特許第6774468号(P6774468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6774468-バイオマス含有供給原料の水素化熱分解 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774468
(24)【登録日】2020年10月6日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】バイオマス含有供給原料の水素化熱分解
(51)【国際特許分類】
   C10G 1/06 20060101AFI20201012BHJP
   C10G 3/00 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   C10G1/06 Z
   C10G3/00 Z
【請求項の数】10
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2018-173431(P2018-173431)
(22)【出願日】2018年9月18日
(62)【分割の表示】特願2017-520771(P2017-520771)の分割
【原出願日】2015年6月29日
(65)【公開番号】特開2019-14906(P2019-14906A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2018年10月11日
(31)【優先権主張番号】14/321,147
(32)【優先日】2014年7月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591002016
【氏名又は名称】ガス、テクノロジー、インスティチュート
【氏名又は名称原語表記】GAS TECHNOLOGY INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス,ラリー,ジー
(72)【発明者】
【氏名】リンク,マーティン,ビー
(72)【発明者】
【氏名】マルカー,テリー,エル
(72)【発明者】
【氏名】ロバート,マイケル,ジェイ
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−523474(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/055527(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/074434(WO,A1)
【文献】 特表2012−530805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス含有供給原料から液体生成物を生成するための方法であって、
水素及び脱酸素化触媒を格納する水素化熱分解反応容器において、前記バイオマス含有供給原料を水素化熱分解して、少なくとも1つの非凝縮性ガス、部分的に脱酸素化された水素化熱分解生成物、及びチャー粒子を含む水素化熱分解反応器生産物を生成するステップと、を含む方法であって、
前記水素化熱分解反応容器は、腐食種、前記脱酸素化触媒の毒、またはそれらの組合せを吸着する能力を有する、炭酸塩を有する鉱物を含む吸着剤をさらに含む、方法。
【請求項2】
前記水素化熱分解反応器生産物から前記チャー粒子の実質的に全てを除去し、減少したチャー含有量を有する精製された水素化熱分解反応器蒸気流を提供することと、
水素及び水素化転化触媒を格納する水素化転化反応容器において、前記精製された水素化熱分解反応器蒸気流の少なくとも一部を水素化転化して、水素化転化反応器生産物を生成することと、
前記水素化転化反応器生産物から実質的に完全に脱酸素化された炭化水素液体及びガス混合物を回収することと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ガス混合物の少なくとも一部を水蒸気改質して、改質水素を生成するステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記水素化熱分解反応容器中に前記改質水素の少なくとも一部を導入するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記水素化熱分解、および水素化転化ステップの後に前記供給原料中の酸素(O)の少なくとも約20%がCO及びCOに変換される、請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記水素化熱分解ステップ及び前記水素化転化ステップの両方が、発熱である、請求項2〜5のいずれ一項に記載の方法。
【請求項7】
前記水素化熱分解反応容器から前記固体床材料の一部を取り出し、前記一部を流動化水素含有ガス流と接触させて、前記水素化熱分解ステップ中に前記固体床材料上に蓄積された、コークス及び炭素をメタンに変換することと、
減少した含有量のコークス及び炭素を有する、前記固体床材料の前記一部を前記水素化熱分解反応容器に返送することと、をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記水素化熱分解ステップが、前記脱酸素化触媒の流動床を使用して実行される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記吸着剤が炭酸カルシウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記バイオマス含有供給原料が、約1000ppm〜約5000ppmの量で全塩化物を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2014年7月1日に出願された米国特許出願第14/321,147号の優先権の利益を主張するものであり、その内容は、その全体を参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、都市廃棄物(MSW)及び藻類を含む、種々のバイオマス含有供給原料を高品質液体炭化水素燃料に熱化学的に(熱分解的に)変換するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
バイオマスは、生きている有機体または死んだ有機体由来の生物学的材料を指し、リグノセルロース系材料(例えば、木材)、水生材料(例えば、藻類、水生植物、及び海藻)、ならびに動物の副産物及び廃棄物(例えば臓物、脂肪、及び下水汚泥)を含む。バイオマスの従来の熱分解、通常、不活性雰囲気下で行われる急速熱分解において、高密度で、酸性の、反応性液体バイオ油生成物が得られ、これはプロセス中に形成される、水、油、及びチャーを含有する。バイオマス中に存在する酸素の多くは、最終的にバイオ油中に存在し、これにより、その化学反応性を増加させる。
【0004】
従来のバイオ油の特性全酸価(TAN)は100〜200の範囲であり、それを非常に腐食性にする。さらに、この生成物は、重合されやすく、一般に、水混和性及び非常に高い酸素含有量(約40重量%程度)のため、石油炭化水素と非相容性であり、低発熱量を有する。従来の熱分解の不安定なバイオ油は、時間と共に増稠しやすく、親水性及び疎水性相が形成される点まで反応することもある。その結果、この生成物の輸送及び利用は、問題を含む。また、通常、急速熱分解を含む、従来の熱分解プロセスにおいて生じる、逆行性反応により、この生成物を液体炭化水素燃料にアップグレードすることは、困難である。メタノールまたは他のアルコールによる希釈は、形成されたバイオ油の活性及び粘度を低下させることが示されているが、この手法は、熱分解液体を安定させるのに必要な大量の回収不能なアルコールのため、実用的または経済的に現実的であるとみなされない。
【0005】
従来の熱分解によって生成される、チャーのそれがまだ蒸気相中にある間の液体熱分解生成物からの除去は、さらなる技術的な課題を提示する。熱分解蒸気中の著しい量の酸素及びフリーラジカルは、高反応性のままであり、フィルタまたは他の固体分離器の表面上のチャー粒子と接触すると、ピッチ様物質を形成する。したがって、高温熱分解蒸気からチャーを分離するために使用される装置は、このような装置の表面上のチャーの層上及びその中、ならびに多孔性フィルタ要素の孔内で生じる、チャー及び熱分解蒸気成分の反応物により、急速に塞がれることがある。最終的に、従来の水素化転化プロセスを使用して、熱分解油をアップグレードすることが、大量のHを消費し、生成物の品質要件を満たすのに必要な高水素圧を含む、極度のプロセス条件が、このようなプロセスを不経済にすることに留意すべきである。この反応は、必要とされる高圧のため、過剰なHが消費されると同時に過剰な水が生成されるという点で本質的に不均衡である。加えて、従来の水素化転化反応器は、熱分解油中に存在する、または触媒作用の結果として生成されるコークスからの反応性コークス前駆体により、高差圧を急速に引き起こすことがある。
【0006】
近年、バイオマス熱分解(すなわち、水素化熱分解)における水素の使用が開示されている。例えば、米国特許第8,492,600号に教示される水素化熱分解プロセスは、上述のものを含む、従来の急速熱分解プロセスの多くの欠点を解決し、多くの他の処理上の利点をもたらすことが見出されている。
【0007】
種々の供給原料は、バイオマスを含み得るが、多くの場合、このような供給原料を、輸送燃料に有用な炭化水素含有生成物を含むより高価値の液体生成物に変換することに技術的課題を提示する、著しい量の他の材料も含有する。例えば、都市廃棄物(MSW)は、本質的にコストのかからない供給源であるバイオマス(例えば、廃木材、庭廃棄物、及び農業廃棄物)ならびにバイオマス由来材料(例えば、紙、ボール紙、中密度繊維板(MDF)、及びパーティクルボード)を提示することができる。しかしながら、MSWはまた、著しい量の非生物学的材料、例えば、プラスチック、ガラス、廃金属なども含有し得、これらは石油または無機物由来である。燃焼後に残される不燃性固体粉末残留物(一般に、金属及び/または金属酸化物を含有する)を指す灰は、非生物学的材料としてバイオマス中にある程度存在する。しかしながら、MSW中の他の非生物学的材料の存在は、MSWのバイオマス部分のみのものに対して、より高い全灰分をもたらすことがある。MSW中の非生物学的材料は、プロセスのアップグレードを複雑にし、これは、水素存在下での熱分解(水素化熱分解)、及び輸送燃料留分などのより高価値の液体の生成をもたらす任意の他の処理ステップを伴うものを含む。
【0008】
MSW中の非生物学的材料の存在は、MSWのバイオマス部分のみの原子比と比較して、供給原料中に存在する全原子比をさらに変えることがある。例えば、供給原料中の炭素に対する酸素の比を減少させ、これにより、熱分解及び/または次の処理中に生じる反応物に影響を及ぼし得る。その結果、このことが、得られた生成物の品質に悪影響を及ぼし、かつ/または所与の品質及び収率の生成物を得ることに関連するコストを著しく増大させることがある。MSW供給原料のバルク機械的特性はまた、所望の変換ステップ(例えば、流動床水素化熱分解)を行うために加熱されるので、リグノセルロース系材料などの純粋なバイオマス含有供給原料の機械的特性とは著しく異なり得る。MSWのこれらの特徴を補うために必要である、異なるプロセス条件及び/または付加的なプロセスステップは、従来の供給に対して、非常に変動し得る。これは、特に、水素化熱分解及び任意の他のアップグレードステップを含む、MSWを液体生成物に変換するプロセスの場合である。
【0009】
近年、より高価値の液体を生成するためのバイオマスの供給源として、藻類及びアオウキクサ(海藻)の使用に関する可能性が注目を得ている。しかしながら、塩水中で成長する藻類は、バイオマスの他の供給源(例えば、木材)に対して、大量のナトリウム及び塩素を含有し得る。ナトリウムは、バイオマス変換プロセス、例えば触媒水素化熱分解及び/または触媒水素化転化(例えば、水素化脱酸素)において使用される触媒の活性に有害になり得る潜在的触媒毒である。水素環境下、特に水素化活性を有する触媒の存在下での塩素の存在は、塩化水素ガス(HCl)の形成をもたらすことがある。また、水が存在する場合、金属表面上のHCl水溶液(すなわち、塩酸)の凝縮は、金属製プロセス容器の急速な腐食、さらには破滅的な損傷をもたらすことがある。ステンレス鋼より優れたよりハイグレードの冶金(例えば、ハステロイ(登録商標))は、ある程度の保護を付与することができるが、資本的支出を著しく増大させるに過ぎない。MSW供給原料に関して、水素化条件下の比較的多量の他のヘテロ原子、例えば硫黄及び窒素の存在は、HS及びNHの形成をもたらし、それらの腐食性及び潜在的な健康への有害な影響の点から、同様に懸念を呈する。
【0010】
このため、MSW及び藻類は、関連する温室効果ガス(GHG)をほとんどまたは全く排出することなく、グリーンエネルギーを生成するための、魅力的な、低コスト(またはノーコスト)の供給原料を提供するが、それらも上で特定された技術的課題を提示する。その結果、これらの課題の一部もしくは全てに対処するプロセス、特に非生物学的材料を含有する供給原料の水素化熱分解を伴うプロセスに対する当技術分野における要望が存在する。通常なら廃産物とみなされる材料を含み、より高価値の液体(例えば、炭化水素含有液体)を提供する、容易に利用可能な原料を変換する能力は、従来の石油精製プロセスによってコスト競争力を実現する上での大躍進を表す。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、従来の純粋なリグノセルロース系材料と比べてより品質の劣り得る、及び結果として、従来のプロセスを使用しては、より高価値の液体生成物(例えば、輸送燃料)に変換することがより困難であり得る、MSW、藻類、アオウキクサ(海藻)、及び他のバイオマス含有供給原料を前処理するための種々の技術の発見に関連する。通常なら、このような従来のプロセスは、バイオマス単独(例えば、MSWのバイオマス部分)の変換に対して十分であると思われる。本明細書において記載されるバイオマス含有供給原料の前処理は、一般に、供給原料の1つ以上の特徴を変化させ、それをより容易にアップグレードできるようにするために、水素化熱分解ステップ及び任意のさらなるステップの前に行われるステップを含んでもよい。これによって、本発明によるプロセスが、バイオマス含有供給原料が少なくとも前処理ステップ及び次の水素化熱分解ステップに供され、より高価値の液体生成物が得られ、前処理ステップを行わない場合、水素化熱分解ステップ及びプロセスの任意のさらなるステップ後に、資本投入(設備)及び/またはエネルギー投入の追加なしに、同じ液体生成物(すなわち、品質及び収率の両方の点で)を得ることができないものを広範に含むことを意味する。いくつかの実施形態によれば、同等の下流の処理解決策と関連する、追加の資本及び/またはエネルギー投入量は、前処理ステップと関連するそれぞれの資本及びエネルギー投入量を上回る。
【0012】
いくつかの実施形態によれば、前処理ステップは、全プロセスに一体化されてもよく、これは、前処理ステップの1つ以上の生成物(例えば、前反応器プロセス蒸気、または固体の、前処理された供給原料)が、プロセスのさらなるステップ(例えば、水素化熱分解)に連続的に供給されてもよいことを意味する。全プロセスの1つ以上の中間または最終生成物(例えば、水素化熱分解反応器からの改質水素または部分的に使用済みの脱酸素化触媒)を前処理ステップで使用し、さらなる一体化を提供してもよい。他の実施態様において、例えば、前処理ステップの生成物をまず収集し、次いで前処理された生成物を後の(例えば、少なくとも1時間または少なくとも1日の期間後)水素化熱分解ステップに供給することによって、前処理ステップを別々に実行してもよい(すなわち、一体化されないステップとして)。一体化されない前処理ステップの別の例として、水素化熱分解ステップの位置(から例えば、少なくとも1マイルまたは少なくとも100マイル)から遠く離れた位置で、このステップを実行してもよい。
【0013】
いくつかの実施形態によれば、前処理ステップは、バイオマス含有供給原料を化学的に変換することを伴ってもよく、反応器中(例えば、別々の前反応器中、または水素化熱分解反応器中のインサイチュ)で実行してもよい。他の実施態様において、前処理ステップは、バイオマス含有供給原料の特定の成分の物理的分離または分類(例えば、ガラス及び/もしくはプラスチックの除去)のみを伴ってもよい。さらに他の実施形態において、前処理ステップは、化学的変換及び物理的分離の両方を伴ってもよい。特定の実施形態において、バイオマス含有供給原料の前処理に使用される反応器、すなわち、前反応器は、化学的変換及び/または物理的分離に影響を及ぼし、前処理された供給原料(例えば、前反応器蒸気流)を得てもよい。例えば、化学的変換は、水素化熱分解反応器及び任意のさらなるステップにおいて生じるものの前に、少なくとも限られた範囲までの熱分解及び水素化熱分解反応物を含むことができる。物理的分離は、バイオマス含有供給原料の脱揮発を含むことができ、これは、それを熱及び/または流動化ガスに供することによるバイオマス含有供給原料の比較的揮発性の成分の分離(揮発によって)を意味する。
【0014】
このため、本発明の態様は、プロセス、特にバイオマス含有供給原料(例えば、MSW、藻類、またはアオウキクサ(海藻)をより高価値の液体生成物、例えば、所望の化合物(例えば、レボグルコサン)、所望の化合物の種類(例えば、芳香族炭化水素)、または所望の化合物の混合物(例えば、ガソリンもしくはディーゼル燃料沸点範囲炭化水素)を含む生成物に変換するための、一体化された前処理ステップ(例えば、前反応器において生じる脱揮発ステップ)を有するプロセスに関する。
【0015】
