(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外科用器具又は前記ロボット装置の前記位置を推測するステップは、前記MRIデータにおいて検出された器官の運動又は器官の変形に基づいてさらに推測する、請求項1に記載のコンピュータプログラム製品。
さらに、少なくとも前記外科用器具又は前記ロボット装置の推測位置に基づいて視覚的又は聴覚的警告を生成するステップを備える、請求項5に記載のコンピュータプログラム製品。
少なくとも検出された逸脱及び前記外科経路に基づいて、前記外科用器具又は前記ロボット装置のための新しい軌道を計算するステップをさらに備える、請求項7に記載のコンピュータプログラム製品。
【背景技術】
【0002】
1.技術分野
本願は、医療システムおよび方法、特に、医療中の患者の生体構造の画像化のためのシステムおよび方法に関する。特に、その結果としての画像は、医療を促進するために用いられうる。
【0003】
2.関連技術
多くのタイプの医療は、治療前計画段階を含む。治療の例は、治療、理学療法、放射線治療、および/または外科治療のようなものを含んでもよい。治療前計画は、X線、コンピュータ断層撮影(CT)、および/または磁気共鳴画像化(MRI)のような患者の生体構造の医学的な画像化を含んでもよい。そして、これらの画像化は、医師が治療のコースを決定し、治療を行うための詳細な計画を準備するのを支援するために使用できる。
【0004】
例えば、治療が外科治療を含む場合には、外科計画は、一般的に、実際の手術を実行する前に準備される。いくつかのケースでは、患者は、いくつかのフォームの外科治療前の医療画像化を経験し、外科チームは、外科計画のプロセスの一部として、患者の生体構造の画像を見直すことができる。また、いくつかの場合には、上記外科治療前の画像を外科治療中に使用できる。画像誘導手術(IGS)は、外科治療に使用される一般的な用語である。ここで、外科医は、上記治療を間接的にガイドするために、治療前または治療中の平面画像と共に、追跡される外科用器具を使用することができる。大部分の画像誘導外科治療は、最小限の侵襲性である。
【0005】
手術は、次の任意の1以上の治療を含むことができるが、これらの治療に限られない。
・切開-器官、腫瘍、または他の組織内へ穿刺または切削すること。
・切除(Excision)-器官、腫瘍、または他の組織を切り出すこと。
・切除(Resection)-器官または他の体の構造の部分的な除去。
・特に切断された場合に、器官、組織等の再接続。腸などの器官の切除は、通常、再接続が含まれる。内部縫合またはステープルで閉じることは、再接続のために使用されてもよい。血管の間、他の管状体間、または、腸のループなどの管腔構造間の外科的な接続は、吻合と呼ばれている。
・ライゲーション-血管、管、「チューブ」を結んでとめること。
・移植(Grafting)-同じ(または異なる)体から切り出した組織片、あるいは、まだ部分的に体に接続されているが、問題になっている体の或る領域の再配置または再構成のために再度縫合されるフラップを切断すること。移植は、しばしば美容手術で使用されるが、他の手術で使用される。移植片は、患者の体の或る領域から取得され、体の別の領域に挿入されてもよい。一例は、バイパス手術である。このバイパス手術では、詰まった血管は、体の他の部分からの移植片でバイパスされる。その他、移植片は他の人間、死体、または動物からのものであってもよい。
・人工装具の挿入。人工装具の実施例は、取り付け、および骨と共に保持するためのピンまたはねじ、骨部分を置き換えるための人工装具のロッドまたは他の人工装具、頭蓋の損傷領域を置き換えるために挿入されるプレート、損傷した生体構造を置き換えるために使用される、いわゆる人工部品、例えば人工股関節、心臓ペースメーカーまたは弁、あるいは、他の多くのタイプの知られている人工装具を含みうる。
・体内の永久的な、あるいは半永久的な開口部であるストーマ(stoma)の生成。
・ドナーの器官(ドナーの体から取り出された)が器官被提供者の体内に挿入され、必要なすべての経路(血管、管等)で器官被提供者に接続される、器官または組織移植。
・関節固定−隣接する骨を外科的に結合し、これらの骨が一緒になって一つに結合できること。脊椎固定は、関節固定の一例で、隣接する椎骨が結合し、それらの椎骨が一緒になって一つに結合できる。
・組織の変更、例えば、減量のための肥満手術における消化管の変更。
・瘻(fistula)、ヘルニア、ストーマ、または脱出症(prolapse)の治療
・熱の使用、寒さ、電流、放射線、または他の細胞外傷誘導技術を通じて組織の切除または破壊。
・血管形成術、内視鏡検査、または装置の移植。
・詰まった管、血管、または他の管の清掃。
・結石(石)の除去。
・蓄積された流体の排出。
・死滅した、損傷した、または病変した組織の除去を含むデブリドマン(debridement)。
・診断を支援または裏付けるための診断検査。
・診断を支援または裏付けるための組織のサンプリング。
・組織または器官の切断、再移植、または再建。
【0006】
いくつかの従来のIGSシステムは、平面画像化システムおよびハンドヘルド(hand-held)外科プローブ(surgical probe)を含む。平面画像化システムは、患者の生体構造を特定すると共に上記外科治療を計画するために、患者の生体構造の治療前または治療中の「スナップ・ショット」を取得するために使用される。上記外科治療中に、いくつかのIGSシステムは、平面の静止画像に対する外科プローブ位置を追跡する能力を有する。このような場合には、IGSシステムは、外科プローブを表す画像の下に静止画像を表示するためのディスプレイを含む。いくつかのIGSのシステムでは、プローブ位置は、患者の生体構造上に表示できる。患者の生体構造は、ワークステーションベースの3D画像化システム上の3つの直交する、平面画像スライスとして表示されている。
【0007】
IGSシステムの一例は、StealthStation(登録商標)である。このStealthStation(登録商標)は、メドトロニック社によって販売されている製品である。メドトロニック社StealthStation(登録商標)IGSシステムは、電磁および光学追跡技術を利用して、外科治療中に患者の体内の外科器具の位置を決定する。上記システムは、予め準備され重ね合わされた(coregistered)断面2−D画像を使用し、これらの2−D画像は、周知のアルゴリズムを使用して合成され、3−D画像を生成する。そして、上記システムは、画像上に器具の位置を重ね合わせることができて、その結果、外科医は、外科治療中に上記器具の位置を観察できる。そのようなIGSシステムは、機械、光学、超音波、電磁技術を含む異なる追跡技術の様々な技術のいずれかを使用して、上記静止画像に対する上記プローブを追跡してもよい。そのようなシステムは、患者の生体構造は、外科治療中に静止していると共に不動であると想定されるというパラダイムに従っていて、焦点は、外科プローブまたは器具の「適切な」位置を追跡しようとしてきた。そのようなシステムは、機器を配置しながら、外科医が、患者よりむしろ、画像を観察することを前提としている。
【0008】
上述したように、治療への言及はまた、外科治療を伴うもの以外の医療も含みうる。医療の他の例は、放射線治療である。例えば、癌や冠動脈再狭窄などの増殖性組織疾患によって引き起こされる病気は、しばしば、放射線で治療される。この放射線治療では、病気を含むことが知られている、または病気を含むことが疑われている患者の部分に放射線が照射される。この目的のために、放射線治療計画システムは、疾患部分およびその周辺領域の計画画像を最初に取得するのに使用される。
【0009】
放射線治療計画システムは、一般的にCTまたはMRIシミュレータを含む。CTまたはMRIのX線撮像は、複数の重ね合わされた断面2−D画像を取得するための治療の始まりの前に、典型的には一日で行われる。これらの断面画像は、3−D画像を生成するために周知のアルゴリズムを用いて合成される。これらの3−Dシミュレーション画像が表示され、その後、X線写真で明らかな腫瘍または微視的疾患の広がりが疑われる領域のような、処理されるべき疾患の疑いの領域の位置を識別するために分析される。これらの処理すべき領域は、放射線治療ターゲットと呼ばれる。
【0010】
器官運動を説明しようと試みるために、マージンおよび計画ターゲット体積(PTVs)の概念は、照射のほとんどの間に、願わくはターゲットを含む体積を照射しようとするために開発された。PTVsは、患者ジオメトリまたは動きの変化を考慮するためにジオメトリックなマージンを含む。同様に、3−Dシミュレーション画像が表示され、その後、例えば脊髄および肺などの放射線によって損傷するかもしれない重要で正常な生体構造および組織を識別するために分析され、これらの組織の機能についての放射線の潜在的な影響を評価する。過度の放射線から守られ、または保護されるべきこれらの領域は、重要な構造またはリスクのある器官と呼ばれ、また、患者のジオメトリや動きの変化を考慮してマージンを含んでいてもよい。放射線治療の照射は、その後、慣習的に、CTおよび/またはMRI画像の単一セットから得られた放射線治療ターゲットおよび重要な構造の単一の静的モデルについて計画される。
【0011】
周知の技術においては、同時の容積(volumetric)画像化と治療が不可能であるため、患者および患者の体内のすべての器官は、正確なIGSまたは放射線量の照射のために正確に再配置する必要がある。しかしながら、以下の複数の要因を含むため、患者の正確な再配置は、不可能であることが、当業者に知られている。すなわち、上記複数の要因は、患者のセットアップ、つまり、患者の体のジオメトリおよびアラインメントを再現できないこと、体重の減少や腫瘍の成長および収縮のような患者の生理的変化、および、呼吸運動、心拍、直腸の膨張、蠕動、膀胱の充填、および自発的な筋肉の運動を含むがこれらに限られない患者の器官運動である。ここで留意すべきは、上記器官運動は、速い時間軸で生じ、1回の放射線照射中に変化が起こる(例えば呼吸運動)「フラクション内(intra-fraction)」器官運動と呼ばれる。あるいは、上記器官運動は、遅い時間軸で生じ、変化が放射線照射間または外科治療間に生じる「フラクション間(intra-fraction)」器官運動と呼ばれる。
【0012】
手術および放射線治療の両方の分野では、患者セットアップエラー、生理的変化、および器官運動は、上記手術および放射線治療が進むにつれて、患者の生体構造的ターゲットおよび重要な構造に対して、追跡される外科器具または治療ビームの位置ずれを増やす結果になる。
