウドボス7.3が傾斜していてよい。同様に、第1のカラーリブ14.2およびシュラウドボス7.3の両方が傾斜していてよい。
【0043】
図8Cは、制御サブアセンブリ1.1内に駆動サブアセンブリ1.2をさらに挿入している状態の、プランジャ解放機構12を示している。その不安定な姿勢に起因して、第2の回転方向R2へのプランジャ10の回転の動きは、ボス10.1が中で案内される後方ケース2.2のスロット2.3の幅に起因して、ほとんど間を置かずに開始され停止する。カラー14は、ニードルシュラウド7の作用下で第1の回転方向R1に回転し続ける。加えて、駆動ばね9によって駆動されるプランジャ10もこの時点で、プランジャボス10.1がカラー14上のカム表面14.1に沿って降下し始めるにつれて、カラー14の回転を促進する。
【0044】
図8Dは、使用前の状態のプランジャ解放機構12を示している。第1の回転方向R1へのカラー14の回転の動きは、シュラウドボス7.3が第1のカラーリブ14.2に沿ったその進行を終え、L字形状の第2のカラーリブ14.3の第1の長手方向表面14.11に側方で当接するときに停止される。プランジャボス10.1は依然としてカラー14のカム表面14.1上にあるので、プランジャ10の解放が防止される。シュラウドボス7.3は、L字形状の第2のカラーリブ14.3の横断方向表面14.12の近位側の背後で係合して、カラー14に対するニードルシュラウド7の続く遠位方向Dへの運動を防止する。
【0045】
プランジャ解放機構12は、その使用前の構成である。
【0046】
図8Eは、注射の始まりの状態のプランジャ解放機構12を示している。ニードルシュラウド7は、たとえば使用者がニードルシュラウド7を注射部位に押し付けることによって、近位方向Pに前方ケース2.1内へと移動され、これにより針4が注射部位内に挿入される。この動きの間、シュラウドボス7.3は、L字形状の第2のカラーリブ14.3の第1の長手方向表面14.11に沿って、近位方向Pに移動する。針の全挿入深さに達すると、シュラウドボス7.3は、第2のカラーリブ14.3の第1の長手方向表面14.11の近位端を越えて移動する。プランジャボス10.1は、駆動ばね9によって遠位方向Dに付勢されカム表面14.1に対して作用し、この結果、プランジャボス10.1がカム表面14.1の端部に達するまで、カラー14を第1の回転方向R1に回転させ、プランジャ10がトルクをそれ以上受けることなく遠位方向Dに移動することを可能にする。駆動ばね9の作用下で、プランジャ10はストッパ6を押し、シリンジ3の内容物の放出を開始する。
【0047】
図9Aは、第1のシュラウドロック機構15の概略図である。第1のシュラウドロック機構15は、キャップ11が所定位置にあるときニードルシュラウド7の押し下げを防止するように配置されており、この結果、落下時に自動注射器1が意図せず作動することが回避される。第1のシュラウドロック機構15は、キャップ11上の1つ、2つ、またはそれ以上のコンプライアントビーム11.3と、コンプライアントビーム11.3が中に係合できる、ニードルシュラウド7の対応する数のアパーチャ7.6と、を含む。コンプライアントビーム11.3および/またはアパーチャ7.6は、ニードルシュラウド7に対するキャップ11の遠位方向Dへの運動時に、コンプライアントビーム11.3を半径方向外向きに偏向させてアパーチャ7.6から外に出すように、傾斜がついている。シュラウド7に係合されたキャップ11のケース2に対する軸方向位置に応じて、ケース2上の半径方向止め具2.15は、コンプライアントビーム11.3の半径方向外向きの偏向を防止するかまたは可能にし、この結果、ニードルシュラウド7がキャップ11から係合解除するのを防止し、かつケース2に対するニードルシュラウド7の近位方向Pへの押し下げを制約する。ケース2に対するキャップ11の近位方向Pへの軸方向運動は、ケース2に当接するキャップ11上のリブによって限定され得る。
【0048】
図9Aは、制御サブアセンブリ1.1の組み立て後の第1のシュラウドロック機構15の概略図である。キャップ11上のコンプライアントビーム11.3は、ニードルシュラウド7内のアパーチャ7.6内に係合されている。半径方向止め具2.15は、コンプライアントビーム11.3から軸方向に離間されている。図9Bは、保護ニードルシース5をキャップ11に係合するための制御サブアセンブリ1.1内へのシリンジ3の挿入中の、第1のシュラウドロック機構15の概略図である。アパーチャ7.6は、キャップ11に対するニードルシュラウド7の遠位方向Dへの運動を可能にする、ある程度の隙間を提供する。前方ケース2.1もキャップ11に対して遠位方向Dに移動されて、半径方向止め具2.15をコンプライアントビーム11.3と軸方向に位置合わせし、キャップ11がニードルシュラウド7から係合解除するのを防止する。図9Cは第1のシュラウドロック機構15の概略図であり、シリンジ3の挿入後ニードルシュラウド7は、たとえば組み立て冶具(図示せず)によって、前方ケース2.1に対してさらに近位方向Pへと移動される。この状態で、駆動サブアセンブリ1.2を制御サブアセンブリ1.1に組み付けることができる。コンプライアントビーム11.3はアパーチャ7.6内に係合されたままであり、半径方向止め具2.15により、これらが係合解除することが防止される。
【0049】
制御サブアセンブリ1.1への駆動サブアセンブリ1.2の組み付け後、組み立て冶具は取り外されて、前方ケース2.1に対してニードルシュラウド7が遠位方向Dに戻って、図9Bに示した状態に再び到達することが可能になる。自動注射器1がこの状態で意図せず落下した場合、ニードルシュラウド7は、ニードルシュラウド7のアパーチャ7.6の遠位端が図9Cに示すようにコンプライアントビーム11.3に接触するまで、慣性力下でケース2に対して近位方向Pに移動できる。半径方向止め具2.15によって、およびキャップ11上のリブ11.4が前方ケース2.1に軸方向に当接することに起因して、コンプライアントビーム11.3がアパーチャ7.6から係合解除することが防止されるので、ニードルシュラウド7はそれ以上近位方向Pへは移動できず、これにより、自動注射器1を意図せずトリガすることが回避される。
【0050】
