(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0003】
一般に、トルクの測定は、ハンドルを担持するステアリングコラムの上流部などの入力シャフトと、ステアリングラックに噛み合うピニオンを担持する当該ステアリングコラムの下流部などの出力シャフトとの間に取り付けられたトーションバーの弾性変形を測定することによってなされる。
【0004】
当該ねじれ変形を測定するために、磁気技術を用いたトルクセンサを使用することが特に知られている。
【0005】
そのようなトルクセンサは、通常、入力シャフトに環状分布にしたがって当該入力シャフト周りにN極とS極が交互に現れる面が存在するように設けられた一組の永久磁石と、出力シャフトに担持され、それぞれが永久磁石に対向して配置されかつ当該永久磁石の磁極(N極、S極)と同じ角度ピッチで設けられた一組のティースを含んで磁石アセンブリを囲む2つの環状磁気ヨークを有する磁気フラックス集中部と、入力および出力シャフトに横切られかつフラックス集中部を囲む固定トルクセンサケースに担持され、それぞれが磁気ヨークの1つに対向して配置されて当該磁気ヨークを介して磁石によって生じた磁気フラックスを集中させる2つのスリップリングを有するフラックス集中支持部と、センサケースに固定されかつ2つのスリップリングを軸方向に分離するエアギャップに配置され、当該磁気フラックスを測定するためのホール効果セルとを備える。
【0006】
よって、トルクの影響下におけるトーションバーのいかなる変形も、出力シャフトに対する入力シャフトの角度位置の変化を生じ、それにより磁気ヨークのティースに対する磁石の位置が変化して当該磁気ヨークの分極が生じ(一方のヨークがN極になり、他方のヨークがS極になる)、そうして生じる磁気フラックスがホール効果セルによって測定される。
【0007】
実際、センサケース内でホール効果セルを組み立てるための方法は、3つの要求を満たすべきである。すなわち、第一に、スリップリングのエアギャップにおいてホール効果セルを堅牢な場所に保持すること、第二に、当該センサケースのシール性、特に液密性を確保すること、そして、第三に、外部の電子処理ユニットに対するトルクセンサの電気的接続を可能とすることである。
【0008】
このために、ホール効果セルと対応するコネクタ部品(ケーブルおよび外部コネクタ)を固定プレート式の共通の支持部上にまとめて、それをセンサケースにねじ固定する第1の組立方法が知られている。
【0009】
そして、アセンブリのシール性は、Oリングシールなどのシールによって確保され、当該シールは、当該固定プレートとセンサケースとの間に挿入されて圧縮される。
【0010】
しかしながら、そのような組立方法が特に堅牢なトルクセンサを得ることを確実に可能にするとしても、当該方法の実施に必要な部品の数により、当該方法は比較的複雑かつ高価なものになる。
【0011】
また、そのような組立方法を実施するには、十分かつ再現可能なシールの圧縮度を実現できるように、比較的シビアな製造および組立誤差を実現する必要がある。しかしながら、そのような要求を量産において低コストに満足することは困難かも知れない。
【0012】
最後に、固定ねじや専用の固定プレートといったねじ切りされた挿入物が、得られるトルクセンサが必要とするスペースやその重量を増大させる傾向にある。
【0013】
上述した欠点を克服するために、別の組立方法を用いることも知られている。当該方法によると、ホール効果セルと、スリップリングと、場合によってはホール効果セルに対応するコネクタ部品の一部とが、オーバーモールド作業において、センサケースの一部または全部を同時に構成する同じ樹脂ブロックに埋め込まれる。
【0014】
そのようなオーバーモールド法による固定によって良好なシール性を低コストに得られるとしても、全く欠点がなくなる訳ではない。
【0015】
確かに、樹脂の重合中に、より具体的には当該樹脂の架橋反応中に、または高温射出の場合の樹脂の冷却中に収縮が生じ、ホール効果セルにおいて、および場合によっては対応するコネクタ部品において機械的応力が生じる。このことは、エアギャップにおけるホール効果セルの位置決め精度に対して、またはトルクセンサの耐用年数に対して有害かも知れない。
【0016】
また、センサケースなどの大きな構造部品を形成するために樹脂を使用する場合、製造コストを制限しかつ生産速度を最大化するために、熱硬化性樹脂ではなく熱可塑性樹脂(一般に繊維補強されている)を使用することが非常に好ましく、それにより射出成形が可能となる。
【0017】
しかしながら、そのような熱可塑性樹脂を圧力下かつ高温環境下(典型的には290〜330℃)で射出する場合、熱および圧力によってホール効果セルが損傷を受けるおそれがある。
【0018】
また、オーバーモールド中におけるセンサケース内での液状樹脂の挙動を予測および制御することは困難かも知れない。
【0019】
とりわけ、液状樹脂は、エアギャップの目標エリアを残す傾向にあり、そのために通常はホール効果セルおよびエアギャップを超えてセンサケース内に徐々に注入される。
【0020】
しかしながら、そのような樹脂の流動は、センサケース内、例えばスリップリングの近くに望ましくないバリの形成を引き起こすか、またはその逆に、樹脂が充填されるべき空エリアを残すおそれがあり、それによりアセンブリの強度を低め得る気泡が生じる。
【0021】
自動生産ラインにおいて、気泡の発生リスク、したがって低強度領域の発生リスクが高くなるほど、各オーバーモールドサイクルにおける樹脂の供給量が多くなる一方、樹脂の流動特性はランダムに変わり得るものであってサイクル毎に予測するのはほぼ不可能である。
【0022】
したがって、実際のところ、各サイクルにおいてアセンブリの満足な機械的強度および良好なシール性を得るために必要十分な樹脂供給を実現するような適切な樹脂の注入量を求めることは困難である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、トルクセンサ1を製造するための方法に関する。
【0036】
したがって、本発明は、また当然に、そのような方法によって得られるトルクセンサ1に関する。
【0037】
それ自体公知の態様で、また
図1に示すように、トルクセンサ1によると、典型的にはパワーステアリングシステム内のシャフト2,3、例えば自動車のステアリングコラムに加えられるトルクT0を測定することが可能となる。
【0038】
上記シャフト2,3は、一方では、上流シャフト部2と、他方では、下流シャフト部3とを有する。上流シャフト部2は、入力シャフト2を構成すると共に、好ましくは、ハンドル4を担持するステアリングコラムの上流部に相当する。下流シャフト部3は、出力シャフト3を構成すると共に、典型的には、ステアリングラック(図示せず)に噛み合うピニオンを担持するステアリングコラムの下流部に相当する。