【0013】
例えば、放射線治療の分野では、長年にわたり、専門家らは、放射線治療ビームを使用して、技術的には「ポート・フィルム」と称される患者のハードコピー・フィルムを取得し、ビームの位置が元の計画から大きく変化していないことを確認しようと試みてきた。しかしながら、取得されるポート・フィルムは、一般的には、放射線治療のプロセスにおいてある所定の間隔(典型的には、1週間)で撮影されるただ1つの2‐D投射画像である。ポート・フィルムでは、器官の運動を補償することはできない。さらに、ポート・フィルムは、軟組織の生体構造を有意なコントラストで画像化せず、患者の骨構造についてのみ信頼できる情報をもたらす。したがって、ずれについての情報は、ポート画像が取得された時点の瞬間においてのみもたらされ、骨構造と軟組織構造との整列が必ずしも相関しておらず時間とともに変化するため、誤りを引き起こす可能性がある。提供されるポート画像内の適切なマーカによって、ビームのずれを、ある限られた程度においてのみ割り出して修正することができる。
【0014】
より最近では、電子ポータル画像化と称されるが、ポート画像の電子的な取得が何人かによって開示されている。この画像化技法は、線形加速装置または関連のキロボルトX線ユニットのX線を使用して、患者のX線透過放射線画像を取得するために、固体半導体、シンチレータ、または液体イオン化チャンバ・アレイの技術を使用している。ハードコピーの技法と同様、ずれについてのデータは、ポート画像が取得された時点の瞬間においてのみもたらされる。電子ポータル画像化における他の最近の進歩として、軟組織の位置を画像化しようと試みる埋め込み間質性放射線不透過マーカの使用が挙げられる。これらの手順は、侵襲的であり、マーカの移動に左右される。多数の画像の迅速な取得によって実行されるときでさえも、軟組織内の放射線不透過マーカによって特定される不連続な点の移動を見つけるにとどまり、器官の運動の真の複雑さ、およびそれによって引き起こされる線量の誤差を補償することはできない。多数の2D電子ポータル画像から3D容積画像の組を生成する他の最近の進歩は、日々の治療の投与の前または後に、体積コーン・ビームX線CTまたはヘリカル断層治療メガボルトX線CT画像の組を取得することである。この技法は、患者の設定誤差、すなわち患者の体の形状および整列、体重の減少または腫瘍の成長および収縮などの患者における生理学的変化、ならびに直腸の充満および排泄など、フラクション間の患者の器官の運動を補償することができるが、フラクション内の患者の器官の運動を補償することはできない。フラクション内の器官の運動は、きわめて重要であり、これらに限られるわけではないが、呼吸運動、心拍、直腸のガス膨張、蠕動、膀胱の充満、および自発的な筋肉の動きが含まれる。
【0015】
放射線治療は、歴史的には、対象とする体積を含む体の大きい領域に対して投与されてきた。いくつかの体積マージンが、微視的な病気の広がりの可能性を考慮するために必要である一方、上記マージンの多くは、治療計画および放射線の照射の不確実性を考慮するために必要である。照射される組織の総体積を減らすことは、有益である。なぜなら、これが照射される正常組織の量を減少させ、したがって、放射線治療による患者への全体的な毒性を減少させるからである。さらに、全体の治療体積の減少は、ターゲットへの線量増加を許容し、したがって、腫瘍抑制の可能性を高めることができる。
【0016】
臨床コバルト(Co
60放射性同位体源)治療ユニットとMV線形加速器(またはリニアック)は、1950年代の初めに、ほぼ同時に導入された。最初の2つの臨床コバルト治療ユニットは、ほぼ同時にオンタリオ州のサスカトゥーンおよびロンドンで1951年10月に導入された。臨床使用のためにのみ導入された最初のMV線形加速器は、1952年6月に、英国のロンドンのハマースミス病院にあった。最初の患者は、1953年8月に、この装置で治療を受けた。これらの装置は、すぐに広く癌治療に用いられるようになった。深く進入する電離光子ビームは、すぐに放射線治療の中心になり、深部に位置する腫瘍の広範囲におよぶ非侵襲の治療を可能にした。X線治療の役割は、これらの装置の出現によって、主として症状緩和治療から根治治療へと、徐々に変化した。その類似性にもかかわらず、コバルト・ユニットとリニアックとは、常に外部ビーム放射線治療における競合技術として考えられていた。この競合関係の結果、最終的には、米国および西欧においてはリニアックが支配的となった。
【0017】
上記コバルト・ユニットは非常に単純であり、時間を経ても技術的に大幅に改善されなかった。当然ながら、コバルト・ユニットのシンプルさは、その魅力の一部の要因であり、コバルト・ユニットは、非常に信頼性が高く、正確で、メンテナンスおよび実行するための技術的専門知識をほとんどを必要としなかった。このことにより、早い段階で、コバルト治療は、外部ビーム治療の最も普及した形になっている。
【0018】
上記リニアックは、より技術集約的な装置である。上記リニアックは、電子の大きな流れを4〜25MeVのエネルギーまで加速して、制動放射光子または散乱電子のビームを生成することで、より鋭いペナンブラ(penumbrae)を有してより進入性であるビーム、およびより高い線量の割合を可能にするはるかに多目的な装置であった。リニアックの信頼性が高くなるとともに、より進入性である光子ビームを電子ビームの追加と組み合わせて備えるという有益さが、既存のコバルト・ユニットに取って代わるための充分に強力な推進力と見られるようになった。
【0019】
コバルト治療は、何の反対もなしに、次第に消えたわけではなく、その議論の本質は、リニアックに対するコバルト・ユニットの得失を説明した、ラフリン、モハン、およびカッチャーによる1986年の有名な論文に記載されている。これは、コバルト・ユニットの継続と更なる技術開発のために主張された訴訟からの論説を伴っていた。コバルト・ユニットおよびリニアックの長所は、既に記載した。コバルト・ユニットの短所は、線量の進入深さが少ないこと、ソースの寸法により境界が大きいこと、エネルギーが少ない混入電子のため大きなフィールドについて表面の線量が大きいこと、および必須の規制監督であると見られていた。リニアックの欠点は、それらのエネルギー(したがって、低エネルギーのコバルト・ビームからの相違)が大きくなるとともに増大し、ビルドダウンの増加、電子の輸送による境界の増加、骨への線量の増加(対生成による線量の増加のため)、および最も重要なことには、10MVを超える加速電位での光中性子の発生であると見られていた。
【0020】
強度変調放射線治療(IMRT)以前の時代において、リニアックは、コバルト治療に対して決定的な利点があった。4MVのリニアック加速電位を使用してコバルトにきわめて類似したビームを生み出すことができるという事実が、電子ビームまたはより進入性である光子ビームを生成できるというリニアックの能力と組み合わされて、リニアックを好ましいものとしていた。コバルト治療の価値がリニアック治療の価値に対して重み付けられたとき、照射場は手動によってのみ生み出され、IMRTの利益は存在しなかった。IMRTが発展するにつれ、より高いMVのリニアック加速電位のビームおよび電子ビームの使用は、この分野の人々によって大部分が断念された。これは、一部には、IMRTによって必要とされるビーム・オン時間の増大に関する中性子の生成(および、患者の体全体への線量の増加)に対する懸念の高まり、および電子ビームの最適化の複雑さによるものであるが、最も重要には、低MV光子ビームIMRTが、がん治療のすべての場所のために優れた品質の治療計画を生み出すことができるためである。
【0021】
IMRTは、静止物体について達成された高度の正確さおよび精密さの点まで、3D線量計算および最適化の改善の数十年の頂点を提示している。しかしながら、現在受け入れられている線量モデル化のパラダイムには、根本的な欠点が存在する。その問題は、患者が基本的には動的かつ変形し得る物体であって、フラクションに分けられた放射線治療において完璧に再配置することができないという事実とともにある。1回の線量の照射においてさえも、フラクション内の器官の運動が、かなりの誤差を引き起こす可能性がある。この事実にもかかわらず、放射線治療の照射は、伝統的に、放射線治療ターゲットおよび重要構造の静的なモデルについて計画されている。真の問題は、頭蓋の外部(すなわち、定位放射線治療を使用するCNS疾病の処置を除く)の放射線治療が、効果的であるためにフラクションに分けられる必要があり、すなわち1日当たり1つの1.8〜2.2Gyのフラクションまたは2つの1.2〜1.5Gyのフラクションで照射されなければならず、慣習的に週間労働時間(月曜日〜金曜日)の間に照射され、例えば70〜72Gyの治療用線量の照射に2.0または1.8Gyにてそれぞれ7〜8週間を要するという事実にある。この日々のフラクション化により、正確な線量の照射のために、患者および患者の体内の器官のすべてを正確に再配置することが必要となる。これが、放射線治療に、「実際の治療の最中にターゲットおよび重要構造が移動する場合、我々が開発した高度な線量計算および最適化のすべては何の役に立つのであろうか」というきわめて重要な疑問を提起する。器官の運動の研究についての最近の重要な再検討が2001年までの既存の文献を要約しており、患者の設定誤差および器官の運動という2つの最も有力な種類の器官の運動を示している。例えば、頭頸部がんにおける腫瘍のかなりの収縮など、患者においてかなりの生理学的変化がしばしば臨床的に観測されているが、それらはあまり研究されていない。器官の運動の研究は、フラクション間およびフラクション内の器官の運動にさらに分類され、この2つを明示的に分離することは不可能であると認識されており、すなわちフラクション内の運動が、混同によってフラクション間運動の明快な観察を妨げていることは明らかである。婦人科の腫瘍、前立腺、膀胱、および直腸のフラクション間の運動についてのデータが、肝臓、横隔膜、腎臓、膵臓、肺腫瘍、および前立腺のフラクション内の運動についてのデータと同様、公開されている。公開に先立つ20年間にわたる多くの同業者の再検討した刊行物が、フラクション間およびフラクション内の器官の運動が放射線治療の線量測定に大きな影響をもたらす可能性があることを示している。これは、0.5〜4.0cmの変位が50人未満の患者の研究において一般に観察されているという事実に見られる。器官の運動の多数の観察についての平均の変位は小さいかもしれないが、頻繁ではないにせよ大きな変位が、患者の受け取る生物学的に有効な線量を、大きく変化させる可能性がある。というのも、広く認められているように、腫瘍の抑制を達成するためにフラクション当たりの正確な線量を維持しなければならないからである。非特許文献1によって最近公開されたフラクション内の器官の運動についてのより集中した検討においては、器官の運動に関係する線量の誤差に対処する重要性が、「・・・認容することができず、あるいは少なくとも望ましくない大きな運動が、いくらかの患者において生じ得ることに、議論の余地はない・・・」と簡潔に述べられている。さらに、器官の運動の問題が常に放射線治療における懸念であることが、Goiteinによって「患者が運動および呼吸をし、患者の心臓が鼓動し、患者の腸が運動することは、放射線が最初にがんの治療に使用されたときから知られている。それほど遠くない数十年においては、そのような運動のすべてをシミュレータの蛍光透視鏡で眺め、フィールドの縁のワイヤをターゲット(それを見ることができないことを気にせずに)がフィールド内にとどまるように充分に広く設定することだけが解決策であった」と説明されている。
