(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記中央板状部(20)は、前記帯状部材(12)が設けられた部分の厚みが、前記帯状部材(12)とは反対側の端縁に近い部分の厚みよりも厚く形成されている請求項1記載の表皮材止着用端部材。
前記リブ部(28)は、前記帯状部材(12)の表面(20c)と直交する方向の寸法が、前記帯状部材(12)が設けられた側とは反対側の端縁に向けて漸次小さく形成されている請求項1又は2記載の表皮材止着用端部材。
前記各フランジ部(22,24,26)は、前記中央板状部(20)の表面(20c)と直交する方向の寸法が、前記中央板状部(20)の前記長手方向と直交した上下方向の寸法よりも小さいものである請求項4記載の表皮材止着用端部材。
【背景技術】
【0002】
従来、室内で利用される椅子や車両の座席等では、座面や背当てなど人体に触れる部分にクッション材や柔軟なパッドを設置し、その表面を表皮材で被覆したものが多く用いられている。このような表皮材の被覆及び固定には様々な構造が採用されており、表皮材をきれいに固定しつつ、端縁部は外観的に隠蔽できる構造として、クッション材の溝内にワイヤを配置し、表皮材の端縁部に沿って表皮材止着用端部材を縫い付け、この表皮材止着用端部材に所定間隔でクリップを係合させ、これらのクリップを、椅子等に設けられたクッション材内のワイヤに係合させて、表皮材に張力をかけた状態で椅子等に止着する構造が知られている。
【0003】
この表皮材止着用端部材は、例えば、特許文献1に開示されているように、シート材を縫い付けるための帯状部材であるテープ部材と、テープ部材の長手方向と平行な一端縁部であって、シート材とは反対側の端縁部に一体的に樹脂を成形して設けられたクリップ係止部材とから成り、テープ部材の長さに長尺状に形成されている。クリップ係止部材は、長手方向と直交する断面形状が、矢印状に形成され、長手方向に沿って所定の短い間隔で、長手方向と直交する方向に切られた溝状のジョイント部が設けられている。これにより、表皮材止着用端部材にクリップの一対の脚部を係合し、クリップが長手方向に移動することなく取り付けることができる。さらに、クリップは、表皮材止着用端部材のジョイント部での係止位置を変えることにより、長手方向の任意の位置に取り付けることができる。そして、クリップのフックをクッション材内のワイヤに係合させて、表皮材をクッション材表面に止着する。
【0004】
その他、特許文献2に開示されている表皮材止着用端部材は、テープ部材の端縁に設けられたクリップ係止部材が、楕円状の断面の長柱状に形成され、このクリップ係止部材に所定間隔でクリップの取付部が形成されたものである。
【0005】
また、特許文献3に開示されている表皮材止着用端部材は、椅子のクッション内に、上述のワイヤの代わりに設けられた長尺の断面C字状の保持部材が取り付けられ、この保持部材に、表皮材止着用端部材が固定されるものである。この表皮材止着用端部材のクリップ係止部材には、長手方向と平行且つ幅方向と直交するフランジ部が設けられ、さらに、フランジ部のシート材とは反対側に、保持部材の内部に入って係合する係合突起部が所定間隔で多数設けられているものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記背景技術の特許文献1に開示された表皮材止着用端部材は、断面形状が矢印状に形成され、さらに長手方向に沿って、長手方向と直交する方向に切られた多数の溝状のジョイント部が設けられているので、長手方向と直交する2方向に撓みやすいものであった。従って、表皮材を取り付けるために、張力をかけてクッション材内のワイヤにクリップを係止させると、クリップ間の部分の表皮材止着用端部材が表皮材の張力により張力方向に湾曲し、表皮材に皺が生じやすいという問題があった。一方、表皮材止着用端部材の撓みを防ぐために、そのクリップ係止部材の断面積を大きくすると、表皮材止着用端部材を座席の曲面形状に合わせてきれいに湾曲させることができないという、相反する問題もある。
【0008】
特許文献2に開示された表皮材止着用端部材は、クリップの取付位置が固定されており、座席形状に合わせてクリップを変えて取り付けることができず、最適な状態で表皮材を取り付けることができないものである。しかも上記と同様に、表皮材の取付時の張力によって、クリップ間の部分が容易に撓まないようにするには、円柱状のクリップ係止部材の断面積を大きくしなければならず、単に断面積の大きなクリップ係止部材にすると、座席の曲面形状にクリップ係止部材を合わせにくいものとなる。
