(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記弾性体はコイルバネであり、前記回り止め手段は、前記コイルバネの一端部をコイルの円周から内側に曲げた第1の曲げ部と、前記コイルバネの他端部をコイルの円周から外側に曲げた第2の曲げ部とを有することを特徴とする請求項5に記載のソレノイドバルブ。
【背景技術】
【0002】
従来より、加圧流体の流路を開閉するバルブとして、電磁ソレノイドを用いた2方弁、3方弁などが広く用いられている。このようなソレノイドバルブの1つとして、例えば特許文献1には、高圧洗浄装置や高圧流体供給装置等に利用される加圧流体用途に用いられる流体供給バルブなどに適用可能な2方弁が開示されている。
【0003】
この特許文献1に開示されているソレノイドバルブをはじめとする従来の一般的な2方弁の構造について、
図6、
図7を参照して説明する。
【0004】
図6及び
図7は、従来のソレノイドバルブ1000の構成を示す側断面図である。
図6は、ソレノイドバルブ1000が閉じた状態を示し、
図7は、ソレノイドバルブ1000が開いた状態を示している。
【0005】
図6において、ソレノイドバルブ1000は、中央を貫通するシャフト状のステム1001を有する。ステム1001に形成された弁体1003がシール部材1005に対して圧縮コイルバネ1007の力で押し付けられることにより、入口ポート1009から出口ポート1011に至る経路が閉じられ、ソレノイドバルブ1000は閉止状態に保たれる。一方、コイル1013に通電することにより、
図7に示すように、コイル1013により磁性体からなる傘状可動コア1015がギャップdの分だけ引き寄せられる。それに伴って棒状可動コア1017が圧縮コイルバネ1007の力に抗してステム1001を押し下げ、弁体1003がシール部材1005から離れる。これにより、入口ポート1009から出口ポート1011に至る経路が開き、ソレノイドバルブ1000は開状態となる。傘状可動コア1015とカバー1025の間には弱い圧縮コイルバネ1023が配置され、傘状可動コア1015の振動を抑制する働きをする。
【0006】
なお、圧縮コイルバネ1007の組み込み長が調整ネジ1019を回転させることにより調整され、弁体1003をシール部材1005に押し付ける力が調整される。また、調整ネジ1021を回転させることにより、傘状可動コア1015とコイル1013の間のギャップdの大きさが調整され、ソレノイドバルブ1000の開閉動作が安定化される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のソレノイドバルブの一実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1及び
図2は、本発明の一実施形態のソレノイドバルブ100の構成を示す側断面図である。
図1は、ソレノイドバルブ100が閉じた状態を示し、
図2は、ソレノイドバルブ100が開いた状態を示している。ソレノイドバルブ100は、例えば、高圧洗浄装置や高圧試験装置などに利用する加圧流体に用いられる供給バルブなどに使用可能な液体や気体などを流通させる2方弁である。但し、本発明は、2方弁に限らず3方弁にも適用可能である。
【0016】
図1において、ソレノイドバルブ100は、大きく分けてバルブの本体を構成するハウジング1と、ハウジング1に対してボルトなどにより固定されバルブの開閉駆動を行う電磁駆動部2とを備える。
【0017】
ハウジング1は、アルミニウムなどの金属を加工して形成され、内部に弁の開閉を行うシャフトであるステム11が挿通されるトンネル状の貫通穴13が形成されている。この貫通穴13の内部を液体あるいは気体などの流体が流れ、ステム11の動きにより、この流れの開閉が行われる。
【0018】
ハウジング1の側部には、貫通穴13内に流体が流入する入口ポート15と、貫通穴13内から流体を流出させる出口ポート17が形成されている。入口ポート15及び出口ポート17の内側面には雌ネジが形成されており、この部分に流体の供給源および供給先との間で接続パイプを固定するための継手19,21が捩じ込まれて固定されている。
【0019】
ステム11の中間部には、ステム11の中心軸に沿う方向(
図1では上下方向)の両側に円錐状のテーパ面11a,11bを有する弁体11cが形成されている。ステム11は、詳細は後述するが、電磁駆動部2により、矢印Aで示すように図中上下方向にスライド可能である。そして、このステム11が上側に移動して、
