(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、金属部材にエラストマー部材を接合した複合シール構造体において、金属部材の接合面を粗面化することにより、金属部材とエラストマー部材との接合強度を向上させることができるものの、粗面化された接合面とその接合面に接合されたエラストマー部材との間に微小な空隙が形成され、その微小な空隙同士が連通することにより、シール性が損なわれるおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、金属部材にエラストマー部材を接合した複合シール構造体において、シール性を維持して、金属部材とエラストマー部材との接合強度を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る複合シール構造体は、
表面に環状の溝が表面に形成された金属部材と、上記金属部材
の上記溝の内部に接合されたエラストマー部材とを備えた複合シール構造体であって、上記金属部材における上記エラストマー部材が接触する表面には、上記金属部材からなる互いに直径の異なる複数の粒状体が不規則に積み重なった堆積構造を有する粗面部と、上記堆積構造を有しない
環状の非粗面部とが設けられ
、上記粗面部は、上記溝の底面に設けられ、上記非粗面部は、上記溝の両側面に設けられ、上記溝の両側面は、上記金属部材の表面に対して垂直に設けられ、上記溝の両縁部は、上記金属部材の表面よりも窪んでおり、上記溝の両縁部の窪んだ表面には、上記粗面部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、金属部材におけるエラストマー部材が接触する表面には、金属部材からなる粒状体の堆積構造を有する粗面部と、その堆積構造を有しない閉じた形状の非粗面部とが設けられている。ここで、堆積構造を有する粗面部では、金属部材からなる互いに直径の異なる複数の粒状体が不規則に積み重なっているので、金属部材の表面に積み重なった複数の粒状体の一部の集合とエラストマー部材との局所的な接合が金属部材の接合表面全体に不規則(ランダム)に配置している。これにより、粗面部において、金属部材とエラストマー部材との接合強度を接合表面に沿う全方向で揃えることができるので、面内異方性を抑制して、金属部材とエラストマー部材との接合強度を確保することができる。また、堆積構造を有しない非粗面部では、金属部材の表面が平滑(例えば、算術平均粗さRa1.6μm以下)になっているので、金属部材とエラストマー部材とを密着させることができる。これにより、金属部材にエラストマー部材を介して接する空間が、閉じた形状の非粗面部を挟んで内側と外側とに分離されるので、シール性を維持することができる。したがって、金属部材におけるエラストマー部材が接触する表面に設けられた粗面部及び非粗面部によって、金属部材にエラストマー部材を接合した複合シール構造体において、シール性を維持して、金属部材とエラストマー部材との接合強度を確保することができる
。
【0009】
また、上記の構成によれば、非粗面部が閉じた形状の環状に設けられているので、金属部材にエラストマー部材を介して接する空間が、非粗面部を挟んで環内側と環外側とに分離されるので、非粗面部において、シール性を維持することができる
。
【0010】
また、上記の構成によれば、エラストマー部材が金属部材の表面に形成された環状の溝の内部に接合されているので、金属部材にエラストマー部材を容易に固定することができる
。
【0011】
また、上記の構成によれば、粗面部が溝の底面に設けられ、非粗面部が溝の両側面に設けられているので、例えば、金属部材の溝の内部表面でレーザー光が照射し易い溝の底面に、レーザー光を照射することにより、金属部材の溝の底面に粗面部を容易に形成することができる。
【0012】
また、上記の構成によれば、溝の両側面が金属部材の表面に対して垂直に設けられ、溝の両縁部の窪んだ表面に粗面部が設けられているので、溝の両縁部において、金属部材にエラストマー部材を接合することができる。これにより、エラストマー部材と金属部材との間に形成され得る隙間の最大深さが金属部材の溝の深さでなく、溝の両縁部の窪んだ表面の窪みの深さになるので、エラストマー部材と金属部材との間に隙間が形成されても、その隙間を目立たなくすることができる。
【0013】
上記非粗面部は、上記溝の底面にも互いに並行に延びるように複数設けられていてもよい。
【0014】
上記の構成によれば、非粗面部が溝の底面にも互いに並行に延びるように複数設けられているので、溝の底面において、シール性を向上させることができる
