(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774475
(24)【登録日】2020年10月6日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】転写シートとそれを用いた加飾品
(51)【国際特許分類】
B32B 3/30 20060101AFI20201012BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20201012BHJP
B44C 1/17 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
B32B3/30
B32B27/00 E
B44C1/17 G
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-201375(P2018-201375)
(22)【出願日】2018年10月26日
(65)【公開番号】特開2020-66192(P2020-66192A)
(43)【公開日】2020年4月30日
【審査請求日】2020年7月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(72)【発明者】
【氏名】谷口 忠壮
(72)【発明者】
【氏名】和田 聡
(72)【発明者】
【氏名】奥田 充康
【審査官】
相田 元
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−535702(JP,A)
【文献】
特開2003−181990(JP,A)
【文献】
特開2012−126072(JP,A)
【文献】
特開2010−89386(JP,A)
【文献】
特開2008−275740(JP,A)
【文献】
特開2003−39583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B44C 1/17
B44C 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体シートと、
前記基体シートの上に積層され、紫外線硬化型樹脂を含み前記基体シートに接する面と反対の面の少なくとも一部に微細凹凸を有する離型層と、
前記離型層の上に全面的に積層された剥離層と、
前記剥離層の上であって、少なくとも前記離型層の前記微細凹凸が形成された領域に対応した箇所に積層された単色のベタ印刷層と
を備え、
前記微細凹凸の凹部の最大幅をW、深さをDとしたとき、下記(1)(2)を満たし、
10≦W/D≦50 ・・・(1)
W≦100μm, 2μm≦D≦10μm ・・・(2)
前記凹部の単位面積当たりの数および深さの少なくとも一方が段階的に変化している、転写シート。
【請求項2】
被転写物の周縁に転写される部分において、前記凹部の単位面積当たりの数および深さの少なくとも一方が段階的に変化している、請求項1に記載の転写シート。
【請求項3】
前記ベタ印刷層の上に全面的に積層された接着層をさらに備えた、請求項1または2に記載の転写シート。
【請求項4】
被転写物と、
前記被転写物の上の所定の領域に形成された単色のベタ印刷層と、
前記ベタ印刷層の上に形成され、前記ベタ印刷層が形成された領域に対応した箇所に微細凹凸を有する剥離層と
を備え、
前記微細凹凸の凸部の最大幅をW、高さをHとしたとき、下記(1)(2)を満たし、
10≦W/H≦50 ・・・(1)
W≦100μm, 2μm≦H≦10μm ・・・(2)
前記凸部の単位面積当たりの数および高さの少なくとも一方が段階的に変化している、加飾品。
【請求項5】
前記被転写物の周縁部分において、前記凸部の密度および深さの少なくとも一方が段階的に変化している、請求項4に記載の加飾品。
【請求項6】
前記被転写物と前記ベタ印刷層との間に形成された接着層をさらに備えた、請求項5に記載の加飾品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写シートとそれを用いた加飾品に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末などの筐体デザインの一つとして、グラデーションを付けた色彩を利用したものがある。グラデーションは、たとえばグラビア印刷によってドット状の印刷層をフィルムなどの基材に形成し、ドットの単位面積当たりの数やドットの大きさを変化させることで再現されている。たとえば特許文献1には、ラベル基材9の一方の面にドット状のグラデーション印刷層11と、粘着剤層10と、台紙13とが順に積層され、他方の面に透光性ベタ印刷層12が積層されたラベルが開示されている(
