(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
2本の同軸電線からなる同軸電線組を2組以上含み、前記2組以上の同軸電線組を外被シースで覆ってなる多芯通信ケーブルであって、前記同軸電線は、中心導体と、絶縁体と、金属細線を横巻きした外部導体と、片面に融着層を有する樹脂テープの該融着層を外部導体側にして横巻きした外被体とをその順で有し、前記樹脂テープの横巻ピッチが、前記金属細線の横巻ピッチの1/5〜1/2の範囲内であり、前記金属細線と前記樹脂テープとが前記融着層を介して接着されている、ことを特徴とする多芯通信ケーブル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術について、特許文献1のケーブルは、柔軟性が乏しく、耐屈曲性が不十分であった。例えば、同じ部位に繰り返し曲げ応力を加えると、同軸ケーブルの金属テープに小さな破損が生じることがあり、その破損部を起点として曲げ応力が集中しやすくなる。その結果、外部導体の破壊につながるおそれがある。このような耐屈曲性が不十分な同軸ケーブルは、同軸ケーブルを複数本集合させて一体化した高い柔軟性をも求められる高周波通信ケーブルには適していない。
【0006】
また、特許文献2の同軸ケーブルは、金属細線が横巻された外周に金属樹脂テープを巻きつけるため、外径が太くなって柔軟性が乏しくなり、集合した多芯ケーブルも太くなって柔軟性が乏しくなるという問題がある。また、端末ストリップ時に金属細線がばらけてしまいやすく、加工性が悪く、短絡のおそれがある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、10Gbps以上の高速デジタル信号を好適に伝送することができるとともに、屈曲させた場合でも特性が低下しにくい柔軟性のある多芯通信ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る多芯通信ケーブルは、2本の同軸電線からなる同軸電線組を2組以上含み、前記2組以上の同軸電線組を外被シースで覆ってなる多芯通信ケーブルであって、前記同軸電線は、中心導体と、絶縁体と、金属細線を横巻きした外部導体と、融着層付きの樹脂テープの該融着層を外部導体側にして横巻きした外被体とをその順で有し、前記金属細線と前記樹脂テープとが前記融着層を介して接着している、ことを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、金属細線と樹脂テープが横巻きされているので、従来の金属テープの縦添え構造や横巻き構造の外部導体と比較して、1.5倍〜2倍以上柔軟性が向上するとともに、応力集中も起き難いので断線もし難くなる。さらに、金属細線と樹脂テープとが融着層を介して接着しているので、端末ストリップ時に金属細線がばらけるのを抑制することができ、加工性が良く、短絡のおそれもない。また、融着層は金属細線の表層だけに融着するので、バルクの金属細線のずれ動きに基づく柔軟性を生じさせることができる。
【0010】
本発明に係る多芯通信ケーブルにおいて、前記樹脂テープの横巻ピッチが、前記金属細線の横巻ピッチの1/5〜1/2の範囲内であることが好ましい。
【0011】
この発明によれば、金属細線を隙間なく押さえることができる。なお、1/2以下とすることにより密着を保つことができるが、1/2を超えると密着が保てなくなることがあり、ケーブルを曲げたときに金属細線を横巻きした外部導体に隙間が生じて高周波伝送特性が悪化することがある。また、1/5未満にしてしまうと生産性が悪くなる。
【0012】
本発明に係る多芯通信ケーブルにおいて、前記樹脂テープが、融着層付きのポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。
【0013】
この発明によれば、融着層付きのPETテープは、硬さや伸びの点で最適であり、厚さは特に限定されないが好ましくは2〜6μmの範囲内である。
【0014】
本発明に係る多芯通信ケーブルにおいて、前記金属細線の直径が、前記絶縁体の外径の1/10〜1/20の範囲内であることが好ましい。
【0015】
この発明によれば、金属細線の直径を上記範囲内とすることにより、金属細線の横巻密度を維持し、良好な高周波伝送特性を維持したままで、断線の発生を抑制することができる。
【0016】