【0009】
また、特許文献3に開示された表皮材止着用端部材は、クリップ係止部材を撓ませながら、係合突起部を順に保持部材内に押し込んで取り付けるものであり、クリップ係止部材の剛性は低いものである。従って、表皮材を皺なく取り付けるには、係合突起部の間隔を狭くしなければならず、係合突起の数が多くなり取付工数及びコストがかかるものである。一方、効率よく取り付けるために、係合突起部の間隔を空けると、クリップ係止部材の撓みにより表皮材に皺が発生するという問題が生じる。
【0010】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構造で、所望の方向の剛性が高く、座席形状等の曲面にもきれいに追従し、表皮材の張設も容易な表皮材止着用端部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、表皮材の端縁に取り付けられ、前記表皮材を座席の表面を覆うように取り付け固定するための係止用クリップが係止される表皮材止着用端部材であって、前記表皮材の端縁部に固定される帯状部材と、前記表皮材が固定された前記帯状部材の一方の端縁とは反対側の他方の端縁部に長手方向に沿って一体に設けられ、前記帯状部材の表面と直交する方向の幅が前記帯状部材より幅広に形成された係止部材とを備え、前記係止部材は、前記帯状部材の前記他方の端縁部に長手方向に沿って形成された中央板状部と、前記中央板状部の長手方向に沿った少なくとも一方の端縁部に沿って設けられ、前記中央板状部の表面と直交する方向であって、前記帯状部材の前記端縁部の長手方向に沿った面を有するフランジ部と、前記中央板状部及び前記フランジ部と各々交差する面を有して、前記中央板状部の前記長手方向に沿って前記中央板状部に所定間隔で複数設けられたリブ部とを備えた表皮材止着用端部材である。
【0012】
前記中央板状部の前記長手方向と直交する面の断面形状において、前記中央板状部を中心として前記フランジ部と前記リブ部とが線対称に設けられている。前記フランジ部は、前記中央板状部の前記断面形状の中心部を含む位置から互いに対称に突出した中間フランジ部を備えるものである。
【0013】
前記中央板状部の前記帯状部材とは反対側の端縁部に、前記中間フランジ部と平行に設けられた端縁フランジ部が前記長手方向に沿って設けられているものである。
【0014】
前記中央板状部の端縁に設けられた前記端縁フランジ部の前記長手方向に沿った両側縁部間の幅は、前記中央板状部の中心部の前記中間フランジ部の両側縁部間の幅よりも狭いものである。前記端縁フランジ部は、前記中央板状部の前記長手方向に沿った両方の側縁部に形成されていると良い。
【0015】
前記中央板状部は、前記帯状部材が設けられた部分の厚みが、前記帯状部材とは反対側の端縁部に近い部分の厚みよりも厚く形成されているものである。
【0016】
前記リブ部は、前記帯状部材の表面と直交する方向の寸法が、前記帯状部材が設けられた側とは反対側の端縁に向けて漸次小さく形成されているものである。さらに、前記リブ部の前記帯状部材の前記長手方向の幅は、隣り合う前記リブ部の間の幅よりも小さいものである。
【0017】
前記フランジ部は、前記中央板状部の表面と直交する方向の寸法が、前記中央板状部の前記長手方向と直交した上下方向の寸法よりも小さいものである。
【発明の効果】
【0018】
この発明の表皮材止着用端部材によれば、長手方向と直交する方向の断面の断面2次モーメントが、所定の方向を中心としてできるだけ大きくなるように形成されているので、表皮材をクッション材に取り付けた際にも、表皮材止着用端部材が表皮材の張力で撓みにくく、表皮材に皺が生じない。しかも、他の方向には、クッション材の形状にあわせて、ある程度湾曲させることができるとともに、一定の剛性もあるので、表皮材をきれいに張った状態で取り付けることができ、その取り付け状態を長期間維持することができる。さらに、取り付け作業も容易なものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明の一実施形態の連続する表皮材止着用端部材の一部を示す斜視図である。
【
図2】この実施形態の表皮材止着用端部材の右側面図である。