【0039】
「主軸」(ZZ’)の語は、シャフト2,3の回転軸、すなわち入力シャフト2および出力シャフト3に共通の長手方向軸を示す。
【0040】
簡単な決まりとして、また説明の便宜上、「軸方向」の語は、上記主軸(ZZ’)に対して平行な方向または測定として理解されてもよく、「径方向」の語は、上記主軸(ZZ’)に対して実質的に垂直な方向または測定として理解されてもよい。
【0041】
入力シャフト2は、トーションバー5などの弾性変形可能な部材5を介して出力シャフト3に接続されている。当該部材5の変形の程度は、印加されるトルクT0(測定対象)の強度に依存する。
【0042】
導入部で上述したように、トルクセンサ1は、入力シャフト2に固定されかつ主軸(ZZ’)周りにN極(N)とS極(S)が交互に現れる一組の永久磁石6を備える。
【0043】
また、トルクセンサ1は、出力シャフト3に固定され、当該永久磁石6によって生じる磁気フラックスを集めるように構成された磁気フラックス集中部7を備える。
【0044】
このために、上記フラックス集中部7は、第1磁気ヨーク8および第2磁気ヨーク9を有する。第1および第2磁気ヨーク8,9は、主軸(ZZ’)を中心とした環状に形成されていて、それぞれが一組の永久磁石6を囲んでいる。
【0045】
上記磁気ヨーク8,9は、それぞれが一連のティース8T,9Tを有する。ここで、当該ティース8T,9Tは、三角形状で互いに噛み合っている。フラックス集中部7内に入力シャフト2が位置する場合には当該ティース8T,9Tに対向して磁石6が位置し、そのため、各ヨーク8,9の(NまたはSの)極性は、ティース8T,9Tが対向する一組の磁極6の平均極性によって決まる。
【0046】
また、トルクセンサ1は、フラックス集中部7のヨーク8,9によって集中した磁気フラックスを取り込むように構成されかつ当該磁気フラックスを集めて1つまたはそれ以上の検出セル11A,11B、この例ではホール効果セル11A,11Bに向けるように構成されたフラックス集中支持部10を備える。当該検出セル11A,11Bによると、当該磁気フラックスの特徴、すなわち典型的には当該磁気フラックスの符号(方向)および強度を測定することができる。
【0047】
このために、フラックス集中支持部10は、少なくとも1つの第1スリップリング12および第2スリップリング13を有する。第1および第2スリップリング12,13は、主軸(ZZ’)を中心とした環状に形成されていて、互いに軸方向に分離しかつ各々が強磁性材料でできている。
【0048】
第1スリップリング12は、軸方向において(主軸(ZZ’)に沿って)第1磁気ヨーク8に対向して設けられていて、よって当該第1磁気ヨーク8を(外側から)囲んでいる。
【0049】
同様に、第2スリップリング13は、第1スリップリング12と別個で軸方向に離間していて、軸方向において第2磁気ヨーク9に対向して設けられていて、当該第2磁気ヨーク9を囲んでいる。
【0050】
各スリップリング12,13は、有利には、少なくとも1つの測定ターミナル12A,13Aを、好ましくは2つの測定ターミナル12A,12B,13A,13Bを担持している。
【0051】
第1スリップリング12の各測定ターミナル12A,12Bは、第2スリップリング13の対応する測定ターミナル13A,13Bと共に、(軸方向)エアギャップ14A,14Bを区画している。
【0052】
検出セル(ホール効果セル)11A,11Bは、各エアギャップ14A,14B内に、その中で対応する測定ターミナル12A,13A,12B,13B間の磁気フラックスを測定するために配置されている。
【0053】
まず、変形トルクT0が存在しない場合、各ティース8T,9Tが磁石6のN面Nと隣り合う磁石6のS面Sとに等しく重なるため、各磁気ヨーク8,9は同一かつ無極の極性を有する。したがって、スリップリング12,13間に磁気フラックスが生じない。
【0054】
しかしながら、トルクT0がトーションバー5を変形させる場合、出力シャフト3に対する入力シャフト2の角度位置が変わり、したがって2つの磁気ヨーク8,9の各ティース8T,9Tに対して永久磁石6をオフセットさせる。それにより、第1ヨークのティース8Tの大半が第1(例えば、N)極性に対応する極にさらされることで第1磁気ヨーク8が当該第1(この例では、N)極性を帯びる一方、他方のヨーク9のティース9Tの大半が逆の(S)極性の極にさらされることで第2磁気ヨーク9が第1ヨーク8の極性と逆の極性を帯びる。
【0055】
このように、磁気ヨーク8,9の分極によって磁気フラックスが生じ、当該磁気フラックスは、スリップリング12,13によって取り込まれて当該フラックスが測定されるエアギャップ14A,14Bへ運ばれる。
【0056】
有利には、
図2に点線で概略的に示すように、入力シャフト2と、一組の永久磁石6と、トーションバー5と、出力シャフト3と、これに担持されたフラックス集中部7とは、センサケース15内に回転可能に取り付けられ、当該センサケース15内には、フラックス集中支持部10およびホール効果セル11A,11Bがさらに固定されている。
【0057】
よって、上記センサケース15は、主軸(ZZ’)周りの筒状覆いを形成していて、また有利には、水蒸気、塩スプレー、液体異物(水、外部潤滑剤、燃料など)、および固体異物(塵、砂利など)に対するシール保護を様々な上述した部材に与える。
【0058】
センサケース15は、鋼、アルミニウム、もしくはマグネシウムベース軽合金などの金属材料によって、または特に好ましくは、ポリアミド(PA)、ポリフタルアミド(PPA)型の芳香族ポリアミド、ポリブチレンテレフレート(PBT)、もしくはポリフェニルスルホン(PPS)などの硬質ポリマー材料、好ましくは熱可塑性の硬質ポリマー材料によって構成されていてもよい。
【0059】
上記ポリマーは、有利には、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維などの繊維によって、またはこれらの繊維のうち少なくとも2つを組み合わせたものによって強化されていてもよい。
【0060】
上述したように、熱可塑性ポリマーを使用することにより、高温射出成形によって低コストかつ高速に軽量のセンサケース15を製造することができる。
【0061】
本発明によると、トルクセンサ1を製造するための方法は、センサケース15を準備するステップ(a)であって、その間において、センサケース15内に、
図2、
図4、
図9、および
図11に示すように、(上で説明したように、永久磁石6の方位角度位置に対応したフラックス集中部7の磁気ヨーク8,9の分極によって生じる)磁気フラックスを集めるように構成された少なくとも第1スリップリング12および第2スリップリング13を配置するステップ(a)を含む。