本発明に係る多芯通信ケーブルにおいて、前記外被シースが、内側から外側に向かって、1又は2以上の押さえ巻きテープと、シールド層と、樹脂押し出し層とがその順で有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、10Gbps以上の高速デジタル信号を好適に伝送することができるとともに、屈曲させた場合でも特性が低下しにくい柔軟性のある多芯通信ケーブルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る多芯通信ケーブルの実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態及び図面に記載した形態と同じ技術的思想の発明を含むものであり、本発明の技術的範囲は実施形態の記載や図面の記載のみに限定されるものでない。
【0020】
[多芯通信ケーブル]
本発明に係る多芯通信ケーブル10は、
図1及び
図2に示すように、2本の同軸電線1,1からなる同軸電線組2を2組以上含む多芯通信ケーブル10である。そして、同軸電線1は、中心導体11と、絶縁体12と、金属細線13aを横巻きした外部導体13と、融着層14b付きの樹脂テープ14aの融着層14bを外部導体側にして横巻きした外被体14とをその順で有し、金属細線13aと樹脂テープ14aとが融着層14bを介して融着するように構成されている。
【0021】
この多芯通信ケーブル10は、金属細線13aと樹脂テープ14aが横巻きされているので、従来の金属テープの縦添え構造や横巻き構造の外部導体と比較して、1.5倍〜2倍以上柔軟性が向上するとともに、応力集中も起き難いので断線もし難くなる。さらに、金属細線13aと樹脂テープ14aとが融着層14bを介して接着しているので、端末ストリップ時に金属細線13aがばらけるのを抑制することができ、加工性が良く、短絡のおそれもない。また、融着層14bは金属細線13aの表層だけに融着するので、バルクの金属細線のずれ動きに基づく柔軟性を生じさせることができる。
【0022】
以下、各構成要素について詳しく説明する。
【0023】
<同軸電線>
同軸電線1は、
図1及び
図2に示すように、中心導体11と、中心導体11の外周に長手方向Yに連続した絶縁体12と、その絶縁体12の外周に設けられた外部導体13と、その外部導体13の外周に設けられた外被体14とで構成されている。
【0024】
(中心導体)
中心導体11は、同軸電線1の長手方向Yに延びる1本の素線で構成される、又は複数本の素線を撚り合わせて構成される。素線は、良導電性金属であればその種類は特に限定されないが、銅線、銅合金線、アルミニウム線、アルミニウム合金線、銅アルミニウム複合線等の良導電性の金属導体、又はそれらの表面にめっき層が施されたものを好ましく挙げることができる。高周波用の観点からは、銅線、銅合金線が特に好ましい。めっき層としては、はんだめっき層、錫めっき層、金めっき層、銀めっき層、ニッケルめっき層等が好ましい。素線の断面形状も特に限定されないが、断面形状が円形又は略円形の線材であってもよいし、角形形状であってもよい。
【0025】
中心導体11の断面形状も特に限定されないが、円形(楕円形を含む。)であってもよいし矩形等であってもよい。中心導体11の外径は、電気抵抗(交流抵抗、導体抵抗)が小さくなるように、できるだけ大きいことが望ましく、例えば、0.09〜0.4mm程度を挙げることができる。中心導体11の表面には、必要に応じて絶縁皮膜(図示しない)が設けられていてもよい。絶縁皮膜の種類と厚さは特に限定されないが、例えばはんだ付け時に良好に分解するものが好ましく、熱硬化性ポリウレタン皮膜等を好ましく挙げることができる。
【0026】
(絶縁体)
絶縁体12は、中心導体11の外周に、長手方向Yに連続して設けられている低誘電率の絶縁層である。絶縁体12の材料は特に限定されないが、例えばPFA、ETFE、FEP等の低誘電率のフッ素系樹脂が好ましく、良好な高周波伝送特性を示すことができる。絶縁体12の材料に着色剤を含有させてもよい。こうした絶縁体12の形成方法は特に限定されないが、押し出し、塗布等を挙げることができる。絶縁体12の構造形態は、中実構造でも中空構造でも発泡構造であってもよい。中空構造と発泡構造は、構造体内部に空隙を有するので誘電率をさらに小さくすることができる。絶縁体12の厚さも特に限定されないが、0.2〜0.5mm程度の範囲内とすることが好ましい。
【0027】
(外部導体)