図1に示すように弁体11cの上側のテーパ面11aが貫通穴13に装着された環状のシール部材23に圧接されることにより、入口ポート15から出口ポート17へと流れる流体の流れが遮断される。つまり、ソレノイドバルブ100が閉じた状態となる。一方、ステム11が下側に移動すると、弁体11cの上側のテーパ面11aが、シール部材23から離れ、シール部材23と弁体11cとの間に隙間25が形成される。これにより、流路が形成され、入口ポート15に供給された流体が、隙間25を通って出口ポート17へと流れ、ソレノイドバルブ100が開いた状態となる。
【0020】
以上が本実施形態のソレノイドバルブの概略的な構造である。
【0021】
次に、ステム11を電磁駆動部2により矢印Aで示す上下方向にスライドさせる機構について説明する。
【0022】
図1において、ステム11の上側の端部には、シール用のOリング27が装着された第1のピストン29が形成されている。第1のピストン29は、貫通穴13の上部13aの内側をスライドする。また、ステム11の下側の端部には、シール用のOリング31が装着された第2のピストン33が形成されている。貫通穴13の下部13bには、シール用のOリング35が装着されたガイド部材37が配置されており、第2のピストン33は、このガイド部材37の内側をスライドする。
【0023】
ガイド部材37は、シール部材23に対してスリーブ39を介して配置されている。ハウジング1の下部には、雌ネジ41が形成されており、この部分にガイド部材37を固定するための固定ネジ43が捩じ込まれる。固定ネジ43は、雌ネジ41に捩じ込まれることにより、ガイド部材37、スリーブ39、シール部材23を、ハウジング1に形成された段部1aに押し付けて固定する。
【0024】
固定ネジ43の内側には円筒状の空間43aが形成されており、この円筒状の空間43aには、圧縮コイルバネ45が配置されている。固定ネジ43は、弾性体である圧縮コイルバネ45を位置決めするケース部材として機能する。圧縮コイルバネ45は、固定ネジ43の内側底面43bに対してステム11の第2のピストン33の下面を押し上げる方向に付勢している。そのため、電磁駆動部2の力が働いていない自然状態においては、ステム11は、圧縮コイルバネ45の力により図中上側に押し上げられている。結果として、この圧縮コイルバネ45の力により、弁体11cがシール部材23に押し付けられ、ソレノイドバルブ100を閉止させる力が発生する。従って、本実施形態のソレノイドバルブ100は、自然状態で閉じているノーマルクローズの2方弁である。なお、圧縮コイルバネ45の下面と固定ネジ43の内側底面43bの間には円環状のスペーサ46が挟まれて配置されている。このスペーサの役割については後述する。
【0025】
一方、電磁駆動部2は、導線51がコイル状に巻き回された、鉄などの磁性体からなる固定コア53を有する。固定コア53は、詳細は後述するが、スペーサ54を介してハウジング1に対してボルトなどにより固定されている。固定コア53の中央には、固定コア53を上下方向に貫通する貫通穴53aが形成されている。固定コア53の貫通穴53aには、ステム11の第1のピストン29の上面を押し下げるための非磁性体からなる棒状可動コア55が挿入されている。そして、棒状可動コア55の上端部には、導線51に通電されたときに固定コア53に生じる磁力により引き付けられる、磁性体からなる傘状可動コア57が圧入により固定されている。棒状可動コア55の上端部には、雌ネジ55aが形成されており、この雌ネジ55aにボルト58を捩じ込むことにより、圧縮コイルバネ59の底面を受けるための受け座61を固定する。
【0026】
なお、傘状可動コア57の下面57aと固定コア53の上面53bの間には、ギャップdが形成されており、導線51に通電されると、傘状可動コア57は固定コア53に吸着され、このキャップdの距離だけ下方に移動する。電磁駆動部2の傘状可動コア57を引き付ける力は、下側の圧縮コイルバネ45の圧縮力よりも大きく設定されている。そのため、導線51に通電されると、傘状可動コア57が圧縮コイルバネ45の力に打ち勝ってギャップdの距離だけ下方に移動し、棒状可動コア55がステム11をギャップdの距離だけ押し下げる。これにより、弁体11cがシール部材23から離間され、ソレノイドバルブ100は開いた状態となる。