【0062】
上述したように、上記スリップリング12,13は、互いに(軸方向に)離間していて、それぞれに第1測定ターミナル12A,12B(第1スリップリング12に属する)および第2測定ターミナル13A,13B(第2スリップリング13に属する)を少なくとも有し、これらの間にエアギャップ14A,14Bが区画されている。
【0063】
また、本発明に係る方法は、センサビーム20を製造するステップ(b)であって、その間において、特に
図1、
図2、および
図6に示すように、エアギャップ14A,14B内に配置され、その中で磁気フラックスを測定するための少なくとも1つのホール効果セル11A,11Bと、ホール効果セル11A,11Bとセンサケース15外の処理ユニット22との間の電気的接続を実現するように構成された少なくとも1つの電気的接続インターフェース21とを有する「センサビーム」サブアセンブリ20と呼ばれるサブアセンブリが製造されるステップ(b)を含む。
【0064】
好ましくは、センサビーム20は、2つの別個のホール効果セル11A,11Bを有し、かつ別個のエアギャップ14A,14Bにおける磁気フラックスをそれぞれ(かつ同時に)測定するように構成されている。
【0065】
そのように安全性のためにホール効果セル11A,11Bを二重に設けることにより、特に当該2つのホール効果セルの一方が故障した場合にトルクセンサ1の機能性を維持することが可能となる。
【0066】
そして、処理ユニット22は、任意の車載コンピュータに対応していてもよく、好ましくはステアリング補助を実行するべく車両のステアリングシステムに搭載されたステアリングコンピュータに対応していてもよい。
【0067】
好ましくは、センサビーム20の接続インターフェース21は、
図1〜
図6および
図9〜
図12に明示するように、少なくとも1つのホール効果セル11A,11Bが接続され、かつ当該少なくとも1つのホール効果セル11A,11Bの支持部として機能する捕捉電気回路23を有する。
【0068】
上記捕捉電気回路23は、好ましくは、少なくとも1つのホール効果セル11A,11Bが固定、例えば接合される電気カード23を形成するプリント回路型の剛性(あるいは、半剛性)基板に構成されている。
【0069】
留意すべきこととして、ホール効果セル11A,11Bは、好ましくは、上記電気カード23の縁から突き出るように配置され、そのため、それぞれが対応するエアギャップ14A,14Bに容易に導入可能になっており、当該電気カード23が測定対象の磁気フラックスを乱さない。
【0070】
絶対的に言えば、(センサケース15内の)捕捉電気回路23は、(センサケース外の)処理ユニット22との電波による遠隔通信、すなわちワイヤレス接続を可能とするように設計されていてもよい。
【0071】
しかしながら、特に好ましくは、また特にトルクT0の測定の信頼性や精度を高めるために、さらにはトルクセンサ1、より広くはパワーステアリングシステムの堅牢性を高めるために、(センサケース15内の)ホール効果セル11A,11Bと(当該センサケース15外の)処理ユニット22との間の接続は、ワイヤによって実現される。
【0072】
このために、好ましくは、特に
図1〜
図6および
図9〜
図12に示すように、センサビーム20は、センサケース15内に導入されかつ埋め込まれるように構成された「遠位端部」20Dと呼ばれるその一方の端部に、(少なくとも1つの)ホール効果セル11A,11Bと、シース25内にまとまられた複数の電気ケーブル24とを担持する捕捉電気回路23を有しており、当該複数の電気ケーブル24により、当該捕捉電気回路23は、「近位端部」20Pと呼ばれるセンサビームの他方の端部に配置された遠隔コネクタ26に繋がれている。
【0073】
コネクタ26によると、有利には、
図1に概略的に示すように、(外部)処理ユニット22にセンサビーム20を可逆的かつハードウェア的に接続することができ、よってトルクセンサ1の汎用性および互換性を実現できる。
【0074】
電気ケーブル24は、それがプリント回路に接合されるところの捕捉回路23から始まってコネクタ26のピンに接合されるもので、好ましくは4本あって、1つのホール効果セル11A,11Bあたり2本のケーブル24の割合である。
【0075】
留意すべきこととして、センサビーム20の構成、より具体的にはシース25の構成は、本発明の範囲を逸脱することなく様々に変更可能である。
【0076】
よって、
図2〜
図8に対応する第1変形例によると、シース25は、曲がった出口を有しており、当該曲がった出口により、当該シース25はセンサケース15の壁部15Lに沿って、この例では主軸(ZZ’)に対して実質的に平行に、より具体的にはホール効果セル11A,11Bがエアギャップ14A,14Bに入れられる挿入方向(X11で示す)に対して実質的に垂直に延びることが可能となる。
【0077】
このために、ケーブル24は、捕捉電気回路23に対して角度(この例では、実質的に90°)をなしている。
【0078】
そのような曲がった出口を伴う第1変形例によると、特に、センサビーム20の引抜抵抗を高くすることができる。
【0079】
とりわけ、そのような第1変形例によると、角部、すなわち電気ケーブルおよび/またはシース25の曲がり部は、挿入方向X11において当該ケーブル24の径方向出口と当該シース15の軸方向の方向転換とを、センサケース15の壁部15Lに沿って、この例では下方に向かって一致させ得るものであって、有利には被覆材43(詳しくは後述する)に埋め込まれている。
【0080】
これにより、上記角部を、センサビーム20の引抜きまたは損傷を生じさせ得る自発的または偶発的な引張力にさらされて傷付くおそれのある、ケーブル24およびシース25の目に見えるループ状に形成するのを不要にすることができる。
【0081】
図9〜
図12に対応する第2変形例によると、シース25は、まっすぐな出口を有しており、当該まっすぐな出口により、当該シースは、捕捉電気回路23の延長線上において、主軸(ZZ’)に対して実質的に垂直に、すなわち実質的に径方向にセンサケース15の壁部を横切って、より具体的にこの例ではホール効果セルの挿入方向X11に対して実質的に平行に延びることが可能となる。
【0082】
そして、ケーブル24は、好ましくは、上記捕捉電気回路23とシース25との間の実質的に直線状のブリッジを形成する。
【0083】
そのような第2変形例によると、特に、シース25の出口においてセンサケース15の構造を簡略化することができ、トルクセンサ1の(軸方向の)コンパクト性を向上させることができる。
【0084】
また、留意すべきこととして、まっすぐな出口または曲がった出口を伴う検討した変形例のいずれにおいても、同じセンサビーム20を使用することが可能であり、そのことが製造の規格化に貢献する。