より詳細に後述する1つの代表的な実施形態は、水素ならびに前処理触媒、吸着剤、伝熱媒体、及びそれらの混合物からなる群から選択される固体床材料を格納する前反応容器において、バイオマス含有供給原料を脱揮発して、同伴された固体粒子(例えば、固体床材料の粒子及び/またはチャー粒子)を含む前反応器蒸気流を生成することを含むプロセスである。前反応容器は、前反応器から出る前反応器蒸気流の少なくとも一部を水素化熱分解するために使用される、水素化熱分解容器と分離されてもよい。別個の容器を維持することによって、所与のバイオマス含有供給原料を効果的に処理するために必要である、異なる前処理及び水素化熱分解条件を維持することができ、独立して操作することができる。加えて、前反応器蒸気流は、少なくともその一部を水素化熱分解反応容器に導入する前に、多くの処理ステップ(例えば、固体除去、凝縮、加熱、混合など)に供されてもよい。他の実施形態によれば、前反応器及び水素化熱分解反応器は、単一、複合的な前処理/水素化熱分解容器の一部であってもよく、例えば、この容器の前反応器部分は下部にあってもよく、水素化熱分解反応器部分は上部に存在してもよい。この構成は、例えば、前反応器及び水素化熱分解反応器中の条件が著しく異ならず、単一容器内で両方のステップを実施することによって、省エネルギーを実現することができる場合に望ましくなり得る。
【0016】
より詳細に後述する別の代表的な実施形態は、初期供給原料を前処理して、前処理された供給原料を生成することを含むプロセスであり、前処理された供給原料は、初期供給原料より優れた少なくとも1つの改善された特徴を有する。改善された特徴は、減少した非生物学的材料含有量(例えば、減少した灰分)、より高い温度、減少した平均粒径、減少した平均粒子空気動力学径、増加した平均粒子表面積対質量比、減少した平均粒子終端速度、より均一の粒径、減少した腐食種含有量、減少した水素化熱分解触媒毒含有量、及び減少した水素化転化触媒毒含有量からなる群から選択されてもよい。
【0017】
上述のように、脱揮発ステップまたは他の前処理ステップ後の代表的なプロセスは、前反応器蒸気流の少なくとも一部、または水素及び脱酸素化触媒を格納する水素化熱分解反応容器において、上述のように、別の前処理された供給原料の少なくとも一部を水素化熱分解することをさらに含んでもよい。(i)少なくとも1つの非凝縮性ガス(例えば、H、CO、CO、ならびに/または1つ以上の低分子量炭化水素ガス、例えばCH、C、及び/もしくはC)、(ii)部分的に脱酸素化された水素化熱分解生成物(例えば、凝縮性蒸気の形態で)、ならびに(iii)固体チャー粒子を含む、水素化熱分解反応器生産物が生成される。次いで、水素化転化反応容器(または水素化転化ゾーン)出口から凝縮され、次いで相分離されるとき(凝縮された水相から)、水素化熱分解反応器生産物の一部または全てを、水素化転化反応容器(または2つ以上の水素化転化反応容器を直列もしくは並列に含む水素化転化ゾーン)中で水素転化して、酸素含有量をさらに減少させ、高価値の液体生成物(例えば、蒸留による分離後、燃料または燃料添加物として好適である、ガソリン及び/またはディーゼル燃料沸点範囲炭化水素留分を含有する液体生成物)である、実質的に完全に脱酸素化された炭化水素液体を提供してもよい。
【0018】
さらなる実施形態によれば、上述のように供給原料の前処理ステップ及びその結果として改善された特徴は、インサイチュ、つまり、前反応容器及び/または水素化熱分解反応容器内で得ることができる。このような場合、改善された特徴を有する前処理された供給原料は、いかなる中間回収もすることなく、下流の水素化熱分解反応器または水素化転化反応器に直接導入されてもよい。
【0019】
よりさらなる実施形態において、代表的なプロセスは、水素及び脱酸素化触媒を格納する水素化熱分解反応容器において、本明細書において記載されるように前処理された供給原料を水素化熱分解することを含む。特定の実施形態は、水素化転化反応容器(または水素化転化ゾーン)において、本明細書において記載されるように、水素化熱分解反応器生産物の少なくとも一部を水素化転化することをさらに含んでもよい。
【0020】
本開示のこれら及び他の実施形態、態様、特徴、及び利点は、添付の図面と併せて読まれる、その例証された実施形態の以下の詳細な説明から明らかであろう。
【0021】
本発明の例示的実施形態のより完全な理解及びその利点は、添付の図面を考慮して以下の説明を参照することによって得ることができ、図の参照番号の最後の2桁は、同様の特徴を示す。図1〜3は、本発明及び/または関係する原理の例証を提示するために理解されるべきである。説明及び理解を容易にするために、簡略化されたプロセスフロースキームが使用される。ポンプ、加熱器及びいくつかの熱交換器、バルブ、計測装置、ならびに本発明の理解にとって必須ではない他の品目を含む詳細は、示されていない。本開示の知識を有する当業者にとって容易に明らかであるように、本発明の種々の他の実施形態による水素化処理されたバイオ燃料を提供するための方法は、一部、それらの特定の使用により決定される構成及び成分を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本開示の一実施形態による、前反応器及び水素化熱分解反応器を含む、システムの系統図である。
図2】本開示の別の実施形態による、前反応器及び水素化熱分解反応器の代替的なシステムの系統図である。
図3】前反応器及び水素化熱分解反応器、例えば、水素化転化反応器を含むプロセスに一体化される図1及び図2に示される代表的なシステムの系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の態様は、未処理または初期供給原料(例えば、MSWもしくは藻類)をより高価値の液体に変換するための一体化プロセスに関する。「より高価値の液体」という用語は、本明細書において記載されるプロセスの液体生成物を指し、初期供給原料よりも優れた値(例えば、重量基準で)を有し、また一般に前処理された供給原料(例えば、本明細書において記載される前反応器蒸気流または別の前処理された供給原料)よりも優れた水素化熱分解を伴う。代表的なより高価値の液体としては、個々の化合物(例えば、レボグルコサン)、化合物群(例えば、芳香族炭化水素)、及び特定の目的に好適な化合物の混合物(例えば、輸送燃料としての使用に好適またはこのような燃料に配合されるガソリンもしくはディーゼル燃料沸点範囲炭化水素)が挙げられる。代表的な未処理または初期供給原料としては、非生物学的材料(例えば、プラスチックなどの石油由来の材料、またはガラスを含む、金属及び金属酸化物などの地球から抽出される鉱物由来の材料)に加えて、バイオマス(例えば、地球の表面より上または地球の海、川、及び/もしくは湖の中で生存する有機体由来)を含むものが挙げられる。
【0024】
初期供給原料は、例えば、高温(例えば、初期供給原料の含水量を約1重量%未満またはさらに約0.1重量%未満まで減少させるのに十分な時間にわたり約50℃超)で乾燥に供した後、乾燥形態で使用されてもよい。他の実施形態によれば、初期供給原料は、水分(例えば、約1%超の含水量、例えば、約1%〜約10重量%を有する)を含んでもよい。さらに他の実施形態において、初期供給原料は、水性スラリーの形態で使用されてもよい。一般に、本明細書において記載されるように、前反応容器、水素化熱分解反応容器、及び/または水素化転化反応容器のうちの1つ以上における条件下で、水性ガスシフト反応を介して、水素を形成するためのその能力の点から、水の包含が有益となり得るため、本明細書において記載されるプロセスは、極度に乾燥された初期供給原料を必要としない。
【0025】
バイオマス含有の初期供給原料における代表的なバイオマスとしては、硬材(例えば、ホワイトウッド)、軟材、硬材もしくは軟材樹皮、リグニン、藻類、もしくは/またはアオウキクサ(海藻)などの、任意の植物材料または植物材料の混合物を挙げることができる。また、エネルギー作物、または農業残渣(例えば、伐採残渣)もしくは他の種類の植物廃棄物もしくは植物由来の廃棄物を植物材料として使用してもよい。特定の例示的な植物材料としては、「意図的に」エネルギー作物、例えばスイッチグラス、ススキ、及び藻類に加えて、コーンファイバー、コーンストーバー、及びサトウキビバガスが挙げられる。短輪作森林生成物、例えばエネルギー作物としては、ハンノキ、灰、南ブナ、カバノキ、ユーカリ、ポプラ、ヤナギ、カジノキ、オーストラリアブラックウッド、スズカケノキ、及びウスバギリの変種が挙げられる。好適なバイオマスの他の例としては、有機性廃棄物材料、例えば廃棄紙、建設、解体廃棄物、及びバイオスラッジが挙げられる。
【0026】
前反応器における脱揮発及び/または部分的な水素化熱分解
本発明の特定の態様は、バイオマス含有供給原料から液体生成物を生成するためのプロセスに関する。代表的なプロセスは、固体床材料を格納する前反応容器において、供給原料を水素と接触させて、供給原料を脱揮発及び/または少なくとも部分的に水素化熱分解する(すなわち、水素存在下で、供給原料を少なくとも部分的に熱分解するもしくは熱的に分解する)ことを含む。したがって、プロセスは、水素及び固体床材料を格納する前反応容器において、供給原料を脱揮発することを含んでもよいが、必ずしも脱揮発が水素化熱分解を伴うというわけではない。本開示を参考にする当業者は、前反応器における脱揮発または脱揮発と水素化熱分解との組合せを実現するのに必要な作動パラメータを理解する。特に明記しない限り、「脱揮発」という用語は、脱揮発と水素化熱分解との組合せに加えて、脱揮発のみを共に包含することを意味する。特定の実施形態において、脱揮発は、水素化熱分解を伴わずに実行される。
【0027】
代表的なプロセスの脱揮発ステップは、固体床材料を格納する前反応容器に前反応器ガス及び供給原料を導入することを含んでもよい。前反応器ガス及び供給原料は、前反応器に別個の流れとして導入されてもよく、またはその導入前に混合されてもよい。前反応器に導入される前に混合されるかどうかを問わず、前反応器ガス及び/または供給原料は、例えば、前反応容器の異なる軸方向の高さに対応することができる、複数(すなわち、少なくとも2つ、例えば2〜10)の入口位置に分割され、導かれてもよい。これらの高さのいくつかの部分または全ては、反応器内の固体床材料の床(例えば、流動化粒子床)の高さより下であってもよい。同様に、これらの高さの別の部分または全ては、このような床の高さより上であってもよい。前反応器ガスは、一般に、上述のように、前反応容器が水素を格納し、水素化熱分解が脱揮発を伴うことができるように、水素含有ガスである。他の実施形態によれば、例えば、窒素、酸素、ヘリウム、COなど、及びこれらの混合物を含有する非水素含有前反応器ガスを使用することも可能である。非水素含有前反応器ガスの場合、熱分解(水素化熱分解ではなく)は、前反応器において供給原料の脱揮発を伴ってもよい。
【0028】
前反応器ガスが水素を含有するかどうかを問わず、いくつかの実施形態において、このガスは、「前反応器流動化ガス」とより記述的に呼ぶことができるように、固体床材料を流動化するために使用されてもよい。したがって、必要に応じて、前反応器中のチャーに加えて、固体床材料が流動床として、特に、前反応器流動化ガスの空塔ガス速度に応じて、粒状流動化、バブリング、スラッギング、乱流、または急速流動床として存在してもよい。このような流動床システムにおいて、固体粒子の分離を促進するために、前反応器は、有利に、流動床の上の好適な高さ(例えば、輸送離脱高さ、TDHの上)の拡張固体離脱区分(すなわち、流動床の直径または断面積に対して、拡張された反応器直径または断面積の区分)を含んでもよい。他の気固分離装置(例えば、フィルタ、サイクロンなど)を拡張固体離脱区分を使用する代わりに用いてもよいが、組み合わせるのが好ましい。また、前反応器のための循環流動床システムを用いてもよい。
【0029】
全体として、いくつかの実施形態によれば、前反応容器において供給原料を脱揮発するステップは、前反応容器中の供給原料の脱揮発を介して生成されるチャー粒子と共に、供給原料及び固体床材料の流動床を使用して実行されてもよい。前反応容器中の流動化は、バイオマス含有供給原料の特性、前反応容器内の条件、及び使用される特定の流動化ガスを考慮して、所望の流動化の種類(例えば、バブリング床流動化)を行うために有効な空塔速度を有する前反応器流動化ガスによって実行されてもよい。一般に、前反応器流動化ガス、特に水素を含む流動化ガスは、一般に、毎秒約3メートル(m/s)超(例えば、約3m/s〜約25m/s)、通常、約5m/s超(例えば、約5m/s〜約15m/s)、及び多くの場合、約7m/s超(例えば、約7m/s〜約12m/s)の空塔速度を有する。
【0030】
他の実施態様において、前反応器は、本明細書において記載されるように、流動化されない固体床材料を格納してもよい。例えば、加熱ボールミルを使用して、周囲圧または高圧で(例えば、純粋な水素、水素含有ガス、または脱揮発を実現するために使用される他のガスの存在下で)供給原料を脱揮発してもよい。脱揮発は、例えば、高圧の水素存在下で実施されてもよい。
【0031】
固体床材料は、前処理触媒、吸着剤、伝熱媒体、及びそれらの混合物から選択されてもよい。好適な固体床材料は、二重または多機能を有するものを含む。例えば、「前処理触媒」はまた、前反応器にまたはそれから伝熱するように作用してもよく、特にバイオマスを含有する初期供給原料の粒子に伝熱するように作用してもよい。同様に、「伝熱媒体」は、前反応器の環境下で不活性であってもよいが、また、前反応器の環境下で任意の反応物または他の成分に対して触媒及び/または吸着能力を有してもよい。特に明記しない限り、「前処理触媒」、「吸着剤」、または「伝熱媒体」という名称はそれぞれ、前反応器の環境下で、純粋に触媒、吸着、または伝熱機能以外の機能を有する固体床材料を含む。しかしながら、代替的実施形態において、固体床材料を前処理触媒にすることはできるが、前反応器の環境下で成分に対して吸着能力を有さず、かつ/または前反応器へもしくはそれから伝熱するように作用しない。同様に、固体床材料を吸着剤にすることはできるが、前反応器の環境下で反応物または他の成分に対して触媒活性を有さず、かつ/または前反応器へもしくはそれから伝熱するように作用しない。同様に、固体床材料を伝熱媒体にすることはできるが、前反応器の環境下で反応物もしくは他の成分に対して触媒活性を有さず、かつ/または前反応器の環境下で成分に対して吸着能力を有さない。また、上記に定義したように、前処理触媒、吸着剤、及び/または伝熱媒体である、異なる固体床材料の混合物(例えば、触媒と伝熱媒体との混合物)を使用してもよい。
【0032】
特定の実施形態によれば、固体床材料は、吸着能力の有無にかかわらず、床材料が供給原料の脱揮発を促進し、触媒毒及び/もしくは腐食種(例えば、塩化物)を吸着し、またはこのような毒及び/もしくは腐食種が前反応器から出るチャーと共に除去できるように、伝熱媒体であってもよい。後者の場合、固体床材料は、脱揮発を促進するが、吸着能力が欠如し、いずれにしろ、毒及び/または腐食種を前反応器から出る前反応器蒸気流から分離してもよい。このような分離ステップを使用して、毒及び/または腐食種は、吸着能力の欠如にもかかわらず、水素化熱分解反応容器に送られる前反応器蒸気流の部分に存在しないまたは実質的に存在しなくてもよい。全体として、固体床材料について選択される特定の機能は、バイオマス含有供給原料の性質及びその中に含有される不純物の性質に依存する。
【0033】
例示的な実施形態によれば、さらに詳細に後述するように、前反応容器中で使用される固体床材料は、供給原料の分解または脱酸素に対する活性を有する前処理触媒であってもよい。特定の前処理触媒(例えば、ZSM−5触媒などのゼオライト含有触媒)は、分解及び脱酸素の両方に対して活性を有してもよい。他の例示的な実施形態によれば、固体床材料は、腐食種(例えば、塩化物含有種)を吸着する能力を有する吸着剤を含んでもよい。固体床材料は、代わりにまたは組み合わせて、脱酸素化触媒及び/または水素化転化触媒の毒(例えば、ナトリウムなどの金属汚染物質)を吸着する能力を有する吸着剤を含んでもよい。これにより、水素化熱分解において続いて使用され、減少した腐食種含有量、減少した水素化熱分解触媒毒含有量、及び/または減少した水素化転化触媒毒含有量の少なくとも改善された特徴を有する、前処理された供給原料になることができる。
【0034】
代表的な実施形態において、上述のように、前反応器中の前処理は、同伴された固体粒子(例えば、チャー及び/または固体床材料の粒子)を含む前反応器蒸気流を生成する。あるいは、作動条件及び前反応器内で生じる気固分離に応じて、前反応器蒸気流は、固体床材料が実質的にまたは完全になくてもよい。前反応器蒸気流は、凝縮性ガス(例えば、水蒸気及び/またはフェノールなどの酸素化炭化水素)ならびに非凝縮性ガス(例えば、水素、CO及び/またはCO)を含んでもよい。凝縮性ガスは、一般に、任意の脱酸素反応の実質的な不在下で熱分解から得られる従来のバイオ油の特徴を示す、高い酸素含有量(例えば、約35%〜約55重量%の範囲)を有する。通常、前反応器蒸気流またはその少なくとも一部は、この流れのいかなる部分も中間凝縮することなく、次の水素化熱分解ステップに気相で完全に送られる。しかしながら、再加熱による中間凝縮はまた、例えば、比較的低い揮発性(比較的高い沸点)の不必要な成分を選択的に凝縮し、少なくとも一部のチャー及び/または他の固体粒子を除去するための液体凝縮物「洗浄」を任意に提供することが可能であってもよい。他の実施態様において、前反応器蒸気流は、部分的に凝縮され、次の水素化熱分解ステップに混合蒸気及び液相として送られてもよい。分縮は、例えば、熱が前反応器蒸気流から回収されるとき(例えば、より冷たい流れと熱交換することによって)、または別の方法で熱が環境に失われるときに生じ得る。
【0035】
上記説明から明らかなように、前反応器から出る前反応器蒸気流の全てまたは一部は、次の水素化熱分解ステップに供されてもよい。脱揮発ステップと水素化熱分解ステップとの間に、前反応器蒸気流は、分離または反応(例えば、水性ガスシフト反応)によって、1つ以上の所望の成分に関して富んでもよく、かつ/または1つ以上の不所望の成分に関して枯渇してもよい(例えば、分縮の場合、固体粒子の一部を除去する働きをし得る)。前反応器蒸気はまた、水素化熱分解ステップ前またはその間に、1つ以上のさらなる流れと混合されてもよい。したがって、特に明記しない限り、前反応器蒸気流の少なくとも一部を水素化熱分解するステップは、前反応器蒸気流またはその一部を分離、反応、及び/または混合するような中間ステップを包含することを意味する。しかしながら、いくつかの実施形態において、前反応器プロセス蒸気流またはその一部は、1つ以上の所望の成分に関して富ませ、かつ/または1つ以上の不所望の成分に関して枯渇させる中間ステップなしで、分離または反応により水素化熱分解ステップに供されてもよい。例えば、前反応器プロセス蒸気流の一部は、その組成においてほとんどまたは全く変化することなく、前反応器の流出物全体から分割されてもよい。同様に、前反応器蒸気流またはその一部は、水素化熱分解ステップの前またはその間に1つ以上のさらなる流れと混合されることなく、水素化熱分解ステップに供されてもよい。しかしながら、多くの場合、後述するように、さらなる水素(前反応器蒸気流またはその一部のみにおいて含有されるものを超えて)を水素化熱分解に提供する、水素または水素含有ガス流と、前反応器蒸気流またはその一部を混合することが望ましい。