【0022】
何週にもわたる放射線治療の全体を通じての患者の設定誤差、生理学的変化、および器官の運動によって放射線治療に課せられる制約に対処する試みにおいて、従来技術は、それぞれの放射の照射の前および後に体積CT「スナップ・ショット」を取得することができる画像化システムへと進化した。この放射線治療ユニットと放射線画像化設備との新規な組み合わせは、画像案内放射線治療(IGRT)と称され、好ましくは画像案内IMRT(IGIMRT)と称されている。この従来技術は、患者の設定誤差、ゆっくりとした生理学的変化、および放射線治療の長い推移にわたって生じるフラクション間の器官の運動を取り除く可能性を有している。しかしながら、この従来技術は、器官の運動のきわめて重要な一形態であるフラクション内の器官の運動を、補償することができない。この従来技術の装置は、患者の全体位置をずらすためだけにしか使用することができない。この従来技術は、フラクション内の器官の運動を捉えることができず、ヘリカルまたはコーン・ビームCT画像化が実行できる速度によって制約されている。第2には、おそらくは同程度に重要であるが、CT画像化が、患者へと照射される電離放射線の線量を増加させる。二次的発がんの発生が低‐中程度の線量の領域において生じること、および体全体への線量が多数回のCT画像調査を加えることによって増すことが、よく知られている。
【0023】
CT画像化およびMRIユニットは、どちらも1970年代に実演された。CT画像化は、X線減衰の物理的プロセスに由来する固有の空間的完全性により、初期に放射線治療の画像化の「標準」として採用された。MRIにおいて生じる空間ひずみの可能性にもかかわらず、MRIは、CT画像化に比べて軟組織のコントラストがはるかに良好であり、化学的な腫瘍の兆候または酸素生成のレベルなどの生理学および代謝の情報を画像化できるため、依然として放射線治療のための画像化の様相としてきわめて魅力的である。データの空間的完全性に影響を及ぼすMRIアーチファクトは、磁界の均一性の望ましくない変動に関係しており、1)磁石の設計に固有の磁界の不均一性および勾配スイッチングによって誘起される渦電流など、スキャナに起因するアーチファクト、および2)画像化対象に起因するアーチファクト、すなわち患者の固有の磁気感受性という2つのカテゴリに分離することができる。現代のMRIユニットは、注意深く特徴付けられ、スキャナに起因するアーチファクトを効果的に除去できる再現アルゴリズムを使用している。1.0〜3.0Tの範囲の強い磁界強度において、患者の磁気感受性が、大きなひずみ(磁界の強さに比例する)を生み出し得るが、これは最初に感受性画像化データを取得することによって、しばしば除くことができる。最近では、多数の学術研究センターが、放射線治療処置の計画にMRIを使用し始めている。強い磁界における患者関連のアーチファクトに対処するよりもむしろ、多くの放射線治療センターは、放射線治療処置の計画に0.2〜0.3Tの低い磁界のMRIユニットを使用している。なぜなら、これらのユニットは患者の感受性による空間的ひずみが無視できるレベルにまで減少させるからである。フラクション内の器官の運動に対処するために、MRIは、患者の動きをリアルタイムで追跡するために充分高速であり、容易に調節および配向が可能な視野を有しており、二次的ながんの発生率を増加させ得る患者への追加の電離放射線をもたらすことがないため、きわめて好ましい。最近では、呼吸により制御され肺活量計によってゲートされる高速多断面CTが、フラクション内の呼吸運動を評価またはモデル化する試みにおいて、多くの研究グループによって使用されている。高速の1断面MRIも、フラクション内の運動の評価に使用されており、動的平行MRIは、フラクション内の運動の容積画像化を実行することができる。MRIは、CT画像化においては患者へと照射される線量を増大させる必要があるため、高速の繰り返しの画像化に関してCTに対して決定的な利点を保持している。全身への線量に起因する二次的発がんの増加についての懸念は、IMRTにおいてすでに存在しており、繰り返しのCT画像化の追加によって大きく悪化する。
【0024】
従来技術において、2つの研究グループが同時に、リニアックに統合されたMRIユニットを開発しようと試みたようである。2001年に、MRIとリニアックとを一体化した装置を教示する米国特許出願第6198957号が、グリーンによって出願されている。2003年に、オランダのUtrecht大学のグループが、MRIとリニアックとを一体化した装置の設計を提示し、以後、それら装置の実現可能性を試験するための線量計算を報告している。CT画像化ユニットと反対に、MRIをリニアックに一体化させる大きな困難は、MRIの磁界がリニアックを機能不可能にする点にある。磁界
の存在下で、速度
で運動している荷電粒子が、
によって与えられるローレンツ力に直面することは、周知である。MRIユニットによって生じるローレンツ力によって、電子が直線経路で移動することができなくなり、事実上リニアックをオフにするため、リニアックによる電子の加速が不可能になる。さらに、リニアックの高い無線周波数(RF)の放射が、MRIユニットのRF送受信システムに問題を引き起こし、画像の再現に必要とされる信号を劣化させ、おそらくは繊細な回路を破壊してしまう。リニアックとMRIユニットとの一体化は、途方もない技術的努力であり、未だ可能にされていない。
【0025】
強度変調放射線治療(IMRT)は、照射を腫瘍のサイズ、形状、および位置に一致させることができる外部ビーム治療の一種である。IMRTは、従来からの放射線治療に比べて大きな進歩である。IMRTの放射線治療の照射方法は、放射線治療の技術分野において知られており、非特許文献2に記載されている。このWebbの業績を、以下では「Webb 2001」と称し、その全体が本明細書中に参考として援用される。従来の放射線治療の有効性は、腫瘍の不完全な照準および不充分な放射線量によって制限されている。これらの制約により、従来の放射線は、過剰な量の健康な組織を照射にさらして、負の副作用または合併症を引き起こす可能性がある。IMRTによれば、当該分野(Webb 2001)において知られている基準によって定められるとおりの最適な3D線量分布が、腫瘍へと届けられ、周囲の健康な組織への線量が最小化される。
【0026】
典型的なIMRTの処置手順においては、患者が、疾病の照準のための代謝情報を得るために、おそらくはMRIシミュレーションまたは陽電子放射断層撮影(PET)調査が追加されるが、処置計画用X線CT画像化シミュレーションを受ける。走査が行われるとき、患者は、画像化が最高の精度で完了するよう、処置と一致するやり方にて動かぬように固定される。典型的には、放射線がん専門家または他の関連の医療専門家が、これらの画像を分析し、処置を必要とする3D領域、ならびに例えば脊髄および周囲の器官といった重要構造など、隔離を必要とする3D領域を決定する。この分析に基づいて、IMRT処置計画が、大規模な最適化を使用して作られる。
【0027】
IMRTは、2つの先進技術に依拠している。第1は、逆方向治療計画である。高速なコンピュータを使用する高度なアルゴリズムによって、治療計画を、最適化プロセスを使用して決定できる。上記治療計画は、周囲の健康な組織の過剰な暴露を最小にしつつ、所定の均一な線量を腫瘍へと届けるように意図されている。逆方向計画においては、放射線ビームを構成する多数(例えば、数千)のペンシルビームまたはビームレットが、腫瘍または他のターゲット構造へと高精度で個々に照準される。最適化アルゴリズムによって、個々のビームレットの不均一な強度分布が、ある特定の臨床目的を達成するために決定される。
【0028】
IMRTを構成する第2の技術は、一般的には、マルチリーフ・コリメータ(MLC)を利用する。MLC技術が、逆方向治療計画システムから導き出された治療計画を投与する。リーフ・シーケンシングと呼ばれる別個の最適化が、ビームレット・フルエンスの組を、等価なリーフ移動指示または関連のフルエンスを有する静的開口の組へと変換するために使用される。MLCは、典型的には、治療計画からの強度プロファイルに従って照射ビームを遮断する特定のパターンを形成すべく移動するコンピュータ制御のタングステン・リーフで構成されている。MLC投与の代案として、減衰フィルタを、ビームレットのフルエンスに一致するように設計してもよい。
【0029】
計画が生成され、品質管理チェックが完了した後、患者が処置用カウチに配置および固定され、最初のX線CTまたは磁気共鳴画像化のために実行された配置を再現しようと試みられる。次いで、照射が、MLC指示または減衰フィルタを介して患者へと投与される。次いで、このプロセスが、所定の累積線量が照射されたと考えられるまで、多数の週間労働時間にわたって繰り返される。
【0030】