【0085】
確かに、センサケース15内にセンサビーム20を配置する間において、本質的にフレキシブルな電気ケーブル24に所望の形状(まっすぐなまたは曲がった)を与えれば単に十分である。
【0086】
もちろん、本発明に係る方法は、センサケース15の壁部15Lを貫通してエアギャップ14A,14Bに連通するアクセスオリフィス30内にセンサビーム20を導入することで、(少なくとも1つの)ホール効果セル11A,11Bを当該エアギャップ内に配置し、そしてセンサビーム20をセンサケース15に固定する組立ステップ(c)を含む。
【0087】
特に好ましい態様では、
図2、
図4、
図6、
図9、および
図11に示すように、センサケース15内へのセンサビーム20の導入は、主軸(ZZ’)を囲むセンサケース15の側壁15Lを介した横向きのアプローチにより、実質的に径方向中心へ向かう挿入方向X11にしたがってなされる。
【0088】
そのようなアプローチおよび径方向中心への挿入動作は、主軸(ZZ’)に対して当該主軸と実質的に垂直に向けられるものであって、それによると、直接的にスリップリング12,13の間において(より具体的には、当該スリップリングのターミナル12A,13A,12B,13Bの間において)、センサケース15内に迅速かつシンプルにセンサビーム20の遠位端部20Dを配置することができる。
【0089】
留意すべきこととして、特に製造の便宜上、また磁気ヨーク8,9のできるだけ近くにスリップリング12,13を配置するのが好ましいため、アクセスオリフィス30は、好ましくは、入力および出力シャフト2,3に横切られかつ当該シャフト2,3を収容するセンサケース15の中央チャンバに直接的に開口している。すなわち、当該アクセスオリフィス30は、センサケース15の側壁15Lを横向きに貫通していることが好ましい。
【0090】
好ましくは、アクセスオリフィス30は、スリーブ31を構成している。
【0091】
上記スリーブ31は、好ましくは、例えばセンサケース15のモールディング製造の間に、当該センサケース15に一体形成される。
【0092】
当該筒状スリーブ31は、好ましくは、円形パス部31Sを有しており、その中心母線軸(この例では、直線状)は、有利には、挿入方向X11に一致している。
【0093】
もちろん、筒状スリーブ31のパス部31Sは、ホール効果プローブ11A,11Bの数および空間配置に対して、および捕捉回路23の形状に対して適合された任意の形状を有していてもよい。
【0094】
よって、特に、本発明の範囲を逸脱することなく、楕円形、卵形、または多葉形のパス部31Sを用いることが可能であり、例えば、特に4つのホール効果セルを考慮する場合に(2つの葉形を有する)豆形のパス部31Sを用いてもよい。
【0095】
そのようなスリーブ31は、まずセンサケース15の内部を当該センサケース15の外部と連通させるものであって、有利には、一方で、当該センサケース内にセンサビーム20を導入する際の当該ビーム20の挿入および芯出しを促すガイドを提供し、他方で、オーバーモールディングによる強固でシールされた固定プラグの形成を可能とする比較的大容量のチャンバ(「充填キャビティ」と呼ばれる)を提供する。
【0096】
本発明によると、
図2、
図4、
図6、
図8、
図9、および
図11に明示するように、センサビームを製造するステップ(b)において、センサビーム20は、センサケース15のアクセスオリフィス30(より具体的には、スリーブ31の壁部)と協働して当該アクセスオリフィス30を「保護キャビティ」と呼ばれる第1キャビティ41と、「充填キャビティ」と呼ばれる第2キャビティ42とに仕切るように構成されたアダプタ40を設けられる。第1キャビティ41は、エアギャップ14A,14Bに開口していて、ホール効果セル11A,11Bを収容している(あるいは、収容するように構成されている)。第2キャビティ42は、外部と連通している(すなわち、センサケース15の外部空間に開口している)。
【0097】
そして、組立ステップ(c)において、センサビーム20は、
図3、
図5、
図10、および
図12に示すように、当該センサビーム20をセンサケース15に連結しかつアクセスオリフィス30を閉じるプラグを形成するために樹脂タイプの被覆材43を充填キャビティ42内にキャストすることによるオーバーモールディングによって、センサケース15に、より具体的にはスリーブ31の内部に固定される。一方、アダプタ40によって、当該被覆材43が保護キャビティ41に満ちること、およびホール効果セル11A,11Bがぬれることが阻止される。
【0098】
充填キャビティ42内で被覆材43が凝固した後に当該被覆材43がプラグを構成するところ、表記の便宜上、プラグまたは被覆材に同じ符号43を使用することがある。
【0099】
有利には、センサビーム20の遠位端部20D、より具体手には当該遠位端部に担持されたアダプタ40と、ケーブル24と、シース25の対応する端部とは、被覆材43に埋め込まれている。当該被覆材43は、センサケース15の壁部15Lにくっつきかつアクセスオリフィス30を充填およびシールし、センサケース15に対するセンサビーム20の強固でシールされた固定を実現する。
【0100】
使用される被覆材43は、好ましくは熱硬化性ポリマーであって、必要に応じて室温の低圧下または大気圧下において、液状態でキャストされてもよい。
【0101】
そのような熱硬化性材料は、低圧下で容易に流れ、またセンサケース15やシース25に対する良好な付着性と長い耐用年数とを呈する。
【0102】
ここで、留意すべきこととして、本発明は、有利には、一方で熱可塑性ポリマーの高温射出成形によって低コストに得られるセンサケース15と、他方で熱硬化性ポリマーでできたプラグ43とを備えるトルクセンサ1の製造を可能とする。そのような熱硬化性ポリマーは、特に強固かつシール性に優れるが熱可塑性ポリマーよりも高価であり、被覆材43のみに使用される。
【0103】
例えば、ポリウレタン樹脂(PU)、エポキシ樹脂(EP)、またはシリコン樹脂(SI)が、熱硬化性被覆材43として選択されてもよい。
【0104】
しかしながら、被覆材43として、粘着性の熱可塑性樹脂を、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、または好ましくは「EVA」(エチレン酢酸ビニル共重合体)を使用することが排除される訳ではない。
【0105】
そのような熱可塑性粘着物は、特に実施容易で再利用可能であるという利点を有する。
【0106】
しかしながら、熱硬化性樹脂は、経験的に、得られる接続のシールに関して、特に高温環境下(センサ1が燃焼エンジンの近くにある場合など)または高湿環境下において、より優れた耐久性を有する。