図9Dは、コンプライアントビーム11.3が傾斜の作用により偏向してアパーチャ7.6から外に出ている状態の、キャップ11の取り外し中の第1のシュラウドロック機構15の概略図である。
【0051】
フィードバック機構13は、薬剤送達の完了を示す可聴および/または触覚フィードバックの提供を可能にするように配置されている。フィードバック機構13は、図10Aから図10Cにおいて、6つの異なる状態で概略的に示されている。
【0052】
フィードバック機構13は、プランジャ10と、後方ケース2.2と、ニードルシュラウド7と、カラー14と、制御ばね8と、を含む。
【0053】
図10Aは、使用前の状態のフィードバック機構13を示している。制御ばね8は、カラー14上の2つの第3のカラーリブ14.4とニードルシュラウド7との間で圧縮されている。プランジャ10はカラー14内で、カラー14上の接合部14.6の内側突起14.5間に配置されている。この結果、接合部14.6は内向きに偏向できない。接合部14.6は、後方ケース2.2の遠位アーム2.9に近位側で当接する。このことにより、カラー14の近位方向Pへの軸方向運動が防止される。接合部14.6はスナップ嵌め接合部であってよい。
【0054】
図10Bは、薬剤投薬の終わり近くでフィードバックがトリガされる状態のフィードバック機構13を示している。ストッパ6がシリンジ3内でほぼ底に達していてその移動の終わりに近づきつつあるプランジャ10は、摺動して内側突起14.5を越えて、スナップ嵌め接合部14.6の内向きの偏向を可能にする。ここまで半径方向外向きに偏向されていたスナップ嵌め接合部14.6は、内向きにその弛緩した形状へと戻り始め、後方ケース2.2上の遠位アーム2.9との接触を次第に失い、この結果、カラー14が制御ばね8の力の下で近位方向Pに移動することが可能になる。一方で、ニードルシュラウド7は、先行するステップにおいて針4が挿入されたときに近位方向Pへと押されており、この結果、制御ばね8をなお一層圧縮している。
【0055】
図10Cは、フィードバックを生成した後の投与の終わりにおける状態のフィードバック機構13を示している。プランジャ10は、シリンジ3のバレル内でのその行程を終えている。このようになる直前に、カラー14上に存在する2つのスナップ嵌め接合部14.6は、内向きに完全に引き込まれた状態になっており、後方ケース2.2上の遠位アーム2.9からデカップリングしている。カラー14はこの結果、制御ばね8の作用下で近位方向Pに推進された。カラー14は後方ケース2.2に当たり、これにより、投与が完了していることを示す可聴および/または触覚フィードバック、たとえばクリック音が生じた。
【0056】
例示的な実施形態では、フィードバックは、投与が実際に終わる前にトリガされる。
【0057】
図11Aは、第2のシュラウドロック機構16の概略図である。第2のシュラウドロック機構16は、自動注射器1を使用後に注射部位から取り外し、この結果、ケース2に対してニードルシュラウド7が遠位位置S1、たとえば第2の伸長位置へと遠位方向Dに並進運動した後で、ニードルシュラウド7をロックするように配置されている。第2のシュラウドロック機構16は、ニードルシュラウド7上の少なくとも1つの半径方向外向きに付勢されたコンプライアントシュラウドビーム7.4を含み、これは前方ケース2.1上の止め具2.12に近位側で当接するように適用されており、前方ケース2.1に対するニードルシュラウド7の近位方向Pへのさらなる運動を防止する。キャップ11は、ニードルシュラウド7上に嵌め込まれたときコンプライアントシュラウドビーム7.4を半径方向内向きに偏向させるように適用されており、ニードルシュラウド7が前方ケース2.1に対してさらに近位方向Pへと移動できるように、シュラウドビーム7.4が止め具2.12を近位方向Pに通過することを可能にする。
【0058】
図11Bは、制御サブアセンブリ1.1の組み立て後の第2のシュラウドロック機構16の概略図である。ニードルシュラウド7はキャップ11内に部分的に挿入されている。シュラウドビーム7.4は弛緩されており、前方ケース2.1の止め具2.12に近位側で当接している。これにより、ニードルシュラウド7が前方ケース2.1に対してさらに近位方向Pへと移動することが防止され、また制御サブアセンブリ1.1が1つにロックされた状態に維持される。
【0059】
図11Cは、制御サブアセンブリ1.1内へのシリンジ3の挿入中の第2のシュラウドロック機構16の概略図であり、ニードルシュラウド7は遠位方向Dにキャップ11内へとさらに移動されており、この結果キャップ11は、シュラウドビーム7.4を内向きに偏向させ、止め具2.12とのその当接を解消させる。ニードルシュラウド7はこの結果、前方ケース2.1に対して近位方向Pに自由に移動できる。
【0060】
図11Dは、制御サブアセンブリ1.1への駆動サブアセンブリ1.2の最終組み付け後の第2のシュラウドロック機構16の概略図である。ニードルシュラウド7は、たとえば組み立て冶具(図示せず)によって、前方ケース2.1に対して近位方向Pへとさらに移動されている。この状態で、駆動サブアセンブリ1.2を制御サブアセンブリ1.1に組み付けることができる。その後、組み立て冶具は取り外され、ニードルシュラウド7は、シュラウドばね8の負荷の下で前方ケース2.1に対して遠位方向Dに戻ることが可能になる。ただしこの運動は、プランジャ解放機構12によって限定される。ニードルシュラウド7はしたがって図11Dの位置にあり、このときシュラウドビーム7.4は、シュラウドビーム7.4の偏向を防止する前方ケース2.1の止め具2.12によって、半径方向外向きに支持されている。
【0061】
図11Eは、ニードルシュラウド7を遠位位置S1にロックした、第2のシュラウドロック機構16の概略図である。ニードルシュラウド7が引き込まれた位置RPから遠位位置S1に向かって移動している際、シュラウドビーム7.4は止め具2.12を遠位方向Dに通過し、半径方向外向きに弛緩するが、これはキャップ11がもはや存在しないために可能となる。これ以降、シュラウドビーム7.4は、止め具2.12に当たることになるので、近位方向Pに戻ることができない。ニードルシュラウド7はこの結果、遠位位置S1にロックされる。ケース2上のケースボスがニードルシュラウド7のシュラウドボス(図示せず)と係合することによって、ニードルシュラウド7のさらなる伸長が防止され得る。