図12参照)。ドットの単位面積当たりの数やドットの大きさを変化させることで、グラデーションを再現している。このラベルは、台紙13を剥離して粘着剤層10を露出させ、被着体に貼り付けて使用する。このラベルでは、グラデーションのある領域とない領域との境界付近でドットが目立たず、なめらかなグラデーション印刷を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−288018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のように、グラデーションを構成するドットを印刷で形成する場合は、ドットが滲んだりすることがあり、ドットを高精細で形成するには限界があった。また、ラベルの最表面が平滑であるため、ラベルを触ると皮脂(指紋)が付着しやすいという問題があった。
【0005】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、高精細なグラデーションを再現でき、指紋が付着しにくい転写シートとそれを用いた加飾品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は必要に応じて任意に組み合わせることができる。
【0007】
本発明の転写シートは、
基体シートと、
基体シートの上に積層され、紫外線硬化型樹脂を含み基体シートに接する面と反対の面の少なくとも一部に微細凹凸を有する離型層と、
離型層の上に全面的に積層された剥離層と、
剥離層の上であって、少なくとも離型層の微細凹凸が形成された領域に対応した箇所に積層された単色のベタ印刷層と
を備え、
微細凹凸の凹部の最大幅をW、深さをDとしたとき、下記(1)(2)を満たし、
10≦W/D≦50 ・・・(1)
W≦100μm, 2μm≦D≦10μm ・・・(2)
凹部の単位面積当たりの数および深さの少なくとも一方が段階的に変化しているものである。
【0008】
また、被転写物の周縁に転写される部分において、凹部の単位面積当たりの数および深さの少なくとも一方が段階的に変化しているものであってもよい。
【0009】
また、ベタ印刷層の上に全面的に積層された接着層をさらに備えたものであってもよい。
【0010】
本発明の加飾品は、
被転写物と、
被転写物の上の所定の領域に形成された単色のベタ印刷層と、
ベタ印刷層の上に形成され、ベタ印刷層が形成された領域に対応した箇所に微細凹凸を有する剥離層と
を備え、
微細凹凸の凸部の最大幅をW、高さをHとしたとき、下記(1)(2)を満たし、
10≦W/H≦50 ・・・(1)
W≦100μm, 2μm≦H≦10μm ・・・(2)
凸部の単位面積当たりの数および高さの少なくとも一方が段階的に変化しているものである。
【0011】
また、被転写物の周縁部分において、凸部の密度および深さの少なくとも一方が段階的に変化しているものであってもよい。
【0012】
また、被転写物とベタ印刷層との間に形成された接着層をさらに備えたものであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の転写シートは、基体シートと、基体シートの上に積層され、紫外線硬化型樹脂を含み基体シートに接する面と反対の面の少なくとも一部に微細凹凸を有する離型層と、離型層の上に全面的に積層された剥離層と、剥離層の上であって、少なくとも離型層の微細凹凸が形成された領域に対応した箇所に積層された単色のベタ印刷層とを備え、微細凹凸の凹部の最大幅をW、深さをDとしたとき、下記(1)(2)を満たし、
10≦W/D≦50 ・・・(1)
W≦100μm, 2μm≦D≦10μm ・・・(2)
凹部の単位面積当たりの数および深さの少なくとも一方が段階的に変化しているように構成した。
【0014】
したがって、本発明の転写シートは、高精細なグラデーションを再現することができ、指紋が付着しにくいものである。
【0015】
