【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要約
本発明は、金属生産物の抽出および精錬のための装置および方法を提供する。
また、本発明は、TiCl
4のような危険な化学薬品の使用を減じると共に、同時に、CO
2のような温室効果ガスの発生を低減させる、種々のチタン鉱からのチタン生産物の抽出および精錬のための装置および方法も提供する。
【0006】
本発明のさらなる局面および利点は、1部は、以下の説明において示すし、さらに、1部は、その説明から明白であろうし、或いは本発明の実施によって習得し得るであろう。
【0007】
本発明は、下記の工程を含むことを特徴とする、チタン鉱(titanium-bearing ore)からのチタン生産物(titanium product)の抽出方法を提供することによって達成し得る: チタン鉱と還元剤を含む化学ブレンド(chemical blend)であって、上記チタン鉱対上記還元剤の比(ratio of the titanium-bearing ore to the reducing agent)が、0.9〜2.4の上記チタン鉱中の酸化チタン:上記還元剤中の還元用金属(reducing metal)の質量比に相当する上記化学ブレンドを混合する工程;
上記化学ブレンドを加熱して抽出反応を開始する工程であって、上記化学ブレンドを、1℃〜50℃/分の上昇速度(ramp up rate)で加熱する工程;
上記化学ブレンドを、5分と30分の間の時間、1500〜1800℃の反応温度に維持する工程;
上記化学ブレンドを、1670℃よりも低い温度に冷却する工程;および、
チタン生産物を残留スラグから分離する工程。
【0008】
もう1つの実施態様においては、25質量%と95質量%の間の酸化チタン(TiO
2)と、30質量%までのカルシウム(Ca)、20質量%までのマグネシウム(Mg)、20質量%までのマンガン(Mn)および35質量%までの鉄(Fe)の少なくとも1種とを含む(質量による)チタン鉱で試験したとき、上記チタン鉱からのチタン生産物中のチタン金属の収率は、質量基準で85%と95%の間の量である。
もう1つの実施態様においては、上記収率は、90%よりも高い。
【0009】
もう1つの実施態様においては、上記化学ブレンドの加熱は、上記化学ブレンドを10℃/分の上昇速度で加熱することを含む。
もう1つの実施態様においては、上記上昇速度は、5℃/分と10℃/分の間の速度である。
もう1つの実施態様においては、上記上昇速度は、10℃/分である。
【0010】
もう1つの実施態様においては、上記反応温度は、1725℃である。
もう1つの実施態様においては、上記化学ブレンドを、10分と20分の間の時間、上記反応温度に維持する。
もう1つの実施態様においては、上記化学ブレンドを、12分と18分の間の時間、上記反応温度に維持する。
【0011】
もう1つの実施態様においては、上記チタン鉱は酸化チタン(TiO
2)を含み、上記還元剤はアルミニウム(Al)を含み、そして、上記化学ブレンド中のTiO
2:Alの質量比は、0.90〜2.4である。
もう1つの実施態様においては、上記化学ブレンド中のTiO
2:Alの質量比は、1〜2.2である。
もう1つの実施態様においては、上記化学ブレンド中のTiO
2:Alの質量比は、1.2〜2.1である。
もう1つの実施態様においては、上記化学ブレンド中のTiO
2:Alの質量比は、1.35〜1.9である。
もう1つの実施態様においては、上記化学ブレンド中のTiO
2:Alの質量比は、1.4〜1.85である。
【0012】
もう1つの実施態様においては、上記化学ブレンドは、粘性剤(viscosity agent)を含む。
もう1つの実施態様においては、上記チタン鉱は、酸化チタン(TiO
2)を含み;上記還元剤は、アルミニウム(Al)を含み;上記粘性剤は、フッ化カルシウム(CaF
2)を含み;そして、チタン鉱対還元剤対粘性剤の比は、次の等式:3TiO
2 + (4 + x)Al + yCaF
2 → 3Ti + xAl + 2Al
2O
3 + yCaF
2に相応し、式中、0 ≦ x ≦3、そして、2 ≦ y ≦ 6である。
もう1つの実施態様においては、0.3 ≦ x ≦ 2、そして、2 ≦ y ≦ 3である。
もう1つの実施態様においては、X = 0.8、そして、y = 2.5である。
【0013】
もう1つの実施態様においては、上記チタン鉱は、90質量%よりも少ない酸化チタン(TiO
2)を含む。
