(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
可動部を備えた人形体のうち、特に男の子に人気なのが、マンガや、アニメ、特撮映画、ゲーム、小説、など(以下、総括して「原作」と呼ぶ。)に登場する変身ヒーローや、兵士、大型人型ロボット、などのキャラクタを再現した人形体である。
【0005】
ユーザは、原作に登場するキャラクタの人形体を購入すると、是非とも原作で見たポーズと同じポーズをさせてみたいと思う。しかし、原作に登場するキャラクタの人形体に原作通りのポーズを取らせるには可動部の可動範囲が狭く、ポーズの再現が不完全となる場合が往々にしてあった。ユーザの立場からすると、可動部のフレキシビリティが不十分であるため、原作のポーズに近づけようとしても無理があり、残念な感覚を抱く場合があった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、可動部のフレキシビリティ性を向上させることができる人形体の関節構造に関する技術を実現すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様は、人形体の第1部位と第2部位との間に介在する関節構造であって、前記第1部位に直接的又は間接的に接続された第1リンクと、前記第2部位に直接的又は間接的に接続された第2リンクと、前記第1リンクおよび前記第2リンクそれぞれの端部の一方同士を連結する第3リンクおよび他方同士を連結する第4リンクと、を備え、前記第1〜第4リンクは、各端部がボールジョイントにより連結された四節リンク機構である、関節構造である。
【0008】
また、前記関節構造は、前記第1リンクの端部が、ボール部を有し、前記第2リンクの端部が、ボール部を有し、前記第3リンクの両端部が、前記第1リンクおよび前記第2リンクそれぞれの端部の一方のボール部を収容するソケット部を有し、前記第4リンクの両端部が、前記第1リンクおよび前記第2リンクそれぞれの端部の他方のボール部を収容するソケット部を有する、としてもよい。
【0009】
また、前記関節構造は、一端部が前記第1リンクの中央部に連結され、他端部が前記第1部位に連結された第5リンク、を更に備え、前記第5リンクの一端部と前記第1リンクの中央部とは、ボールジョイントにより連結された、構成としてもよい。
【0010】
また、前記関節構造は、前記第5リンクの一端部が、ボール部を有し、前記第1リンクの中央部が、前記第5リンクの一端部のボール部を収容するソケット部を有する、としてもよい。
【0011】
また、前記関節構造は、前記第1リンクが、一方および他方の端部を結ぶ軸を中心とした傾斜が可能であり、前記第2リンクが、一方および他方の端部を結ぶ軸を中心とした傾斜が可能であり、前記第1リンクの中央部に設けられたソケット部が、前記第1リンクの一方および他方の端部の中心から前方向又は後方向にずれた位置に設けられ、前記第1部位が、前記第1リンクの傾斜および前記第2リンクの傾斜によって、前記第2部位に対する第1の相対傾斜角度に変更可能であり、前記第1リンクの傾斜および前記第2リンクの傾斜並びに前記ボールジョイントの可動域によって、前記第1の相対傾斜角度より大きい第2の相対傾斜角度に変更可能である、構成としてもよい。
【0012】
また、前記関節構造は、前記四節リンク機構が、前記第1リンクが前記人形体の左右方向に沿った上辺、前記第2リンクが前記人形体の左右方向に沿った下辺となる四辺形形状である、としてもよい。
【0013】
また、前記関節構造は、前記第2リンクの中央部と前記第2部位とを連結する第6リンク、を更に備えた構成としてもよい。
【0014】
また、前記関節構造は、前記第1部位が、前記人形体の胴体を構成する上方の部位であり、前記第2部位が、前記人形体の胴体を構成する下方の部位である、としてもよい。
【0015】
また、別の態様は、第1部位と、第2部位と、前記第1部位と前記第2部位との間に介在する前記関節構造と、を具備した人形体である。
【0016】
前記人形体は、前記第1部位、前記第2部位および前記関節構造の何れにも固定されておらず、前記関節構造を周方向にカバーする外殻パーツ、を更に具備した構成としてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、可動部のフレキシビリティ性を向上させることができる人形体の関節構造に関する技術を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明を適用した実施形態の一例である人形体2の直立姿勢における正面外観図である。なお、各図に示した矢印による方向表記は、人形体2にとっての上下(Y軸方向;正方向が上)、前後(Z軸方向;正方向が前)、左右(X軸方向;正方向が左)の方向を示している。以降の説明における方向はこれに基づくものとする。
