(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774477
(24)【登録日】2020年10月6日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】電気筋肉刺激と組み合わせられるホエータンパク質の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 35/20 20060101AFI20201012BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20201012BHJP
A61K 31/202 20060101ALI20201012BHJP
A61K 31/12 20060101ALI20201012BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20201012BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20201012BHJP
A61K 31/59 20060101ALI20201012BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20201012BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20201012BHJP
A23L 33/19 20160101ALI20201012BHJP
A23L 33/12 20160101ALI20201012BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20201012BHJP
A23L 33/155 20160101ALI20201012BHJP
【FI】
A61K35/20
A61K31/19
A61K31/202
A61K31/12
A61K31/7048
A61K31/352
A61K31/59
A61P21/00
A61P43/00 121
A23L33/19
A23L33/12
A23L33/10
A23L33/155
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-206764(P2018-206764)
(22)【出願日】2018年11月1日
(62)【分割の表示】特願2016-507005(P2016-507005)の分割
【原出願日】2014年4月14日
(65)【公開番号】特開2019-59736(P2019-59736A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2018年11月26日
(31)【優先権主張番号】13163687.0
(32)【優先日】2013年4月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】アリゴーニ, ファブリツィオ カルロ
(72)【発明者】
【氏名】ブルイル, デニス
(72)【発明者】
【氏名】森谷 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】オフォード カヴィン, エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィニェス パレス, ジェラール
【審査官】
鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−533627(JP,A)
【文献】
特表2016−521265(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/021891(WO,A1)
【文献】
国際公開第2010/143939(WO,A1)
【文献】
国際公開第99/013738(WO,A1)
【文献】
国際公開第2012/087742(WO,A2)
【文献】
Strength & Conditioning Journal,2011年,Vol.18, No.8,pp.2-7
【文献】
Journal of Nutritional Biochemistry,2012年,Vol.23, No.3,pp.245-251
【文献】
The Journal of Nutrition,2008年,Vol.138, No.11,pp.2205-2211
【文献】
Artificial Organs,2011年,Vol.35, No.3,pp.253-256
【文献】
Physical Therapy,2001年,Vol.81, No.9,pp.1565-1571
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00−35/768
A61K 31/00−33/44
A23L 33/00−33/29
A23K 20/00−20/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高齢者における、サルコペニアの治療又は予防、筋肉形態の減少の軽減、筋肉形態の増加、及び/又は筋萎縮後の筋肉の回復の改善のための、電気筋肉刺激と組み合わせて使用されるための、アミノ酸源を含む組成物であって、
前記アミノ酸源がホエータンパク質であり、
前記組成物が、少なくとも1つの脂肪酸及び少なくとも1つの抗酸化物質と組み合わせられており、
前記抗酸化物質がポリフェノールである、組成物。
【請求項2】
高齢者が、虚弱な高齢者である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
筋肉量の減少の軽減、筋肉の大きさの減少の軽減、筋肉の強度の低下の軽減、筋肉の機能の低下の軽減、筋肉量の増加、筋肉の大きさの増大、筋肉の強度の増大、又は筋肉の機能の向上に使用されるための、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ホエータンパク質が、分岐鎖アミノ酸を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記筋肉が、骨格筋、例えば、腓腹筋、脛骨筋、ヒラメ筋、長趾伸筋(EDL)、大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋、大殿筋、又はこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、前記組成物の乾燥重量ベースで0.2〜100%の量で前記アミノ酸源を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
更に炭水化物を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリフェノールが、クルクミン、ルチン、及びケルセチンの群から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物がビタミンDと組み合わせられている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記アミノ酸源と前記少なくとも1つの抗酸化物質との重量比が40:1〜1:1である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記脂肪酸がn−3脂肪酸である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記アミノ酸源、前記抗酸化物質、ビタミンD、及び/又は前記脂肪酸が単一剤形中に存在する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記アミノ酸源、前記抗酸化物質、ビタミンD、及び/又は前記脂肪酸が別個の剤形として同時投与される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、食品組成物、健康補助食品、栄養組成物、機能性食品、摂取する前に水又は牛乳で戻される粉末栄養製品、食品添加物、医薬、及び飲料からなる群から選択される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、電気筋肉刺激と組み合わせて使用されるアミノ酸源を含む組成物に関する。特に、本発明は、高齢者における、サルコペニアの治療又は予防、筋肉形態の減少の軽減、筋肉形態の増加、及び/又は筋萎縮後の筋肉の回復の改善のための、電気筋肉刺激と組み合わせられるアミノ酸源を含む組成物の使用に関する。