【0107】
あるいは、熱可塑性樹脂(「粘着物」)の使用は、電気自動車用の(したがって、熱車両のトルクセンサよりも熱にさらされにくい)、および/またはリアエンジン車両用のトルクセンサ1のために取っておいてもよい。リアエンジン車両では、トルクセンサ1はエンジン室外の前方に配置されてエンジンの放熱にさらされない。
【0108】
また、被覆材43として保持される樹脂のタイプによらず、当該被覆材43が(いったん固まると)50ショアD1以上の硬度を有することが好ましく、これにより大きな引抜抵抗に抗することができる。
【0109】
このために、被覆材43は、好ましくは架橋されている。
【0110】
また、特に好ましくは、被覆材43は、チキソトロピー性ポリマーであり、すなわちストレスが印加されると粘度(液相における)が低下する。
【0111】
有利には、チキソトロピー性によって、被覆材43がキャスト中に比較的低い粘度を有することが可能となり、それにより当該被覆材43が、容易かつ効率的に充填キャビティ42を満たし、アダプタ40の少なくとも一部を覆うことでセンサビーム20を被覆する一方、ストレスが無いと自発的に復元する傾向にある当該被覆材43が過度に狭い空間に入るのが阻止される。
【0112】
とりわけ、このチキソトロピー性によって、被覆材43がアダプタ40をバイパスすること、または当該アダプタ40内に侵入することが阻止され、したがって当該被覆材43が保護キャビティ41に入ること、より具体的にはエアギャップ14A,14B、スリップリング12,13、およびホール効果セル11A,11Bに到達することが阻止される。
【0113】
上述した熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂の様々な例が、有利には、チキソトロピー性を有する。
【0114】
最後に、保護キャビティ41はキャスト中にアダプタ40により被覆材43から分離され、そして被覆材43でできたプラグによりセンサ1の周辺から分離され、したがって、いかなる外部体も、特に被覆材43のいかなるバリも、あるいはいかなる水の浸入も、スリップリング12,13によって上記集中部を、そして磁石6により生じてトルクケース15内から来る磁気フラックスのホール効果セル11A,11Bによる測定を妨害しない。
【0115】
留意すべきこととして、アダプタ40は、有利には、センサビーム20の遠位端部20Dがアクセスオリフィス30に挿入される前に当該ビーム20に一体化され、また当該アダプタ40は、被覆材プラグ43内に捕捉されてトルクケース15内に恒久的に(永遠に)残される。
【0116】
もちろん、上記アダプタ40は、アクセスオリフィス30を液状の被覆材43を通さない態様で仕切ることができるよう任意の適当な形状、好ましくはスリーブ31の形状に対して実質的に相補的な形状を有していてもよく、よってセンサケース15と協働して、保護キャビティ41と充填キャビティ42との間にシール境界を形成する。保護キャビティ41は、エアギャップ14A,14Bの領域を含みかつ保護し、したがって被覆材43が存在しない状態に保たれる。充填キャビティ42は、完全に予め設定された容量の当該被覆材43を受けかつ含む。
【0117】
また留意すべきこととして、同じ型のアダプタ40が、有利には、同じ態様で、曲がった出口を伴う変形例のアセンブリ(
図2〜
図8)に対して、およびまっすぐな出口を伴う変形例のアセンブリ(
図9〜
図12)に対して使用可能であり、それにより製造の規格化が可能となる。
【0118】
好ましくは、
図6および
図8に明示するように、アダプタ40は、センサビーム20の一部の周りにおいて、より具体的には当該センサビーム20の遠位端部20Dの部分の周りにおいて、少なくとも第1シェル部44および第2シェル部45を互いに閉じることで得られるシェル44,45によって形成され、当該センサビーム20の一部を包んでいる。
【0119】
有利には、シェル部44,45に分けられるシェルを使用することで、センサビーム20におけるアダプタ40の位置決めおよび組付けを簡略化できる。なぜなら、当該シェル部44,45を、対象のセンサビーム20の一部の(長手方向)平均ラインに対して交差する方向に近づけることにより、分割ラインP0に沿って互いに当接させることで足りるためである。
【0120】
また、シェル44,45を用いることにより、被覆材43によって覆われる当該シェル44,45の外面と、保護キャビティ41の少なくとも一部を形成し得る当該シェルの内側凹部44C,45Cとの間のシールされた分離を容易に作り出すことができる。当該凹部は、したがって、エアギャップ14A,14Bおよびホール効果セル11A,11Bを収容していてもよい。
【0121】
好ましくは、特に製造の便宜上、シェル44,45は、互いに組み合わせることのできる2つのみのシェル部44,45で構成されている。
【0122】
シェル部44,45は、好ましくは、センサビームの一部の平均ラインに対して実質的に平行な2つにシェルを分ける分割ラインP0で結合され、各シェル部44,45は、センサビーム20の外周部の好ましくは実質的に半分(すなわち、当該ビームの平均ライン周りの約180°)を覆う。
【0123】
好ましくは、上記分割ラインP0は、主軸(ZZ’)に対して実質的に垂直であって、シェル44,45を下側ハーフシェル44と上側ハーフシェル45とに分ける。
【0124】
シェル部44,45、より広くはアダプタ40は、好ましくは、ポリブチレンテレフタレートなどの硬質ポリマー材料(例えば、30%の無機充填材を含むPBTMD30、または30%のガラス繊維を含むPBT GF30)で形成されていて、好ましくは中実状である。
【0125】
好ましくは、
図4、
図6、および
図11に明示するように、シェル44,45は、内側に、アダプタ40を受けるように構成されたセンサビーム20の一部の形状に実質的に噛み合う形状の凹部44C,45Cを有しており、当該シェル44,45がセンサビームに近づけられると、当該センサビーム20は、アダプタ40内で決められた所定の位置に自動的に保持される(よって、センサビーム20は、当該アダプタ40に対して決まった所定の位置に実質的に保持され、その逆の場合も同様である)。
【0126】
そのような構成によると、有利には、ユニークで再現可能かつ安定したシェル44,45の、したがってアダプタ40の、当該シェル44,45内に捕捉されるセンサビーム20に対する位置決めが可能となる。
【0127】
シェル44,45と、当該シェル内に収容されるセンサビーム20の一部との間、より具体的には凹部44C,45Cと当該センサビーム20の一部との間の残りのクリアランス(この場合、厚みクリアランス)は、好ましくは、少なくともセンサビームが凹部44C,45Cの底部に最も近くなる部分にあり、0.15mm以下であって、「ゆるい」保持が望ましい場合には例えば0.05〜0.15mmであり、締まりによるきつい保持が望ましい場合には実質的にゼロである。
