(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を次の順序で説明する。
<1.タッチパネル装置の構成>
<2.センシング動作>
<3.電源回路構成>
<4.実施の形態の効果及び変形例>
【0014】
<1.タッチパネル装置の構成>
実施の形態のタッチパネル装置1の構成例を
図1に示す。
タッチパネル装置1は、各種機器においてユーザインターフェース装置として装着される。ここで各種機器とは、例えば電子機器、通信機器、情報処理装置、製造設備機器、工作機械、車両、航空機、建物設備機器、その他非常に多様な分野の機器が想定される。タッチパネル装置1は、これらの多様な機器製品においてユーザの操作入力に用いる操作入力デバイスとして採用される。
図1ではタッチパネル装置1と製品側MCU(Micro Control Unit)90を示しているが、製品側MCU90とは、タッチパネル装置1が装着される機器における制御装置を示しているものである。タッチパネル装置1は製品側MCU90に対してユーザのタッチパネル操作の情報を供給する動作を行うことになる。
【0015】
タッチパネル装置1は、タッチパネル2と、タッチパネル駆動装置3を有する。
タッチパネル駆動装置3はセンサIC(Integrated Circuit)4とMCU5を有する。
タッチパネル駆動装置3は、タッチパネル側接続端子部31を介してタッチパネル2と接続される。この接続を介してタッチパネル駆動装置3はタッチパネル2の駆動(センシング)を行う。
また操作入力デバイスとして機器に搭載される際には、タッチパネル駆動装置3は製品側接続端子部32を介して製品側MCU90と接続される。この接続によりタッチパネル駆動装置3は製品側MCU90にセンシングした操作情報を送信する。
【0016】
タッチパネル駆動装置3におけるセンサIC4は、送信回路41、受信回路42、マルチプレクサ43、インターフェース・レジスタ回路44、電源回路45を有する。
【0017】
センサIC4の送信回路41は、マルチプレクサ43によって選択されたタッチパネル2における端子に対して送信信号を出力する。また受信回路42は、マルチプレクサ43によって選択されたタッチパネル2における端子から信号を受信し、必要な比較処理等を行う。
図2に、送信回路41、受信回路42、マルチプレクサ43とタッチパネル2の接続状態を模式的に示す。
タッチパネル2は、タッチ面を形成するパネル平面に、送信側の電極としてのn本の送信信号線21−1から21−nが配設される。
また同じくパネル平面に、受信側の電極としてのm本の受信信号線22−1から22−mが配設される。
なお送信信号線21−1・・・21−n、受信信号線22−1・・・22−mを特に区別しない場合は、総称として「送信信号線21」「受信信号線22」と表記する。
【0018】
送信信号線21−1・・・21−nと、受信信号線22−1・・・22−mは、図示するように交差して配設される場合もあれば、いわゆるシングルレイヤ構造として、上述の特許文献2のように交差が生じないように配設される場合もある。いずれにしても送信信号線21と受信信号線22が配設される範囲内でタッチ操作面が形成され、タッチ操作時の容量変化により操作位置が検出される構造となる。
図では送信信号線21と受信信号線22の間で生じる容量を一部のみ例示している(容量C22,C23,C32,C33)が、タッチ操作面の全体に、送信信号線21と受信信号線22の間で生じる容量(例えば交差位置における容量)が存在し、タッチ操作により容量変化が生じた位置が受信回路42により検出されることとなる。
【0019】
送信回路41は、マルチプレクサ43により選択された送信信号線21−1・・・21−nに対して送信信号を出力する。本実施の形態では、マルチプレクサ43が各タイミングで2本ずつ隣接する送信信号線21を選択していく走査を行う。
受信回路42は、マルチプレクサ43により選択された受信信号線22−1・・・22−mからの受信信号を受信する。本実施の形態では、マルチプレクサ43が各タイミングで2本ずつ隣接する受信信号線22を選択していく。
送信回路41、受信回路42によるセンシング動作については後述する。
【0020】