【0027】
電磁駆動部2の固定コア53の外側には、この電磁駆動部2を覆うように、有底円筒状のカバー(カバー部材)63が装着され、ビス65などにより固定コア53に対して固定されている。圧縮コイルバネ59は、カバー63に対して傘状可動コア57を、下側の圧縮コイルバネ45が押し上げる力よりも弱い力で下側に付勢している。つまり、圧縮コイルバネ59は圧縮コイルバネ45の付勢方向とは逆方向の弱い力を傘状可動コア57に作用させている。これにより、圧縮コイルバネ59は、圧縮コイルバネ45の力に打ち勝って傘状可動コア57を押し下げることなく、傘状可動コア57が振動することを防止している。
【0028】
ここで、上記の圧縮コイルバネ59について、もう少し詳しく説明する。
図3A−3Cは、電磁駆動部2の圧縮コイルバネ59が装着されている部分を抜き出して示した図である。
図3Aは、傘状可動コア57に受け座61を介して装着された圧縮コイルバネ59を斜め上から見た図であり、
図3Bは、圧縮コイルバネ59を側方から見た図である。また、
図3Cは、圧縮コイルバネ59を組み付ける様子を示す図である。
【0029】
図3A−3Cにおいて、圧縮コイルバネ59は、低部の直径が大きく、上方に行くにつれて直径が小さくなるように、概略円錐状に巻かれて形成されている。この円錐状の頂部に当たるコイルの一端部には、コイルの円周から内側に向けて曲げられた第1の係止部59aが形成されている。一方、カバー63の天井面には、この第1の係止部59aを両側から挟むように、一対の突起部63a,63bが形成されている。
図3Bに示すように、圧縮コイルバネ59の第1の係止部59aがこの一対の突起部63a,63bに挟まれることにより、圧縮コイルバネ59は、カバー63に対する回転が阻止される。
【0030】
また、圧縮コイルバネ59の基部の端部(他端部)には、コイルの円周から外側に向けて曲げられた第2の係止部59bが形成されている。一方、板状の受け座61は、その一部が立ち曲げされており、その部分に係止孔61aが形成されている。
図3Cに示すように、圧縮コイルバネ59の第2の係止部59bがこの係止孔61aに挿入されることにより、傘状可動コア57は、受け座61を介して圧縮コイルバネ59に対する回転が防止される。
【0031】
結果として、圧縮コイルバネ59の第1及び第2の係止部59a,59b、カバー63の一対の突起部63a,63b、係止孔61aにより、傘状可動コア57がカバー63に対して、ひいては固定コア53に対して回転することが防止される。
【0032】
すでに背景技術の欄で説明したように、
図6に示す従来のソレノイドバルブ1000では、傘状可動コア1015のコイル1013(コア)に対する回転を阻止する構造が無かった。もともと、傘状可動コア1015の棒状可動コア1021の外径とコアの貫通穴の内径には棒状可動コア1021がスライドできるようにわずかな隙間があり、傘状可動コア1015がコアに対してその隙間分だけ僅かに傾くことがある。その状態で更に傘状可動コア1015がコアに対して回転すると、傘状可動コア1015とコアの間のギャップdの寸法が変動し、傘状可動コアがコアに吸引されるときの動作や吸着タイミングにばらつきが生じることがある。
【0033】
この点、本実施形態では、上記のように、圧縮コイルバネ59の第1及び第2の係止部59a,59b、カバー63の一対の突起部63a,63b、係止孔61aにより、傘状可動コア57が固定コア53に対して回転することが防止されるため、傘状可動コア57が固定コア53に吸引されるときの動作や吸着タイミングを精度良く安定して制御することが可能となる。
【0034】
また、棒状可動コア55の傘状可動コア57に圧入により固定されている根元部分は、棒状可動コア55の先端部分55bよりも太くされて拡径部55cを形成している。棒状可動コア55は、先端部分55b、拡径部55cが一体的に形成されている。このように根元部分が太く形成されていることにより、固定コア53との嵌合において同じ隙間、同じ嵌合長であれば、棒状可動コア55の固定コア53に対する傾きが小さくなる。そのため、傘状可動コア57が固定コア53に吸着される動作が安定化される。なお、固定コア53の貫通穴53aの内面の拡径部55cとの摺動面には、ニッケルメッキが施され、摺動が滑らかになるように配慮されている。
【0035】