【0128】
いかなる場合にも、上記クリアランスは十分に小さく、それにより一方で、センサビーム20をアクセスオリフィス30に挿入する前およびオーバーモールディング中において当該ビーム20に対してアダプタ40を有効かつ確実に保持し、他方で、チキソトロピー性ブロックによって液状の被覆材43がシェル44,45の内部、センサビーム20と凹部44C,45Cとの間を通って保護キャビティ41に到達するのを阻止することで保護キャビティ41内への当該被覆材43の何らかの侵入を妨げる。
【0129】
特に好ましい態様では、接続インターフェース21が、上述したように捕捉電気回路23を有しており、シェルの凹部44C,45Cは、当該捕捉回路23に係合してアダプタ40内でのセンサビーム20の位置決めおよび保持を実現する。
【0130】
有利には、凹部44C,45Cは、上記捕捉回路23の外形に実質的に噛み合う形状、特に当該捕捉回路23を構成しかつ当該凹部44C,45Cの中空部に収容されるプリント回路基板の側縁部に実質的に噛み合う形状を有する。
【0131】
そのような構成により、ユニークで再現可能なセンサビーム20に対するアダプタ40の位置決めと、当該ビーム20における当該アダプタ40の特に有効な保持とが促される。
【0132】
このように、留意すべきこととして、凹部44C,45Cおよび捕捉回路23(特にプリント回路の薄い側縁部)は、
図5および
図12に明示するように、肩状部またはぎざぎざを形成する1つまたはそれ以上のくぼみ46を有していてもよく、それにより有利には、センサビーム20に沿ったアダプタ40の(またはその逆の)相対的な滑りが阻止される。
【0133】
好ましくは、凹部44C,45C内における捕捉回路23の配置を容易にするためのみでなく、アセンブリの(軸方向の)コンパクト性および堅牢性を得るために、シェル部44,45の分割ラインP0は、当該凹部44C,45Cが開口するところであって、プリント回路基板の主面(大きな面、ここでは
図2および
図9における上面および下面)に対して実質的に平行であるか、当該主面の1つに重なっているか、または当該面の間に含まれる捕捉回路23の平均広がり平面に重なっている。
【0134】
よって、捕捉回路23を構成するプレートは、好ましくは主軸(ZZ’)に対して垂直に、2つのシェル部44,45の間で実質的に平坦に配置され、そのため当該捕捉回路23の厚みは当該主軸(ZZ’)に沿って延びている。
【0135】
上述したように、捕捉回路23は、少なくともオーバーモールディング前において、(シェル部44,45の間におけるフラットな締付けによって)きつく取り付けられていてもよいし、または対照的に、わずかなクリアランス、特に非常に薄い厚みのクリアランス(0.15mm未満)を伴って「ゆるく」保持されていてもよい。
【0136】
留意すべきこととして、有利には、アダプタ40がセンサビーム20の比較的強固で高剛性の要素、すなわち捕捉回路23(より具体的には、そのプリント回路基板)に係合していることにより、センサビーム20に対するアダプタ40の特に強固かつ信頼性の高い固定が可能となる。ここで、捕捉回路23は、アダプタの接触によりまたは当該アダプタ40によって及ぼされる圧縮力により変形するおそれがなく、また比較的広い支持面を提供する。
【0137】
好ましくは、特に
図8に示すように、第1および第2シェル部44,45は、センサビーム20の一部において、分割ラインP0にしたがって互いに対して組み付けられ、当該分割ラインP0に沿った第1シェル部44と第2シェル部45との間の組立クリアランスJAは、0.15mm以下であって、例えば実質的に0.05〜0.15mmであり、それによりシェル44,45の内部に被覆材が侵入するのが抑止される。
【0138】
上述したように、オーバーモールディング前に2つのシェル部44,45の間の何らかの残された隙間の幅(この例では、厚み)を制限することにより、被覆材43に対するチキソトロピー性ブロックであって、当該被覆材43がアダプタ40のシェル44,45を通って保護キャビティ41に侵入するのを阻止するためのチキソトロピー性ブロックが作り出される。
【0139】
シェル部44,45の間の結合部における被覆材43に対するシール性を向上させるために、分割ラインP0にバッフル47、特に傾斜V字状パターン(
図17)または溝付き直立パターン(
図18)のバッフル47を設けることが考えられる。
【0140】
好ましくは、第1および第2シェル部44,45は、互いに当接され、圧着式またはクリップ留め式の力学的な嵌め合い構成によって互いに対して閉位置で保持されている。
【0141】
有利には、アクセスオリフイス30への挿入に先立って、したがってオーバーモールディングの前に、センサビーム20にシェル44,45を、したがってアダプタ40をシンプルかつ迅速に取り付けることができる。
【0142】
そのような取付けを可能とするために、任意のタイプの適合され、好ましくはシェル部44,45の一方または両方に一体形成された保持部材48であって、フックを有する可撓性タブや、分割ラインP0に対して突出しかつ対応する径の穴に放射状の締付けを伴って貫入するピンなど(
図5および
図6を参照)で構成された保持部材48を用いることが可能である。
【0143】
有利には、このきつい嵌め合いによる予備固定により、オーバーモールディングの前および間において、シェル44,45、したがってアダプタ40をセンサビーム20の(所定の)位置で保持することが可能となり、また特に、センサケース15の外部でセンサビーム20を取り扱って当該センサビーム20を当該センサケース15のアクセスオリフィス30の外部で挿入することができる。これには、センサビーム20に対する(特に、ホール効果セル11A,11Bに対する、およびシース25に対する)アダプタ40の位置の解除または変更のリスクを何ら伴わない。
【0144】
特に有利な態様では、アダプタ40は、所定の位置で、よってホール効果セル11A,11Bに対してユニークかつよく制御された構成にしたがってセンサビーム20に当接されるものであって、センサビーム20をアクセスオリフィス30に挿入する間に位置決め装置として機能してもよく、そのため、アクセスオリフィス30内で当該アダプタ40を適切に位置決めすることにより、エアギャップ14A,14B内におけるホール効果セル11A,11Bの適切な位置決めが自動的に実現される。
【0145】