【0002】
ほとんどの人は、高齢になると、加齢による骨格筋の量の減少及び強度の低下に陥る。筋肉形態、すなわち、強度、量、大きさ、及び機能が加齢により減少又は低下するこの症候群はサルコペニアと呼ばれる。サルコペニアは、弱さ及びフレイルをもたらす筋肉の大きさの減少、並びに筋肉機能の低下によって特徴付けられる。高齢者のサルコペニアは、しばしば、筋肉形態の減少につながる体の活動の低下によって引き起こされる。サルコペニアは、同様に活動しないことによって引き起こされ、運動によって緩和される、骨の減少である骨粗しょう症に類似の筋肉疾患と見ることができる。
【0003】
高齢者の筋肉は、食事に対する同化抵抗性(anabolic resistance)、及び食事アミノ酸、特に分岐鎖アミノ酸、例えば、ロイシンに対する筋タンパク質合成反応の低下によって特徴付けられる。同化抵抗性は、フレイルの高齢者に観察される身体活動の低下によって悪化し得る。加えて、酸化ストレス及び/又は低悪性炎症もまた、高齢者のフレイルに関連していることが実証されており、これらは、この同化抵抗性をさらに悪化させ得る。
【0004】
格筋骨は、様々な条件下、例えば、加齢により減少する可塑性の高い筋肉である。
【0005】
筋肉の消耗は、タンパク質の合成と分解速度との不均衡から生じるだけではなく、アポトーシス過程と分化/再生過程との不均衡からも生じる。筋タンパク質は、代謝作用で遊離アミノ酸(AA)に分解され得、この遊離アミノ酸は、様々な病状又はストレス性の事象が起きたときに宿主を防御するために他の器官でのタンパク質の合成のための基質の供給に使用される。したがって、骨格筋の主な機能は、運動及び姿勢のための力及び強度を付与することであるが、骨格筋は、タンパク質及びアミノ酸の体内の主な貯蔵器でもある。このため、加齢に伴う筋肉の減少により、高齢者の運動が妨げられる。
【0006】
身体活動の減少及び先進国の人々の長寿化により、サルコペニアは、社会にとっての主要な健康問題として浮上している。サルコペニアは、高齢者が、高齢者自身で日常の活動を行う能力を失い、したがって自立することができなくなる程度までも進行し得る。したがって、サルコペニアに罹患した高齢者は、生活の質が悪化する恐れがある。
【0007】
したがって、高齢者のサルコペニアの軽減、予防、又は治療を有益に促進する、すなわち、筋肉形態の減少を軽減する、例えば、筋肉の機能の低下を軽減する、筋肉量の減少を軽減する、筋肉の大きさの減少を軽減する、筋肉の強度の低下を軽減する、筋肉の機能を向上させる、筋肉の大きさを増大させる、筋肉の強度を増大させる、又は筋肉量を増加させるという、満たされていない必要性が存在する。さらに、高齢者のサルコペニアの発症を低減する、特にフレイルの高齢者の筋肉の減少を軽減するための戦略、例えば、栄養学的な戦略の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明の目的は、サルコペニアの予防若しくは治療となる、又は少なくとも筋肉形態の減少の軽減若しくは筋肉形態の改善をもたらすシステムを提供することにある。
【0009】
高齢者の筋肉は、食事に対する同化抵抗性、及び食事アミノ酸に対する筋タンパク質合成反応の低下により、その強度、機能、及び量が低下又は減少することによって特徴付けられるが、個々の高齢者及び社会にとっては、高齢者は自立が困難になり得るのでこうした人々の面倒を見ることが深刻な懸念であり得る。しかしながら、いかなる理論にも拘束されるものではないが、本発明の発明者らは、アミノ酸源、例えば、ホエータンパク質を含む特定の栄養補給と、電気筋肉刺激との組み合わせアプローチにより、高齢者の筋肉の減少を軽減することが可能であると考えている。
【0010】
いかなる理論にも拘束されるものではないが、本発明の発明者らは、驚くべきことに、高齢者の筋肉の電気筋肉刺激と組み合わせて、アミノ酸源を含む食事又はサプリメントが高齢者に与えられると、高齢者が電気筋肉刺激を受けるが、アミノ酸源が補給されていない食事が与えられる場合と比較して、筋肉の量、大きさ、強度、及び機能の減少又は低下が軽減されることを見出した。実際、本発明の発明者らは、高齢者の筋肉の電気筋肉刺激と組み合わせて、アミノ酸源を含む食事又はサプリメントが高齢者に与えられると、電気筋肉刺激又はアミノ酸源が豊富な食事若しくはサプリメントのいずれか一方のみが高齢者に与えられる場合と比較して、筋肉量の改善が得られることを見出した。
【0011】
さらに、本発明の発明者らは、驚くべきことに、高齢者の電気筋肉刺激と組み合わせて、抗酸化物質と共にアミノ酸源を含む栄養組成物を高齢者に投与すると、高齢者がアミノ酸源サプリメントのみを与えられ、かつ電気筋肉刺激を受ける場合と比較して、筋肉の量、大きさ、強度、及び機能の減少又は低下の軽減がさらに改善されることを見出した。
【0012】
加えて、本発明の発明者らは、驚くべきことに、電気筋肉刺激と組み合わせて、アミノ酸源が豊富なことに加えて必須脂肪酸、特にn−3不飽和脂肪酸を含む食事が高齢者に与えられると、高齢者がアミノ酸源のみが豊富な食事を与えられ、かつ電気筋肉刺激を受ける場合と比較して、筋肉形態の減少がさらに軽減されることを見出した。
【0013】
したがって、本発明の一態様は、高齢者におけるサルコペニアの治療又は予防、筋肉形態の減少の軽減、筋肉形態の増加、及び/又は筋萎縮後の筋肉の回復の改善のための、電気筋肉刺激と組み合わせて使用されるアミノ酸源を含む組成物に関する。
【0014】
本発明の別の態様は、高齢者におけるサルコペニアの治療又は予防、筋肉形態の減少の軽減、筋肉形態の増加、及び/又は筋萎縮後の筋肉の回復の改善のための、電気筋肉刺激と組み合わせて使用される、少なくとも1つの抗酸化物質と組み合わせて、及び/又は少なくとも1つの脂肪酸と組み合わせてアミノ酸源を含む組成物に関する。
【0015】
本発明のなお別の態様は、高齢者におけるサルコペニアの治療又は予防、筋肉形態の減少の軽減、筋肉形態の増加、及び/又は筋萎縮後の筋肉の回復の改善のための、電気筋肉刺激と組み合わせられる、アミノ酸源を含む組成物の使用に関する。
【0016】
本発明のさらに別の態様は、高齢者のサルコペニアを治療する、及び/又は筋肉形態の減少を軽減する、及び/又は筋肉形態を増加させる、及び/又は筋萎縮後の筋肉の回復を改善する方法であって、i)アミノ酸源を含む組成物の高齢者への投与、及びii)高齢者に電気筋肉刺激を受けさせることを含む方法に関する。
【0017】
ここで、本発明を以下により詳細に説明する。
【0018】
定義
本発明をさらに詳細に論じる前に、以下の用語及び記法をまず定義する:
本明細書で使用される数値範囲は、明確に開示されるされないにかかわらず、あらゆる数及びその範囲内に含まれる数の部分集合を含むものとする。さらに、これらの数値範囲は、その範囲内の任意の数又は数の部分集合に関する主張をサポートすると解釈するべきである。例えば、1〜10の開示は、1〜8、3〜7、1〜9、3.6〜4.6、及び3.5〜9.9などの範囲をサポートすると解釈するべきである。特段の記載がなく、言及される文脈で明確にそうではないことが示されていない限り、本発明の単数の特徴又は制限についての全ての言及は、対応する複数の特徴又は制限を含むものとし、逆も同様である。
【0019】
本発明との関連では、重量「比」(重量/重量)という用語は、言及される化合物の重量と重量との比を指す。例えば、60gのホエータンパク質及び2gのポリフェノールを含む混合物は、60:2に等しい重量比を有し、この60:2は、30:1又は30(すなわち、30を1で除した値)に等しい。同様に、50gのホエータンパク質と20gのポリフェノールの混合物は、50:20のホエータンパク質とポリフェノールの重量比を有し、この50:20は、5:2又は2.5(すなわち、5を2で除した値)に等しい。
【0020】
「X及び/又はY」に関連して使用される「及び/又は」という用語は、「X」、又は「Y」、又は「X及びY」と解釈されるべきである。
【0021】
全てのパーセンテージ及び比は、特段の記載がない限り、重量についてである。
【0022】
言及されるパーセンテージは、列記される原材料に関し、活性レベルに基づくものであり、したがって、特段の記載がない限り、市販の材料に含まれ得る溶媒も副産物も含まない。
【0023】
特段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、当業者によって通常理解される意味と同じ意味を有する。
【0024】