図1に戻って説明する。センサIC4のインターフェース・レジスタ回路44には、送信回路41、マルチプレクサ43、受信回路42、電源回路45に対する各種の設定情報がMCU5によって書き込まれる。送信回路41、マルチプレクサ43、受信回路42、電源回路45は、それぞれインターフェース・レジスタ回路44に記憶された設定情報によって動作が制御される。
またインターフェース・レジスタ回路44には、受信回路42により検出された検出値(説明上「RAW値」ともいう)を記憶し、MCU5が取得できるようにしている。
【0021】
電源回路45は、駆動電圧AVCCを生成し、送信回路41,受信回路42に供給する。後述するが、送信回路41は駆動電圧AVCCを用いたパルスをマルチプレクサ43によって選択された送信信号線21に印加する。
また受信回路42は、センシング動作の際に、マルチプレクサ43によって選択された受信信号線22に対して駆動電圧AVCCを印加することも行う。
電源回路45の構成については後に詳述する。
【0022】
MCU5はセンサIC4の設定、制御を行う。具体的にはMCU5はインターフェース・レジスタ回路44に対して必要な設定情報を書き込むことで、センサIC4の各部の動作を制御する。
またMCU5は受信回路42からのRAW値をインターフェース・レジスタ回路44から読み出すことで取得する。そしてMCU5は、RAW値を用いて座標計算を行い、ユーザのタッチ操作位置情報としての座標値を製品側MCU90に送信する処理を行う。
【0023】
<2.センシング動作>
以上の構成のタッチパネル装置1によるセンシング動作について説明する。
まず
図3によりタッチパネル2に対する送信回路41,受信回路42の動作を説明する。図ではタッチパネル2において2つの送信信号線21−2、21−3と、2つの受信信号線22−2、22−3を示している。
本実施の形態の場合、先の
図2に示したような送信信号線21、受信信号線22に対して、送信回路41と受信回路42が、それぞれ隣接する2本ずつ送信、受信を行っていくことでタッチ操作の検出を行うものとなる。つまり送信信号線21、受信信号線22の2本×2本を基本セルとして、順次セル単位で検出走査を行う。
図3では、その1つのセル部分を示していることになる。
【0024】
送信回路41は、2本の送信信号線21(図の場合では21−2,21−3)に対して、ドライバ411,412から駆動電圧AVCC1を出力する。つまりドライバ411,412の出力である送信信号T+、T−がマルチプレクサ43によって選択された送信信号線21−2,21−3に供給される。
なお、駆動電圧AVCC1は、
図1の電源回路45が生成する駆動電圧AVCC自体、もしくは駆動電圧AVCCに基づく電圧である。
この場合、送信回路41は、ドライバ411からの送信信号T+は図示のように、アイドル(Idle)期間をロウレベル(以下「Lレベル」と表記)とする。例えば0Vとする。そして続くアクティブ(Active)期間にはハイレベル(以下「Hレベル」と表記)とする。この場合、Hレベルの信号として具体的には駆動電圧AVCC1の印加を行う。
また送信回路41は、もう一つのドライバ412からの送信信号T−は、アイドル期間をHレベル(駆動電圧AVCC1の印加)とし、続くアクティブ期間はLレベルとする。
ここで、アイドル期間は受信信号R+、R−の電位を安定させる期間であり、アクティブ期間は受信信号R+、R−の電位変化をセンシングする期間となる。
【0025】
このアイドル期間、アクティブ期間において、受信回路42はマルチプレクサ43によって選択された2つの受信信号線22(図の場合では22−3,22−2)からの受信信号R+、R−をコンパレータ421で受信する。
そしてコンパレータ421は、受信信号R+、R−の電位を比較して、その比較結果をHレベル又はLレベルで出力する。
【0026】
受信回路42は、コンパレータ421の他に基準容量部422、スイッチ423,425、計測用容量部424を備えている。
基準容量部422を構成するコンデンサの一端には駆動電圧AVCC2が印加されている。駆動電圧AVCC2は、
図1の電源回路45が生成する駆動電圧AVCC自体、もしくは駆動電圧AVCCに基づく電圧である。基準容量部422を構成するコンデンサの他端はスイッチ423の端子Taを介してコンパレータ421の+入力端子に接続されている。