次に、上記で述べたように、ソレノイドバルブが加圧流体の供給バルブとして用いられる場合などは、バルブの開閉のタイミングの精度は極めて高いことが必要である。そのため、従来のソレノイドバルブでは、すでに背景技術の欄で説明したように、弁体1003をシール部材1005に押し付ける圧縮コイルバネ1007の組み込み長を調整ネジ1019で調整していた。この組み込み長を調整すれば、理論上は弁体をシール部材に押し付ける力が一定になり、ソレノイドバルブの開閉のタイミングを精度良く制御できるはずである。しかしながら、実際にはこの調整は非常に繊細なものであり、複数のソレノイドバルブの特性を同じような特性に揃えることは極めて困難である。また、調整後に調整がずれてしまうこともある。結果として、従来の構造では、バルブの開閉のタイミングにある程度の誤差が生じることは避けられなかった。本実施形態では、この問題を解決する構造を用いている。
【0036】
図2に示すように、本実施形態では、調整ネジで圧縮コイルバネ45の組み込み長を調整するのではなく、まずは各部品の寸法精度を高精度に管理して製造する。そして、製造された各部品の寸法を実際に測定し、各部品の公差の積み上げにより生じたトータルの寸法誤差を、圧縮コイルバネ45の下面と固定ネジ43の内側底面(支持面)43bの間にスペーサ46を挟むことにより調整する。
【0037】
より具体的には、圧縮コイルバネ45が着座する固定ネジ43の内側底面43bからシール部材23の弁体11cが接触する面までの寸法L1は、固定ネジ43の内側底面43bから固定ネジ43の上端までの寸法と、ガイド部材37の長手方向の寸法と、スリーブ39の長手方向の寸法を加えた寸法となる。各部品の寸法を測定することによりトータルの寸法を取得する。圧縮コイルバネ45が接触する第2のピストン33の下面から弁体11cがシール部材23に接触する点までの寸法L2も測定する。そして、これらの寸法に対して、圧縮コイルバネ45の組み込み長が例えば設計値に対して0.05mm程度の誤差に収まるようにスペーサ46の厚みを調整する。
【0038】
本実施形態の場合、上記の各部品の公差を積み重ねると例えば最大0.3mm程度の寸法誤差が生ずる。そのため、スペーサとして、例えば0.05mm〜0.3mmまで、0.05mm単位で厚みの異なる6種類のスペーサを用意しておく。そして、上記のような各部品の寸法の実測値に基づき、6種類のスペーサから最適なものを選択して圧縮コイルバネ45の下面と固定ネジ43の内側底面43bの間に挿入する。このようにすれば、圧縮コイルバネ45の組み込み長を精度よく設定でき、後にこの調整が狂うこともない。
【0039】
図4は、スペーサ46の実際の形状を示す図である。
【0040】
図4に示すように、スペーサ46は、円板状の外周部46aと、上方に円柱状に突出した中央部46bとを有する。中央部46bの外周部には面取りが形成されており、圧縮コイルバネ45の内周面が嵌りやすいように考慮されている。圧縮コイルバネ45は、内周面をスペーサ46の中央部46bによりガイドされて、圧縮コイルバネ45の外周部と固定ネジ43の円筒状の空間43aとの間に隙間S1が形成されるように、円筒状の空間43a内(空間内)の中心に位置決めされる。この隙間S1は、スペーサ46の外周部46aと円筒状の空間43aとの間の空間S2より大きく設定する。このようにすると、圧縮コイルバネ45が伸び縮みする場合に、圧縮コイルバネ45の外周面と円筒状の空間43aの内周面が擦れて、力の損失やゴミが発生するようなことが防止される。高精度なソレノイドバルブにとって、ゴミは大敵であり、本実施形態のように構成することにより、効果的にゴミの発生を抑制することができる。圧縮コイルバネ45の力量の損失が生じることもない。なお、スペーサ46の中央部46bの外径を圧縮コイルバネ45の内径よりもわずかに大きくして、中央部46bを圧縮コイルバネ45の内周に軽圧入状態とすると、部品の組み込み時にスペーサ46と圧縮コイルバネ45とが一体となった状態で組み込めるため、組み立て性が向上する。
【0041】
なお、スペーサ46の中央部には貫通穴46cが形成されているとともに、固定ネジ43の底面には貫通穴43cが形成されており、円筒状の空間43a内の圧力を逃がすように構成されている。
【0042】
次に、バルブの開閉のタイミングの精度を高めるための本実施形態のさらなる構成について
図1に戻って説明する。
【0043】