【0062】
図12Aは、第2のシュラウドロック機構の機能が統合されている、プランジャ解放機構120の別の例示的な実施形態の概略図である。プランジャ解放機構120は、プランジャ10と、後方ケース2.2と、ニードルシュラウド7と、カラー14と、を含む。
【0063】
ニードルシュラウド7およびプランジャ10は、軸方向、すなわち遠位方向Dおよび近位方向Pにのみ移動するように構成されており、一方、カラー14は、回転方向で回転方向R1、R2に、および軸方向で近位方向Pにのみ、移動できる。後方ケース2.2は固定されている。例示的な実施形態では、プランジャ解放機構120にはコンプライアント部材が存在しなくてよい、すなわち、部材は、すべて剛性で、部材内での相対変形なく全体として移動してもよい。
【0064】
図12Aは、組み立て前の状態のプランジャ解放機構120を示しており、プランジャ10は近位位置P1にある。組み立て前の状態では、カラー14におけるカム表面14.1、たとえば押出成形された経路上に、プランジャ10上のボス10.1が置かれている。これにより、たとえば駆動ばね9によって遠位方向Dへの力がプランジャ10に加えられるとき、プランジャ10が遠位方向Dに移動することが防止される。カム表面14.1は、間に先端部を画成している2つの傾斜している斜面を含む。ボス10.1が上に置かれるカム表面14.1の斜面の角度により、プランジャ10を第2の回転方向R2へと回転させ、かつカラー14を反対の第1の回転方向R1へと僅かに回転させる、小さなトルクが誘起される。第1の回転方向R1へのプランジャ10の回転は、プランジャボス10.1が後方ケース2.2の長手方向のスロット2.3内に係合されることによって停止される。第1の回転方向R1へのカラー14の回転は、カラー14上の接触面14.10が後方ケース2.2上のケースリブ2.10に係合することによって停止される。接触面14.10は、ケースリブ2.10に動作可能に当接して後方ケース2.2に対するカラー14の限定的な回転を可能にするように適用された、2つの側面14.14、14.15を含む。さらに、接触面14.10は、ケースリブ2.10に当接してカラー14の遠位方向Dへの運動を防止するように適用された、遠位表面14.16を含む。プランジャ10を遠位方向Dに付勢する駆動ばね9からの軸方向の負荷は、プランジャボス10.1およびカム表面14.1を通してプランジャ10からカラー14に、ならびにさらに、接触面14.10およびケースリブ2.10を通してカラー14から後方ケース2.2に結合される。制御ばね8は、カラー14とニードルシュラウド7との間に配置されており、この結果、カラー14が近位方向Pに付勢される。駆動ばね9の負荷は制御ばね8の負荷よりもはるかに大きいので、カラー14は後方ケース2.2に対して図12Aの位置に保持される。
【0065】
図12Bは、制御サブアセンブリ1.1内への駆動サブアセンブリ1.2の挿入中の状態の、プランジャ解放機構12を示している。シュラウド7上のシュラウドボス7.3は、カラー14上の第1のカラーリブ14.2と接触する。シュラウドボス7.3および第1のカラーリブ14.2は、シュラウド7の近位方向への動きによりカラー14が第2の回転方向R2に僅かに回転するように設計されている。このことにより、プランジャボス10.1は、カム表面14.1の先端部上に不安定な姿勢でセットされる。示された実施形態では、第1のカラーリブ14.2はこれを実現するように傾斜している。他の実施形態では、第1のカラーリブ14.2の代わりにシュラウドボス7.3が傾斜していてよい。同様に、第1のカラーリブ14.2およびシュラウドボス7.3の両方が傾斜していてよい。カラー14の回転が続くにつれ、プランジャボス10.1との接触面となるカム表面14.1は、カラー14に適用されるトルクの方向を反転させる反対の角度へと移行する。カラー14の回転はしたがって、ニードルシュラウド7によって力を適用されることなく続く。
【0066】
図12Cは、使用前の状態のプランジャ解放機構12を示している。カラー14は、ニードルシュラウド7の作用下で第2の回転方向R2に回転し続ける。加えて、駆動ばね9によって駆動されるプランジャ10もこの時点で、プランジャボス10.1がカラー14上のカム表面14.1に沿って降下し始めるにつれて、カラー14の回転を促進する。第2の回転方向R2へのカラー14の回転の動きは、シュラウドボス7.3が、L字形状の第2のカラーリブ14.3の第1の長手方向表面14.11に側方で当接するときに停止される。プランジャボス10.1は依然としてカラー14のカム表面14.1上にあるので、プランジャ10の解放が防止される。シュラウドボス7.3は、L字形状の第2のカラーリブ14.3の横断方向表面14.12の近位側の背後で係合して、カラー14に対するニードルシュラウド7の続く遠位方向Dへの運動を防止する。
【0067】
プランジャ解放機構120は、その使用前の構成である。
【0068】
図12Dは、ニードルシュラウド7の押し下げ中の状態のプランジャ解放機構120を示している。ニードルシュラウド7は、たとえば使用者がニードルシュラウド7を注射部位に押し付けることによって、近位方向Pに前方ケース2.1内へと移動され、これにより針4が注射部位内に挿入される。この動きの間、シュラウドボス7.3は、L字形状の第2のカラーリブ14.3の第1の長手方向表面14.11に沿って、近位方向Pに移動する。針の全挿入深さに達すると、シュラウドボス7.3は、第2のカラーリブ14.3の第1の長手方向表面14.11の近位端を越えて移動する。駆動ばね9によって遠位方向Dに付勢されカム表面14.1に対して作用するプランジャボス10.1は、この結果、カラー14を第2の回転方向R2にさらに回転させる。
【0069】
