【文献】
GENERAL AND COMPARATIVE ENDOCRINOLOGY,2013年 2月 1日,Vol.182,p.48-53
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
臨床症状が、ケトアシドーシス、インスリン耐性、肥満症、高血糖症、耐糖能障害、高インスリン血症、異脂肪血症、脂肪循環異常血症、前臨床性炎症、全身性炎症、軽度全身性炎症、肝性リピドーシス、アテローム性硬化症、膵臓の炎症、神経障害及び/又はX症候群(代謝症候群)及び/又は膵ベータ細胞機能の低下及び/又は糖尿病寛解の損失から選択される1つ以上の症状である、請求項1の記載の医薬組成物。
ケトアシドーシス、インスリン耐性、肥満症、高血糖症、耐糖能障害、高インスリン血症、異脂肪血症、脂肪循環異常血症、前臨床性炎症、全身性炎症、軽度全身性炎症、肝性リピドーシス、アテローム性硬化症、膵臓の炎症、神経障害及び/又はX症候群(代謝症候群)及び/又は膵ベータ細胞機能の低下及び/又は糖尿病寛解の損失が、糖尿病に随伴する、請求項2記載の医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0018】
定義
本明細書で提示する全ての値及び濃度は、生物学系科学で許容され得る±10%の誤差内の固有の変動を前提とする。“約”という用語はまたこの許容され得る変動を指す。
本明細書に開示される治療効果(例えば、ある異常、疾患若しくは症状の改善、軽減若しくは開始の遅延、又はある異常、疾患若しくは症状に関する任意の効果、インデックス、マーカーレベル若しくは他のパラメーターの改善、軽減、増加若しくは遅延)は、p<0.05、好ましくはp<0.01の統計的有意により認め得る。
本明細書で偏差(例えば増加、上昇、過剰、延長、上向き、軽減、減少、改善、遅延、異常レベル、又は参照に対する他の任意の変化、改変若しくは偏差)について述べる場合は、特段の規定がなければ、該偏差は、対応する参照に対して例えば5%以上、具体的には10%以上、より具体的には15%以上、より具体的には20%以上、より具体的には30%以上、より具体的には40%以上、又はより具体的には50%以上であり得る。該偏差はまた20%であり得る。該偏差はまた30%であり得る。該偏差はまた40%であり得る。対応する参照値は参照動物のグループから得ることができ、前記参照動物は、1つ以上のSGLT2阻害剤(好ましくは化合物A)の代わりにプラセボで処置されるか、又は治療を受けない。
本明細書では、変動(例えばインスリン変動又はグルコース変動)は、時間の経過における濃度又は血中レベルの変化を意味する。変動の程度、たとえばインスリン変動またはグルコース変動は曲線下面積(AUC)値で表すことができる。
本明細書では、“活性物質”又は“活性成分”という用語は、本発明にしたがって使用される、1つ以上のSGLT2阻害剤(好ましくは化合物A)、又はその医薬的に許容可能な任意の形(例えばプロドラッグ又は結晶形)を包含する。1つの或いは追加の活性成分と併用される場合には、“活性成分”又は“活性物質”という用語はまた当該追加の活性化合物を含むことができる。
本明細書では、“〜に随伴する”という表現は、“〜によって引き起こされる”という表現を包含する。
本明細書では、ivGTTは静脈内耐糖試験を指す。ivGTTでは、典型的には体質量1kgにつき0.8gのデキストロースを用いることができる。
本明細書では、ivITTは静脈内インスリン耐性試験を指す。ivITTでは、典型的には体質量1kgにつき0.05Uのインスリンを用いることができる。
【0019】
SGLT2阻害剤
本発明にしたがって使用されるSGLT2阻害剤には、例えばWO01/27128、WO03/099836、WO2005/092877、WO2006/034489、WO2006/064033、WO2006/117359、WO2006/117360、WO2007/025943、WO2007/028814、WO2007/031548、WO2007/093610、WO2007/128749、WO2008/049923、WO2008/055870、WO2008/055940、WO2009/022020又はWO2009/022008に記載されているグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体が含まれる(ただしこれらに限定されない)。
さらにまた、本発明にしたがって使用される1つ以上のSGLT2阻害剤は、以下の化合物又はその医薬的に許容可能な形態から成る群から選択できる:
【0021】
本明細書で用いられる“ダパグリフロジン”という用語は、上記構造のダパグリフロジンをその医薬的に許容可能な形態(その水和物及び溶媒和物並びにその結晶形を含む)とともに指す。当該化合物及びその合成方法は例えばWO03/099836に記載されている。好ましい水和物、溶媒和物及び結晶形は、例えば特許出願WO2008/116179及びWO2008/002824に記載されている。
本明細書で用いられる“カナグリフロジン”という用語は、上記構造のカナグリフロジンをその医薬的に許容可能な形態(その水和物及び溶媒和物並びにその結晶形を含む)とともに指す。当該化合物及びその合成方法は例えばWO2005/012326及びWO2009/035969に記載されている。好ましい水和物、溶媒和物及び結晶形は、例えば特許出願WO2008/069327に記載されている。
本明細書で用いられる“エンパグリフロジン”という用語は、上記構造のエンパグリフロジンをその医薬的に許容可能な形態(その水和物及び溶媒和物並びにその結晶形を含む)とともに指す。当該化合物及びその合成方法は例えばWO2005/092877、WO2006/120208及びWO2011/039108に記載されている。好ましい結晶形は、例えば特許出願WO2006/117359及びWO2011/039107に記載されている。
本明細書で用いられる“アチグリフロジン”という用語は、上記構造のアチグリフロジンをその医薬的に許容可能な形態(その水和物及び溶媒和物並びにその結晶形を含む)とともに指す。当該化合物及びその合成方法は例えばWO2004/007517に記載されている。
本明細書で用いられる“イプラグリフロジン”という用語は、上記構造のイプラグリフロジンをその医薬的に許容可能な形態(その水和物及び溶媒和物並びにその結晶形を含む)とともに指す。当該化合物及びその合成方法は例えばWO2004/080990、WO2005/012326及び WO2007/114475に記載されている。
【0022】
本明細書で用いられる“トホグリフロジン”という用語は、上記構造のトホグリフロジンをその医薬的に許容可能な形態(その水和物及び溶媒和物並びにその結晶形を含む)とともに指す。当該化合物及びその合成方法は例えばWO2007/140191及びWO2008/013280に記載されている。
本明細書で用いられる“ルセオグリフロジン”という用語は、上記構造のルセオグリフロジンをその医薬的に許容可能な形態(その水和物及び溶媒和物並びにその結晶形を含む)とともに指す。
本明細書で用いられる“エルツグリフロジン”という用語は、上記構造のエルツグリフロジンをその医薬的に許容可能な形態(その水和物及び溶媒和物並びにその結晶形を含む)とともに指す。当該化合物は例えばWO2010/023594に記載されている。
本明細書で用いられる“レモグリフロジン”という用語は、上記構造のレモグリフロジンをその医薬的に許容可能な形態(レモグリフロジンのプロドラッグ、特にレモグリフロジンエタボネートを含み、その水和物及び溶媒和物並びにその結晶形を含む)とともに指す。その合成方法は例えば特許出願EP1 213 296及びEP1 354 888に記載されている。
本明細書で用いられる“セルグリフロジン”という用語は、上記構造のセルグリフロジンをその医薬的に許容可能な形態(セルグリフロジンのプロドラッグ、特にセルグリフロジンエタボネートを含み、その水和物及び溶媒和物並びにその結晶形を含む)とともに指す。その製造方法は例えば特許出願EP1 134 780及びEP1 489 089に記載されている。
上記の式(16)の化合物及びその製造は例えばWO2008/042688又はWO2009/014970に記載されている。
【0023】
好ましいSGLT2阻害剤はグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体である。場合によって、そのような1つ以上のSGLT2阻害剤のグルコピラノシル基の1つ以上のヒドロキシル基は、(C
1-18-アルキル)カルボニル、(C
1-18-アルキル)オキシカルボニル、フェニルカルボニル及びフェニル-(C
1-3-アルキル)-カルボニルから選択される基でアシル化できる。
より好ましいものは、本明細書で上記に開示した式(1)のグルコピラノシル置換ベンゾニトリル誘導体である。さらにより好ましいものは、下記式(18)のグルコピラノシル置換ベンゾニトリル誘導体又はその誘導体である:
【0025】
式中、R
3はシクロプロピル、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、3-メチル-ブタ-1-イル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-ヒドロキシ-シクロプロピル、1-ヒドロキシ-シクロブチル、1-ヒドロキシ-シクロペンチル、1-ヒドロキ-シクロヘキシル、エチニル、エトキシ、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2-ヒドロキシル-エチル、ヒドロキシメチル、3-ヒドロキシ-プロピル、2-ヒドロキシ-2-メチル-プロパ-1-イル、3-ヒドロキシ-3-メチル-ブタ-1-イル、1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル、2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-メチル-エチル、2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-トリフルオロメチル-エチル、2-メトキシ-エチル、2-エトキシ-エチル、ヒドロキシ、ジフルオロメチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ、2-メチルオキシ-エチルオキシ、メチルスルファニル、メチルスルフィニル、メチルスルフォニル、エチルスルフィニル、エチルスルフォニル、トリメチルシリル、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ又は(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ又はシアノを表し(ここでR
3は、好ましくはシクロプロピル、エチル、エチニル、エトキシ、(R)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシ又は(S)-テトラヒドロフラン-3-イルオキシから選択され、R3はもっとも好ましくはシクロプロピルである)、ここで、そのβ-D-グルコピラノシル基の1つ以上のヒドロキシル基は、(C
1-18-アルキル)カルボニル、(C
1-18-アルキル)オキシカルボニル、フェニルカルボニル及びフェニル-(C
1-3-アルキル)-カルボニルから選択される基でアシル化される。
