(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774510
(24)【登録日】2020年10月6日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】ピボット可能なクランプ部を有するキャリアおよびその組み立て方法
(51)【国際特許分類】
E05F 11/38 20060101AFI20201019BHJP
E05F 11/48 20060101ALI20201019BHJP
B60J 1/17 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
E05F11/38 E
E05F11/48 D
B60J1/17 C
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-7908(P2019-7908)
(22)【出願日】2019年1月21日
(65)【公開番号】特開2019-127821(P2019-127821A)
(43)【公開日】2019年8月1日
【審査請求日】2019年2月8日
(31)【優先権主張番号】10 2018 200 925.2
(32)【優先日】2018年1月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508072408
【氏名又は名称】ブローゼ ファールツォイクタイレ エスエー ウント コンパニ コマンディートゲゼルシャフト バンベルク
【氏名又は名称原語表記】BROSE FAHRZEUGTEILE SE & CO.KG,BAMBERG
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(72)【発明者】
【氏名】タウブマン・ウド
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーグナー・フランク
(72)【発明者】
【氏名】ザルム・クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】イェーガー・クリスティアン
【審査官】
砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−15585(JP,A)
【文献】
特開2004−60372(JP,A)
【文献】
特開平8−290717(JP,A)
【文献】
特開2017−186874(JP,A)
【文献】
特表2012−510574(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0152476(US,A1)
【文献】
独国特許出願公開第10005759(DE,A1)
【文献】
仏国特許出願公開第2830894(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00−13/04
B60J 1/00− 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ウィンドウリフタに用いられるキャリアであって、
ガラスホルダー(3)を備え、
前記ガラスホルダー(3)が2つの対向するクランプ部(3a,3b)を有し、前記クランプ部(3a,3b)の間に、ウィンドウガラス(F)の一部を収容するための隙間(g)が設けられており、前記クランプ部(3a,3b)は、前記ウィンドウガラス(F)が前記隙間(g)に挿入されたとき、少なくとも1つの締結要素(5)を介して互いに連結されるように構成されている、キャリアにおいて、
前記ガラスホルダー(3)は、一方の前記クランプ部(3a,3b)のための軸受部(30)を形成しており、
前記軸受部(30)に、前記一方のクランプ部(3a)のためのスイベル軸心(S)が定められ、かつ前記隙間(g)に突出するスイベル要素(301)が設けられており、
前記スイベル要素(301)によって、前記一方のクランプ部(3a)は、前記ウィンドウガラス(F)を前記隙間(g)に挿入することで前記スイベル軸心(S)を中心として他方の前記クランプ部(3b)の方向にピボット可能であるキャリアにおいて、
前記軸受部(30)に、切欠き(3000)を形成する軸受ブラケット(300)が形成されており、前記スイベル要素(301)が前記切欠き(3000)内に配置されていることを特徴とするキャリア。
【請求項2】
請求項1に記載のキャリアにおいて、前記スイベル要素(301)は前記軸受部(30)にモールドされていることを特徴とするキャリア。
【請求項3】
請求項1または2に記載のキャリアにおいて、前記スイベル要素(301)は、前記クランプ部(3a,3b)の間に形成された前記隙間(g)に前記ウィンドウガラス(F)を挿入したとき、前記軸受部(30)の弾性変形および/または塑性変形によって、前記一方のクランプ部(3a)を前記他方のクランプ部(3b)の方向にピボットさせるように構成されていることを特徴とするキャリア。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のキャリアにおいて、前記ウィンドウガラス(F)を前記隙間(g)に適切に挿入することができる挿入方向(E)からみて、前記スイベル要素(301)は前記スイベル軸心(S)の下方に配置されていることを特徴とするキャリア。