【
図3】この実施形態の連続する表皮材止着用端部材の一部を示す正面図(a)と、底面図(b)である。
【
図5】この実施形態の連続する表皮材止着用端部材の一部に係止用クリップを取り付けた正面図(a)と、底面図(b)である。
【
図6】この実施形態の表皮材止着用端部材に係止用クリップを取り付けた右側面図(a)と、
図5(a)のB−B断面図(b)である。
【
図7】この実施形態の表皮材止着用端部材の使用状態を示す部分破断斜視図である。
【
図8】この発明の第二実施形態実施形態の表皮材止着用端部材の右側面図である。
【
図9】第二実施形態の連続する表皮材止着用端部材の一部を示す正面図(a)と、底面図(b)である。
【
図11】第二実施形態の連続する表皮材止着用端部材の一部を示す斜視図である。
【
図12】
その他の実施形態の表皮材止着用端部材の右側面図である。
【
図13】
その他の実施形態の連続する表皮材止着用端部材の一部を示す正面図(a)と、底面図(b)である。
【
図15】
その他の実施形態の連続する表皮材止着用端部材の一部を示す斜視図である。
【
図16】この発明の第
三実施形態実施形態の表皮材止着用端部材の右側面図である。
【
図17】第
三実施形態の連続する表皮材止着用端部材の一部を示す正面図(a)と、底面図(b)である。
【
図19】第
三実施形態の連続する表皮材止着用端部材の一部を示す斜視図である。
【
図20】その他の実施形態実施形態の表皮材止着用端部材の右側面図である。
【
図21】
その他の実施形態の連続する表皮材止着用端部材の一部を示す正面図(a)と、底面図(b)である。
【
図23】
その他の実施形態の連続する表皮材止着用端部材の一部を示す斜視図である。
【
図24】この発明の第
四実施形態実施形態の表皮材止着用端部材の右側面図である。
【
図25】第
四実施形態の連続する表皮材止着用端部材の一部を示す正面図(a)と、底面図(b)である。
【
図27】第
四実施形態の連続する表皮材止着用端部材の一部を示す斜視図である。
【
図28】
その他の実施形態実施形態の表皮材止着用端部材の右側面図である。
【
図29】
その他の実施形態の連続する表皮材止着用端部材の一部を示す正面図(a)と、底面図(b)である。
【
図31】
その他の実施形態の連続する表皮材止着用端部材の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この表皮材止着用端部材の実施形態について、図面に基づいて説明する。この発明の第一実施形態の表皮材止着用端部材10は、
図1〜
図7に示すように、布等の長尺状の帯状部材12と、帯状部材12の長手方向に沿って設けられた係止部材14とから成る。係止部材14は、ポリプロピレン,ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂により成形され、帯状部材12の表皮材18が固定される一方の端縁部12aとは反対側の他方の端縁部12bに、長手方向に沿って一体にインサート成形して設けられる。係止部材14は、後述する止着用クリップ30や、金属線材をリング状にした図示しないホグリング等を取り付けるものである。表皮材止着用端部材10は、
図7に示すように、車両用の座席のクッション材16の表面の所定位置に、座席の表皮材18を張るために用いられる。表皮材18は、クッション材16の表面を覆う革や布、合成皮革シート等であり、クッション材16の溝16aに挿入される端縁部18aに、表皮材止着用端部材10の帯状部材12が縫い糸17により縫い付けられて固定される。
【0021】
クッション材16は、座席の形状に成形された発泡ポリウレタン等の合成樹脂フォーム材であり、クッション材16に表皮材止着用の溝16aが形成され、溝16a内には、ワイヤ15が設置されている。ワイヤ15は金属製の線材であり、クッション材16の成形時にインサート成形で組み込むもので、位置ずれしないように強固に固定されている。
【0022】
この発明の表皮材止着用端部材10の説明では、
図1他に示すように、互いに直交するXYZ軸方向を基準として方向を説明する。X軸方向は、表皮材止着用端部材10の長手方向と一致し、表皮材18の端縁が延びる方向と一致する。表皮材止着用端部材10をクッション材16の溝16aに挿入する挿入方向が、X軸方向と直交するZ軸方向であり、上下方向という。さらに、表皮材止着用端部材10の長手方向であるX軸方向、及び上下方向であるZ軸方向と直交する方向をY軸方向とし、左右方向という。この左右方向に平行な方向を側方ともいう。