。
【0015】
上記溝の底面に設けられた粗面部は、上記溝の底面に設けられた複数の非粗面部の間に配置されていてもよい。
【0016】
上記エラストマー部材は、含フッ素エラストマー組成物により構成されていてもよい。
【0017】
上記の構成によれば、エラストマー部材が含フッ素エラストマー組成物により構成されているので、一般的に接着剤で接着し難い含フッ素エラストマー組成物からなるエラストマー部材であっても、金属部材に強固に接合することができる。なお、上記エラストマー部材と上記粗面部との間には、接着剤が介在していなくてもよい。
【0018】
上記粗面部は、レーザー光の照射により形成されていてもよい。
【0019】
上記の構成によれば、粗面部がレーザー光の照射により形成されているので、レーザー光の照射により溶融した金属部材の一部がその周りにランダムに飛散して凝固することにより、複数の粒状体が不規則に積み重なった堆積構造を金属部材の表面に形成することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、金属部材におけるエラストマー部材が接触する表面には、金属部材からなる粒状体の堆積構造を有する粗面部と、その堆積構造を有しない閉じた形状の非粗面部とが設けられているので、金属部材にエラストマー部材を接合した複合シール構造体において、シール性を維持して、金属部材とエラストマー部材との接合強度を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の各実施形態に限定されるものではない。
【0023】
《第1の実施形態》
図1〜
図8は、本発明に係る複合シール構造体の第1の実施形態を示している。ここで、
図1は、本実施形態の複合シール構造体30aの上面図である。また、
図2は、
図1中のII−II線に沿った複合シール構造体30aの断面図である。また、
図3は、複合シール構造体30aを構成する金属部材10aの粗面部Rの表面を45°斜め方向から撮影したSEM(scanning electron microscope:走査型電子顕微鏡)写真である。
【0024】
複合シール構造体30aは、
図1及び
図2に示すように、板状の金属部材10aと、金属部材10aの後述する溝Cの内部に接合されたエラストマー部材20aとを備えている。
【0025】
金属部材10aは、
図1に示すように、平面視で略矩形状に設けられ、各角部がR形状に加工されている。また、金属部材10aの一方の表面には、
図1に示すように、その周囲に沿って環状の溝Cが形成されている。なお、金属部材10aの大きさは、例えば、縦200mm程度、横50mm程度、厚さ10mm程度であり、溝Cの大きさは、例えば、幅5mm程度、深さ1.5mm程度である。ここで、溝Cの両側面Wは、
図2に示すように、金属部材10aの表面に対して垂直に設けられている。また、金属部材10aは、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、ステンレスのような鉄合金、銅、銅合金、チタン(チタニウム)、チタン合金、ニッケル、ニッケル合金等の金属材料により構成されている。
【0026】
また、金属部材10aにおけるエラストマー部材20aが接触する表面、すなわち、金属部材10aの溝Cの内部の表面には、
図2に示すように、粗面部R及び非粗面部Fが設けられている。
【0027】
粗面部Rは、
図2に示すように、溝Cの底面Bに設けられている。また、粗面部Rは、金属部材からなる互いに直径の異なる複数の粒状体Gが不規則に積み重なった堆積構造Sを有している(
図3参照)。ここで、粗面部Rは、後述するように、レーザー光Lの照射により形成され、それにより形成された堆積構造Sでは、
図3に示すように、複数の粒状体Gが不規則に積み重なっているので、面内異方性がなく、表面形状に方向性を有していない。なお、粒状体Gの直径は、例えば、1μm〜100μm程度である。
【0028】
非粗面部Fは、
図2に示すように、溝Cの両側面Wにそれぞれ設けられている。また、各非粗面部Fは、閉じた形状の環状に設けられ、その表面にレーザー光Lが照射されていなく、堆積構造Sを有していない。ここで、非粗面部Fの表面の算術平均粗さRaは、例えば、1.6μm以下になっている。なお、本実施形態では、閉じた形状として環状を例示したが、閉じた形状としては、例えば、8の字状のような連環状等であってもよい。
【0029】
エラストマー部材20aは、
図1に示すように、平面視で環状に設けられている。また、エラストマー部材20aは、