図12Eは、プランジャ10の解放中の状態のプランジャ解放機構120を示している。カラー14は、プランジャボス10.1がカム表面14.1の端部に達するまで回転を続けており、プランジャ10がトルクをそれ以上受けることなく遠位方向Dに移動する。カラー14は、カム表面14.1に対して作用するプランジャボス10.1を通して駆動ばね9によって遠位方向Dにもはや付勢されていないので、カラー14はこの時点で、制御ばね8の力の作用下でニードルシュラウド7に対して近位方向Pに自由に移動できる。この移動は、図10Aに示すように、フィードバック機構13によって限定される。ニードルシュラウド7が回転的に固定されたままである間にカラー14が回転されたので、これまで第2の回転方向R2を向いているL字形状の第2のカラーリブ14.3の第1の長手方向表面14.11と位置合わせされていたシュラウドボス7.3はこの時点で、第1の回転方向R1を向いているL字形状の第2のカラーリブ14.3の反対側の第2の長手方向表面14.13と位置合わせされている。
【0070】
図12Fは、薬物送達中の状態のプランジャ解放機構120を示している。駆動ばね9の作用下で、プランジャ10はストッパ6を押し、シリンジ3の内容物の放出を開始する。
【0071】
図12Gは、注射ストロークの終わり近くにおけるプランジャ解放機構120の概略図である。フィードバック機構13は、図10Bに示すように、カラー14を解放し、これが制御ばね8の作用下で近位方向Pに移動することを可能にする。カラー14、たとえばカム表面14.1は、後方ケース2.2上の傾斜表面2.11に当接している。この接触により、投与がほぼ完了していることを示す、可聴およびまたは触覚フィードバックが生じる。後方ケース2.2上の傾斜表面2.11は、カラー14に対して第1の回転方向R1にトルクを付与する。ニードルシュラウド7がその軸方向位置に留まっている間にカラー14が近位方向Pに移動されたので、シュラウドボス7.3は、第1の回転方向R1を向いているL字形状の第2のカラーリブ14.3の第2の長手方向表面14.13に当接している。カラー14に対するトルクはこの結果、シュラウドボス7.3と第2のカラーリブ14.3との間の接触によって分解される。
【0072】
図12Hは、ニードルシュラウド7の伸長中の注射ストローク後のプランジャ解放機構120の概略図である。自動注射器1が注射部位から取り外されるとき、ニードルシュラウド7は、制御ばね8の作用下で遠位方向Dに延びている。この動きは、シュラウドボス7.3がもはや第2のカラーリブ14.3を支持しなくなるまで続く。この時点で、ニードルシュラウド7は完全に延びている。
【0073】
図12Jは、延びたニードルシュラウド7をロックアウトした使用後の状態のプランジャ解放機構120の概略図である。シュラウドボス7.3は第2のカラーリブ14.3をもはや支持していないので、傾斜表面2.11上のカム表面14.1の係合を通してカラー14に適用されるトルクにより、カラー14が第1の回転方向R1に回転する。この回転は、カム表面14.1が、さらなる回転を防止する後方ケース2.2の角度止め具2.13と接触するまで続く。この位置では、第2のカラーリブ14.3は、シュラウドボス7.3の軸方向経路内で位置合わせされている。したがって、ニードルシュラウド7を近位方向Pに再び押そうとする場合、この移動はカラー14によって阻止される。これにより、ニードルシュラウド7のさらなる押し下げおよび針4の再露出を防止する、シュラウドロックがもたらされる。
【0074】
自動注射器1の操作の流れは以下の通りである。
【0075】
自動注射器1は最初は、図1に示すような状態である。プランジャ解放機構12は、図8Dに示すような使用前の状態である。フィードバック機構13は、図8Bに示すような使用前の状態である。第1のシュラウドロック機構15は、図10Aに示すような使用前の状態である。代替のプランジャ解放機構120を適用する場合、これは図12Cの使用前の状態である。
【0076】
使用者はキャップ11を取り外し、これを遠位方向Dに引いてケース2から離す。保護ニードルシース5は、キャップ11が取り外されるときに保護ニードルシース5も針4から取り外されるように、キャップ11に結合することができる。図13は、キャップ11を取り外した状態の自動注射器1の長手方向斜視断面図である。ニードルシュラウド7は遠位位置S1にある。
【0077】
図14は、ニードルシュラウド7が、たとえばこれを注射部位に押し当ててケース2を前方に摺動させることによって、近位方向Pに移動された状態の、自動注射器1の長手方向斜視断面図である。制御ばね8はカラー14とニードルシュラウド7との間に保持されており、ケース2がニードルシュラウド7に対して前方に移動されるとき、さらに圧縮される。ニードルシュラウド7を除いて、自動注射器1のすべての構成要素は、ケース2とともに移動する。ニードルシュラウド7は、自動注射器1の残りの部材とは対照的に近位方向Pに移動し、この結果、プランジャ解放機構12または120を始動させる。プランジャ解放機構12はこの結果、図8Eに示すような状態に到達する。代替のプランジャ解放機構120が適用される場合、これは図12Dに示すような状態に到達する。
【0078】
図15は、ニードルシュラウド7が近位方向Pに近位位置S2へと完全に移動されて、針4が注射部位において挿入深さに達している状態の、自動注射器1の長手方向斜視断面図である。ニードルシュラウド7が完全に押し下げられると、プランジャ10が図8Eに示すように解放され、薬剤送達が開始される。駆動ばね9が伸長を開始し、プランジャ10を遠位方向Dに押して薬剤Mを注射させる。代替のプランジャ解放機構120が適用される場合、プランジャ10は図12Eに示すように解放される。
【0079】
図16は、フィードバック機構13の解放後に薬剤Mを送達中の自動注射器1の長手方向斜視断面図である。プランジャ10がシリンジ3のバレルを移動していくのに伴って薬剤Mの送達が進行する際、フィードバック機構13が起動される。フィードバック機構13は、図10Bに示すような状態に到達する。
【0080】
図17は、可聴フィードバックの生成前の投与の終わりにおける自動注射器1の長手方向斜視断面図である。フィードバック機構13は、図10Cに示すような状態に到達する。プランジャ10はシリンジ3のバレル内でストッパ6を完全に前進させ、遠位位置P2に到達する。注射が完了し、フィードバック機構13が動作する際にカラー14が後方ケース2.2に当たることを通して、可聴および/または触覚フィードバックが提供される。
【0081】