本発明の加飾品は、被転写物と、被転写物の上の所定の領域に形成された単色のベタ印刷層と、ベタ印刷層の上に形成され、ベタ印刷層が形成された領域に対応した箇所に微細凹凸を有する剥離層とを備え、微細凹凸の凸部の最大幅をW、高さをHとしたとき、下記(1)(2)を満たし、
10≦W/H≦50 ・・・(1)
W≦100μm, 2μm≦H≦10μm ・・・(2)
凸部の単位面積当たりの数および高さの少なくとも一方が段階的に変化しているように構成した。
【0016】
したがって、本発明の加飾品は、高精細なグラデーションを再現することができ、指紋が付着しにくいものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(a)本発明の転写シートの一実施形態を示す模式的な断面図。(b)微細凹凸の模式的な拡大図。
【
図2】離型層の形成方法の一例を示す模式的な断面図。
【
図3】離型層の形成方法の一例を示す模式的な断面図。
【
図5】微細凹凸形状とグラデーションとの関係を示す模式的な平面図。
【
図6】微細凹凸形状とグラデーションとの関係を示す模式的な断面図。
【
図7】(a)微細凹凸を有する離型層が形成された基体シートの一例を示す平面写真。(b)(a)の一部拡大写真。
【
図8】本発明の転写シートの別の例を示す模式的な断面図。
【
図9】本発明の加飾品の一実施形態を示す模式的な断面図。
【
図10】(a)本発明の転写シートの別の例を示す模式的な平面図。(b)(a)のA−A断面図。
【
図11】(a)本発明の加飾品の別の例を示す模式的な平面図。(b)(a)のA−A断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の転写シートとそれを用いた加飾品について、図面を参照しながら実施形態の一例を説明する。
【0019】
本発明の転写シート1は、基体シート2と、基体シートの上に積層され、紫外線硬化型樹脂を含み基体シートに接する面と反対の面の少なくとも一部に微細凹凸3aを有する離型層3と、離型層の上に全面的に積層された剥離層4と、剥離層の上であって、少なくとも離型層の微細凹凸が形成された領域に対応した箇所に積層された単色のベタ印刷層5とを備え、微細凹凸の凹部3bの最大幅をW、深さをDとしたとき、下記(1)(2)を満たし、
10≦W/D≦50 ・・・(1)
W≦100μm, 2μm≦D≦10μm ・・・(2)
凹部3bの単位面積当たりの数および深さの少なくとも一方が段階的に変化しているものである(
図1、
図5、
図6参照)。
【0020】
基体シート2は、転写シート1を被転写物に転写した後に、被転写物から剥離するものである。基体シート2の材料としては、たとえば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩ビ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS系樹脂などの熱可塑性樹脂およびこれらの積層品を挙げることができる。
【0021】
離型層3は、基体シート2を被転写物から剥離した際に、基体シート2とともに剥離されるものである。離型層の材料は、紫外線硬化型樹脂を含有する樹脂である。紫外線硬化型樹脂としては、剥離層4に対して離型性があるものを用いる。離型層3は、基体シート2に接する面と反対の面、言い換えると、剥離層4(後述)との境界面の少なくとも一部に微細凹凸3aを有している(
図8参照)。微細凹凸3aの形状は、凹部3bの最大幅Wと深さDが、
10≦W/D≦50 ・・・(1)
W≦100μm, 2μm≦D≦10μm ・・・(2)
上記の2式を満たす形状である。また、凹部3bの単位面積当たりの数および凹部3bの深さの少なくとも一方が段階的に変化する。それにより、単色のベタ印刷層5にグラデーションを付けることができる。
【0022】
離型層の形成方法は、特に限定されるものではないが、たとえば、次のような2つの方法のいずれかを用いることができる。1つ目の方法を説明する。まず、基体シート2に紫外線硬化型樹脂を含有する樹脂を塗布する(
図2(a)参照)。次に、上記微細凹凸3aの形状が反転した形状を有するスタンパを積層し(
図2(b)参照)、その状態で紫外線を照射して樹脂を硬化させる(
図2(c)参照)。最後にスタンパを取り除き、微細凹凸3aを有する離型層3を基体シート2に形成する(
図2(d)参照)。次に、2つ目の方法を説明する。まず、微細凹凸3aが形成された金属版15に、紫外線硬化型樹脂を含有する樹脂3dを塗布する(