好ましくは、そのようなSGLT2阻害剤は、式(2)に示される1-シアノ-2-(4-シクロプロピル-ベンジル)-4-(β-D-グルコピラノース-1-イル)-ベンゼン(本明細書では“化合物A”とも称される)である。場合によって、化合物Aのβ-D-グルコピラノシル基の1つ以上のヒドロキシル基は、(C
1-18-アルキル)カルボニル、(C
1-18-アルキル)オキシカルボニル、フェニルカルボニル及びフェニル-(C
1-3-アルキル)-カルボニルから選択される基でアシル化できる。
したがって、好ましい実施態様では、本発明のSGLT2阻害剤は、グルコピラノシル置換ベンゼン誘導体SGLT2阻害剤、好ましくは式(1)のSGLT2阻害剤、より好ましくは式(18)のSGLT2阻害剤、又はさらに好ましくは式(2)のSGLT2阻害剤(すなわち化合物A)である(いずれの事例でも本明細書の上記で定義される)。
【0026】
代謝異常
代謝異常は、糖尿病、前糖尿病、肥満症、及び/又は前記疾患の1つ以上に随伴する任意の異常、疾患、症状又は徴候であり得る。特に、代謝異常は、高血糖症、インスリン耐性、糖尿病及び/又は肝性リピドーシスであり得る。さらに別の関連する代謝異常には、高インスリン血症、耐糖能障害、ケトーシス(特にケトアシドーシス)、高脂血症、脂肪酸及び/又はグリセロールの血中レベルの上昇、X症候群(代謝症候群)、アテローム性硬化症、膵臓の炎症、脂肪組織の炎症、及び/又は膵ベータ細胞機能の低下が含まれる。
いくつかの実施態様では、代謝異常は糖尿病である。本明細書では、糖尿病は、前糖尿病、真性糖尿病1型又は真性糖尿病2型であり得る。特に、糖尿病は真性糖尿病2型であり得る。いくつかの実施態様では、糖尿病は肥満症を随伴し得る。
いくつかの実施態様では、代謝異常は高血糖症である。本明細書では、高血糖症は、糖尿病(例えば真性糖尿病2型)を随伴し得る。いくつかの実施態様では、高血糖症は肥満症を随伴し得る。高血糖症は慢性であり得る。
いくつかの実施態様では、代謝異常はインスリン耐性である。本明細書では、インスリン耐性は糖尿病(例えば真性糖尿病2型)を随伴し得る。いくつかの実施態様では、インスリン耐性は肥満症を随伴し得る。
いくつかの実施態様では、代謝異常は耐糖能障害(IGT)である。本明細書では、耐糖能障害は糖尿病(例えば真性糖尿病2型)を随伴し得る。いくつかの実施態様では、耐糖能障害は肥満症を随伴し得る。
【0027】
いくつかの実施態様では、代謝異常は高インスリン血症である。本明細書では、高インスリン血症は糖尿病(例えば真性糖尿病2型)を随伴し得る。いくつかの実施態様では、高インスリン血症は肥満症を随伴し得る。
いくつかの実施態様では、代謝異常は、高血糖症、インスリン耐性、及び肝性リピドーシスの1つ以上である。いくつかの実施態様では、代謝異常は高血糖症及びインスリン耐性から選択される。
いくつかの実施態様では、代謝異常は、高インスリン血症、耐糖能障害、高血糖症、及びインスリン耐性の1つ以上である。
ある種の実施態様では、該ネコ科動物は肥満である。例えば、本発明にしたがえば、高血糖症、インスリン耐性及び肝性リピドーシスから選択される1つ以上の代謝異常は、肥満のネコ科動物で治療及び/又は予防され得る。さらにまた、例えば高インスリン血症及び/又は耐糖障害は、肥満のネコ科動物で治療及び/又は予防され得る。さらにまた、ケトーシス(特にケトアシドーシス)、高脂血症、脂肪酸及び/又はグリセロールの血中レベルの上昇、X症候群(代謝症候群)、アテローム性硬化症、膵臓の炎症、脂肪組織の炎症、及び膵ベータ細胞機能の低下から選択される1つ以上の異常は、肥満のネコ科動物で治療及び/又は予防され得る。
【0028】
ある種の実施態様では、ネコ科動物は糖尿病(例えば真性糖尿病2型)に罹患している。例えば、本発明にしたがえば、高血糖症、インスリン耐性及び肝性リピドーシスの群から選択される1つ以上の代謝異常は、糖尿病(例えば真性糖尿病2型)に罹患しているネコ科動物で治療及び/又は予防され得る。さらにまた、例えば高インスリン血症及び/又は耐糖能障害は、糖尿病(例えば真性糖尿病2型)に罹患しているネコ科動物で治療及び/又は予防され得る。さらにまた、ケトーシス(特にケトアシドーシス)、高脂血症、脂肪酸及び/又はグリセロールの血中レベルの上昇、X症候群(代謝症候群)、アテローム性硬化症、膵臓の炎症、脂肪組織の炎症、及び膵ベータ細胞機能の低下から選択される1つ以上の異常は、糖尿病(例えば真性糖尿病2型)に罹患しているネコ科動物で治療及び/又は予防され得る。
いくつかの実施態様では、ネコ科動物は肥満であり、糖尿病(例えば真性糖尿病2型)に罹患している。いくつかの実施態様では、ネコ科動物は、糖尿病(例えば真性糖尿病2型)に罹患しているが肥満ではない。いくつかの実施態様では、ネコ科動物は肥満であるが糖尿病には罹患していない。
本発明はまた、膵ベータ細胞の変性を治療及び/又は予防するために1つ以上のSGLT2阻害剤(好ましくは化合物A)の使用を提供する。前記は、ネコ科動物で例えば膵ベータ細胞量を増加させることによって、及び/又は膵ベータ細胞の機能(すなわちインスリン分泌)を改善及び/又は回復させることによって達成される。
【0029】
ケトーシスは体内のケトン体レベルが上昇した状態である。ケトアシドーシスは代謝性アシドーシスの一タイプということができ、前記は高濃度のケトン体(脂肪酸の分解及びアミノ酸の脱アミノによって形成される)によって引き起こされる。人間で生成される2つの一般的なケトンはアセト酢酸及びβ-ヒドロキシブチレートである。ネコでは、もっぱら3つのケトン(アセト酢酸、β-ヒドロキシブチレート及びピルビン酸)が見出される。ケトアシドーシスは対象動物の息の臭いで知ることができる。この臭いはアセトン(アセト酢酸の偶発的分解の直接的副産物)に起因する。
ケトアシドーシスはケトーシスの激甚で制御不能な形態である。ケトーシスはまた長期飢餓にたいする正常な応答である。ケトアシドーシスでは、身体はケトン生成を特にアセチルCoAの生成によって適切に調節できず、血液のpHが実質的に低下する重篤なケト酸の蓄積を引き起こす(すなわち過剰なケトン体は血液を顕著に酸性化し得る)。激甚な事例では、ケトアシドーシスは致死的である。
ケトアシドーシスは、身体が脂肪酸の代謝により高レベルのケトン体を生成し(ケトーシス)、かつインスリンがこの生成の速度を十分に抑えられない(例えばインスリン耐性/インスリン感受性低下による)ときに発生し得る。インスリン欠乏によって引き起こされる高い血糖レベル(高血糖症)が存在するとき、血液の更なる酸性化をもたらし得る。健康な個体では、前記事象は、膵臓がケトン/血糖レベルの上昇に応答してインスリンを生成するので通常生じない。
ケトアシドーシスは、呼吸基質の必要性を認知して応答する肝の脂肪及びタンパク質の分解時に、未治療真性糖尿病でもっとも一般的に見られる。
【0030】
ネコ科動物の前糖尿病は、高インスリン血症、標的器官のインスリン耐性、耐糖能障害(例えば血糖症チャレンジ(ストレスによってもまた誘発される)に対するインスリン応答の変化を含む)を特徴とする。前糖尿病はまたしばしば肥満症を随伴する。前糖尿病はまた間歇的高血糖症を随伴する。
ネコ科動物の2型糖尿病は、標的器官におけるインスリン生成及びインスリン耐性の低下の両方を特徴とする。インスリン生成の低下は、例えばβ-細胞のアミロイド蓄積、グルコース障害及び/又は膵臓の感染によって引き起こされ得る。ベータ細胞機能不全は通常進行性で、いくらかのネコ科動物では完全なインスリン分泌停止をもたらす。遺伝的因子、グルコステロイド、プロジェステロン、運動不足、及び肥満症はインスリン耐性の可能な理由である。例えば、健康なネコでは、インスリン感受性は40%を超える体重増加後に50%低下する。糖尿病のネコは主として2型であると考えられ、これは、糖尿病のネコの大半が小島アミロイド(前記は2型糖尿病の認証と呼ばれている)を有するという事実に基づく。
極めて少数のネコのみが真性糖尿病の二次型を有すると考えられる。
【0031】
ネコ科動物で観察される真性糖尿病の臨床徴候には多飲、多尿、体重減少、及び/又は大食が含まれる。ネコでは食欲不振が大食よりも頻繁に記載される。ネコで真性糖尿病に特徴的な症状は蹠行である(後肢の脆弱、ネコが歩行時に地面に後肢のくるぶし関節を付ける)。前記は糖尿病性神経障害によって引き起こされる。
本発明の関係でネコ科動物のさらに別の特に真性糖尿病に関する臨床徴候は、高血糖症及び糖尿である。ネコ科動物(例えばネコ)の高血糖症は、正常値(3.9−8.3mmol/L又は70−150mg/dl)より高い血漿グルコース値(例えば8mmol/L以上又は150mg/dl以上の血漿グルコース)と定義される。ネコ科動物(例えばネコ)の糖尿は、正常値(0〜2mmol/L又は36mg/dl)より高い尿中グルコースレベルと定義される。ほぼ11−17mmol/L又は200から300mg/dlの血糖濃度で腎の閾値に達する。
ネコ科動物(例えばネコ)の真性糖尿病の診断は以下のようにそれぞれ別の3つの基準に基づく:
(1)空腹時血糖濃度の測定が250mg/dlを超える;
(2)上記に定義される糖尿;及び
(3)以下の1つ以上:多尿、多飲、大食、良好な食欲にもかかわらず体重減少、又はケトン尿(重篤なケトアシドーシスの徴候は無し)。
上述の診断に加えて、それら診断を支持するために、さらに別の試験は血液学、血液化学、X線及び/又は腹部超音波を含むことができる。
【0032】
本発明の1つ以上のSGLT2阻害剤(好ましくは化合物A)の使用は、正常又は正常に近い血糖濃度の維持及び/又は確立を可能にする。しかしながら、人間の治療とは異なり、前記は糖尿病の動物にとっては常に必要であるとは思われず、したがって常に本発明の治療の目標というわけではない。本発明にしたがえば、血糖濃度はまた、例えば5.5から16.6mmol/L又は100から300mg/dlに維持され得る。これは、ネコ科動物にとってしばしば満足に足るものであろう。
本発明のネコ科動物の前糖尿病又は糖尿病の治療の目標は、未治療の動物の高血糖症で二次的に発生する飼い主が気付いた徴候(無気力、多尿、多飲、体重減少、大食など)の除去であり得る。さらに別の治療目標又は治療効果は、本明細書に開示する本発明の有利な効果のいずれか1つ以上であり得る。前記には以下のいずれか1つ以上が含まれる(ただしこれらに限定されない):耐糖能の改善、インスリン感受性の増加、インスリン耐性の低下、ivITTにおけるグルコース変動の改善、ivGTT又は経口耐糖能試験(OGTT)におけるインスリン変動の改善、第二期インスリン分泌の低下、体脂肪、体質量及び/又は血中レプチンレベルの低下、ガス交換比(RER)の減少、及び/又は肥満動物の場合の体重増加無し。
糖尿病鎮静化は、正常(又は正常に近い)血糖濃度が達成され、臨床徴候が改善され、かつインスリン投与を停止又は少なくとも4週間連続して使用されることがなかったときに用いられる。しかしながら、膵ベータ細胞の生存能は完全に回復したわけではない。1つ以上のSGLT2阻害剤(好ましくは化合物A)の使用は、したがって血糖濃度の低下並びにインスリン耐性及び膵ベータ細胞機能の改善は、ネコ科動物で糖尿病の鎮静化を達成及び維持するために決定的な関連性を有すると推定される。
【0033】
インスリン耐性は、正常量のインスリンが脂肪、筋肉及び肝細胞の正常なインスリン応答の発生に不適切であるという状態ということができる。脂肪細胞のインスリン耐性はインスリンの作用を低下させ、インスリン感受性を高めるか又は追加のインスリンを提供する手段を欠くときには、貯蔵トリグリセリドの加水分解の増加をもたらす。これらの細胞の貯蔵脂質の動員増加は血漿中の遊離脂肪酸を上昇させる。筋肉細胞のインスリン耐性はグルコース取り込み(したがってグリコーゲンとしてのグルコースの局所貯蔵)を低下させ、一方、肝細胞のインスリン耐性はグリコーゲン合成障害及びグルコース生成抑制の失敗をもたらす。血中脂肪酸レベルの上昇、筋肉のグルコース取り込み低下、及び肝のグルコース生成増加はいずれも血糖レベルの上昇(高血糖症)を促進し得る。