磁気共鳴画像化(MRI)は、X線またはメガボルトX線CT画像化において使用される電離放射線を使用することなく、内部の体構造の詳細な画像を生成する先進の診断用画像化手順である。MRIの診断用画像化方法は、放射線医学および放射線治療の技術分野において公知であり、非特許文献3および非特許文献4に記載されている。非特許文献3および非特許文献4を、以下ではそれぞれ「Haackeら 1999」ならびに「LiangおよびLauterbur 2001」と称し、その全体が本明細書中に参考として援用される。MRIは、強力な主磁石、磁界勾配システム、無線周波数(RF)送受信機システム、および画像再構成用コンピュータ・システムを使用することによって、詳細な画像を生み出すことができる。開放磁気共鳴画像化(オープンMRI)は、MRI診断用画像化の進んだ一形態であり、画像化の際に患者を完全には囲まない主磁石形状を使用する。MRIは、CT画像化に比べて軟組織のコントラストがはるかに良好であり、分光学的検査により得られる化学的な腫瘍の信号または酸素生成のレベルなどの生理学および代謝の情報を画像化できるため、放射線治療のための画像化の様相としてきわめて魅力的である。軟組織のコントラストを改善するため、MRI用の多数のトレーサ剤が存在し、かつ開発中である(例えば、腎臓または腸管の強調のためのガドペンテト酸ジメグルミン、または全体コントラストのためのガドテル酸メグルミン)。炭素13、窒素15、または同様の安定な同位体物質を含んでいる過分極化液体あるいは常磁性のニオゾーム(niosomes)を使用することによってPET画像化に類似する腫瘍の代謝の検知を可能にする新規な造影剤が、現在開発中である。これら診断用MRI技法はすべて、疾病の正確な照準を向上させ、放射線治療における処置への応答の評価を容易にする。
【0031】
IMRT治療計画のためのCTスキャンは、場合によってはヨウ素を含有するコントラスト媒体の静脈内注射後に、薄い断層(2−3mm)を使用して行われる。CTスキャンは、磁気共鳴画像化(MRI)よりも、幅広く利用可能で、安価であるという利点を有しており、治療計画のための電子密度情報を得るために較正することができる。MRIによる調査が不可能である一部の患者(閉所恐怖症、心臓ペースメーカー、動脈瘤クリップ等による)を、CTによってスキャンできる。
【0032】
放射線治療とIGSを含む様々な医学的治療中の患者セットアップエラー、生理的変化、および器官運動の問題は、現在、大きな関心と重要性を有するトピックである。原体照射治療の精度が、線量のただ1回の照射の最中(フラクション内の変化;例えば、ガスによる直腸の膨張、尿による膀胱の充満、あるいは胸の呼吸運動などの器官の運動)および日々の線量の照射の間(フラクション間の変化;体重の増加および腫瘍の成長または収縮ならびに患者の形状の変化などの生理学的変化)の両者における患者の質量、位置、向き、および関節による幾何学的構成の変化、ならびにフラクション間およびフラクション内の器官の運動(例えば、呼吸の際の)によって大きく制約されることは、周知である。本件発明を除き、実際の線量の照射のそれぞれかつすべての最中にこれら逸脱のすべてを同時に補償する単一の効果的な方法は、知られていない。現在の技術水準の画像化技法は、放射線照射の前および後において、患者の2Dおよび3Dメガボルトまたは常用電圧X線CT「スナップ・ショット」の撮影を可能にしており、あるいは放射線照射の最中に軟組織のコントラストを有していない時間分割の2D放射線画像を取得を可能にしている。
【0033】
大きな進歩は、原体照射法およびIGSを含む様々なタイプの医学治療を含む多くの医学分野でなされている。しかし、それらの本当の効果は、改善されたリアルタイム画像化ガイダンスおよび制御なしでは実現されない。
【発明を実施するための形態】
【0053】
(図面の詳細な説明)
本発明を、多数の変更および変種が当業者にとって明らかであるがためにあくまで例示を意図するものである以下の実施例において、さらに詳しく説明する。本明細書および特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、そのようでないことが文脈から明らかでない限り、複数への言及を含んでもよい。
【0054】
本発明の開示は、様々なタイプの治療の間に患者の生体構造のリアルタイムモニタリングを可能にする実施形態の詳細な説明を含む。例えば、開示された実施形態は、様々な形態の内科的治療の間に患者の生体構造および疾患の高時間・空間分解能のMRI用の装置および/または方法を含むことができる。上記開示された実施形態は、例えば、放射線治療および/または様々なタイプの手術を含み得る。本明細書に開示された特定の非限定的な実施形態は、放射線治療システムを含む実施形態と、サージカルガイダンスシステムを含む実施形態とを含む。
【0055】
したがって、いくつかの実施形態によれば、放射線治療装置およびプロセスは、IMRT中に患者の生体構造および疾患の高時間・空間分解能MRIのために提供され、患者へと照射される高度に原体照射的な電離放射線の線量を直接測定して制御する。有益な実施形態では、放射線治療システムは、患者へのIMRT放射線ビームと軸方向のアクセスを可能にするオープンMRI、マルチリーフ・コリメータまたは補償フィルタをベースとするIMRT照射システム、および1つの重ね合わされると共にガントリに取り付けられたシステムにおけるコバルト60遠隔治療法の放射線源を備えている。
【0056】
上述したように、従来のシステムは、放射線ビームが患者に照射されている放射線治療の投与中にリアルタイムで人間の内部軟組織を同時に画像化しない。むしろ、従来のシステムでは、放射線照射の前および/または後に画像が生成され、これらの画像は、放射線照射中に患者に生じ得る運動および/または自然な変化を反映していない。したがって、狙いをつけた照射も、本明細書に記載する装置がないと、初期の画像を撮影した後に処置対象の体の部位のサイズが自然に変化した場合、あるいは治療前に患者の体の部位の位置が変化した場合、すなわち患者の生体構造のジオメトリおよびアラインメントに患者セットアップ誤差が生じた場合、体重の減少または腫瘍の成長および収縮など、患者に生理学的変化が生じた場合、ならびにこれらに限られるわけではないが呼吸運動、心拍、直腸の膨張、蠕動、膀胱の充満、および自発的な筋肉の運動など、患者の器官運動の場合に、成功しないであろう。
【0057】
本発明の開示の側面は、患者のリアルタイムMRIを放射線の照射と実質的に同時に実行することを可能にすることにより、従来のシステムの問題を解消するのに役立つシステムおよび方法を可能にする。もし、処置対象の領域が、患者のセットアップ誤差、生理学的変化、および/またはフラクション間またはフラクション内の器官の運動に起因する、いずれかのタイプの線量の測定誤差を抱えている場合に、ターゲットを絞った放射線は、再調整できる。これらに限定されないが、ターゲットおよび生体構造のサイズおよび/または位置の変化を補償すべく患者の位置を動かすこと、処置を完全に中断し、処置の再開前にさらなる計算を実行できるようにし、あるいは一時的な運動の休止を可能にすること、腫瘍抑制の可能性を高めるべく余分なフラクションの照射を追加し、あるいは副作用の可能性を少なくすべくフラクションの照射の数を制限すること、すでに説明した有益なプロセスの実施形態のいずれかを行うこと、ならびに例えばIMRT計画のすべての照射、すべてのビーム、またはすべてのセグメントについて再最適化を実行するなど、さまざまな時間軸についてIMRT治療計画の再最適化を行うこと、など、多数の対応をとることができる。
【0058】
本明細書で述べたリアルタイム画像は、発生する任意のフラクション内の器官の運動をキャプチャすると共に解決するのに十分な早さであり、治療中に、例えば、或る放射線量が照射されている間に、患者のジオメトリに著しい変化をもたらすことができる連続画像を参照できる。リアルタイム画像により得られたデータは、患者の実際の線量沈着の決定を可能にできる。これは、移動する組織およびターゲットに照射される線量を合算する変形可能な画像登録及び補間の周知技術を適用することによって達成できる。このデータは、全マルチセッション放射線治療プログラムの過程で収集できる。ここで、データは、放射ビームが患者に衝突して放射線を照射している間に蓄積され、それによって3D体内線量測定の定量的決定を可能にする。したがって、本発明の開示は、放射線照射エラーに関連する器官運動の評価および制御し、または排除するための有効な手段を可能にする。
【0059】
参照図面は、図面に詳細情報を加えて作られている。この参照図面において、同様の参照数字は、いくつかの図を通して、最初は
図1と同様または同等の要素を指定する。
【0060】
図1では、本開示の実施形態は、オープンMRI15と、IMRTコバルト治療ユニット20とを備えている。また、
図1に示すシステムは、MLCまたは補償フィルタ・ユニットなどのIMRTコバルト治療ユニット20内のIMRTを実行するための手段と、MRI15を静止させつつIMRTコバルト治療ユニット20を回転させるために使用するガントリ25とを備えている。患者35が、調整可能な静止カウチ30上に配置されている。
【0061】
図2は、使用時の上記システムを示している。ガントリ25は、
図1における位置に対して時計回りに約90°回転している。このように、IMRTコバルト治療ユニット20は、多数の選択位置の1つにおいて患者35を治療するための位置にある。
図3は、
図1のシステムの上面図を示す。
図4は、
図1のシステムの側面図を示す。
【0062】
図5は、
図1の上記IMRTコバルト治療ユニットの一実施形態としてのマルチリーフコリメータで重ね合わされた同位体放射源の詳細な概略図を示す。放射性同位体源115は、固定された1次のコリメータ120、2次の二重分岐マルチリーフコリメータ125、および2次のマルチリーフコリメータ125からのインターリーフ(interleaf)漏れを遮断するための3次のマルチリーフコリメータ130で示されている。
図6は、2次の二重分岐マルチリーフコリメータ125および3次のマルチリーフコリメータ130の斜視図を示す。上述したように、3次のマルチリーフコリメータ130は、2次のマルチリーフコリメータ125からインターリーフ漏れを遮断するために設けられている。
図7は、放射性同位体源115、2次の二重分岐マルチリーフコリメータ125、および3次のマルチリーフコリメータ130のビームアイビューを示す。
【0063】
したがって、本開示の有利な実施形態は、マルチリーフコリメータ、または、直角に取り付けられた「開放」MRIユニット15に沿って回転ガントリ25に取り付けられた自動化された補償フィルタシステムを備えたコバルト−60治療ユニットのような、コンピュータ制御されたコーンビームコバルト治療ユニット20を含む。IMRTコバルト・ユニット20は、コーンビームジオメトリ放射線を軸方向に開放されたMRIユニット15の開口の中心に突出させる。上記IMRTコバルト・ユニット15は、ガントリ25を患者35の周囲に軸方向(患者の縦(頭方−尾方)軸周り)に回す。調整可能な治療カウチ30は、ガントリ25がビーム角度を変更するために回転する間に、静止位置に患者35を支持するために使用されてもよい。
【0064】
