(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774495
(24)【登録日】2020年10月6日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】生体吸収性膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61L 27/40 20060101AFI20201012BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20201012BHJP
A61L 27/56 20060101ALI20201012BHJP
A61L 27/58 20060101ALI20201012BHJP
A61K 6/15 20200101ALI20201012BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20201012BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20201012BHJP
B05D 1/40 20060101ALI20201012BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
A61L27/40
A61L27/18
A61L27/56
A61L27/58
A61K6/15
B32B5/18 101
B32B27/00 B
B05D1/40 A
B05D7/24 302Z
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-541898(P2018-541898)
(86)(22)【出願日】2017年6月2日
(86)【国際出願番号】JP2017020592
(87)【国際公開番号】WO2018061323
(87)【国際公開日】20180405
【審査請求日】2019年3月25日
(31)【優先権主張番号】特願2016-193920(P2016-193920)
(32)【優先日】2016年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515279946
【氏名又は名称】株式会社ジーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】坂井 裕大
(72)【発明者】
【氏名】重光 勇介
(72)【発明者】
【氏名】豊永 恭平
(72)【発明者】
【氏名】船橋 英利
【審査官】
榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−095731(JP,A)
【文献】
特表2012−517319(JP,A)
【文献】
特開2004−322535(JP,A)
【文献】
特開平08−325521(JP,A)
【文献】
特表2008−536699(JP,A)
【文献】
特開2012−096038(JP,A)
【文献】
特表2013−505109(JP,A)
【文献】
特開平04−135483(JP,A)
【文献】
高分子,1964年,Vol.13, No.2,p.100-107
【文献】
ながれ,2000年,Vol.19,p.27-36
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00−33/18
A61K 6/00− 6/90
A61C 5/70− 5/90
B32B 1/00−43/00
B05D 1/40
B05D 7/24
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の生体吸収性ポリマーを含む緻密層と、第二の生体吸収性ポリマーを含む多孔質層を有する生体吸収性膜を製造する方法であって、
前記第一の生体吸収性ポリマー及び溶媒を含む塗布液をスピンコートして、液膜を形成する工程と、
該液膜に、前記第二の生体吸収性ポリマーを含む多孔質膜を接触させながら、又は、接触させた後、乾燥させて、前記緻密層と、前記多孔質層を形成する工程を含む、生体吸収性膜の製造方法。
【請求項2】
前記塗布液をスピンコートする際に、回転台を50rpm以上500rpm以下で予備回転させた後、500rpm以上3000rpm以下で本回転させる、請求項1に記載の生体吸収性膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体吸収性膜の製造方
法に関する。
【背景技術】
【0002】
医科、歯科等の医療分野において、歯周組織、骨等の組織を再生する目的で、生体吸収性膜が利用されている(例えば、特許文献1参照)。生体吸収性膜は、例えば、GTR(組織再生誘導)膜、GBR(骨再生誘導)膜として、利用されている。
【0003】