また計測用容量部424の一端には駆動電圧AVCC2が印加されている。この計測用容量部424の他端はスイッチ425の端子Taを介してコンパレータ421の−入力端子に接続されている。
【0027】
スイッチ423、425は、アイドル期間には端子Tiが選択される。従ってアイドル期間にはコンパレータ421の+入力端子(受信信号線22−3)、−入力端子(受信信号線22−2)がグランド接続され、受信信号R+、R−はグランド電位となる。
スイッチ423、425は、アクティブ期間には端子Taが選択される。従ってアクティブ期間にはコンパレータ421の+入力端子(受信信号線22−3)、−入力端子(受信信号線22−2)には基準容量部422又は計測用容量部424を介して駆動電圧AVCC2が印加される。
【0028】
図3では当該セルが非タッチ状態の場合の受信信号R+、R−の波形を実線で示している。アイドル期間ではスイッチ423、425が端子Tiを選択していることで、受信信号R+、R−は、或る電位(グランド電位)で安定されている。
アクティブ期間となるとスイッチ423、425が端子Taを選択することで、受信信号線22−3,22−2に駆動電圧AVCC2が印加される。これにより受信信号R+、R−の電位がΔV上昇する。非タッチの状態では、このΔVの電位上昇は、受信信号R+、R−共に発生する。
一方、送信回路41側では、アクティブ期間となると、上述のように送信信号T+が立ち上がり、送信信号T−が立ち下がる。これにより、タッチ操作があった場合には、受信信号R+、R−の電位上昇の程度が変化する。
仮に容量C22に影響を与えるA1位置がタッチされた場合、受信信号R−の電位がアクティブ期間において破線で示すようにΔVHだけ上昇する。
また仮に容量C32が変化するA2位置がタッチされた場合、受信信号R−の電位がアクティブ期間において破線で示すΔVLだけ上昇する。
これらのように当該セルに対するタッチ操作位置に応じて、受信信号R−の電位変化量が受信信号R+の電位変化量(ΔV)よりも大きくなったり小さくなったりする。
コンパレータ421はこのような受信信号R+、R−を比較することになる。
【0029】
なお、このように変化する受信信号R+、R−の電位差分自体をRAW値(検出結果)として出力するようにしてもよいが、本実施の形態では受信回路42は、受信信号R+、R−の電圧バランスがとれるように計測用容量部424の設定変更を行い、RAW値を得るようにしている。
【0030】
以上の
図3において可変容量コンデンサの記号で示した計測用容量部424は、例えば
図4のように複数のコンデンサCM(CM0〜CM7)とスイッチSW(SW0〜SW7)により構成されている。スイッチSW0〜SW7は、それぞれ例えばFET(Field effect transistor)等のスイッチ素子を用いて構成される。
なお
図4はスイッチ423,425が端子Taに接続された状態(アクティブ期間)での等価回路として示しており、スイッチ423,425の図示は省略している。
各コンデンサCM0〜CM7は、駆動電圧AVCC2の電位とコンパレータ421の−入力端子の間に並列に接続されている。また各コンデンサCM0〜CM7に対してはそれぞれ直列にスイッチSW0〜SW7が接続されている。つまりスイッチSW0〜SW7のオン/オフにより、受信信号R−に影響を与えるコンデンサを変更できる構成である。
【0031】
そして各コンデンサCM0〜CM7の容量値は、例えばコンデンサCM0=2fF(フェムトファラッド)、CM1=4fF、CM2=8fF、CM3=16fF、CM4=32fF、CM5=64fF、CM6=128fF、CM7=256fFとされる。
コンデンサCM0からCM7は、ビット“0”からビット“7”の8ビットの値で選択される。コンデンサCM0及びスイッチSW0がビット0、コンデンサCM1及びスイッチSW1がビット“1”、・・・コンデンサCM7及びスイッチSW7がビット“7”として機能する。
そして8ビットの値として0(=「00000000」)から255(=「11111111」)の容量設定値が与えられる。容量設定値はMCU5がインターフェース・レジスタ回路44に書き込む設定情報の一つである。
