特許第6774583号(P6774583)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6774583高精度成形解析用メッシュ作成システム、高精度成形解析用メッシュ作成方法、および高精度成形解析用メッシュ作成プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6774583
(24)【登録日】2020年10月6日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】高精度成形解析用メッシュ作成システム、高精度成形解析用メッシュ作成方法、および高精度成形解析用メッシュ作成プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/23 20200101AFI20201019BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20201019BHJP
【FI】
   G06F17/50 612J
   G06F17/50 680C
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-56124(P2020-56124)
(22)【出願日】2020年3月26日
【審査請求日】2020年3月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507228172
【氏名又は名称】株式会社JSOL
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】梅津 康義
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 祐子
(72)【発明者】
【氏名】越智 申久
【審査官】 松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−200640(JP,A)
【文献】 特開2008−006464(JP,A)
【文献】 特開平07−192037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 −30/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品形状データまたはプレス金型データに基づいて、成形解析用メッシュを作成する高精度成形解析用メッシュ作成システムであって、
メッシュ作成のための制御用データを格納するメッシュ制御用データ格納部と、
前記制御用データに基づいて、所定の小さい半径で曲げられる領域を抽出する領域抽出部と
前記制御用データに含まれる移動ベクトルに基づいて、前記領域の移動方向に合わせた向きのメッシュを作成するメッシュ作成部と、
前記領域を形成する所定の第1の長辺と第2の長辺とを選択し、前記第1の長辺と前記第2の長辺の始点と終点とを選択する長辺選択部と、
前記第1の長辺と前記第2の長辺を構成する節点の対応する移動ベクトルから、前記第1の長辺と前記第2の長辺の間の中間点を計算して中間線を設定する中間線設定部と、を備え、
前記メッシュ作成部は、前記第1の長辺と前記第2の長辺と前記中間線とから、前記領域の移動方向に合わせた向きのメッシュを作成する、
ことを特徴とする高精度成形解析用メッシュ作成システム。
【請求項2】
前記中間線設定部は、前記第2の長辺を、前記第1の長辺から所定の間隔だけ離間させて、前記中間線を設定する、
請求項1に記載の高精度成形解析用メッシュ作成システム。
【請求項3】
前記中間線設定部は、前記第1の長辺と前記第2の長辺を、所定の長さだけ長さ方向に延長した上で前記中間線を設定する、
請求項1または請求項2に記載の高精度成形解析用メッシュ作成システム。
【請求項4】
前記メッシュ作成のための制御用データは、逆解析による展開計算手法を用いて得たデータである
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の高精度成形解析用メッシュ作成システム。
【請求項5】
コンピュータが、製品形状データまたはプレス金型データに基づいて、成形解析用メッシュを作成する高精度成形解析用メッシュ作成方法であって、前記コンピュータが、領域抽出部、メッシュ作成部、長辺選択部、および中間線設定部として機能し、前記コンピュータに用いられるメモリがメッシュ制御用データ格納部として機能し、
前記メッシュ制御用データ格納部により、メッシュ作成のための制御用データを格納するステップと、
前記領域抽出部により、前記制御用データに基づいて、所定の小さい半径で曲げられる領域を抽出するステップと、
前記メッシュ作成部により、前記制御用データに含まれる移動ベクトルに基づいて、前記領域の移動方向に合わせた向きのメッシュを作成するステップと、
前記長辺選択部により、前記領域を形成する所定の第1の長辺と第2の長辺とを選択し、前記第1の長辺と前記第2の長辺の始点と終点とを選択するステップと、
前記中間線設定部により、前記第1の長辺と前記第2の長辺を構成する節点の対応する移動ベクトルから、前記第1の長辺と前記第2の長辺の間の中間点を計算して中間線を設定するステップと、を備え、
前記メッシュを作成するステップは、前記第1の長辺と前記第2の長辺と前記中間線とから、前記領域の移動方向に合わせた向きのメッシュを作成する、
ことを特徴とする高精度成形解析用メッシュ作成方法。
【請求項6】
コンピュータに、製品形状データまたはプレス金型データに基づいて、成形解析用メッシュを作成させる高精度成形解析用メッシュ作成プログラムであって、前記プログラムは、前記コンピュータに、
メッシュ作成のための制御用データを格納するステップと、
前記制御用データに基づいて、所定の小さい半径で曲げられる領域を抽出するステップと
前記制御用データに含まれる移動ベクトルに基づいて、前記領域の移動方向に合わせた向きのメッシュを作成するステップと、
前記領域を形成する所定の第1の長辺と第2の長辺とを選択し、前記第1の長辺と前記第2の長辺の始点と終点とを選択するステップと、