【0023】
この実施形態の表皮材止着用端部材10の帯状部材12は、Z軸方向に一定幅でX軸方向に長い帯状の長尺部材であり、表皮材18と同程度の強度を有した織布や不織布、編物、合成皮革、その他合成皮革と布地の積層体等で形成されている。帯状部材12を構成する材料は、ナイロン、ポリエステル、アクリル等適宜の材料を選択し得るものである。なお、帯状部材12は、係止部材14と別部材である他、係止部材14と一体に樹脂により形成されてもよい。
【0024】
帯状部材12の他方の端縁部12bに沿って一体に設けられた係止部材14は、帯状部材12の他方の端縁部12bを挟み込むように熱可塑性樹脂をインサート成形して、帯状部材12の長手方向に沿って設けられ、帯状部材12の長さに形成されている。
【0025】
係止部材14は、帯状部材12の他方の端縁部12bを長手方向に沿って保持し、帯状部材12の面と平行な面を有して、X軸方向に一定幅で長尺状に設けられた中央板状部20を備えている。中央板状部20は、帯状部材12の表面12cと直交する方向のY軸方向の幅が、帯状部材12よりも大きく、帯状部材12を挟持するように設けられている。中央板状部20の長手方向に沿った一方の端縁であって、帯状部材12を保持した側である保持部20aには、中央板状部20の表面と直交する方向であってX軸方向に沿った面を有する基端側の端縁フランジ部22が一体に形成されている。端縁フランジ部22の帯状部材12側のX軸方向に沿った両側縁角部には、外側に湾曲した曲面状の面取りが施されている。さらに、中央板状部20のZ軸方向の中間部には、中央板状部20の表面と直交する方向であってX軸方向に沿った面を有し端縁フランジ部22よりもY軸方向の幅の広い中間フランジ部24が一体に形成されている。中間フランジ部24は、中央板状部20のZ軸方向の中心部を含むように形成されている。中間フランジ部24を挟んで保持部20aとは反対側の下端側の中央板状部20である下端部20bは、Y軸方向の厚みが、保持部20aよりも薄く形成されている。そして、下端部20bの端縁には、長手方向であるX軸方向に沿って下端側の端縁フランジ部26が一体に形成されている。端縁フランジ部26のX軸方向に沿った両側縁角部の下端側には、外側に湾曲した曲面状の面取りが施されている。端縁フランジ部22,26は、中央板状部20のX軸方向に平行に両端縁に形成され、Y軸方向の幅は、下端側の端縁フランジ部26の方が基端側の端縁フランジ部22よりも僅かに狭く形成されている。また、端縁フランジ部22,26のY軸方向の両側縁部間の幅は、中間フランジ部24のY軸方向の両側縁部間の幅よりも狭く形成されている。各端縁フランジ部22,26のZ軸方向の厚みは、中間フランジ部24よりも厚く形成されている。各フランジ部22,24,26は、中央板状部20の表面20cと直交するY軸方向の寸法が、中央板状部20の長手方向と直交するZ軸方向である上下方向の寸法よりも小さいものである。
【0026】
表皮材止着用端部材10は、中央板状部20の長手方向であるX軸方向と直交する面の断面形状が、
図2に示すように、中央板状部20の上下方向であるZ軸方向の中心軸を中心として、端縁フランジ部22,26と中間フランジ部24が線対称に設けられている。さらに、中央板状部20の両面には、中央板状部20及び中間フランジ部24と下端側の端縁フランジ部26の各面に対して、各々直交するY軸方向に突出して、中央板状部20の長手方向に沿って一定間隔で複数のリブ部28が形成されている。リブ部28は、
図2他に示すように、中央板状部20の両面に形成され、中間フランジ部24のZ軸方向の下面と、下端側の端縁フランジ部26のZ軸方向の上面につながるように突出して、一体に設けられている。各リブ部28のX軸方向の幅は、
図3、
図4に示すように、リブ部28が設けられていない部分である係止凹部29のX軸方向の幅とほぼ等しく、リブ部28は係止部材14のX軸方向に沿って一定間隔で、中央板状部20の両面に互いに対向する位置に形成されている。リブ部28の両表面間のY軸方向の幅は、中間フランジ部24から端縁フランジ部26に向かって、直線的に漸次小さくなるように形成され、中央板状部20の両側で、リブ部28がZ軸方向に斜面状に形成されている。なお、各リブ部28のX軸方向の幅が、リブ部28が設けられていない部分である係止凹部29のX軸方向の幅よりも小さくすることで、Y軸方向への湾曲がしやすいものである。