【0020】
人形体2は、マンガや、アニメ、特撮映画、ゲーム、小説などを原作とするキャラクタを立体造形物として再現した玩具である。本実施形態の人形体2は、人型ロボットを模したデザインを有し、部位別のパーツを組み付けて作られる玩具である。
【0021】
人形体2のパーツには、頭部21、胴部23、腕部25、脚部27、がある。
人形体2の基本的な形態は、胴部23を中心に、その上部に一つの頭部21があり、左右側部にそれぞれ腕部25があり、下部に2本の脚部27がある人を模した形態である。この形態に加えて、人形体2には、背部に背嚢的な付属物(例えば、ロボット兵器であれば背部バーニア)を付属させたり、背部に翼を設けたり、尻尾を取り付ける等しても構わない。何れも、本実施形態の人形体2の基本的な形態を有しており、本実施形態の人形体ということができる。
【0022】
さて、人形体2の構造の中心となる胴部23は、更に、第1部位(上方部位)である胸部231と、腹部の外殻パーツ233(233u,233d)と、第2部位(下方部位)である腰部235と、を有する。
【0023】
図2は、人形体2の胴部23の周りを抜き出して描いた部分カット図であって、外殻パーツ233の前面側をカットして描いた図である。
人形体2の腹部は、上部外殻パーツ233uと、下部外殻パーツ233dとを有している。上部外殻パーツ233uは、上端部が胸部231の下面に設けられた窪み内に遊嵌され、下端部が下部外殻パーツ233dの上端部を覆うように被さっている。下部外殻パーツ233dは、下端部が腰部235の上面に設けられた窪みに遊嵌されている。
【0024】
上部外殻パーツ233uおよび下部外殻パーツ233dは、筒状の形状となっており、人形体2の腹部には上下に連通した空間が画成されている。そして、この空間内に、胸部231と腰部235とを相対位置可変に連結する関節構造100が収容されている。つまり、上部外殻パーツ233uと、下部外殻パーツ233dは、胸部231(第1部位)、腰部235(第2部位)および関節構造100の何れにも固定されておらず、関節構造100を周方向にカバーしている。
【0025】
図3は、関節構造100の斜視外観図である。
図4は、関節構造100の分解斜視図である。関節構造100は、第1リンク110と、第2リンク120と、第3リンク130と、第4リンク140と、第5リンク150と、第6リンク160と、を備える。
【0026】
第1リンク110は、第5リンク150を介して第1部位である胸部231に間接的に接続されるリンクである。第1リンク110は、横向き(左右方向)に直状を成した基部111の両端(左右端部)にボール部112を有し、基部111の中央から後方へ上方ボールジョイント170のソケット部113が延設されている。ソケット部113は、第1リンク110の基部111の左右端部の中心から後方にずれた位置に設けられている。
【0027】
なお、基部111と、ソケット部113との位置関係は、人形体2のデザインによって適宜変更可能である。例えば、ソケット部113は、基部111の前方にずれた位置であったり、前方や後方のみならず上方にもずれた斜め上や斜め下など、他の方向にずれた位置であってもよい。
【0028】
第2リンク120は、第6リンク160を介して第2部位である腰部235に間接的に接続されるリンクである。第2リンク120は、横向き(左右方向)に直状を成した基部121の両端(左右端部)にボール部122を有し、基部121の中央下部に、揺動軸180の軸受部123を有する。
【0029】
第3リンク130と第4リンク140は、互いに左右対称の部品である。
第3リンク130は、第1リンク110および第2リンク120それぞれの左右端部の一方同士を連結するリンクである。第3リンク130は、上端部に、第1リンク110の一方側のボール部112を収容するソケット部131を有し、下端部に、第2リンク120の一方側のボール部122を収容するソケット部132を有する。
【0030】
第4リンク140は、第1リンク110および第2リンク120それぞれの左右端部の他方同士を連結するリンクである。第4リンク140は、上端部に、第1リンク110の他方側のボール部112を収容するソケット部141を有し、下端部に、第2リンク120の他方側のボール部122を収容するソケット部142を有する。
【0031】
第5リンク150は、一端部(
図4の例では下端部)が第1リンク110の基部111の左右中央部に連結され、他端部が胸部231(第1部位)に連結されたリンクである。
第5リンク150の一端部は、上方ボールジョイント170のボール部151であり、第5リンク150と第1リンク110の基部111の左右中央部とは、上方ボールジョイント170により連結される。そして、第5リンク150の他端部(