受信回路42では、この8ビットの容量設定値に応じてスイッチSW0〜SW7がオン/オフされる。即ちスイッチSW0〜SW7は対応するビットが「0」であればオフ、「1」であればオンとなる。これにより計測用容量部424の全体の容量値が0fF〜510fFの範囲で256段階に可変されることになる。
【0032】
一方、受信信号R+側の基準容量部422のコンデンサの容量値は例えば256fFとされる。
【0033】
上述のように受信信号R−は、タッチの有無及び位置によってアクティブ期間の波形の電位上昇の程度が変わる。受信信号R+の波形上昇程度(ΔV)より大きくなったり小さくなったりする。
図4の構成では、計測用容量部424の容量設定値を変更していくことで受信信号R−の波形の電位上昇程度を変化させることができ、例えば受信信号R+と同等となる計測用容量部424の容量設定値を見つけ出すことができる。
例えば
図4の受信信号R−の破線で示す波形Sg1が初期状態であったとしたときに、計測用容量部424の容量を小さくすれば受信信号R−は波形Sg2のように波形Sg1より小さくなる。また、計測用容量部424の容量を大きくすれば受信信号R−は波形Sg3のように波形Sg1より大きくなる。
つまり、コンパレータ421で受信信号R+、R−の電圧レベルが同等となったときの計測用容量部424の容量設定値は、タッチによる受信信号R−の電圧変化に相当する値と等価となる。従って、コンパレータ421の出力をみながら計測用容量部424の容量設定値を変化させていき、受信信号R+、R−のアクティブ期間の電圧が同等となる容量設定値を探索する。すると探索された容量設定値を、タッチ操作のセンシング情報としてのRAW値とできることになる。
【0034】
以上のセンシング動作の具体的な手順を
図5で説明する。この
図5はMCU5がインターフェース・レジスタ回路44に書き込んだ各種の設定情報に基づいて送信回路41、受信回路42で行われる処理を示したものである。
図5においてステップS100からS109のループ処理は、1つのセル(2つの送信信号線21と2つの受信信号線22の組)に対するセンシングの手順を示している。なお、RAW値を得るまでに容量設定値は8段階の異なる値を取る(初期状態から7回変更される)。
【0035】
ステップS100でまず変数nが初期値としてn=7に設定される。また受信回路42はMCU5の指示(容量設定値)に基づいて計測用容量部424の容量値を256fFに設定する。つまり容量設定値=128(=10000000)とされ、ビット“7”のみが「1」であることでスイッチSW7のみがオンとされる。
【0036】
ステップS101ではアイドル期間の設定が行われる。
送信回路41ではドライバ411からの送信信号T+はLレベル、送信信号T−はHレベル(=駆動電圧AVCC1)とする。
受信回路42では、スイッチ423,425が端子Tiに接続される。これによりコンパレータ421の+入力端子、−入力端子はグランド接続される。
【0037】
次にステップS102では所定の期間経過により、アイドル期間からアクティブ期間への切り替えが行われる。
送信回路41ではドライバ411からの送信信号T+はHレベル(=駆動電圧AVCC1)、ドライバ412からの送信信号T−はLレベルとする。
受信回路42では、スイッチ423,425が端子Taに接続される。これによりコンパレータ421の+入力端子は基準容量部422を介して駆動電圧AVCC2に接続され、−入力端子は計測用容量部424を介して駆動電圧AVCC2に接続される。
【0038】
アクティブ期間となると受信信号R+、R−がΔV上昇するが、送信信号T+が立ち上がり送信信号T−が立ち下がることで、検出中のセルに対するタッチ操作の有無やタッチ操作位置に応じた受信信号R−の変化が生じる(上昇量がΔVHやΔVLとなる)。
ステップS103ではコンパレータ421が受信信号R+、R−を比較し、比較結果を出力する。コンパレータ421からは、(受信信号R+)>(受信信号R−)であればHレベル出力が得られ、(受信信号R+)<(受信信号R−)であればLレベル出力が得られる。
【0039】
ステップS104はコンパレータ421の出力に応じて処理が分岐される。
コンパレータ421の出力がHレベルであれば、ステップS105で計測用容量部424の容量切替が行われる。この場合、ビット“n”のスイッチをオンにしたまま、ビット“n−1”のスイッチをオンとする。