生体吸収性膜は、生体吸収性ポリマーを基本成分とし、再生する組織を周囲の組織から物理的に隔離することにより、組織の再生へと誘導するために使用され、一定期間経過した後、生体内で分解され、吸収される。
【0004】
生体吸収性膜として、一方の面を緻密層とし、他方の面を多孔質層とした生体吸収性膜が知られている。
【0005】
多孔質層は、血液、栄養等を供給、保持する役割を果たし、組織を再生する足場となる。
【0006】
緻密層は、組織、細菌等の侵入を防止する役割を果たす。
【0007】
特許文献2には、非多孔性のコア層と多孔性の表面層とを有し、コア層と表面層とは、同じポリマー原料で構成される多孔性部材が開示されている。ここで、多孔性部材は、コア層の表面に、表面層が一体化して形成され、コア層と表面層との間に、接着層を有していない。
【0008】
また、特許文献2には、(A)ポリマー基材を、ポリマー基材を溶解可能な溶媒に浸漬する浸漬工程および(B)浸漬後のポリマー基材を、凍結乾燥する凍結乾燥工程を含む多孔性部材の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−85547号公報
【特許文献2】特開2011−139898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、コア層と表面層の厚みを制御することが困難であるため、コア層の厚みを均一にすることができなかった。
【0011】
本発明の一態様は、多孔質層に厚みが均一な緻密層が形成されている生体吸収性膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、
第一の生体吸収性ポリマーを含む緻密層と、第二の生体吸収性ポリマーを含む多孔質層を有する生体吸収性膜
を製造
する方法
であって、
前記第一の生体吸収性ポリマー及び溶媒を含む塗布液をスピンコートして、液膜を形成する工程と、該液膜に、
前記第二の生体吸収性ポリマーを含む多孔質膜を接触させ
ながら、又は、接触させた後、乾燥させて、
前記緻密層
と、前記多孔質層を形成する工程を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、多孔質層に厚みが均一な緻密層が形成されている生体吸収性膜を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態の生体吸収性膜の一例を示す図である。
【
図2A】
図1の生体吸収性膜の製造方法の一例を示す図である。
【
図2B】
図1の生体吸収性膜の製造方法の一例を示す図である。
【
図2C】
図1の生体吸収性膜の製造方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態を説明する。
【0017】
[生体吸収性膜]
図1に、本実施形態の生体吸収性膜の一例を示す。
【0018】
生体吸収性膜10は、第一の生体吸収性ポリマーを含む緻密層11と、第二の生体吸収性ポリマーを含む多孔質層12を有する。
【0019】
生体吸収性ポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、グリコール酸、乳酸、ジオキサノン、β−ヒドロキシブチルカルボン酸、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロ−3メチルブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、エチレングリコール、トリメチレンカーボネート等のモノマーの単独重合体又は共重合体等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0020】
ここで、緻密層11と多孔質層12の接着性を考慮すると、第一の生体吸収性ポリマー及び第二の生体吸収性ポリマーは、同一であってもよいが、緻密層11と多孔質層12の接着性が良好であれば、第一の生体吸収性ポリマー及び第二の生体吸収性ポリマーは、異なっていてもよい。
【0021】
緻密層11の平均厚みは、10μm以上500μm以下であり、30μm以上200μm以下であることが好ましい。緻密層11の平均厚みを10μm以上500μm以下とすることにより、生体内で生体吸収性膜10が吸収されるまでの期間を適度に確保することができる。
【0022】
緻密層11の平均厚みに対する厚みの平均偏差の比は、20%以下であり、10%以下であることが好ましい。緻密層11の平均厚みに対する厚みの平均偏差の比を20%以下とすることにより、生体吸収性膜10の性状を均一にすることができ、その結果、生体吸収性膜10を体内埋植する際の操作性が向上する。
【0023】
生体吸収性膜10は、例えば、癒着防止材、GTR(組織再生誘導)膜、GBR(骨再生誘導)膜等として、利用することができる。
【0024】
[生体吸収性膜の製造方法]
図2A〜Cに、生体吸収性膜10の製造方法の一例を示す。
【0025】