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のキャリアにおいて、前記クランプ部(3a,3b)の両方に、前記締結要素(5)のための締結開口(35a,35b)が設けられていることを特徴とするキャリア。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のキャリアにおいて、前記締結要素(5)がねじ(5)であることを特徴とするキャリア。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のキャリアにおいて、前記キャリア(1)がキャリア本体(2)を備え、前記キャリア本体(2)に、前記ガラスホルダー(3)の少なくとも一部が固定されており、前記キャリア本体(2)が、前記車両用ウィンドウリフタのガイドレール上で前記キャリア(1)をシフト可能に案内する案内部(20)を有することを特徴とするキャリア。
【請求項8】
ウィンドウガラスを調節する車両用ウィンドウリフタであって、請求項1から7のいずれか一項に記載のキャリア(1)を備える車両用ウィンドウリフタ。
【請求項9】
車両用ウィンドウリフタに用いられるキャリア(1)にウィンドウガラス(F)を取り付ける方法であって、
前記キャリア(1)に前記ウィンドウガラス(F)を適切に取り付けるために、前記キャリア(1)の2つのクランプ部(3a,3b)の間に形成された隙間(g)に前記ウィンドウガラス(F)の一部を挿入し、
その後、少なくとも1つの締結要素(5)を介して前記2つのクランプ部(3a,3b)を互いに連結して、前記クランプ部(3a,3b)の間に収容された前記ウィンドウガラス(F)の前記一部を前記キャリア(1)に固定する方法において、
前記キャリア(1)の軸受部(30)に、一方の前記クランプ部(3a,3b)のためのスイベル軸心(S)を定め、前記ウィンドウガラス(F)を前記隙間(g)に挿入することで、前記一方のクランプ部(3a)を、前記スイベル軸心(S)を中心として他方の前記クランプ部(3b)の方向にピボットさせることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、前記隙間(g)に挿入された前記ウィンドウガラス(F)の前記一部が前記隙間(g)に突出する前記軸受部(30)のスイベル要素(301)に作用し、これにより、前記一方のクランプ部(3a)が前記他方のクランプ部(3b)の方向にピボットされることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の方法において、請求項1から8のいずれか一項に記載のキャリア(1)を用いることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ウィンドウリフタに用いられるキャリアと、車両用ウィンドウリフタに用いられるキャリアにウィンドウガラスを取り付ける方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、先行技術から公知の車両用ウィンドウリフタに用いられるキャリアは、調節されるウィンドウガラスとの接続のためにウィンドウガラスの下縁領域またはウィンドウガラスの側縁領域に設けられている。そして、このようなキャリアは、例えば、ウィンドウガラスを昇降させるために、車両用ウィンドウリフタの可撓性の牽引手段(例えば、ボーデンケーブルの形式)を介して接続されており、調節可能である。このようなキャリアは、例えば、車両用ウィンドウリフタのガイドレール上でシフト可能に案内することができるが、必ずしもそのようにする必要はない。原則として、このようなキャリアは、ウィンドウガラスを調節するために、このキャリアに連結されたウィンドウガラスに例えば電動駆動装置を介して発生される調節力を伝達する。
【0003】
ウィンドウガラスとの連結のために2つの対向するクランプ部がキャリアに設けられており、ウィンドウガラスの一部を収容するための隙間がこれらのクランプ部の間に設けられていることが知られている。これらのクランプ部の間において、隙間に挿入されたウィンドウガラスの部分をキャリアに固定することが可能である。例えば、少なくとも1つの締結要素がこのために設けられており、2つの対向するクランプ部を互いに連結し、かつこれらのクランプ部を、隙間に挿入されたウィンドウガラスの部分に対して押しつけてこの部分をクランプ部の間で挟んで保持する。
【0004】
このようなキャリアにウィンドウガラスを取り付ける際には、ウィンドウガラスを挿入した後に2つのクランプ部が互いに望まない方向を向いてしまうことにより、これら2つのクランプ部を連結したキャリアにウィンドウガラスを固定するためにその後に取り付けられる締結要素を、位置を誤ることなく容易に取り付けることができないという問題が生じ得る。ウィンドウガラスを挿入するために、2つのクランプ部の間の隙間にウィンドウガラスまたは(例えば、ガラス下縁に)そのために設けられた部分を容易に挿入できるように、これら2つのクランプ部は特定の最小寸法で予め互いに離間していなければならない。しかしながら、通常、ウィンドウリフタを組み立てる際に依然としてアクセス可能であるのは一方のクランプ部のみであり、このクランプ部は、例えば、車両用ウィンドウリフタが設けられている車両ドアの内部からアクセス可能である。よって、外側のクランプ部が誤った位置にある場合には内側からではほとんど修正することができず、2つのクランプ部を互いに正確にねじ結合させることができなくなるか、少なくともその妨げとなり得る。したがって、クランプ部に設けられたねじ部が損傷して、動作時に車両用ウィンドウリフタの故障に繋がる可能性がある。