インスリン感受性の代用インデックスは、基礎血液レベルのためのQUICK(定量的インスリン感受性チェックインデックス:1/log(グルコース
*インスリン))にしたがって計算できる。動態試験のためには、例えばグルコースチャレンジ中に改変ベルフィオーレインデックス(1/log(ΔAUC-グルコース
*ΔAUC-インスリン))を用いることができる。
【0034】
インスリン耐性は、肥満症、内臓脂肪症、高血圧、並びにトリグリセリド上昇、小型高比重(small dense)低密度リポタンパク質(sdLDL)粒子及びHDLコレステロール減少を伴う異脂肪血症に随伴して存在し得る。内臓脂肪症に関しては、人間に関する多くの証拠がインスリン耐性との2つの強い連関を示唆している。第一に、皮下脂肪組織とは異なり、内臓脂肪細胞は、顕著な量の前炎症性サイトカイン(例えば腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-アルファ)、並びにインターロイキン-1及び-6など)を生成する。多くの実験モデルで、これらの前炎症性サイトカインは、脂肪細胞及び筋肉細胞で正常なインスリン作用を大いに破壊し、内臓脂肪症を有する人間で観察される全身のインスリン耐性を引き起こす主要因子であり得る。同様にネコでも、過剰な脂肪沈積は軽度の全身性炎症を促進する。インスリン耐性症例の大半の原因はなお不明である。遺伝性要素は明瞭に存在する。しかしながら、インスリン耐性は高炭水化物食と関係があると思わせるいくらかの下地が存在する。炎症もまたインスリン耐性の誘発に関係すると思われる。
高インスリン血症は、血中循環インスリンの過剰レベルが存在する(すなわち基礎状態下で約35pmol/Lを超えるか又は例えば血糖症チャレンジ(ivGTT又はストレス)時に約200pmol/L)状態ということができる。記載したように、前記は、ネコ科動物ではインスリン耐性の事例では一般的に存在し、インスリン耐性の結果であり得る。
【0035】
耐糖能障害は、血糖症チャレンジに対する応答で、又は血糖症チャレンジ後に(例えば食後、又は負荷試験(耐糖能試験)後、又はストレス誘発血糖濃度上昇後に)、グルコース変動の血糖症ピークがより高いか及び/又はグルコース変動持続時間が延長される状態ということができる。
異脂肪血症又は高脂血症は、血中の脂質及び/又はリポタンパク質のレベル上昇又は異常レベルの存在である。脂質及びリポタンパク質の異常は、コレステロールの影響に起因する心脈管係疾患の極めて修正可能なリスク因子と考えられる。グリセロールは、肝及び脂肪組織におけるトリアシルグリセロール(トリグリセリド)及びリン脂質合成のための前駆体である。身体がエネルギー源として貯蔵脂肪を使用するとき、グリセロール及び脂肪酸がトリグリセリドの加水分解後に血流中に放出される。グリセロール成分は肝臓によってグルコースに変換され、細胞代謝のためのエネルギーを提供できる。コンパニオンアニマル(例えばネコ科動物)の血中の正常な遊離脂肪酸レベルは、50から100mg/dl(0.6から1.2mmol/L)のトリグリセリド濃度である。血中コレステロールの正常レベルは例えばネコについて70−150mg/dlである。
脂肪循環異常血症は、脂肪組織で生成され、自己分泌/傍分泌又は内分泌態様で作用する生物学的に活性な物質の循環血漿レベルが逸脱している状態(例えばレプチンの上昇及び/又はアジポネクチンの減少)ということができる。
【0036】
前臨床性炎症又は全身性炎症(特に軽度全身性炎症)は、前炎症性サイトカイン(例えば腫瘍壊死因子-アルファ)の発現及び分泌の増加及び/又は抗炎症性サイトカイン(例えばインターロイキン-10)及び/又はそれらの対応する受容体の発現及び分泌低下を特徴とする。
肥満症は、過剰な身体脂肪が、健康に対して有害な影響を有し予想寿命の短縮をもたらし得る程度にまで蓄積した医学的状態ということができる。肥満のネコ科動物では、例えば(9のうち)6より大きいボディコンディションスコア(BCS)が観察される。
本発明にしたがって治療及び/又は予防されるべき代謝異常にはX症候群(代謝症候群)が含まれる。この疾患は、心脈管係疾患を発症するリスクが高い医学的異常と糖尿病の合併ということができる。代謝症候群はまた、代謝性X症候群(代謝症候群)、X症候群(代謝症候群)、インスリン耐性症候群、リーベン症候群、及びCHAOS(冠状動脈疾患、高血圧、アテローム性硬化症、肥満症及び卒中の略語)としても知られている。
代謝症候群の複雑な経路の正確なメカニズムはまだ完全には分かっていない。その病理生理学は極めて複雑であり、部分的に解明されただけである。大半の患者が高齢、肥満で、座すことが多く、さらにある程度のインスリン耐性を有する。最も重要な因子は順に、(1)体重過多及び肥満、(2)遺伝、(3)加齢、及び(4)座すことが多い生活様式(すなわち低い身体活動性及び過剰なカロリー摂取)である。
さらに別のリスク因子は真性糖尿病である。少なくとも人間では、2型糖尿病又は耐糖能障害(IGT)を有する患者の極めて多く(〜75%)が代謝症候群を有する。
【0037】
その病理生理学は一般的に内臓脂肪の発達を特徴とし、内臓脂肪が発達した後、当該内臓脂肪の脂肪細胞はTNF-アルファの血漿レベルを増加させ、多数の他の物質(例えばアジポネクチン、レシスチン、PAI-1)のレベルを変化させる。TNF-アルファは炎症性サイトカインの生成を引き起こすだけでなく、TNF-アルファ受容体との相互作用によっておそらくインスリン耐性をもたらし得る細胞シグナリングを始動させることが示された。
従来の第一選択治療は生活様式(すなわちカロリー削減及び身体活動性)の変更である。しかしながら、薬剤治療もしばしば要求される。代謝症候群を促進する個々の疾患は別々に治療することができる。利尿剤及びACE阻害剤を用いて高血圧を治療できる。コレステロール薬を用いて、LDLコレステロール及びトリグリセリドが上昇している場合はそれらを低下させることができ、HDLレベルが低い場合はそれを上昇させることができる。そのような治療は、本発明の1つ以上のSGLT2阻害剤(好ましくは化合物A)の使用と組み合わせることができる。
本発明にしたがって治療及び予防されるべき代謝異常には膵臓の炎症(膵炎)が含まれる。この疾患は急性型又は慢性型として起こり得る。慢性膵炎は、脂肪便及び/又は真性糖尿病を伴うこともあり伴わないこともある。
膵炎は、高トリグリセリド血症(特にトリグリセリド値は1500mg/dl(16mmol/L)を超える)、高カルシウム血症、ウイルス感染、外傷、血管炎(すなわち膵臓内の小血管の炎症)及び自己免疫性膵炎によって引き起こされる。
代謝異常(特に異脂肪血症及びトリグリセリドの血清レベルの上昇)は膵炎発症のリスク因子であり、したがって膵炎と一緒に本発明にしたがって治療できる。したがって、本発明はまた膵炎の予防を提供する。したがって、本発明はまた膵炎の予防を提供する。
本発明にしたがって治療及び/又は予防されるべき代謝異常には脂肪組織の炎症(脂肪組織炎)が含まれ、前記は皮下の脂肪組織の炎症を特徴とする一群の疾患である。
脂肪組織炎はいずれの脂肪組織(皮膚及び/又は内臓)でも起こり得る。前記は、皮膚深部生検を基準にして診断でき、さらにまた炎症細胞の配置(脂肪小葉内に存在又はそれらを分離させている隔壁内に存在)及び血管炎の有無に基づく組織学的特徴によって分類できる。脂肪組織炎はまた全身性症状の有無を基準にして分類できる。
代謝異常(特に膵炎)は脂肪組織炎発症のリスク因子であり、したがって脂肪組織炎と一緒に本発明にしたがって治療できる。したがって、本発明はまた脂肪組織炎の予防を提供する。
【0038】
ネコ科動物
本明細書ではネコ科動物はネコ科のメンバーである(すなわちネコ科動物の総称である)。したがって、前記はネコ亜科又はヒョウ亜科のどちらかに属し得る。ネコ科動物という用語はネコという用語(例えば家ネコ)を包含する。家ネコという用語はフェリス・カツス(Felis catus)及びフェリス・シルベストリス・カツス(Felis silvestris catus)という用語を包含する。
【0039】
医薬的に許容可能な形態
本明細書では、本発明にしたがってSGLT2阻害剤及び/又はそれらの使用というとき、特段の規定がなければSGLT2阻害剤の医薬的に許容可能な形態を包含する。
本発明にしたがえば、例えば式(1)、好ましくは式(18)、より好ましくは式(2)のSGLT2阻害剤の任意の医薬的に許容可能な形態を用いることができる。例えば結晶形を用いることができる。プロドラッグ形もまた本発明に包含される。
プロドラッグ形には例えばエステル及び/又は水和物が含まれ得る。プロドラッグという用語はまた任意の共有結合担体を含むことを意味し、前記担体は該プロドラッグが対象哺乳動物に投与されたときin vivoで本発明の活性化合物を遊離させる。本発明の化合物のプロドラッグは、本発明の化合物に存在する官能基を修正することによって調製でき、当該官能基は、本発明の親化合物に対して日常的な操作又はin vivoで当該修正が切断されるような態様で修正される。
本発明にしたがって使用される結晶形には、SGLT2阻害剤と1つ以上のアミノ酸との複合体が含まれる(例えばWO2014/016381を参照されたい)。そのような使用のためのアミノ酸は天然のアミノ酸であり得る。アミノ酸は、タンパク質形成性アミノ酸(L-ヒドロキシプロリンを含む)、又は非タンパク質形成性アミノ酸であり得る。アミノ酸はD-又はL-アミノ酸であり得る。いくつかの好ましい実施態様では、アミノ酸は、プロリン(L-プロリン及び/又はD-プロリン、好ましくはL-プロリン)である。例えば、1-シアノ-2-(4-シクロプロピル-ベンジル)-4-(β-D-グルコピラノース-1-イル) -ベンゼン(式(2);化合物A)とプロリン(例えばL-プロリン)との結晶複合体が好ましい。
【0040】
したがって、本明細書では、1つ以上の天然のアミノ酸とSGLT2阻害剤との結晶複合体、例えば、1つ以上の天然のアミノ酸とグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体SGLT2阻害剤(好ましくは式(1)のSGLT2阻害剤、より好ましくは式(18)のSGLT2阻害剤、さらに好ましくは式(2)のSGLT2阻害剤(化合物A))との結晶複合体が開示される。したがって、本明細書では、1つ以上の天然のアミノ酸と1-シアノ-2-(4-シクロプロピル-ベンジル)-4-(β-D-グルコピラノース-1-イル) -ベンゼン(化合物A)との結晶複合体が開示される。
本明細書でさらにまた開示されるものは、上記又は下記に定義される1つ以上の結晶複合体の医薬組成物調製のための使用であり、前記組成物は、ナトリウム依存グルコースコトランスポーターSGLT(好ましくはSGLT2)を阻害することによって影響を与えることができる疾患又は症状の治療及び/又は予防に適切である。本明細書でさらにまた開示されるものは、上記又は下記に定義される1つ以上の結晶複合体の、ナトリウム依存グルコースコトランスポーターSGLT2を阻害する医薬組成物の調製のための使用である。