図3(a)参照)。次に、樹脂3dに基体シート2を貼り合わせ(
図3(b)参照)、その状態で紫外線を照射して樹脂を硬化させる(
図3(c)参照)。最後に金属版15から剥離して、微細凹凸3aを有する離型層3が形成された基体シート2を得る(
図3(d)参照)。
【0023】
図4は、凹部3bの平面視における形状の一例である。図に示すように、円形、四角形、三角形、菱形、楕円形などとすることができる。
図5は、単位面積当たりの凹部の数が段階的に変化する一例である。いずれの図でも、右に行くにつれて凹部の単位面積当たりの数が段階的に減少している。凹部の単位面積当たりの数が段階的に少なくなると、ベタ印刷層5の色は段階的に淡くなっていくため、単色のベタ印刷層5であってもグラデーションを付けることができる。
図6(a)は、凹部の深さが段階的に変化する一例である。右に行くにつれて、最大幅Wは一定であるが、深さDが段階的に浅くなっている。深さが段階的に浅くなるとベタ印刷層5の色は段階的に淡くなっていくため、単色のベタ印刷層5であってもグラデーションを付けることができる。
【0024】
図7(a)は、微細凹凸3aを有する離型層3が形成された基体シート2の一例を示す写真である。なお、写真では黒色に見えるが、ベタ印刷層は形成されていない。離型層の微細凹凸3aによって、基体シートに高精細なグラデーションが付与されており、この微細凹凸3aの形状は加飾品の表面(剥離層)にも反転して形成される。つまり、
図7(a)のような高精細なグラデーションが、加飾品に付与されているということである。
図7(a)を一部拡大すると、右に行くにつれてグラデーションが段階的に淡くなっている(
図7(b)参照)。この微細凹凸3aの形状は、凹部の深さDと最大幅Wとが段階的に変化する形状である。深さDは図の右に行くにつれて段階的に浅くなり、最大幅Wは右に行くにつれて段階的に小さくなっている。
【0025】
転写シート1を被転写物7に転写すると、離型層3の微細凹凸3aの形状は、剥離層4の表面に反転される。つまり、加飾品8の表面に微細凹凸3aが形成される(
図9参照)。したがって、離型層の微細凹凸の凹部の深さDが、加飾品の表面の微細凹凸の凸部の高さHとなる。このとき、最大幅Wが100μmを超えると、加飾品8の表面(剥離層4)に指紋が付きやすくなる。また、微細凹凸が削れやすくなる。深さDが2μm未満であると、加飾品8の表面に指紋が付きやすくなる。また、ベタ印刷層5に付与できるマット感が低下する。深さDが10μmを超えると、微細凹凸3aの加工が難しくなったり、転写時に基体シート2を剥離しにくくなったりするといった不具合が生じる可能性がある。また、微細凹凸の凹部の最大幅Wが広がってしまうため、加飾品の表面に指紋が付きやすくなる。
【0026】
なお、凹部の単位面積当たりの数と、凹部と凹部との間隔(ピッチ)とが段階的に変化するものであってもよい(
図5(c)参照)。図のように右に行くにつれて、凹部の単位面積当たりの数が段階的に減少し、ピッチが段階的に大きくなっていくと、ベタ印刷層5の色は段階的に淡くなっていく。これにより、単色のベタ印刷層5であってもグラデーションを付けることができる。また、凹部の最大幅Wと深さDは一定であるが、ピッチが段階的に変化するものであってもよい(
図6(b)参照)。図のように右に行くにつれて、ピッチがP1<P2<P3と段階的に大きくなっていくと、ベタ印刷層5の色は段階的に淡くなっていく。これにより、単色のベタ印刷層5であってもグラデーションを付けることができる。
【0027】
剥離層4は、基体シート2を剥離した後に加飾品8の最表面となる層である。基体シート2を剥離して露出した剥離層4の表面には、離型層3に形成された微細凹凸3aの形状が反転した凹凸形状が形成される(