図4の例では上端部)は、胸部231を揺動可能に連結する揺動軸の軸受152を有している。
【0032】
第6リンク160は、第2リンク120の基部121の左右中央部と腰部235(第2部位)とを連結するリンクである。具体的には、第6リンク160は、第2リンク120の軸受部123に挿入される前後軸161と、腰部235の上面の窪みに設けられた軸受に挿通される上下軸162と、これら両軸の端部同士を連結する基部163と、を有する。
【0033】
よって、関節構造100では、第1リンク110と、第2リンク120と、第3リンク130と、第4リンク140と、第5リンク150とは、隣接するリンク同士がボールジョイントで連結されている。
【0034】
図5〜
図7は、関節構造100の左右方向の動作例を示しており、図の番号順に状態が遷移している。
【0035】
図5は、人形体2が直立している状態における関節構造100の正面図であって、標準状態に相当する。
標準状態の関節構造100では、各ボールジョイントは、何れも可動範囲の中央位置にある。この状態で関節構造100を正面視すると、第1リンク110の2つのボール部112を結ぶ線は左右方向に沿っており、第2リンク120の2つのボール部122を結ぶ線は左右方向に沿っている。第3リンク130と第4リンク140は、ともに長手方向が上下に沿っている。言い換えると、標準状態において、第1リンク110〜第4リンク140の4つのリンクを正面視すると、第1リンク110が人形体2の左右方向に沿った上辺となり、第2リンク120が人形体2の左右方向に沿った下辺となる四辺形形状を成した四節リンク機構を形成している。
【0036】
また、標準状態において正面視すると、第5リンク150と第6リンク160は、左右中央線L1に沿って一直線状となる。左右中央線L1は、人形体2の正中線の前方投影線に相当する。また、第5リンク150の軸受152は軸挿通孔を前後に向けた状態にあり、第6リンク160の前後軸161も軸挿通孔を前後に向いた状態にある。
【0037】
ここで、第2リンク120を、揺動軸180(前後軸161+軸受部123)で、人形体2にとっての左方へ揺動させると、四節リンク機構が左方に斜めに傾く。この傾きに対して、第5リンク150を上下方向に立設させるように上方ボールジョイント170(
図3参照)で動かして立てると
図6のようになる。第5リンク150は、左右中央線L1より人形体2にとっての左方に横ずれしたような位置に変位したことになる。
【0038】
第2リンク120と第3リンク130とのボールジョイント連結、並びに第2リンク120と第4リンク140とのボールジョイント連結に着目すると、
図6の状態においてもまだ可動域を残している。そこで、第2リンク120をこの残っている可動域分だけ左方へ更に傾かせ、この傾き分だけ、第5リンク150を上方ボールジョイント170で動かして立てると、
図7のようになる。第5リンク150は、
図6の状態よりも更に左右中央線L1より左方に横ずれした位置に変位したことになる。
【0039】
人形体2に、
図5〜
図7で示したような関節構造100の動きをさせると、人形体2は、腰部235の位置はそのままに胸部231を左方にずらした姿勢に変化する。外殻パーツ233は、他のパーツに固定されずに関節構造100の周りをカバーしているので、胸部231と上部外殻パーツ233uとの隙間や、上部外殻パーツ233uと下部外殻パーツ233dとの隙間、下部外殻パーツ233dと腰部235との隙間、の範囲内で、相互に接触しつつも、適当な姿勢・適当な位置に移動する。結果、胴部23としての連なったイメージを損なうことなく上半身を横にずらすアイソレーションが実現できる。
【0040】
上半身を横にずらすアイソレーションは、従来の人形体2では実現できなかった。こうした人形体2の可動部のフレキシビリティ性の向上は、人形体2で人間のような自然なポーズを実現する一助となる。
【0041】
図8は、関節構造100の左右の捻り動作例を示す正面図である。
先に述べたように、第2リンク120と第3リンク130とのボールジョイント連結、並びに第2リンク120と第4リンク140とのボールジョイント連結に着目すると、
図5に示す標準状態では十分な可動域がある。そこで、
図8のように、第2リンク120の姿勢はそのままに、第3リンク130と第4リンク140とを、可動域の範囲内だけ捻ることができる。
図8では、人形体2にとっての右方へ捻っている例を示している。
【0042】
関節構造100が左右に捻られると、人形体2は上半身を捻っている状態になる。上半身の捻りは、関節構造100を、第6リンク160の上下軸162で動かすことでも実現できる。しかし、人形体2のデザイン上の要求から下部外殻パーツ233dと腰部235との隙間が制約され、上下軸162の可動範囲は狭くなりがちである。しかし、