【0036】
このように、前反応器蒸気流の一部または全ては、水素化熱分解反応容器に送られてもよい。同伴された固体粒子を含有する前反応器蒸気流の場合、この蒸気流の比較的低い品質部分、例えば、固体豊富流(すなわち、前反応器蒸気流のものに対して、より高い濃度の固体を有する)及び精製された前反応器蒸気流(前反応器蒸気流のものに対して、より低い濃度の固体を有する)を分離することが望ましくなり得る。この低品質な、固体豊富流において、固体粒子はまた、精製された前反応器蒸気流中の固体粒子と比較して(同様に、分離前の前反応器蒸気流中の全固体粒子と比較して)、より高い平均粒径及び/またはより高い平均粒子量(例えば、サイクロン分離、電気集塵、または粒径に基づく、もしくは粒径を切断する他の分離の場合)を有してもよい。前反応器蒸気流の分離が実行されるこのような実施形態において、比較的低品質な、固体豊富流を提供するために、比較的高品質な、精製された前反応器蒸気流は、水素化熱分解反応容器中で水素化熱分解される前反応器蒸気流の一部であってもよい。
【0037】
同伴された固体粒子の一部、例えば実質的に全てを前反応器蒸気流から除去する場合、得られる精製された前反応器蒸気流は、水素化熱分解反応容器中の次の水素化熱分解ステップに送出される前反応器生産物の好適な部分を表してもよい。いくつかの実施形態によれば、前反応器蒸気流中の同伴された固体粒子は、上述のように、固体床材料の一部及び初期供給原料から形成されるチャーの両方を含んでもよい。この場合、代表的なプロセスは、前反応容器に伝熱するために、任意の回収された固体床材料の補助加熱と共に、前反応器中で再利用するための同伴された固体床材料の少なくとも一部を回収することを含んでもよい。具体的には、(1)同伴された固体粒子(例えば、前反応器蒸気流中に存在する)から、チャーに富む第1の留分及び固体床材料に富む第2の留分を分離するステップ(すなわち、固体含有ガス流自体であってもよい留分が、前反応器蒸気流において、チャー及び固体床材料の含有量に対してそれぞれ富むことを意味する)を用いてもよい。これは、次の、(2)第2の留分の少なくとも一部を加熱するステップ、及び(3)加熱された第2の留分またはその一部を前反応容器に返送するステップが伴ってもよい。
【0038】
あるいは、固体床材料は、前反応容器から取り出されてもよく、前反応器蒸気流中に同伴された粒子としてではなく、この容器内の流動化粒子床から取り出されてもよい。前反応容器からの固体床材料の取り出し、すなわち、前反応器から出る前反応器蒸気流中または粒子床から出る固体ドローオフ出口から取り出すいずれの場合において、取り出された固体材料は、固体床材料に富む留分において固体チャー粒子から分離され(例えば、密度分離を使用することによって)、前反応器に返送されてもよい。固体床材料に富む留分を返送する前に、この留分は、必要な熱を前反応器に導入するために加熱されてもよい。代替的実施形態による、任意の除去された固体床材料の加熱及び返送は、固体床材料に富む留分を提供する、分離を行わない場合、有益でもあり得る。多くの場合、前反応器から除去される固体床材料は、前反応器の作動中におけるその使用により、その上に堆積されるコークス及び炭素を蓄積してもよい。このため、前反応器蒸気流中または粒子床からのいずれか、及び固体床材料に富む留分に分離されているかどうかを問わず、任意の除去された固体床材料は、前反応器に固体床材料を返送する前に、蓄積されたコークス及び炭素が除去される条件(例えば、加熱条件下)に供されてもよい。代表的な条件は、燃焼によって、蓄積されたコークス及び炭素を除去することによって、固体床材料を再生成するのに十分な酸化条件、ならびにこれらの汚染物質をメタン及び他の軽質炭化水素に変換する、蓄積されたコークス及び炭素を水素ガス化するのに十分な還元条件(例えば、流動水素含有ガスの存在下)を含む。例えば、前反応器から除去される固体粒子を分類するように同時に作用する、流動床における再生成及び水素添加ガス化をさらに詳細に後述する。除去された固体床材料の同時の水素添加ガス化及び硫化も、さらに詳細に後述する。
【0039】
このため、代表的な脱揮発ステップは、脱揮発ステップ中、固体床材料上に蓄積されるコークス及び炭素を燃焼させる、またはこのコークス及び炭素をメタンに変換する(水素添加ガス化の場合)ために、前反応容器から固体床材料の一部を取り出すこと、及びこの一部を流動化酸素含有ガスと(再生成の場合)、または流動化水素含有ガスと(水素添加ガス化の場合)接触させることを含んでもよい。いずれの場合においても、再生成または水素添加ガス化により、減少した含有量のコークス及び炭素を有する取り出された固体床材料は、前反応器に返送されてもよい。
【0040】
加熱及び/または再生成条件下で固体床材料を返送すると共に、前反応容器からの固体床材料の除去(前反応器蒸気中もしくは粒子床からのいずれか)、ならびにチャーからの固体床材料の任意の分離、任意の再生成、または任意の水素添加ガス化に関する、本明細書において記載される任意のステップは、水素化熱分解反応容器からの脱酸素化触媒の除去(水素化熱分解反応器生産物中または脱酸素化触媒床からのいずれか)に同等に適用可能である。場合によって、これらの任意のステップのうちの1つ以上の後、前反応器から除去される固体床材料は、水素化熱分解反応容器に返送されてもよい。他の場合、これらの任意のステップのうちの1つ以上の後、水素化熱分解反応器から除去される脱酸素化触媒は、前反応器に返送されてもよい。
【0041】
前処理により、本明細書において記載される少なくとも1つの改善された特徴を有し得る、前処理生産物全体、すなわち、前反応器蒸気流全体は、水素化熱分解反応器に送ることが望ましくなり得る。代表的な、改善された特徴は、初期供給原料のものに対して、減少した固相塩化物含有量である。多くの場合、前処理された供給原料の収率、例えば全固体及び/または水素化熱分解に送られる、前処理の蒸気生成物(例えば、前反応器中)の収率は、全前処理投入量(例えば、前処理ステップに、例えば前反応器に投入される全固体及び/または蒸気生成物)の重量基準で、相当量を表すことができる。前処理された供給原料の収率は、一般に、少なくとも約25重量%(例えば、約25%〜約100重量%)、通常、少なくとも約50重量%(例えば、約50%〜約100重量%)、及び多くの場合、少なくとも約70重量%(例えば、約70%〜約99重量%)であることができる。
【0042】
上述のように、可能な種類の固体床材料の数に加えて、前反応器の多様な機能及びバイオマス含有供給原料の広範な特徴のため、前反応器中の作動条件は、広範に変動してもよく、水素化熱分解反応器に関して後述する温度及び圧力範囲を含んでもよい。しかしながら、より高い温度及びより低い温度が、いくつかの実施形態に対して考察され、例えば、代表的な温度は、前処理ステップの特定の目的に応じて、一般に、約150℃〜約650℃、通常、約260℃〜約540℃の範囲であってもよい。
【0043】
他の前処理ステップ
上述のように、本発明の態様は、バイオマスのみを含む供給原料と比べて品質がより劣り、また、少なくとも1つの水素化熱分解ステップを含むプロセスにおいて変換するのがより困難でもある、MSW及び他のバイオマス含有供給原料を有効に変換するためのプロセスに関連する。初期供給原料を前処理して、前処理された供給原料を生成することを含む代表的なプロセスにおいて、前処理された供給原料は、初期供給原料より優れた少なくとも1つの改善された特徴を有する。少なくとも1つの改善された特徴は、上記のように、前反応器中での脱揮発及び/または水素化熱分解を含む前処理ステップに起因し得る。あるいは、少なくとも1つの改善された特徴は、前処理された供給原料を水素化熱分解する前に他のステップ(例えば、分離または分類ステップ)に起因し得、及び/または場合によっては、インサイチュ、すなわち水素化熱分解反応容器内で実行されるステップに起因し得る。このように、上述のものの代わりとして、またはそれらと組み合わせて、多くの前処理ステップが可能である。
【0044】
少なくとも1つの改善された特徴は、減少した非生物学的材料含有量(例えば、全ての無機質形態を含む、ガラス、金属、及び金属酸化物の含有量)、より高い温度、減少した平均粒径、減少した平均粒子空気動力学径、増加した平均粒子表面積対質量比、より均一の粒径、減少した腐食種含有量、減少した水素化熱分解触媒毒含有量(例えば、減少したナトリウム)、ならびに減少した水素化転化触媒毒含有量からなる群から選択されてもよい。
【0045】
特定の実施形態によれば、初期供給原料の前処理は、非生物学的材料の少なくとも一部を除去することを含んでもよい。例えば、前処理された供給原料は、(A)全塩化物、(B)全プラスチック、(C)全ガラス、(D)全金属(上述のように、それらの元素形態で、ならびに/または化合物として、例えばそれらの酸化物及び鉱物形態で存在する代表的な金属を有する)、ならびに(E)全窒素及び硫黄の総含有量からなる群から選択される不純物の1つ以上が、初期供給原料に対して、減少した含有量を有してもよい。代表的な実施形態によれば、前処理された供給材料は、初期の供給材料のものに対して、一般に、少なくとも約10重量%(wt−%)(例えば、約10wt−%〜約99%wt−%)、通常、少なくとも約25wt−%(例えば、約25wt−%〜約98wt−%)、ならびに多くの場合、少なくとも約50wt−%(例えば、約50wt−%〜約95wt−%)が減少される、(A)、(B)、(C)、(D)、及び/または(E)のうちの1つ以上の含有量を有することができる。種々の実施形態によれば、前処理ステップの動作は、(A)、(B)、(C)、(D)、及び(E)からなる群から選択される1つ以上の不純物における上記範囲の減少のいずれかと組み合わされて、上記範囲の収率のいずれかによって特徴づけられてもよい(例えば、約50wt−%〜約95wt−%の量の全プラスチックにおける減少と組み合わせて、少なくとも約70wt−%の前処理された供給原料の収率)。
【0046】
代表的な初期供給原料は、例えば、一般に、少なくとも約200百万分率(ppm)(例えば、約200ppm〜約10,000ppm)、通常、少なくとも約500ppm(例えば、約500ppm〜約7,500ppm)、及び多くの場合、少なくとも約1000ppm(例えば、約1000ppm〜約5,000ppm)の量において全塩化物(元素Clとして測定)を含むことができる。特定の供給原料、例えば塩水中で成長する藻類は、高濃度の塩化物及びナトリウムの両方を有し得る。一体化された水素化熱分解プロセスの環境において、塩化物は、塩酸水溶液を潜在的に形成することがあり、上述のように、ナトリウムは、水素化処理活性を有する触媒を非活性化する毒として作用することがある。このため、藻類は、塩化物及びナトリウムの両方の濃度が減少される(例えば、これらの不純物の上述の範囲の減少に従って)前処理ステップから大いに恩恵を受けることができる。
【0047】
初期供給原料(例えば、MSW)中に存在してもよい代表的なプラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン(例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)及び低密度ポリエチレン(LDPE)を含むポリエチレン;ポリプロピレン;ポリブチレン;ならびにポリオレフィンコポリマー)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリエステルコポリマー)、ポリアミド(例えば、ポリカプロラクタム)、ポリ(メタ)アクリレートポリアルキルオキシド(例えば、ポリエチレンオキシド)、ポリビニルアルコールホモ及びコポリマー(例えば、PVAフォーム、ポリエチレンビニルアルコール)、ポリエチレングリコールホモ及びコポリマーポリオキサマー、ポリシロキサン(例えば、ポリジメチルシロキサン)、ポリエチルオキサゾリン、ならびにポリビニルピロリドン、ならびに架橋ポリビニルピロリジノン及びポリエステル(例えば、ポリビニルピロリドン/セルロースエステル及びポリビニルピロリドン/ポリウレタン)、アクリルポリマー(例えば、メタクリレート)及びコポリマー、ビニルハライドポリマー及びコポリマー(例えば、ポリ塩化ビニル)、ポリビニルエーテル(例えば、ポリビニルメチルエーテル)、ポリビニリデンハライド(例えば、ポリフッ化ビニリデン及びポリ塩化ビニリデン)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリビニル芳香族化合物(例えば、ポリスチレン)、ポリビニルエステル(例えば、ポリビニルアセテート)、互いにビニルモノマーとオレフィンとのコポリマー(例えば、エチレン−メチルメタクリレートコポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂、及びエチレン−ビニルアセテートコポリマー)、アルキド樹脂、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、エポキシ樹脂、レーヨン、レーヨン−トリアセテート、ならびにそれらの組合せから形成されるものなどのヒドロゲルが挙げられる。EPA情報(例えば、http//www.epa.gov/epawaste/nonhaz/municipal/index.htmを参照)に基づいて、代表的なMSWは、プラスチックの全量に対して、以下の種類及び/または量のいずれかのプラスチックを有してもよい:約5%〜約25重量%の範囲のポリエチレンテレフタレート、約5%〜約30重量%の範囲の高密度ポリエチレン、約1%〜約10重量%の範囲のポリ塩化ビニル、約10%〜約35重量%の範囲の低密度ポリエチレン、約12%〜約40重量%の範囲のポリプロピレン、及び/または約3%〜約15重量%の範囲のポリスチレン。
【0048】
代表的な前処理ステップは、上述のように、少なくとも1つの改善された特徴を有するより高品質な留分と共に、比較的より高い及びより低い品質の留分に、初期供給原料の粒子の分類を伴ってもよい。特定の実施形態によれば、例えば、前処理は、初期供給原料のプラスチックの含有量と比較して、より低い及びより高いプラスチックの含有量をそれぞれ有する、少なくとも第1及び第2の留分に初期供給原料を分離することを含むことができる。このため、第1の留分は、プラスチックが実質的になくてもよい(または、上述のように全プラスチック含有量における減少を有する)が、第2の留分は、相当量のプラスチックを含んでもよい。
【0049】
異なる密度(例えば、異なる含有量のプラスチックを有することによって)の固体粒子の留分を提供するために、実行し得る、代表的な粒子分離または分類は、例えば、固体粒子を分離液体と接触させる、または遠心分離機の使用を利用する分離を含む。流動化ガス流を使用して固体粒子を選別し(例えば、空気分離器において)、異なる密度または異なる流体動的特性の留分を提供して、これにより上述のように少なくとも1つの改善された特徴を有することも可能である。このような選別は、例えば、減少した平均粒子空気動力学径、増加した平均粒子表面積対質量比、より均一の粒径、及び/またはさらに、減少した非生物学的材料含有量を有する粒子を有する前処理された供給原料を提供するために使用することができる。1つの代表的な実施形態によれば、前処理ステップは、バイオマス含有供給原料をガスの流動化流(例えば、空気)と接触させ、さらなる処理のための所望の特徴(例えば、減少した非生物学的材料含有量)を有する留分中のより低密度な材料(例えば、木材及び/または紙ベースの粒子)を分離することを含んでもよい。密度または他の流体動的特性に基づく任意の分離の場合、バイオマス含有供給原料は、所与の分離に対してより適用可能な粒子を形成するために、適切にサイズ変更されてもよい(例えば、細断または粉砕)。選別から得られたバイオマス含有供給原料の異なる留分は、異なる位置でかつ/または異なる固体粒子輸送設備を使用して、前反応器または水素化熱分解反応器に供給されてもよい。
【0050】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの特徴における改善(例えば、減少した全プラスチック含有量)を有する第1の留分は、その後水素化熱分解ステップに供される前処理された供給原料を表してもよいのに対して、第2の留分は、さらなる処理ステップに供され、前処理ステップに再利用され(少なくとも部分的に)、または異なる目的(例えば、プラスチック回収及び再利用)のために使用されてもよい。あるいは、第2の留分はまた、第1の留分に対して、異なる位置でかつ/または異なる様式であっても、水素化処理反応容器に送られてもよい。例えば、代表的なプロセスは、別々の位置(例えば、異なる軸方向の高さ)で水素化熱分解反応容器に第1及び第2の留分(例えば、上述のように、全プラスチックの比較的より少ない及びより多い含有量を有する)を別々に供給することを含んでもよい。留分が別々に導入される、特定の位置は、第1及び第2の留分の組成物と相溶性である局所的な条件(例えば、温度、ガス速度、固形分濃度、平均粒径)と関連してもよい。他の実施形態によれば、第1及び第2の留分は、第1及び第2の留分の組成物と相溶性である導入技術を使用して、水素化熱分解反応器に導入されてもよい。例えば、全プラスチックの比較的低い含有量を有する第1の留分は、冷却スクリューアセンブリにより水素化熱分解反応容器に供給されてもよいのに対して、全プラスチックの比較的より高い含有量を有する第2の留分は、加熱押出機によりこの反応容器に供給されてもよい。このような実施形態のいずれかにおいて、第1及び第2の留分は、組み合わされて、初期供給原料の全てまたは一部を表してもよく、例えば、組合せにおけるこれらの留分は、上記範囲(いくつかの部分、例えば、水素化熱分解反応容器において使用されない第3の留分)における前処理された供給原料の収率を表してもよい。
【0051】
初期供給原料(例えば、MSW)中に存在してもよい代表的なガラスとしては、Eガラス、ホウ素非含有Eガラス、Sガラス、Rガラス、ARガラス、希土類ケイ酸塩ガラス、Ba−Tiケイ酸塩ガラス、Si−AI−O−Nガラスなどの窒化ガラス、Aガラス、Cガラス、及びCCガラスが挙げられる。これらのガラスの種類のそれぞれは、特にそれらが包含する組成物に関して、当技術分野において既知である。