【0005】
類似のキャリアが、例えば、特許文献1から知られている。この文献に提案されるキャリアは、ウィンドウガラスをキャリアに固定するときにガイドレールに対してウィンドウガラスを傾動させるために、弾性変形可能なウェブ連結体を介して調節可能に取り付けられたクランプ部を有する。しかしながら、上記の取り付けに関する問題は特許文献1で取り上げられていない。この文献で検討されていることは、キャリアのガラスホルダーを介して傾動のバランスを取ることに過ぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第102005025281号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本願で提案する解決手段の根底にある目的は、ウィンドウガラスをキャリアに取り付ける際の上記の問題が、2つの対向するクランプ部を用いることによって回避または少なくとも低減されたキャリアおよび取付け方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1に係るキャリアおよび請求項10に係る取り付け方法によって達成される。
【0009】
したがって、車両用ウィンドウリフタに用いられるキャリアであって、2つの対向するクランプ部を有するガラスホルダーを備えるキャリアが提案される。前記クランプ部の間には、ウィンドウガラスの一部を収容するための隙間が設けられており、前記クランプ部は、前記ウィンドウガラスが前記隙間に挿入されたとき、少なくとも1つの締結要素(例えば、ねじまたはボルト形式の要素)を介して互いに連結されるように構成されている。提案する解決手段において、前記ガラスホルダーには、さらに、一方の前記クランプ部のための軸受部が形成されており、この軸受部に、前記一方のクランプ部のためのスイベル軸心(Schwenkachse)が形成されている。さらに、前記隙間に突出するスイベル要素(Schwenkelement)が設けられており、このスイベル要素によって、前記一方のクランプ部は、前記ウィンドウガラスを前記隙間に挿入することで前記スイベル軸心を中心として他方のクランプ部の方向にピボット可能である。
【0010】
したがって、前記ウィンドウガラスの挿入と共に一方の前記クランプ部を他方の対向する前記クランプ部の方向にピボットさせるために、前記スイベル要素によって一種のレバー機構が前記キャリア上に設けられている。したがって、前記ウィンドウガラスを取り付ける際、前記一方のクランプ部は、前記スイベル要素によって、前記軸受部に形成された前記スイベル軸心を中心として取付前位置から取付位置へとピボット可能である。この取付前位置において、前記2つのクランプ部は所定の最小距離で互いに離間し、且つ前記一方のクランプ部は、例えば、前記他方のクランプ部に対して傾斜しており、前記ウィンドウガラスの一部を前記隙間に容易に挿入できるようになっている。一方、前記取付位置において、前記2つのクランプ部は互いに近付けられ、前記2つのクランプ部を互いに連結する前記締結要素を容易に取り付けられるようになっている。その後、前記取付位置において、例えば、前記クランプ部は互いに実質的に平行に整合される。
【0011】
よって、前記隙間に突出する前記スイベル要素が設けられており、前記隙間に適切に挿入された前記ウィンドウガラスの部分によって変位されることで、前記軸受部によって定められる前記スイベル軸心を中心として前記他方のクランプ部の方向に(前記取付位置へと)前記一方のクランプ部をピボットさせるように構成されている。これにより、前記キャリアの前記隙間に前記ウィンドウガラスを挿入するだけで、例えば、前記締結要素を取り付けるために前記一方のクランプ部に設けられた締結開口を、前記他方のクランプ部にある対応する締結開口と適切に整合させることが可能である。一実施形態において、例えば、一方のクランプ部の締結開口または両方のクランプ部の両方の締結開口に、前記締結要素のねじボルトまたは締結ねじのための雌ねじを形成することが可能である。一実施形態において、クランプ部の締結開口にねじ付きスリーブを回転不能に取り付けることが可能である。そして、このねじ付きスリーブは、前記締結要素のねじボルトまたは締結ねじのための雌ねじを有する。
【0012】
一実施形態において、前記スイベル要素は前記軸受部にモールドされている。したがって、前記スイベル要素は、前記スイベル軸心を形成する(例えば、プラスチック材料製の)前記軸受部と一体形成されている。
【0013】
代替的または付加的に、前記スイベル要素は、前記クランプ部の間に形成された前記隙間に前記ウィンドウガラスが挿入されたとき、前記軸受部の弾性変形および/または塑性変形によって前記他方のクランプ部の方向に前記一方のクランプ部をピボットするように構成されていてもよい。スイベル軸心を定め、かつ、前記ウィンドウガラスが前記隙間に挿入されたとき、この定められたスイベル軸心を中心として前記一方のクランプ部を確実にピボットさせるために、前記軸受部は材料および構造によって選択的に変形可能とすることができる。したがって、前記軸受部は1つの領域において選択的に弾性および/または塑性変形可能であり、これにより前記ウィンドウガラスの挿入時に変位される前記スイベル要素によって、取り付ける際に前記一方のクランプ部がピボットされるスイベル軸心を定めるように、前記軸受部はデザインされている。