本実施形態では、放射線治療としてコバルト遠隔治療を使用する。いくつかのIMRTは、より進入性の放射線治療を提供するための線形電子加速器を使用が、加速器自体は、放射される放射線のレベルに関して高度に可変である治療ビームを生成する。したがって、患者に使用されている放射線の量を正確に割り出して、IMRTデリバリーのためのMLCの動きを調整することは、困難となる。ガンマ線は、放射性同位元素の崩壊によって放出される電磁放射線であり、物質内の電離を生み出すのに十分なエネルギーを有し、一般に、約100keVから1MeVを優に超える。放射線学の目的のために最も有用なガンマ放射の放射線同位体は、コバルト(Co60)、イリジウム(Ir192)、セシウム(Cs137)、イッテルビウム(Yb169)、およびツリウム(Tmが170)であることが判明している。このように、放射性同位元素の崩壊は、よく知られた現象であり、したがって、コバルト遠隔治療によって放出される放射線は、より一貫した、したがって、患者の治療計画を準備するという点で、より計算が容易である。
【0065】
本実施形態のコバルトIMRTの実施可能性は、計算分析によって実証されている。市販のコバルト治療装置およびMLCによるIMRT照射について、シミュレーションを実行した。コバルト・ビームレット・モデルでの3D画像ベースの放射線治療計画システムを委託し、セラトロニックス(Theratronics)1000Cコバルト治療ユニットから測定された放射線着色フィルム(radiochromic film)データを用いて実証された。等方性の4×4×4mm
3線量ボクセル格子(voxel grid)(γ線IMRT源ペナンブラに関して事実上シャノン−ナイキストリミットである)を生成した。このビームレット・モデルは、公開されたデータにぴったりと合い、セロベンド(Cerrobend)ブロックによって形成され、以前に報告された方法論を用いて測定された1×1cm
2ビームレットの放射線着色フィルム測定結果で確認した。次いで、計算深さを、構造の標準的な三次元光線追跡で同じボクセルについて割り出した。計算された深さへの密度のスケーリングを、線量モデルにおいて組織の異質性をよりよく補償するために使用した。IMRT最適化のため密な列の取り扱いを含むバリア内点法の実行を使用するCPLEX,ILOG Concert Technologiesの産業用最適化ソルバーを、最適IMRT計画を解くために使用した。ビームレットのフルエンスを、各ビーム角度についてリーフ・シーケンシングのための5%のレベルまで分離した。得られる計画線量分布およびヒストグラムを、投与可能な不連続強度によって重み付けられた線量値を合計することによって計算した。リーフ伝達漏れ強度を、そうでなければゼロ強度であるビームレットについて、保守的に1.7%と評価した。最後に、治療計画のための投与の指示を生成するための発見的リーフ・シーケンシング最適化の標準的な方法を使用した。Virginia Medical Collegeの同時積分ブースト(SIB)というターゲット線量レベルの仕組みを、それが文献において支持されている最大の最大‐最小臨床処方線量比であって、最も困難な線量処方の仕組みを満足しているために採用した。頭部および頸部IMRTが、いくつかの理由でIMRT最適化のテストのための優れた基礎をもたらす。すなわち、1)ターゲットの均一な包含を維持しつつ唾液腺および他の構造を隔離するという明確な治療ターゲットが存在する点、2)これらの目標を達成しようと試みることが、IMRT最適化を技術的限界までテストする点、および3)Radiation Therapy Oncology Group(RTOG)のH‐0022 Phase I/II Study of Conformal and Intensity Modulated Irradiation for Oropharyngeal Cancerという大規模なフェーズI/IIの多施設の試行が、計画の基準の一般的な組を定めている点、である。調査される事例を、0°、51°、103°、154°、206°、257°、および309°というInternational Electrotechnical Commission(IEC)のガントリ角度を有する等間隔の7つのビームについて実行した。治療計画システムは、7つのビーム角度からターゲットを適切にカバーする1,289のビームレットを生成し、4mmの等方性のボクセル格子は、417,560のボクセルを生成した。治療の結果が、
図8および
図9に示されている。本発明者らのシステムが、高線量ターゲットの95%のカバーを確保するために計画を正規化している点に注目すべきである。
図8は、委託されたコバルト・ビームレットを使用して計画された単一の頭部‐頸部IMRTの事例からの軸方向の線量分布を示している。ターゲットの優れた包含および組織の隔離を観測することができる。
図9は、4mmのボクセルおよび1Gyの線量ビンを使用してリーフ・シーケンシングされ、漏れ補正された計画(すなわち、照射可能な計画)から導出されたDVHデータを示している。コバルト源にもとづくIMRTは、頭部‐頸部の患者について優れたIMRT治療計画を生成した。このγ線IMRTは、右耳下腺(RPG)を明確に隔離し、左耳下腺(LPG)および右顎下腺(RSMG)を30Gyにおいて体積50%未満に保ちつつ、ターゲット体積(CTVおよびGTV)の95%超を所定の線量以上でカバーできている。他のすべての構造は、許容値未満である。不特定の組織(SKIN)は、60Gy未満に保たれており、50Gyを超えるのは体積の3%未満であった。使用された最適化モデルは、Romeijnらにおいて公開されたものと同じであり、コバルト・ビームのためには変更されなかった。より大きな奥行きを有する前立腺および肺などの部位については、余分なビームまたはアイソセンタを追加することで、リニアックにもとづくIMRTと同じ臨床品質基準を達成できるコバルトIMRTを使用する治療計画の生成が可能であることが、当該分野において知られている。この実施可能性の実証は、コバルト治療ユニットが高品質のIMRTを提供できることを示している。
【0066】
磁場の存在下で、コバルトIMRTのための本実施形態の線量計算の使用可能性は、コンピュータ分析によって実証されている。また、コバルト遠隔治療を用いることにより、良好な計算がMRIの磁場に基づいて行うことができる。放射線治療が行われる場合、患者がMRI内にいる間、磁界は、ターゲット放射線のわずかな曲がりを引き起こす。このように、治療計画を決定するために使用される計算は、この曲がりを考慮に入れる必要がある。磁界
の存在下で、真空中を速度
で移動する荷電粒子は、
によって与えられるローレンツ力を受ける。この力は、役に立つイオン化光子および電子の物体との相互作用の物理学を大きく変化させるほどには充分に大きくないが、イオン化電子の全体的な輸送、したがって得られる線量分布に影響を及ぼし得る。二次電子の輸送に対する磁界の影響は、50年よりも前から始まって、物理学の文献においてよく研究されている。最近の研究は、患者における局所的な線量の体積を増加させるために一次または二次電子の合焦または捕捉を助けるため局所化された磁界を使用する試みにおいて、モンテカルロ・シミュレーションおよび分析的分析を使用している。これらの研究はすべて、ローレンツ力で電子の輸送を横方向に閉じ込めるため、磁力線をビーム軸の方向に整列させつつ調査されている(「長手方向の」磁界と称され、ここで長手という用語は、患者ではなくビームを指している)。約1.5〜3.0Tの間の磁界の強磁界のMRIにおいて、旋回の初期の半径が二次電子の大角度散乱相互作用(制動放射、弾性散乱、および強衝突(hard collisions))のMFPに比べて小さく、この状況が電子の所望の捕捉または合焦をもたらすことが知られている。電子がエネルギーを失うと、
に比例して半径が減少し、大角度散乱相互作用(CSDA)が存在しないとき、電子が停止するまで半径が減少する螺旋に従うだろう。この螺旋は、電子のフルエンスを変化させ得るが、何ら有意なシンクロトロン放射を生まないことが知られている。本発明においては、平行なMRIでリアルタイムの画像化が可能であるために、磁界が照射ビームに対して直交していなければならない。最近の研究が、6MVリニアック・ビームのビーム軸に直交する1.5Tの磁界が、6MVリニアック・ビームレットについて、水への線量分布を大きくかき乱し得ることを示している。このような線量分布のひずみの回避、および画像化データの空間的完全性を損ない得るMRIアーチファクトの防止の両者のため、本発明の有益な実施形態は、磁界を患者の上下方向に沿って導くことができる低磁界オープンMRIの設計を使用する(
図1を参照)。コバルトγ線からの二次電子についての旋回の半径の簡単な評価が、旋回の半径が電子の大角度散乱相互作用のMFPよりもはるかに大きいことを示している。これは、ローレンツ力が磁界の大きさ
に比例し、旋回の半径が磁界(104)に反比例するため、容易に理解できる。本発明者らは、スラブ・ファントム形状のコバルトγ線源からのビームレットのモデル化を、よく検証されたIntegrated Tiger Series(ITS)モンテカルロパッケージ(Monte Carlo package)およびそのACCEPTMサブルーチンを磁界中での輸送について使用して実行した。シミュレーションのため、0.1MeVの電子および0.01MeVの光子の輸送エネルギーのカットオフ、標準的な凝縮されたヒストリー・エネルギー格子(ETRANアプローチ)、ランドー分布からサンプルしたエネルギー・ストラグリング、ベーテ理論にもとづく質量衝突停止パワー、デフォルトの電子輸送サブステップ・サイズ、および束縛効果を含んでいる非コヒーレントな散乱を使用した。3組のシミュレーションを実行し、各組は、ビーム方向に平行な0.3Tの一様な磁界の存在下および非存在下での実行を含んでいた。2cmの円形コバルトγ線ビームレットを、以下の形状についてモデル化した。すなわち、30×30×30cm3の水ファントム、10cmの肺密度(0.2g/cc)水スラブを5cmの深さに有する30×30×30cm3の水ファントム、および10cmの空気密度(0.002g/cc)水スラブを5cmの深さに有する30×30×30cm3の水ファントムである。シミュレーションは、推定される線量において1パーセント未満の標準偏差を得るため、8〜30時間にわたってP4(Pentium4(登録商標))1.7GHzのPC(パーソナルコンピュータ)で3000万〜1億のヒストリーにて実行された。結果は
図10〜12に示されている。