【0052】
代表的な初期供給原料は、金属、例えば、Li、Be、Na、Mg、Al、Si、P、K、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Sn、W、Pb、及び/またはHgを含むことができ、これらは、元素形態で、または全ての鉱物形態を含む、金属酸化物などの金属化合物として存在する。これらの金属は、一般に、少なくとも約0.1重量%(wt−%)(例えば、約0.1wt−%〜約10wt−%)、通常、少なくとも約0.5wt−%(例えば、約0.5wt−%〜約7.5wt−%)、及び多くの場合、少なくとも約1wt−%(例えば、約1wt−%〜約5wt−%)の総量で初期供給原料中に存在してもよい。初期供給原料中の金属の含有量に関する上記範囲は、灰分にも適用できる。灰分は、750℃の温度で燃焼しない初期供給原料の重量百分率を指す。灰は、一般に、金属酸化物(例えば、シリカ)の形態であり、一般に、バイオマス中に存在し、その結果、MSWなどのバイオマス含有供給原料中にも存在する特定の種類の非生物学的材料を表すが、多くの場合、供給原料のバイオマス部分のみより高い濃度である。
【0053】
初期供給原料は、少なくとも約100ppm(例えば、約100ppm〜約30,000ppm)、通常、少なくとも約500ppm(例えば、約500ppm〜約25,000ppm)、及び多くの場合、少なくとも約1000ppm(例えば、約1000ppm〜約20,000ppm)の窒素及び硫黄を合わせた総量(全元素N及びSとして測定)を含むことができる。種々の実施形態によれば、代表的な初期供給原料は、非生物学的材料、全塩化物、全灰、ならびに/またはN及びSの上記範囲のいずれかを組み合わせて有することができる(例えば、非生物学的材料の少なくとも約5wt−%及び約1000ppm〜約5000ppmの全塩化物)。
【0054】
前反応器においてまたは水素化熱分解反応容器においてインサイチュで使用される固体吸着剤は、脱酸素化触媒及び/または水素化転化触媒の活性に悪影響を与える腐食種及び/または種を捕捉するために使用されてもよい。特定の実施形態によれば、前処理された供給原料は、減少した全塩化物の含有量、減少した全金属の含有量、または減少した全塩化物及び全金属の両方の含有量の改善された特徴を有し、前処理するステップは、前処理条件下で初期供給原料を固体吸着剤に接触させることを含み、これにより、初期供給原料中に存在する塩化物及び金属が、固体吸着剤上へ吸着される。塩化物を吸着するための能力、ならびに前反応器及び/または水素化熱分解反応器において脱揮発及び/または熱分解と関連する高温に耐える機能を両方有する、好適な吸着剤としては、例えば、塩基性アニオン、例えば炭酸塩及び水酸化物を含有する、炭酸カルシウム(CaCO)及び他の鉱物が挙げられる。このような固体吸着剤は、インサイチュで減少した全塩化物及び/または減少した全金属(例えば、減少したナトリウム)の改善された特徴を提供するために、前反応器中または水素化熱分解反応器中で好適であってもよい。
【0055】
代替的実施形態によれば、バイオマス含有供給原料は、水溶性塩化物及び/または他の潜在的な腐食もしくは有害種を除去するために、単純な浸出ステップ(例えば、バッチ条件下で水溶液と接触させる、または溶液の連続流と接触させることによって)に供されてもよい。このようにして得られ、結果として生じる前処理された供給原料は、減少した全塩化物及び/または減少した全金属(例えば、水溶性金属塩の形態で初期供給原料中に存在する)の改善された特徴を有してもよい。このような前処理された供給原料は、水素化熱分解前に乾燥させてもよく、または乾燥させずに水素化熱分解反応器に導入されてもよく、もしくはさらにスラリーの形態で導入されてもよい。あるいは、前処理された供給原料は、水素化熱分解反応器の上流の、本明細書において記載される前反応器に、乾燥形態、水飽和形態、またはスラリー形態で導入されてもよい。その後、このような浸出ステップから得られる任意の水性流出物は、適切な条件(例えば、温度及び圧力の周囲条件)下で、浸出された、水溶性種を除去して、水性流出物を精製するための能力を有する、好適なイオン交換樹脂または他の固体吸着剤と接触させてもよい。
【0056】
灰または他の非生物学的材料の含有量が、初期供給原料のものに対して、前処理された供給原料において減少される特定の実施形態において、前処理するステップは、流動床において1つ以上の軸方向の高さに対応する1つ以上のドローオフ位置で、非生物学的材料を除去することにより、流動床において初期供給原料を脱揮発することを含む。したがって、前反応器または水素化熱分解反応器の流動床が、流動床内の領域に、異なる種類の固体粒子(例えば、異なる密度を有する粒子)を分離または分類するように作用することができる限り、選択されたドローオフ位置(例えば、所与の所望または不所望の特徴を有する粒子を選択的に富ませる)での固体粒子の除去は、有利に、このような所望または不所望の特徴を有する粒子の選択的除去を可能にする。例えば、高い灰分または他の非生物学的材料含有量などの不所望の特徴を有する粒子の選択的除去は、反応器中に残存する、減少した灰分または減少した非生物学的材料含有量の改善された特徴を有する前処理された供給原料を提供する。あるいは、所望の特徴、例えばより均一の粒径を有する粒子は、反応器内で流動床から選択的に除去され、前処理された供給原料を提供してもよい。異なる種類の固体粒子(例えば、異なる密度及び/または異なる空気動力学径の固体粒子)を分類するまたは集める1つの代表的なプロセスによれば、前反応容器と共に異なる空塔ガス速度が使用されてもよい。固定ガス容積流量を維持しながら、異なる軸方向の高さで、断面積を変動させること、かつ/または、固定断面積を維持しながら、異なる軸の位置でガスを加える(注入する)ことによって、これらの異なるガス速度を実現することができる。また、所与の軸方向の高さで、様々な断面積及びガス注入の組合せが使用されてもよい。
【0057】
特定の位置からの非生物学的材料の除去は、固体材料床の活動及び機能の破壊をもたらすことがある、このような材料の蓄積を防止することもできる。いくつかの実施形態によれば、固体材料の除去は、前反応器内で、水素化熱分解反応容器内で(インサイチュ)、またはさらに水素化熱分解反応容器の下流であるが、水素化転化反応容器の上流で、前反応器の上流で行うこともでき(例えば、物理的な選別または空気分離器などの流動化ガス分離システムの使用によって)、これは、初期供給原料中の非生物学的材料の含有量を減少させる同じまたは同様の効果をもたらす(この場合、前反応容器、水素化熱分解反応容器、または場合により水素化転化反応容器のいずれかに対する、供給原料中の非生物学的材料の含有量)。
【0058】
多くの他の種類の分離及び分類は、流動床水素化熱分解反応容器中でのその使用前またはその間に、初期供給原料の流体力学特性を調整するために実行されてもよい。したがって、前処理された供給原料の改善された特徴、例えば減少した平均粒径、減少した平均粒子空気動力学径、増加した平均粒子表面積対質量比、及び/またはより均一の粒径は、前処理された供給原料の良好な流動化パラメータ(例えば、流動化のために必要とされる空塔ガス速度に関して)を維持する際に有益であってもよい。これらの方針のいずれかに沿った供給原料の改善は、その組成に関してMSW、藻類、アオウキクサ、または他のバイオマス含有供給原料をアップグレードする付加的な利点を有することもできる。例えば、平均粒子表面積対質量比を増加させることは、質量比に対して低い表面積の金属物及び他の粒子が、初期供給原料に対して、前処理された供給原料において選択的に除去され、前処理された供給原料中に、木材粒子などの増加した含有量のより高い表面積対質量比粒子が残る、空気動力学分離と呼ぶことができる。このように、平均粒子表面積対質量比の増加、または上述のように他の流体力学特性のいずれかを改善することをもたらす分離は、前処理された供給原料中の非生物学的材料の含有量を減少させる付加的な利点を有することができる。
【0059】
いくつかの実施形態によれば、特にバイオマス含有供給原料の凝集粒子の形成を防止することに関する、粒子の流体力学特性の調整は、インサイチュ(例えば、水素化熱分解反応容器内、または供給原料を脱揮発するために使用される前反応容器内)で行うことができる。粒子凝集体は、例えば、軟化または溶融したときに、供給原料及び/または他の固体粒子の粒子を被覆し、それらを互いに固着(凝集)させる、高含有量のプラスチックの結果として形成することができる。上述のように、減少した平均粒径及び/またはより均一の粒径の改善された特徴、及び他の改善された流体力学特性は、いくつかの実施形態によれば、前反応容器または水素化熱分解反応容器中の処理条件下で、その凝集されたまたは部分的に凝集された状態の初期供給原料に対する改善を指すことができる。したがって、凝集された供給原料粒子を壊すまたは第一にこのような凝集体の形成を防ぐために肯定的なステップをとることにより、改善された特徴は、このようなステップの不在下で生じる場合がある仮定的状況より優れた改善に基づいてもよい。したがって、いくつかの実施形態において、初期供給原料より優る少なくとも1つの改善された特徴を有する前処理された供給原料を生成するために、初期供給原料を前処理するステップは、インサイチュ、すなわち、前反応容器または水素化熱分解反応容器中で実行される改良(例えば、粒子凝集体を壊すまたはその形成を防ぐための撹拌)によって、満たされてもよい。
【0060】
より一般的には、このような改善ステップは、(i)供給原料の粒子、(ii)固体床材料の粒子、触媒の粒子、及び/もしくはチャーの粒子を有する供給原料の粒子、(iii)固体床材料の粒子、(iv)触媒の粒子、ならびに/または(v)チャーの粒子、の凝集体を含む、前反応器または水素化熱分解反応器内のあらゆる相互作用する固体粒子の凝集体を壊す、または凝集体の形成を防ぐために使用することができる。特定の実施形態によれば、前処理及び/または水素化熱分解ステップは、これらの種類の凝集体のいずれかの形成を減少する、連続的、断続的、または局所的な高撹拌条件で作動されてもよい。このような高撹拌条件は、例えば、水素化熱分解反応容器における脱酸素化触媒の粒子の凝集体の形成を減少することができる。特定のガス速度の使用は、粉々に壊される、または高撹拌条件の不在下で形成する凝集体の特性(例えば、水素化熱分解反応容器中の脱酸素化触媒の粒子の凝集体の平均粒径及び/もしくは粒径分布)に合わせて調整されてもよい。いくつかの実施形態によれば、高流動化ガス速度のみの使用が、粒子凝集体を壊すまたはその形成を防ぐのに十分であり、これにより所望の程度の改善を実現してもよい。あるいは、床材料及び/または供給原料の選択されたサイズ範囲が、処理条件下で、粒子の選択されたサイズ範囲の相互作用により所望の程度の改善を促進するように、使用されてもよい。
【0061】
特定の実施形態によれば、粒子凝集体を壊すまたはその形成を防ぐために有効な高撹拌条件は、前反応容器もしくは水素化熱分解反応容器中の流動化ガスの全空塔速度、またはこれらのそれぞれの反応容器(例えば、様々な断面積を有する反応器の場合)の流動化粒子床において流動化ガスの全平均空塔速度を著しく超えるガス速度(例えば、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、もしくは少なくとも約10倍)の、連続的もしくは断続的な局所的な使用を含むことができる。例えば、流動化ガスの全空塔速度は、反応器のまたは反応容器内の流動床であってもよい、関連する固体粒子床の平均断面積で割った、流動化ガスの全容積流量として計算されてもよい。局所的な、高ガス速度は、凝集粒子が形成及び/または破壊されやすい所望の領域においてガス注入ノズルを使用して、つくることができる。高撹拌条件は、ガス注入ノズルと組み合わせて内部構造(例えば、バッフルまたは衝撃プレート)を使用して強化することもでき、構造及びノズルは、凝集粒子をその破壊に十分な衝撃力、及び/または最初からの凝集の防止もしくは少なくとも形成された凝集体のさらなる成長の防止に供するために、組み合わせて配置されてもよい。
【0062】
前反応器または他の前処理された供給原料の水素化熱分解
固体床材料を格納する前反応容器において、バイオマス含有供給原料を水素含有ガス(または上述のような他の前反応器ガス)と接触させた後、代表的なプロセスは、上述のように、前反応器プロセス蒸気流の少なくとも一部(すなわち、一部もしくは全て)を水素化熱分解すること、または上述のように、前処理された供給原料の少なくとも一部を水素化熱分解することを含むことができる。
【0063】
前処理のために前反応器が使用される実施形態において、前反応器は、脱揮発及び/またはバイオマス含有供給原料の少なくとも一部の熱分解(例えば、水素化熱分解)をもたらしてもよい。一般に、これらは、水素化熱分解反応容器及び次の水素化転化反応容器(使用される場合)のために主に貯蔵されるので、脱酸素反応は、任意の有意な程度まで生じない。本開示を参考にする当業者は、温度、水素分圧、及び供給原料滞留時間を含む、脱揮発ならびに/または水素化熱分解の所与の程度を実現するのに必要な前反応器中の作動条件を理解する。水素化熱分解反応容器及び任意の水素化転化反応容器におけるかなりの程度の脱酸素のため、関連する水素化熱分解及び水素化転化ステップは、通常、共に発熱であり、すなわち、これらのステップと関連した反応は、単離では吸熱である熱分解反応にもかかわらず、熱の正味生成を伴う。対照的に、前反応容器中で生じる、比較的低い程度の水素化転化(または場合によっては水素化転化しない)のため、脱揮発するステップにおける脱揮発及び任意の熱分解は、一般に、吸熱である、すなわち、このステップと関連した反応は、熱の正味消費を伴う。前反応器及び水素化熱分解反応容器の両方の反応熱力学を効果的に管理するために、前反応器蒸気流(または水素化熱分解反応器に導入されるその部分)の温度は、上下に調整されて、水素化熱分解反応器の温度要件を満たしてもよい。例えば、一実施形態によれば、前反応器蒸気流またはその部分の温度は、短期間(例えば、約2分未満、またはさらに約1分未満)にわたって、水素化熱分解反応器の平均温度に、または平均温度の約10℃以内に調整される。
【0064】
上の考察の観点から、触媒が前反応器中の固体床材料として使用される場合、このような目的に好適な触媒は、水素化熱分解反応容器及び/または水素化転化反応容器中に使用される触媒と比較して、比較的低い脱酸素活性を有するものを含んでもよい。いくつかの実施形態によれば、水素化熱分解反応器及び/または水素化転化反応器から使用済みまたは部分的に使用済み(例えば、水素化熱分解及び/または水素化転化ステップにおける若干の使用期間後)触媒は、前反応器中で有利に使用され、所望レベルの脱酸素活性を有する触媒を提供する。このため、特定の実施形態によれば、前反応器中の固体床材料は、水素化熱分解反応器中で既に使用された使用済みもしくは部分的に使用済み脱酸素化触媒、及び/または水素化転化反応器中で既に使用された使用済みもしくは部分的に使用済み水素化転化触媒を含む、それらから実質的になる、またはそれらからなってもよい。
【0065】
このため、特定の実施形態によれば、前反応器中の固体床材料は、水素化熱分解反応器から移送される使用済みもしくは部分的に使用済み脱酸素化触媒、水素化転化反応器から移送される使用済みもしくは部分的に使用済み水素化転化触媒、またはそれらの組合せを含んでもよい。例えば、使用済みまたは部分的に使用済み触媒は、これらの反応容器の一方または両方から連続的に除去されてもよく、前反応容器に供給されて、供給原料を前処理する際に触媒からさらなる有益な使用を引き出してもよい。いくつかの実施形態において、特に、流動床(例えば、前反応器及び/または水素化熱分解反応器の)、ならびに固定床(例えば、水素化転化反応器の)処理の異なる制度下で作動する異なる反応器の場合、前反応器、水素化熱分解反応器、及び水素化転化反応器用の触媒粒径が必ずしも相溶性ではないことが理解されるべきである。このため、前反応容器における使用済みまたは部分的に使用済み触媒の使用は、例えば前反応器中での使用に好適な平均粒径を実現するために、粉砕または破砕することによるサイズ変更を必要としてもよい。
【0066】
「使用済みまたは部分的に使用済み」脱酸素化触媒に対する言及は、その未使用(新しい)状態での同じ触媒に対して、脱酸素に対する活性が減少されている触媒を指す。脱酸素活性の損失は、制御された環境における比較試験によって検証することができ、試験供給原料の所与の程度の脱酸素を実現するために必要な反応温度は、一定の触媒活性を提供する。より高い反応温度は、より低い活性を示す。活性の少なくとも一部の損失をもたらし、それを使用済みまたは部分的に使用済みにし、その結果、いくつかの実施形態において、前反応器中の使用に好適な脱酸素化触媒の条件は、コーキング、不純物(例えば、金属)による汚染、または活性損失をまねく別の条件に起因する。条件は、可逆的(例えば、触媒再生成及び/もしくは触媒硫化によって)または不可逆的であってもよい。
【0067】
水素化熱分解ステップは、少なくとも1つの非凝縮性ガス、部分的に脱酸素化された水素化熱分解生成物、及びチャー粒子を含む水素化熱分解反応器生産物を生成するために、水素及び脱酸素化触媒を格納する水素化熱分解反応容器中で生じることができる。多くの場合、水素化熱分解反応器生産物は、H、CO、CO、CH、C、及びCのうちの1つ以上を非凝縮性ガスとして含む。しかしながら、脱酸素化触媒のメタン化活性及び水性ガスシフト変換活性に応じて、多少のメタン(CH)が、CO、CO、及びHを犠牲にして生成される。より高いメタン化環境において、水素化熱分解反応器生産物が非凝縮性ガス(例えば、全ての非凝縮性ガスの5vol−%未満、またはさらに1vol−%未満において)としてほとんどもしくは全くCO及び/またはCOを含まないが、それにもかかわらずH、CH、C、及びCのうちの1つ以上をやはり含むことが可能であってもよい。
【0068】