1つ以上の天然のアミノ酸(例えばプロリン、好ましくはL-プロリン)とSGLT2阻害剤との結晶複合体は、本発明にしたがって使用される好ましい医薬的に許容可能な形態である。特に、1つ以上の天然のアミノ酸(例えばプロリン、好ましくはL-プロリン)とグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体SGLT2阻害剤、好ましくは式(1)の阻害剤、より好ましくは式(18)の阻害剤、さらに好ましくは式(2)の阻害剤(化合物A)との結晶複合体が、本発明にしたがって使用される好ましい医薬的に許容可能な形態である。1つ以上の天然のアミノ酸(例えばプロリン、好ましくはL-プロリン)と1-シアノ-2-(4-シクロプロピル-ベンジル)-4-(β-D-グルコピラノース-1-イル) -ベンゼン(化合物A)との結晶複合体が、本発明にしたがって使用されるSGLT2阻害剤の医薬的に許容可能な形態として特に好ましい。
【0041】
本明細書で開示されるものはまた、上記及び下記で定義される1つ以上の結晶複合体の作製方法であり、前記方法は以下の工程を含む:
(a)1つの溶媒又は複数の溶媒の混合物中でSGLT2阻害剤(例えばグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体、又は式(1)、好ましくは式(18)、より好ましくは式(2)(すなわち化合物A)のSGLT2阻害剤)及び1つ以上の天然のアミノ酸の溶液を調製する工程;
(b)該溶液を保存して溶液から結晶複合体を沈殿させる工程;
(c)該溶液から沈殿を取り出す工程;及び
(d)該沈殿を場合によって一切の過剰な前記溶媒又は溶媒混合物が除去されるまで乾燥させる工程。
一定の医薬活性は、医薬的に活性な薬剤が市場で医薬として承認される前に前記薬剤によって満たされねばならない基本的前提条件である。しかしながら、医薬的に活性な薬剤が満たさねばならない多様な追加要件が存在する。これらの要件は、該活性物質それ自体の性質に関係する種々のパラメーターに基づく。以下に限定されないが、これらのパラメーターの例は、種々の環境条件下での該活性薬剤の安定性、該医薬処方物の製造時の安定性、及び最終医薬組成物における該活性薬剤の安定性である。医薬組成物の調製に用いられる医薬的に活性な物質は可能な限り純粋で、長期保存におけるその安定性は種々の環境条件下で担保されねばならない。このことは、実際の活性物質の他に例えばその分解生成物を含む医薬組成物の使用を防ぐために必須である。そのような事例では、当該医薬の活性物質の含有量は指定されたものよりも少ないことがあり得る。
【0042】
処方物中の医薬の均質な分布は、特に医薬が低用量で投与されねばならないときは決定的な因子である。均質な分布を担保するために、活性物質の粒子サイズは、例えば粉砕によって適切なレベルに低下させることができる。粉砕(又は微小化)の副作用としての医薬的に活性な物質の分解は可能な限り回避しなければならないので、当該プロセスで要求される困難な条件にもかかわらず、活性物質は粉砕プロセスを通して高度に安定でなければならないということは肝要である。活性物質が粉砕プロセスで十分に安定な場合にのみ、指定された活性物質量を常に再現可能な態様で含む均質な医薬処方物を製造することができる。
所望の医薬処方物を調製する粉砕プロセスで生じるもう1つ問題は、このプロセスによって引き起こされるエネルギーの投入及び結晶表面の応力である。前記は、ある種の環境下では多形性変化、非晶質又は結晶格子の変化をもたらし得る。医薬処方物の医薬的品質は活性物質が常に同じ結晶形態学を有することを要求するので、結晶活性物質の安定性及び特性はこの観点からも同様に厳密な要件に支配される。
医薬的に活性な物質の安定性はまた、個々の医薬の保存寿命の決定のために医薬組成物で重要である。保存寿命は、当該医薬が全くリスクなく投与され得る期間の長さである。種々の保存条件下における上述の医薬組成物の高い安定性はしたがって患者及び製造業者の両者にとって追加される利点である。
湿気の吸収は、水分の取り込みによって引き起こされる重量増加の結果として医薬的に活性な物質の含有量を減少させる。湿気を吸収する傾向がある医薬組成物は、適切な乾燥剤の添加によって又は医薬を湿気から保護する環境で当該医薬を保存することによって保存中に湿気から保護されねばならない。したがって好ましくは、医薬的に活性な物質はせいぜい微吸湿性であるべきである。
さらにまた、明確に規定された結晶形が入手可能であるということは当該医薬物質の再結晶化による精製を可能にする。
上記に示した要件とは別に、医薬組成物の物理的及び化学的安定性を改善することができる当該組成物の固体の状態に対するいかなる変化も、前記医薬のより安定性の低い形態を超える顕著な利点をもたらすということは一般的に留意されるべきである。
【0043】
天然のアミノ酸とSGLT2阻害剤(例えばグルコピラノシル置換ベンゼン誘導体、又は式(1)の阻害剤若しくは式(18)の阻害剤若しくは特に式(2)の阻害剤(すなわち化合物A))との結晶複合体は、上記に述べた重要な要件を満たす。
好ましくは、天然のアミノ酸は、その(D)又は(L)エナンチオマー型のどちらか、好ましくは(L)エナンチオマーとして存在する。
さらにまた、SGLT2阻害剤(例えば式(1)の阻害剤、好ましくは式(18)の阻害剤又は特に式(2)の阻害剤(すなわち化合物A))と1つの天然のアミノ酸との間で形成される、もっとも好ましくは化合物Aと1つの天然のアミノ酸の(L)エナンチオマーとの間で形成される本発明の結晶複合体が好ましい。
本発明の好ましいアミノ酸は、フェニルアラニン及びプロリン、特に(L)-プロリン及び(L)-フェニルアラニンから成る群から選択される。
好ましい実施態様にしたがえば、結晶複合体は天然のアミノ酸がプロリン、特に(L)-プロリンであるという特徴を有する。
好ましくは、SGLT2阻害剤(例えば式(1)の阻害剤、好ましくは式(18)の阻害剤又は特に式(2)の阻害剤(すなわち化合物A))及び天然のアミノ酸のモル比は、約2:1から約1:3、より好ましくは約1.5:1から約1:1.5、さらに好ましくは約1.2:1から約1:1.2の範囲、もっとも好ましくは約1:1である。以下では、そのような実施態様は、“複合体(1:1)”又は“1:1複合体”と称される。
したがって、本発明の好ましい結晶複合体は、前記SGLT2阻害剤(例えば式(1)の阻害剤、好ましくは式(18)の阻害剤又は特に式(2)の阻害剤(すなわち化合物A))とプロリンの、特に前記SGLT2阻害剤とL-プロリンの複合体(1:1)である。
【0044】
好ましい実施態様にしたがえば、結晶複合体、特に前記SGLT2阻害剤とL-プロリンの1:1複合体は水和物である。
好ましくは、結晶複合体と水のモル比は、約1:0から1:3、より好ましくは約1:0から1:2、さらに好ましくは約1:0.5から1:1.5、もっとも好ましくは約1:0.8から1:1.2の範囲、特に約1:1である。
前記SGLT2阻害剤とプロリン(特にL-プロリン)及び水との結晶複合体は、それらの特徴的な粉末X-線回折(XRPD)パターンの手段によって同定及び他の結晶形から区別される。
例えば、化合物AとL-プロリンの結晶複合体は、好ましくは20.28、21.14及び21.64°2Θ(±0.1°2Θ)でピークを含む粉末X-線回折パターンを特徴とし、ここで前記粉末X-線回折パターンはCuK
α1照射を用いて作成される。
特に、前記粉末X-線回折パターンは、4.99、20.28、21.14、21.64及び23.23°2Θ(±0.1°2Θ)でピークを含み、ここで前記粉末X-線回折パターンはCuK
α1照射を用いて作成される。
より具体的には、前記粉末X-線回折パターンは、4.99、17.61、17.77、20.28、21.14、21.64、23.23及び27.66°2Θ(±0.1°2Θ)でピークを含み、ここで前記粉末X-線回折パターンはCuK
α1照射を用いて作成される。
さらにより具体的には、前記粉末X-線回折パターンは、4.99、15.12、17.61、17.77、18.17、20.28、21.14、21.64、23.23及び27.66°2Θ(±0.1°2Θ)でピークを含み、ここで前記粉末X-線回折パターンはCuK
α1照射を用いて作成される。
さらになお具体的には、化合物AとL-プロリンの結晶複合体は、CuK
α1照射を用いて作成される粉末X-線回折パターンによって特徴づけられ、前記は表1で示されるように複数の2Θ角度(±0.1°2Θ)でピークを含む。
【0045】
表1:化合物AとL-プロリンの結晶複合体の粉末X-線回折パターン(2Θで30°までのピークのみを列挙する):
【0046】
さらにより具体的には、前記結晶複合体は、CuK
α1照射を用いて作成される粉末X-線回折パターンによって特徴づけられ、前記は複数の2Θ角度でピークを含む(
図11に示すように±0.1°2Θ)。
さらにまた、化合物AとL-プロリンの前記結晶複合体は、約89℃より高い、特に約89℃から約115℃の範囲、より好ましくは約89℃から約110℃の範囲の融点を特徴とする(DSCにより決定、開始温度として判定、10K/分の加熱速度)。この結晶複合体は脱水下で融解することが観察できる。得られたDSC曲線は
図12に示される。
化合物AとL-プロリンの前記結晶複合体はサーマルグラビメトリー(TG)によって質量低下を示す。この観察された質量低下は結晶形が水を含むことを示す(前記水は吸着によって結合され得るか、又は結晶格子の部分であり得る(すなわち結晶形は結晶水和物として存在し得る))。結晶形の水分含有量は、0から約10質量%、特に0から約5質量%、さらに好ましくは約1.5から約5質量%の範囲である。
図2の点線は2.8から3.8%の水分の質量低下を示す。観察された質量低下から、一水和物に近い化学量論性が概算できる。
前記結晶複合体は医薬組成物の調製で有利である有益な物理化学的特性を有する。特に、この結晶複合体は、多様な環境条件下及び医薬製造時に高い物理的及び化学的安定性を有する。例えば、この結晶は、固体の医薬処方物のための製造方法で特に適切な形状及び粒子サイズで入手され得る。加えて、この結晶は、結晶の粉砕を可能にする高い機械的安定性を示す。さらにまた、この結晶複合体は高い水分吸収性を示さず、化学的に安定である(すなわち結晶複合体は長期保存寿命を有する固体の医薬処方物の製造を可能にする)。他方、この結晶複合体は都合よく広いpH範囲にわたって高い溶解性を有する(経口投与用固体処方物で有益である)。
【0047】
粉末X-線回折パターンは、位置感受性検出装置(OED)及びX線源としてCu陽極を取り付けたトランスミッション型STOE-STADIP回折計を用いて記録できる(CUK
α1照射、λ=1.54056Å、40kV、40mA)。表1では、“2Θ[°]”は度で表した回折角度を示し、値“d[Å]”はÅで表した格子面の間の指定距離を示す。
図11に示す強度はcps(秒当たりカウント)単位で与えられる。
実験誤差を許容するために、上記の2Θ値は、±0.1°2Θ、特に±0.05°2Θまで正確と考えられるべきである。換言すれば、化合物Aの結晶のあるサンプルが上記記載の2Θ値と一致する結晶であるか否かを判定するとき、当該サンプルについて実験的に観察される2Θ値は、それが当該特徴的な値の±0.1°2Θ内にあれば、特にそれが当該特徴的な値の±0.05°2Θ内にあれば、上記に記載の特徴的な値と同一と考えられるべきである。
融点は、DSC 821(Mettler Toledo)を用いてDSC(示差走査熱量測定)によって決定される。質量低下は、TGA 851(Mettler Toledo)を用いてサーマルグラビメトリー(TG)によって決定される。
【0048】
本明細書で開示されるものはまた、上記及び下記で定義される結晶複合体を作製する方法であり、前記方法は以下の工程を含む:
(a)1つの溶媒又は複数の溶媒の混合物中で本明細書に記載のSGLT2阻害剤(例えば化合物A又は本明細書に記載の別のSGLT2阻害剤)及び1つ以上の天然のアミノ酸の溶液を調製する工程;