「高齢者」という用語は、本発明との関連では、年齢が60歳を超えた人、例えば、63歳を超えた人、特に65歳を超えた人を意味する。
【0025】
本発明との関連では、高齢者は、あらゆる高齢者、例えば、両方の性別の人、すなわち、男性と女性の両方とすることができる。
【0026】
本発明の一実施形態では、高齢者は、フレイルの高齢者である。
【0027】
本発明との関連では、「フレイル」という用語は、身体的に弱い、すなわち、強くなく虚弱である人を指す。
【0028】
本明細書に記載される多数の実施形態を含む、本発明の組成物は、本明細書に記載される本発明の必須の要素及び制限、並びに本明細書に記載されるあらゆる追加若しくは任意の原材料、構成成分、若しくは制限、又は高齢者の食事に有用な他の物を含み得る、これらからなり得る、又はこれらから本質的になり得る。
【0029】
本発明による「治療」又は「治療する」という用語は、状態、障害などの改善をもたらすあらゆる効果、例えば、減少させること、低減すること、調節すること、又は排除することを含む。障害の状態を「治療する」又は障害の状態の「治療」は、(I)障害の状態を抑制すること、すなわち、障害の状態又はその臨床症状の発生を阻止すること;又は(2)障害の状態を緩和すること、すなわち、障害の状態又はその臨床症状の一時的又は永久的な軽減をもたらすことを含む。
【0030】
本明細書で使用される「予防」又は「予防する」という用語は、疾患状態を予防すること、すなわち、疾患状態の臨床症状が、疾患状態になった又は疾患状態になりやすい可能性があるが、疾患状態の症状をまだ経験又は示していない個体に発生しないようにすることを意味する。
【0031】
「障害の状態」という用語は、あらゆる疾患、状態、症状、又は兆候を意味する。
【0032】
本出願の文脈において、「「y」と組み合わせて「x」を含む組成物」における「〜と組み合わせて」という用語は、「x」及び「y」、例えば、アミノ酸源、抗酸化物質、及び/又は脂肪酸などの両方を含む1つの栄養組成物としての単一剤形での投与と、アミノ酸源、抗酸化物質、及び/又は脂肪酸の別個の剤形での同時又は逐次のいずれかの投与との両方を指す。
【0033】
アミノ酸源:
アミノ酸源は、遊離型のアミノ酸であってもよく、或いはペプチド及び/又はタンパク質として結合したアミノ酸であってもよい。タンパク質源は、乳タンパク質、動物性タンパク質、又は植物性タンパク質とすることができる。
【0034】
本発明の好ましい一実施形態では、アミノ酸源は、ホエータンパク質、カゼインタンパク質、エンドウタンパク質、大豆タンパク質、小麦タンパク質、トウモロコシタンパク質、又は米タンパク質、マメ科植物、穀類、及び穀物一般に由来するタンパク質、又はこれらの組合せからなる群から選択されるタンパク質である。タンパク質は、ナッツ及び種子から選択してもよい。アミノ酸源は、好ましくはホエータンパク質である。
【0035】
本組成物は、体重1Kg当たり0.03〜0.5gのアミノ酸に対応する量で投与される。
【0036】
アミノ酸源は、例えば、分岐鎖アミノ酸の1つ又は複数を含む。例えば、アミノ酸源は、ロイシン、イソロイシン、及びバリンの1つ又は複数を含む。ロイシンは、D−ロイシン又はL−ロイシンとして存在することができ、好ましくはL型である。
【0037】
本発明の好ましい一実施形態では、アミノ酸源は、分岐鎖アミノ酸を含む。
【0038】
3つの分岐鎖アミノ酸(BCAA)、すなわち、ロイシン、バリン、及びイソロイシンは、最初の2つの分解ステップ、すなわち、アミノ基転位及び続く脱炭酸のための共通の酵素を共有し、かつ筋肉で機能する分解代謝経路を有するために唯一不可欠のアミノ酸でもある。したがって、大用量の単一BCAA(例えば、ロイシン)を与えることにより、この単一BCAAが脱炭酸/酸化を引き起こし得る、又は他の2つのBCCA(例えば、イソロイシン及びバリン)が与えられると、これらのBCCAは、特に、ロイシンが「スパイク」され得る状況で、筋タンパク質の合成を制限するようになると仮説を立てることができる。実際、Verhoeven及びその同僚による研究(Am J Clin Nutr.2009Mat;89(5):1468〜75)により、ロイシンの補給で、イソロイシン及びバリンがそれぞれ、約15%及び25%減少することも分かった。これに関連して、ロイシンに加えてバリン及びイソロイシンを本組成物に添加すると有利であり、したがって、ロイシンのレベルよりも血中濃度が低いバリン及びイソロイシンの欠乏が回避される。このことから、他の分岐鎖アミノ酸、すなわち、バリンとイソロイシンの減少を誘発し得るロイシンの大量投与は、勧められないし、有害となることもある。したがって、ロイシンは、筋肉に対して顕著な効果を有するが、バリン及びイソロイシンの欠乏が回避されるような少ない量で添加するべきである。本組成物の10wt%(乾物)の最大用量のロイシンを使用することが推奨される。
【0039】
アミノ酸源がロイシンを含む場合、本組成物は、体重1kg当たり約0.03〜0.2gのロイシンに対応する量で投与される。ロイシンとは別に、本組成物は、バリン及び/又はイソロイシン、及び、好ましくは他のアミノ酸も含み得る。
【0040】
本発明の一実施形態では、本組成物は、乾燥重量ベースで0.2〜100%の量のアミノ酸源、例えば、乾燥重量ベースで1〜95%のアミノ酸源、好ましくは2〜90%のアミノ酸源、例えば、3〜80%のアミノ酸源、好ましくは、乾燥重量ベースで5〜70%のアミノ酸源を含む。
【0041】
ホエータンパク質:
本発明の好ましい一実施形態では、ホエータンパク質がアミノ酸源として使用される。ホエータンパク質は、加水分解されていない、又は加水分解されたホエータンパク質とすることができる。ホエータンパク質は、任意のホエータンパク質とすることができ、例えば、ホエータンパク質は、ホエータンパク質濃縮物、ホエータンパク質単離物、ホエータンパク質ミセル、ホエータンパク質加水分解物、酸ホエー、甘性ホエー、又はカゼイン−グリコマクロペプチドが除去された甘性ホエー(改変甘性ホエー)、又はホエータンパク質の一部、又は任意のこれらの組合せからなる群から選択される1つ又は複数である。
【0042】
好ましい一実施形態では、ホエータンパク質は、ホエータンパク質単離物である。
【0043】
別の実施形態では、ホエータンパク質は、改変甘性ホエーである。甘性ホエーは、容易に入手可能なチーズ生産の副産物であり、かつ牛乳をベースとする栄養組成物の製造によく使用される。
【0044】
カゼイン:
本発明の別の好ましい実施形態では、カゼインがアミノ酸源として使用される。カゼインは、任意の哺乳動物から得ることができるが、牛乳から、好ましくはミセルカゼインとして得られるのが好ましい。
【0045】
投与:
本発明の組成物は、治療効果のある用量で投与される。治療効果のある用量は、当業者が決定することができる。
【0046】
本組成物は、電気筋肉刺激と組み合わせて、高齢者におけるサルコペニアを少なくとも部分的に治療する、又は骨格筋の減少を軽減するのに十分なアミノ酸源の量で前記高齢者に投与される。これに十分な又はこれを達成する量は、「治療効果のある用量」と定義される。この目的に有効な量は、当業者に公知のいくつかの因子、例えば、疾患の重症度、並びに高齢者の体重及び全身の状態によって決まる。
【0047】
本組成物はまた、高齢者の筋肉量は減少しているが、サルコペニアの状態をまだ発症していない場合に、サルコペニアの発症リスクを防止又は少なくとも部分的に低減するのに十分な量で高齢者に投与することもできる。このような量は、「予防効果のある用量」と定義される。同様に、正確な量は、高齢者に関連するいくつかの因子、例えば、高齢者の体重、健康、及びどの程度の筋肉量の減少かによって決まる。
【0048】
ホエータンパク質を含む組成物は、好ましくは、毎日又は少なくとも1週間に2回、高齢者の食事のサプリメントとして与えられる。本組成物は、好ましくは、電気的筋肉刺激の後で高齢者に投与される。
【0049】
本発明の組成物は、何日も連続して、理想的には筋肉の増加/改善が達成されるまで投与されると最も効果的である。
【0050】
本発明の組成物は、少なくとも連続して30日、60日、又は90日の期間にわたって、筋肉刺激と組み合わせて毎日投与するべきである。
【0051】
本発明による組成物は、長期間、例えば、1年間、2年間、3年間、4年間、5年間、6年間、7年間、8年間、9年間、又は10年間にわたって、筋肉刺激と組み合わせて、通常の食事のサプリメントとして高齢者に投与することができる。
【0052】