また、留意すべきこととして、センサビーム20周りにおける第2シェル部45に対する第1シェル部44の固定は、有利には、アダプタ40、より具体的には当該シェル部44,45がセンサケース15の内部で同じ被覆材プラグ43に埋め込まれると補強され、当該プラグ43によって当該2つのシェル部44,45が一体的に囲まれかつ包まれる。
【0146】
好ましくは、アクセスオリフィス30によって構成されるスリーブ31は、(挿入方向X11周りにおいて、すなわちスリーブ31の中心母線軸周りにおいて)閉じた輪郭を形成する側壁31Lによって側方を区画された少なくとも1つのパス部31Sを有する。
【0147】
特に
図3、
図5、
図8、
図10、および
図12〜
図15に示すように、アダプタ40は、有利には、上記少なくとも1つのパス部31Sに嵌まる形状と、当該パス部31Sの寸法(この例では、直径)よりもわずかに大きな初期寸法(この例では、回転体状の場合の初期直径)とを有する鍔部50を有していてもよく、センサビーム20およびアダプタ40をアクセスオリフィス30内に導入する場合に、当該鍔部50の縁がパス部31Sの閉じた輪郭全体にわたってアクセスオリフィス30の側壁31L(スリーブ31の側壁31L)に妨げられて当接し、それにより当該鍔部50は、一方で、オーバーモールディングを待つ間、きつい嵌め合いによって、センサケース15内におけるアダプタ40およびセンサビーム20の所定位置での(特に耐引抜き性の)一時的な保持を実現し(
図4、
図9、および
図11)、他方で、充填キャビティ42の底壁(または「ヨーク」)を構成し、当該底壁は、アクセスオリフィス30の側壁31Lと協働して被覆材43の流れに対するシールされた連結部を形成し、よってオーバーモールディング中に、外部へ開口しているアクセスオリフィス30の側に、すなわち充填キャビティ42の側に、より具体的にはアクセスオリフィス30および充填キャビティ42に共通する開口であって、それを介してビーム20およびアダプタ40がセンサケース15内へ導入される開口の側に当該被覆材43が収容されるのを許容する(
図3、
図5、
図10、および
図12)。
【0148】
鍔部50を使用することにより、有利には、シンプル、迅速、正確、かつ堅牢にセンサケース15にアダプタ40を圧入でき、また保護キャビティ41および充填キャビティ42の隣接した分離を伴ってアクセスオリフィス30を自動的かつシンプルに仕切ることができ、当該各キャビティ41,42は、当該鍔部50の異なる側に延びている(一方がエアギャップ14A,14Bおよび主軸(ZZ’)の方を向いた鍔部50の前面50Aに対向し、他方が外方、すなわちケーブル24およびシース25の方を向いた当該鍔部の後面50Bに対向している)。
【0149】
図6および
図8に明示するように、鍔部50は、好ましくは、アダプタ40に一体形成され、また好ましくは2つのシェル部44,45の各々によって(輪の形態で)実質的に半分ずつ担持され、当該シェル部44,45の外面から(内側凹部44C,45Cに対向して)外方に突出している。
【0150】
上記鍔部50は、好ましくは、中実ディスク状であって、その外周は、好ましくは円形で、パス部31Sの形状に対応している。
【0151】
上記ディスク(より広くは、鍔部50)は、好ましくは、アダプタ40の中心軸に対して実質的に垂直であって、当該軸は、スリーブ31の中心軸と一致し、したがってセンサビーム20がセンサケース15内に押し入れられる挿入方向X11(この例では、主軸(ZZ’)に対して垂直である)と一致している。したがって、鍔部50は、好ましくは、捕捉回路23を構成するプリント回路基板10の広がる主平面に対して実質的に垂直である。
【0152】
上記鍔部50は、有利には、支持リブ51によって補強されていてもよく、特に挿入方向X11において適用される引抜力に対して補強されていてもよい。
【0153】
留意すべきこととして、上記支持リブ51は、被覆材43内に埋め込まれるものであって、有利には、センサケース15内におけるアダプタ40の固定を補強するのに寄与し、特に挿入方向X11回りにおける当該アダプタ40の回転の阻止に寄与する。
【0154】
鍔部50は、好ましくは、スリーブ31のパス部31Sと干渉するように(すなわち、アクセスオリフィス30内への導入に先立って、空いているパス部31Sの残部の大きさに対する余剰材料を有するように)寸法設定されており、当該干渉は実質的に0.05mm(100分の5)〜0.20mm(100分の20)に含まれる。
【0155】
等価的な態様で、当該干渉は、パス部31Sの残部の直径の(または、パス部31Sが円形でない場合、当該パス部31Sの主な寸法の)実質的に0.5〜1%であってもよい。
【0156】
そのような干渉によると、センサケース15内にアダプタ40を導入する場合に十分な締付効果を得ることができる一方、同時に、当該導入に対して、およびエアギャップ14A,14Bに向かうセンサビーム20の進行に対して過度の抵抗を受けないですむ。
【0157】
(アダプタ40の中心軸X11に向かう上記鍔部50の押しつぶしおよび径方向内方への畳み込みによって)鍔部50の適合を促進するために、鍔部50の縁は、犠牲干渉部材52,53、例えば犠牲環状リブ52(
図14)または可撓性リップ53(
図15)を構成するように形成されていてもよい。
【0158】
上記犠牲干渉部材52,53は、有利には、アダプタ40とスリーブ31の側壁31Lとの間において最小限の干渉を確実にもたらすために、シェル部44,45およびアクセスオリフィス30の製造および組付クリアランスを補償するように配置および寸法設定されており、当該干渉は、望ましい固定およびシール効果を得るのに十分なものである。
【0159】
特に
図8および
図13〜
図15に示すように、鍔部50の前縁(すなわち、前面50Aの縁部)は、有利には、丸み部54を有しており、それにより、スリーブ31内でのアダプタ40の芯出し、挿入、および前進が容易になる。
【0160】
好ましくは、特に
図3〜
図5、
図10〜
図12、および
図13〜
図15に示すように、センサケース15は、(少なくとも1つの)くぼみストッパ55、例えばパスオリフィス30に形成された(好ましくは環状の)肩状部を有しており、当該くぼみストッパ55は、アクセスオリフィス30内へのセンサビーム20の導入に際して、所定の深さでアダプタ40の前進を自動的にブロックし、それによりエアギャップ14A,14Bにおけるホール効果セル11A,11Bの挿入深さを自動的に調節する。
【0161】
上記くぼみストッパ55は、好ましくは、上記アダプタ40、およびこれに収容されたホール効果セル11A,11Bが、主軸(ZZ’)に対する所望の位置に、特に当該主軸(ZZ’)に対する所望の径方向位置に、したがってエアギャップ14A,14Bに対する所望の位置に到達したときに、鍔部50に作用してアダプタ40の沈み込み動作を停止するように構成されている。
【0162】