したがって、一般に、水素化熱分解反応器生産物は、(i)水素化熱分解反応器中で消費されない任意の化学量論的過剰量のHと共に、CO、CO、及び他の非凝縮性または低分子量ガス(パラフィン及びオレフィン炭化水素の両方を含むC〜C炭化水素ガス)、(ii)部分的に脱酸素化された水素化熱分解生成物(例えば、凝縮性蒸気の形態で)、ならびに(iii)固体チャー粒子を含む。本明細書で使用する場合、水素化熱分解ステップの「部分的に脱酸素化された水素化熱分解生成物」は、次の水素化転化プロセスにおいてより完全な脱酸素(例えば、炭化水素を生成して、CO、CO、及び/または水の形態で酸素を除去する)に供されてもよい酸素化炭化水素(例えば、セルロース、ヘミセルロース、及び/またはリグニン由来)を含んでもよい。しかしながら、「部分的に脱酸素化された水素化熱分解生成物」という用語は、完全に脱酸素化されることによりさらに脱酸素化することができない若干量の炭化水素(例えば、アルキルベンゼンなどの芳香族炭化水素)の存在を排除しない。いくつかの実施形態によれば、部分的に脱酸素化された水素化熱分解生成物は、一般に、任意の脱酸素反応の実質的な不在下で熱分解から得られる従来のバイオ油と比較して、より低い酸素含有量を含有する。これは、水素の存在下で、水素化熱分解反応器内で生じる触媒脱酸素反応の程度に起因する。部分的に脱酸素化された水素化熱分解生成物の代表的な酸素含有量は、一般に、約2%〜約30重量%の範囲、通常、約5%〜約25重量%の範囲である。
【0069】
上述のように、前反応容器の場合のように、水素化熱分解反応容器は、流動床を格納してもよいが、この場合、脱酸素化触媒を含む。この流動床における他の固体は、前反応器蒸気流中に存在する、または前反応容器から水素化熱分解反応容器へ送られる前反応器蒸気流の一部に存在する、前処理された供給原料もしくは固体を含んでもよい。したがって、水素化熱分解ステップは、脱酸素化触媒の流動床を使用して実行されてもよく、水素化熱分解流動化ガスは、前反応器中で生成された後に水素化熱分解される、前反応器プロセス蒸気流の少なくとも一部を含んでもよい。水素化熱分解流動化ガスについて代表的な空塔ガス速度は、一般に、約0.03メートル/秒(m/s)〜約6m/s、通常、約0.15m/s〜約3m/s、及び多くの場合、約0.3m/s〜約1.5m/sの範囲である。
【0070】
水素化熱分解ステップ後、代表的なプロセスは、水素化熱分解反応器生産物からチャー粒子及び/または他の固体粒子(例えば、触媒微粉)の全てもしくは実質的に全てを除去し、減少したチャー含有量を有する精製された水素化熱分解反応器蒸気流を提供することをさらに含んでもよい。チャー粒子、例えば、前反応器蒸気流中に同伴され得るものの除去は、精製された水素化熱分解生成物蒸気流またはその一部を含む水素化熱分解の生成物が、固定床触媒変換プロセスに供されるプロセスにおいて特に重要であってもよい。そのような場合、微細チャー粒子の除去は、チャー粒子が固定触媒床の空隙内に閉じ込められることになるので、固定床の早期閉塞と関連した問題を防ぐ。本明細書で定義されるように、チャー粒子の実質的に全ての除去は、水素化熱分解反応器生産物中のチャー粒子の少なくとも99重量%が精製された水素化熱分解生成物蒸気流から排除されることを意味する。さらなる実施形態によれば、チャー粒子の99.9重量%または少なくとも99.99重量%は、排除される。
【0071】
代表的なプロセスは、水素及び水素化転化触媒を格納する、水素化転化反応容器において、精製された水素化熱分解反応器蒸気流の少なくとも一部を水素化転化して、水素化転化反応器生産物を生成することをさらに含む。水素化熱分解反応器生産物のような精製された水素化熱分解反応器蒸気流は、凝縮性ガス(例えば、水蒸気;C、C、及び高分子量炭化水素;ならびにフェノールなどの酸素化炭化水素)、ならびに非凝縮性ガス(例えば、H、CO、CO、CH、C、及びC)を含んでもよい。一般に、精製された水素化熱分解反応器蒸気流またはその少なくとも一部は、この流れのいかなる部分も中間凝縮することなく、次の水素化転化ステップに気相で完全に送られる。しかしながら、再加熱による中間凝縮はまた、例えば、比較的低い揮発性(比較的高い沸点)の不必要な成分を選択的に凝縮し、チャー及び/または他の固体粒子(例えば、触媒微粉)を除去するための液体凝縮物「洗浄」を任意に提供することが可能であってもよい。他の実施態様において、精製された水素化熱分解反応器蒸気流は、部分的に凝縮され、次の水素化転化ステップに混合蒸気及び液相として送られてもよい。分縮は、例えば、熱が精製された水素化熱分解反応器蒸気流から回収されるとき(例えば、より冷たい流れと熱交換することによって)、または別の方法で熱が環境に失われるときに生じ得る。
【0072】
上記説明から明らかなように、水素化熱分解反応器から出る(全てのチャー粒子の実質的な除去の後に得られた)精製された水素化熱分解反応器蒸気流の全てまたは一部は、次の水素化転化ステップに供されてもよい。したがって、水素化熱分解ステップと水素化転化ステップとの間に、精製された水素化熱分解反応器蒸気流は、分離もしくは反応によって、1つ以上の所望の成分に関して富んでもよく、かつ/または1つ以上の不所望の成分に関して枯渇してもよい。精製された水素化熱分解反応器蒸気流はまた、水素化転化ステップ前またはその間に、1つ以上のさらなる流れと混合されてもよい。したがって、特に明記しない限り、精製された水素化熱分解反応器蒸気流の少なくとも一部を水素化転化するステップは、分離、反応、及び/または混合するような中間ステップを包含することを意味する。しかしながら、いくつかの実施形態において、精製された水素化熱分解反応器蒸気流もしくはその一部は、1つ以上の所望の成分に関して富み、かつ/または1つ以上の不所望の成分に関して枯渇する中間ステップなしで、分離もしくは反応により水素化転化ステップに供されてもよい(例えば、固体粒子の一部を除去する働きをし得る分縮の場合)。例えば、精製された水素化熱分解反応器蒸気流の一部は、その組成においてほとんどまたは全く変化させることなく、水素化熱分解反応器の流出物全体から分割されてもよい(全てのチャー粒子の実質的な除去後)。同様に、精製された水素化熱分解反応器蒸気流またはその一部は、水素化転化ステップの前またはその間に1つ以上のさらなる流れと混合されることなく、水素化転化ステップに供されてもよい。しかしながら、多くの場合、さらなる水素(精製された水素化熱分解反応器蒸気流またはその一部に含有されるものを超えて)を後述するように水素化転化に提供する、水素または水素含有ガス流と、精製された水素化熱分解反応器蒸気流またはその一部を混合することが望ましい。
【0073】
前反応器中で使用するのに好適な触媒(触媒活性を有する固体床材料の場合)、水素化熱分解反応器、及び/または水素化転化反応器は、一般に、好適な水素分圧、温度、及び本明細書において記載されるような他の条件の環境において、バイオマス含有供給原料、前処理された供給原料、及び/またはそれらの水素化熱分解反応生成物をハイドロプロセスするための活性を有する。ハイドロプロセスは、水素化処理、水素化分解、水素化異性化、及びそれらの組合せ、ならびに水素豊富環境下で生じる可能性があるオリゴマー化を含む、多くの可能な反応を広範に包含することを意味する。代表的なハイドロプロセス触媒としては、耐火性無機酸化物などの高表面積担持材料(例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、及び/またはジルコニア)上に、少なくとも1つのVIII族金属、例えば鉄、コバルト、ならびにニッケル(例えば、コバルト及び/またはニッケル)ならびに少なくとも1つのVI族金属、例えばモリブデン及びタングステンを含むものが挙げられる。また、炭素担体を使用してもよい。したがって、ハイドロプロセス活性を有する代表的な触媒は、これらの担持材料のいずれかまたは担持材料の組合せ上に堆積された、ニッケル、コバルト、タングステン、モリブデン、及びそれらの混合物(例えば、ニッケルとモリブデンとの混合物)からなる群から選択される金属を含む。場合によって、担持材料の選択は、本明細書において記載されるように、凝縮された水性酸、例えば従来のバイオマス熱分解から得られるバイオ油に存在することが既知の酸及び/またはバイオマス含有供給原料(例えば、塩化物)中の不純物の水素化から得られる酸を形成する可能性を考慮して、耐食性の必要性に影響されてもよい。
【0074】
VIII族金属は、通常、揮発性のない触媒重量に対して、約2〜約20重量パーセント、一般に、約4〜約12重量パーセントの範囲の量でハイドロプロセス触媒中に存在する。VI族金属はまた、通常、揮発性のない触媒重量に対して、約1〜約25重量パーセント、一般に、約2〜約25重量パーセントの範囲の量で存在する。揮発性のない触媒試料は、水及び他の揮発性成分が触媒から押し出されるように、しばらくの間(例えば、2時間)不活性ガスパージまたは真空下の200〜350℃で触媒を乾燥に供することによって得られてもよい。
【0075】
他の好適なハイドロプロセス触媒としては、ゼオライト触媒、ならびに貴金属がパラジウム及びプラチナから選択される貴金属触媒が挙げられる。同じまたは異なる種類の2つ以上のハイドロプロセス触媒は、前反応容器、水素化熱分解反応容器、及び/または水素化転化反応容器もしくは実質的に完全に脱酸素化された炭化水素液体を提供する水素化転化ゾーン容器(さらに詳細に後述する)の組合せで用いられてもよい。例えば、異なるハイドロプロセス触媒は、脱酸素(例えば、水素化熱分解反応容器中)または水素化分解(例えば、水素化転化反応容器中)を触媒するのに有用になり得る。場合によって、水素化転化反応容器中の触媒及び条件は、水素化分解を触媒する際にその効果について選択され、それによって、所望の分子量(例えば、ガソリン沸点範囲炭化水素)の炭化水素の収率を高めてもよい。水素化転化反応容器中の触媒及び条件は、水素化異性化を触媒する際に、その効果について選択され、それによって、イソパラフィンの収率を高めてもよく、これは、その流動点及び曇り点温度を低下させる点から、実質的に完全に脱酸素化された炭化水素液体またはその少なくともディーゼル燃料沸点範囲留分の品質を改善することができる。
【0076】
代表的な水素化分解触媒としては、米国特許第6,190,535号及び同第6,638,418号に記載されているものが挙げられ、これらの触媒のそれらの開示に関して参照として本明細書に組み込まれる。他の好適な水素化分解触媒としては、ゼオライト上に堆積される、鉄、ニッケル、コバルト、タングステン、モリブデン、バナジウム、ルテニウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される金属を含むものが挙げられる。触媒担体を水素化分解するための代表的なゼオライトとしては、βゼオライト、Yゼオライト、及びMFIゼオライトが挙げられ得る。Yゼオライト及びMFIゼオライトの構造は、Meier,W.M,et al.,Atlas of Zeolite Structure Types,4th Ed.,Elsevier:Boston(1996)に記載されており、さらなる参照が提供される。代表的な水素化異性化触媒としては、「異性化触媒」として米国特許第2009/0077866号に記載されているものが挙げられる。このような異性化触媒に関する米国特許第2009/0077866号の内容は、参照として本明細書に組み込まれる。
【0077】
当技術分野において理解されているように、「水素化処理触媒」という用語は、水を形成するための有機酸素含有分子の水素化脱酸素;CO及びCOをそれぞれ形成するための有機酸素含有分子の脱カルボニルもしくは脱炭酸;有機窒素含有分子の水素化脱窒素;ならびに/または有機硫黄含有分子の水素化脱硫のいずれかに対する活性を有する触媒を包含する。したがって、前反応容器、水素化熱分解反応容器、及び/または少なくとも1つの水素化転化反応容器中で有用な代表的な触媒としては、米国特許第6,190,535号及び同第6,638,418号に記載されているような水素化処理触媒が挙げられ、これらの触媒のそれらの開示に関して参照として本明細書に組み込まれる。代表的な実施形態において、触媒活性金属(例えば、ニッケル及びモリブデン)は、前反応容器、水素化熱分解反応容器、及び少なくとも1つの水素化転化反応容器の2つ以上で使用される触媒において同じであってもよく、また触媒のための担持材料も同じである。あるいは、担持材料は、様々な程度の水素化分解機能を提供するために、その酸性度に関して変動してもよい。例えば、水素化転化反応容器中の触媒のために使用される担持材料は、比較的低い酸性材料(例えば、アルミナ−リン混合物)であってもよく、また水素化転化反応容器中の触媒のために使用される担持材料は、比較的高い酸性材料(例えば、アモルファスまたはゼオライトシリカ−アルミナ)であってもよく、これによって、実質的に完全に脱酸素化された液体炭化水素生成物中の炭化水素の分子量における減少が所望である場合、分解反応を触媒するために水素化転化反応ゾーンの傾向を改善する。例えば、酸性度は、アンモニアが物理吸着される温度を超える、275℃〜500℃の温度にかけて、触媒のアンモニア飽和試料から、アンモニアの量の昇温脱離(TPD)によって、触媒のグラム当たりの酸性部位のモル単位で決定されてもよい。したがって、酸性部位の量は、この温度範囲において脱着されるアンモニアのモル数に相当する。
【0078】
代表的なプロセスは、水素化転化反応器生産物から実質的に完全に脱酸素化された炭化水素液体及びガス混合物を回収することをさらに含んでもよい。この点に関して、水素化転化反応器生産物は、実質的に完全に脱酸素化された炭化水素液(1つの実質的に完全に脱酸素化されたより高価値の液体生成物またはそれらの混合物を含んでもよい)が凝縮されて、次いで凝縮された水相及び/または蒸留物からの相分離を含む1つ以上の分離プロセスを使用して、分離されてもよい凝縮性ガスを含んでもよい。例えば、相分離は、主に凝縮水を含む水相から実質的に完全に脱酸素化された炭化水素液体を回収するために使用されてもよい。次いで、例えば、実質的に完全に脱酸素化されたより高価値の液体生成物、例えばガソリン沸点範囲及び/またはディーゼル燃料沸点範囲炭化水素留分を得るために、蒸留を使用してもよい。炭化水素液体及びこれらの液体から得られ得る(例えば、分留によって)より高価値の液体生成物に関して「実質的に完全に脱酸素化された」の表記は、約2重量%未満、約1重量%未満、約5000重量ppm未満、約2000重量ppm未満、またはさらに約1000重量ppm未満の全酸素含有量を指すことができる。低酸素含有量は、実質的に完全に脱酸素化された炭化水素液体を凝縮水から分離可能な相に容易にする。有利には、一体化プロセスにおいて生成される任意の正味の凝縮水は、低含有量の溶解された全有機炭素(TOC)、一般に、約5000wt−ppm未満、通常、約2000wt−ppm未満、及び多くの場合、約500wt−ppm未満を有する。
【0079】
水素化転化反応器生産物から回収されるガス混合物は、一般に、ガス混合物が水素化転化反応器生産物から分離される条件(すなわち、温度及び圧力)に応じて、非凝縮性ガス(例えば、H、CO、CO、CH、C、及びC)ならびに任意に少量の凝縮性ガス(例えば、C及び重質炭化水素)を含む(例えば、気液分離器またはストリッパを使用して、1つ以上の理論的な平衡の気液分離段階を実現する)。このガス混合物がCO、CO、及び炭化水素を含有する程度まで、少なくともその一部は、改質水素を生成し、一体化プロセスの全体の水素バランスを改善するために、水蒸気改質に供されてもよい。これは、炭化水素の従来の改質から得られる輸入水素の必要性を有利に減少またはさらに除去することができる。したがって、いくつかの実施形態によれば、石油系炭素源に対する減少した依存は、米国政府会計実務による温室効果ガス(GHG)排出値のライフサイクルアセスメントに基づいて、実質的に完全に脱酸素化された炭化水素液体から分離された輸送燃料留分の全カーボンフットプリントを減少することができる。
【0080】
水素化熱分解反応器中の条件は、一般に、約300℃〜約600℃、通常、約400℃〜約500℃、及び多くの場合、約410℃〜約475℃の温度を含む。水素化熱分解反応容器の触媒インベントリーによって分割されるバイオマス含有供給原料または前処理された供給原料の質量流量として計算される、水素化熱分解反応器の重量毎時空間速度(WHSV)は、一般に、0.1hr−1〜約10hr−1、通常、約0.5hr−1〜約5hr−1、及び多くの場合、約0.8hr−1〜約2hr−1である。水素化転化反応器(または使用される場合、できれば2つ以上の水素化転化反応器のいずれか)中の条件は、一般に、約200℃〜約475℃、通常、約260℃〜約450℃、及び多くの場合、約315℃〜約430℃の温度を含む。水素化転化反応容器の触媒インベントリーによって分割される水素化転化反応容器への供給(例えば、水素化熱分解反応器から得られる精製された蒸気流)の質量流量として計算される、水素化転化反応容器の毎時空間速度(WHSV)は、一般に、約0.01hr−1〜約5hr−1、通常、約0.05hr−1〜約5hr−1、及び多くの場合、約0.1hr−1〜約4hr−1である。
【0081】
水素化熱分解及び水素化転化ならびにそれらの重要性についてさらに代表的な作動条件は、さらに詳細に後述する。いくつかの代表的な条件はまた、米国特許出願公開第2010/0251600号、同第20100256428号、及び同第2013/0338412号に記載されており、それらの内容は、全体を参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0082】
これらの刊行物に記載されるように、水素化熱分解及び水素化転化反応容器の両方の触媒及び作動条件は、バイオマス由来分子(例えば、セルロース、ヘミセルロース、及び/またはリグニン)から酸素を除去する、脱酸素反応は、HOを発生する脱酸素と、それぞれCO及びCOを発生する脱カルボニル及び脱炭酸の非凝縮性ガス発生反応との間で平衡するように、調整してもよい。有利には、バイオマス酸素からの著しい量のこれらのガスの生成により、それらが含有される(例えば、軽質炭化水素と共に)ガス混合物(例えば、水素化熱分解反応器生産物及び/または水素化転化反応器生産物から)の改質において、それらの次の使用が可能になり、一体化プロセスにおいて必要な水素の一部もしくは全てを生成する。本明細書において記載される前反応器の使用の場合、例えば、水素含有ガスが脱揮発及び/または水素化熱分解を行うための前反応器流動化ガスとして使用される場合、一体化プロセスに必要な水素は、前反応器中で消費される水素の量を含むことができる。
【0083】