【0014】
一実施形態において、前記スイベル要素は、前記ウィンドウガラスを前記隙間に適切に挿入することができる挿入方向に基づいて、前記スイベル軸心の下方に配置されている。よって、このとき、前記ウィンドウガラスの挿入時に変位される前記スイベル要素の梃子の作用を用いて、このクランプ部を対向する前記他方のクランプ部の方向にシフトさせることができるように、ピボットされる前記一方のクランプ部を前記軸受部の前記スイベル軸心の上方に設けることができる。
【0015】
一実施形態において、前記軸受部は切欠きを形成する軸受ブラケットを形成しており、前記スイベル要素は前記軸受ブラケットの前記切欠きに設けられている。したがって、U字形の軸受ブラケットの場合、前記スイベル要素は、例えば、前記軸受ブラケットの底部から、前記底部を介して互いに連結された前記軸受ブラケットの2つの脚部の間に形成された切欠きへと延び、同時に、前記キャリアの前記隙間に突出している。軸受ブラケットを有する設計により、例えば、前記2つの脚部を連結する前記底部の領域に所望の変形性を与えることができ、これにより、前記底部にモールドされた前記スイベル要素が、前記隙間に挿入された前記ウィンドウガラスの前記部分を変位させることによって、前記スイベル軸心を定める前記底部の領域において前記軸受ブラケットを変形させて、同様に前記底部と一体形成された前記一方のクランプ部を前記他方のクランプ部の方向にピボットさせることができる。
前記スイベル要素は、例えば、ピン形状またはカム形状に構成することが可能である。
【0016】
原則として、前記キャリアは、前記ガラスホルダーの少なくとも一部が固定(特に、
取付またはモールド)されるキャリア本体を備え、このキャリア本体が、車両用ウィンドウリフタのガイドレール上で前記キャリアをシフト可能に案内するための案内部を有していてもよい。したがって、特に、前記2つの対向するクランプ部を前記キャリア本体に固定することができる。一実施形態において、一方の前記クランプ部を前記キャリア本体にモールドすることが可能であり、特に、前記他方のクランプ部を含む前記ガラスホルダーの一部は前記キャリア本体に取り付けられている。この最後に言及した実施形態において、例えば、別体に形成された部品(前記キャリア本体とは異なる材料で形成してもよい)をピボット自在な前記クランプ部と共に前記キャリア本体上に取り付け、このキャリア本体に、前記他方のクランプ部を一体部品として形成することが可能である。このとき、前記キャリア本体に組み込まれて固定される部分は、前記スイベル要素を有する前記軸受要素も備えていてもよい。一実施形態において、前記キャリア本体とは別体に形成され且つピボット自在な前記クランプ部を有する部品を取り付けるために、例えば少なくとも1つの突出ピンまたはウェブが形成されており、この突出ピンまたはウェブは、少なくとも二部品のキャリアを組み立てた状態において、適切に取り付けられた部品の対応する連結開口に係合する。
【0017】
前記キャリア本体には、前記車両用ウィンドウリフタの可撓性の牽引手段(例えば、ボーデンケーブルの形式のもの)との連結のために連結部を設けることができる。そしてこのような連結部は、例えば、前記車両用ウィンドウリフタのボーデンケーブルのケーブルニップルを掛けるための少なくとも1つのニップルチャンバを有する。
【0018】
当然ながら、本願で提案する解決手段には、ウィンドウガラスを調節するための車両用ウィンドウリフタであって、一方のクランプ部のためのスイベル軸心を定める軸受部を有するキャリアと、2つのクランプ部の間の隙間に突出するスイベル要素とを有するウィンドウリフタも含まれる。
【0019】
さらに、本願で提案する解決手段の更なる態様は、車両用ウィンドウリフタに用いられるキャリアにウィンドウガラスを取り付ける方法に関する。前記キャリアに前記ウィンドウガラスを適切に取り付けるために、前記ウィンドウガラスの一部は、例えばガラス下縁の領域において、前記キャリアの2つのクランプ部の間に形成された隙間に挿入される。その後、前記クランプ部の間に収容された前記ウィンドウガラスの前記部分を前記キャリアに固定するために、前記2つのクランプ部は少なくとも1つの締結要素を介して互いに連結される。前記キャリアの軸受部において、一方の前記クランプ部のためのスイベル軸心が定められ、前記ウィンドウガラスを前記隙間に挿入することによって、前記一方のクランプ部はこのスイベル軸心を中心として他方のクランプ部の方向にピボットされる。
【0020】
本願で提案される取り付ける方法を実施するために、当然ながら、上記または下記のいずれかの実施形態に係るキャリアを使用することができる。したがって、そうしたキャリアの実施形態についての上記または下記の構成および利点は、提案される取り付ける方法の実施形態にも適用され、その逆もまた然りである。
【0021】
前記取り付ける方法の一実施形態において、特に、前記隙間に挿入された前記ウィンドウガラスの部分が前記隙間に突出する前記軸受部のスイベル要素に作用することで、前記一方のクランプ部が前記他方のクランプ部の方向にピボットされるように構成することが可能である。前記ウィンドウガラスを前記隙間に適切に挿入するだけで、定められた前記スイベル軸心を中心として前記一方のクランプ部を変位させることが可能である。
【0022】