(b)該溶液を保存して溶液から結晶複合体を沈殿させる工程;
(c)該溶液から沈殿を取り出す工程;及び
(d)該沈殿を場合によって一切の過剰な前記溶媒又は溶媒混合物が除去されるまで乾燥させる工程。
工程(a)にしたがえば、1つの溶媒又は複数の溶媒の混合物中のSGLT2阻害剤(例えば化合物A又は本明細書に記載の別のSGLT2阻害剤)及び1つ以上の天然のアミノ酸の溶液が調製される。好ましくは、該溶液は飽和であるか、又は少なくともほぼ飽和であるか、又は結晶複合体に関しては過飽和ですらある。工程(a)では、SGLT2阻害剤が1つ以上の天然のアミノ酸を含む溶液に溶解されるか、又は1つ以上の天然のアミノ酸がSGLT2阻害剤を含む溶液に溶解され得る。また別の手順にしたがえば、SGLT2阻害剤は1つの溶媒又は複数の溶媒の混合物に溶解されて第一の溶液を生成し、1つ以上のアミノ酸は1つの溶媒又は複数の溶媒の混合物に溶解されて第二の溶液を生成する。その後で前記第一の溶液及び前記第二の溶液を一緒にして、工程(a)の溶液を形成する。
好ましくは、該溶液中の天然のアミノ酸とSGLT2阻害剤(例えば化合物A又は本明細書に記載の任意の他のSGLT2阻害剤)のモル比は、得られるべき結晶複合体中の天然のアミノ酸とSGLT2阻害剤のモル比と一致する。したがって、好ましいモル比は約1:2から3:1の範囲、もっとも好ましくは約1:1である。
【0049】
適切な溶媒は、C
1-4アルカノール、水、酢酸エチル、アセトニトリル、アセトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、及びこれらの溶媒の2つ以上の混合物から成る群から選択される。
より好ましい溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、水、及びこれら溶媒の2つ以上の混合物、特に前記有機溶媒の1つ以上と水との混合物から成る群から選択される。
特に好ましい溶媒は、エタノール、イソプロパノール、水、及びエタノール及び/又はイソプロパノールと水の混合物から成る群から選択される。
水と1つ以上のC
1-4アルカノール、特にメタノール、エタノール及び/又はイソプロパノール、もっとも好ましくはエタノールとの混合物が採用される場合には、水:アルカノールの好ましい体積比は約99:1から1:99、より好ましくは約50:1から1:80、さらに好ましくは約10:1から1:60の範囲である。
好ましくは、工程(a)は、ほぼ室温(約20℃)又は用いられる溶媒若しくは溶媒混合物のほぼ沸点までの上昇温度で実施される。
好ましい実施態様にしたがえば、SGLT2阻害剤(例えば化合物A又は本明細書に記載の任意の他のSGLT2阻害剤)及び/又は1つ以上の天然のアミノ酸及び/又は溶媒及び溶媒混合物の出発物質はある量のH
2Oを含み、前記は、少なくともSGLT2阻害剤の水和物を形成するために必要な量で、SGLT2阻害剤1molにつき少なくとも1mol、好ましくは少なくとも1.5molの水である。さらに好ましくは、水の量はSGLT2阻害剤1molにつき少なくとも2molの水である。このことは、出発物質としてのSGLT2阻害剤(例えば化合物A)又は1つ以上の天然のアミノ酸又は前記溶媒若しくは溶媒混合物、又は一緒にされた前記化合物及び/又は溶媒が上記に指定された量のH
2Oを含むことを意味する。例えば、工程(a)のSGLT2阻害剤(例えば化合物A)又は天然のアミノ酸の出発物質が上記指定のように十分な水を確かに含む場合、溶媒の水の含有量は強制的ではない。
【0050】
本発明の結晶複合体の該溶液中での溶解性を低下させるために、工程(a)及び/又は工程(b)で、1つ以上の逆溶剤を好ましくは工程(a)の最中に又は工程(b)の初めに添加できる。水は適切な逆溶剤の例である。逆溶剤の量は、好ましくは結晶複合体に関して過飽和又は飽和溶液を得るように選択される。
工程(b)では、溶液は沈殿(すなわち結晶複合体)を得るために十分な時間保存される。工程(b)の溶液の温度は工程(a)の温度とほぼ同じか又は低い。保存中に、好ましくは溶液の温度を低下させ、好ましくは20℃から0℃の範囲又はそれより低い温度に低下させる。工程(b)は撹拌しつつ又は撹拌しないで実施できる。当業者に公知であるように、工程(b)の時間の長さ及び温度の違いによって、得られる結晶のサイズ、形状及び量を制御できる。さらにまた、結晶化は当業界で公知の方法によって誘発できる。前記は例えば、機械的手段(例えば反応容器の接触表面を例えばガラス棒で引っかくか又は擦る)による。場合によって、(ほぼ)飽和又は過飽和の溶液に種結晶を接種してもよい。
工程(c)では、溶媒は公知の方法(例えばろ過、吸引ろ過、デカンテーション又は遠心分離)によって沈殿から除去できる。
工程(d)では、過剰溶媒は、当業者に公知の方法によって(例えば溶媒分圧を好ましくは真空中で低下させることによって、及び/又は約20℃を超えて、好ましく100℃より低い、さらに好ましくは85℃より低い範囲で加熱することによって)沈殿から除去される。
【0051】
化合物Aは、国際特許出願WO2007/128749(参照によりその全体が本明細書に含まれる)で具体的及び一般的に記載された又は前記に引用された方法、及び/又は本明細書で下記に開示する実施例の方法によって合成できる。化合物Aの生物学的特性はまたWO2007/128749に記載されているように解明することができる。
本明細書に記載の結晶複合体は、好ましくは、実質的に純粋な形(つまりSGLT2阻害剤(例えば化合物A)の他の結晶形を実質的に含まない)の医薬活性物質として用いられる。それにもかかわらず、本発明はまた、もう1つの結晶形又は複数の結晶形との混合物の結晶複合体を包含する。医薬活性物質が複数の結晶形の混合物である場合には、当該活性物質は、少なくとも50%質量、より好ましくは少なくとも90%質量、もっとも好ましくは少なくとも95%質量の本明細書に記載の結晶複合体を含む。
SGLT活性を阻害するその能力からみれば、本発明の結晶複合体は、SGLT活性(特にSGLT2活性)の阻害によって影響を及ぼし得る症状又は疾患(特に本明細書に記載の代謝異常)の治療及び/又は予防的治療での使用に適切である。本発明の結晶複合体はまた、SGLT活性(特にSGLT2活性)の阻害によって影響を及ぼし得る症状又は疾患(特に本明細書に記載の代謝異常)の治療及び/又は予防的治療のための医薬組成物の調製に適切である。本明細書に記載の結晶複合体(特に化合物Aと天然のアミノ酸(例えばプロリン、特にL-プロリン)との結晶複合体)はまた、ネコ科動物の治療で使用するために適切である。
【0052】
医薬組成物及び処方物
本発明にしたがって使用されるSGLT2阻害剤は医薬組成物として調製できる。それらは固体又は液体処方物として調製できる。どちらの事例でも、それらは、好ましくは経口投与のために、好ましくは経口投与のための液体形で調製される。しかしながら、SGLT2阻害剤はまた例えば非経口投与のために調製され得る。
固体処方物には錠剤、顆粒形及び他の固体形(例えば座薬)が含まれる。固体処方物ではとりわけ錠剤及び顆粒形が好ましい。
本発明の趣旨の医薬組成物は本発明のSGLT2阻害剤及び1つ以上の賦形剤を含むことができる。意図される医療効果を可能にする又は支援するいずれの賦形剤も用いることができる。そのような賦形剤は当業者には入手可能である。有用な賦形剤は、例えば抗粘着剤(散剤(顆粒)と打錠面との間の粘着を軽減し、したがって打錠器への粘着を防ぐ)、結合剤(成分を一緒に保持する溶液結合剤又は乾燥結合剤)、コーティング(空気中の湿気による錠剤成分の劣化を防ぎ、さらに大きくて不快な味の錠剤を嚥下しやすくする)、崩壊剤(希釈時に錠剤を壊れやすくする)、充填剤、希釈剤、香料、着色剤、滑剤(流動調節剤、粒子間摩擦及び凝集を軽減することによって散剤の流動を促進する)、滑沢剤(成分の凝集及び打錠器又はカプセル充填器への付着の防止)、保存料、収着剤、甘味剤などである。
本発明の処方物(例えば固体処方物)は担体及び/又は崩壊剤を含むことができ、前記は、砂糖及び糖アルコール、例えばマンニトール、ラクトース、デンプン、セルロース、微晶質セルロース及びセルロース誘導体(例えばメチルセルロース)などのグループから選択される。
【0053】
ネコ科動物に適切な処方物の製造手順は当業者に公知であり、固体処方物のためには、前記は例えば直接圧縮、乾燥顆粒化及び湿潤顆粒化を含む。直接圧縮プロセスでは、活性成分及び他の全ての賦形剤を圧縮装置に一緒に入れ、当該装置を直接適用して前記材料から錠剤を打錠する。得られた錠剤は、それらを物理的及び/又は化学的に保護するために場合によってその後で、例えば最新技術で公知の材料によって被覆できる。
投与のための一ユニット(例えば一回分液体用量又は一ユニットの固体処方物(例えば錠剤))は、本発明にしたがって使用されるSGLT2阻害剤の0.1から10mg、又は例えば0.3mgから1mg、1mgから3mg、3mgから10mg、又は5から2500mg、又は例えば5から2000mg、5mgから1500mg、10mgから1500mg、10mgから1000mg、又は10-500mgを含むことができる。当業者には理解されるところであるが、固体処方物又はネコ科動物に投与される本明細書に開示の任意の処方物中のSGLT2阻害剤の含有量は、治療されるべきネコ科動物の体重に比例して適切なように増減させることができる。
ある実施態様では、本発明にしたがって使用される医薬組成物は、経口又は非経口投与のために、好ましくは経口投与のために設計される。特に、経口投与は賦形剤によって改良され、前記賦形剤は意図される患畜、例えば記載の患畜のために医薬組成物の臭い及び/又は触覚特性を修正する。
本発明にしたがって使用されるSGLT2阻害剤が経口投与のために処方されるとき、賦形剤は、ネコ科動物への投与のために当該処方物を適切にする特性(例えばおいしさ及び/又は咀嚼性)を付与することが好ましい。
液体処方物もまた好ましい。液体処方物は、例えば溶液、シロップ又は懸濁物であり得る。それらはネコ科動物に直接投与してもよく、又は当該ネコ科動物の食餌又は飲料(例えば飲み水など)に混合してもよい。液体処方物の1つの利点は(顆粒形の処方物と同様に)、そのような剤形は正確な投与用量を可能にするということである。例えば、SGLT2阻害剤は、ネコ科動物の体質量に比例して正確に投与され得る。液体処方物の典型的な組成は当業者には公知である。
【0054】
投与用量及び投与
当業界の開業医は本発明の使用のために適切な用量を決定できる。好ましいユニット投与用量の単位にはmg/kg(すなわちネコ科動物の体質量当たりのmgSGLT2阻害剤)が含まれる。本発明のSGLT2阻害剤は、例えば1日当たり0.01−5mg/kg、例えば0.01−4mg/kg、例えば0.01−3mg/kg、例えば0.01−2mg/kg、例えば0.01−1.5mg/kg、例えば0.01−1mg/kg、例えば0.01−0.75mg/kg、例えば0.01−0.5mg/kg、例えば0.01−0.4mg/kgの用量で、例えば0.01−0.4mg/kg/日又は0.1から3.0mg/kg/日、好ましくは0.2から2.0mg/kg/日、より好ましくは0.1から1mg/kg/日で投与できる。別の好ましい実施態様では、用量は0.02−0.5mg/kg/日、より好ましくは0.03−0.4mg/kg/日、例えば0.03−0.3mg/kg/日である。
当業界の開業医は、所望の用量にしたがって投与するために本発明のSGLT2阻害剤を調製することができる。