図8で示したような、胴体に位置する関節構造100の捻りによって、上下軸162の可動範囲を超えた捻りを実現できる。こうした人形体2の可動部のフレキシビリティ性の向上は、人形体2で人間のような自然なポーズを実現する一助となる。
【0043】
図9〜
図12は、関節構造100の後方への反り動作の一例を示しており、図の番号順に状態が遷移している。
図9は、人形体2が直立している状態における関節構造100の(人形体2にとっての左方から見た)側面図であって、
図5に示した標準状態に相当する。この状態から、第2リンク120の自転軸(2つのボール部122の中心同士を結ぶ線L2;
図3参照)で関節構造100の上部を後方へ動かすと、
図10のようになる。
【0044】
更に、第1リンク110の自転軸(2つのボール部112の中心同士を結ぶ線L3;
図3参照)で、第1リンク110の基部111ごと第5リンク150もろとも後方へ揺動すると、
図11のようになる。この状態を人形体2としてみれば、胸部231(第1部位)は、第1リンク110の自転傾斜および第2リンク120の自転傾斜によって、腰部235(第2部位)に対して第1の相対傾斜角度θ1だけ相対姿勢が傾斜したことになる。
【0045】
また更に、第5リンク150を、上方ボールジョイント170の可動範囲の限界まで後方へ揺動させると、
図12のようになる。この状態を人形体2としてみれば、胸部231(第1部位)は、第1リンク110の自転傾斜および第2リンク120の自転傾斜並びに上方ボールジョイント170の可動域によって、腰部235(第2部位)に対して第1の相対傾斜角度θ1より大きい第2の相対傾斜角度θ2まで相対姿勢が変化可能であることになる。
【0046】
関節構造100が後方へ反ることで、人形体2も後方へ反ることとなる。一つの揺動軸で後方へ反る構成よりも、関節構造100のように複数のボールジョイントによって段階的に後方へ反ることが可能であり、且つ、反る範囲(後傾の範囲)が広がることで、人形体2により自然なポーズやダイナミックなポーズを取らせることが可能になる。
【0047】
なお、
図5〜
図7で説明した左右方向へのアイソレーションと、
図8で説明した捻りと、
図9〜
図12で説明した反りと、は適宜組み合わせることができる。
【0048】
〔変形例〕
本発明を適用可能な実施形態は、上記の例に限らず、適宜構成要素の追加・省略・変更が可能である。
【0049】
(変形例その1)
例えば、上記実施形態では関節構造100の第1リンク110は、第5リンク150を介して間接的に胸部231(第1部位)に連結する構成としていたが、直接的に胸部231に連結する構成であってもよい。具体的には、
図13の関節構造100Bで示すように、上方ボールジョイント170を省略して、上記実施形態の第1リンク110の基部111の左右中央に上記実施形態の第5リンク150を合体させた第1リンク110Bを用いる構成としてもよい。
【0050】
同様に、第2リンク120は、第6リンク160を介して間接的に腰部235(第2部位)に連結する構成としていたが、第6リンク160を省略して、第2リンク120が直接的に腰部235に連結する構成も可能である。具体的には、例えば、第6リンク160の前後軸161と基部163とを腰部235の上部構造とすることで実現できる。
【0051】
(変形例その2)
また、上記実施形態では、関節構造100を人形体2の胴部23に用いる構成としたが、人形体2の他の部位の連結に用いることができるのは勿論である。例えば
図14の関節構造100に示すように、人形体2の首の関節に用いることもできる。この場合、関節構造100は、頭部21(第1部位)と胴部23(第2部位)との間に介在し、その外周部を、首の表面に相当する複数の外殻パーツ233Cでカバーすることになる。同様にして、肩・肘・膝・足首・尻尾などその他の関節部にも適用できる。
【0052】
連結する部位の人形体2における位置関係によっては、関節構造100を上記実施形態の標準姿勢から横向きに設けたり、逆さまに設けたり、その他の姿勢で設けるとしても構わない。
【0053】
(変形例その3)
また、可動玩具の例として、人形体2を例示したが、本発明の関節構造100が適用可能な可動玩具は、人型に限らず動物(実在・架空を問わない。)の関節部にも同様に適用することができる。
【解決手段】人形体2は、胴部23に関節構造100を内蔵する。関節構造100は、胸部231(第1部位)に横向きの第1リンクと、腰部235(第2部位)に接続された横向きの第2リンクと、第1リンクおよび第2リンクそれぞれの左右端部の一方同士を連結する第3リンクおよび他方同士を連結する第4リンクと、を備える。第1リンク0〜第4リンクは、各端部がボールジョイントにより連結された四節リンク機構を成している。