例えば、前記ウィンドウガラスを挿入した後に、前記締結要素が取り付けられるように構成される。この締結要素は、例えば、(第2の)ピボットされないクランプ部からこの(第2の)クランプ部の第1締結開口を通って前記ウィンドウガラスの開口に到達し、そして(第1の)ピボットされるクランプ部の第2締結開口に、またはこの第2締結開口を通って到達することで、前記2つ(第1および第2)のクランプ部を互いに連結し、かつ前記ウィンドウガラスを前記キャリアに固定することも可能である。例えば、車両ドアに車両用ウィンドウリフタを取り付ける際、前記車両ドアに予め取り付けられている前記車両用ウィンドウリフタに前記キャリアと共に前記ウィンドウガラスが取り付けられるとき、ピボットされる前記クランプ部は前記車両ドアの外側に面しており、ピボットされない前記他方のクランプ部は依然として前記車両ドアの内側からアクセス可能である。したがって、前記2つのクランプ部の間の前記隙間に前記ウィンドウガラスを挿入することにより、外側のほとんどアクセスできない前記クランプ部を変位させ、このクランプ部を他方の内側のクランプ部と整合させた後に、前記少なくとも1つの締結要素を取り付けることになる。
【0023】
下記の図面には、あくまでも例示的に、提案される解決手段の考え得る実施形態が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】提案されるキャリアの一実施形態の斜視図である。
【
図2】同様に、キャリアの一部を拡大した斜視図である。
【
図3】互いに離間した2つのクランプ部と、これら2つのクランプ部を互いに連結するために設けられた締結要素とを有するキャリアの部分断面図である。
【
図4】キャリアと、このキャリアに固定されたウィンドウガラスを部分的に示す側面図である。
【
図4A】
図4の切断線A−Aに沿った断面図である。
【
図5】キャリアと、このキャリアに固定されたウィンドウガラスを異なる視点からみたときの図である。
【
図6】キャリアと、このキャリアに固定されたウィンドウガラスを異なる視点からみたときの図である。
【
図7】キャリアと、このキャリアに固定されたウィンドウガラスを異なる視点からみたときの図である。
【
図8】キャリアと、このキャリアに固定されたウィンドウガラスを異なる視点からみたときの図である。
【
図9A】提案されるキャリアの更なる実施形態であって、ウィンドウガラスをキャリアに取り付けるとキャリアの一方のクランプ部を他方のクランプ部の方向にピボットさせる軸受部を異なる構成とした例を示す図である。
【
図9B】提案されるキャリアの更なる実施形態であって、ウィンドウガラスをキャリアに取り付けるとキャリアの一方のクランプ部を他方のクランプ部の方向にピボットさせる軸受部を異なる構成とした例を示す図である。
【
図9C】提案されるキャリアの更なる実施形態であって、ウィンドウガラスをキャリアに取り付けるとキャリアの一方のクランプ部を他方のクランプ部の方向にピボットさせる軸受部を異なる構成とした例を示す図である。
【
図10A】提案されるキャリアの更なる実施形態であって、2つのクランプ部を有するガラスホルダーがキャリア本体にモールドされている例を示す図である。
【
図10B】提案されるキャリアの更なる実施形態であって、2つのクランプ部を有するガラスホルダーがキャリア本体にモールドされている例を示す図である。
【
図11A】提案されるキャリアが多部品構造である更なる実施形態であって、1つのピボット自在なクランプ部が、ガラスホルダーの他方のクランプ部がモールドされているキャリア本体に、別体の部品の一部として取り付けられている例を示す図である。
【
図11B】提案されるキャリアが多部品構造である更なる実施形態であって、1つのピボット自在なクランプ部が、ガラスホルダーの他方のクランプ部がモールドされているキャリア本体に、別体の部品の一部として取り付けられている例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1から
図8および
図9Aから
図11Bには、例えば、フレームレスの車両ドアに用いられる車両用ウィンドウリフタに使用することができるキャリア1の様々な実施形態の図が示されている。
【0026】
キャリア1はキャリア本体2を有し、このキャリア本体2に、車両用ウィンドウリフタ(図示せず)のガイドレール上でキャリア1をシフト可能に案内する案内部20が設けられている。さらに、車両用ウィンドウリフタのボーデンケーブルに連結する連結部21がキャリア本体2に設けられている。したがって、この連結部21は2つのニップルチャンバを有しており、このチャンバ内にボーデンケーブルのケーブルニップルを掛けて、ボーデンケーブルを介してキャリア1に調節力を伝達すること、またはガイドレールに沿ってキャリア1を調節することができる。
【0027】
キャリア1に連結されたウィンドウガラスFが完全に降ろされた位置であるキャリア1の端部位置を定めるためにキャリア本体2はストップ部22を有しており、このストップ部22によって、キャリア1は、例えばガイドレール上、またはガイドレールを形成もしくはガイドレールを支えるキャリア部品上のカウンタストップ部に当接することができる。
【0028】
キャリア1のキャリア本体2は、ガラスホルダー3をキャリア本体2に固定する保持部23をさらに有する。ガラスホルダー3をキャリア本体2に固定するために、ガラスホルダー3は連結部32を形成しており、この連結部32は、特に、クランプ部3aおよび3bを支えており、キャリア本体2の保持部23によって囲まれている。