図6に示す従来のソレノイドバルブでは、すでに背景技術の欄で説明したように、調整ネジ1021を回転させることにより、傘状可動コア1015とコイル1013の間のギャップdの大きさが調整され、ソレノイドバルブ1000の開閉タイミングが調整される。このギャップdの調整を行えば、理論上はソレノイドバルブの開閉のタイミングを精度良く制御できるはずである。しかしながら、やはりこの調整においても、複数のソレノイドバルブの特性を同じような特性に揃えることは極めて困難である。また、調整後に調整がずれてしまうこともある。
【0044】
図1に示すように、本実施形態では、調整ネジで傘状可動コア57と固定コア53の間のギャップdを調整するのではなく、まずは各部品の寸法精度を高精度に管理して製造する。そして、製造された各部品の寸法を実際に測定し、各部品の公差の積み上げにより生じたトータルの寸法誤差を、固定コア53の下面とハウジング1の上面の間にスペーサ54を挟むことにより調整する。
【0045】
より具体的には、弁体11cがシール部材23に接触する点から傘状可動コア57の下面57aまでの寸法L3は、弁体11cがシール部材23に接触する点から第1のピストン29の上面までの寸法と、棒状可動コア55の先端から傘状可動コア57の取り付け段部までの寸法を加えた寸法となる。各部品の寸法を測定することによりこの部分のトータルの寸法を取得する。シール部材23の下面から固定コア53の上面までの寸法も測定する。そして、これらの寸法に対して、ギャップdの寸法が例えば0.05mm程度の誤差に収まるようにスペーサ54の厚みを調整する。
【0046】
本実施形態の場合、上記の各部品の公差を積み重ねると例えば最大0.3mm程度の寸法誤差が生ずる。そのため、スペーサとして、例えば0.05mm〜0.3mmまで、0.05mm単位で厚みの異なる6種類のスペーサを用意しておく。そして、上記のような各部品の寸法の実測値に基づき、6種類のスペーサから最適なものを選択して固定コア53の下面とハウジング1の上面の間に挿入する。このようにすれば、傘状可動コア57の下面57aと固定コア53の上面とのギャップdの大きさを精度よく設定でき、後にこの調整が狂うこともない。
【0047】
以上のようにして、本実施形態では、部品の寸法精度とスペーサにより調整を行い、調整の手間を減らすとともに、調整後に調整が狂うことを防止している。
【0048】
次に、
図5A−5Dは、
図1におけるシール部材23の構造を示す図である。
【0049】
シール部材23は、弁体11cとの接触による密封性を向上させるために、一般的に例えばナイロンなどの樹脂材料により形成されている。そして、
図5Aに示すように、シール部材23の下部23aには、弁体11cのテーパ面11aが押しつけられるため、シール部材23の下部23aには、開口23bを押し広げる力(内圧)が加わる。また、シール部材23の上部23cは、外周部にシール用のOリング71が装着されるため、外側から内側に押しつぶす力(外圧)が加わる。そのため、シール部材23の密閉性を確保するために、シール部材23を補強して変形を防ぐように、シール部材23の下部には、その外周部に第1の金属リング73が装着され、シール部材23の上部には、その内周部に第2の金属リング75が配置されるのが一般的である。そして、
図5Bに示すように、金属リング73,75のシール部材23への取り付けは、従来圧入により行われていた。そのため、圧入時にシール部材23の変形や金属リングの傾きなどが生じやすく、部品の精度低下を招く場合があった。
【0050】
これに対し、本実施形態では、
図5Cに示すように、インサート成形により樹脂部分であるシール部材23と第1及び第2の金属リング73,75を一体成形して製造する。このようにすれば、圧入による変形や傾きなどが生じることなく精度の良いシール部材を製造することが可能となる。また、このシール部材23が精度よく製造できることにより、弁体11cのシール部材23との接触点の位置が精度よく決まることになり、結果として、
図1に示すギャップdの寸法が精度良く設定されることになる。結果として、固定コア53による傘状可動コア57の吸着動作が安定化し、吸着タイミングのずれ等の問題が解消される。
【0051】
また、シール部材23を一体成形する場合には、
図5Dに示すように、第1及び第2の金属リングを樹脂材料で完全に覆ってしまうことも可能である。
【0052】
以上説明したように、上記の実施形態によれば、傘状可動コアの振動を抑える圧縮コイルバネに傘状可動コアの回転を防止する回り止めを設けたことにより、傘状可動コアが電磁コイルに吸着される動作の安定性が向上される。