本発明の組成物は、理想的には、恩恵を確認するために少なくとも3か月の期間で投与される。本組成物は、3か月〜1年の期間で投与されることが好ましいが、これよりも長期間とすることもできる。本組成物は、少なくとも6か月間投与されることがさらに一層好ましい。高齢者が死亡するまで高齢者に本組成物を投与することも可能であり得るが、投与期間は、高齢者が飽きないように3〜6か月であることが好ましい。一定期間、例えば、3〜6か月の投与は、途切れることなく毎日連続的に投与することを意味するものではない。投与中にいくつかの短い中断、例えば、投与期間中に2〜4日の中断があってもよい。
【0053】
本発明の組成物の投与の理想的な継続期間は、当業者が決定することができる。
【0054】
本発明の組成物は、経口摂取されると効果がある。したがって、好ましい一実施形態では、本組成物は、経口投与される、又は、例えば、経管栄養によって経腸投与される。
【0055】
本発明の組成物の投与の理想的な継続期間は、当業者が決定することができる。
【0056】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、飲料、カプセル剤、錠剤、粉末、又は懸濁液の形態で投与される。一実施形態では、本組成物は、経口栄養補助食品(ONS:oral nutritional supplement)、完全栄養調合物(complete nutritional formula)、調剤品、医薬品、又は食品である。本発明の好ましい一実施形態では、本発明によるアミノ酸源、例えば、ホエータンパク質を含む組成物は、飲料として投与される。本組成物はまた、小袋に保存し、使用時に水に懸濁することもできる。
【0057】
経口投与又は経腸投与ができない又は勧められない場合には、本発明の組成物は、非経口投与することもできる。
【0058】
本発明の組成物は、ヒト及び/又は動物の飲食に適したあらゆる種類の組成物とすることができる。
【0059】
例えば、本組成物は、食品組成物、健康補助食品、栄養組成物、機能性食品、摂取する前に水又は牛乳で戻される粉末栄養製品、食品添加物、医薬、飲料、及び飲料からなる群から選択することができる。
【0060】
本発明の一実施形態では、本組成物は、本組成物の乾燥重量ベースで0.5〜100%の量のホエータンパク質を含む。
【0061】
本発明の一実施形態では、本組成物は、ほぼ完全にホエータンパク質で構成される栄養補助食品である。したがって、好ましい一実施形態では、本組成物は、乾燥重量ベースで60%を超えるホエータンパク質、例えば、70%を超えるホエータンパク質、好ましくは80%を超えるホエータンパク質、例えば、85%を超えるホエータンパク質、さらに一層好ましくは90%を超えるホエータンパク質、例えば、92%を超えるホエータンパク質、特に95%を超えるホエータンパク質、例えば、乾燥重量ベースで97%を超えるホエータンパク質を含む。
【0062】
本発明の別の実施形態では、本組成物は、アミノ酸源、例えば、ホエータンパク質だけではなく、摂取するのが高齢者にとって最適な他の原材料、例えば、脂肪酸、好ましくは必須脂肪酸、タンパク質、炭水化物、食物繊維、ビタミン、ミネラル、及びプロバイオティクスの1つ又は複数も含む栄養補助食品である。本発明の一実施形態では、本組成物は、乾燥重量ベースで0.5〜50%の量のホエータンパク質、例えば、乾燥重量ベースで1〜40%のホエータンパク質、好ましくは2〜35%のホエータンパク質、例えば、3〜30%のホエータンパク質、好ましくは、乾燥重量ベースで5〜20%のホエータンパク質を含む。
【0063】
高齢者に投与されるアミノ酸源の量は、高齢者の体重並びに健康状態、すなわち、前記高齢者のサルコペニアの重症度及び/又は筋肉の減少の程度の両方によって決まる。
【0064】
本発明の一実施形態では、本組成物は、1日に体重1kg当たり約0.03〜1.0gのホエータンパク質、例えば、1日に体重1kg当たり約0.05〜0.7gのホエータンパク質、好ましくは、1日に体重1kg当たり約0.1〜0.5gのホエータンパク質に対応する量で投与される。
【0065】
したがって、本発明の一実施形態では、本組成物は、ホエータンパク質の摂取量が1日に5〜50gのホエータンパク質、例えば、1日に12〜40gのホエータンパク質、好ましくは1日に15〜30gのホエータンパク質、例えば、1日に16〜25gのホエータンパク質、さらに一層好ましくは、1日に20gのホエータンパク質となるような量のホエータンパク質を含む。
【0066】
本発明の一実施形態では、本組成物は、約5〜50gのホエータンパク質、例えば、10〜40gのホエータンパク質、好ましくは12〜35gのホエータンパク質、例えば、15〜30gのホエータンパク質に対応する量で投与される。
【0067】
高齢者が、電気筋肉刺激を受けると共に、本発明による組成物を摂取すると、筋萎縮の軽減、筋肉形態の減少の軽減、及びサルコペニアの治療又は予防に関して相乗効果が得られる。
【0068】
本出願の文脈において、「筋肉形態の減少を軽減する」における「軽減する」という用語は、筋肉(の大きさ、量、強度、機能)が、比較される筋肉よりも少なくとも0.5%大きいことを指す。例えば、筋肉の大きさの減少が、0.5%軽減されるとは、ホエータンパク質を含む組成物が与えられ、かつ電気筋肉刺激を受けた人の筋肉の大きさが、電気筋肉刺激のみを受けて、ホエータンパク質のサプリメントを摂取していない人の筋肉よりも0.5%大きい場合である。
【0069】
本発明の一実施形態では、「筋肉形態の減少を軽減する」における「軽減する」という用語は、筋肉が、本発明の組成物で処置されず、かつEMSを受けていない比較される筋肉よりも少なくとも0.8%大きい、例えば、少なくとも1.0%大きい、例えば、少なくとも1.5%大きい、好ましくは少なくとも2.0%大きい、例えば、少なくとも2.5%大きい、さらに一層好ましくは、少なくとも3.0%大きい、例えば、少なくとも4.0%大きい、好ましくは少なくとも5.0%大きいことを意味する。
【0070】
本出願の文脈において、「筋肉形態を増加させる」における「増加させる」という用語は、筋肉(の大きさ、量、強度、機能)が、比較される筋肉よりも少なくとも0.5%大きいことを指す。例えば、筋肉の大きさが0.5%増加されるとは、ホエータンパク質を含む組成物が与えられ、かつ電気筋肉刺激を受けた人の筋肉の大きさが、電気筋肉刺激のみを受けて、ホエータンパク質のサプリメントを摂取していない人の筋肉よりも0.5%大きい場合である。
【0071】
本発明の一実施形態では、「筋肉形態を増加させる」における「増加させる」という用語は、筋肉が、本発明の組成物で処置されず、かつEMSを受けていない比較される筋肉よりも少なくとも0.8%大きい、例えば、少なくとも1.0%大きい、例えば、少なくとも1.5%大きい、好ましくは少なくとも2.0%大きい、例えば、少なくとも2.5%大きい、さらに一層好ましくは、少なくとも3.0%大きい、例えば、少なくとも4.0%大きい、好ましくは少なくとも5.0%大きいことを意味する。
【0072】
抗酸化物質:
本発明の好ましい一実施形態では、アミノ酸源を含む組成物は、少なくとも1つの抗酸化物質と組み合わせられる。
【0073】
いかなる理論にも拘束されるものではないが、本発明の発明者らは、驚くべきことに、サルコペニアを軽減する電気筋肉刺激の効果は、アミノ酸源及び少なくとも1つの抗酸化物質を含む栄養組成物が与えられた高齢者に電気筋肉刺激が行われたときに改善されること、すなわち、筋肉形態の減少、例えば、筋肉の量、大きさ、強度、若しくは機能の減少又は低下が軽減する、又は筋肉形態、例えば、その量、大きさ、強度、及び機能を改善することを見出した。
【0074】
抗酸化物質として任意の抗酸化物質を使用することができるが、抗酸化物質は、ポリフェノール、フェノール類、フラボノイド、ビタミン、及びカロテノイド、及びこれらの組合せの群から選択されるのが好ましい。
【0075】
食品グレードのポリフェノールが好ましい。化合物は、一般的に受け入られ、かつ食品用途として安全であると考えられているのであれば、食品グレードと考えられる。
【0076】
抗酸化物質の混合物を使用することができる。例えば、抗酸化物質は、抗酸化物質が豊富であることが知られている食品組成物として又はその抽出物として用意することができる。
【0077】
抗酸化物質が豊富であるとは、通常は、100g当たり100のORAC(酸素ラジカル吸収能)値を有することを意味する。
【0078】
ビタミンは、例えば、ビタミンE(トコフェロール)、ビタミンA(レチノール又はβカロテン)、又はビタミンC(アスコルビン酸)とすることができる。