図4から
図8に部分的に示されているように、クランプ部3aおよび3bを有するキャリア1のガラスホルダー3は、調節されるウィンドウガラスFをポジテイブに挟んでキャリア1と連結するために設けられている。
【0029】
ガラスホルダー3は2つの対向するクランプ部3aおよび3bを形成しており、これらの間に隙間gが形成されている。この隙間gに、ウィンドウガラスFの一部をガラス下縁Uの領域に適切に挿入して、2つのクランプ部3aおよび3bの間に配置することができる。そして、ウィンドウガラスFをキャリア1に固定するために、(ここでは、ねじ5の形式の)締結要素が一方の側からクランプ部3a,3bの一方の締結開口35bを通り、ウィンドウガラスFの対応する開口を通ってガイドされ、対向するクランプ部3aの締結開口35aに挿入される。一方または両方のクランプ部3a,3bにおいて、締結開口35aまたは35bに、ねじ5の雄ねじが螺合される雌ねじを設けることができる。変形例としては、この雌ねじを、締結開口35aに配置されたねじ付きスリーブによって設けることも可能である。このようなねじ付きスリーブをピボット可能(schwenkbar)なクランプ部3aに固定するために、(例えば、ヘリカルギア4の形式の)ねじ要素は、一方のクランプ部3aに取り付けられるように構成されている(特に、
図1および
図2を参照)。このヘリカルギア4は、ウィンドウガラスFを挿入し、ねじ5を取り付ける前に、クランプ部3から突出するねじ付きスリーブの端部に螺合され、これにより、締結開口35a内に形状係合(formschluessig)して保持される(例えば、外側が六角形の)ヘッドを介してクランプ部3aにねじ付きスリーブを回転不能に取り付けることができる。
【0030】
キャリア1にウィンドウガラスFを取り付けるために、2つのクランプ部3aおよび3bは互いに十分に離間している必要があり、これらのクランプ部の間に形成される隙間gは、可能であれば漏斗形(trichterfoermig)にすべきである。しかしながら、ウィンドウガラスFを挿入方向Eに沿って隙間gに挿入した後、ガラスホルダー3の2つのクランプ部3aおよび3bが、それらの締結開口35aおよび35bと互いに整合しない可能性があるという問題がある。この点は、ウィンドウガラスFをキャリア1に取り付ける際、通常、キャリア1は、車両ドア内の車両用ウィンドウリフタに予め取り付けられていることから、内側から内側のクランプ部3bに対してねじ5を締めるとき、外側にある一方のクランプ部3bは容易にアクセスできなくなっているので、ますます重大な問題となる。そして、2つのクランプ部3aおよび3bを互いに対してまたはねじ5の螺合方向に対して誤った位置に配置してしまった場合には、正確にねじ結合させることができなくなるか、少なくともその妨げとなる。このことは、ねじ5が螺合される雌ねじの損傷に繋がる虞がある。その結果、車両用ウィンドウリフタの動作時において、キャリアの故障リスクが増大する。
【0031】
図1から
図8(および
図9Aから
図11B)に示されたキャリア1において、このようなねじ結合不良のリスクは、ガラスホルダー3の軸受部30に外方(外側)のクランプ部3aのためのスイベル軸心Sを形成し、かつ隙間gに突出するスイベル要素301を設けることによってほぼ完全に排される。このスイベル要素301によって、外側のクランプ部3aは、ウィンドウガラスFを隙間gに挿入することで他方の内方(内側)のクランプ部の方向にスイベル軸心Sを中心としてピボット自在である。
【0032】
本発明において、U字形の軸受ブラケット300が形成された軸受部30は、ピボット可能なクランプ部3aおよびスイベル要素301と一体形成されている。軸受ブラケット300の2つの脚部の間を延びる軸受ブラケット30の底部はスイベル軸心Sを定めており、ウィンドウガラスFが挿入方向Eに沿ってキャリア1に取り付けられたとき、一方の外側のクランプ部3aはこの軸心を中心として他方の内側のクランプ部3bの方向にピボットされる。このとき、外側のクランプ部3aは、下方を向く挿入方向Eに対してスイベル軸心Sの上方に設けられており、スイベル要素301はスイベル軸心Sの下方で隙間gに突出している。
図1から
図8に示されている実施形態において、スイベル要素301は、膨らんだ端部を有するピン形状に、したがってピボットピン301として構成されている。このピボットピン301は、さらに、ウィンドウガラスFの挿入方向Eに対して横方向にピボットピン301を変位可能にするために、軸受ブラケット300の切欠き3000内に設けられている。
【0033】
軸受ブラケット300を有する軸受部30は、スイベル軸心Sを定める軸受ブラケット300の底部の領域において選択的に変形可能に形成されている。これにより、隙間gに挿入されたウィンドウガラスFは、隙間gに突出するピボットピン301を変位させることによって軸受ブラケット300の底部を変形させることが可能である。ピボットピン301を変位させることにより、対向する内側のクランプ部3bの方向へ、スイベル方向Rに沿ってスイベル軸心Sを中心としたピボットピン301のスイベル動作が実現され、したがってピボットピン301と一体形成された外側のクランプ部3aのスイベル動作が実現される。したがって、外側のクランプ部3aは、ウィンドウガラスFを隙間gに挿入するだけで、対向するクランプ部3bの方向に、取付前位置から取付位置へとスイベル軸心Sを中心としてスイベル方向Rに沿って変位される。