図10は、本発明の有益な実施形態において存在するような0.3Tの直交一様磁界が、軟組織または骨における線量分布を測定可能なほどにはかき乱さないことを明確に証明している。本発明にとってきわめて有用な処置部位は、体内で最も顕著な組織異質性を含んでいる肺および胸部である。
図11に示されているように、ファントムに12cmの肺密度(0.2g/cc)の水スラブを加えることで、高および低密度の領域の境界において、線量にきわめて小さいが検知可能である乱れが引き起こされている。これらの乱れは、補正なしで認容可能な臨床適用を可能にするために充分小さい。
図12において、最後に我々は、低密度の領域および境界領域に大きく存在する顕著な乱れを観測した。これは、空洞が、正確な線量測定に関して最大の課題を有することを示している。しかしながら、低密度の媒体との境界を除くと、軟組織および(MFPが軟組織よりもさらに短くなる)骨において大きな乱れは存在しないはずである。このデータは、低磁界(0.2〜0.5テスラ)のMRIでの本発明の有益な実施形態において、線量の乱れは、組織が存在していないため正確な線量測定が必要とされない空洞の内側を除き、小さいことを示している。コバルト遠隔治療ユニットなどの公知の放射線源を使用することによって、MRI磁界の強さが既知であれば、偏向の量を容易に割り出すことができる。しかしながら、磁界の強さが既知であっても、線形加速器が使用される場合には、未知である放射のエネルギー・スペクトルが計算をはるかに困難にする。
【0067】
陽子、重イオン、および中性子など、MRIユニットから離れた加速器またはリアクタによって生成され、ビームによって患者へと運ばれるMRIユニットの動作を大きくは妨げない他の放射線源も本発明に含まれうる。
【0068】
さらに、MRI磁界の強度が計算に織り込まれ、結果として、オープンMRIの使用がクローズドMRIに対する利点を提供する。オープンMRIにおいては、一般的に、生成される磁界の強度がクローズドMRIの磁界よりも小さい。したがって、オープンMRIからもたらされる画像は、より多くの雑音を有しており、より高磁界のクローズドMRIからの画像ほど明瞭でなく、および/または明確でない。しかしながら、クローズドMRIのより強力な磁界は、オープンMRIのより弱い磁界に比べ、放射線治療をより大きく偏向させる。したがって、所与の治療計画にとって最も有益な特徴に依存して、本発明は、クローズドMRIが使用可能であることも予期している。しかしながら、計算が容易であり、および/またはわずかに明瞭さに劣る治療時の画像であっても大部分の治療計画を調節するために充分であるため、本発明は、大きな線量の乱れを除き、空間的な画像化ひずみを防止し、高速な平行位相アレイMRIを可能にするため、
図1に示した形状のオープンMRIがコバルト遠隔治療とともに使用されることを予期している。
【0069】
オープンMRIおよびコバルト遠隔治療を用いることによって、患者の3次元(3D)画像は、上記放射線治療中に行うことができる。このように、ターゲット領域の3D画像およびターゲット領域の計画画像の3次元画像を用いることによって、変位は、放射線治療プロセスの間に受信された連続的な3D映像に基づいて更新できることを決定できる。得られた情報を用いて、患者は、その後、治療ビームに対して移動されて、測定された変位が所定の制限外である場合などに、照射プロセスの間の変位を低減してもよい。照射は、その後、移動後に継続してもよい。代わりに、上記治療ビームは移動してもよい。移動は、治療中に行われてもよいし、治療を中断して、移動を行ってもよい。
【0070】
治療中に3D画像を用いると共に、放射線治療プロセスの間に迅速に患者を位置決めおよび/または調整するためにこれらの画像を用いることで、治療精度を大幅に改善できる。放射線が照射されている間、患者が正しく位置合わせされなくなる場合、このずれを位置調整によって軽減することができる。予想される放射量の拡大に加えて、改善された位置精度は、従来のシステムを用いて放射線で治療できないとされている腫瘍の治療を可能にする。例えば、最初の脊髄腫瘍および脊髄への転移は、典型的には、重要な機能解剖学的領域の病変を治療するために必要な高精度のせいで、従来の放射線システムによって治療されない。治療中に3D画像によって提供される高められた精度によって、これらのタイプの腫瘍を治療することができる。また、肺、上部胸郭、およびフラクション内の器官の運動が放射線治療の線量に関する問題を引き起こすことが知られている他の領域に位置するターゲットについても、改善が予想される。
【0071】
他の実施形態において、個々のガイダンスシステムは、患者の位置を追跡するために使用できる。上記ガイダンスシステムは、実際の患者の位置を計画および放射線治療の両者において得られた画像化情報を関連付けるために使用できる。これは、患者のセットアップおよび治療デリバリー段階(treatment delivery phases)を通じて更新可能な画像の相関および位置情報を提供することにより、患者が治療装置の座標系に対して直交しない位置に移動した場合でも、患者の位置決めの容易性を大きく向上させることができる。ノンコプラナー(non-coplanar)治療位置で患者の位置を監視するこの機能は、従来の放射線治療システムよりも大幅に改善されるだろう。1つの有利な実施形態では、上記ガイダンスシステムは、配置される患者のための調節可能なベッドまたはカウチを有していてもよい。他の有益な実施形態では、上記ガイダンスシステムは、上記MRIおよび上記コバルト治療ユニットの実質的に同時の移動を許容するガントリを有していてもよい。いくつかの有益な実施形態は、ガントリおよび調節可能なベッドまたはカウチの両方を有している。
【0072】
初期の放射線治療および/または治療計画に対する変更は、様々な要因を考慮に入れて、コンピュータプログラムの使用に基づいて決定できる。上記様々な要因は、治療される患者の領域、放射線の強度、MRI磁場の強度、放射線ユニットに対する患者の位置、治療中の患者の変化、および/または、治療中の患者および/または放射線ユニットの任意の必要な位置変化を含んでいるが、これらに限定されない。その後、得られるIMRTがプログラムされ、治療が開始される。
【0073】
強度変調放射線治療(IMRT)について治療計画を決定するための一実施形態は、患者の三次元の体積を、それぞれがそれぞれあるビームレット強度を有している複数のビームレットから所定の線量の放射線を受け取る線量ボクセルの格子へと分割するステップ、および放射線照射を最適化するため、凸目的関数を備える凸計画モデルを用意するステップを含んでいる。上記モデルは、グローバルに最適なフルエンス・マップを得るために解かれ、このフルエンス・マップは、複数のビームレットのそれぞれのためのビームレット強度を含んでいる。この方法は、2005年1月20日に出願され、「内点法および強度変調フルエンス・マップ最適化のための凸モデルを使用する放射線治療システム」という発明の名称の米国特許出願公開公報2005/0207531に、より詳細に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0074】
一般に、治療計画を決定するために使用される方法は、1つの有利な実施形態では、内点法およびその変形である。この方法は、高効率であって、結果として一般に計算時間が短いため、有益である。上記内点法は、スティーブン・J・ライトによる「主双対内点法(Primal-Dual Interior-Point Methods)」(SIAM、出版、1997、ISBN 089871382X)という書籍に記載されている。主双対アルゴリズムは、最も有益かつ有用なアルゴリズムとして内点クラスから現れた。ライトは、経路追従アルゴリズム(短・長ステップ、予測子−修正子(short- and long-step, predictor-corrector))、潜在的削減アルゴリズム(potential-reduction algorithms)、および実行不可能な内点アルゴリズム(infeasible-interior-point algorithms)を含む線形計画のための主な主双対アルゴリズムを開示している。
【0075】
上記治療計画が決定されると、臨床医は、確実に上記治療計画が行われるようにすることができる。治療対象の患者は、MRI内に配置される。治療対象領域の画像が取得され、上記MRIは、上記領域の3D画像を送信し続ける。上記治療計画は、コバルト放射線遠隔治療ユニットに入力され、治療が開始する。治療中に、治療対象領域の連続画像が観察される。患者が動いた場合、または治療対象領域のサイズが変化した場合など、治療対象領域の位置が変化した場合に、上記治療計画は、再計算され、および/または、患者または放射線ユニットは、治療を中断することなく調整される。代わりに、治療を中断し、治療計画を再計算し、治療の再開に先立って患者および/または放射線ユニットを調節できる。
【0076】
複数のプロセスの実施形態は、患者の治療の精度を向上させるに使用してもよい。一プロセスの実施形態は、上記MRIデータを取得し、照射の各フラクションにおいてターゲットおよび重要構造へと届けられる線量を割り出すため、変形可能な画像の位置合わせおよび線量計算のための当該分野において公知の方法を、届けられるIMRTコバルト・ユニット・フルエンスへと適用する。次いで、それぞれ腫瘍の抑制の向上または副作用の軽減のために照射フラクションを追加または減じるよう、患者の治療の補正が行われる。線量の評価とともに、患者の疾病のサイズおよび進行も日々を基準に評価される。
【0077】
第2のプロセスの実施形態は、上記MRIデータを取得し、個々の放射の照射のそれぞれに先だってIMRT治療計画の再最適化を行って、治療の照射の精度を向上させることを含むことができる。このプロセスは、各照射フラクションにおいてターゲットおよび重要構造に照射される線量を評価するため、先のプロセスと組み合わせることができる。
【0078】
第3のプロセスの実施形態は、上記MRIデータを取得し、個々の放射の放射線の照射のそれぞれに先立ってビーム毎の基準でIMRT治療計画の再最適化を行って、治療の照射の精度を向上させることを含むことができる。このプロセスは、上記第1のプロセスが、各ビームの照射の前に迅速に行われることを含むことができる。
【0079】