それまで上記のように初期状態で容量設定値=「10000000」とされてビット“7”のみオンとしていたときは、続いて容量設定値=「11000000」とされてビット“7”とビット“6”がオンとされる。即ちスイッチSW7,SW6がオンとされ、計測用容量部424の容量値は384fFとなる。
そしてステップS107で変数n>0であれば、ステップS108で変数nをデクリメントしてステップS101に戻る。つまり、計測用容量部424の容量を大きくした上で、アイドル期間、アクティブ期間の動作を行ってコンパレータ421の出力を確認する。
【0040】
またステップS104においてコンパレータ421の出力がLレベルであれば、ステップS106で計測用容量部424の容量切替が行われる。この場合、ビット“n”のスイッチをオフにして、ビット“n−1”のスイッチをオンとする。
それまで初期状態で容量設定値=「10000000」とされてビット“7”のみオンとしていたとすると、続いて容量設定値=「01000000」とされてビット“7”がオフとされ、ビット“6”がオンとされる。即ちスイッチSW7がオフとされスイッチSW6がオンとされ、計測用容量部424の容量値は128fFとなる。
そしてステップS107で変数n>0であれば、ステップS108で変数nをデクリメントしてステップS101に戻る。つまり、計測用容量部424の容量を小さくした上で、アイドル期間、アクティブ期間の動作を行ってコンパレータ421の出力を確認する。
【0041】
この処理を変数n=0となるまで行うことで、受信信号R−のアクティブ期間の電圧値と受信信号R+のアクティブ期間の電圧値とのバランスがとれたときの容量設定値が判定される。
なお変数n=0のときのステップS105,S106においては、ビット“n−1”は存在しないので、ビット“n−1”の処理は行わない。
ステップS107で変数n=0となっていたらステップS109に進み、受信回路42はRAW値を算出する。これは計測用容量部424においてオンとなっているスイッチSWのビットの2のべき乗の総和をとるという処理となる。例えば仮に最終的にスイッチSW5、SW3、SW2がオンになっていたとしたら、2
5+2
3+2
2=44ということになり、RAW値=44となる。
【0042】
このように求められたRAW値はインターフェース・レジスタ回路44を介して1つのセルの検出値としてMCU5に取得される。
タッチパネル2における各セル(2本の送信信号線21と2本の受信信号線22の組)について同様に
図5の処理が行われ、RAW値が求められる。
MCU5は各セルについてのRAW値を取得し、タッチ操作位置の座標計算を行い、求めた座標値を製品側MCU90に送信する。
【0043】
本実施の形態では以上のようなセンシング動作として、受信信号R+、R−の差分をとることで、取得されるRAW値が、外部環境からの影響を受けにくいようにすることができ、タッチ操作の検出精度を向上できる。
特に非タッチ時には受信信号R+、R−の電位のバランスがとれているようにし、タッチによる容量変化によって受信信号R+、R−の電位に差が生ずるようにしている。これを計測用容量部424の容量を順次変化させて受信信号R+、R−のバランスがとれる容量値を探索し、その容量値を指定する容量設定値からRAW値を得るようにしている。これによりタッチ操作による容量変化に起因する受信信号R+、R−の差分を正確に検出できる。
【0044】
なお受信回路42から駆動電圧AVCC2を印加して、選択された受信信号線22を充電する理由としては主に2つがある。
1つはタッチパネル2がシングルレイヤ構造の場合の事情である。シングルレイヤ構造の場合、非タッチの状態では、送信信号線21と受信信号線22の間で容量がほとんど生じない。つまり送信信号線21と受信信号線22の間(電極間)は絶縁状態にある。しかし非タッチ状態でも、アクティブ期間に受信信号波形が立ち上がるようにすることが必要である。このために駆動電圧AVCC2を送信することによって、シングルレイヤの場合にも対応して上記のセンシング動作が良好にできるようにしている。
またもう1つの理由はシングルレイヤに限ったことではない。上記のセンシング方式ではアクティブ期間に移行したときからの、受信信号R−の電位上昇幅を見ることになるが、送信信号T−の立ち下がりによる影響も把握したい。つまり