【0027】
以上のように形成された係止部材14は、YZ平面の断面の断面2次モーメントができるだけ大きくなるように形成されている。即ち、表皮材止着用端部材10にかかる曲げモーメントは、表皮材18にかかる張力によるZ軸方向の力による、X軸とZ軸を含むXZ平面と、座席の曲面に合わせるためのクッション材16の湾曲によるY軸方向の力による、X軸とY軸を含むXY平面で作用する。従って、XZ平面での曲げモーメントは、
図2においてY軸方向に中心軸をとった断面2次モーメントが大きくなるような形状が好ましく、Z軸方向に中央板状部20が延びて形成され、中央板状部20のY軸方向中心から遠い位置の両端に端縁フランジ部22,26が形成されているので、大きな断面2次モーメントを得ることができる。さらに、所定間隔でリブ部28が設けられているので、断面2次モーメントをより大きくすることができる。他方、XY平面での曲げモーメントは、
図2においてZ軸方向に中心軸をとった断面2次モーメントが、適度に大きくなるような形状が好ましく、中央板状部20を中心として、中央板状部20とY軸方向に直交する中間フランジ部24と端縁フランジ部22,26が形成されているので、この断面2次モーメントも適度な値にすることができる。
【0028】
次に、この実施形態の表皮材止着用端部材10に係止される止着用クリップ30について、
図5〜
図7を基にして説明する。止着用クリップ30は、合成樹脂で一体に成形されたものであり、一対の係止爪32を有する。係止爪32は互いに対向して形成され、係止爪32の基端部は、止着用クリップ30の係止爪基部34の両側に一体に設けられ、係止爪32は係止爪基部34から
図6、
図7においてZ軸方向の上方に突出し、上方へ行くにつれて互いの左右方向の間隔が広がるように形成されている。係止爪32の先端部32aはそれぞれ内側であるY軸方向に互いに向かい合って近づく方向に屈曲している。この係止爪32と係止爪基部34とで係止部31が形成される。
【0029】
係止爪32の先端部32aは、それぞれ係止爪基部34とZ軸方向に対向するように、係止爪基部34の上面34aとほぼ平行に形成された係止面32bを有し、この一対の係止爪32と係止爪基部34とで囲まれる空間に、表皮材止着用端部材10の係止部材14の中間フランジ部24から下端側の端縁フランジ部26までが収容されて係止される。
【0030】
一対の係止爪32の互いに対向する内側面32cには、係止突起36が設けられている。係止突起36は、係止爪32の互いに向き合う方向に交差するX軸方向の中間の位置に、Y軸方向に互いに対向するように突出して設けられ、係止爪32の係止面32bから始まり、内側面32cの途中に達する長さである。係止突起36のX軸方向の厚みほぼ一定であり、係止部材14の係止凹部29のX軸方向の幅よりも小さく、係止部材14の係止凹部29に嵌合可能であってリブ部28に係止されるとともに、係止凹部29内でX軸方向に一定量移動可能な厚みに設けられている。
【0031】
係止爪基部34の、上面34aと反対側の下面34bには、フック38が設けられている。フック38は、下面34bの、一対の係止爪32の一方の端部から連続して設けられ、下面34bに対してほぼ直角にZ軸方向下方に延出する延出部38aと、延出部38aの先端から
図6における右方向に屈曲して、係止部31に向けて傾斜する爪状部38cとを有している。爪状部38cは、係止爪基部34に向けて上方に向くように傾斜している。爪状部38cの先端部38eは、爪状部38cの下面である傾斜面に対してほぼ直角な平面に屈曲した形状であり、係止爪基部34に向かって突出し、先端がやや細くなるように形成されている。これにより、延出部38aと爪状部38c及びその先端部38eとで囲まれたU字状の溝部38fが、ワイヤ15が挿通されるワイヤ保持空間37となっている。
【0032】
フック38のX軸方向の断形状は、一定幅で形成され、フック38の爪状部38cは、爪状部38cの突出方向の途中から先端部38eまでの部分で約半分が所定の深さで切除されている。これにより、フック38の先端部38eは、
図6(a),(b)に示すように、中心線SからX軸方向の半分が、フック38の約半分の幅に形成されている。
【0033】