外部導体13は、絶縁体12の外周に設けられている。外部導体13は、後述する全体を覆うシールド層6とは区別して設けられている。この外部導体13は、金属細線13aを横巻きしたもので構成されている。外部導体13の厚さは、使用する金属細線13aの線径や撚り本数によっても異なり、特に限定されない。
【0028】
金属細線13aは、同軸電線の外部導体として誘電体層(絶縁体12)の外周に設けられている良導電性の金属細線であれば特に限定されない。例えば、錫めっき銅線等に代表される各種の金属細線を好ましく用いることができる。金属細線13aの直径も特に限定されないが、例えば0.04〜0.1mm程度の範囲内のものを挙げることができる。金属細線13aの本数は、絶縁体12の外径や予定する同軸電線1の外径等によって任意に選択されるが、後述の実施例のように、直径0.05mmの絶縁体12上に48本の金属細線13aを横巻きして外部導体13とすることができる。
【0029】
金属細線13aを横巻きする際の巻ピッチP1は、絶縁体12の外径によっても異なり、例えば、後述の実施例のように、絶縁体12の外径が0.78mの場合はピッチP1を14mm程度とすることが好ましい。
【0030】
(外被体)
外被体14は、外部導体13の外周に設けられている。この外被体14は、絶縁性の融着層付きの樹脂テープの融着層14bの側を外部導体側にして横巻きして形成されている。外被体14を構成する樹脂テープ14aの材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、エチレン−四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、フッ素化樹脂共重合体(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂:PFA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、等を挙げることができる。硬さや伸びの点において、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等である。これらの樹脂テープは通常は単層であるが、目的に応じて2層以上としてもよい。樹脂テープ14aの厚さは、必要な絶縁耐圧を確保できるだけの厚さであれば特に限定されないが、一例としては、後述の実施例のように、0.004mm程度とすることができる。樹脂テープ14aは着色されていてもよい。着色は、着色剤を樹脂テープ14a内に含有させたり、着色剤を樹脂テープ14a上に塗布や印刷して設けることができる。樹脂テープ14aを着色するによって、得られた同軸電線1に別々の色を付与でき、その色によって個々の役割を持つ同軸電線1を識別することができる。
【0031】
融着層14bは、樹脂テープ14aの片面に設けられている。融着層14bの材質は、熱可塑性樹脂を主体とした樹脂組成物であり、特定の温度以上で架橋反応が起こって接着することができる性質を有するものであることが好ましい。こうした性質を有することにより、融着層付き樹脂テープを融着層14bを外部導体側にして横巻きして設け、その際又はその後に特定の温度以上に加熱し、架橋反応を起こして外部導体13に接着させる。こうすることにより、例えば端末ストリップ時に金属細線がばらけるのを抑制することができ、加工性が良く、短絡のおそれもない。また、融着層14bは金属細線13aの表層だけに融着するので、バルクの金属細線のずれ動きに基づく柔軟性を生じさせることができる。
【0032】
融着層14bの材質としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルイミド樹脂等の熱硬化性樹脂を挙げることができる。これらのうち、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。融着層14bを形成する融着層形成用樹脂組成物には、架橋剤や溶剤が含まれる。また、必要に応じて各種の添加剤が含まれる。それらの架橋剤、溶剤及び添加剤は特に限定されず、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルイミド樹脂等の種類とその要求特性に応じた各種の架橋剤、溶剤及び添加剤が必要に応じて用いられる。融着層14bの厚さも特に限定されないが、例えば、後述の実施例のように、0.001mm程度とすることができる。
【0033】