図3に破線で示したΔVLの電位上昇も観測する必要がある。もしアクティブ期間での非タッチ状態での受信信号R+、R−の電位が0Vだと、立ち下がりの影響を受ける場合、受信信号R−の電位がマイナス値になってしまい、受信回路42において扱いにくいものとなる。そこで受信信号R−の電位が0V以下にならないように持ち上げておくようにし、送信信号T−の立ち下がりの影響による受信波形の電位を容易かつ適切に観測しやすくするために駆動電圧AVCC2を印加している。
【0045】
<3.電源回路構成>
続いて以上のタッチパネル装置1において駆動電圧AVCCを生成する電源回路45について説明する。
図6はインターフェース・レジスタ回路44と電源回路45を示している。電源回路45にはチャージポンプ回路451、LDO(Low Drop Out:低損失低電圧レギュレータ)452、DAC453が設けられている。
【0046】
チャージポンプ回路451は入力された電圧Vinを昇圧し、昇圧された電圧VCPを出力する。チャージポンプ回路構成は種々公知であるため詳述は避けるが、一般にコンデンサを高速にスイッチする回路構成を採ることで昇圧された電圧を得る。本実施の形態では、チャージポンプ倍率として2倍、3倍、4倍、5倍が選択可能とされている。
【0047】
インターフェース・レジスタ回路44には、2ビットの設定情報VMがMCU5によって書き込まれる。例えば設定情報VMの値として「00」は2倍、「01」は3倍、「10」は4倍、「11」は5倍とされる。従ってチャージポンプ回路451はMCU5に制御によって昇圧の倍率が可変設定される。
なおインターフェース・レジスタ回路44に書き込まれる設定情報CPは、チャージポンプ回路451のオン/オフ設定の情報である。
【0048】
LDO452は、基準電圧生成回路70、差動アンプ71、可変抵抗部72、抵抗73を備える。
チャージポンプ回路451からの電圧VCPが差動アンプ71の正電源として供給される。差動アンプ71の非反転入力端には基準電圧生成回路70で生成された基準電圧が入力される。差動アンプ71の出力端と反転入力端には帰還抵抗として可変抵抗部72が挿入されている。この構成により差動アンプ71の出力として、電圧VCPを安定化した電圧VLDOを得ることができる。電圧VLDOはDAC453に供給される。
【0049】
ここで可変抵抗部72は、3ビットの設定情報CLDOにより抵抗値を可変できる構成とされている。例えば抵抗配列とスイッチ素子により構成され、3ビットの設定情報CLDOに応じてスイッチ素子が制御されることで最大8段階に抵抗値を可変できる。本実施の形態では、可変抵抗部72は例えば7段階に抵抗値を可変できる構成としている。
帰還抵抗値を7段階に変化できることで、電圧VLDOを7段階に可変設定可能である。例えば電圧VLDOとしては、設定情報CLDOにより、6.0V、7.5V、9.0V、10.5V、12.0V、13.5V、15.0Vに可変することができる。
【0050】
DAC453は、可変抵抗部74とバッファアンプ75を備える。
可変抵抗部74にはLDO452からの電圧VLDOが供給され、可変抵抗部74で分圧された電圧がバッファアンプ75を介して駆動電圧AVCCとして出力される。
ここで可変抵抗部72は、8ビットの設定情報CDACにより分圧点を可変できる構成とされている。例えば抵抗配列とスイッチ素子により構成され、8ビットの設定情報CDACに応じてスイッチ素子が制御されて分圧ポイントが選択されることで、分圧出力電圧を最大256段階に可変できる。
【0051】
以上の構成の電源回路45によっては、チャージポンプ回路451で昇圧された電圧VCPをLDO452で安定化した電圧VLDOを得る。また電圧VLDOの電圧値を可変することができる。さらにDAC453により電圧VLDOを可変して駆動電圧AVCCとして出力する。
図7には駆動電圧AVCCの電圧値の調整範囲を示している。縦軸は駆動電圧AVCCとしての電圧値[V]、横軸は8ビットの設定情報CDACの値としての「0」〜「255」(「00000000」〜「11111111」)を示している。
【0052】