【0079】
フラボノイドの例として、ヘスペレチン−7−グルコシド及びカテキンが挙げられる。
【0080】
好ましい一実施形態では、抗酸化物質は、ヘスペレチン−7−グルコシド、クルクミン、緑茶カテキン、ルチン、ビタミンE、ビタミンA、Zn、Se、又はこれらの組合せからなる群から選択される。抗酸化物質の代謝産物も使用することができる。
【0081】
本発明の別の好ましい実施形態では、少なくとも1つの抗酸化物質は、2つ以上の抗酸化物質の組合せである。
【0082】
ココア、コーヒー、又は茶は、抗酸化物質が豊富である。
【0083】
いくつかのスパイス又はハーブ、例えば、オレガノ、クミン、ショウガ、ニンニク、コリアンダー、タマネギ、タイム、マジョラム、タラゴン、ペパーミント、及び/又はバジルも使用することができる。
【0084】
フルーツエキス又はドライフルーツを使用することができる。例として、洋ナシ、リンゴ、レーズン、ブドウ、イチジク、クランベリー、ブルーベリー、ブラックベリー、ラズベリー、ストロベリー、クロフサスグリの実、チェリー、プラム、オレンジ、マンゴー、及び/又はザクロが挙げられる。
【0085】
抗酸化物質が豊富である野菜として、キャベツ、ブロッコリ、ビートの根、アーティチョークの頭部、黒オリーブ、黒豆、セロリ、タマネギ、パセリ、及びホウレンソウを挙げることができる。
【0086】
抗酸化物質はまた、精製化合物又は部分的に精製された化合物としても使用することができる。
【0087】
本発明の一実施形態では、アミノ酸源及び少なくとも1つの抗酸化物質を含む組成物は、40:1〜1:1、例えば、35:1〜2:1、好ましくは30:1〜5:1、例えば、28:1〜8:1、さらに一層好ましくは25:1〜10:1の重量比である。
【0088】
本発明の好ましい一実施形態では、抗酸化物質は、1つ又は複数のポリフェノールである。
【0089】
ポリフェノール:
本発明の好ましい一実施形態では、アミノ酸源を含む組成物は、少なくとも1つのポリフェノールと組み合わせられる。
【0090】
ポリフェノールの混合物を使用することができる。例えば、2つ以上のポリフェノールを使用することができる。ポリフェノールは、ポリフェノールが豊富であることが知られている食品組成物として又はその抽出物として用意することもできる。
【0091】
ココア、コーヒー、及び茶はポリフェノールが豊富である。
【0092】
フルーツエキス又はドライフルーツを、ポリフェノールの供給源として使用することができる。例として、洋ナシ、リンゴ、ブドウ、クランベリー、ブルーベリー、ブラックベリー、ラズベリー、ストロベリー、クロフサスグリの実、チェリー、プラム、及び/又はザクロが挙げられる。
【0093】
また、一部のナッツ及び種子、例えば、クリ、ヘーゼルナッツ、及びアマニは、ポリフェノールが豊富である。
【0094】
ポリフェノールが豊富な野菜の例として、キャベツ、ブロッコリ、ビートの根、アーティチョークの頭部、黒オリーブ、黒豆、セロリ、タマネギ、パセリ、及びホウレンソウが挙げられる。
【0095】
ポリフェノールはまた、精製化合物又は部分的に精製された化合物としても使用することができる。
【0096】
ポリフェノールの例として、フェノール酸、フラボノイド、例えば、フラボノール、フラボン、イソフラボン、フラバノン、アントシアニン、及びフラバノール、スチルベン、並びにリグナンが挙げられる。
【0097】
本発明による一実施形態では、少なくとも1つのポリフェノールは、ヘスペレチン−7−グルコシド、クルクミン、ケルセチン、緑茶、カテキン、及びルチンの群から選択することができる。
【0098】
好ましい一実施形態では、少なくとも1つのポリフェノールは、クルクミン、ルチン、及びケルセチンの群から選択される。
【0099】
本発明の好ましい一実施形態では、少なくとも1つのポリフェノールはクルクミンである。
【0100】
本発明の別の好ましい実施形態では、少なくとも1つのポリフェノールはルチンである。
【0101】
本発明のさらに別の好ましい実施形態では、少なくとも1つのポリフェノールは、2つ以上のポリフェノールの組合せ、例えば、ルチンとクルクミンとの組合せである。
【0102】
本発明の一実施形態では、本組成物は、ホエータンパク質と少なくとも1つのポリフェノールを、300:1〜2:1、例えば、100:1〜5:1、好ましくは60:1〜10:1、さらに一層好ましくは50:1〜20:1の重量比で含む。
【0103】
ビタミンD:
本発明の一実施形態では、本組成物はさらに、ビタミンDと組み合わせて投与される。
【0104】
ビタミンDは、筋肉機能に対して効果を有することが知られている。筋肉組織に作用するビタミンDの分子機構は、ゲノム効果及び非ゲノム効果を含む。ゲノム効果は、1,25−ジヒドロキシビタミンD3のその核受容体への結合によって開始され、これにより、メッセンジャーRNAの遺伝子転写及び続くタンパク質合成が変化する。ビタミンDの非ゲノム効果は、迅速であり、かつ膜結合ビタミンD受容体(VDR)によって仲介される。
【0105】
脂肪酸:
本発明の一実施形態では、アミノ酸源を含む組成物は、少なくとも1つの脂肪酸と組み合わせられる。脂肪酸は、任意の脂肪酸とすることができ、かつ1つ又は複数の脂肪酸、例えば、脂肪酸の組合せとすることができる。
【0106】
本発明の好ましい一実施形態では、アミノ酸源を含む組成物は、少なくとも1つの抗酸化物質及び少なくとも1つの脂肪酸と組み合わせられる。
【0107】
いかなる理論にも拘束されるものではないが、本発明の発明者らは、高齢者における筋肉形態の減少の軽減に対する電気筋肉刺激及びアミノ酸源が豊富な食事の効果は、食事に脂肪酸も豊富であるとさらに改善されると考えている。
【0108】
脂肪酸は、好ましくは必須脂肪酸、例えば、必須多価不飽和脂肪酸、リノール酸(C18:2n−3)及びα−リノレン酸(C18:3n−3)である。さらに、脂肪酸は、長鎖多価不飽和脂肪酸エイコサペンタエン酸(C20:5n−3)及びアラキドン酸(C20:4n−6)、及びドコサヘキサエン酸(C22:6n−3)、又はこれらの任意の組合せとすることができる。
【0109】
本発明の好ましい一実施形態では、脂肪酸は、n−3(ω3)又はn−6(ω6)脂肪酸、特にn−3脂肪酸である。
【0110】
脂肪酸は、好ましくはエイコサペンタエン酸である。
【0111】
脂肪酸は、脂肪酸を含む任意の適切な供給源、例えば、ココナッツオイル、なたね油、大豆油、トウモロコシ油、サフラワー油、ヤシ油、ヒマワリ油、又は卵黄などに由来し得る。しかしながら、脂肪酸の供給源は、好ましくは魚油である。
【0112】
本発明の一部の実施形態では、アミノ酸源並びに抗酸化物質、ビタミンD、及び/又は脂肪酸を含む組成物は、単一剤形で投与される、すなわち、全ての化合物が食事と一緒に高齢者に与えられる1つの製品中に存在する。
【0113】
本発明の別の実施形態では、アミノ酸源並びに抗酸化物質、ビタミンD、及び/又は脂肪酸を含む組成物は、別個の剤形で同時投与される。
【0114】
同化抵抗性:
「同化抵抗性」という用語は、食後のアミノ酸の増加に応答してタンパク質合成を増加することができないことを指す。
【0115】
筋萎縮:
「筋萎縮」という用語は、本出願では、筋肉形態の消耗又は減少、すなわち、筋組織の減少を指す。
【0116】
「筋肉形態」という用語は、本発明との関連では、筋肉に関連したあらゆるパラメーター、例えば、筋肉の大きさ、筋肉量、筋肉の強度、筋肉の機能などを意味する。
【0117】
筋萎縮は、多くの原因によって引き起こされ得る。例えば、筋萎縮は、身体活動の不足から、例えば、加齢に関連して動かなくなること又は身体活動の低下(老化過程に関連したサルコペニア)、股関節骨折の回復、或いは、例えば、がん、AIDS、鬱血性心不全、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、腎不全、外傷、敗血症、及び重度の熱傷などの疾患のいくつかの合併症から起こり得る。筋萎縮はまた、不十分な若しくは不適切な栄養又は飢餓からも起こり得る。
【0118】
最も一般的には、筋萎縮は、それぞれの筋肉の不使用又は不十分な使用から起こる。
【0119】
本発明で言及される筋肉は、好ましくは骨格筋である。例えば、本発明の組成物は、腕及び/又は脚の筋肉の減少を軽減するために、電気筋肉刺激と組み合わせて使用することができる。筋肉は、次の1つとすることができる;腓腹筋、脛骨筋、ヒラメ筋、長趾伸筋(EDL)、大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋、大殿筋、又はこれらの組合せ。