融着層付き樹脂テープを横巻きする際には巻き応力が加わるが、その際又はその後の加熱によって応力が緩和又は分散されるので、巻き応力の集中による硬直化を緩和でき、柔軟性の観点から好ましいものとなる。
【0034】
なお、横巻き時に、架橋反応させる特定温度よりも低い温度を加えることにより、仮接着状態にして横巻きすることもできる。こうすることにより、横巻きした樹脂テープ14aに巻きずれが生じるのを防ぐことができる。そうした仮接着状態を生じさせる温度としては、融着層14bの架橋反応の生じる温度よりも低い温度であることが好ましい。例えば、「特定の温度以上で架橋反応が起こって接着する」について、融着層形成用樹脂組成物としてポリエステル系熱硬化型樹脂を用いた場合には、例えば、160〜200℃程度で硬化して外部導体13上に接着することができるが、仮接着状態としては、その温度よりも低い、80〜130℃程度でやや硬化して仮接着させることができる。また、他の熱硬化性樹脂では、「特定の温度」が90〜150℃程度のもの(例えば、エポキシ系熱硬化性樹脂、TOMOEGAWA製、エレファンCS)では、50〜70℃程度で仮接着状態とすることができる。融着層付き樹脂テープを横巻きする際に、こうした操作により巻きずれが生じるのを防ぐことができる。仮接着状態と接着状態については、熱天秤を用いて測定した加熱減量曲線でおおよそ評価することができる。例えば、樹脂の硬化挙動は加熱重量減率を硬度化としてみることによって解析することができる。こうした評価により、「仮接着状態温度」と「特定の接着温度」を任意に設計することができ、その温度差が例えば80℃〜120℃の大きいものとしたり、0℃〜50℃程度の小さいものとしたりすることができる。
【0035】
融着層付き樹脂テープを横巻きする際の横巻ピッチP2は、金属細線13aの横巻ピッチP1の1/5〜1/2の範囲内であることが好ましい。こうすることにより、樹脂テープ14aを隙間なく巻くことができるとともに、金属細線13aを押さえることができる。なお、横巻ピッチP1を1/2以下とすることにより、樹脂テープ14a同士の密着を保つことができるが、1/2を超えると密着が保てなくなることがあり、ケーブルを曲げたときに金属細線を横巻きした外部導体に隙間が生じて高周波伝送特性が悪化することがある。1/5未満にしてしまうとピッチP2が小さすぎて生産性が悪くなる。融着層付き樹脂テープの横巻き方向は、上記した金属細線13aの横巻き方向と同じ巻き方向であっても、逆向きの巻き方向であってもよいが、逆向きが好ましい。なお、テープ幅は、巻ピッチや巻きやすさ等によって任意に選択され、例えば後述の実施例のように、3〜10mmの範囲内とすることができる。
【0036】
<多芯通信ケーブル>
多芯通信ケーブル10は、
図1に示すように、芯材3と、芯材3の外周に配置された2組以上の同軸電線組2と、2以上の同軸電線組2を覆い束ねる押さえ巻きテープ5と、押さえ巻きテープ5を覆うシールド層6と、シールド層6を覆う樹脂押し出しシース7とで少なくとも構成されている。なお、2組以上の同軸電線組2を覆う、押さえ巻きテープ5、シールド層6及び樹脂押し出しシース7等を、外被シース4と呼んでもよい。この多芯通信ケーブル10は、上記した同軸電線2本からなる同軸電線組2を2組以上含み、例えば
図1の例では、同軸電線組2が4含まれている態様を示している。同軸電線組2の数は、少なくとも2以上の複数であればよく、上限も特に限定されないが、4〜8程度とすることができる。
【0037】
(芯材)
芯材3は、多芯通信ケーブル10の中心に位置するものであり、種々の態様とすることができる。例えば、巻芯として機能する高張力のテンションメンバとすれば、多芯通信ケーブル10の軸方向の強度と屈曲性を補強するように作用する。その例としては、複数の繊維からなる繊維糸又はその繊維糸を束ねた繊維束が好ましく用いられる。繊維束又は繊維糸を構成する繊維としては、例えば、テトロン(登録商標)等のポリエステル繊維や、ケブラ(登録商標)等の全芳香族ポリアミド繊維や、ベクトラン(登録商標)等のポリアリレート繊維、ガラス繊維等を挙げることができる。また、芯材3は、異なる材質の繊維や、外径の異なる繊維糸を任意に複合させたものであってもよい。芯材3は、これらの繊維束又は繊維糸を集合線、撚り線又は編み込み線にして同心円状(真円形)の断面になっている。なお、「dtex」は繊維糸を重量換算で示すものであり、1dtexは、長さ10000mで1gであることを意味する。
【0038】
芯材3の他の例として、電力線や信号線やドレイン線を任意に選択して束ねたものとしてもよい。これらは多芯通信ケーブル10の用途等の要求に応じて任意に選択することができる。