第4のプロセスの実施形態は、上記MRIデータを取得し、個々の放射線の照射のそれぞれの放射線ビームのそれぞれの部分の照射の間に、瞬間ごとの基準でIMRTの治療計画の再最適化を行って、治療の照射の精度を向上させることを含むことができる。このプロセスも、上記第1のプロセスが、上記放射線の照射と同時にリアルタイムで行われることを含むことができる。上記プロセスは、広域ネットワーク上の低遅延のローカル・ネットワークによって有用に接続された多数のコンピュータを使用する並列計算の使用、または広域ネットワーク上のセキュアな接続をMRI画像再現、変形可能な画像登録、線量計算、およびIMRT最適化のための周知のアルゴリズムの速度を大きく向上させるために使用してもよい。
【0080】
他の実施形態によれば、サージカルガイダンス装置およびプロセスは、様々なタイプの外科治療の間の患者の生体構造および疾患の時間・空間分解能MRIを実行するために設けられている。また、放射線治療システムのための画像化システムの上述した説明は、サージカルガイダンスシステムを含む次の実施形態に適用可能である。有益な実施形態において、サージカルガイダンスシステムは、外科治療の実行のために患者へのアクセスを可能にするオープンMRIを備え、外科医によって、または外科治療用ロボット装置のような自動化装置によって、それは実行される。
【0081】
図13に示すように、サージカルガイダンスシステム200の一実施形態は、MRIユニット210、または、患者の内部生体構造の非侵襲性および非電離放射線ベースの画像化を好ましくは許容する代わりの画像化源を含む。また、
図13は、画像処理ユニット220を示す。この画像処理ユニット220は、MRIユニット210によって生成されたデータを受け取り、患者の生体構造を監視するために使用できる画像にデータを変換するためのリアルタイム画像処理を提供するために選択的に使用できる。画像処理ユニット220によって生成された情報は、コントロールユニット230に提供できる。その代わりに、MRIユニット210から直接取得されたデータ(以下、「画像データ」と呼ぶ)は、当業者に周知の方法を使用して直接解釈され、または分析され、画像処理ユニット220にデータを送る前または送らずに、生体構造における動きや変化を検知してもよい。コントロールユニット230は、計画インターフェース235を介して、外科医や他の担当者から、計画された、または進行中の外科治療に関する情報を受け取ることができる。また、コントロールユニット230は、追跡ユニット260を介して追跡可能な外科用器具240および/または自動化された外科ロボット装置250についての情報を受信することにより、進行中の外科治療に関する情報を、必要に応じて受信することができる。さらに、または代わりに、コントロールユニット230は、画像処理ユニット220から提供される画像に基づいて、進行中の外科治療についての情報を推測することができる。コントロールユニット230は、警告ユニット270を介して上記外科治療を監視する担当者に情報を提供できる。警告ユニット270を介して提供される情報は、1つまたは複数の予め決められた条件を示す情報を含むことができ、その情報は、視覚情報および/または可聴情報を含むがこれらに限定されず、1以上の様々な、異なる形態に設けられうる。上記視覚情報は、例えば、画像および/またはテキスト情報を含むことができる。上記可聴情報は、例えば、合成音声、音声記録、および/または警告を含むことができる。
【0082】
図13に示され、本明細書に記載されているユニットは、様々な機能を説明するためのものであり、そのような様々なユニットは、別個の要素を必ずしも表していない。例えば、コンピュータ又は他のプロセッサベースのシステムは、1以上の画像処理ユニット220、コントロールユニット230、計画インターフェース235、追跡ユニット260、および/または警告ユニット270の本明細書に記載の動作を実行するために使用できる。また、1以上の画像処理ユニット220、コントロールユニット230、計画インターフェース235、追跡ユニット260、および/または警告ユニット270は、単一の装置として一体的に組み合わせることができ、および/またはMRIユニット210と一体的に組み合わせることができる。
【0083】
このように、本発明は、MRIユニット210等による非侵襲の、および非電離放射線ベースの画像化を使用して監視および/または外科的介入のガイドのためのサージカルガイダンスシステムを含む。MRIユニット210は、迅速な容積画像を提供する。上記得られる画像は、リアルタイムの容積画像を提供するために変形可能な画像登録を用いて処理することができ、例えば、心臓の鼓動、肺の伸縮、器官運動、動脈、血液プールの形成等を見ることができる。リアルタイム画像は、その後、コンピュータ化されたコントロールユニット230によって監視され、コンピュータ化されたコントロールユニット230は、リアルタイムで画像化データを連続的に分析することができ、リスクまたは外科計画からの逸脱があるかどうかを決定し、もしそうであれば、警告ユニット270を介して、外科医および/または他の担当者に適切な警告または警報を出すことができる。
【0084】
図14に示すように、MRIユニット210は、分割主磁石(split main magnet)を含むことができる。上記主磁石のそれぞれは、第1および第2の主磁石ハウジング280aおよび280bのそれぞれ一つに収容されている。また、MRIユニット210は、分割傾斜磁場コイル、分割RFシールド、分割T/Rコイル、および/またはT/R表面コイル(図示しない)を含むことができる。例えば、MRIユニット210は、「セルフシールド傾斜磁場コイル」という発明の名称で、2010年11月22日に出願され、係属中の米国特許出願第12/951,976で開示されたコイルおよび/またはシールドを含むことができる。当該内容は参照の上、本明細書に組み込まれる。
【0085】
分割磁石MRIユニット210は、患者の生体構造、特に、第1の主磁石ハウジング280Aと第2の主磁石ハウジング280bとの間のギャップに位置している患者の生体構造の部分を画像化できる。また、分割磁石MRIユニット210は、外科治療の実行に同時に画像化されている患者の領域(画像化視野内)への遮るもののないアクセスを可能にする。このことは、手術が行われているとき、MRIユニット210が、患者を連続的に画像化するのを許容する。この画像は、手術が行われている患者の領域の画像である。また、このことは、外科治療が行われているとき、患者および/または画像化装置の位置を変更せずに、上記サージカルガイダンスシステム200が手術中に患者を画像化することを許容する。
【0086】
サージカルガイダンスシステム200の使用の非限定的な実施例は、外科治療に関連するサージカルガイダンスシステム200の使用を含むことができる。上記プロセスは、上記計画されている外科治療と、上記外科治療が始まる直前のシステム200上と同様に、上記外科治療(例えば、PET−CT、SPECT、3または7TMRIなど)に役立ちうるだけの数の高分解能画像化装置に基づいて取得された画像とから始まりうる。これらの画像セットは、変形可能な画像登録アルゴリズムを介して融合され、1次計画画像セットを形成できる。
【0087】
計画インターフェース235は、外科医、臨床医、または他の担当者のための手段を提供し、外科治療の計画を準備する。計画インターフェース235は、例えば、コンピュータまたは他のプロセッサベースのシステムを含むことができる。いくつかの実施形態では、計画インターフェース235は、周知の外科計画ソフトウェアおよび/または外科計画機能を含むことができる。計画インターフェース235は、キーボード、タッチスクリーン、カーソル制御装置(例えば、トラックボールまたはマウス)、またはユーザが外科計画を準備させるための他の手段を含むことができる。その後、計画インターフェース235は、上記外科計画に基づいて、サージカルガイダンスシステム200に外科治療パラメータを提供しうる。したがって、上記外科計画は、外科治療中にシステム200によって監視されるべきパラメータを好ましくは含む。上記パラメータは、いくつかの要因に基づいて変化しうる。また、上記パラメータは、閾値を含むことができる。この閾値を満足している場合、システム200が警告ユニット270を介して、計画を発することができる。
【0088】
例えば、計画インターフェース235を使用して、上記外科医は、保護、切除、吻合等のためにセグメント化された生体構造を確定することができる。MRIユニット210および画像処理ユニット220は、計画インターフェース235によって表示される高品質な計画スキャンを生成できる。臨床医は、計画インターフェース235を使用して上記計画スキャンと相互に作用して、生体構造のセグメント化のための計画を作成し、切除のためのターゲットを設定し、吻合治療、または他の多くの知られている外科治療のいずれかを計画することができる。また、計画インターフェース235は、外科医が外科用器具で患者の体内に入るためにたどる予定であるルートを表す領域としての外科経路を確定するために使用できる。計画インターフェース235は、外科治療の対象としての器官をマークするために使用できる(例えば、腫瘍が切除のためにマークされてもよい)。計画インターフェース235は、外科治療のために器官の周りにマージンをマークするために使用できる(例えば、マージンが切除のために腫瘍の周りにマークされてもよい)。計画インターフェース235は、器官内への許容可能な穿刺または侵入の程度を画定するために使用できる。計画インターフェース235は、器官または外科用器具の侵入から保護するための領域をマークするために使用できる(例えば、主要な神経や動脈を含む領域は、保護のためにマークできる)。計画インターフェース235は、必要に応じてマージンを含む、切除されるべき組織の体積を画定するために使用できる。これら、および他の外科計画パラメータのいずれかは、計画インターフェース235を使用して定められ、外科治療のための外科計画として電子的に保存できる。なお、これらのパラメータは、外科医、臨床医、または計画インターフェース235を使用する他の担当者によって示すことができる警告しきい値を明確に含む、および/または、外科医、臨床医、または他の担当者によって計画インターフェース235内に入力されている計画をもとにして、計画インターフェース235によって推論される警告しきい値を含むことができることが理解されるであろう。
【0089】