自動注射器1が移動して注射部位から離れる場合、ニードルシュラウド7は、制御ばね8によって駆動されて遠位方向Dに前進する。ニードルシュラウド7はその使用前の位置に戻る。第2のシュラウドロック16は図11Eに示すような状態に到達して、ニードルシュラウド7をその軸方向位置にロックする。固有のシュラウドロックを有する代替のプランジャ解放機構120が適用される場合、これは図12Hの状態を通って移行し、図12Jに示すような状態に到達する。
【0082】
図18は、キャップ11を含むニードルシース取り外し機構17を有する自動注射器1の遠位端の長手方向断面図である。ニードルシース取り外し機構17は、上記した自動注射器1において適用されてよい。
【0083】
例示的な実施形態では、キャップ11は、ケース2の遠位端に取り外し可能に配設されていてよい。キャップ11は、ケース2に係合するように配置された要素(たとえば、バーブ、フック、狭窄セクション、等)、ケース2内に嵌め込まれたニードルシュラウド7、および/または針4上の保護ニードルシース5を含んでよい。保護ニードルシース5は、ゴム製および/またはプラスチック製であってよい。例示的な実施形態では、保護ニードルシース5は、針4に係合するように適用されたゴム製内面とゴム製内面の外側部分を少なくとも部分的に覆うプラスチック製外面とから形成された、剛性ニードルシールド(RNS)である。キャップ11は、キャップ11を(たとえば、キャップ11をケース2に対してねじり、かつ/または引っ張ることによって)取り外しやすくするためのグリップ機能11.5を含んでよい。例示的な実施形態では、グリップ機能11.5は、1つまたはそれ以上のリブ、リッジ、突起部、バンプ、切欠き、テクスチャ加工面、またはオーバーモールドされたコーティング(ゴム、弾性体、等)等を含んでよい。
【0084】
例示的な実施形態では、自動注射器1からキャップ11を取り外すときに保護ニードルシース5を薬剤容器3から取り外すための、シース取り外し機構17が配置されている。シース取り外し機構17は、保護ニードルシース5に係合するように適用された、キャップ11上の1つまたはそれ以上のコンプライアントシース取り外しビーム11.7を含んでよい。典型的には、シース取り外しビーム11.7は、キャップ11の遠位面11.10から近位方向Pに延びているか、または、キャップ11の遠位面11.10から近位方向Pに延びている内部スリーブの一部である。コンプライアントシース取り外しビーム11.7は、内向きのレッジ11.8をそれぞれ含む。コンプライアントシース取り外しビーム11.7が弛緩しているとき、レッジ11.8は、これらの間に保護ニードルシース5の直径よりも小さい隙間を提供する。例示的な実施形態では、キャップ11の遠位面11.10の開口部11.11を通して、軸方向に組み立て器具を挿入できる。
【0085】
別の例示的な実施形態では、キャップ11の側方領域内に、組み立て器具の挿入を可能にするための1つまたはそれ以上の側方アパーチャ11.9が配置されている。対応する側方アパーチャが、キャップ11がケース2に取り付けられるときに側方アパーチャ11.9の組がそれぞれ位置合わせされるように、ケース2およびニードルシュラウド7に同様に配置されていてよい。
【0086】
キャップ11は、ニードルシュラウド7に対して近位方向Pに移動されることによって、自動注射器1に組み付けられる。キャップ11が自動注射器1に取り付けられているとき、シース取り外しビーム11.7は、これを許容するのに十分な程度に広いニードルシュラウド7内に挿入される。
【0087】
キャップ11が自動注射器1に取り付けられるとき、ケース2に対するキャップ11の近位方向Pへの軸方向運動は、ケース2に当接するキャップ11上のリブ11.4によって限定される。
【0088】
くさび形の組み立て器具を、シース取り外しビーム11.7のうちの2つの間に係合させてこれらを拡開させ、これによりこれらを半径方向外向きの方向に偏向させることができる。これにより、内向きのレッジ11.8によって画成される隙間が、保護ニードルシース5が通過できる程度まで広げられる。例示的な実施形態では、くさび形の組み立て器具は、第2のシュラウドロック機構16の係合とプランジャ解放機構12または120の準備(priming)とを可能にするのと同じ動きでシュラウド7を軸方向に変位させるために、配置することもできる。
【0089】
自動注射器1および/または薬剤容器3を組み立てるとき、針4に保護ニードルシース5を取り外し可能に結合してよい。保護ニードルシース5はゴム製のニードルシース、または(ゴムおよび全体的もしくは部分的なプラスチック製シェルから構成される)剛性のニードルシースであってよい。他の例示的な実施形態では、薬剤容器3は、薬剤Mを含み、取り外し可能な針に(たとえば、ねじ山、スナップ、摩擦、等によって)係合する、カートリッジであってよい。
【0090】
薬剤容器3および保護ニードルシース5はケース2内に挿入され、遠位方向Dに押される。組み立て器具のおかげで、コンプライアントシース取り外しビーム11.7上のレッジ11.8の間の隙間は、保護ニードルシース5の挿入を許容する程度に十分に広い。例示的な実施形態では、ケース2は、たとえば薬剤容器3の首部分に係合することによって、ケース2内での薬剤容器3の遠位方向Dへの軸方向運動を限定する、軸方向止め具を含んでよい。同様に、首部分はキャリア18によって保持されてよく、またキャリア18は、ケース2内で異なる方法で保持されてよい。
【0091】
次いで組み立て器具をキャップ11の遠位面11.10の開口部11.11から取り外すことができ、この結果、シース取り外しビーム11.7はもはや拡開していない状態になる。これらのビームの剛直性により、シース取り外しビーム11.7は半径方向内向きに弛緩し、内向きのレッジ11.8はこれらの間の隙間を小さくして保護ニードルシース5の近位端に係合し、この結果、キャップ11を保護ニードルシース5に軸方向に結合する。例示的な実施形態では、シース取り外しビーム11.7は、器具が取り外されたときこれらが保護ニードルシース5と常に密に接触していることを保証する、内向きに偏向した位置に成形されている。くさび形の組み立て器具は、シース取り外しビーム11.7が変形して塑性降伏するまでには至らないように設計することができる。保護ニードルシース5とシース取り外しビーム11.7との間の接点は、保護ニードルシース5が取り外される際にシース取り外しビーム11.7を開くように作用するモーメントを最小にするように配置されている。この結果、保護ニードルシース5のグリップは、シース取り外しビーム11.7によって及ぼされる半径方向の圧縮力には依拠せず、ケース2に対する遠位方向Dにおいてキャップ11に及ぼされる力に依拠する。例示的な実施形態では、くさび形の組み立て器具を、キャップの取り外し中にキャップ11に及ぼされる力の方向に対して垂直な方向に、シース取り外しビーム11.7を拡開するように配置できる。