まず、第一の生体吸収性ポリマー及び溶媒を含む塗布液をスピンコートして、液膜Lを形成する(
図2A参照)。次に、液膜Lに多孔質膜20を接触させながら、又は、液膜Lに多孔質膜20を接触させた後(
図2B参照)、乾燥させることにより、緻密層11を形成する(
図2C参照)。このため、厚みが均一な緻密層11が多孔質層12に形成されている生体吸収性膜10を製造することができる。
【0026】
溶媒としては、生体吸収性ポリマーを溶解又は分散させることが可能であれば、特に限定されないが、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、THF、1,4−ジオキサン、水、アセトニトリル、アセトン、ベンゼン等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0027】
塗布液中の第一の生体吸収性ポリマーの含有量は、0.3質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。塗布液中の第一の生体吸収性ポリマーの含有量が0.3質量%以上であることにより、塗布液中の溶媒の揮発を抑えることができ、20質量%以下であることにより、塗布液を均一にスピンコートしやすくなる。
【0028】
塗布液は、その他の物質をさらに含んでいてもよい。例えば、塗布液が生理活性物質をさらに含むと、生体吸収性膜10に生理活性物質徐放能を付与することができる。
【0029】
液膜Lは、回転台に固定されている基板上に塗布液を載置した後、回転台を回転させることにより、形成することが好ましい。
【0030】
このとき、塗布液中の第一の生体吸収性ポリマーの含有量、塗布液の載置量、回転台の回転速度を制御することにより、液膜Lの厚みを均一に制御することができる。
【0031】
基板は、平板であってもよいし、テクスチャ、パターン、模様、文字、記号等の凹凸等が表面に付与されていてもよい。基板の表面に凹凸等が付与されていると、緻密層11の表面に凹凸等を付与することができる。これにより、例えば、生体吸収性膜10の表裏を認識しやすくすることができたり、製造元等の情報を生体吸収性膜10に付加することができたりする。
【0032】
また、緻密層11の表面に凹凸等を付与することにより、緻密層11の表面形状や表面粗さを変化させることができる。これにより、生体吸収性膜10を生体に埋植した際の細胞等の応答を変化させ、治療効果をさらに高めるように制御することができる可能性がある。
【0033】
基板を構成する材料としては、特に限定されないが、ステンレス鋼、Ti等が挙げられる。
【0034】
基板は、離型膜が表面に形成されていることが好ましい。
【0035】
離型膜を構成する材料としては、特に限定されないが、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)等が挙げられる。
【0036】
塗布液をスピンコートする際に、回転台を50rpm以上500rpmで予備回転させた後、500rpm以上3000rpm以下で本回転させることが好ましい。これにより、液膜Lの延伸ムラが抑えられ、緻密層11の厚みをさらに均一にすることができる。
【0037】
多孔質膜20の平均厚みは、100μm以上1000μm以下であることが好ましく、100μm以上300μm以下であることが好ましい。多孔質膜20の平均厚みを100μm以上1000μm以下とすることにより、生体内で生体吸収性膜10が吸収されるまでの期間を適度に確保することができる。
【0038】
多孔質膜20の平均厚みに対する厚みの平均偏差の比は、20%以下であることが好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。多孔質膜20の平均厚みに対する厚みの平均偏差の比を20%以下とすることにより、生体吸収性膜10の性状を均一にすることができ、その結果、生体吸収性膜10を体内埋植する際の操作性が向上する。
【0039】
多孔質膜20の平均孔径は、0.2μm以上500μm以下であることが好ましく、20μm以上300μm以下であることがさらに好ましい。多孔質膜20の平均孔径を0.2μm以上とすることにより、生体吸収性膜10の体液の浸透性を確保することができ、500μm以下であることにより、生体吸収性膜10の血餅の保持性を確保することができる。
【0040】
多孔質膜20の有孔率は、30%以上99%以下であることが好ましく、75%以上90%以下であることがさらに好ましい。多孔質膜20の有孔率を30%以上とすることにより、生体吸収性膜10の体液の浸透性を確保することができ、99%以下であることにより、生体吸収性膜10の強度を確保することができる。
【0041】
多孔質膜20は、公知の方法を用いて、製造することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0042】