好ましくは、また当接の精度を高めるために、鍔部50は、当該鍔部50から突出する複数の突起56(少なくとも3つの突起)であって、より正確には、鍔部50に関して充填キャビティ42とは反対側に主軸(ZZ’)の方へ向き、すなわちストッパ55、保護キャビティ41、およびホール効果セル11A,11Bの側において当該鍔部の前面50Aの高い位置に形成された複数の突起56を有する。
【0163】
よって、特に
図13〜
図15に示すように、上記突起56は、複数の支持点であって、当該支持点を介して鍔部50がくぼみストッパ55に対して接触する複数の支持点を構成する。
【0164】
(この例では、挿入方向X11に対して垂直な支持平面にしたがって面接触支持を提供する)バランスのよい当接のために、突起56は、好ましくは、鍔部50の環状前面50Aにおいて、挿入方向X11周りの星のように、実質的に等間隔に配置されている。
【0165】
好ましくは、
図8に示すように、アダプタ40は、向き決め平坦部61またはフールプルーフリブ62といったタイプの1つまたはそれ以上のフールプルーフ構造60,61,62を有しており、当該フールプルーフ構造61,62,63は、センサケース15の結合受け構造65と協働してアダプタ40の向きを決めかつそのアクセスオリフィス30への挿入を案内する。
【0166】
アダプタ40は、有利には、好ましくは鍔部50の前方に(突出して)設けられ、すなわち当該鍔部50よりも主軸(ZZ’)およびエアギャップ14A,14Bの近くに設けられた一種の結合ソケットを構成しており、当該結合ソケットは、センサビーム20がセンサケース15内に導入されるときに、上述した受け構造65を有する雌型ソケットに差し込まれる。
【0167】
好ましくは、上記(雌型)受け構造65は、非常に正確な案内を実現するためにフラックス集中支持部10の壁部に組み込まれた、より具体的にはモールドされたブッシュ65を形成するように構成されており、当該案内は、フラックス集中支持部10の構造を、したがって目標となるエアギャップ14A,14Bを直接的に案内基準とする。
【0168】
より具体的に、フールプルーフ構造60,61,62は、次の構造の少なくとも1つ、好ましくは全てを有していてもよい。当該構造とは、すなわち、案内および芯出しのための円形ベースの少なくとも1つの案内シリンダ60(または、案内シリンダ円弧部60の一部)と、好ましくは案内シリンダ60に設けられ、アダプタ40の回転をブロックしてエアギャップ14A,14Bに対する当該アダプタ40の位置決めおよび回転ブロックを実現する少なくとも1つの向き決め平坦部61、好ましくは径方向に対向する2つの向き決め平坦部61と、アダプタ40の頂部と底部とを区別すること、および各エアギャップ14A,14Bに対応するホール効果セル11A,11Bを特定することを可能とするフールプルーフリブ62とである。
【0169】
留意すべきこととして、好ましくは、特に良好な仕上がりを得る一方でより大きな、したがってより非制限的な製造寸法誤差を許容するために、案内シリンダ60および向き決め平坦部61は、
図6に明示するように、1つの同じシェル部(この例では、第1下側シェル部44)に一体形成されていることが好ましく、それにより有利には、分割ラインP0によるフールプルーフ構造60,61,62の分離を回避できる。
【0170】
また、留意すべきこととして、好ましくは、対象の変形例(まっすぐな出口を伴うか、または曲がった出口を伴うか)に関わらず、充填キャビティ42が設けられると共に、オーバーモールディングに使用される被覆材43の量は、オーバーモールディングにおいて、当該被覆材43が少なくとも5mmの長さL25にわたってシース25(シース25の遠位端部)をぬらす(覆う)ように規定される(
図3および
図10)。
【0171】
発明者は、そのような被覆長さL25が、さらに使用材料の特性に関して(特に直径D25=5mmのポリウレタン製シースと、被覆材43としてのポリウレタン樹脂とを使用する場合)、外部に露出しているシース25に及ぼされる引抜力、すなわち引張力が当該シースを被覆材プラグ43から引き抜くのに120℃の周囲温度において100N以上、さらには200N以上であること(これは、目標とする引抜抵抗基準に対応する)を要するようにするのに必要十分であることを発見した。
【0172】
好ましくは、コンパクト性および材料節約の目的のために、シース25の被覆長さL25は、15mm以下、または10mm以下であってもよく、最終的に、当該被覆長さL25は、好ましくは、5〜15mm、または5〜10mmである。
【0173】
好ましくは、特に曲がった出口を伴う第2変形例を実施する場合において、センサケース15のアクセスオリフィス30、より具体的に当該アクセスオリフィス30の外部口は、
図6に示すように、充填キャビティ42に対して角度をなしかつシース25を受けて案内するように構成された樋状部70により外方に延びている。
【0174】
上記樋状部70は、より好ましくは、シース25を受けて当該シース25を主軸(ZZ’)に対して実質的に平行に案内するように構成されており、
図2〜
図4に示すように、トルクセンサ1が測定するねじりトルク(T0)は、当該主軸(ZZ’)回りにおいて作用する。
【0175】
有利には、そのような樋状部70は、好ましくはスリーブ31およびセンサケース15の壁部15Lに一体形成されていて、シース25がその戻り方向において安定して維持されるのを可能とする。ここで、当該戻り方向は、主軸(ZZ’)に対して平行であり、したがって捕捉回路23の広がる平面に対して、ホール効果セル11A,11Bの全配向方向に対して、および当該捕捉回路23からケーブル24が出てくる(径)方向に対して交差している。
【0176】
シース25の配置、およびケーブル24の曲げは、したがって上記樋状部70の存在によって容易化される。
【0177】
同様に、ビーム20の引抜抵抗が向上する。
【0178】
特に好ましい態様では、シース25の保持およびセンサビーム20の引抜抵抗をさらに改善するために、樋状部70は、
図7に詳しく示すように、主軸(ZZ’)から径方向に遠ざかる方向において(すなわち、遠心的な引抜方向において)、樋状部70から当該シース25が引き抜かれるのに抗する保持フランジ71を有する。
【0179】
保持フランジ71は、有利には、シース25の直径D25よりも小さな幅D71による締付けを提供し、それにより好ましくは樋状部70内への弾性嵌め合いによるシース25の挿入が許容される一方、当該樋状部70から当該シース25が偶発的に抜け出ることが回避される。
【0180】
もちろん、本発明は、上述した変形例に限定されるものでは全くなく、当業者であれば、上述した特徴のいずれかを自由に単離しもしくは組み合わせ、または等価物と置き換えることができるだろう。