【0053】
また、弁体をシール部材に押し付けるバネの組み込み長をスペーサを用いて調整することにより、繊細な調整を必要とせず、バネ力を正確に調整することが出来る。また調整した後に調整がずれてしまうことも防止される。
【0054】
また、傘状可動コアとコイルの間のギャップをスペーサを用いて調整することにより、やはり繊細な調整を必要とせず、コイルが傘状可動コアを吸着する動作が安定化される。また調整した後に調整がずれてしまうことも防止される。
【0055】
また、シール部材に金属リングを一体成形することにより、圧入による部品の変形や傾きが防止され、シール部材の精度が向上される。
【0056】
さらに、棒状可動コアの根元部分に拡径部を設けることにより、棒状可動コアの傾きが小さくなり、傘状可動コアとコイル間のギャップの寸法が安定化され、吸着動作が安定化される。
【0057】
以上の実施形態の各特徴をまとめると、以下のように表現することができる。
【0058】
〔1〕弁体(11c)を押動する棒状可動コア(55)と連結される傘状可動コア(57)を駆動する電磁コイルの固定コア(53)をハウジング(1)の上に設け、固定コア(53)を覆うカバー部材(63)と傘状可動コア(57)との間にコイルバネ(59)を備えたソレノイドバルブ(100)において、コイルバネ(59)は、カバー部材(63)と傘状可動コア(57)の動きを連結する取付部を有することを特徴とするソレノイドバルブ。
【0059】
〔2〕弁体(11c)を押動する棒状可動コア(55)と連結される傘状可動コア(57)を駆動する電磁コイルの固定コア(53)をハウジング(1)に取り付けるソレノイドバルブ(100)において、棒状可動コア(55)は、固定コア(53)の内側に、弁体(11c)を押動する先端部(55b)よりも径の太い拡径部(55c)を備えることを特徴とするソレノイドバルブ。
【0060】
〔3〕弁体(11c)を押動する棒状可動コア(55)と連結される傘状可動コア(57)を駆動する電磁コイルの固定コア(53)をハウジング(1)の上に設け、弁体(11c)を上下させる弾性体(45)を収納するケース部材(43)をハウジング(1)に取り付けるソレノイドバルブ(100)において、ケース部材(43)をハウジング(1)に直接固定し、弾性体(45)の下方にスペーサ(43b)を設けたことを特徴とするソレノイドバルブ。
【0061】
〔4〕弁体(11c)を押動する棒状可動コア(55)と連結される傘状可動コア(57)を駆動する電磁コイルの固定コア(53)をハウジング(1)に取り付けるソレノイドバルブ(100)において、棒状可動コア(55)と傘状可動コア(57)とを圧入して固定し、固定コア(53)とハウジング(1)との間にスペーサ(54)を設けたことを特徴とするソレノイドバルブ。
〔5〕弁体(11c)を押動する棒状可動コア(55)と連結される傘状可動コア(57)を駆動する電磁コイルの固定コア(53)をハウジング(1)の上に設け、弾性体(45)によって上下動作する弁体(11c)の上方に設けられたシール部材(23)を備えたソレノイドバルブ(100)において、シール部材(23)は、弁体(11c)と接触する樹脂リング(23c)と、弁体(11c)と接触する部分の外側の外側金属リング(73)と、外側金属リング(73)の上方に配置されるオーリング(71)の内側に配置される内側金属リング(75)と、を組み合わせて構成され、外側金属リング(73)及び内側金属リング(75)は、樹脂リング(23c)を形成する樹脂材料により一体的に成形されていることを特徴とするソレノイドバルブ。
【0062】
上記の各特徴は、それぞれ単独であっても傘状可動コアとコイル間のギャップを安定化させることができるが、これらを組み合わせて用いることにより、さらなる吸着動作の安定化を図ることができる。特に、各部品の測定結果に基づく、上記の〔3〕と〔4〕を組み合わせるとより高い効果が得られる。
【0063】
以上の各効果により、ソレノイドバルブの開閉のタイミングを高精度に制御することが可能となる。
【0064】
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。
【0065】
本願は、2018年2月9日提出の日本国特許出願特願2018−22362を基礎として優先権を主張するものであり、その記載内容の全てを、ここに援用する。