【0092】
キャップ11がケース2に対して遠位方向Dに引かれるとき、保護ニードルシース5の近位端に係合されたレッジ11.8は、保護ニードルシース5を薬剤容器3から引き離す。キャップの取り外し後、保護ニードルシース5は、保護ニードルシース5がキャップ11から脱落するのを防止するために、レッジ11.8および2つの小さいリブ11.12によって保持することができる。
【0093】
例示的な実施形態では、ニードルシュラウド7を押圧するのに必要な力は、約2〜12Nであり得る。同様に、この機構はより大きい力で機能し得る。
【0094】
ケース2は、使用者が、薬剤Mを明確に調べることと、薬剤送達の進行の推測を可能にするために前進中のプランジャ10を観察することと、使用者が使用済みの自動注射器1と未使用の自動注射器1とを見分けるのを助けることと、を可能にする、視認窓(図示せず)を含んでよい。
【0095】
例示的な実施形態では、制御サブアセンブリ1.1が組み立てられるときに、キャップ11と前方ケース2.1との間に不正防止ストリップ(tamper strip)を配置してよい。
【0096】
自動注射器1は、機構への有害な効果を何ら伴わずに、注射部位に複数回押し当てることができる。ニードルシュラウド7を押し下げるための力は、6N未満であってよい。
【0097】
自動注射器1で使用されるシリンジ3は、たとえば1mlシリンジ3であってよい。
【0098】
薬剤Mの送達が完了する前に針4を引き込むことができるので、自動注射器1は常に針に関して安全である。
【0099】
プランジャ10のみが駆動ばね9の比較的高い力を受けるので、自動注射器1のその他の構成要素は影響を受けず、このため信頼性高まりまた保存可能期間が延びる。
【0100】
異なる粘度の薬物を送達するために、挿入機能または引き込み機能に影響を与えることなく駆動ばね9を交換できるので、自動注射器1はプラットフォームとして使用するのに適している。このことは高粘度の流体に関して特に有利である。
【0101】
プランジャ解放機構12、120を、薬物送達デバイス1、たとえば自動注射器1において、記載したフィードバック機構13、第1のシュラウドロック機構15および第2のシュラウドロック機構16、ならびにニードルシース取り外し機構17を用いずに、またはこれらの機構のうちの1つもしくは複数の別の種類を用いて、適用することができる。
【0102】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物を説明するために本明細書において使用される。以下に説明されるように、薬物または薬剤は、1つまたはそれ以上の疾患を処置するための、さまざまなタイプの製剤の少なくとも1つの低分子もしくは高分子、またはその組み合わせを含むことができる。例示的な薬学的に活性な化合物は、低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえばホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖類;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(裸およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドを含むことができる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに組み込むことができる。これらの薬物の1つまたはそれ以上の混合物もまた、企図される。
【0103】
用語「薬物送達デバイス」は、薬物をヒトまたは動物の体内に投薬するように構成されたあらゆるタイプのデバイスまたはシステムを包含するものである。限定されることなく、薬物送達デバイスは、注射デバイス(たとえばシリンジ、ペン型注射器、自動注射器、大容量デバイス、ポンプ、かん流システム、または眼内、皮下、筋肉内、もしくは血管内送達にあわせて構成された他のデバイス)、皮膚パッチ(たとえば、浸透圧性、化学的、マイクロニードル)、吸入器(たとえば鼻用または肺用)、埋め込み(たとえば、コーティングされたステント、カプセル)、または胃腸管用の供給システムとすることができる。ここに説明される薬物は、針、たとえば小ゲージ針を含む注射デバイスで特に有用であることができる。
【0104】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージまたは「薬物容器」内に含むことができる。薬物容器は、たとえば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、または1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物の保存(たとえば短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の容器とすることができる。たとえば、一部の場合、チャンバは、少なくとも1日(たとえば1日から少なくとも30日まで)の間薬物を保存するように設計することができる。一部の場合、チャンバは、約1ヶ月から約2年の間薬物を保存するように設計することができる。保存は、室温(たとえば約20℃)または冷蔵温度(たとえば約−4℃から約4℃まで)で行うことができる。一部の場合、薬物容器は、薬物製剤の2つまたはそれ以上の成分(たとえば薬物および希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された二重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことができる。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒトまたは動物の体内に投薬する前、および/または投薬中に薬物または薬剤の2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成することができる。たとえば、2つのチャンバは、これらが(たとえば2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、所望の場合、投薬の前にユーザによって2つの成分を混合することを可能にするように構成することができる。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分がヒトまたは動物の体内に投薬されているときに混合することを可能にするように構成することができる。
【0105】
本明細書において説明される薬物送達デバイスおよび薬物は、数多くの異なるタイプの障害の処置および/または予防に使用することができる。例示的な障害は、たとえば、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症を含む。さらなる例示的な障害は、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチである。
【0106】
糖尿病または糖尿病に伴う合併症の処置および/または予防のための例示的な薬物は、インスリン、たとえばヒトインスリン、またはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)、GLP−1類似体もしくはGLP−1受容体アゴニスト、またはその類似体もしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ−4(DPP4)阻害剤、または薬学的に許容される塩もしくはその溶媒和物、またはそれらの任意の混合物を含む。本明細書において使用される用語「誘導体」は、元の物質と構造的に十分同様のものであり、それによって同様の機能または活性(たとえば治療効果性)を有することができる任意の物質を指す。
【0107】
例示的なインスリン類似体は、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0108】
例示的なインスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。例示的なGLP−1、GLP−1類似体およびGLP−1受容体アゴニストは、たとえば:リキシセナチド(Lixisenatide)/AVE0010/ZP10/リキスミア(Lyxumia)、エキセナチド(Exenatide)/エクセンディン−4(Exendin−4)/バイエッタ(Byetta)/ビデュリオン(Bydureon)/ITCA650/AC−2993(アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Liraglutide)/ビクトザ(Victoza)、セマグルチド(Semaglutide)、タスポグルチド(Taspoglutide)、シンクリア(Syncria)/アルビグルチド(Albiglutide)、デュラグルチド(Dulaglutide)、rエクセンディン−4、CJC−1134−PC、PB−1023、TTP−054、ラングレナチド(Langlenatide)/HM−11260C、CM−3、GLP−1エリゲン、ORMD−0901、NN−9924、NN−9926、NN−9927、ノデキセン(Nodexen)、ビアドール(Viador)−GLP−1、CVX−096、ZYOG−1、ZYD−1、GSK−2374697、DA−3091、MAR−701、MAR709、ZP−2929、ZP−3022、TT−401、BHM−034、MOD−6030、CAM−2036、DA−15864、ARI−2651、ARI−2255、エキセナチド(Exenatide)−XTENおよびグルカゴン−Xtenである。
【0109】
例示的なオリゴヌクレオチドは、たとえば:家族性高コレステロール血症の処置のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセン(mipomersen)/キナムロ(Kynamro)である。
【0110】
例示的なDPP4阻害剤は、ビルダグリプチン(Vildagliptin)、シタグリプチン(Sitagliptin)、デナグリプチン(Denagliptin)、サキサグリプチン(Saxagliptin)、ベルベリン(Berberine)である。
【0111】
例示的なホルモンは、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンなどの、脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストを含む。
【0112】
例示的な多糖類は、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩を含む。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例としては、HylanG−F20/Synvisc、ヒアルロン酸ナトリウムがある。
【0113】
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例は、抗原を結合する能力を保持するF(ab)およびF(ab’)フラグメントを含む。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型またはヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(たとえばマウス)、または一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低く、または結合することはできない。たとえば、抗体は、アイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは変異体とすることができ、Fc受容体との結合を支持せず、たとえば、これは、突然変異したまたは欠失したFc受容体結合領域を有する。