【0039】
(芯材押さえ巻きテープ)
芯材3は、芯材押さえ巻きテープ8で覆われていることが好ましい。芯材押さえ巻きテープ8としては、芯材3がばらけないように押さえることができるものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエステルテープ等を好ましく挙げることができる。その厚さは特に限定されず、0.003〜0.01mmの範囲内であることが好ましい。こうした芯材押さえ巻きテープ8で巻かれた後の芯材3の外径は、その役割や用途に応じて任意に選択され、特に限定されない。なお、テープ幅は、巻ピッチ等によって任意に選択され、特に限定されない。
【0040】
(外被シース)
外被シース4は、押さえ巻きテープ5、シールド層6及び樹脂押し出しシース7等で構成されている。押さえ巻きテープ5は、2以上の同軸電線組2を覆い束ねるように設けられている。押さえ巻きテープ5は、複数の同軸電線組2がばらけないように押さえることができるものであれば特に限定されないが、ポリエステルテープ、紙テープ等を挙げることができ、特に和紙テープを好ましく挙げることができる。その厚さも特に限定されず、0.003〜0.01mmの範囲内であることが好ましい。テープ幅は、巻ピッチ等によって任意に選択される。なお、押さえ巻きテープ5は、同軸電線組2とともに信号線等が必要に応じて設けられている場合には、それらをまとめて巻き押さえるように作用する。
【0041】
シールド層6は、押さえ巻きテープ5を覆っている。このシールド層6は、上記外部導体13を構成する金属細線と同様のものを編組としたものや横巻きしたものであってもよいし、金属層付絶縁テープ(例えば銅層付きのポリエチレンテレフタレートフィルム等)であってもよいし、それらの両方を組み合わせたものであってもよい。
図1の例では、細線編組をシールド層6として設けている。シールド層6は、上記した外部導体13の金属細線と同様のものを任意に選択して設けることができる。シールド層6の厚さは、金属細線の編組や横巻き又は金属層付き絶縁テープの種類によっても異なるが、それぞれに応じたシールド性能を発揮できる程度の厚さになっていればよく、特に限定されないが、例えば0.05〜0.30mm程度の範囲内である。
【0042】
なお、シールド層6は、単層のシールド層でも2重以上のシールド層でもよい。2層横巻きシールド層についても、各層を同じ方向としても逆方向としてもよい。シールド層を2重の導体横巻きとし、それらを逆方向に横巻きすることにより、断線を発生し難くすることができる。特に、金属テープの縦添えや横巻きによるシールド導体と比較して、断線し難く、耐屈曲特性を向上させることができる。
【0043】
樹脂押し出しシース7は、シールド層6を覆うように設けられている。樹脂押し出しシース7は、上記外被体14と同様、絶縁性があればその材質は特に限定されない。例えば、一般に適用されている種々のものを使用することができ、例えばETFE等のフッ素系樹脂であってもよいし、塩化ビニル樹脂であってもよいし、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂であってもよいし、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂であってもよい。樹脂押し出しシース7の厚さは、例えば0.3〜1.5mm程度の範囲内とすることができる。こうした樹脂押し出しシース7を設けることにより、多芯通信ケーブル10の仕上がり外径は特に限定されない。
【0044】
なお、押し出しシース7に代えて、テープ巻きシースとしてもよい。テープ巻きシースは、同軸電線の絶縁テープとして使用されている各種のものを、必要な特性を満たす範囲で任意に選択して用いることができる。
【0045】
以上説明したように、本発明に係る多芯通信ケーブル10は、10Gbps以上の高速デジタル信号を好適に伝送することができるとともに、屈曲させた場合でも特性が低下しにくい柔軟性のある多芯通信ケーブルを提供することができる。
【実施例】
【0046】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
[実施例1]
先ず、