【0120】
本発明では、筋萎縮は、障害状態サルコペニアを引き起こし得る、すなわち、加齢により筋肉の量、大きさ、強度、及び機能が減少又は低下する。
【0121】
筋萎縮は、様々な程度、例えば、極度のフレイルの高齢者での重度の筋萎縮となり得る。これらの高齢者は、毎日の活動を続けること及び自分で自分の面倒を見ることが困難である。しかしながら、それほど重度ではない筋萎縮では、ある程度の運動及びある程度の筋活動が可能であるが、完全な筋組織を維持するには不十分である。
【0122】
サルコペニアの原因は、多くの要素からなり、かつ不使用、内分泌機能の変化、慢性疾患、炎症、インスリン抵抗性、及び栄養不足を含み得る(Fieldingら、J. Am Med.Dir.Assoc.2011、12:249〜256)。
【0123】
サルコペニアは、加齢に関連した骨格筋の量の減少及び骨格筋の機能の低下として、報告書で論じられている。例えば、研究により、高齢のサルコペニア患者の食事にロイシンを添加することが、サルコペニアの治療に有益であり得ることが示された。最近のKastanosらの研究(Am J.Physiol.Endocrinol.Metab.291:E381〜E387、2006)により、ロイシンの食事への添加は、若い対象では筋タンパク質合成を増加させないが、同じロイシンの補給が高齢者では効果的であることが明確に示された。これらの著者は、高齢者は筋タンパク質合成のロイシンに対する感受性の低下を示すが、この感受性の低下が若い成人では観察されないと結論付けた。
【0124】
したがって、加齢関連サルコペニアの治療又は予防に関与する機序は、若い人での筋肉量の減少の治療又は予防とは異なっている。
【0125】
研究により、高齢者に対するロイシンの補給がサルコペニアに有益な効果を有することが示されたが、サルコペニアの治療又は予防をさらに改善する必要性がなお存在する。
【0126】
本発明の発明者らは、驚くべきことに、高齢者の食事へのアミノ酸源の補給に高齢者の電気筋肉刺激を組み合わせると、筋肉の量、大きさ、強度、及び機能の減少又は低下がさらに軽減されることを見出した。
【0127】
電気筋肉刺激:
本発明との関連では、電気筋肉刺激(EMS)は、筋肉電気式刺激、筋肉電気刺激、神経筋電気刺激(NMES)、又は電気式筋肉刺激とも呼ばれる。これらの用語は、互換的に使用することができる。電気筋肉刺激は、電気インパルスを用いた筋収縮の誘発である。このインパルスは、装置によって生成され、皮膚上の電極を介して、刺激されるべき筋肉の近傍に直接送達される。このインパルスは、中枢神経系からくる活動電位を模しており、筋肉を収縮させる。
【0128】
本発明の一実施形態では、電極は、皮膚に接着されたパッドであるが、電極は他の形態にすることもできる。
【0129】
EMS運動は、少なくとも1週間に1回、好ましくは少なくとも1週間に2回、例えば、少なくとも1週間に3回、高齢者に行うのが好ましい。
【0130】
物理的刺激又は電気的筋肉刺激の装置は、筋肉機能にエネルギー損失を促進させる装置又は機械とすることができる。
【0131】
正常な随意運動における運動単位の漸増は、収縮張力が低く、かつ疲労が遅い遅筋線維から始まる逐次的な漸増である。以前の研究で、EMSが、太い神経線維によって制御される速筋線維から逐次的に漸増させたことが電気生理学によって示された。随意収縮のエネルギー代謝特性とは異なるエネルギー代謝特性の存在が示唆された(Hamadaら、2004;Moritaniら、2005)。最近、正常血糖性高インスリン血症クランプ法及び呼気ガス分析を用いて、EMSがグルコース及びエネルギー代謝を促進させたことが示された。特に、EMS中の酸素消費量は、静止時に観察された酸素消費量と比較すると2倍であった。同時に、エネルギー消費量も増加した(EMSにより20分間で50kcal)。
【0132】
したがって、EMSは、速筋線維の漸増、並びに筋肉のエネルギー消費、グリコーゲン代謝、及びグルコース代謝の活性化を可能にすることが実証された。さらに、速筋線維の選択的な刺激は、高齢者の廃用性筋萎縮だけではなく、筋肥大の開始を防止する可能性を有する。これらの発見は、身体的状態により運動制限を必要とする人、例えば、寝たきりの高齢者、並びに糖尿病の合併症及び心血管系の合併症によって引き起こされる臓器障害に苦しんでいる患者の代謝の改善をもたらす可能性をEMSが有することを示唆している。さらに、EMS及びその健康効果についての研究は、介護予防、予防医学、及び治療医学の観点から期待されている。電極を備えたレギンスの臨床モデルは、大殿筋の刺激を可能にし、かつ約6メッツ(METS)の運動強度の筋収縮の開始に成功した。
【0133】
総合すると、本発明は、電気筋肉刺激と、高齢者の生活の質及び関連する保健経済に対して好ましい影響を有することが示されている特定の食事補給とを組み合わせる二重アプローチを、加齢及び運動不足によって引き起こされる生活習慣病の予防、改善、及び治療の新規な方法として提案する。
【0134】
本発明の態様の1つに関連して記載される実施形態及び特徴は、本発明の他の態様にも当てはまることに留意されたい。
【0135】
本発明のさらなる態様は、次の項目として与えられる:
1.高齢者における、サルコペニアの治療又は予防、筋肉形態の減少の軽減、筋肉形態の増加、及び/又は筋萎縮後の筋肉の回復の改善のための、電気筋肉刺激と組み合わせられるアミノ酸源を含む組成物の使用。
【0136】
2.高齢者のサルコペニアを治療する、及び/又は筋肉形態の減少を軽減する、及び/又は筋肉形態を増加させる、及び/又は筋萎縮後の筋肉の回復を改善させる方法であって、i)アミノ酸源を含む組成物の高齢者への投与、及びii)高齢者に電気筋肉刺激を受けさせることを含む、方法。
【0137】
本発明の態様の1つに関連して記載される実施形態及び特徴は、本発明の他の態様にも当てはまることに留意されたい。
【0138】
本明出願で言及される全ての特許及び非特許文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。
【0139】
ここで、本発明を、以下の非限定の実施例でさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0140】
以下の実施例は、本発明に従って電気筋肉刺激と組み合わせて使用される組成物の特定の実施形態を例示する。実施例は、例示することのみを目的として与えられており、本発明の多くの変更形態が本発明の概念から逸脱することなく可能であるため、本発明の限定と解釈するべきではない。
【0141】
実施例1
実施例1は、電気筋肉刺激を受けると共に、ホエータンパク質を含む組成物を含む食事が与えられる高齢者を、ホエータンパク質を含まない食事が与えられる高齢者と比較して研究するために行われた研究を記載する。
【0142】
主な目的は、12週間の電気筋肉刺激(EMS)及び栄養学的介入を通して、EMSに加えて、魚油及びポリフェノールが豊富な、又は魚油及びポリフェノールを含まないホエーベースのサプリメントを摂取することの、フレイルの個体の筋肉の形態及び機能の改善のための有効性を決定することであった。
【0143】
特に、高齢者への電気筋肉刺激の効果が、高齢者がホエータンパク質ベースのサプリメントを与えられると相乗的に高まること、すなわち、高齢者の筋肉形態(大腿四頭筋、ハムストリング筋群、及び下腿三頭筋の筋肉の太さ)又は筋肉の強度を相乗的に改善することを実証することを目的とした。これは、下肢及び大腿に特に注目して個体の超音波検査により、並びにそれぞれ膝の伸展の強度によって測定される。
【0144】
異なる食事を摂取する群間の主な比較は、魚油及びポリフェノールを含む又は含まないホエータンパク質サプリメントを摂取する群と、炭水化物サプリメント(プラセボ)のみを摂取する群との間での、筋肉の太さ又は筋肉の強度の増大である(詳細な群の説明については以下を参照)。
【0145】
材料及び方法
これは、並行、二重盲、無作為試験設計であり、かつ3群を用いて単一施設で行われる(以下を参照)。
【0146】
この試験に最初に志願した41人の対象は全て、日本の介護保険(LTCI)システムによるとフレイル状態を示すフレイルの高齢者(年齢が65〜90歳)であった。試験に含まれる全ての対象は、一切の支援を受けていない、又はLTCIシステムによって要支援度1、要支援度2、要介護度1(LTC1)、及び要介護度2(LTC2)に分類されていない「自活している」人であった。歩行速度が0.6〜1.2m/秒の対象が含まれていた。全ての対象は、医師及びケアマネージャーにより、整形外科的及び医学的な質問がされて、電気筋肉刺激を含む運動介入に参加するのに対象が適しているかを決定することによって選抜された。