フック38の、延出部38aの先端には、爪状部38cの延出方向と反対方向に向けて延びた操作部38bを有する。操作部38bは、爪状部38cとは反対側の端部に向かって下方に傾斜するように設けられ、下方に傾斜した端部には、図示しない治具を受ける治具受け部40が設けられている。
【0034】
治具受け部40は、操作部38bの先端部から延出部38aに対して所定間隔を開けてほぼ平行に係止爪32側に延びて、先端部40aが延出部38aの長手方向の中間付近に達し、延出部38aの側方に位置している。治具受け部40の先端部40aは、延出部38aから離れるに従って上方に向かう傾斜した面が形成されている。延出部38aと操作部38bと、治具受け部40とで囲まれたU字状の溝部は、図示しない治具が挿入される治具保持空間42となっている。
【0035】
一対の係止爪32のうち、治具受け部40が形成される側の係止爪32には、その係止爪32と一体に治具ガイド片44が設けられている。治具ガイド片44は、係止爪32の先端部32aの折り曲げられた角部付近に設けられ、係止爪32の側面からZ軸方向下方に向うに従い係止爪32から離れる方向に傾斜して延出している。さらに、治具ガイド片44は、係止爪基部34の下面34bの側方付近で折曲部44aが設けられ、折曲部44aで、フック38の延出部38aに向けて折り曲げられて、延出部38aの中間付近の近傍に達している。折り曲げられた治具ガイド片44の先端部は、治具受け部40の先端部40aの延長線上を越えて延出部38aに近い位置に達し、延出部38aに対して所定の間隔を空けて位置している。
【0036】
一対の係止爪32のうち、フック38の先端部38eと対向する係止爪32には、その係止爪32と一体にワイヤガイド片46が設けられている。ワイヤガイド片46は、係止爪32の突出方向の中間付近に設けられ、係止爪32から離れるにつれて下方に向かう傾斜方向に延出し、係止爪基部34の下面34bの側方付近で第1折曲部46aが設けられ、第1折曲部46aで折り曲げられてフック38の延出部38aに対して平行にZ軸方向下方に延びている。そしてフック38の延出部38aの中間付近の位置で、第2折曲部46bが設けられ、第2折曲部46bで略90°に折り曲げられ、折り曲げられたワイヤガイド片46の先端部46cは、フック38の延出部38aに向かい、延出部38aの近傍に達している。
【0037】
ワイヤガイド片46のX軸方向の断面形状は、係止爪32の幅より少し短い一定幅で形成され、さらにフック38の幅より短い幅で形成されている。ワイヤガイド片46の、第2折曲部46bから先端部46cまでの部分は、
図5において中心線Sから左側半分が切除されて、右半分が弾性片部46dとなっている。ワイヤガイド片46の弾性片部46dは、ワイヤガイド片46の約半分の細さに切り残され、下面側が後述するガイド面となる。即ち、ワイヤガイド片46は、弾性片部46dのX軸方向の太さが、係止部31から第2折曲部46bまでの部分の半分の幅に形成されている。
【0038】
ワイヤガイド片46の弾性片部46dの先端部46cと、フック38の先端部38eは、ワイヤ15の挿通方向、つまりX軸方向と平行な方向に沿って互いに離間して設けられている。ここで、離間とは、X軸方向に位置がずれている状態であり、X軸方向と直交する方向に一方を投影した場合、他方とは接することはあっても重ならない状態をいう。ワイヤガイド片46とフック38は、基端部付近はX軸方向に一致して設けられているが、ワイヤガイド片46の先端部46c側は、半分が切り欠かれ、フック38の先端部38eも半分が切り欠かれ、互いに離間し、互い違いに位置している。つまり、ワイヤガイド片46の、第2折曲部46bから先端部46cまでの弾性片部46dの中心線と、フック38の先端部38eの突出方向の途中から端面38gまでの部分の中心線は、ワイヤ15の挿通方向であるX軸方向と平行な方向に沿って互いに離間するとともに互いに平行に位置している。また、ワイヤガイド片46の弾性片部46dの下面は、フック38の溝部38fが延びる方向(X軸方向)と平行に形成されている。
【0039】
ワイヤガイド片46とフック38の間は、ワイヤ15が挿入されるワイヤ挿通口39となる。ワイヤ挿通口39は、ワイヤ15よりも僅かに狭く、ワイヤ15を通過させた後は抜けることを防ぎ、確実にワイヤ保持空間37に保持するものである。
【0040】