図2に示す形態の同軸電線1を作製した。各同軸電線1について、中心導体11として、直径0.10mmの錫めっき軟銅線を7本撚りしたAWG30(外径約0.3mm)を用いた。次に、中心導体11の外周に厚さ0.24mmのFEP樹脂(デュポン社製)層を押出し形成して外径を0.78mmにした。次に、外部導体13を形成した。外部導体13は、直径0.05mmの錫めっき軟銅線(金属細線13aであり、TCWと略す。)を48本用いて左横巻きに14mmのピッチP1で巻いた。外部導体13を設けた後の外径は0.88mmであった。その後、外被体14として、厚さ0.004mmで幅4.5mmの融着層付きPFEテープ(樹脂テープ14a)を用い、融着層14bの側を外部導体側にして、外部導体13の巻き方向とは逆の右巻きで巻いた。そのときの巻ピッチP2は4mmとした。各同軸電線1の外径は0.89mmであった。なお、樹脂テープ14aに着色して2本の同軸電線をそれぞれ色分けした。
【0048】
その後、芯材3として、280dtex×3本のアラミド繊維をテンションメンバとして用い、そのテンションメンバを押さえ巻きテープ8で覆い束ねた。その後、上記で得た2本の同軸電線からなる同軸電線組2を4組用い、その芯材3を軸心位置として芯材3の外周に70mmピッチで右撚りした。その後、その4組の同軸電線組2を覆うように幅15mmの和紙テープ5で押さえ巻きした。その後、シールド層6として、直径0.10mmの錫めっき軟銅線を105本用いて右巻きした。シールド層6を設けた後の外径は4.2mmであった。その後、樹脂押し出しシース7として、厚さ0.4mmの軟質PVCを押し出して、最終外径が5.0mmの多芯通信ケーブル10を得た。このとき、外被体の巻ピッチP2/外部導体の巻ピッチP1=4/14、である。
【0049】
[実施例2]
実施例1において、外被体として幅3.5mmの融着層付きPFEテープを3mmのピッチP2で右巻きした。それ以外は実施例1と同じにして、実施例2の多芯通信ケーブル10を作製した。このとき、外被体の巻ピッチP2/外部導体の巻ピッチP1=3/14、である。
【0050】
[実施例3]
実施例1において、外被体として幅7.5mmの融着層付きPFEテープを7mmのピッチP2で右巻きした。それ以外は実施例1と同じにして、実施例3の多芯通信ケーブル10を作製した。このとき、外被体の巻ピッチP2/外部導体の巻ピッチP1=7/14、である。
【0051】
[比較例1]
実施例1において、外被体として幅9.5mmの融着層付きPFEテープを9mmのピッチP2で右巻きした。それ以外は実施例1と同じにして、比較例1の多芯通信ケーブル10を作製した。このとき、外被体の巻ピッチP2/外部導体の巻ピッチP1=9/14、である。
【0052】
[耐屈曲試験]
図3は、多芯通信ケーブル10の柔らかさの測定方法を示す説明図であり、
図4は、その結果を示すグラフである。また、
図5は、多芯通信ケーブル10の柔らかさの他の測定方法を示す説明図であり、
図6は、その結果を示すグラフである。
【0053】
(
図3の測定条件)
長さ500mmの多芯通信ケーブルの両端を固定部41で固定し、上向きに撓んでいる多芯通信ケーブル10の最上点(ほぼ中央部)をループ高さが1/2の高さになるまで押し込み、その際の押し込み荷重を測定した。押し込みの前と後での押し込み長さを測定した。測定位置は、両側の固定部41の中央とした。その結果を
図4に示す。
図4において、「同軸型」とあるのは実施例1の多芯通信ケーブルであり、「STP型」とあるのは、実施例1において、2本の同軸電線からなる同軸電線組に替えて、直径0.10mmの錫めっき軟銅線を7本撚りしたAWG30(外径約0.3mm)を用いた中心導体11の外周に厚さ0.24mmのFEP樹脂(デュポン社製)層を押出し形成して外径を0.78mmにした絶縁電線2本を対撚りし、その外周に外部導体と外被体を構成した電線組を用いたシールドツイストペア型の多芯通信ケーブルである。
【0054】
(
図5の測定条件)
長さ500mmの多芯通信ケーブルの両端を固定部41で固定し、重さ0g、200g、400gのおもり42を湾曲して膨らんだ形状の多芯通信ケーブル10の最下点(ほぼ中央部)にそれぞれ吊す前と後での最大幅を測定した。その結果を
図6に示す。
図6において、「同軸型」とあるので実施例1の多芯通信ケーブルであり、「STP型」とあるのは対撚りした電線組を用いたシールドツイストペア型の多芯通信ケーブルである。
【0055】
[結果]
測定結果より、実施例1の多芯通信ケーブルが柔軟であることがわかった。また、実施例1〜3の多芯通信ケーブルは、比較例1の多芯通信ケーブルに比べて密着が良かった。