【0147】
対象を、
(A)群1、20gの炭水化物(マルトデキストリングルコースシロップ21DE)+プラセボカプセル剤(CHO)(n=13)
(B)群2、20gのホエータンパク質単離物(プロラクタ95)+プラセボカプセル剤(WHEY)(n=15)、又は
(C)群3、20gのホエータンパク質単離物(プロラクタ95)+ルチンカプセル剤(ルチン500mg/日)+w3−FA/クルクミンカプセル剤(1日用量:500mgのクルクミン及びソフィノール(Sofinol)によって供給される1.5gのw3−FA型NAD)(W−BIO)(n=13)、
のいずれかを含む等カロリー(95kcal)の飲料を摂取した3つの試験群の1つに対して1:1:1の比で無作為に分けた。
【0148】
試験対象患者基準に適合していない(n=2)又は追跡の前に辞退した(n=2)対象により、4人の対象(1人がCHO群で、3人がW−BIO群)がパープロトコル解析集団から除外された。
【0149】
群の割り当てによって、対象は、220mlの水に溶解した3つの実験飲料(A〜C)の1つを経口摂取した。
【0150】
EMS処置の日(1週間に2回)に、この飲料をEMSの直後に与えた(タンパク質合成の最大刺激)。
【0151】
(昼食からのものではない)サプリメントの特定の効果を識別できるようにするために、EMSを、(食事の少なくとも1時間前にサプリメントが摂取されるように)可能な限り朝早く、又は午後遅く(昼食の終了時から少なくとも2時間後)に施した。
【0152】
EMS処置のない日に、対象は、EMSを受けたときに健康補助食品を飲んでいたのと同じときにこの健康補助食品を飲んだ。対象はまた、試験の継続期間にわたって、朝食中に2つ、昼食中に3つ、そして夕食中に2つと1日に7つのカプセル剤:ルチン500mg/日又はプラセボを含む2つの硬カプセル剤、魚油(魚油1.5g/日)及びクルクミン(クルクミン500mg/日)の混合物を含む5つの軟カプセル剤も摂取した。
【0153】
41人全ての対象に、簡易栄養状態評価表(MNA)に照らして、ベースライン時及び12週間後に対象の基本栄養状態を評価した。
【0154】
電気筋肉刺激(EMS)手順
全ての対象は、12週間の間、1週間に2回のEMS訓練を受けた。20Hz(筋肉肥大モード)の刺激周波数で、深層筋並びに大殿筋、大腿四頭筋、ハムストリング筋、下腿三頭筋、及び前脛骨筋を刺激するために、腰並びに両方の膝及び足首の周りにベルト型電極を取り付けるよう対象に求めた。EMSの刺激の強度は、それぞれの個体に不快感のない最大許容レベルに調節した。EMS訓練を、対象に対して20分間を1週間に2回、12週間にわたって行った。毎回、EMSの前に対象の健康状態をチェックした。EMS訓練は、高速運動によって引き起こされる頭のふらつき、眩暈、転倒、及び失神が起こるリスクを最小限にするために、座って静止した状態で行った。この調査では、EMS訓練用に特別に設計された筋肉刺激装置(Auto Tens pro,Homer Ion Co. Ltd.、日本、東京)を使用した。この刺激装置の電流波形は、20Hzの周波数、250μ秒のパルス幅で、下肢筋群に共収縮を発生させるように設計した。デューティーサイクルは、20分の期間にわたる5秒の刺激と2秒の停止とした。さらに、筋肉刺激中の不快感を軽減するために指数関数的漸増波を使用した。
【0155】
高周波疲労は、力の過度の損失をもたらすが、これは、誘発された活動電位振幅の急速な低下を伴う電気の伝播障害によるものであり得る。この高周波力疲労(high−frequency force fatigue)の期間中に、20Hzの刺激で相当大きな力が発生する。
【0156】
以前の研究のほとんどは、超高周波刺激(2500Hz)又は高周波刺激(50又は80Hz)を用いるEMSの有効性を報告した。Eriksson Eら(Int J Sports Med 1981;2:18〜22.)は、大腿四頭筋における筋肉の酵素活性、線維の大きさ、及びミトコンドリア特性が、4〜5週間にわたる50HzのEMS訓練の期間に変化しなかったことを示した。
【0157】
20HzのEMSは、高周波(50又は80Hz)のEMSよりも効果的な筋肉の改善(神経因子と形態変化との組み合わせ適応)をもたらす可能性を有する。
【0158】
筋肉形態の評価
大腿四頭筋、ハムストリング筋群、及び下腿三頭筋の筋肉の太さを、実験的介入のベースライン時、4週間後、8週間後、及び12週間後に、超音波検査を用いて評価した。
【0159】
Bモード超音波によって測定された筋肉の太さと、MRIによって測定された部位が一致した骨格筋の量との間に、強い相関性が報告された。
【0160】
超音波検査による筋肉の太さの測定を、次のように標準化した:全てのスキャンを、ベースライン及び処置から4週間毎に行った。各対象を、5MHzの広帯域トランスデューサを備えたリアルタイムスキャナ(SSD−900、ALOKA社、日本、東京)を用いて、同じ操作者によって検査した。イメージング法の前に水性ゲルをプローブに塗布した。イメージング中に、トランスデューサを皮膚の表面に対して垂直に保持し、過度の圧力がかからないように特に注意した。測定部位は、注意して配置された骨格マーカーを用いて標準的な手順で筋肉の最も太い部分であった。イメージング及び測定は、大腿四頭筋及び下腿三頭筋が歩行速度の主な決定要因であるため、対象が座った状態で、これらの筋肉のそれぞれに対して一方向から行った。取得した画像を現場で保存し、全データを、国立衛生研究所(NIH)画像プログラムを用いて後に解析した。各イメージングデータを、あらゆる実験上のバイアスを回避するために、対象及び日付情報について盲検法で解析した。超音波検査による筋肉の体積の測定もまた、次のように標準化した:筋肉の太さの測定に加えて、大腿筋及び腓筋群の外周を標準的な手順で測定することによって、これらの筋群の変化を推定した。各筋群の4つの部位における皮下脂肪の厚さを、超音波検査によって決定して平均した。次いで、各筋群の体積を、Moritaniらの方法(Am J Phys Med 1979;58:115〜130)を用いることによって代数計算した。
【0161】
さらに、高齢者を、次のパラメーターによってベースライン時及び12週間の終了時に測定した:
i)身体能力、すなわち、6メートル歩く時間として評価した歩く速度(歩行速度)。歩行速度は、各対象について3回評価して平均した。
ii)Watanabe Kら、J Electromyogr Kinesiol 2012a;22:251〜8及びWatanabeら、Res Clin Practice 2012b;97:468〜473に記載されているように、膝の伸展の最大の力によって評価した筋肉の強度。
iii)生体電気インピーダンス解析によって測定される身体組成、すなわち、Kg及び%として表される脂肪量、除脂肪量の測定値。これらの測定は、50KHzで500μAの励起電流の平坦な足裏電極と共にハンドヘルドリード線を用いて、装置(Tanita BC−118D、タニタ社、日本、東京)を用いて行った。測定したインピーダンス値を使用して、腕、脚、胴、及び全身のそれぞれの除脂肪量及び脂肪量を計算した。
iv)以下を測定する血液検査
a.炎症バイオマーカー(急性期のタンパク質及びサイトカインの濃度)
b.インスリン感受性のマーカー
c.安全性パラメーターを含む血液化学プロフィール
一晩の絶食後に前肘静脈から真空管に血液を採取した。インスリン感受性のマーカー(血中グルコース、ヘモグロビンA1C、血漿インスリン、及びCペプチド濃度の変化)、赤血球数、白血球数、血漿脂肪酸プロフィール、炎症のマーカー(CRP、トランスサイレチン、フィブリノゲン、及びオロソムコイド)、CPKの血液化学、HDL及びLDLコレステロール、アルブミン、全タンパク質及びトリグリセリドのそれぞれについての血液検査。栄養学的介入の安全性を保証するため、凝固パラメーター(血小板数、プロトロンビン時間、及び部分プロトロンビン時間)の血液検査をベースライン時、2週間後、6週間後、12週間後に測定した。他のパラメーターについては、ベースライン時、並びにEMS及び栄養補給での介入の12週間後に測定を行った。
v)ECG(心拍変動(HRV)パワースペクトル解析)は、広く受け入れられている有用な非侵襲性の方法であり、かつ様々な研究及び臨床の場での神経自律機能の総合評価、定量的評価、及び定性的評価を提供した。