【0034】
取付位置において、2つのクランプ部3aおよび3bを互いに対して誤った位置に配置することを回避して、ねじ5及びヘリカルギア4によるねじ結合を実現できるように、外側のクランプ部3aは内側のクランプ部3bに対して適切に整合される。
【0035】
したがって、ウィンドウガラスFを取り付ける際に外側のクランプ部3aを他方の内側のクランプ部3bの方向にピボットさせるために、ガラスホルダー3の軸受部30によって一種のレバー機構がキャリア1に設けられている。このため、定められたスイベル軸心Sの領域において軸受部30が選択的に変形可能になっているので、外側のクランプ部3bは大きな費用をかけて支持される必要はない。ウィンドウガラスFを挿入したときにピボットピン301を変位させることによって外側のクランプ部3aをピボット可能とすることは、ガラスホルダー3の形状および材料のみによって実現される。
【0036】
図9A,
図9Bおよび
図9Cには、ガラスホルダー3、すなわちこのガラスホルダー3が形成されたキャリア1の更なる実施形態を異なる視点からみたときの図が示されている。
図9Aから
図9Cにおいて、キャリア本体2は図示されていない。
【0037】
図9Aから
図9Cの実施形態においても、外側のクランプ部3aを確実にピボット可能にするために、軸受ブラケット300およびピボットピン301を有する軸受部30が設けられている。
図1から
図8の実施形態とは対照的に、軸受部30の軸受ブラケット300の底部は剛性が低く形成されているので、そのガラス下縁Uで隙間gに挿入されたウィンドウガラスFがスイベル軸心Sの下方でピボットピン301を変位させ、それにより外側のクランプ部3aがスイベル方向Rに沿って対向する内側のクランプ部3bの方向に変位されたとき、この底部、したがって軸受部300が弾性変形可能である。
【0038】
図10Aおよび
図10Bには、提案されるキャリア1の更なる実施形態の2つの異なる図が示されており、この実施形態では、ガラスホルダー3がキャリア本体2にモールドされている。キャリア本体2の案内部20および連結部21は、ガラスホルダー3の一方の(固定された)クランプ部3bの側方に配置されており、このクランプ部と一体形成されている。さらに、他方のクランプ部3aをピボット取付する(schwenkbaren Lagerung)ピボットピン301を有する軸受部30の軸受ブラケット300と、他方のクランプ部3aとはキャリア本体2に一体モールドされている。よって、
図10Aおよび
図10Bの実施形態において、キャリア本体2とガラスホルダー3とは一体形成されており、これにより同一の材料から形成されている。
【0039】
一方、
図11Aおよび
図11Bに示される更なる実施形態において、キャリア1は多部品設計のものである。この実施形態において、キャリア1は2つの部品から構成され、1つは一体形成された(固定の)クランプ部3bを有するキャリア本体2であり、もう1つはキャリア本体2に取り付けられた更なる部品であって、軸受ブラケット300を有する軸受部30と、ピボットピン301がその上に形成されたピボット可能なクランプ部3aとを含む部品である。軸受部30とピボット可能なクランプ部3aとを有する二部品キャリア1の第2の部品は、それに応じてガラスホルダー3の2つのクランプ側部のうちの一方を形成している。ピボット自在なクランプ部3aを有するこの部品は、クランプ部3bと一体形成されたガラスホルダー3の他方のクランプ側部を有するキャリア本体2とは別体に(場合によっては別の材料から)形成されている。
【0040】
この実施形態において、キャリア1に連結されるウィンドウガラスFのための隙間gは、キャリア1の部品を組み立てるだけで、よって、それぞれクランプ部3a,3bの一方を備える2つの部品を結合するだけで実現される。ピボット自在なクランプ部3aを有する部品をキャリア本体2に連結するために、
図11Aおよび
図11Bに示される実施形態のキャリア本体2には、複数の突出する連結ピン23aおよび23bが形成されている。これらの連結ピン23aおよび23bは、キャリア1が適切に組み立てられたとき、軸受部30の底部領域に形成された連結開口に係合する。したがって、キャリア本体2と、ピボット自在なクランプ部3と、軸受部30を含むキャリア1の部分とを別個に製造し、その後で結合してキャリア1を製造することが可能である。このとき、それぞれクランプ部3aおよび3bを備えるキャリア1の2つの部品の連結は、連結ピン23aおよび23bといった互いに形状係合する要素を連結することによって実現される。代替的または付加的に、別体で製造された部品を接着結合することも可能である。
【0041】
原則として、ウィンドウリフタは、図示されたキャリア1のうちの少なくとも1つを備えることが可能である。互いに横方向に離間した2つのガイドレール上で2つのキャリア1がシフト可能に保持される2ストランド型のウィンドウリフタの一実施形態において、異なる設計のキャリア1を設けることも可能である。特に、そうした2ストランド型のウィンドウリフタにおいて、第1ガイドレールには、キャリア本体2に固定されたガラスホルダー3を有する
図1から
図8または
図9Aから
図9Bに係るキャリア1を配置し、他方の第2ガイドレールには、少なくとも一方のクランプ部3aがキャリア本体2にモールドされ、これによりキャリア本体2の一体部品である
図10Aから
図10Bまたは
図11Aから