各ラインSV1〜SV7は、LDO452における設定情報CLDOにより調整される電圧VLDOの電圧値の別を示している。図示するように、ラインSV1はLDO452において電圧VLDO=6.0Vとされる場合、ラインSV2はLDO452において電圧VLDO=7.5Vとされる場合、・・・ラインSV7はLDO452において電圧VLDO=15.0Vとされる場合である。
これらの電圧VLDOは、DAC453で256段階に微調整される。その電圧値が各ラインSV1〜SV7で示されている。
【0053】
この
図7からわかるように駆動電圧AVCCとしては、ほぼ4V〜15Vの範囲で可変設定できることになる。
特には3ビットの設定情報CLDOにより、LDO452において大まかに7段階に電圧を設定でき、さらに8ビットの設定情報CDACにより、256段階に微調整できる。
これにより、駆動電圧AVCCを、広い電圧範囲で、かつ精細に設定できることになる。
【0054】
なおインターフェース・レジスタ回路44に書き込まれる設定情報DACENはDAC453のイネーブル信号設定である。
また設定情報LBPは、LDO452の出力とDAC453を接続するか否かを選択する設定情報である。
図6には示していないが、DAC453の入力は、LDO452の出力と外部電源入力とで切り替えることのできる構成とすることができる。従って例えば設定情報LBPによりDAC453には外部から供給された電源を入力し、DAC453で電圧値を調整して駆動電圧AVCCを生成することもできる。
これらの設定情報によりMCU5は電源回路45においてLDO452やDAC453の機能を発揮させるか否かの動作設定を行うこともできる。
【0055】
<4.実施の形態の効果及び変形例>
以上の構成のタッチパネル装置1又はタッチパネル駆動装置3によれば次のような効果が得られる。
タッチパネル駆動装置3では、タッチパネルのセンシングに用いる駆動電圧を生成する電源回路45において、入力電圧Vinを昇圧した電圧VCPを出力するチャージポンプ回路451と、チャージポンプ回路451を経て得られた電圧(例えば電圧VLDO)を、所定ビット数の設定情報CDACに応じて可変して出力することができるDAC453を備えている。
即ちタッチパネル2のセンシングに用いる駆動電圧AVCCの供給のために、比較的高い電圧を、チャージポンプ回路451を用いて生成する。そしてDAC453で微調整された電圧をタッチパネル2の駆動電圧AVCCとすることができる。
このように電源回路45が、チャージポンプ回路451の後段側にDAC453を備える構成を採ることで、DAC453に対する設定情報CDACの値により出力される駆動電圧AVCCを微調整できる。
従ってタッチパネル2の想定される使用状況や製品仕様などに応じて適切な駆動電圧AVCCを提供できるセンサIC4を実現できる。
【0056】
例えば駆動電圧AVCCを通常のタッチセンシングに適した電圧に固定的に設定しておくと、いわゆるホバーセンシングする際には、ホバーセンシングに適した電圧より低いものとなる。なおホバーセンシングとは、例えばユーザが指等をタッチパネル表面から浮かせた状態でも検出できるようにするセンシングである。本実施の形態の場合、タッチパネル装置1を、ホバーセンシングを想定したものとする場合は、DAC453の設定情報CDACにより、駆動電圧AVCCを高く設定することが可能であり、製品のユースケースを想定した駆動電圧供給が可能となる。これにより、ユースケースによってセンシング精度が低下してしまうということを避けることができる。換言すれば想定される使用状況にかかわらず高いセンシング精度を維持できるようにすることができる。
また、放射ノイズや消費電力の低減を考慮すると、駆動電圧AVCCは低い方が望ましい。通常のタッチセンシングの場合、ホバーセンシングの場合ほど電圧を上げなくてもよいところ、本実施の形態の場合、タッチセンシングを想定する場合は、DAC453の設定情報CDACにより、駆動電圧AVCCを低く設定することが可能である。つまり不必要な高電圧設定を避けることができる。
【0057】
またDAC453で駆動電圧AVCCを調整できることは異形パネルへの対応にも適している。