代表的な実施形態によれば、バイオマス含有供給原料の酸素含有量の少なくとも約20%、または本明細書において記載される前処理された供給原料の酸素含有量の少なくとも約20%は、水素化熱分解及び水素化転化後の任意の脱揮発を含む前処理後にCO及びCOに変換される。これらのステップ後のCO及びCOに対する、バイオマス含有供給原料または前処理された供給原料の酸素含有量の変換の代表的な範囲は、上述のように、水素化脱酸素と脱カルボニル/脱炭酸との間に適切な平衡を実現するために、約20%〜約80%、約30%〜約70%、約40%〜約60%である。これらのステップ後のHOに対する、この酸素含有量の変換の代表的な範囲は、多くとも約80%、約20%〜約80%、約30%〜約70%、及び約40%〜約60%である。水素化熱分解及び水素化転化後に、変換される、供給原料または前処理された供給原料酸素含有量のこれらの範囲は、水素化熱分解及び/または水素化転化において形成されるHOが消費され得る、水蒸気改質による下流変換後にバイオマス酸素含有量の最終的な配列を必ずしも代表するというわけではない。いくつかの実施形態によれば、水蒸気改質後のCO及びCOに対する、供給原料または前処理された供給原料酸素含有量の最終的な配列は、著しく高くてもよい。例えば、プロセスが、水蒸気改質によって一体化される、いくつかの実施形態によれば、供給原料または前処理された供給原料酸素含有量の少なくとも約90%、場合によっては少なくとも約95%は、CO及び/またはCOを形成するために使用されてもよい。しかしながら、他の実施形態によれば、メタンを形成するためのCO及び/またはCOのメタン化は、これらの量を減少する働きをすることに留意すべきである。
【0084】
いくつかの実施形態によれば、液体及びガス生成物に対する、所望の平衡のバイオマス酸素変換は、従来のハイドロプロセス操作(例えば、石油留分の従来の水素化処理及び/または水素化分解)におけるより高レベルの圧力及び/または水素分圧の使用と比較して、適度なレベルの圧力及び/または水素分圧は、HOを犠牲にして、比較的高い収率のCO及びCOをもたらすことが見出されているので、適度な反応条件、例えば水素化熱分解ならびに/または水素化転化反応器中の適度なレベルの圧力及び/もしくは水素分圧を使用して、実現されてもよい。水素化熱分解及び水素化転化反応器(ゲージ圧として表される)の代表的な圧力及び/または水素分圧は、独立して約55barg(例えば、約7barg〜約55barg、約14barg〜約41barg、または約21barg〜約38barg)未満であってもよい。
【0085】
いくつかの実施形態によれば、例えば、水素化熱分解反応容器が水素化転化反応容器の圧力をほんのわずかに超える圧力で作動する場合(例えば、多くとも約3.5bar超、または多くとも約2bar超)、通常作動の間、これらの容器間の差圧を少なくとも克服するために必要である、水素化熱分解反応器圧力が水素化転化反応器のものと実質的に同じであることが望ましくなり得る。同様に、使用する場合、前反応容器は、水素化熱分解反応容器のものをほんのわずかに超える圧力で作動されてもよい(例えば、多くとも約3.5bar超、または多くとも約2bar超)。このように、ガス流の圧縮に関連するコスト(例えば、再利用の水素含有流)を減少させることができる。反応器間の差圧が最小化される代表的なプロセスによれば、前反応容器は、水素化熱分解反応容器の下に直接配置されてもよく、または水素化熱分解反応容器の一部を形成してもよく(すなわち、前反応器の固体床材料は、水素化熱分解反応器と同じ物理的容器中に配置されてもよい)、その場合、前反応器及び水素化熱分解反応器の作動圧力が実質的に同じである。
【0086】
一体化された改質ステップから生成されるさらなる水素は、有利に、上述のように前処理(前反応容器中)及び/または水素化熱分解(水素化熱分解反応容器中)の水素必要量を少なくとも部分的に満たすために、使用されてもよい。特定の実施形態によれば、例えば、改質水素の第1の部分及び/もしくは第2の部分は、それぞれ、(i)前反応器蒸気流もしくはその一部を水素化熱分解するための水素化熱分解反応容器、ならびに/または(ii)前反応容器に導入されてもよい。それぞれの反応容器に導入されるとき、これらの部分は、本明細書において記載されているように、水素化熱分解及び/または前処理(例えば、脱揮発)と関連したバイオマス含有供給原料の所望の変換を促進するのに有効な温度まで加熱されてもよい。
【0087】
ヘテロ原子、例えばハロゲン(例えば、有機塩化物などの塩化物含有化合物の形態で)ならびに窒素(例えば、有機窒素含有化合物の形態で)及び硫黄(例えば、有機硫黄含有化合物の形態で)の比較的高い量(このような供給原料中に含有されるバイオマスに対して)を含有する、MSWなどの低品質の初期供給原料の場合、上述のように、水素化転化反応器生産物から回収される水素化転化反応器生産物及びガス混合物は、腐食及び安全懸念に関して問題があり得る、有害な量のHCl、HS、及びNHを含む、これらのヘテロ原子の水素化反応生成物を含む汚染物質ガスを含有してもよい。したがって、代表的なプロセスは、水素化転化反応器生産物またはガス混合物からこれらの汚染物質ガスのうちの1つ以上の少なくとも一部(例えば、全てまたは実質的に全て)を除去することを含んでもよい。このような除去は、例えば、上述のように、水素化転化反応器生産物及び/またはガス混合物の少なくとも一部を固体吸着剤、例えばCaCOもしくは塩化物除去(例えば、HClの形態で)の能力を有する、他の好適な鉱物と接触させることによって実現されてもよい。他の実施形態によれば、酸性及び/または塩基性汚染物質ガスを含有する上述のものを含む、汚染物質ガスは、ガス流を適切な液体スクラビング溶液(例えば、酸性汚染物質ガスの除去のための、NaOH溶液などの苛性溶液)と接触させることによって、効果的に除去されてもよい。
【0088】
代表的な実施形態
1つの代表的な実施形態によれば、バイオマス含有供給原料、例えばMSWまたは藻類から液体生成物を生成するためのプロセスは、上述のように水素及び固体床材料を格納する前反応容器において、供給原料を脱揮発して、同伴された固体粒子を含む前反応器蒸気流を生成することを含んでもよい。プロセスは、前反応器蒸気流から、固体豊富流及び精製された前反応器蒸気流(すなわち、前反応器蒸気流の濃度に対して、より低濃度の固体を有する固体枯渇蒸気流)を分離することをさらに含んでもよい。精製された前反応器蒸気流は、前処理された供給原料として働いてもよい。この場合、このような前処理された供給原料は、水素化熱分解反応容器中で水素化熱分解に供される前反応器プロセス蒸気流の一部である。水素化熱分解反応容器は、水素化熱分解ステップが、(i)水素化熱分解反応器中で消費されず、かつこの反応器で生じる任意の水性ガスシフト反応後に残存する、任意の化学量論的過剰量のHと共に、少なくとも1つの非凝縮性ガス(例えば、H、CO、CO、ならびに/またはCH、C、及び/もしくはCなどの1つ以上の低分子量炭化水素ガス)、(ii)部分的に脱酸素化された水素化熱分解生成物(例えば、凝縮性蒸気の形態で)、ならびに(iii)前反応器蒸気流中で同伴されたチャー粒子の、平均粒径及び/または平均粒子量未満である平均粒径及び/または平均粒子量をそれぞれ有するチャー粒子を含む熱分解反応器生成物を生成するように、水素及び第2の触媒または固体床材料(例えば、脱酸素化触媒)を格納してもよい。プロセスは、水素化熱分解反応器生産物からチャー粒子の少なくとも一部、好ましくは実質的に全てを除去し、精製された水素化熱分解反応器生産物(すなわち、水素化熱分解反応器生産物の濃度に対して、より低濃度の固体を有する固体枯渇水素化熱分解反応器生産物)を提供することを含んでもよい。プロセスは、上述のように水素化転化反応容器において、または少なくとも1つの水素化転化触媒を使用して、1つ以上の水素化転化反応容器を直列または並列に含む水素化転化ゾーンにおいて、部分的に脱酸素化された水素化熱分解生成物を水素化転化することを含んでもよい。水素化転化は、分離されていない上記の、水素化熱分解生産物成分(i)、(ii)、及び(iii)の少なくとも一部の存在下で生じ(例えば、同伴されたチャー粒子を除去するために)、実質的に完全に脱酸素化された炭化水素液生成物を生成する。また、水素化転化反応容器またはゾーン中で消費されず、かつこの反応器またはゾーンで生じる任意の水性ガスシフト反応後に残存する、任意の化学量論的過剰量のHと共に、C〜C炭化水素(パラフィンもしくはオレフィンであってもよい)ならびに水素化転化反応容器またはゾーン中で生じる任意のメタン化反応後に残存する、任意のCO及び/もしくはCOを含む、非凝縮性または低分子量ガスが生成される。
【0089】
図1は、バイオマス含有供給原料の前処理のステップ後、前処理から生成される前反応器蒸気流の水素化熱分解を行うための1つの可能な、非限定的なシステム110(その境界は、ボックスによって定められる)を表す。この特定の実施形態によれば、バイオマス含有供給原料(例えば、MSW)は、前反応器ガス入口114を通じて前反応器120に導入される前反応器ガスと合わされた後に供給原料入口112を通じて前反応器120の下部区分(例えば、底部)に導入される。供給原料及び前反応器ガスは、同じまたは異なる位置、例えば粒子床116内で前反応器120に導入されてもよい。供給原料及び前反応器ガスの両方はまた、独立的に、複数の位置で導入されてもよい。例えば、前反応器ガスは、温度及び/または局所的なガス速度を制御する、または反応ガス(例えば、水素)の消費量の均一性を改善する目的のために、前反応器120の複数の軸方向の高さ(粒子床116内及び/またはその外部に対応する)で導入されてもよい。供給原料入口112及び前反応器ガス入口114は、全システム110への入口を表す。
【0090】
前反応器ガスは、水素を含有し、この反応器中に含有される粒子床116の固体粒子の一部もしくは全ての流動化のために、前反応器120内で、十分な空塔速度を有してもよい。粒子床116は、一般に、粒子床界面118で生じる気固分離のため、例えば、前反応器120内の前反応器ガスが、粒子床116を流動化するが、固体床材料のエントレインメント(エラトリエーション)に対する不十分な空塔速度を有する場合、供給原料入口112を通じて導入されるバイオマス含有供給原料の粒子及びまず前反応器120に装入され、この反応器中に保持されてもよい固体床材料を含む。このため、粒子床界面118は、拡張されたもしくは静止した、高密度の床相の上側境界、または固定床の上側境界を表してもよい。前反応器120から出る前反応器蒸気流136から、確実に固体床材料を完全または実質的に完全に分離するために、拡張径気固離脱ゾーン124は、粒子床界面118より上の、この反応器の上部区分(例えば、フリーボード領域)に含まれてもよい。気固離脱ゾーン124は、一般に、前反応器120中に用いられる作動条件下で、固体床材料の粒子について輸送離脱高さ(TDH)より上の高さまで延在する。気固離脱ゾーン124は、通常なら、粒子床116を通じてより高い空塔ガス速度で水簸される比較的小さい直径の固体粒子の有効な離脱を促進する、減少した空塔ガス速度のゾーンを提供することができる。必要に応じて、気固分離は、機械的分離装置、例えば気固離脱ゾーン124内のサイクロン(図示せず))を使用して、さらに改善されてもよい。
【0091】
バイオマス含有供給原料及び固体床材料の両方は、固体粒子を移動させるための好適な機械設備、例えばオーガまたはスクリュー押出機を使用して、前反応器120に導入されてもよい。キャリアガスの高速移動流(例えば、約5m/sec超の空塔速度を有する不活性ガス)は、前反応器120中へのバイオマス含有供給原料及び/または固体床材料の導入を補助するために、単独でまたは前反応器ガスと組み合わせて使用されてもよい。
【0092】
上述したように、前反応器120中の固体床材料は、触媒、吸着剤、伝熱媒体として作用することができ、またはこれらの機能のいくつかの組合せを提供することができる。特定の実施形態において、この材料は、例えば摩擦によるあらゆる損失を補償するために、床材料入口132を通じて前反応器120に連続的または断続的に導入されてもよい。あるいは、固体床材料は、粒子床116から固体の意図的な除去に伴う損失を補償するために、導入されてもよい。上述のように、固体は、初期供給原料(例えば、供給原料入口112を通じて導入される)に対して、不所望の特徴、または改善された特徴を有する固体バイオマス含有供給原料(例えば、粒子床116における固体粒子の少なくとも一部を表す)が富む固体粒子床116内で1つ以上の軸方向の高さに対応する1つ以上の固体ドローオフ出口134から除去されてもよい。
【0093】
1つの代表的な実施形態によれば、バイオマス含有供給原料は、前反応器120の環境下で比較的不活性である供給原料の粒子が富む軸方向の高さで、粒子床116から選択的に除去される。例えば、供給原料の粒子は、それらの組成が前反応器120からの十分な脱揮発及び次のエラトリエーションを可能にしない場合、粒子床116において蓄積され得る。このような粒子は、固体ドローオフ出口134を使用することなく、無期限に前反応器120中に残存し、粒子床116の増加する割合を占め、かつ前反応器120の目的の作動を最終的に妨害する、ガラス、金属、またはプラスチックの粒子を含み得る。
【0094】
不所望の特徴、例えば高灰分または高い非生物学的材料含有量において富むバイオマス含有供給原料を除去する場合、前反応器120中に残存する供給原料は、初期供給原料より優れた改善された特徴、すなわち減少した灰分を必然的に有する。このため、この除去により本明細書において定義されるように前処理ステップをもたらし、これは、前反応器120においてインサイチュで行われ、これにより前反応器120から出る前反応器蒸気流136に加えて、粒子床116に残存する供給原料は、前処理された供給原料である。この実施形態によれば、本明細書において定義されるように、前処理ステップ及び脱揮発ステップの両方は、前反応器120中で同時に行われてもよい。不所望の特徴において富む、固体ドローオフ出口134を通じて除去される供給原料は、前処理された供給原料が使用される様式と異なる様式であっても、非生物学的材料(例えば、プラスチック)の回収/再生利用のために送られてもよく、またはさらなる処理ステップ(例えば、水素化熱分解)で使用されてもよい。例えば、除去された供給原料は、前処理された供給原料に対して、異なる位置(例えば、異なる軸方向の高さ)で、異なる温度で、及び/または異なる設備(例えば、スクリュー押出機)で水素化熱分解反応容器に供給されてもよい。前反応器120中で同時に行われている前処理ステップ及び脱揮発ステップの両方の別の例としては、固体床材料は、通常なら、このような固体床材料の非存在下で、前反応器蒸気流136(例えば、HClの形態で)の前反応器120から出る塩化物などの腐食種に対する吸着能力を有してもよい。この場合、同伴された固体粒子を含む前反応器蒸気流136は、供給原料入口112を通じて導入される初期供給原料より優れた減少した腐食種含有量に関して、改善された特徴を有する前処理された供給原料である。
【0095】
改善された特徴を有している、または不所望の特徴において富む、及び本明細書において記載される一体化プロセスにおいてさらに処理されるかどうかを問わず、前反応器120から除去された供給原料の任意の使用に先立って、固体床材料の一部もしくは全てからのその分離(例えば、サイズまたは密度によって)が行われる。このように分離される任意の固体床材料は、例えば、床材料入口132を通じて、前反応器120に返送されてもよい。このため、特定の作動に応じて、固体ドローオフ出口134を通じて粒子床116から取り出される固体は、全システム110からの生産物を表すことができ、またはこのシステム内で保持されてもよい。特定の実施形態において、取り出された固体の異なる部分(例えば、それぞれ、供給原料及び固体床材料に富む部分)は、全システム110からの生産物であってもよく、またはその中で保持されてもよい。
【0096】
より均一の粒径を有するなどの所望の特徴(例えば、上述のように改善された特徴のうちの1つ以上を有する)に富む供給原料を除去する場合、この除去は、本明細書で定義されるように前処理ステップをもたらし、除去された供給原料は改善された特徴を有し、例えば固体床材料の一部もしくは全てからのその分離(例えば、サイズまたは密度によって)後、さらなる処理ステップ(例えば、水素化熱分解)において、それをより容易にアップグレード可能にする。このように分離される任意の固体床材料は、例えば、床材料入口132を通じて、前反応器120に返送されてもよい。
【0097】
前述からみて、粒子床116の流動化は、本明細書において記載される多くの可能性がある特徴、特に、流体力学特性に関連するそれらの特徴、すなわち、減少した平均粒径、減少した平均粒子空気動力学径、増加した平均粒子表面積対質量比、及びより均一の粒径に従って、供給原料入口112を通じて導入される初期供給原料を有利に分類する働きをしてもよい。別の代表的な実施形態によれば、前反応器120内の供給原料の留分は、所与の一連の条件下で、全く流動化され得ない。したがって、このような留分は、減少した平均粒子表面積対質量比(例えば、供給原料中に含有されるガラスまたは高密度金属粒子に富む)を有する、除去された供給原料と共に、粒子床116の底部で、またはその付近で配置される固体ドローオフアウトレット134を通じて除去されてもよく、それによって、本明細書で定義されるようにインサイチュでの前処理ステップをもたらされ、粒子床116中に残存する前処理された供給原料が、増加した平均粒子表面積対質量比の改善された特徴を有する。さらなる実施形態によれば、前反応器120中の空塔ガス速度は、前反応器120内の異なる軸方向の高さで特定の流体力学特性を有する固体粒子を分離/集めるために、変動させてもよい(例えば、粒子床116内の断面積を変動させることによって)。
【0098】
前反応器ガス入口114を通じて導入されるガス、前反応器120中で使用される条件、及び固体ドローオフ出口134の位置決めに応じて、好適な前処理ステップは、任意に脱揮発ステップと組み合わせて、前反応器120中で実行されてもよい。前述から明らかなように、前処理及び脱揮発ステップの両方が行われる場合、それらは、前反応器120に導入される供給原料の全て、または、前反応器120から十分に脱揮発/熱分解及び水簸されるまで、粒子床116から除去されるまたはこの粒子床に保持される、この供給原料の異なる留分に実行されてもよい。
【0099】