【0162】
結果
12週間目に、膝の伸展の強度に関してW−BIO群とWHEY群との間に統計的に有意な差異(4.17kg[95%の信頼区間(CI)0.41〜7.94]、p=0.0308)、及びW−BIO群とCHO群との間に統計的に有意な差異(5.89kg[95%の信頼区間(CI)1.78〜10.01]、p=0.0063)が存在した。12週間目の右膝の伸展に関しては、群3と群1との間に統計的に有意な差異(5.35kg[95%の信頼区間(CI)1.13〜9.57]、p=0.0145)が存在した。
【0163】
これらのデータは、EMSと特定の食事補給とを組み合わせる二重アプローチが、筋肉の強度に好ましい影響を有し、かつ高齢者の生活の質を改善し得ることを示唆している。したがって、EMSと特定の食事介入との組合せは、加齢及び運動不足によって引き起こされる生活習慣病の新規な治療方法と考えることができる。
【0164】
これまで、栄養とEMSとを組み合わせたアプローチを調査する研究が一切行われてこなかった。現在、EMSの効果を、ホエーベースの栄養学的介入の導入で改善できると仮説を立てている。加えて、(抗酸化効果を示す)ポリフェノールを含む原材料と長鎖多価不飽和脂肪酸(PUFA;抗炎症活性を示し、筋肉のインスリン感受性を潜在的に改善する)との特定の配合が、ホエーベースの栄養学的介入の恩恵をさらに高めると仮説を立てている。
【0165】
表1は、ベースラインにおけるパラメーターの個体群の記載を示している。試験で無作為化された対象の大部分は女性であった。群W−BIOに含まれる対象は、やや重い(22.7kg/m
2のBMIに対して、群CHO及びWHEYではそれぞれ20.3及び21.3)傾向があり、群CHO及びWHEYに含まれる対象と比較して大きい腓筋(断面積、mm
2)を有していた。左右の膝の伸展の強度は、群WHEY及びW−BIOのそれぞれに無作為化された対象で得られた測定値と比較すると、群CHOに無作為化された対象で劣っていた。
【0166】
【表1】
【0167】
介入の終了時及び試験中(縦断的解析)の筋肉の表面積及び太さに対する食事処置の効果
処置期間の最後(3か月後)に、異なる群を比較すると、大腿筋及び腓筋の太さ又は断面積に関して3つの群に統計的に有意な差異が確認されなかった。
【0168】
対照的に、性別及び割り付けられた処置によって層別された筋肉の大きさのデータについてのボックスプロットを用いて測定された筋肉の表面積及び太さの縦断的解析。このプロットは、全ての処置群並びに男性及び女性の両方(データは不図示)で筋肉の大きさの組織的な増加を示した。実際、時間効果(傾斜)の推定値は、腓腹の断面積(CSA)、腓腹の厚さ、大腿のCSA、及び大腿の太さについては正であり、かつ0とは統計的に有意に異なっていた。全体的に、結果は、筋肉の大きさの増大が、全ての処置群及び両方の性別で均一に生じたことを示唆している。
【0169】
したがって、上で報告された筋肉形態の結果と合わせて考えると、これらは、処置が、3つの群で観察された筋肉の表面積及び太さの増大を誘導し、したがって、特定の栄養学的介入よりもEMS処置により関連する可能性があることを示している。しかしながら、EMS処置は、筋肉の強度(以下に記載)に対する群3(Whey−生物活性)の恩恵の実証のための有利な条件の獲得を促進した可能性がある。
【0170】
筋肉の強度
【表2】
【0171】
【表3】
【0172】
表2及び3は、3つの処置群のそれぞれのベースライン及び12週間目の、右膝及び左膝の伸展の筋肉の強度の変化を示している。12週間目に、左膝の伸展には、W−BIO群とWHEY群との間に統計的に有意な差異(4.17kg[95%の信頼区間(CI)0.41〜7.94]、p=0.0308)及びW−BIO群とCHO群との間に統計的に有意な差異(5.89kg[95%の信頼区間(CI)1.78〜10.01]、p=0.0063)が存在した。12週間目の右膝の伸展には、W−BIO群とCHO群との間に統計的に有意な差異(5.35kg[95%の信頼区間(CI)1.13〜9.57]、p=0.0145)が存在した。
【0173】
さらに、各時点での各対象の両膝での2つの測定値間の相関性を考慮するために、混合効果モデルをフィッティングした。
【0174】
身体組成
生体電気インピーダンス解析を用いることによる身体測定(Kg及び%で表される脂肪量、除脂肪量)を、実験的処置のベースライン及び12週間後に行った。ベースライン及び12週間目において、どの試験処置群間にも統計的に有意な差異は存在しなかった。
【0175】
自律神経系の活動
心電図検査R−R間隔パワースペクトル解析により、ベースライン及び12週間目において、安静時の心拍数、LF(交感神経系の活動)、HF(副交感神経系の活動)、及びTP(自律神経系全体の活動)には、どの試験処置群間にも統計的に有意な差異は存在しないことが明らかになった。
【0176】
血液分析
ベースライン及び12週間目において、インスリン感受性のマーカー(血中グルコース、ヘモグロビンA1C、血漿インスリン、及びCペプチド濃度の変化)、赤血球数、白血球数、血漿脂肪酸プロフィール、炎症のマーカー(CRP、トランスサイレチン、フィブリノゲン、及びオロソムコイド)、CPKの血液化学、HDL及びLDLコレステロール、アルブミン、全タンパク質及びトリグリセリドの血液検査の結果には、どの試験処置群間にも統計的に有意な差異は存在しなかった。同様に、ベースライン、2週間後、6週間後、12週間後に測定された凝固パラメーター(血小板数、プロトロンビン時間、及び部分プロトロンビン時間)の血液検査により、群間に有意な差異が存在しないことが実証された。
【0177】
本予備研究により、EMS訓練と合わせた生物活性的補給(ホエータンパク質、ルチン、w3−FA、及びクルクミン)の12週間後に、フレイルの個体の膝の伸展の強度が、他の2つの群(CHO及びWHEY)よりもW−BIO群で有意に増加した(左の脚で18.8%、右の脚で7.3%)ことが実証された。
【0178】
また、このW−BIO群により、EMS訓練と一緒に炭水化物又はホエータンパク質が補給された群間での歩行速度の最大の改善(9.6%)が実証された。興味深いことに、筋肉の強度に対するこの恩恵は、筋肉の大きさの増大には関連していなかった。
【0179】
W−BIO群では、12週間の抗酸化ポリフェノールを含む生物活性サプリメント投与により、このようなサプリメントを摂取していない他の2つの群よりも遥かに良好な程度まで筋肉線維化合物が潜在的に維持された可能性がある。
【0180】
大腿部の断面積及び筋肉の太さの測定では、統計的に有意な差異が明らかにはならなかったが、十分に維持された筋タンパク質化合物は、本研究で観察された有意に高い膝の伸展の強度をもたらす、より高い収縮力を発生させることができた可能性がある。特にW−BIO群で観察された筋肉の強度の増大を説明する別の可能性は、ポリフェノールが、非活動的な高齢者に起きることが分かっている酸化ストレスの管理に役立ち得ることであろう。既に述べたように、フレイルの高齢者は、同じ食後の同化作用を誘発するにはより多くのタンパク質を摂取する必要がある。この現象は、「同化抵抗性」として説明される。タンパク質と共に与えられるポリフェノールは、(酸化ストレスを管理することによって)「同化閾値」の刺激の増加を逆転させるのに役立ち得、したがって、筋タンパク質の合成に対する栄養物及びタンパク質の同化作用を回復させることができた。同様に、EPA補給もまた、インスリン感受性の改善をもたらし、したがって、ホエータンパク質に関連した筋タンパク質の合成を刺激した可能性がある。
【0181】
ヒトの随意筋の強度が、筋肉の量(筋肉の断面積)だけではなく、関与する筋肉量の質(筋線維の種類)、及びこの筋肉量が活性化した程度(神経因子)によって決まることは明白である(Moritani 1992、1993)。さらに、筋肉の質は、筋肉内に含まれる脂質にも関連し、この脂質は、年齢と共に増加し、筋肉の質の低下の原因である。したがって、研究に従った筋肉の質の改善、特にW−BIO処置群に見られる恩恵は、筋肉中の脂質含量の減少、及び筋肉線維の数又は大きさの増大であり得、したがって、筋肉の太さ又はCSA(脂質含量とタンパク質含量との間の平衡)を一切変更することなく、強度を改善することができる。
【0182】
総合すると、本研究は、高齢者の生活の質及び関連する保健経済に好ましい影響を有し得る、EMSと特定の食事補給とを組み合わせる二重アプローチを、加齢及び運動不足によって引き起こされる生活習慣病の予防、改善、及び治療の新規な方法として提案する。