タッチパネル2として円形、台形、不定形などの異形のタッチ面を有する異形パネルを用いる場合、長方形(正方形を含む)のパネルと異なり、送信信号線21又は受信信号線22の長さがライン毎に異なり、タッチ面の各位置での容量状況も変動する。即ち送信信号線21又は受信信号線22に負荷の差が生じる。ここで、負荷の重いラインに合わせて駆動電圧AVCCを設定すると、負荷の軽いラインでのセンシングレンジが狭くなってしまい、センシング精度が悪化する。本実施の形態ではDAC453により駆動電圧AVCCを可変できることで、センシングスキャンの際に細かく(例えばライン毎、領域毎など)駆動電圧AVCCを変化させ、2本毎の各スキャンの際に適した駆動電圧AVCCを与えることも可能である。従って、異形パネルでもセンシング精度を高く維持することができる。
またDAC453の場合、電圧変化の応答性が高い。例えばLDO452による電圧可変よりも早い応答性で電圧可変が可能である。従ってDAC453を備えることで、例えばスキャン過程での細かなタイミングでの駆動電圧AVCCの可変調整にも適している。
【0058】
実施の形態の電源回路45は、チャージポンプ回路451で得られた電圧VCPを安定化する安定化回路としてLDO452を備えている
電源回路45においてチャージポンプ回路451の後段側にLDO452を備える構成を採ることで、チャージポンプ回路451の出力電圧が安定化される。
タッチパネル装置1では、もし駆動電圧AVCCが低いと、受信信号線22の受信信号R+、R−が、駆動電圧AVCCの立ち上がり、立ち下がりの影響を受けにくくなり、センシング精度が低下する。これはタッチパネル2をシングルレイヤ構造とし、容量が小さくなった場合に顕著となる。このようなことを考慮すると、チャージポンプ回路451を用いて比較的大きな駆動電圧AVCCを生成することは有用である。
ところが一般にチャージポンプ方式を用いた電源回路では、特にチャージポンプ出力電圧の倍率を大きくした場合、電流負荷の大きさにより出力電圧が変化し、その変化が駆動電圧AVCCに影響することで、センシング精度が低下することがある。
本実施の形態ではLDO452によりチャージポンプ回路451からの出力電圧VCPを安定化した出力電圧VLDOを得ているため、駆動電圧AVCCが安定する。従って高精度のセンシングを実現できることになる。
【0059】
また、チャージポンプ回路451では、コンデンサを高速にスイッチすることで昇圧しているため、スイッチングノイズが発生し、このスイッチングノイズが駆動電圧AVCCに影響することでセンシング精度が低下する場合もある。本実施の形態では、LDO452によってスイッチングノイズが低減できることになるため、それによるセンシング精度の低下を避けることができる。
【0060】
実施の形態では、LDO452はチャージポンプ回路451で得られた電圧VCPを安定化し、かつ設定情報CLDOに応じて可変した電圧VLDOをDAC453に出力することができるように構成されている
これにより、チャージポンプ回路451からの出力電圧VCPは、LDO452及びDAC453で可変設定されて駆動電圧AVCCとされる。具体的には
図7で説明したように、LDO452によって大まかに電圧を調整したうえで、DAC453により精密にかつ応答性よく電圧調整することができる。従って、駆動電圧AVCCとしては広範囲でかつ精細な電圧設定が可能となっており、多様なタッチパネル2に好適に対応できる。
【0061】
実施の形態のタッチパネル装置1では、駆動電圧AVCCは、タッチパネル2の送信信号線21に印加する電圧とされる。
センサIC4からの駆動電圧AVCCがタッチパネル2の送信信号線21に印加される電圧となるということは、送信信号線21に印加される電圧がLDO452、DAC453により調整できることになる。従って各送信信号線21−1〜21−nでの電流負荷や、タッチパネル2の検出態様(タッチセンシングとホバーセンシングの別など)に応じた電圧調整が有効となる。
【0062】
なお実施の形態の構成や動作は一例である。本発明は他に様々な構成例、動作例が考えられる。
電源回路45は
図6に示した構成に限らず、例えばLDO452を設けない例も考えられる。即ちチャージポンプ回路451からの電圧VCPを直接DAC453に供給して、DAC453で調整可能とする例である。
また設定情報CLDOが3ビット、設定情報CDACが8ビットは一例であり、他のビット数でもよい。即ち調整可能な段階数は、可変抵抗部72,74の構成や設定情報CLDO、CDACのビット数により多様に考えられる。