図9(b)参照)。剥離層の材料としては、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレン‐酢酸ビニル共重合体樹脂、環化ゴム、クマロンインデン樹脂などの熱可塑性樹脂を用いることができる。このような熱可塑性樹脂で剥離層を形成すると、加飾品8に耐薬品性などを与えることができる。また、他の材料としては、紫外線硬化型樹脂などの光硬化性樹脂、電子線硬化型樹脂などの放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれかを含んで形成することができる。このような樹脂としては、ウレタンアクリレート系樹脂、シアノアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、これらの樹脂にイソシアネートなどの添加剤を加えた樹脂などを挙げることができる。上記硬化性樹脂で剥離層を形成すると、加飾品8に耐久性や耐摩耗性といった物性を与えることができる。剥離層4の厚みは、0.5μm〜50μmとすることができる。好ましくは、0.5μm〜20μmである。
【0028】
ベタ印刷層5は、剥離層4の上であって、少なくとも離型層3の微細凹凸3aが形成された領域に対応した箇所に形成する。つまり、微細凹凸3aが離型層3の全面に形成されている場合は、ベタ印刷層5も剥離層の全面に形成する(
図1(a)、
図8(a)参照)。微細凹凸3aが離型層3の一部に形成されている場合は、ベタ印刷層5は微細凹凸3aが形成された領域だけに形成してもよいし(
図10(b)参照)、微細凹凸3aが形成されていない面を含んで形成してもよい(
図8(b)(c)参照)。ベタ印刷層5は単色で形成する。ベタ印刷層5の材料は、たとえば、アクリル系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂、熱可塑性または熱硬化性ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂などの樹脂と、樹脂に添加される顔料または染料を含むものである。ベタ印刷層5は、たとえば、数百nm〜数十μmの厚さで形成することができる。
【0029】
なお、微細凹凸が形成されていない箇所には、たとえばロゴなどの印刷があってもよい。
【0030】
転写シート1を被転写物7に転写すると、ベタ印刷層5の上方にある微細凹凸3aの形状によって、単色のベタ印刷層5に高精細なグラデーションを付けることができる。また、微細凹凸3aにより、ベタ印刷層5にマット感を付与することができる。転写シートは、指紋が付きにくい微細凹凸形状であるため、マット感を維持することができる。
【0031】
凹部3bの単位面積当たりの数および深さの少なくとも一方は、被転写物7の周縁に転写される部分1aにおいて段階的に変化しているものであってもよい(
図10参照)。
図10(b)の一点鎖線で示した部分1aが被転写物7の周縁に重なり、転写される。つまり、加飾品8の周囲にグラデーションを付けることができる(
図11参照)。
図11(a)において、網掛け部分が、グラデーションが付いている部分である。そして、グラデーションが付いている部分において、剥離層4表面には微細凹凸3aが形成され、凹部の単位面積当たりの数および深さの少なくとも一方が段階的に変化している(
図11(b)参照)。凹部3bの単位面積当たりの数および深さの少なくとも一方が段階的に変化する範囲は、たとえば、2mm以上15mm以下とすることができる。
【0032】
転写シート1は、ベタ印刷層5の上に全面的に積層された接着層6をさらに備えたものであってもよい(
図8参照)。接着層6の材料としては、アクリル系、ウレタン系、ビニル系、塩酢ビ、エポキシ系、ポリエステル系の樹脂やこれらの複合材料などを用いることができる。接着層は、感圧式または感熱式のものを用いることができる。接着層6は、上記の材料をインキ状にしたものをスクリーン印刷などの印刷法を用いて形成し、または上記の材料を含む接着性フィルムをベタ印刷層5にラミネートして形成することができる。接着層6により、剥離層4とベタ印刷層5とを含む転写層を、被転写物に対してより確実に転写することができる。
【0033】
転写シート1を被転写物7に転写して加飾品8を得る方法としては、公知の方法を用いることができる。たとえば、転写シート1を被転写物7に重ねて、熱と圧力を加えて転写する熱転写法、一対の金型の間に転写シート1を配置して射出成形すると同時に転写を行う成形同時転写法などがある。
【符号の説明】
【0034】
1 :転写シート
1a:被転写物の周縁に転写される部分
2 :基体シート
3 :離型層
3a:微細凹凸
3b:凹部
3c:凸部
3d:樹脂
4 :剥離層
5 :ベタ印刷層
6 :接着層
7 :被転写物
8 :加飾品
9 :ラベル基材
10:粘着剤層
11:グラデーション印刷層
12:透光性ベタ印刷層
13:台紙
14:スタンパ
15:金属版