前反応器120中で行われるとき、供給原料の脱揮発及び任意の熱分解(例えば、水素化熱分解)は、高温を必要とする。したがって、多くの場合、床材料入口132を通じて、連続的(例えば、さらに詳細に後述するような再生成後)または断続的に導入される任意の固体床材料が、供給原料を脱揮発及び任意に熱分解するために十分な熱を前反応器120へ伝える便利な伝熱媒体として作用することが望ましくなり得る。熱を伝えるこの機能は、上述のように、触媒及び/または吸着機能を含む、固体床材料の他の機能と組み合わされてもよい。熱は、固体床材料に代わるものとして、またはそれと組み合わせて、前反応器ガス及びバイオマス含有供給原料を使用して、前反応器に伝えられてもよい。バイオマス含有供給原料、固体床材料、前反応器ガス、またはそれらの任意の組合せのいずれかは、前反応器120に入る前に加熱されてもよい。
【0100】
伝熱媒体としての機能に加えて、固体床材料は、触媒活性、例えば上述のように水素化転化(例えば、水素化処理)触媒活性を呈して、中間体(下流の作動においてさらに反応することができる)またはさらに所望の最終生成物に対する、脱揮発及び/または熱分解の生成物の少なくとも一部の変換を促進する。触媒活性は、例えば、H、CO、CO、及びCHを含む非凝縮性ガスの量、ならびに芳香族、酸素化炭化水素(例えば、フェノール及びクレゾール)などの凝縮性ガスの量及び種類に関して、所望の組成に対する、脱揮発及び/または熱分解のガス生成物の変換を促進することができる。代表的な固体床材料は、脱酸素活性、分解活性、水性ガスシフト活性、メタン化活性、及びそれらの組合せを含む1つ以上の特定の触媒活性を有してもよい。本開示を参照する当業者は、前反応器120の環境において使用するための固体床材料に対する1つ以上の所望の触媒活性を付与するための、好適な、活性触媒金属(例えば、Co、Mo、Ni、V、W、Pd、Pt、Rh)ならびに好適な触媒担持材料(例えば、シリカ及びアルミナなどのアモルファスまたは結晶性金属酸化物、ZSM−5を含むMFI型ゼオライトなどのゼオライト、及びSAPO型材料などの非ゼオライトモレキュラーシーブ)について知らされている。
【0101】
いくつかの実施形態によれば、固体床材料の少なくとも一部の触媒活性は、下流の水素化熱分解反応器中で使用される同じ種類及び程度が望ましくなり得る。他の実施態様において、活性の程度(レベル)が異なる以外、同じ種類の触媒活性が望ましくなり得る。このような実施形態において、前反応器及び水素化熱分解反応器のための固体床材料、この場合、触媒は、異なる量の活性を有する以外、担持材料上に触媒金属を堆積させる、同じ種類の材料を含んでもよい。あるいは、より大きな触媒活性がその作動において要求される場合、新しい条件の触媒が水素化熱分解反応器中で使用されてもよいが、減少した触媒活性がその作動において要求される場合、部分的に使用済み(例えば、部分的にコークス化された)の同じ触媒が前反応器中で使用されてもよい。したがって、便利には、触媒は、水素化熱分解反応器から連続的または断続的に除去(例えば、活性において特定のコークスレベルまたは減少を達成した後)されて、前反応器に、連続的または断続的に導入されてもよい。床材料入口132が水素化熱分解反応器から部分的に使用済み触媒を導入するために使用されるかどうか、またはそれが外部源から固体床材料を導入するために使用されるかどうかに応じて、床材料入口132は、全システム110への入口を表しても表さなくてもよい。代替的実施形態において、より高い触媒活性が水素化熱分解反応器に関連する前反応器において望まれる場合、新しい触媒が後者に使用されてもよく、前者へ連続的または断続的に移送されてもよい。
【0102】
前反応器120の気固離脱ゾーン124において、床材料及び非水簸されたチャー粒子の離脱後、前反応器蒸気流136は、前反応器120から取り出されてもよい。前反応器蒸気流136は、一般に、任意に固体床材料の粒子(例えば、磨砕した微粒子)と組み合わせて、同伴されたまたは水簸されたチャーの固体粒子を含む。流動化条件は、所与のチャー及び/または固体床材料切断径を設定するために前反応器120内で制御することができ、それ以上は、チャー及び/または固体床材料が、粒子床116に返送、またはそれの中に保持され、それ以下は、チャー及び/または固体床材料が、蒸気流136において前反応器120から除去される。このように、固体供給原料粒子の滞留時間は、切断径に対応する、所望の程度に脱揮発/熱分解されるまで、供給原料が前反応器120を出るのを妨げる限り、制御することができる。チャー及び固体床材料の潜在的に異なる密度及び表面幾何学形状のため、チャー及び固体床材料について切断径は、様々な目的を実現するために異なり、選択されてもよい。上述のように、サイクロンなどの機械的設備は、切断径に影響する流動化条件(例えば、空塔ガス速度)と組み合わされてもよい。例えば、温度、全圧、及び/または水素分圧を含む、前反応器120中の他の条件の制御と共に、チャー滞留時間の制御は、供給原料の初期特徴ならびに粒子床116から取り出される前反応器蒸気及び/または任意の供給原料の所望の特徴に合わせて調整されるように、粒子流動化条件下でバイオマス含有供給原料の脱揮発、熱分解、及び/または水素化熱分解を促進してもよい。
【0103】
同伴されたチャー粒子に加えて、前反応器120から出る前反応器蒸気流136は、一般に、脱揮発から形成されるまた場合により、所望の程度の熱分解から形成されるガス生成物を含有する。このようなガス生成物は、CO、CO、HO、炭化水素、及び酸素化炭化水素を含むことができる。触媒メタン化活性(及び潜在的に水性ガスシフト活性)を有する固体床材料の使用と共に、前反応器120の特定の作動条件下で、CO及び/またはCOは、CHに実質的、または完全に変換されてもよく、この場合、CO及び/またはCOは、前反応器蒸気流136に実質的、または完全になくてもよい。高メタン化環境において、前反応器蒸気流136が、この流れの全ての非凝縮性ガスの量に対して、CO及びCOの総量の5vol−%未満、またはさらに1vol‐%未満を含むことが望ましくなり得る。
【0104】
図1の実施形態によれば、前反応器蒸気流136は、同伴された固体、例えば、固体床材料のチャー及び/または微粉の除去のために、任意の前反応器気固分離器138に供給される。同伴された固体は、フィルタ、外部サイクロン、静電分離器、液体接触器(例えば、バブラー)などを含む、機械的装置を使用して除去されてもよい。前反応器気固分離器138が使用される場合、前反応器蒸気流136に対して、減少した含有量の固体を有する、精製された前反応器蒸気流140が得られる。固体を分離するための特定の方法に応じて、前反応器蒸気流136に対して、増加した含有量の固体を有する、固体豊富流142も得られてもよい。例えば、外部サイクロン、静電分離器、及び他の機械的装置は、比較的濃縮された固体粒子の連続的な固体豊富流142を提供することができる。一般に、固体豊富流142中の固体粒子が、精製された前反応器蒸気流140中に残存する任意の固体粒子と比較して、より高い平均粒径及び/またはより高い平均粒子量を有する。気固分離器138が使用される場合、前反応器蒸気流136の一部、すなわち、精製された前反応器蒸気流140は、水素化熱分解反応器150に導入されてもよく、固体豊富流142は、システム110からの生産物を表してもよい。次に、気固分離器が使用されない場合、前反応器120から同伴された固体を含む、全ての前反応器蒸気流136は、水素化熱分解反応器150中に導入されてもよい。
【0105】
前反応器蒸気流136の全てまたは一部に加えて、水素含有流144はまた、水素化熱分解反応器150に導入されてもよく、使用される場合(例えば、図1において表される特定の実施形態により)、全システム110への入口を表す。水素含有流144は、図1に示すように、水素化熱分解反応器150の底部に導入されてもよく、前反応器蒸気流136または精製された前反応器蒸気流140中に存在する任意の固体粒子を同伴する働きをしてもよい。水素含有流144は、温度及び/もしくは局所的なガス速度を制御する、または消費水素の均一性を改善する目的のために、水素化熱分解反応器150の複数の軸方向の高さ(脱酸素化触媒床146内及び/またはその外部の高さに対応する)で導入されてもよい。
【0106】
したがって、水素化熱分解反応器150は、脱酸素化触媒床146を格納してもよく、その上が拡張径ガス触媒離脱ゾーン148であり、前反応器120の気固離脱ゾーン124と同様に機能する。加えて、1つ以上の脱酸素化触媒入口152及び1つ以上の脱酸素化触媒ドローオフ出口154は、水素化熱分解反応器150へならびに/またはそれから脱酸素化の、連続的もしくは断続的な導入及び/もしくは除去を提供してもよい。例えば、新しい脱酸素化触媒は、脱酸素化触媒入口152を通じて、連続的または断続的に導入されてもよく、使用済みまたは部分的に使用済み脱酸素化触媒は、脱酸素化触媒ドローオフ出口154を通じて、連続的または断続的に除去されてもよい。上述の特定の種類の作動によれば、除去された触媒は、前反応器120の床材料入口132へ移送され、部分的に使用済みの触媒の形態で固体床材料を提供してもよい。脱酸素化触媒入口152及び脱酸素化触媒ドローオフ出口154が使用されるかどうか、ならびに水素化熱分解反応器150から除去される触媒が前反応器120中で使用されるかどうか(または、金属再生利用のために再生成または送られる)に応じて、脱酸素化触媒入口152は、全システム110への入口を表すことができ、脱酸素化触媒ドローオフ出口は、全システム110からの出口を表すことができる。
【0107】
前反応器蒸気流136(例えば、精製された前反応器蒸気流140)の少なくとも一部は、水素及び脱酸素化触媒の存在下で、水素化熱分解反応器150中の水素化熱分解ステップに供されてもよい。1つ以上の非凝縮性ガス、部分的に脱酸素化された水素化熱分解生成物、及び水素化熱分解反応容器150中で生成されるチャー粒子を含有する、水素化熱分解反応器生産物156は、除去される。前反応器蒸気流136に関して上述したように、水素化熱分解反応器生産物156中の非凝縮性ガスは、例えば、脱酸素化触媒のメタン化活性及び水性ガスシフト活性に応じて、相対的割合で、H、CO、CO、CH、及びそれらの混合物を含むことができる。実質的なメタン化活性を有する脱酸素化触媒の場合、CO及び/またはCOは、水素化熱分解反応器生産物156に実質的になくてもよい。例えば、水素化熱分解反応器生産物156が、存在する全ての非凝縮性ガスの量に対して、CO及びCOの総量の5vol−%未満、またはさらに1vol−%未満を含むことが望ましくなり得る。
【0108】
図1に示した実施形態によれば、水素化熱分解反応器生産物156の実質的に全てのチャー粒子は、水素化熱分解反応器気固分離器158中で除去される。同伴されたチャー粒子は、例えば外部サイクロン、静電分離器、及び比較的濃縮されたチャー粒子の流出物流を提供する、他の機械的装置の場合、フィルタ、外部サイクロン、静電分離器、液体接触器(例えば、バブラー)などを含む、機械的装置を使用して除去し、減少したチャー含有量及び任意のチャー豊富流162を有する精製された水素化熱分解蒸気流160を提供してもよい。精製された水素化熱分解蒸気流160及び任意のチャー豊富流162の両方は、システム110から出る生産物を表す。
【0109】
図2は、前反応器220及び水素化熱分解反応器250が積層関係である、非限定的な代替的なシステム210(その境界は、ボックスによって定められる)を示す。この構成は、特定の場合、例えば、これらの反応器220、250中の作動条件(例えば、温度及び/または圧力)が同じまたは同様である場合において有利であり得る。あるいは、この構成は、水素化熱分解反応器250から出る、前反応器蒸気236中に同伴された固体粒子(例えば、図1に示される前反応器気固分離器を使用して)の外部分離がない実施形態において用いられてもよい。この構成を使用して、水素化熱分解反応器250及び任意の前反応器220の両方について、水素必要量を含むガス必要量の一部または全ては、前反応器ガス入口214を通じて提供されてもよい。しかしながら、これらのガス必要量の一部または全ては、代わりに、前反応器ガス入口214と水素含有流244との組合せ、任意に他のガス入口(図示せず)との組合せによって、提供されてもよい。
【0110】
前反応器220中の粒子床216からの水素化熱分解反応器250中の脱酸素化触媒床246の分離は、上方へ流れる前反応器蒸気236によってある程度補助されてもよく、これに関しては、例えば、水素化熱分解反応器250の基部の収縮開口275にこの蒸気を通すことによって、それが水素化熱分解反応器250に入るので、この蒸気の空塔速度が増加し得る。収縮開口275は、一般に、前反応器220の断面積未満、または前反応器220の気固離脱ゾーン224の少なくとも断面積未満である断面積を有する。収縮開口275は、水素化熱分解反応器250内の脱酸素化触媒床246を維持するために、1つ以上の機械的分離要素(例えばスクリーン、メッシュ、不活性材料など)によって覆われてもよい。例えば、収縮開口275は、好適なサイズまたは直径の開口を有するスクリーンによって覆われてもよく、これによって前反応器蒸気236中の水簸された固体粒子を水素化熱分解反応器250中に送ることができるが、脱酸素化触媒を前反応器220中に送ることはできない。
【0111】
図2に示される実施形態の前述から明らかなように、前反応器220及び水素化熱分解反応器250は、単一の容器を共に含んでもよい。図1に示される実施形態のように、前反応器220及び水素化熱分解反応器250は、それぞれ、気固離脱ゾーン224及びガス触媒離脱ゾーン248を含むことができ、これらは、それぞれ、前反応器蒸気236からの固体床材料及び水素化熱分解反応器生産物256からの脱酸素化触媒の有効な離脱のために、粒子床216及び脱酸素化触媒床248より上の十分な高さまで延在する。この離脱の効率または程度は、機械的分離装置、例えば気固離脱ゾーン224及び/またはガス触媒離脱ゾーン248内のサイクロン(図示せず)を使用して改善されてもよい。機械的分離装置が使用されるかどうかを問わず、離脱ゾーン224、248内で生じる有効な離脱は、前反応器蒸気236中の少量の固体床材料及び/または水素化熱分解反応器生産物256中の少量の脱酸素化触媒の存在を排除せず、これらの少量は、例えば、摩擦による機械的破損から生じる微細固体粒子を含んでいる。このような微細固体粒子、ならびに同伴されたチャー粒子は、例えば、水素化熱分解反応器気固分離器258を使用して、さらなる分離ステップにおいて除去され、精製された水素化熱分解蒸気流260及び任意のチャー豊富流262を得てもよく、その両方はシステム210からの生産物を表す。気固分離器258はまた、水素化熱分解反応器から出る同伴されたチャー粒子の除去のために、図1に示される実施形態に関して記載したような任意の装置を含んでもよい。
【0112】
図1に示される実施形態に関して記載される他の特徴は、図2に示される実施形態において同じまたは類似の様式で機能する。これらの特徴は、システム210に対する入口、例えば供給原料入口212、前反応器ガス入口214、水素含有流244、床材料入口232、及び脱酸素化触媒入口252を表すものを含む。これらの特徴はまた、システム210からの可能性がある出口、例えば固体ドローオフ出口234、チャー豊富流262、及び脱酸素化触媒ドローオフ出口254を表すものを含む。前反応器120、220、または水素化熱分解反応器150、250に対する、固体(例えば、供給原料、固体床材料、及び/もしくは触媒)の導入は、固体粒子を移動させるための好適な機械設備、例えばオーガまたはスクリュー押出機を使用して、実現されてもよい。キャリアガスの高速移動流(例えば、約5m/sec超の空塔速度を有する不活性ガス)は、固体の導入を補助するために、単独で、または本明細書に記載されるプロセスガス流と組み合わせて使用されてもよい。
【0113】
同様に、前反応器120、220または水素化熱分解反応器150、250からの固体(例えば、灰分に富むまたはいくつかの他の望ましくない特徴を有する供給原料)の取り出しは、同様の設備、例えば固体除去スクリューを使用して、またはあふれ管、順次循環されたロックホッパー、または他の既知の設備を使用して実現されてもよい。1つの特定の実施形態によれば、上述のように、前反応器120、220の固体ドローオフ出口134、234から取り出される固体は、触媒水素化処理活性を有する固体床材料を含んでもよい。この活性は、不純物、例えば炭素(コークス)、溶解プラスチック、及び他の反応生成物または供給原料不純物が、固体床材料上に堆積するので、時間と共に低下する。したがって、固体ドローオフ出口134、234からの除去後、水素化処理触媒である固体床材料は、蓄積されたコークス及び他の不純物を酸素により燃焼させて、好適な再生成に供され、前反応器120、220に返送(例えば、床材料入口132を通じて)、またはさらに水素化熱分解反応器150、250に導入(例えば、脱酸素化触媒入口152、252を通じて)されてもよい再生成された固体床材料を得てもよい。任意のそのような再生成及び再生成された触媒の再利用の前に、固体床材料が除去される位置(例えば、前反応器120、220の軸方向の高さ)で粒子床116、216に含有される、他の固体(例えば、供給原料から生成されるチャー粒子及び/または供給原料中に含有される不活性材料)から、除去された固体床材料(例えば、使用済み水素化処理触媒)を分離することが望ましくなり得る。同様の様式において、水素化熱分解反応器150、250の脱酸素化触媒床146、246から取り出された脱酸素化触媒はまた、任意に、脱酸素化触媒が除去される位置(例えば、水素化熱分解反応器150、250の軸方向の高さ)で、脱酸素化触媒床146、246中に含有される他の固体(例えば、チャー粒子)からの分離後に、再生成されてもよい。
【0114】
有利には、水素化処理活性を少なくとも部分的に復元するために、前反応器120、220から取り出された固体床材料、または水素化熱分解反応器150、250から取り出された脱酸素化触媒の流動床再生成は、前反応器120、220の作動に関して上述したような同様の様式で、種々の固体を分類するように同時に作用することができる。すなわち、異なった流体力学特性を有する固体は、流動化の適切な条件下(例えば、空塔ガス速度)の、流動床再生成容器内で異なる軸方向の高さで、分離/集中させることができ、それらは、所望の分離を実現するために取り出されてもよい。例えば、前反応器120、220から取り出される固体床材料の場合、流動化するのがより困難である(または、全く流動化され得ない)、比較的低い表面積対質量比を有する粒子(例えば、金属、ガラス、及び/または他の不活性材料)は、流動床の底部付近で(またはそこで)集められがちであってもよい。流体力学特性に基づく他の例示的な分離によれば、灰(脱炭素化されたチャーの形態で)は、流動床再生成容器の上部区分または頂部から取り出されてもよい(例えば、出ているガス流、例えば燃焼(送気管)ガス流出物中に水簸される粒子として)。減少したコークス含有量を有する再生成された触媒は、流動床再生成容器(例えば、流動化粒子床内から)の中央区分から取り出され、前反応器120、220に返送され、かつ/または水素化熱分解反応器150、250中で用いられてもよい。他の実施形態によれば、流動床再生成容器中の空塔ガス速度は、再生成容器内の異なる軸方向の高さで特定の流体力学特性を有する固体粒子を分離/集めるために、変動させてもよい(例えば、流動床内の断面積を変動させることによって)。