次に、この実施形態の表皮材止着用端部材10に止着用クリップ30を係止させて、クッション材16に表皮材18を張る作業について説明する。まず、縫い糸17により、表皮材18の端縁部18aを帯状部材12に縫い付ける。次に、表皮材止着用端部材10の所定の位置に、止着用クリップ30を取り付ける。このとき、止着用クリップ30は、係止部材14の長手方向に沿って複数個が互いに所定間隔に取り付ける。取り付けは、一対の係止爪32の間に表皮材止着用端部材10の係止部材14を押し込むと、係止部材14の端縁フランジ部26が先端部32a間を通過し、リブ部28の側面に係止爪32の先端部32aが当接した状態で押し込まれる。これにより、次第に係止爪32が弾性変形して先端部32a間が広がり、中間フランジ部24を通過すると、係止爪32の弾性変形が復元し、一対の係止爪32の先端部32aが、係止部材14の中間フランジ部24と端縁フランジ部22の間の空間に位置する。この状態で、係止爪32は先端部32aにより中間フランジ部24を保持して抜けることがない。さらに、この時、係止部材14の係止凹部29には、係止爪32の係止突起36が嵌合し、止着用クリップ30は、係止部材14の長手方向であるX軸方向に位置ずれすることがなく、所定の位置で保持される。
【0041】
そして、所定位置に止着用クリップ30を取り付けた表皮材18を、所定のクッション材16の溝16aに一致させ、止着用クリップ30のフック38をワイヤ15に当てて指等で押す。この時、ワイヤ15が止着用クリップ30のワイヤ挿通口39に一致するように、止着用クリップ30を左右に動かすと良い。この状態で、止着用クリップ30をさらに押し込むと、ワイヤ15は爪状部38cに沿ってガイドされ、ワイヤ挿通口39側に導かれる。さらに止着用クリップ30を押してクッション材16の溝16aに差し込むと、ワイヤ挿通口39にワイヤ15が誘導される。ワイヤ挿通口39は、ワイヤ15の直径よりも小さく、そのままではワイヤ15が通過できないが、さらにこの状態で止着用クリップ30を上方から押し付けると、ワイヤガイド片46が弾性変形してワイヤ挿通口39がワイヤ15の直径よりも広がり、ワイヤ挿通口39を通過してワイヤ保持空間37に入る。このときワイヤ15は、フック38の延出部38aに当たり、ワイヤ15が通過した後、ワイヤガイド片46の弾性変形が復元し、クリック感をもって取り付けを完了できる。止着用クリップ30がワイヤ15に係止され、止着用クリップ30が取り付けられた表皮材止着用端部材10により、表皮材18は、端縁部18aが溝16aに潜り込んだ状態で、クッション材16の表面にきれいに取り付けられる。
【0042】
なお、止着用クリップ30を、ワイヤ150から外す時は、図示しない長い棒状の治具を使用する。治具の先端には係止部が設けられ、係止部は治具受け部40の間の治具挿入口の間隔に差し込んで押し付ける。すると、治具の先端の係止部が治具受け部40に当接し、さらに押し付けると治具受け部40が弾性変形して広がり、通過すると治具受け部40の形状は復元し、治具の係止部が治具保持空間42に入れられる。
【0043】
次に、治具を引き上げると、止着用クリップ30にはワイヤ15を中心に回転するようにモーメントが作用し、ワイヤ15は、フック38の爪状部38cと、ワイヤガイド片46の先端部46cにガイドされてワイヤ挿通口39に位置する。この状態で、さらに止着用クリップ30を引き上げると、ワイヤ15がワイヤガイド片46の先端部46c付近に当たり、先端部46cが弾性変形してワイヤ挿通口39が広がり、やがてワイヤ15が、広げられたワイヤ挿通口39を通過する。これにより、表皮材止着用端部材10はワイヤ15から外れ、表皮材18がクッション材16から取り外し可能となる。
【0044】
この実施形態の表皮材止着用端部材10によれば、係止部材14のYZ平面の断面であってY軸方向の中心とした断面2次モーメントができるだけ大きくなるように形成されているので、表皮材18をクッション材16に取り付けた際にも、表皮材止着用端部材10が表皮材18の張力でZ軸方向に撓みにくく、表皮材18に皺が生じない。しかも、クッション材16の形状にあわせて、XY平面上である程度湾曲させることができるとともに、一定の剛性もあるので、表皮材18をきれいに張った状態で、取り付けることができ、その取り付け状態を確実に維持することができる。これにより全体として、表皮材18を皺なくきれいに取り付けることができ、しかも取り付け作業も容易なものである。