例えば、外科計画は、腫瘍を切除する手術のために作成できる。これは、腎臓の一部の除去を含んでもよい。腫瘍を取り囲む領域の術前の画像は、計画インターフェース235に提供できる。外科医は、計画インターフェース235とやりとりして、例えば、旋回、マーキング、または除去される部分を識別する他の方法によって、除去される腎臓の一部分を識別できる。また、外科医は、避けるべき近くの動脈のような、潜在的に危険な領域を観察してもよい。次にまた、外科医は、旋回、マーキング、または計画インターフェース235を用いて動脈を識別する他の方法により、再度、動脈を識別することができる。また、外科医は、インターフェース235を使用して、外科医が傷つけたくない、例えば、肝臓および腸などの他の近くの器官を特定できる。そして、この情報の全ては、手術中にサージカルガイダンスシステム200によって監視される外科計画の一部になりうる。この実施例では、サージカルガイダンスシステム200は、リアルタイムで上記手術を監視し、外科医が動脈または腸に近づく場合に、または外科医が除去されるべき腎臓の量の限界またはその近くにある場合に、警告を発する。また、サージカルガイダンスシステム200は、鬱血、不規則な心臓の鼓動、または不規則な呼吸などの他の条件を監視できる。また、サージカルガイダンスシステム200は、手術中にリアルタイムで容積画像、変形可能な画像登録の映像化を用いて組織の動きを追跡できるので、外科医が外科経路に滞在し、腫瘍のすべてが安全に削除されていることを確認できるために、コントロールユニット230は、外科医が治療しているとき、腫瘍に関連付けられた組織の動きを追跡できる。
【0090】
したがって、サージカルガイダンスシステム200は、外科医が、手術のための計画を入力するのを許容でき、その後、リアルタイムで、上記手術を追跡でき、その進捗状況に関して、例えば、いくつかの要件または安全制約にまさに抵触しようとしていたり、まさに抵触したときに、外科医に警告できる。これを達成するために、計画インターフェース235を使用して定義されるパラメータは、コントロールユニット230によって監視できる。また、その代わりに、コントロールユニット230は、予め定義された、またはデフォルトのパラメータを監視できる。この予め定義された、またはデフォルトのパラメータは、計画インターフェース235を介して必ずしも指定されなくてもよい。例えば、コントロールユニット230は、過大な動き、血液の貯留、および/または血流の欠如などの望ましくない条件のための外科治療を監視するように構成できる。コントロールユニット230は、器官運動を追跡できると共に、例えば、画像強度および/または患者の生体構造を表すデータの変動の検知および/または追跡のための公知のアルゴリズムを使用して、MRIから受け取ったデータ、または画像処理ユニット220から受け取った画像の変化に基づいて、閉塞や鬱血などの条件を識別できる。
【0091】
外科治療中、コントロールユニット230は、MRIユニット210によって、必要に応じて、画像処理ユニット220によって生成された患者の生体構造のリアルタイム画像を表すデータを連続的に受信できる。コントロールユニット230は、外科治療中に受信した画像データと、変形可能な画像登録を使用して外科計画のパラメータを監視でき、万一、1以上の警告閾値が満たされるか超過された(例えば、外科用器具は、定義されたマージン上、またはその近くにある)場合に外科医または他の担当者を警告することによって、外科医が安全かつ成功した外科治療を行うのに役立つ。
【0092】
したがって、サージカルガイダンスシステム200は、外科治療の間のリアルタイムMRIベースのガイダンスを可能にする。サージカルガイダンスシステム200は、外科治療の間、迅速なボリュメトリックおよび/または平面撮像を実行する能力を有している。撮像は、外科治療中における患者の組織の移動および変形の追跡を可能にする空間的および時間的解像度で、画像処理ユニット220によって実行されてもよい。いくつかの実施形態では、MRIユニット210は、例えばk空間データのようなMRIデータを生成できる。画像処理ユニット220は、MRIユニット210によって生成されたMRIデータに基づいて再構成された画像を表す画像データを迅速に生成できる。いくつかの実施形態では、画像処理ユニット220は、例えば、コンピュータ又は他のプロセッサベースのシステムを含むことができる。また、いくつかの実施形態では、画像処理ユニット220は、撮像システムを含むことができ、および/または米国特許出願公開番号2010/0322497号の2010年6月17日に出願された発明の名称が「断層画像取得および再構成を行うためのシステムおよび方法」に開示されているような画像再構成方法に従って動作できる。したがって、ボリュメトリック撮像は、外科医によって必要とされる分解能で生体構造の空間的位置を決定することができる解像度で患者の体の外科治療領域に使用できる。撮像のための時間的なリフレッシュレートは、好ましくは人間の反射および応答のレートで取得され、すなわち1/2秒から1/5秒の間である。このレートは、低下または上昇して、患者に生じる、より遅い、または、より速い生理学的プロセスをキャプチャすることができる。生体構造を追跡および監視するための撮像は、診断画像よりも低い信号対ノイズ比および低い空間分解能であることができ、変形可能な画像登録は、より高い解像度、信号対ノイズ比、およびコントラスト画像化をリアルタイム追跡画像と関連付けるために使用できる。従って、いくつかの実施形態では、外科計画を作成するためにMRIユニット210によって生成された術前画像の品質は、リアルタイム追跡のために外科治療中にMRIユニット210によって生成された画像よりも高品質であることができる。
【0093】
MRIユニット210によって生成されたMRIデータに基づくリアルタイム画像データのストリームに変形可能な画像登録を使用して、画像処理ユニット220によって、セグメント化された生体構造および領域は、必要に応じて連続的に追跡できると共に自動的に輪郭を形成できる。損傷、切開、または切除の回避のために重要であると定義されている生体構造は、低遅延で、例えば、1秒未満で監視することができ、重要な構造に損傷を与えるリスクの可聴および/または視覚信号を警告ユニット270を介して、外科医に警告する。安全な治療の基準は、迅速に計算でき、違反が検知されるか、外挿して差し迫っているとき、音声および視覚の警告が外科医または他の担当者になされうる。要求されるか、または必要に応じて、平面画像および指標が表示され、どんな問題が警告を引き起こしているのか外科医や他の担当者に示すことができる。いくつかの実施形態では、上記警告ユニットは、MRIユニット210および画像処理ユニット220によって生成された画像データに基づいて、連続的に画像を表示する表示手段を含むことができる。それによって、外科医または他の担当者が、外科治療の進行を監視することができる。制御システム230および/または警告ユニット270は、警告の特性が、警告を引き起こす条件の種類および/または重症度に基づいて変化できるように設定できる。例えば、警告ユニット270によって発せられた音、記号、色または他の指標は、上記警告ユニットによって発せられた警告の度合いが、問題になっている器官の損傷、切開、または切除の程度の増加に伴って増加できるように変わりうる。
【0094】
図13に示すように、サージカルガイダンスシステム200は、1つ以上の外科用器具240を追跡するために構成された追跡ユニット260を含むことができる。
図14を参照すると、当然のことながら、大きな磁界は、外科治療中に発生している継続的なMRI撮像のために、この外科治療が行われている場所に存在している。したがって、外科治療中に使用される任意の外科用器具240は、外部から印加された磁界、例えば、常磁性材料の存在下に置かれることによって、非常に弱く、または大きくはないが影響を受ける材料から形成されるべきである。しかしながら、いくつかの実施形態では、外科用器具240は、マーカあるいはMRIユニット210に見えるものを含むことができる。そして、外科用器具240の位置は、画像処理ユニット220で生成された画像における外科用器具240の外観に任意に基づいて、コントロールユニット230によって識別されると共に追跡されうる。その代わりに、外科用器具240の位置は、器官の運動および/または変形、および/または、そのような変化が外科的介入の指標であるMRIユニット210により生成された画像に現れる生体構造の外観の他の変化のようなものに基づいて推測できる。いくつかの実施形態では、外科用器具240の連続的な監視に加えて、制御システム230は、計画インターフェース235を使用して予め定義された外科経路からの逸脱を検知し、新たな経路を計算することができ、その後、外科医に視覚的および/または聴覚的に伝えられうる。
【0095】
したがって、本開示に基づいて、当然のことながら、開示される装置および方法は、リアルタイム撮像を介して手術中の患者の生体構造の変形および動きを考慮する能力を有する。人体の大部分の器官は、本質的かつ自然に連続的に動きを経験するので、この能力は、有利である。また、上記外科用器具自体は、患者の組織に対する穿刺、切傷、または圧迫があると、上記治療中に器官の変形や変位を引き起こす可能性がある。また、開示された装置および方法は、外科医に警告を与える能力を有し、定期的に画像を表示するモニタを監視するために、必ずしも外科医を必要としない。さらに、ポインティングデバイスは、治療を表示するための「正しい」平面又は投影面を見つけるために必要とされない。
【0096】
図15に示すように、自動化された外科ロボット装置250は、外科医と共に、または外科医の代わりに外科治療を実行するために用いられうる。例えば、外科ロボット装置は、外科治療を行うために使用できることが知られており、様々な程度の自動化を有するロボット装置を含んでいる。サージカルガイダンスシステム200は、上述したように、外科治療中にオペレータおよび/またはロボット装置250にフィードバックを提供できる。上述したように、上記フィードバックは、計画インターフェース235を介して、外科計画の入力に基づく警告を含むことができる。また、上記フィードバックは、ロボット装置250の外科経路を制御するために使用されるデータを含むことができる。当然のことながら、外科ロボット装置250は、任意のタイプの医療用ロボットとすることができ、好ましくは、イメージガイダンス介入で実行または支援する目的で、磁気共鳴画像化(MRI)スキャナ内で動作可能であるべきである。
【0097】
本発明の例示的な実施形態を、添付の図面および実施例を参照しながら本明細書において説明してきたが、本開示は、これらの正確な実施形態に限定されるものではなく、様々な他の変更および修正が、本開示の範囲または精神から逸脱することなく、当業者によって本明細書に影響を及ぼしてもよい。そのようなすべての変更及び修正は、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲内に含まれることが意図されている。