図2に示すように、横断面視で略凸の字状に設けられている。ここで、エラストマー部材20aは、例えば、ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオリド−テトラフルオロエチレン共重合体、ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオリド共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルエーテル共重合体等を主成分とする含フッ素エラストマー組成物を架橋したフッ素ゴムにより構成されている。
【0030】
上記構成の複合シール構造体30aは、例えば、半導体製造装置用のゲートシール等に用いることができる。
【0031】
なお、本実施形態では、粗面部Rが溝Cの底面B全体に設けられた複合シール構造体30aを例示したが、
図4及び
図5に示すように、粗面部Rが溝Cの底面Bの一部に設けられた複合シール構造体30bであってもよい。ここで、
図4は、
図2に相当し、複合シール構造体30aの第1の変形例である複合シール構造体30bの断面図である。また、
図5は、複合シール構造体30bを構成する金属部材10bの溝Cの底面B及び両側面Wを示す上面図である。
【0032】
具体的に複合シール構造体30bは、
図4に示すように、板状の金属部材10bと、金属部材10bの溝Cの内部に接合されたエラストマー部材20bとを備えている。
【0033】
金属部材10bは、
図4及び
図5に示すように、環状の溝Cの底面Bに互いに並行に延びるように複数の非粗面部Fが設けられ、隣り合う非粗面部F同士の間が粗面部Rになっており、それ以外の構成が金属部材10aと実質的に同じになっている。
【0034】
エラストマー部材20bは、
図4に示すように、その下部が金属部材10bの溝Cに嵌合しており、それ以外の構成がエラストマー部材20aと実質的に同じになっている。
【0035】
上述した複合シール構造体30bの構成によれば、非粗面部Fが溝Cの両側面Wだけでなく、底面Bにも互いに並行に延びるように複数設けられているので、溝Cの底面Bにおいて、シール性を向上させることができる。
【0036】
また、本実施形態では、粗面部Rが溝Cの底面Bに設けられた複合シール構造体30aを例示したが、
図6に示すように、粗面部Rが溝Cの底面B及び両縁部Eの窪んだ表面に設けられた複合シール構造体30cであってもよい。ここで、
図6は、
図2に相当し、複合シール構造体30aの第2の変形例である複合シール構造体30cの断面図である。
【0037】
具体的に、複合シール構造体30cは、
図6に示すように、板状の金属部材10cと、金属部材10cの溝Cの内部に接合されたエラストマー部材20cとを備えている。
【0038】
金属部材10cは、
図6に示すように、溝Cの両縁部Eが金属部材10cの表面よりも(例えば、0.3mm〜0.5mm程度)窪み、その窪んだ表面に粗面部Rが設けられており、それ以外の構成が金属部材10aと実質的に同じになっている。
【0039】
エラストマー部材20cは、
図6に示すように、その下部が金属部材10cの溝C及び溝Cの両縁部Eの窪んだ部分に嵌合しており、それ以外の構成がエラストマー部材20aと実質的に同じになっている。
【0040】
上述した複合シール構造体30cの構成によれば、溝Cの両側面Wが金属部材10cの表面に対して垂直に設けられ、溝Cの両縁部Eの窪んだ表面に粗面部Rが設けられているので、溝Cの両縁部Eにおいて、金属部材10cにエラストマー部材20cを接合することができる。これにより、エラストマー部材20cと金属部材10cとの間に形成され得る隙間の最大深さが金属部材10cの溝Cの深さでなく、溝Cの両縁部Eの窪んだ表面の窪みの深さになるので、エラストマー部材20cと金属部材10cとの間に隙間が形成されても、その隙間を目立たなくすることができる。
【0041】
次に、本実施形態の複合シール構造体30aの製造方法について、
図7及び
図8を用いて説明する。ここで、
図7は、複合シール構造体30aの製造方法における金属部材作製工程を示す断面図である。また、
図8は、複合シール構造体30aの製造方法における接合成形工程を示す断面図である。なお、本実施形態の複合シール構造体30aの製造方法は、金属部材作製工程及び接合成形工程を備える。
【0042】
<金属部材作製工程>