好ましくは、本発明にしたがえば、SGLT2阻害剤は、1日に3回を超えないで、より好ましくは1日に2回を超えないで、もっとも好ましくは1日に1回だけ投与される。投与頻度は当該ネコ科動物の典型的な給餌の度合いに対して調整できる。
本発明にしたがえば、SGLT2阻害剤は、SGLT2阻害剤の適切な血漿濃度が達成されるように投与できる(例えば最大血漿濃度又は設定時間後(例えば経口投与後4、8、12又は24時間、好ましくは経口投与後約8時間)の血漿濃度)。例えば化合物Aのためには、血漿濃度(例えば最大血漿濃度又は経口投与から前記設定時間後の血漿濃度)は2から4000nM、例えば20から3000又は例えば40から2000nMの範囲内であり得る。
【0055】
好ましくは、投与及びSGLT2阻害剤が血流に到達するために必要な時間の後、そのようなレベルは、少なくとも12時間、より好ましくは少なくとも18時間、もっとも好ましくは少なくとも24時間にわたって血中で維持される。
好ましくは、本発明にしたがえば、SGLT2阻害剤は液体形又は固体形で経口的に投与される。SGLT2阻害剤は動物の口に直接投与されるか(例えば注射器、好ましくは体重対応注射器を用いる)、又は前記は動物の食餌又は飲料と一緒に(例えばその飲み水などと一緒に)、それぞれの事例において好ましくは液体形で投与され得る。しかしながら、SGLT2阻害剤はまた、例えば非経口的に又は他の任意の投与ルートによって(例えば直腸に)投与され得る。
SGLT2は単独で用いても又は別の医薬と併用してもよい。いくつかの実施態様では、1つ以上のSGLT2阻害剤(好ましくは化合物A)は、1つ以上のさらに別の抗高血糖症経口薬と併用される。SGLT2阻害剤をさらに別の医薬と併用するときは、SGLT2阻害剤及び任意のさらに別の医薬は、同時に、連続して(任意の順序で)及び/又は時差的投薬レジメンにしたがって投与され得る。そのような実施態様では、SGLT2阻害剤と併用投与されるさらに別の医薬がSGLT2阻害剤と同時に投与されないときは、SGLT2阻害剤及び任意のさらに別の医薬は、好ましくは少なくとも2週間、1カ月、2カ月、4カ月、6カ月又はそれ以上、例えば12カ月又はそれ以上の期間内で投与される。
いくつかの実施態様では、SGLT2阻害剤は(単独で用いられるか別の医薬と併用されるかにかかわらず)、1-[(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-[3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル]-キサンチン又はその医薬的に許容可能な塩と併用されない(すなわち、ネコ科動物は前記化合物で処置されない)。いくつかの実施態様では、SGLT2阻害剤はDPP-IV阻害剤と併用されない(すなわち、ネコ科動物はDPP-IV阻害剤で処置されない)。
いくつかの実施態様では、SGLT2阻害剤は単一療法(すなわち単独療法)として用いられる。すなわち、他の医薬は、同じ代謝異常(すなわちSGLT2阻害剤がそのために投与される代謝異常)の治療又は予防のためにネコ科動物に投与されない。例えば、SGLT2阻害剤の投与前及び投与後少なくとも2、3、又は4週間以内に、他の医薬は同じ代謝異常の治療又は予防のために当該ネコ科動物に投与されない。
実施例
以下の実施例は、本発明にしたがって1つ以上のSGLT2阻害剤をネコ科動物で用いることの、血糖症制御及び/又はインスリン耐性における有利な治療効果を示す。これらの実施例は、特許請求の範囲を全く制限することなく本発明をより詳細に例示することを意図する。
【実施例1】
【0056】
ネコにおける1回経口投与用量の化合物Aの薬物動態及び薬力学
化合物Aを一晩絶食させたネコに投与した。グループ(1グループn=3)にビヒクル単独(水)又はSGLT2阻害剤化合物Aを含むビヒクル(0.01mg/kg、0.1mg/kg及び1mg/kgの用量)を1回経口投与した。化合物A又はそのビヒクルの1回投与後4日までPK/RD測定を実施した。
表2:薬物動態データ、一用量(0.01/0.1/1.0mg/kg)
薬力学データ:
−尿中グルコース濃度の突出した増加が、0.01mg/kgを超える用量で投与後8時間において既に明白であり(平均グループ値はコントロールで1.4mmol/L、 0.01mg/kgで1.4 mmol/L、0.1mg/kgで46.1mmol/L、1mg/kgで239.3mmol/L)、24時間を超えて持続した。
−正常な参照値と比較して、3つの用量の化合物Aはいずれもネコで血糖レベルを変化させなかった。
−3つの用量の化合物Aはいずれもネコの腎機能を変化させなかった。
尿中グルコース排出増加は、
図1に示されるように明瞭に用量及び血漿化合物暴露依存性(対数直線性相関関係)である。
【実施例2】
【0057】
ネコの反復投与後の化合物Aの尿中グルコース及び血糖に対する影響
化合物Aを一晩絶食させたネコに投与した。グループ(1グループn=3)にビヒクル単独(PillPocket
R)又はSGLT2阻害剤(乾燥化合物)を含むビヒクルを1mg/kg及び3mg/kgの用量で3日間連続して投与した。尿中グルコース及び血糖を測定した。
−尿中グルコース濃度の突出した増加が投与後8時間で既に両用量で明白であった。最大尿中濃度は反復投与後にそれ以上は上昇せず、1mg/kg及び3mg/kgの用量で類似していた(平均値はそれぞれ281mmol/L及び209mmol/L)。
−いずれの用量の化合物Aも、正常な参照値と比較してネコの血糖レベルを変化させなかった。
尿中グルコース排出に関しては、このようにしてED
50は<1mg/kgと概算された。
【実施例3】
【0058】
ネコの反復投与後の化合物Aの尿中グルコース及び血糖に対する影響
自由に餌を与えられている正常血糖の肥満ネコに化合物Aを投与した。グループ(1グループn=6)にビヒクル単独(ゼラチンカプセル)又はSGLT2阻害剤(乾燥化合物)を含むビヒクルを1mg/kgの用量で1日1回4週間経口投与した。尿中グルコース及び血糖を測定した。
−尿中グルコース濃度は、実験終了時に顕著に上昇した(コントロールで0.6mmol/L、1 mg/kgで489mmol/L)。
−血糖レベルの変化は認められなかった。
【実施例4】
【0059】
前糖尿病の治療:ネコの顕在2型糖尿病の予防
病的な空腹時グルコース耐性及び/又はグルコース耐性障害及び/又はインスリン耐性を特徴とする前糖尿病における本発明のSGLT2阻害剤の有効性は、臨床試験を用いて調べることができる。短期間又は長期間(例えば2−4週間又は1−2年)の試験で、治療の成功は、この試験の治療期間の終了後の空腹時グルコース値及び/又は食後若しくは負荷試験(経口耐糖試験又は規定食後の食物耐性試験)後のグルコース値を決定し、それらの値をこの試験の開始前の値及び/又はプラセボグループの値と比較することによって試験される。加えて、フルクトサミン値を治療前及び治療後に決定し、最初の値及び/又はプラセボの値と比較することができる。空腹時又は非空腹時グルコースレベル及び/又はフルクトサミンレベルにおける顕著な下降は、前糖尿病の治療の有効性を示している。さらにまた、本発明の医薬組成物で治療したとき、別の治療形式と比較して顕在型糖尿病を発症する患畜数の顕著な減少は、前糖尿病から顕在糖尿病への移行の予防の有効性を示している。
【実施例5】
【0060】
前糖尿病の治療:ネコのインスリン耐性の改善
以下の実施例はインスリン耐性肥満ネコにおける化合物Aの有益な作用を示す。自由に餌を与えられている正常血糖でインスリン耐性の肥満ネコに化合物Aを投与した。グループ(1グループn=6)にビヒクル単独(ゼラチンカプセル)又はSGLT2阻害剤(乾燥化合物)を含むビヒクルを1mg/kgの用量で1日1回4週間経口投与した。以下の実験は、治療の開始前及び4週間の治療期間の終了時に化合物/ビヒクルの最後の投与後ほぼ24時間で実施された。
静脈内耐糖試験(ivGTT、0.8g/kgデキストロース)を一晩絶食させたネコで実施した。頸静脈カテーテルで血液を収集した。血液サンプルは、グルコース適用に対して-5、0、5、10、15、30、45、60、90、120、180分で採取した。
グルコース及びインスリン変動は、基準値修正グルコースAUCを計算することによって定量した。静脈内インスリン耐性試験(ivITT、0.05U/kg正規インスリン)を一晩絶食させたネコで実施した。血液サンプルはインスリン適用に対して-5、0、5、15、30、60、90、120、180分で採取した。
グルコース及び非エステル化脂肪酸(NEFA)の変動は、基準値修正グルコース及びNEFA AUCを計算することによって定量した。
グループ間の平均の相違の有意さは、反復測定2因子(時間及び治療)ANOVA及びコントロールに対する事後多重比較又は対応する基準値の読みによって評価する。
ivGTT中のグルコース変動は試験期間中又は治療によって変化しなかった。インスリン変動は、コントロールネコで試験期間を通して変わらなかったが、治療ネコでは基準値と比較して有意に減少した(p<0.05)。
図2に示すように、痩せたネコと比較したとき、本試験の肥満ネコでインスリン分泌プロフィールは第一期の減少及び第二期の増加と延長を示した。
図2のパネルB示すように、化合物Aによる治療は第二期インスリン分泌プロフィールの有意な改善をもたらした。
インスリン感受性は、基準値と比較したとき治療ネコで有意に増加した(p<0.05)。これは、修正ベルフィオーレインデックス(1/log(ΔAUC-gluc
*ΔAUC-ins)の式でグルコースとインスリンの関係を計算することによって示された。
化合物A又はそのビヒクル(“コントロール”)による治療前(“pre”)及び治療後(“post”)4週間のi.v.耐糖試験(ivGTT)におけるインスリン耐性ネコの血中インスリン曲線下面積値及び修正ベルフィオーレインデックスによって表される血中インスリン対グルコース関係は
図3に示される。
ivITT中のグルコース変動は、コントロール動物で試験期間を通して有意に悪化した(p<0.05)(
図4のパネルA参照)。これはNEFAの除去についても同様であった(
図5のパネルA参照)。対照的に、化合物Aで治療されたネコでは、グルコース曲線は試験期間を通して変化せず(
図4のパネルB参照)、さらにNEFA除去は化合物A治療によって有意に改善した(p<0.01、
図5のパネルB参照)。
これらのデータは、肥満ネコではインスリン耐性は化合物Aによる4週間の治療後に有意に改善されることを示している。インスリン耐性は前糖尿病の特徴的な特色であるので、このデータは、化合物Aがネコ科動物の前糖尿病を治療できることを強力に示している。
長さが異なる期間(例えば2週間から12カ月)に実施した糖尿病のネコの臨床試験では、インスリン耐性の改善の成功は、基準値血糖、血中フルクトサミン及び血中インスリンレベルを測定し、続いて試験期間を通して個々のネコにおけるこれらレベルの上昇をモニターすることによってチェックできる。この試験の治療期間の終了後の食後又は負荷試験(耐糖試験又はインスリン耐性試験)後のグルコース及びインスリン値はまた、この試験の開始前の値及び/又は他の医薬で治療された糖尿病のネコの値と比較することができる。
【実施例6】
【0061】
ネコの2型糖尿病の治療
本発明の医薬組成物による2型糖尿病のネコの治療は、グルコースの代謝状況における急進的改善に加えて、長期における代謝状況の悪化を予防する。これは、本発明の医薬組成物によって短期間又は長期間(例えば2−4週間又は3カ月−1年)にわたってネコを治療し、治療前の代謝状況又はインスリン若しくは他の抗糖尿病薬で治療されたネコと比較するならば観察することができる。治療前レベルと比較して毎日の平均血糖レベル及びフルクトサミンレベルが減少している場合は、治療の成功の証拠が存在する。治療の成功のさらに別の証拠は、他の医薬で治療されたネコと比較して、本発明の医薬組成物で治療したネコの有意に小さなパーセンテージがグルコース代謝の局面で一過性の悪化(例えば高血糖症又は低血糖症)を示す場合に得られる。