【0115】
いくつかの水素化処理触媒、特に触媒金属(例えば、CoMo及びNiMo触媒)としてCo、Ni、ならびに/またはMoを有するものは、触媒活性を残存させるために、それらの硫化(もしくは酸化)状態で存在するためにこれらの金属を必要とする。具体的には、硫化触媒がその通常の使用中に十分な硫黄(例えば、HSとして)にさらされない場合、これらは硫化金属部位の損失のため時間と共に不活性化になり得る。その結果、前反応器120、220から取り出される固体床材料または水素化熱分解反応器150、250から取り出される脱酸素化触媒は、流動床再生成に関して上述したように、異なる流体力学特性を有する固体粒子を分類することに関して、同じ利点を有する、流動床硫化に供されてもよい。したがって、粒子の異なる流体力学特性に基づく、上述の例示的な分離は、流動床硫化及び流動床再生成の両方に適用可能である。したがって、ガス状流出物流中に水簸された、微細固体を分離する場合、これらの固体は、再生成容器の燃焼(送気管)ガス流出物または硫化容器の水素含有硫化流出物中で除去されてもよい。
【0116】
酸化雰囲気中の堆積コークスの燃焼を伴う触媒再生成とは異なり、好適な触媒硫化は、還元条件下で実行される。固体床材料または脱酸素化触媒を硫化するための好ましい流動化ガスは、主に、少量の硫化水素(HS)または硫化条件下でHSを形成する前駆体化合物を有する水素含有ガスである。例えば、流動化ガスは、少なくとも50モル−%のH2(例えば、約50モル−%〜約99モル−%)、約3モル−%未満のHS(例えば、約250モル−ppm〜約3モル−%、より典型的には、約1000モル−ppm〜約1モル−%)を含んでもよい。硫化する取り出された触媒に加えて、高温でのこのような水素含有流動化ガスの使用は、触媒上に堆積されるコークスの水素添加ガス化、及び流動床硫化容器に運ばれてもよい任意のチャーの水素添加ガス化を促進する。水素添加ガス化は、固体床材料または脱酸素化触媒からのコークス堆積物を有利に除去することができ、これは触媒活性または他の機能(例えば、吸着能力)を復元する助けになることができる。加えて、コークス及びチャーの水素添加ガス化は、流動床硫化容器からのガス流出物中のメタン及び他の軽質炭化水素を形成するために使用することができる。特定の実施形態において、好適なメタン化触媒(例えば、担持ニッケル触媒)は、水素添加ガス化条件下、または流動床硫化容器からのガス流出物に実行される別々の反応ステップ(例えば、メタン化反応器中)のメタンの生成を促進するために、使用されてもよい。
【0117】
図3は、図1の実施形態におけるシステム110または図2の実施形態におけるシステム210に関して上述したように、システム310を導入する一体化水素化熱分解プロセスの実施形態を示す。したがって、システム310に対する入口は、バイオマス含有供給原料(例えば、MSW)、ならびに前反応器及び水素化熱分解反応器に対するガス供給物の導入のための前反応器ガス入口314及び水素含有流344(使用する場合)の導入のための供給原料入口312をそれぞれ含む。任意の入口は、床材料入口332及び脱酸素化触媒入口352を含む。システム310からの任意の出口は、固体豊富流342(例えば、図1のシステム110の場合)、ならびに固体ドローオフ出口334、チャー豊富流362、及び脱酸素化触媒ドローオフ出口354を含む。
【0118】
図3に示すように、水素化熱分解反応器生産物からの実質的に全てのチャー粒子の除去後、精製された水素化熱分解蒸気流360は、さらなる処理のために送られるシステム310からの生産物である。上述のように、精製された水素化熱分解蒸気流360は、一般に、少なくとも1つの非凝縮性ガス(例えば、H、CO、CO、及び/またはCH)、水蒸気、ならびに部分的に脱酸素化された水素化熱分解生成物を含む他の凝縮性蒸気を含む。精製された水素化熱分解蒸気流360の温度は、例えば、水素化転化ゾーン入口熱交換器365を使用して、必要に応じて調整(加熱または冷却)し、水素化転化ゾーン375中に所望の条件を得てもよい。水素化転化ゾーン入口熱交換器365は、外部熱交換媒体(例えば、冷却水または高圧蒸気)、一体化プロセス内部の交換媒体(例えば、供給流)、またはそれらの組合せを用いてもよい。水素化転化ゾーン375は、1つ以上の水素化転化反応容器を含んでもよい。一実施形態によれば、単一の水素化転化反応容器は、水素化転化ゾーン375中に使用される。反応容器は、さらなる脱酸素によって、上述のような特性を有する実質的に完全に脱酸素化された炭化水素液体を提供するために、最終的に凝縮されてもよい実質的に完全に脱酸素化された炭化水素生成物に、部分的に脱酸素化された水素化熱分解生成物を変換するための単一タイプの水素化転化触媒を格納してもよい。
【0119】
水素化転化ゾーン375において使用に好適な触媒は、上述のように、所望の水素化脱酸素、脱カルボニル、及び脱炭酸反応を促進するために、水素化処理活性を有するものが挙げられ、この割合は、1つ以上の水素化転化反応容器を含む、水素化転化ゾーン375において使用される特定の作動条件(例えば、圧力または水素分圧)により制御されてもよい。このような触媒はまた、ガスNH、HS、及び/またはHClの形態で、部分的に脱酸素化された水素化熱分解生成物からヘテロ原子を除去するために必要である、水素化脱窒素、水素化脱硫、及び/または水素化脱塩素を促進するために、使用されてもよく、これらは、それらからのガス混合物の下流の相分離によって、完全に脱酸素化された炭化水素液体から除去されてもよい。ヘテロ原子の除去に対する必要性は、こうしたヘテロ原子の含有量を含む、処理される特定のバイオマス含有供給原料の特性に大きく依存する。
【0120】
いくつかの実施形態によれば、単一の水素化転化反応容器は、上述のように水素化処理活性及び任意に他のハイドロプロセス活性を有する触媒を有する(例えば、水素化分解及び/または水素化異性化活性)、水素化転化ゾーン375において使用される。異なる活性は、単一の触媒(例えば、担持材料上の酸性部位の導入によって、水素化分解活性に加えて水素化処理活性を有する触媒)により提供することができる。あるいは、異なる活性は、水素化転化反応容器内で目立たない触媒床(例えば、所望の程度の脱酸素を行うための、水素化処理活性を主に有する触媒の上流床、及び実質的に完全に脱酸素化された炭化水素液体の分子量を減少するための、水素化分解活性を主に有する触媒の下流床)に配置される、上述のように異なるハイドロプロセス活性を有する複数の触媒により提供することができる。あるいは、異なる活性は、所望の混合比の複数の触媒を使用して、単一の触媒床の全体にわたって均一に分散される複数の触媒により提供することができる。
【0121】
なおさらなる実施形態によれば、水素化転化ゾーン375は、例えば、並列または直列で配置され、異なるハイドロプロセス活性を有する触媒を含有し、かつ異なる条件(例えば、異なる圧力及び/または温度)下で作動される、2つ以上の水素化転化反応容器を含んでもよい。特定の実施形態において、水素化処理活性を有する触媒を含有する第1の水素化転化反応容器は、水素化分解活性を有する触媒を含有する第2の水素化転化反応器に直列かつ上流に配置されてもよい。あるいは、これらの第1及び第2の水素化転化反応器は、並列に配置されてもよい。当技術分野における技術を有し、本開示から得られる知識から利益を得る当業者に理解されるように、処理される特定のバイオマス含有供給原料の特性に基づいて、種々の構成で配列される、1つ以上の水素化転化反応容器中の異なるハイドロプロセス触媒の使用は、実質的に完全に脱酸素化された炭化水素液体の所望の特徴を実現よるように調整することができる。
【0122】
水素及び他の非凝縮性ガス(例えば、CO、CO、及び/またはCH)を含むガス混合物を含有する、水素化転化ゾーン生産物380(例えば、水素化転化反応器からの流出物または生産物)は、外部熱交換媒体(例えば、冷却水)、一体化プロセス内部の交換媒体(例えば、供給流)、またはそれらの組合せを用いてもよい、水素化転化ゾーン出口熱交換器385を使用して冷却されてもよい。水素化転化ゾーン生産物380(例えば、上述のような単一の水素化転化反応器またはこのような2つ以上の反応器からの生産物)の冷却は、分離ゾーン390中のこの流れの成分の相分離を可能にする。分離ゾーン390は、複数の理論的平衡液体蒸気分離段階を実現するために、例えば、直列に作動する1つ以上のフラッシュ分離器を使用して、または充填カラム及び任意にストリッピング媒体(例えば、流動ストリッピングガス)を使用して、実現されてもよい相分離の1つ以上の段階を含んでもよい。ガス混合物の成分と実質的に完全に脱酸素化された炭化水素液体の成分との間の相対的な揮発性における有意差のため、単一のフラッシュ分離器または2つのフラッシュ分離器を使用する分離は、十分であり得る。
【0123】
分離ゾーン390から、実質的に完全に脱酸素化された炭化水素液395は、凝縮留分または液相として回収され、ガス混合物397は、非凝縮留分または蒸気相として除去される。分離されたガス混合物397の少なくとも一部は、蒸気改質器370に導入され、これは、このシステムの水素必要量の一部もしくは全てを満たすために、水素再循環流398を介して、システム310に再循環され得る正味の生成物の水素を提供する。蒸気改質器370も、正味の量のCOを生成する。蒸気改質器370またはその一部からの生産物は、システム310に再循環するための高純度の水素含有ガス流を提供するために、付加的な分離設備(図示せず)、例えば膜分離ユニットまたは圧力スイング吸着(PSA)ユニットを使用して、水素を濃縮してもよい(例えば、CO及び/または他のガスの選択的除去によって)。加えて、実質的に完全に脱酸素化された炭化水素液395は、実質的に完全に脱酸素化されたより高価値の液体生成物、例えばガソリン沸点範囲及び/またはディーゼル燃料沸点範囲炭化水素留分を得るために、上述のように、さらなる分離設備(図示せず)、例えば蒸留塔または一連の蒸留塔を使用して、分留されてもよい。
【実施例】
【0124】
以下の実施例は、本発明の代表的なものとして記載される。これらの実施例は、これら及び他の同等の実施形態が本開示及び添付の特許請求の範囲からみて明らかであるため、本発明の範囲を限定するものとして解釈されない。
【0125】
実施例1−MSW供給原料の調製及び組成
再循環MSWから誘導される材料の商業的な供給元から得られる、約500グラムで3.2mmの平均径であるMSWペレットをスクリーニングに基づいて、およそ0.85mm〜3.35mmの範囲の直径を有する粒子にサイズを減少させた。MSWのプラスチック含有量は、約5wt−%であって、これは廃棄物埋立地に送出されるほとんど典型的なMSWタイプより少ない。MSWはまた、通常、これらの固体廃棄物中に含有される、他の種類の非生物学的材料(例えば、ガラス及び金属)を含有した。標準(ASTM)試験方法を使用して測定される、MSWの水分及び灰分、ならびにいくつかの元素分析を以下の表1に提供する。
【0126】
【表1】
【0127】
表1に示される10.91wt−%(水分不含有基準)の灰分は、木材のみ(下記の表2を参照)について0.21wt−%の対応する値よりかなり高かった。さらに、MSWは、通常、約100〜200wt−ppmの範囲である、木材中に存在する量も上回る約0.5wt−%(約5,000wt−ppm)の元素塩化物を含有することが見出された。MSWに由来する塩化物の実質的な添加は、有害ガスの腐食及び/または放出の可能性の増大に関して、著しい処理障害を呈する。比較するために、バイオマス熱分解において使用される木材供給原料の水分及び灰分、ならびにMSWに関して表1において提供されるのと同じ元素分析を以下の表2に提供する。
【0128】
【表2】
【0129】
木材と比較したMSW中の元素の炭素(C)、水素(H)、及び酸素(O)の量における差の少なくとも一部は、主にプラスチックの存在に起因する。以下の表3に示すように、この非生物学的材料はまた、これらの元素のモル比に影響し、それにより水素化熱分解反応化学において影響を及ぼす。加えて、プラスチックは、通常、バイオマスの水素化熱分解及び水素化転化に好適な条件下で溶解し、これによって処理ステップ中に存在する固体粒子(チャー、触媒、固体床材料、及びMSW自体)のコーティング/凝集を引き起こすことがある。粒子の自由運動が妨げられるため、これは流動床の作動に悪影響を与える。
【0130】
【表3】
【0131】
実施例2−水素化熱分解及び水素化転化によるMSW供給原料の変換
実施例1に記載したような粒径及び組成を有する、MSW供給原料をガソリン及び/またはディーゼル燃料沸点範囲において、炭化水素に変換されるその能力に関して、パイロット規模水素化熱分解処理ユニット中で試験した。供給ホッパーからおよそ3.3cmのi.d.×76cmの高さの寸法を有する流動床水素化熱分解反応容器の底部へMSW粒子をスクリューコンベヤを介して輸送した。また、予熱された水素は、この反応器の底部に導入され、輸送されたMSW粒子及び反応容器中に予め装填された、約200グラムの従来のコバルト/モリブデン(Co/Mo)水素化処理触媒の両方のための流動化ガスとしても働いた。反応器は、およそ457℃及び19bargの温度及び圧力条件で維持された。蒸気滞留は、およそ1〜2秒であった。MSWの水素化熱分解から生じたチャーは、大部分が反応容器内に残存したが、この材料は、より高い流動化速度の条件下で水簸することもできた。
【0132】
固定床において約780グラムの従来のニッケル−モリブデン(NiMo)水素化処理触媒を含有するこれらの蒸気を冷却し、第2段階の反応器水素化転化反応器に導入する前に、水素化熱分解反応器中に生成される蒸気を濾過し、このガス流中の任意の微細固体粒子を捕捉した。第2段階の反応器の圧力は、水素化熱分解反応器中の圧力と実質的に同じに維持するが、作動温度は約371℃に下がった。第2段階反応器は、水素化熱分解から生成されるバイオマス由来の凝縮性蒸気をさらに脱酸素化するように働いた。したがって、水素化転化反応器から出る蒸気は、輸送燃料の使用に好適な炭化水素を含んだ。次いで、これらの蒸気を冷却し、高価値の液体生成物を凝縮して、CO及びCOを含む、ガス生成物を分離した。ノックアウトポットを直列に使用して、低分子量のガソリン沸点範囲材料、及び高分子量のディーゼル燃料沸点範囲材料を含有する留分に、液体生成物の炭化水素を分離した。供給原料としてMSWを使用する、この試験からの生成物収率は、生成物の測定量及びガス生成物組成の分析に基づいて計算した。これらの収率は、同様の条件下であるが、純粋なバイオマス供給原料(木材)を使用する試行運転から得られたものと比較した。供給原料重量に基づく、比較的な収率データを以下の表4に提供する。
【0133】
【表4】
【0134】
無水無灰(MAF)ベースでの、収率プロファイルは、木材及びMSW供給原料についてほぼ同じである。したがって、驚くべきことに、MSWの高いプラスチック含有量、塩素含有量、及び灰分は、水素化熱分解/水素化転化プロセス化学に著しく影響を与えるように見えなかった。これらの結果は、好適な処理条件下で、混合され(すなわち、バイオマス及び非バイオマスの両方を含有する)、汚染され、またはMSWなどの問題を含む(例えば、著しい量のガラス、触媒毒、及び/または金属を含有する)供給原料を、経済的に有利な収率で、ガソリン及びディーゼル燃料留分を含むC液体炭化水素に変換することが可能であることを示す。木材と比較してMSW供給原料に関する、C〜C蒸気収率における最低限度の減少は、重質炭化水素が軽質非凝縮性ガスではなく、プラスチックの変換によって、選択的に生成されることを示し得る。
【0135】
これらの結果に基づいて、本明細書において記載される好適な前処理ステップの使用は、高濃度のプラスチック、不活性材料、及び触媒毒を含有するMSWを含む、他の種類の初期供給原料をアップグレードするのに効果的であり得る。これは、従来のプロセスの失敗にもかかわらず、満足な結果を実現し、またさらに一般に、バイオマス熱分解及び水素化熱分解技術の失敗にもかかわらず、本明細書において記載されるものを含む、前処理ステップの使用を認識または意図し、極めて低価値の材料(例えば、MSWまたは藻類)をアップグレードし、それらを水素化熱分解及び水素化転化のさらなるステップを含む一体化プロセスにおける処理に有用にすることである。
【0136】
全体として、本発明の態様は、バイオマス含有供給原料を前処理するための方法と関連し、その方法は、一般に、供給原料の1つ以上の特徴を変化させ、それをより容易にアップグレード可能にするために、水素化熱分解ステップ及び任意のさらなるステップの前に行われるステップを含んでもよい。当業者は、本開示から得られる知識によって、種々の変化が、本発明の範囲から逸脱することなく、これらの方法においてなすことができることを認識する。理論上または観察された現象もしくは結果を説明するために使用される機構は、単なる例証であり、添付したクレームの範囲をいかなる方法であれ限定しないと解釈されるべきである。上記明細書において、本開示をその特定の好ましい実施形態に関連させて記載し、例証の目的のために詳細を記載してきたが、本開示はさらなる実施形態の影響を受け、本明細書に記載した特定の詳細が本開示の基本原理から逸脱することなく大いに変更可能であることが当業者には明らかである。本開示の特徴は、本開示の趣旨から著しく逸脱することなく、改変、変更、変化、または置換されやすいことを理解すべきである。例えば、各種要素の寸法、数、サイズ、及び形状は、特定の用途に適合するように変えることができる。したがって、本明細書において例証され、記載される特定の実施形態は、単なる例証目的であり、添付のクレームに記載される本発明を限定しない。
図1
図2
図3