まず、環状の溝Cが表面に予め形成されたアルミニウム合金板の溝Cの底面に対して、例えば、パルス発振のレーザー光Lを溝Cの周方向に走査しながら照射し、その照射領域を溝Cの幅方向に所定ピッチで1走査単位ずつずらすことにより、溝Cの底面B全体に堆積構造Sを有する粗面部Rを形成して、金属部材10aを作製する(
図7参照)。ここで、レーザー光Lは、例えば、平均出力が20W〜100Wであり、パルス幅が80nsec〜150nsecである。また、レーザー光Lの照射走査条件としては、アルミニウム合金板の表面において、例えば、30μm〜60μmのスポット直径にレーザーLを集光し、パルス間隔を、例えば、スポット直径の0.1倍〜0.4倍とするように周方向に走査し、溝Cの幅方向に沿う所定ピッチを、例えば、スポット直径の0.1倍〜1.5倍とするように走査する。
【0043】
<接合成形工程>
上記金属部材作製工程で作製された金属部材10aの溝Cの内部に、
図8に示すように、エラストマー組成物20を配置した後に、下側金型Ma及び上側金型Mbを介してエラストマー組成物20を加熱及び加圧することにより、粗面部Rにエラストマー組成物20を食い込ませると共に、エラストマー組成物20を架橋(硬化)して、金属部材10aの溝Cの底面B(粗面部R)に接合されたエラストマー部材20aを形成する(コンプレッション成形)。ここで、エラストマー組成物20には、架橋剤(硬化剤)、架橋助剤、充填剤及びその他の添加剤等が含まれている。
【0044】
なお、本実施形態では、上記のような接合成形工程を備える製造方法を例示したが、この接合成形工程の代わりに、金属部材10aの溝Cの内部に溶融したエラストマー組成物を圧入した後に、そのエラストマー組成物を架橋することにより、金属部材10aの溝Cの底面B(粗面部R)に接合されたエラストマー部材20aを形成する圧入架橋工程を備えてもよい(インジェクション成形)。
【0045】
以上のようにして、本実施形態の複合シール構造体30aを製造することができる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態の複合シール構造体30aによれば、金属部材10aにおけるエラストマー部材20aが接触する表面には、金属部材10aからなる粒状体Gの堆積構造Sを有する粗面部Rと、その堆積構造Sを有しない閉じた形状の環状の非粗面部Fとが設けられている。ここで、堆積構造Sを有する粗面部Rでは、金属部材10aからなる互いに直径の異なる複数の粒状体Gが不規則に積み重なっているので、金属部材10aの表面に積み重なった複数の粒状体Gの一部の集合とエラストマー部材20aとの局所的な接合が金属部材10aの接合表面全体に不規則(ランダム)に配置している。これにより、粗面部Rにおいて、金属部材10aとエラストマー部材20aとの接合強度を接合表面に沿う全方向で揃えることができるので、面内異方性を抑制して、金属部材10aとエラストマー部材20aとの接合強度を確保することができる。また、堆積構造Sを有しない非粗面部Fでは、金属部材10aの表面が平滑になっているので、金属部材10aとエラストマー部材20aとを密着させることができる。これにより、金属部材10aにエラストマー部材20aを介して接する空間が、閉じた形状の環状の非粗面部Fを挟んで環内側と環外側とに分離されるので、シール性を維持することができる。したがって、金属部材10aにおけるエラストマー部材20aが接触する表面に設けられた粗面部R及び非粗面部Fによって、金属部材10aにエラストマー部材20aを接合した複合シール構造体30aにおいて、シール性を維持して、金属部材10aとエラストマー部材20aとの接合強度を確保することができる。
【0047】
また、本実施形態の複合シール構造体30aによれば、エラストマー部材20aが金属部材10aの表面に形成された環状の溝Cの内部に接合されているので、金属部材10aにエラストマー部材20aを容易に固定することができる。
【0048】
また、本実施形態の複合シール構造体30aによれば、粗面部Rが溝Cの底面Bに設けられ、非粗面部Fが溝Cの両側面Wに設けられているので、金属部材10aの溝Cの内部表面でレーザー光Lが照射し易い溝Cの底面Bに、レーザー光Lを照射することにより、金属部材10aの溝Cの底面Bに粗面部Rを容易に形成することができる。
【0049】
また、本実施形態の複合シール構造体30aによれば、エラストマー部材20aが含フッ素エラストマー組成物により構成されているので、一般的に接着剤で接着し難い含フッ素エラストマー組成物20からなるエラストマー部材20aであっても、金属部材10aに強固に接合することができる。
【0050】