もう1つの実施態様においては、上記チタン鉱は、75質量%よりも少ない酸化チタン(TiO
2)を含む。
もう1つの実施態様においては、上記チタン鉱は、50質量%よりも少ない酸化チタン(TiO
2)を含む。
【0014】
もう1つの実施態様においては、上記チタン鉱は、30質量%までのカルシウム(Ca)を含む。
もう1つの実施態様においては、上記チタン鉱は、20質量%までのマグネシウム(Mg)を含む。
もう1つの実施態様においては、上記チタン鉱は、20質量%までのマンガン(Mn)を含む。
もう1つの実施態様においては、上記チタン鉱は、35質量%までの鉄(Fe)を含む。
【0015】
もう1つの実施態様においては、上記化学ブレンドは、四塩化チタン(TiCl
4)を実質的に含まない。
もう1つの実施態様においては、上記化学ブレンドは、硫酸(H
2SO
4)を実質的に含まない。
もう1つの実施態様においては、上記方法は、ガス状生成物の存在しない1種の固形または液体生産物を生成する。
もう1つの実施態様においては、上記チタン鉱は、少なくとも100ミクロンの粒度を有する。
もう1つの実施態様においては、上記チタン鉱は、少なくとも500ミクロンの粒度を有する。
【0016】
もう1つの実施態様においては、上記チタン鉱は、少なくとも1質量%のカルシウム(Ca)を含む。
もう1つの実施態様においては、上記チタン鉱は、少なくとも1質量%のマグネシウム(Mg)を含む。
もう1つの実施態様においては、上記チタン鉱は、少なくとも1質量%のマンガン(Mn)を含む。
もう1つの実施態様においては、上記チタン鉱は、少なくとも1質量%の鉄(Fe)を含む。
もう1つの実施態様においては、上記チタン鉱は、37ミクロンと2000ミクロンの間の粒度を有する。
【0017】
また、本発明は、上記チタン生産物を、陽極、陰極および電解質を有する反応容器に入れる工程;上記反応容器を600℃〜900℃の温度に加熱して溶融混合物を生成させ、上記陽極と上記陰極の間に電気的差動(electrical differential)を適用してチタンイオンを上記陰極に付着させる工程;および、上記電気的差動を終わらせ、上期溶融混合物を冷却して精錬チタン生産物を生成させる工程を含み、上記精錬チタン生産物の表面積が少なくとも0.1m
2/gであることを特徴とするチタン生産物の精錬方法を提供することによっても達成し得る。
【0018】
もう1つの実施態様においては、上記精錬チタン生産物の表面積は、0.1m
2/gと2.5m
2/gの間である。
もう1つの実施態様においては、上記精錬チタン生産物の表面積は、0.4m
2/gと2.0m
2/gの間である。
もう1つの実施態様においては、上記精錬チタン生産物の表面積は、1.8m
2/gである。
【0019】
もう1つの実施態様においては、上記精錬チタン生産物は、繊維状である。
もう1つの実施態様においては、上記精錬チタン生産物は、ウール様形態を有し(チタンウール(titanium wool))、結合剤に頼らないニアネットシェイプ圧粉体(near-net shaped green compact)に圧縮し得る。
もう1つの実施態様においては、上記精錬チタン生産物は、チタンウールを含む。
【0020】
もう1つの実施態様においては、上記方法は、非導電性またはセラミック材料を、上記チタン生産物を加熱して精錬チタン生産物のコーティングを生成させる前に、上記陽極と上記陰極の間に置くことを含む。
もう1つの実施態様においては、上記コーティングは、少なくとも95質量%のチタン金属を含む。
もう1つの実施態様においては、上記コーティングは、少なくとも99質量%のチタン金属を含む。
もう1つの実施態様においては、上記コーティングは、少なくとも99.9質量%のチタン金属を含む。
もう1つの実施態様においては、上記精錬チタン生産物は、少なくとも90%のチタン金属を含む。
【0021】
もう1つの実施態様においては、上記陽極は、非消耗性である。
もう1つの実施態様においては、上記電気的差動は、0.5ボルトと2.5ボルトの間である。
もう1つの実施態様においては、上記電気的差動は、1.0ボルトと1.8ボルトの間である。
もう1つの実施態様においては、上記陽極は、メッシュコンテナー(mesh container)の形状であって、上記電気的差動を適用する間、上記チタン生産物を保持する。
【0022】
もう1つの実施態様においては、上記陽極は、調整可能である。
もう1つの実施態様においては、上記陽極を調整して、1cmと6cmの間の上記陽極と上記陰極間距離を維持する。