【実施例7】
【0062】
膵ベータ細胞の機能の改善
種々の長さの期間(例えば4週間から12カ月)にわたって実施した糖尿病のネコの臨床試験で、治療の成功は、基準値血糖、血中フルクトサミン及び血中インスリンレベルの測定並びに個々のネコのパラメーター間の対応する関係を用いてチェックされる。加えて、アルギニン刺激を利用して、インスリンを分泌する膵ベータ細胞の能力を試験することができる。
この試験中及び試験の終了時に、最初の値と比較して又はプラセボグループ若しくは異なる治療を与えられたグループと比較して、血中インスリンレベルの有意な上昇は、糖尿病のネコの膵ベータ細胞の機能改善における本発明の医薬組成物の有効性を証明する(
図15)。
【実施例8】
【0063】
糖尿病寛解
より長い期間(例えば3カ月から1年)にわたって実施した糖尿病のネコの臨床試験で、治療の成功は、基準値血糖、血中フルクトサミン及び血中インスリンレベルの測定並びに個々のネコのパラメーター間の対応する関係を用いてチェックされる。治療前レベルと比較してインスリンの注射の必要がなく実験室値が低下したならば治療の証拠が存在する(
図15)。
化合物Aが例えばインスリン又は高血糖症を効果的に軽減する他の薬剤と併用される事例で、当該ネコ科動物がインスリン又は他の薬剤から引き離されてもなお正常範囲内の血糖症制御を示すことができる。
最も有利には、当該ネコ科動物は化合物Aから引き離すことができる。
【実施例9】
【0064】
高血糖症の軽減
種々の長さの期間(例えば1日から12カ月)にわたって実施した糖尿病のネコの臨床試験で、高血糖症のネコの治療の成功は、血糖又は血中フルクトサミンレベルを決定することによってチェックされる。最初の値と比較して又はプラセボグループ若しくは異なる治療を与えられたグループと比較して、試験の間又は終了時の値の有意な降下は、ネコの高血糖症の軽減における本発明の医薬組成物の有効性を証明する。
【実施例10】
【0065】
体組成及び体脂肪減少
以下の実施例は、肥満ネコにおける化合物Aの有益な作用を示す。自由に餌を与えられている肥満ネコに化合物Aを投与した。グループ(1グループn=6)にビヒクル単独(ゼラチンカプセル)又はSGLT2阻害剤(乾燥化合物)を含むビヒクルを1mg/kgの用量で1日1回4週間経口投与した。以下の実験は、治療前及び4週間の治療期間の終了時に化合物/ビヒクルの最後の投与後ほぼ24時間で実施された。
図6に示されるように、血中レプチン濃度は、試験期間にわたって治療ネコで有意に低下した(平均値:治療前2482pmol/L、治療後2213pmol/L、p<0.05)。
間接的熱量測定法はエネルギー代謝における当該治療の影響を示す。ガス交換比(RER;吐き出されたCO
2量及び吸い込まれたO
2量の比、
図7参照)は、治療動物における脂肪酸代謝(脂質利用)の有意な増加を示す(平均RER値:治療前0.749、治療後0.728;p<0.01)。
脂質利用の増加はまた、
図8に示すように、血中β-ヒドロキシブチレート濃度の増加(β-HB/BHB)に反映される。血中β-ヒドロキシブチレート濃度の増加は正常な参照値を超えない。
この試験を通して関連するデータにおけるこれらの変化は有意な相関関係を示し、治療が体組成に対して有益な作用を示すことを表示している。
したがって、データは、化合物Aによる4週間の治療前及び治療後における血中レプチン濃度の変化とRERの変化との間の正の相関関係(
図9)、並びに血中β-ヒドロキシブチレートレベル(β-HB/BHB)とEREとの間の負の相関関係(
図10)を示している。
肝パラメーターは変化せず、ケトンは尿で検出されなかった。したがって、脂質及び炭水化物代謝のシフトは正常な生理学的範囲内であった。結果として、肥満ネコの4週間の治療は、脂肪循環異常血症が改善され、さらにグルコースから脂質への代謝基質利用の追加的シフトは肥満ネコの治療における明瞭な利点の表明であることを明瞭に示している。これらのデータは、化合物Aがネコの前糖尿病を治療できることを強力に示している。
【実施例11】
【0066】
クライアント所有糖尿病ネコにおける化合物Aのパイロット試験
以下のデータは4匹の糖尿病のネコから得られ、これらのネコは、28日間経口的に1日1回1mg/kgの化合物Aで見込み治療された。真性糖尿病の診断は以下を基準に為された:選別時の血糖が>250mg/dl(13.9mmol/L)、グルコース尿又は400μmol/L以上の血清フルクトサミンのどちらか、及び真性糖尿病に一致する少なくとも1つの以下の臨床症状/徴候の持続(無気力、多尿、多飲、多食、体重減少、及び/又は後肢の蹠行姿勢(DM、多発性神経障害))。
結果は、9時間の血糖曲線の平均血糖(
図13)が、基準値と比較して4匹全てのネコで試験の終了時までに実質的に低下することを明らかにした。この減少は7日目に既に存在し、さらに予想に反して長期インスリン治療に匹敵できる程度のものであった。比較のために、Vetsulin(商標)で治療された14匹のネコでは平均血糖における類似の減少は14日目までには観察されなかった(NADA 141-236, Freedom of Information Summary, Vetsulin)。血清フルクトサミンによってこの良好な血糖症制御が確認され、その値もまた全てのネコで28日までに350μmol/L未満(実験室解説ガイドラインにしたがえば秀逸な制御)に低下した(
図14)。対照的に、Vetsulinで治療されたネコについては、平均血清フルクトサミンは30日までに546であり、60日目に462に上昇したままであった(NADA 141-236, Freedom of Information Summary, Vetsulin)。
全てのネコが少なくとも1つの臨床症状/徴候において改善を示し、4匹のネコのうち3匹が飼い主の判定によれば少なくとも3つの臨床症状/徴候で改善を示した。全てのネコが研究者の判定によれば全体的糖尿病制御で改善された。尿のグルコース排出は試験の終了までに全てのネコで減少した。低血糖症(70mg/dl未満の血糖と定義)は報告されなかった。
結論すれば、これらのデータは、化合物Aは、1日2回の長期インスリン療法に匹敵し得る、1日1回の経口療法で糖尿病ネコの治療に用いることができることを示している。
【実施例12】
【0067】
1-シアノ-2-(4-シクロプロピル-ベンジル)-4-(β-D-グルコピラノース-1-イル)-ベンゼン(化合物A)の調製
以下の合成実施例は、1-シアノ-2-(4-シクロプロピル-ベンジル)-4-(β-D-グルコピラノース-1-イル)-ベンゼン(化合物A)の調製方法を例示するために供される。そのL-プロリンとの結晶複合体の調製方法もまた記載される。前記は、本発明の範囲を制限することなく例示として単に可能な方法とみなされるべきである。“室温”及び“周囲温度”は互換的に用いられ、約20℃の温度を指す。以下の略語が用いられる:DMFはジメチルホルムアミド、NMPはN-メチル-2-ピロリドン、THFはテトラヒドロフラン。
4-ブロモ-3-ヒドロキシメチル-1-ヨード-ベンゼンの調製:
【0068】
【化4】
【0069】
塩化オキサリル(13.0mL)をCH
2Cl
2(200mL)中の2-ブロモ-5-ヨード-安息香酸(49.5g)の氷冷溶液に添加する。DMF(0.2mL)を加え、該溶液を室温で6時間撹拌する。続いて、この溶液を減圧下で濃縮し、残留物をTHF(100mL)に溶解する。生じた溶液を氷浴中で冷却し、LiBH
4(3.4g)を小分けにして加える。冷却浴を取り除き、混合物を室温で1時間撹拌する。反応混合物をTHFで希釈し、0.1Mの塩酸で処理する。続いて、有機層を分離し、水層を酢酸エチルで抽出する。一緒にした有機層を乾燥させ(Na
2SO
4)、溶媒を減圧下で蒸発させて粗生成物を生じる。
収量:47.0g(理論の99%)。
4-ブロモ-3-クロロメチル-1-ヨード-ベンゼンの調製:
【0070】
【化5】
【0071】
塩化チオニル(13mL)を、DMF(0.1mL)を含むジクロロメタン(100mL)中の4-ブロモ-3-ヒドロキシメチル-1-ヨード-ベンゼン(47.0g)の懸濁液に添加する。この混合物を周囲温度で3時間撹拌する。続いて、溶媒及び過剰の試薬を減圧下で除去する。残留物をメタノールで粉末にして、乾燥させる。
収量:41.0g(理論の82%)。
4-ブロモ-1-ヨード-3-フェノキシメチル-ベンゼンの調製:
【0072】
【化6】
【0073】
4MのKOH溶液(60mL)に溶解したフェノール(13g)を、アセトン(50mL)に溶解した4-ブロモ-3-クロロメチル-1-ヨード-3-ベンゼン(41.0g)に添加する。NaI(0.5g)を加え、得られた混合物を50℃で一晩撹拌する。続いて水を加え、得られた混合物を酢酸エチルで抽出する。一緒にした抽出物を乾燥させ(Na
2SO
4)、溶媒を減圧下で蒸発させる。残留物をシリカゲル上でのクロマトグラフィーによって精製する(シクロヘキサン/酢酸エチル19:1)。
収量:38.0g(理論の79%)
1-ブロモ-4-(1-メトキシ-D-グルコピラノース-1-イル)-2-(フェノキシメチル)-ベンゼンの調製:
【0074】
【化7】
【0075】
THF(11mL)中のiPrMgCl溶液(2M)をTHF(11mL)中に懸濁させた乾燥LiCl(0.47g)に添加する。全てのLiClが溶解するまで、前記混合物を室温で撹拌する。この溶液を、アルゴン雰囲気下で-60℃に冷却したテトラフドロフラン(40mL)中の4-ブロモ-1-ヨード-3-フェノキシメチル-ベンゼン(8.0g)の溶液に1滴ずつ加える。前記溶液を-40℃に温め、続いてテトラヒドロフラン(5mL)中の2,3,4,6-テトラキス-O-(トリメチルシリル)-D-グルコピラノン(10.7g、純度90%)を添加する。得られた溶液を冷却浴中で-5℃に温め、この温度でさらに30分間撹拌する。NH
4Cl水溶液を添加し、得られた混合物を酢酸エチルで抽出する。一緒にした有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で溶媒を除去する。残留物をメタノール(80mL)に溶解し、メタンスルホン酸(0.6mL)で処理してより安定なアノマーをもっぱら生成する。反応溶液を35−40℃で一晩撹拌した後、この溶液を固体のNaHCO
3で中和し、減圧下でメタノールを除去する。残留している物をNaHCO
3水溶液で希釈し、得られた混合物を酢酸エチルで抽出する。一緒にした抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を蒸発させて粗生成物を得て、前記粗生成物をさらに精製することなく還元に付す。
収量:7.8g(理論の93%)。
1-ブロモ-4-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-D-グルコピラノース-1-イル)-2-(フェノキシメチル)-ベンゼンの調製:
【0076】
【化8】
【0077】