また、本実施形態の複合シール構造体30aによれば、粗面部Rがレーザー光Lの照射により形成されているので、レーザー光Lの照射により溶融した金属部材10aの一部がその周りにランダムに飛散して凝固することにより、複数の粒状体Gが不規則に積み重なった堆積構造Sを金属部材10aの溝Cの底面Bに形成することができる。
【0051】
《第2の実施形態》
図9〜
図11は、本発明に係る複合シール構造体の第2の実施形態を示している。ここで、
図9は、
図2に相当し、本実施形態の複合シール構造体30dの断面図である。なお、以下の各実施形態において、
図1〜
図8と同じ部分については同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0052】
上記第1の実施形態では、金属部材10aの溝Cの底面Bに粗面部Rが設けられた複合シール構造体30aを例示したが、本実施形態では、金属部材10dの溝Cの両側面Wに粗面部Rが設けられた複合シール構造体30dを例示する。
【0053】
複合シール構造体30dは、
図9に示すように、板状の金属部材10dと、金属部材10dの溝Cの内部に接合されたエラストマー部材20dとを備えている。
【0054】
金属部材10dは、
図9に示すように、溝Cの両側面Wに粗面部Rが設けられ、溝Cの底面Bに非粗面部Fが設けられており、それ以外の構成が金属部材10aと実質的に同じになっている。
【0055】
エラストマー部材20dは、
図9に示すように、その下部が金属部材10dに嵌合しており、それ以外の構成がエラストマー部材20aと実質的に同じになっている。
【0056】
上記構成の複合シール構造体30dは、例えば、半導体製造装置用のゲートシール等に用いることができる。
【0057】
なお、本実施形態では、非粗面部Fが溝Cの底面B全体に設けられた複合シール構造体30dを例示したが、
図10及び
図11に示すように、非粗面部Fが溝Cの底面Bの一部に設けられた複合シール構造体30eであってもよい。ここで、
図10は、
図2に相当し、複合シール構造体30dの変形例である複合シール構造体30eの断面図である。また、
図11は、複合シール構造体30eを構成する金属部材10eの溝Cの底面B及び両側面Wを示す上面図である。
【0058】
具体的に複合シール構造体30eは、
図10に示すように、板状の金属部材10eと、金属部材10eの溝Cの内部に接合されたエラストマー部材20eとを備えている。
【0059】
金属部材10eは、
図10及び
図11に示すように、環状の溝Cの底面Bに互いに並行に延びるように複数の非粗面部Fが設けられ、隣り合う非粗面部F同士の間が粗面部Rになっており、それ以外の構成が金属部材10aと実質的に同じになっている。
【0060】
エラストマー部材20eは、
図10に示すように、その下部が金属部材10eの溝Cに嵌合しており、それ以外の構成がエラストマー部材20aと実質的に同じになっている。
【0061】
上述した複合シール構造体30eの構成によれば、金属部材10eの溝の底面Bにおいて、互いに並行に延びるように複数の非粗面部Fが設けられ、それらの複数の非粗面部Fの間に粗面部Rが設けられているので、溝Cの底面Bにおいて、金属部材10eとエラストマー部材20eとの接合強度を複合シール構造体30dよりも向上させることができる。
【0062】
本実施形態の複合シール構造体30dは、上記第1の実施形態の複合シール構造体30aの製造方法における金属部材作製工程において、環状の溝Cが表面に予め形成されたアルミニウム合金板を斜めに保持した状態で、溝Cの各側面Wにレーザー光Lを照射して、金属部材10dを作製した後に、上記第1の実施形態の複合シール構造体30aの製造方法と同様に、接合成形工程を行うことにより製造することができる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態の複合シール構造体30dによれば、金属部材10dにおけるエラストマー部材20dが接触する表面には、金属部材10dからなる粒状体Gの堆積構造Sを有する粗面部Rと、その堆積構造Sを有しない閉じた形状の環状の非粗面部Fとが設けられている。ここで、堆積構造Sを有する粗面部Rでは、金属部材10dからなる互いに直径の異なる複数の粒状体Gが不規則に積み重なっているので、金属部材10dの表面に積み重なった複数の粒状体Gの一部の集合とエラストマー部材20dとの局所的な接合が金属部材10dの接合表面全体に不規則(ランダム)に配置している。これにより、粗面部Rにおいて、金属部材10dとエラストマー部材20dとの接合強度を接合表面に沿う全方向で揃えることができるので、面内異方性を抑制して、金属部材10dとエラストマー部材20dとの接合強度を確保することができる。