もう1つの実施態様においては、上記陽極を調整して、2cmと4cmの間の上記陽極と上記陰極間距離を維持する。
もう1つの実施態様においては、上記陽極を調整して、3cmの上記陽極と上記陰極間距離を維持する。
【0023】
もう1つの実施態様においては、上記チタン生産物は、チタン鉱から抽出する。
もう1つの実施態様においては、上記反応容器の加熱は、上記反応容器を誘導炉内に入れることを含む。
もう1つの実施態様においては、上記チタン生産物は鉄を含み;上記反応容器は、モリブデンを含んで、上記溶融混合物を上記誘導炉によって発生した磁場から保護する。
【0024】
また、本発明は、少なくとも0.1m
2/gの表面積を有するチタンウール生産物を提供することによっても達成し得る。
もう1つの実施態様においては、上記チタンウール生産物は、少なくとも98%のチタンを含み;上記精錬チタン生産物の表面積は、0.1m
2/gと2.5m
2/gの間である。
もう1つの実施態様においては、上記チタンウール生産物は、90〜96%のチタン、4〜9%のAlおよび1%までのOを含み;上記チタンウール生産物の表面積は1.8m
2/gである。
もう1つの実施態様においては、上記チタンウール生産物は、90〜96%のチタン、4〜9%のAlおよび1%までのOから本質的になり;上記チタンウール生産物の表面積は1.8m
2/gである。
もう1つの実施態様においては、上記チタンウール生産物の表面積は1.8m
2/gである。
【0025】
また、本発明は、チタン鉱の熱抽出から得られたチタン生産物を精錬する工程;および、上記チタン生産物を電気化学的分離過程に供して、精錬チタン生産物を生成させる工程を含み、上記チタン鉱が、25質量%と95質量%の間の量の酸化チタン(TiO
2)と、30質量%までのカルシウム(Ca)、20質量%までのマグネシウム(Mg)、20質量%までのマンガン(Mn)および35質量%までの鉄(Fe)の少なくとも1種とを含むことを特徴とする精錬チタン生産物の製造方法を提供することによっても達成し得る。
【0026】
もう1つの実施態様においては、上記チタン鉱は、50%よりも多い酸化チタン(TiO
2)、1%よりも多いカルシウム(Ca)、1%よりも多いマグネシウム(Mg)、1%よりも多いマンガン(Mn)および少なくとも1質量%の鉄(Fe)の少なくとも1種を含む。
もう1つの実施態様においては、上記チタン生産物は、チタン鉱から抽出する。
もう1つの実施態様においては、上記精錬チタン生産物は、チタン生産物から精錬する。
もう1つの実施態様においては、上記精錬チタン生産物は、等級外(off grade)チタンスポンジまたはスクラップチタンから精錬する。
【0027】
また、本発明は、チタン生産物から精錬した、1.8m
2/gの表面積を有する精錬チタン生産物を提供することによっても達成し得る。
【0028】
また、本発明は、チタン生産物を精錬する反応容器;上記反応容器内に配置されて精錬チタン生産物を受け入れる陰極;上記反応容器内に配置されて上記チタン生産物を保持する陽極;上記反応容器を加熱する熱源;および、上記熱源を出力(power)し且つ上記陽極と上記陰極間に0.5ボルトと2.5ボルトの間の電気的差動をもたらす出力源を含み、上記陽極が調整可能であって、2cmと4cmの間の上記陽極と上記陰極間距離を維持することを特徴とするチタン精錬装置を提供することによっても達成し得る。
【0029】
もう1つの実施態様においては、上記陽極は、非消耗性である。
もう1つの実施態様においては、上記熱源は、誘導炉であり;上記反応容器は、上記溶融混合物を上記誘導炉によって発生する磁場から保護するためのモリブデンサセプタ(susceptor)を含む。
もう1つの実施態様においては、上記装置は、上記陽極と上記精錬チタン生産物でコーティングさるべき陰極との間に非導電性またはセラミック材料を保持するホルダーをさらに含む。
【0030】
もう1つの実施態様においては、精錬するために試験したとき、少なくとも75質量%のチタンを有する試験チタン生産物は、少なくとも90%のチタンを含み且つ1.8m
2/gの表面積を有する精錬チタン生産物を生成する。
もう1つの実施態様においては、上記試験チタン生産物は、1%よりも多いカルシウム(Ca)、1%よりも多いマグネシウム(Mg)、1%よりも多いマンガン(Mn)および35質量%までの鉄(Fe)の少なくとも1種以上を含む。
【0031】
本発明のこれらおよび/または他の局面並びに利点は、添付図面と関連して示す各種実施態様の以下の説明から明白となり、より一層容易に理解し得るであろう。