図11Bの実施形態のいずれかに係るキャリア1を配置することが可能である。したがって、このような2ストランド型のウィンドウリフタにおいて、提案されるキャリアの異なる実施形態を互いに組み合わせることが可能である。
以下、本発明に含まれる実施態様を記す。
〔態様1〕車両用ウィンドウリフタに用いられるキャリアであって、
ガラスホルダー(3)を備え、
前記ガラスホルダー(3)が2つの対向するクランプ部(3a,3b)を有し、前記クランプ部(3a,3b)の間に、ウィンドウガラス(F)の一部を収容するための隙間(g)が設けられており、前記クランプ部(3a,3b)は、前記ウィンドウガラス(F)が前記隙間(g)に挿入されたとき、少なくとも1つの締結要素(5)を介して互いに連結されるように構成されている、キャリアにおいて、
前記ガラスホルダー(3)は、一方の前記クランプ部(3a,3b)のための軸受部(30)を形成しており、
前記軸受部(30)に、前記一方のクランプ部(3a)のためのスイベル軸心(S)が定められ、かつ前記隙間(g)に突出するスイベル要素(301)が設けられており、
前記スイベル要素(301)によって、前記一方のクランプ部(3a)は、前記ウィンドウガラス(F)を前記隙間(g)に挿入することで前記スイベル軸心(S)を中心として他方の前記クランプ部(3b)の方向にピボット可能であることを特徴とするキャリア。
〔態様2〕態様1に記載のキャリアにおいて、前記スイベル軸受要素(301)は前記軸受部(30)にモールドされていることを特徴とするキャリア。
〔態様3〕態様1または2に記載のキャリアにおいて、前記スイベル軸受要素(301)は、前記クランプ部(3a,3b)の間に形成された前記隙間(g)に前記ウィンドウガラス(F)を挿入したとき、前記軸受部(30)の弾性変形および/または塑性変形によって、前記一方のクランプ部(3a)を前記他方のクランプ部(3b)の方向にピボットさせるように構成されていることを特徴とするキャリア。
〔態様4〕態様1から3のいずれか一項に記載のキャリアにおいて、前記ウィンドウガラス(F)を前記隙間(g)に適切に挿入することができる挿入方向(E)からみて、前記スイベル要素(301)は前記スイベル軸心(S)の下方に配置されていることを特徴とするキャリア。
〔態様5〕態様1から4のいずれか一項に記載のキャリアにおいて、前記軸受部(30)に、切欠き(3000)を形成する軸受ブラケット(300)が形成されており、前記スイベル軸受要素(301)が前記切欠き(3000)内に配置されていることを特徴とするキャリア。
〔態様6〕態様1から5のいずれか一項に記載のキャリアにおいて、前記クランプ部(3a,3b)の両方に、前記締結要素(5)のための締結開口(35a,35b)が設けられていることを特徴とするキャリア。
〔態様7〕態様1から6のいずれか一項に記載のキャリアにおいて、前記締結要素(5)がねじ(5)であることを特徴とするキャリア。
〔態様8〕態様1から7のいずれか一項に記載のキャリアにおいて、前記キャリア(1)がキャリア本体(2)を備え、前記キャリア本体(2)に、前記ガラスホルダー(3)の少なくとも一部が固定されており、前記キャリア本体(2)が、前記車両用ウィンドウリフタのガイドレール上で前記キャリア(1)をシフト可能に案内する案内部(20)を有することを特徴とするキャリア。
〔態様9〕ウィンドウガラスを調節する車両用ウィンドウリフタであって、態様1から8のいずれか一項に記載のキャリア(1)を備える車両用ウィンドウリフタ。
〔態様10〕車両用ウィンドウリフタに用いられるキャリア(1)にウィンドウガラス(F)を取り付ける方法であって、
前記キャリア(1)に前記ウィンドウガラス(F)を適切に取り付けるために、前記キャリア(1)の2つのクランプ部(3a,3b)の間に形成された隙間(g)に前記ウィンドウガラス(F)の一部を挿入し、
その後、少なくとも1つの締結要素(5)を介して前記2つのクランプ部(3a,3b)を互いに連結して、前記クランプ部(3a,3b)の間に収容された前記ウィンドウガラス(F)の前記一部を前記キャリア(1)に固定する方法において、
前記キャリア(1)の軸受部(30)に、一方の前記クランプ部(3a,3b)のためのスイベル軸心(S)を定め、前記ウィンドウガラス(F)を前記隙間(g)に挿入することで、前記一方のクランプ部(3a)を、前記スイベル軸心(S)を中心として他方の前記クランプ部(3b)の方向にピボットさせることを特徴とする方法。
〔態様11〕態様10に記載の方法において、前記隙間(g)に挿入された前記ウィンドウガラス(F)の前記一部が前記隙間(g)に突出する前記軸受部(30)のスイベル要素(301)に作用し、これにより、前記一方のクランプ部(3a)が前記他方のクランプ部(3b)の方向にピボットされることを特徴とする方法。
〔態様12〕態様10または11に記載の方法において、態様1から8のいずれか一項に記載のキャリア(1)を用いることを特徴とする方法。
【符号の説明】
【0042】
1 キャリア
2 キャリア本体
20 案内部
21 連結部
22 ストップ部
23 保持部
23a,23b 連結ピン
3 ガラスホルダー
3a,3b クランプ部
30 軸受部
300 軸受ブラケット
3000 切欠き
301 ピボットピン(スイベル要素)
32 連結部
35a,35b ねじ開口(締結開口)
4 ヘリカルギア
5 ねじ(締結要素)
E 挿入方向
F ウィンドウガラス
g 隙間
R スイベル方向
S スイベル軸心
U ガラス下縁