また、堆積構造Sを有しない非粗面部Fでは、金属部材10dの表面が平滑になっているので、金属部材10dとエラストマー部材20dとを密着させることができる。これにより、金属部材10dにエラストマー部材20dを介して接する空間が、閉じた形状の環状の非粗面部Fを挟んで環内側と環外側とに分離されるので、シール性を維持することができる。したがって、金属部材10dにおけるエラストマー部材20dが接触する表面に設けられた粗面部R及び非粗面部Fによって、金属部材10dにエラストマー部材20dを接合した複合シール構造体30dにおいて、シール性を維持して、金属部材10dとエラストマー部材20dとの接合強度を確保することができる。
【0064】
また、本実施形態の複合シール構造体30dによれば、エラストマー部材20dが金属部材10dの表面に形成された環状の溝Cの内部に接合されているので、金属部材10dにエラストマー部材20dを容易に固定することができる。
【0065】
また、本実施形態の複合シール構造体30dによれば、粗面部Rが溝Cの両側面Wに設けられ、非粗面部Fが溝Cの底面Bに設けられているので、金属部材10dの溝Cの内部表面でレーザー光Lが照射し難い溝Cの各側面Wであっても、レーザー光Lの照射方向に対して金属部材10dの表面が傾くように金属部材10dを支持した状態で、金属部材10dの溝Cの各側面Wにレーザー光Lを照射することにより、金属部材10dの溝Cの各側面Wに粗面部Rを形成することができる。
【0066】
また、本実施形態の複合シール構造体30dによれば、エラストマー部材20dが含フッ素エラストマー組成物により構成されているので、一般的に接着剤で接着し難い含フッ素エラストマー組成物20からなるエラストマー部材20dであっても、金属部材10dに強固に接合することができる。
【0067】
また、本実施形態の複合シール構造体30dによれば、粗面部Rがレーザー光Lの照射により形成されているので、レーザー光Lの照射により溶融した金属部材10dの一部がその周りにランダムに飛散して凝固することにより、複数の粒状体Gが不規則に積み重なった堆積構造Sを金属部材10dの溝Cの両側面Wに形成することができる。
【0068】
《第3の実施形態》
図12及び
図13は、本発明に係る複合シール構造体の第3の実施形態を示している。ここで、
図12は、
図2に相当し、本実施形態の複合シール構造体30fの断面図である。
【0069】
上記第1及び第2の実施形態では、金属部材10a〜10eの溝Cの各側面Wが金属部材10a〜10eの表面に対して垂直に設けられた複合シール構造体30a〜30eを例示したが、本実施形態では、金属部材10fの溝Cの各側面Wが金属部材10fの表面に対して傾斜して設けられた複合シール構造体30fを例示する。
【0070】
複合シール構造体30fは、
図12に示すように、板状の金属部材10fと、金属部材10fの溝Cの内部に接合されたエラストマー部材20fとを備えている。
【0071】
金属部材10fは、
図12に示すように、溝Cの両側面Wが溝Cの底面Bに向かって溝幅が狭くなるように金属部材10fの表面に対してθ=45°程度に傾斜し、その傾斜した両側面Wに粗面部Rが設けられ、溝Cの底面Bに非粗面部Fが設けられており、それ以外の構成が金属部材10aと実質的に同じになっている。
【0072】
エラストマー部材20fは、
図12に示すように、その下部が金属部材10fの溝Cに嵌合しており、それ以外の構成がエラストマー部材20aと実質的に同じになっている。
【0073】
上記構成の複合シール構造体30fは、例えば、半導体製造装置用のゲートシール等に用いることができる。
【0074】
なお、本実施形態では、金属部材10fの溝Cの両側面Wが金属部材10fの表面に対して比較的高角度に傾斜した複合シール構造体30fを例示したが、
図13に示すように、金属部材10gの溝Cの両側面Wが金属部材10gの表面に対して比較的低角度に傾斜した複合シール構造体30gであってもよい。ここで、
図13は、
図2に相当し、複合シール構造体30fの変形例である複合シール構造体30gの断面図である。
【0075】
具体的に複合シール構造体30gは、
図13に示すように、板状の金属部材10gと、金属部材10gの溝Cの内部に接合されたエラストマー部材20gとを備えている。
【0076】
金属部材10gは、
図13に示すように、溝Cの両側面Wが溝Cの底面Bに向かって溝幅が狭くなるように金属部材10fの表面に対してθ=30°程度に傾斜し、その傾斜した両側面Wに粗面部Rが設けられ、溝Cの底面Bに非粗面部Fが設けられており、それ以外の構成が金属部材10aと実質的に同じになっている。