-20℃に冷却したジクロロメタン(35mL)及びアセトニトリル(50mL)中の1-ブロモ-4-(1-メトキシ-D-グルコピラノース-1-イル)-2-(フェノキシメチル)-ベンゼン(8.7g)の溶液に、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(4.9mL)を温度が-10℃以下に維持されるような速度で添加する。生じた溶液を1.5時間かけて0℃に温め、続いて炭酸水素ナトリウム水溶液で処理する。得られた混合物を0.5時間撹拌し、有機溶媒を除去し、残留物を酢酸エチルで抽出する。一緒にした有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を除去する。残留物をジクロロメタン(50mL)に取り入れ、ピリジン(9.4mL)、無水酢酸(9.3mL)及び4-ジメチルアミノピリジン(0.5g)を前記溶液に連続的に添加する。この溶液を周囲温度で1.5時間撹拌し、続いてジクロロメタンで希釈する。この溶液を1Mの塩酸で2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒を除去した後、残留物をエタノールから再結晶化し、生成物を無色の固体として提供する。
収量:6.78g(理論の60%)。
マススペクトル(EST
+):m/z=610/612(Br)[M+NH4]
+
2-(フェノキシメチル)-4-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-D-グルコピラノース-1-イル)-ベンゼンの調製:
【0078】
【化9】
【0079】
シアン化亜鉛(1.0g)、亜鉛(30mg)、Pd
2(ジベンジリデンアセトン)
3*CHCl
3(141mg)及びテトラフルオロホウ酸トリ-tert-ブチルホスホニウム(111mg)を詰めたフラスコをアルゴンでフラッシュする。続いて、NMP(12mL)中の1-ブロモ-4-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-D-グルコピラノース-1-イル)-2-(フェノキシメチル)-ベンゼン(5.4g)の溶液を加え、得られた混合物を室温で18時間撹拌する。酢酸エチルで希釈した後、混合物をろ過し、ろ液を炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄する。有機相を乾燥させ(硫酸ナトリウム)、溶媒を除去する。残留物をエタノールから再結晶化する。
収量:4.10g(理論の84%)。
マススペクトル(EST
+):m/z=557[M+NH4]
+
また別には、上記化合物は、NMP中のシアン化銅(I)を用い、210℃で1-ブロモ-4-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-D-グルコピラノース-1-イル)-2-(フェノキシメチル)-ベンゼンから出発して合成できる。
2-ブロモメチル-4-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-D-グルコピラノース-1-イル)-ベンゾニトリルの調製:
【0080】
【化10】
【0081】
酢酸(15mL)中の33%臭化水素酸溶液を、酢酸(10mL)中の2-フェニルオキシメチル-4-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-D-グルコピラノース-1-イル)-ベンゾニトリル(0.71g)及び無水酢酸(0.12mL)の溶液に添加する。得られた溶液を55℃で6時間撹拌し、続いて氷浴中で冷却する。反応混合物を冷却炭酸カリウム水溶液で中和し、得られた混合物を酢酸エチルで抽出する。一緒にした有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で溶媒を除去する。残留物を酢酸エチル/シクロヘキサン(1:5)に取り入れ、ろ過によって沈殿物を分離し、50℃で乾燥させて純粋な生成物を生じる。
収量:0.52g(理論の75%)。
マススペクトル(EST
+):m/z=543/545(Br)[M+NH4]
+
4-シクロプロピル-フェニルボロン酸の調製:
【0082】
【化11】
【0083】
ヘキサン(14.5mL)中のnブチルリチウムの溶液(2.5M)を、THF(14mL)及びトルエン(50mL)に溶解し-70℃に冷却した1-ブロモ-4-シクロプロピル-ベンゼン(5.92g)に1滴ずつ加える。得られた溶液を、ホウ酸トリイソプロピル(8.5mL)を加える前に-70℃で30分撹拌する。この溶液を-20℃に温め、続いて4Mの塩酸水(15.5mL)で処理する。反応混合物をさらに室温に温め、続いて有機相を分離する。酢酸エチルで水相を抽出し、一緒にした有機相を乾燥させる(硫酸ナトリウム)。溶媒を蒸発させ、残留物をエーテルとシクロヘキサンの混合物で洗浄して無色の固体として生成物を生じる。
収量:2.92g(理論の60%)。
マススペクトル(EST
+):m/z=207(Cl)[M+HCOO]
-
1-シアノ-2-(4-シクロプロピル-ベンジル)-4-(β-D-グルコピラノース-1-イル)-ベンゼンの調製:
【0084】
【化12】
【0085】
2-ブロモメチル-4-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-D-グルコピラノース-1-イル)-ベンゾニトリル(1.60g)、4-シクロプロピル-フェニルボロン酸(1.0g)、炭酸カリウム(1.85g)及びアセトンと水(3:1)の脱気混合物(22mL)をAr充填フラスコに詰める。前記混合物を、氷浴で冷却する前に5分間室温で撹拌する。続いて、塩化パラジウム(30mg)を添加し、反応混合物を16時間周囲温度で撹拌する。続いて前記混合物を塩水で希釈し、酢酸エチルで抽出する。一緒にした抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去する。残留物をメタノール(20mL)に溶解し、4Mの水酸化カリウム水溶液(4mL)で処理する。得られた溶液を周囲温度で1時間撹拌し、続いて1Mの塩酸で中和する。メタノールを蒸発させ、残留物を塩水で希釈し、酢酸エチルで抽出する。収集した有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を除去する。残留物をシリカゲル上でクロマトグラフィーに付す(ジクロロメタン/メタノール1:0−>8:1)
収量:0.91g(理論の76%)。
マススペクトル(EST
+):m/z=413[M+NH4]
+
化合物AとL-プロリンとの結晶複合体(1:1)の調製:
エタノールと水(体積比10:1)の混合物(2.1mL)に溶解したL-プロリン(0.34g)を2mLのエタノールに溶解した1-シアノ-2-(4-シクロプロピル-ベンジル)-4-(β-D-グルコピラノース-1-イル)-ベンゼン(1.17g、上記のようにして入手)の溶液に添加する。得られた溶液を周囲温度に放置する。約16時間後に結晶複合体をろ過によって白色結晶として単離する。必要ならば、例えばガラス棒又は金属へらで引っかくことによって、又は種結晶を接種することによって結晶化を開始させることができる。真空下でわずかに上昇させた温度(30から50℃)に結晶を約4時間保存することによって残留溶媒を除去して、L-プロリンと1-シアノ-2-(4-シクロプロピル-ベンジル)-4-(β-D-グルコピラノース-1-イル)-ベンゼンとの結晶1:1複合体の1.27gを生じる。
上記の調製にしたがっていくつかの結晶複合体バッチを入手する。粉末X-線回折パターンは一致する。融点をDSCにより決定し、開始温度として査定する。融点の例は約89℃、90℃、92℃、101℃である。表1に含まれ、
図11に記載される粉末X-線回折パターン並びに
図12のDSC及びTG図は、約90℃の融点を有するバッチに対応する。
化合物AとL-プロリンの結晶複合体の粉末X-線回折パターン(2Θで30°までのピーク)が表1に提供される。
【実施例13】
【0086】
処方物
いくつかの処方物の例を記載する。前記では、“活性物質”という用語は、本発明にしたがって使用されるSGLT2阻害剤又はその医薬的に許容可能な形態(例えばプロドラッグ又は結晶形)を示す。1つ又は複数の追加の活性物質と併用される事例では、“活性物質”という用語はまた当該追加の物質を含むことができる。
100mgの活性物質を含む錠剤
組成:
調製方法:
活性物質、ラクトース及びデンプンを一緒に混合し、ポリビニルピロリドンの水溶液で均質に湿らす。湿潤組成物をふるい分け(メッシュサイズ2.0mm)、ラック型ドライヤーで50℃にて乾燥させた後、再びふるい分け(メッシュサイズ1.5mm)、滑沢剤を添加する。完成混合物を圧縮して錠剤を形成する。
錠剤質量:220mg、
直径:10mm、二平面を有し両面にファセットが施され(facetted)、片面に切込みが存在する。
【0087】
150mgの活性成分を含む錠剤
組成:1錠剤は以下を含む:
調製:
ラクトース、トウモロコシデンプン及びシリカと混合した活性物質を、20%のポリビニルピロリドン水溶液で湿らせ、1.5mmのメッシュサイズを有するふるいに通す。45℃で乾燥させた顆粒を同じふるいに再び通し、指定量のステアリン酸マグネシウムと混合する。
この混合物から錠剤を打錠する、
錠剤質量:300mg、直径:10mm、扁平。
【0088】
150mgの活性物質を含む硬質ゼラチンカプセル
組成:1カプセルは以下を含む:
調製:
活性物質を賦形剤とともに混合し、0.75mmのメッシュサイズを有するふるいに通し、適切な装置を用い均質に混合する。完成混合物をサイズ1の硬質ゼラチンカプセルに詰める。
カプセル充填物:約320mg
カプセル殻:サイズ1硬質ゼラチンカプセル
【0089】
150mgの活性物質を含む座薬
組成:1座薬は以下を含む:
調製:
座薬塊を融解した後、活性物質をその中に均質に分布させ、融解物を冷却した鋳型に注入する。
【0090】
10mgの活性物質を含むアンプル
組成:
調製:
活性物質を必要量の0.01N HClに溶解し、食塩で等張にし、ろ過滅菌して2mLアンプルに移す。
【0091】
50mgの活性物質を含むアンプル
組成:
調製:
活性物質を必要量の0.01N HClに溶解し、食塩で等張にし、ろ過滅菌して10mLアンプルに移す。
【0092】
参考文献
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17) WO 2005/012326
18) WO 2005/092877
19) WO 2006/034489
20) WO 2006/064033
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22) WO 2006/117360
23) WO 2006/120208
24) WO 2007/025943
25) WO 2007/028814
26) WO 2007/031548
27) WO 2007/093610
28) WO 2007/114475
29) WO 2007/128749
30) WO 2007/140191
31) WO 2008/002824
32) WO 2008/013280
33) WO 2008/042688
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38) WO 2008/116179
39) WO 2009/014970
40) WO 2009/022008
41) WO 2009/022020
42) WO 2009/035969
43) WO 2010/023594
44) WO 2011/039107
45) WO 2011/039108
46) WO 2011/117295
47) WO 2014/016381