【0045】
次に、この発明の第二実施形態の表皮材止着用端部材50について
図8〜
図11に基づいて説明する。なお、ここで、上記実施形態と同様の部材は同様の符号を付して説明を省略する。この実施形態の表皮材止着用端部材50は、中央板状部20の厚さは、中間フランジ部24の両側で等しく形成されているものである。さらに、リブ部28のX軸方向の幅に対して、係止凹部29のX軸方向の幅が広く形成されている。
【0046】
この実施形態の表皮材止着用端部材50によれば、上記実施形態と同様の作用効果を有し、さらに、係止凹部29の幅がリブ部28より広いので、止着用クリップ30により表皮材18をクッション材16に取り付けた後にも、止着用クリップ30の位置を微調節することができる。これにより、表皮材18を皺なく取り付けることができる。
【0047】
次に、
その他の実施形態の表皮材止着用端部材52について
図12〜
図15に基づいて説明する。なお、ここで、上記実施形態と同様の部材は同様の符号を付して説明を省略する。この実施形態の表皮材止着用端部材52の係止部材54は、中央板状部20の下端部20bに、上記実施形態の端縁フランジ部26が形成されていないものである。さらに、リブ部28のX軸方向の幅に対して、係止凹部29のX軸方向の幅が広く形成されている。
【0048】
この実施形態の表皮材止着用端部材52によれば、上記実施形態と同様の作用効果を有し、特に、比較的柔軟な係止部材54が必要な座席に適用される。
【0049】
次に、この発明の第
三実施形態の表皮材止着用端部材56について
図16〜
図19に基づいて説明する。なお、ここで、上記実施形態と同様の部材は同様の符号を付して説明を省略する。この実施形態の表皮材止着用端部材56の係止部材58は、中間フランジ部60の両側縁部に逃げ部62が形成されたものである。さらに、リブ部28のX軸方向の幅に対して、係止凹部29のX軸方向の幅が広く形成されている。
【0050】
この実施形態の表皮材止着用端部材52によれば、上記実施形態と同様の作用効果を有し、特に、中間フランジ部60の逃げ部62によりXY平面での撓みを容易にし、より湾曲の強いクッション材の形状部位に使用することができる。
【0051】
次に、
さらにその他の実施形態の表皮材止着用端部材64について
図20〜
図23に基づいて説明する。なお、ここで、上記実施形態と同様の部材は同様の符号を付して説明を省略する。この実施形態の表皮材止着用端部材64の係止部材66は、中央板状部20の保持部20aに、上記実施形態の端縁フランジ部22が形成されていないものである。さらに、リブ部28のX軸方向の幅に対して、係止凹部29のX軸方向の幅が広く形成されている。
【0052】
この実施形態の表皮材止着用端部材64によれば、上記
その他の実施形態実施形態と同様の作用効果を有し、比較的柔軟な係止部材66が必要な座席に適用される。
【0053】
次に、この発明の第
四実施形態の表皮材止着用端部材68について
図24〜
図27に基づいて説明する。なお、ここで、上記実施形態と同様の部材は同様の符号を付して説明を省略する。この実施形態の表皮材止着用端部材68の係止部材70は、端縁フランジ部72の両側縁部に切り欠き部74が形成されたものである。さらに、リブ部28のX軸方向の幅に対して、係止凹部29のX軸方向の幅が広く形成されている。
【0054】
この実施形態の表皮材止着用端部材68によれば、上記第
三実施形態と同様の作用効果を有し、特に、端縁フランジ部72の切り欠き部74によりXY平面での撓みを容易にし、より湾曲の強いクッション材の形状部位に使用することができる。
【0055】
次に、
さらにその他の実施形態の表皮材止着用端部材76について
図28〜
図31に基づいて説明する。なお、ここで、上記実施形態と同様の部材は同様の符号を付して説明を省略する。この実施形態の表皮材止着用端部材76の係止部材78は、上記実施形態の中間フランジ部24が省略されたものである。の両側で等しく形成されているものである。さらに、リブ部28のX軸方向の幅に対して、係止凹部29のX軸方向の幅が広く形成されている。
【0056】
この実施形態の表皮材止着用端部材76によれば、上記
その他の実施形態と同様の作用効果を有する。
【0057】
なお、この発明の表皮材止着用端部材は、上記実施の形態に限定されるものではなく、細部形状や寸法等、適宜変更することができる。