【0114】
用語「フラグメント」または「抗体フラグメント」は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペププチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本発明に有用である抗体フラグメントは、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、二重特異性、三重特異性、および多重特異性抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)などの単一特異性または多重特異性抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体を含む。抗原結合抗体フラグメントのさらなる例は、当技術分野で知られている。
【0115】
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。用語「フレームワーク領域」は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、通常、当技術分野で知られているように、抗原結合に直接的に関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接的に関与することができ、またはCDR内の1つまたはそれ以上のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与えることができる。
【0116】
例示的な抗体は、アンチPCSK−9mAb(たとえばアリロクマブ(Alirocumab))、アンチIL−6mAb(たとえばサリルマブ(Sarilumab))、およびアンチIL−4mAb(たとえばデュピルマブ(Dupilumab))である。
【0117】
本明細書において説明される化合物は、(a)化合物または薬学的に許容されるその塩、および(b)薬学的に許容される担体を含む医薬製剤において使用することができる。化合物はまた、1つまたはそれ以上の他の医薬品有効成分を含む医薬製剤、または存在する化合物またはその薬学的に許容される塩が唯一の有効成分である医薬製剤において使用することもできる。したがって、本開示の医薬製剤は、本明細書において説明される化合物および薬学的に許容される担体を混合することによって作られる任意の製剤を包含する。
【0118】
本明細書において説明される任意の薬物の薬学的に許容される塩もまた、薬物送達デバイスにおける使用に企図される。薬学的に許容される塩は、たとえば酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩は、たとえば、HClまたはHBr塩である。塩基性塩は、たとえば、アルカリもしくはアルカリ土類金属、たとえばNa+、もしくはK+、もしくはCa2+、またはアンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1からR4は互いに独立して:水素、場合により置換されたC1〜C6−アルキル基、場合により置換されたC2〜C6−アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10−アリル基、または場合により置換されたC6〜C10−ヘテロアリール基を意味する)から選択されるカチオンを有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、当業者に知られている。
【0119】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物またはメタノラート(methanolate)またはエタノラート(ethanolate)などのアルカノラート(alkanolate)である。
【0120】
本明細書に記載する物質、調合物、装置、方法、システム、および実施形態のさまざまな構成要素の修正(追加および/または削除)を、本発明の最大限の精神および範囲から逸脱することなく行うことができ、そこにはかかる修正形態およびそのありとあらゆる等価物が包含されていることを、当業者は理解するであろう。
【符号の説明】
【0121】
1 自動注射器、薬物送達デバイス
1.1 制御サブアセンブリ
1.2 駆動サブアセンブリ
2 ケース
2.1 前方ケース
2.2 後方ケース
2.3 長手方向のスロット
2.6 近位端
2.9 遠位アーム
2.10 ケースリブ
2.11 傾斜表面
2.12 止め具
2.13 角度止め具
2.15 半径方向止め具
3 シリンジ、薬剤容器
4 針
5 保護ニードルシース
6 ストッパ
7 ニードルシュラウド
7.3 シュラウドボス
7.4 シュラウドビーム
7.6 アパーチャ
8 制御ばね
9 駆動ばね
10 プランジャ
10.1 プランジャボス
11 キャップ
11.3 コンプライアントビーム
11.4 リブ
11.5 グリップ機能
11.7 シース取り外しビーム
11.8 内向きのレッジ
11.10 遠位面
11.11 開口部
11.12 リブ
12 プランジャ解放機構
13 フィードバック機構
14 カラー
14.1 カム表面
14.2 第1のカラーリブ
14.3 第2のカラーリブ
14.4 第3のカラーリブ
14.5 内側突起
14.6 スナップ嵌め接合部
14.10 接触面
14.11 第1の長手方向表面
14.12 横断方向表面
14.13 第2の長手方向表面
14.14 側面
14.15 側面
14.16 遠位表面
15 第1のシュラウドロック機構
16 第2のシュラウドロック機構
17 ニードルシース取り外し機構
18 キャリア
120 プランジャ解放機構
D 遠位方向
M 薬剤
P 近位方向
P1 近位位置
P2 遠位位置
R1 第1の回転方向
R2 第2の回転方向
S1 遠位位置
S2 近位位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図12F
図12G
図12H
図12J
図13
図14
図15
図16
図17
図18