なお、多孔質膜20としては、市販品の厚みが均一な多孔質膜の市販品を用いてもよい。
【0043】
本実施形態においては、液膜Lに多孔質膜20を接触させながら、又は、液膜Lに多孔質膜20を接触させた後、乾燥させることにより、液膜Lに含まれる溶媒が揮発し、第一の生体吸収性ポリマーを含む緻密層11が形成される。
【0044】
このとき、液膜Lに多孔質膜20を接触させることにより、液膜Lの一部は、多孔質膜20に浸透する。この状態で乾燥させることにより、液膜Lに含まれる溶媒が揮発し、液膜L由来の第一の生体吸収性ポリマーと、多孔質膜20由来の第二の生体吸収性ポリマーとが一体化する。これにより、緻密層11と多孔質層12を有する生体吸収性膜10が形成される。
【0045】
乾燥方法としては、生体吸収性ポリマーを変質させなければ、特に限定されないが、真空乾燥法等が挙げられる。
【0046】
最後に、基板から生体吸収性膜10を剥離する。このとき、例えば、基板と生体吸収性膜10の界面に、エタノール又はエタノール水溶液を付与すると、生体吸収性膜10を剥離しやすくなる。また、基板の表面に凹凸等が付与されていると、生体吸収性膜10を剥離しやすくなる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【0048】
[実施例1]
1,4−ジオキサン93質量部中にポリ−DL−乳酸(PDLLA)7質量部を溶解させ、塗布液を得た。
【0049】
基板として、DLC膜が形成されているSUS304板(104mm×84mm×2mm)を用いた。
【0050】
多孔質膜として、平均孔径が121μm、有孔率が81%のPDLLA製のスポンジ(70mm×80mm)を用いた。
【0051】
多孔質膜の任意の10か所を切り出した。次に、μフォーカスX線CTシステムinspeXio SMX−100CT(島津製作所社製)を用いて、管電圧55kV、管電流40μA、ボクセルサイズ3μmの強拡大の条件で、多孔質膜を撮影した。得られたデータから3次元像を取得し、多孔質膜であることを確認した。
【0052】
また、多孔質膜と直交する断層像(CT像)を取得し、画像処理ソフトImageJを用いて、多孔質膜の厚みを計測した。このとき、各CT像から3点ずつ、30点の厚みを計測した。その結果、多孔質膜は、平均厚みが500μmであり、厚みの平均偏差が32μmであった。
【0053】
スピンコーターMS−B100(ミカサ社製)の回転台に基板を固定した後、基板上に塗布液4.5mLを載置した。次に、回転台を300rpmで3秒間予備回転させた後、2000rpmで3秒間本回転させ、液膜を形成した。回転台の回転を停止した後、即座に多孔質膜を液膜上に載置した後、室温で2.5時間真空乾燥させ、緻密層を形成し、生体吸収性膜を作製した。最後に、基板と生体吸収性膜の界面に、80%エタノール水溶液を噴霧して、基板から生体吸収性膜を剥離した。
【0054】
なお、上記工程は、全て室温(23℃)環境下で実施した。
【0055】
得られた生体吸収性膜の任意の10か所を切り出した。次に、μフォーカスX線CTシステムinspeXio SMX−100CT(島津製作所社製)を用いて、管電圧55kV、管電流40μA、ボクセルサイズ3μmの強拡大の条件で、切り出した生体吸収性膜を撮影した。得られたデータから3次元像を取得し、緻密層及び多孔質層からなることを確認した。
【0056】
また、緻密層と直交する断層像(CT像)を取得し、画像処理ソフトImageJを用いて、緻密層の厚みを計測した。このとき、各CT像から3点ずつ、30点の厚みを計測した。その結果、緻密層は、平均厚みが98μmであり、厚みの平均偏差が12μmであった。
【0057】
[実施例2]
本回転における回転速度を500rpmとした以外は、実施例1と同一の条件として、生体吸収性膜を作製した。得られた生体吸収性膜は、緻密層及び多孔質層からなり、緻密層は、平均厚みが152μmであり、厚みの平均偏差が19μmであった。
【0058】
[実施例3]
本回転における回転速度を3000rpmとした以外は、実施例1と同一の条件として生体吸収性膜を作製した。得られた生体吸収性膜は、緻密層及び多孔質層からなり、緻密層は、平均厚みが51μmであり、厚みの平均偏差が6μmであった。
【0059】
表1に、実施例1〜3の多孔質膜と、生体吸収性膜の緻密層の特性を示す。
【0060】
【表1】
表1から、実施例1〜3の生体吸収性膜は、緻密層の厚みが均一であることがわかる。
【0061】
本国際出願は、2016年9月30日に出願された日本国特許出願2016−193920に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願2016−193920の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0062】
10 生体吸収性膜
11 緻密層
12 多孔質層
20 多孔質膜
L 液膜