【0077】
エラストマー部材20gは、
図13に示すように、その下部が金属部材10gの溝Cに嵌合しており、それ以外の構成がエラストマー部材20aと実質的に同じになっている。
【0078】
上述した複合シール構造体30gの構成によれば、金属部材10gの溝Cの両側面Wが金属部材10gの表面に対して比較的低角度に傾斜しているので、堆積構造Sを有する粗面部Fを形成するためのレーザー光Lの照射を複合シール構造体30fの場合よりも容易にすることができる。
【0079】
本実施形態の複合シール構造体30fは、上記第1の実施形態の複合シール構造体30aの製造方法における金属部材作製工程において、アルミ合金板の表面に予め形成する環状の溝Cの横断面形状を変更し、溝Cの傾斜した各側面Wにレーザー光Lを斜めに照射して、金属部材10fを作製した後に、上記第1の実施形態の複合シール構造体30aの製造方法と同様に、接合成形工程を行うことにより製造することができる。
【0080】
以上説明したように、本実施形態の複合シール構造体30fによれば、金属部材10fにおけるエラストマー部材20fが接触する表面には、金属部材10fからなる粒状体Gの堆積構造Sを有する粗面部Rと、その堆積構造Sを有しない閉じた形状の環状の非粗面部Fとが設けられている。ここで、堆積構造Sを有する粗面部Rでは、金属部材10fからなる互いに直径の異なる複数の粒状体Gが不規則に積み重なっているので、金属部材10fの表面に積み重なった複数の粒状体Gの一部の集合とエラストマー部材20fとの局所的な接合が金属部材10fの接合表面全体に不規則(ランダム)に配置している。これにより、粗面部Rにおいて、金属部材10fとエラストマー部材20fとの接合強度を接合表面に沿う全方向で揃えることができるので、面内異方性を抑制して、金属部材10fとエラストマー部材20fとの接合強度を確保することができる。また、堆積構造Sを有しない非粗面部Fでは、金属部材10fの表面が平滑になっているので、金属部材10fとエラストマー部材20fとを密着させることができる。これにより、金属部材10fにエラストマー部材20fを介して接する空間が、閉じた形状の環状の非粗面部Fを挟んで環内側と環外側とに分離されるので、シール性を維持することができる。したがって、金属部材10fにおけるエラストマー部材20fが接触する表面に設けられた粗面部R及び非粗面部Fによって、金属部材10fにエラストマー部材20fを接合した複合シール構造体30fにおいて、シール性を維持して、金属部材10fとエラストマー部材20fとの接合強度を確保することができる。
【0081】
また、本実施形態の複合シール構造体30fによれば、エラストマー部材20fが金属部材10fの表面に形成された環状の溝Cの内部に接合されているので、金属部材10fにエラストマー部材20fを容易に固定することができる。
【0082】
また、本実施形態の複合シール構造体30fによれば、粗面部Rを形成する溝Cの両側面Wが金属部材10fの表面に対して傾斜しているので、粗面部Rを形成する際に照射するレーザー光Lが溝Cの各側面Wに照射し易くなり、金属部材10fの溝Cの各側面Wに粗面部Rを容易に形成することができる。
【0083】
また、本実施形態の複合シール構造体30fによれば、エラストマー部材20fが含フッ素エラストマー組成物により構成されているので、一般的に接着剤で接着し難い含フッ素エラストマー組成物20からなるエラストマー部材20fであっても、金属部材10fに強固に接合することができる。
【0084】
また、本実施形態の複合シール構造体30fによれば、粗面部Rがレーザー光Lの照射により形成されているので、レーザー光Lの照射により溶融した金属部材10fの一部がその周りにランダムに飛散して凝固することにより、複数の粒状体Gが不規則に積み重なった堆積構造Sを金属部材10fの溝Cの両側面Wに形成することができる。
【0085】
《その他の実施形態》
上記各実施形態では、含フッ素エラストマー組成物からなるエラストマー部材を備えた複合シール構造体を例示したが、本発明は、これに限定されるものでなく、エラストマー部材は、例えば、シリコーンゴム組成物、ニトリルゴム組成物、エチレン−プロピレンゴム組成物等を架橋(加硫)したものでもよい。
【0086】
また、上記各実施形態では、半導体製造装置用のゲートシールに用いられる複合シール構造体を例示したが、本発明の複合シール構造体は、例えば、内燃機関のシリンダーヘッド等にも適用することができる。