前記第1の長辺と前記第2の長辺を構成する節点の対応する移動ベクトルから、前記第1の長辺と前記第2の長辺の間の中間点を計算して中間線を設定するステップと、を実行させ、
前記メッシュを作成するステップとして、前記第1の長辺と前記第2の長辺と前記中間線とから、前記領域の移動方向に合わせた向きのメッシュを作成するステップを実行させる、
ことを特徴とする高精度成形解析用メッシュ作成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高精度成形解析用メッシュ作成システム、高精度成形解析用メッシュ作成方法、および高精度成形解析用メッシュ作成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
絞り成形解析、曲げ成形解析、スプリングバック解析、ヘミング成形解析を含む高精度な板成形解析において、FEM解析によりメッシュを作成することが行われる。FEM解析の精度は、メッシュの大きさだけではなく、メッシュの向きによって左右され、複数工程が連続して行われる板成形問題では最初から最後まで精度に気をつかう必要がある。
【0003】
FEM解析によりメッシュを作成する技術としては、例えば、特許文献1に記載されたように有限要素ごとに解析誤差を算出し、算出した解析誤差が所定値より大きい有限要素が存在するか場合には、その有限要素をさらに複数の有限要素に再分割する技術が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−065803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ブランク材(被成形材)と金型との接触による曲げや滑りを多く含む板成形では、ブランク材の移動方向とメッシュの向きのずれによる誤差発生の影響が大きい。また、滑りは小さいが、曲げ成形やヘミング成形など、小さな半径で曲げられる際には、曲げ方向とメッシュの向きのずれによる誤差発生の影響が大きい。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、ブランク材の移動方向とメッシュの向きのずれを抑えることのできる高精度成形解析用メッシュ作成システム、高精度成形解析用メッシュ作成方法、および高精度成形解析用メッシュ作成プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本発明の高精度成形解析用メッシュ作成システムの第1の態様は、
製品形状データまたはプレス金型データに基づいて、成形解析用メッシュを作成する高精度成形解析用メッシュ作成システムであって、
メッシュ作成のための制御用データを格納するメッシュ制御用データ格納部と、
前記制御用データに基づいて、所定の小さい半径で曲げられる領域を抽出する領域抽出部と
前記制御用データに含まれる移動ベクトルに基づいて、前記領域の移動方向に合わせた向きのメッシュを作成するメッシュ作成部と、を備える。
【0008】
本発明の高精度成形解析用メッシュ作成システムの第1の態様においては、メッシュ制御用データ格納部は、メッシュ作成のための制御用データを格納する。領域抽出部は、前記制御用データに基づいて、所定の小さい半径で曲げられる領域を抽出する。メッシュ作成部は、前記制御用データに含まれる移動ベクトルに基づいて、前記領域の移動方向に合わせた向きのメッシュを作成する。
【0009】
本発明の前記第1の態様によれば、所定の小さい半径で曲げられる領域においては、前記領域の移動方向に合わせた向きのメッシュが作成される。したがって、被成形材の移動方向とメッシュの向きのずれを抑えることができる、高精度の成形解析が可能となる。
【0010】
本発明の高精度成形解析用メッシュ作成システムの他の態様においては、
前記領域を形成する所定の第1の長辺と第2の長辺とを選択し、前記第1の長辺と前記第2の長辺の始点と終点とを選択する長辺選択部と、
前記第1の長辺と前記第2の長辺を構成する節点の対応する移動ベクトルから、前記第1の長辺と前記第2の長辺の間の中間点を計算して中間線を設定する中間線設定部と、を備え、
前記メッシュ作成部は、前記第1の長辺と前記第2の長辺と前記中間線とから、前記領域の移動方向に合わせた向きのメッシュを作成する。
【0011】
前記態様においては、長辺選択部は、前記領域を形成する所定の第1の長辺と第2の長辺とを選択し、前記第1の長辺と前記第2の長辺の始点と終点とを選択する。中間線設定部は、前記第1の長辺と前記第2の長辺を構成する節点の対応する移動ベクトルから、前記第1の長辺と前記第2の長辺の間の中間点を計算して中間線を設定する。メッシュ作成部は、前記第1の長辺と前記第2の長辺と前記中間線とから、前記領域の移動方向に合わせた向きのメッシュを作成する。
【0012】
本態様によれば、所定の小さい半径で曲げられる領域においては、当該領域を形成する第1の長辺および第2の長辺と、中間線とから、前記領域の移動方向に合わせた向きのメッシュが作成される。したがって、被成形材の移動方向とメッシュの向きのずれを抑えることができる、高精度の成形解析が可能となる。
【0013】
本発明の高精度成形解析用メッシュ作成システムの他の態様においては、前記中間線設定部は、前記第2の長辺を、前記第1の長辺から所定の間隔だけ離間させて、前記中間線を設定する。
【0014】
本態様によれば、中間線は、第2の長辺を第1の長辺から所定の間隔だけ離間させた上で設定される。したがって、前記領域が狭い領域であっても、被成形材の移動方向とメッシュの向きのずれを、高い精度で抑えることができる。
【0015】
本発明の高精度成形解析用メッシュ作成システムの他の態様においては、前記中間線設定部は、前記第1の長辺と前記第2の長辺を、所定の長さだけ長さ方向に延長した上で前記中間線を設定する。
【0016】
本態様によれば、中間線は、第1の長辺と第2の長辺を所定の長さだけ長さ方向に延長した上で設定される。したがって、例えば、ビードに乗る被成形材の成形前と位置と、ビードに乗る被成形材の成形後と位置とから規定される領域のように、綴じた領域ではない場合であっても、被成形材の移動方向とメッシュの向きのずれを、高い精度で抑えることができる。
【0017】
本発明の高精度成形解析用メッシュ作成システムの他の態様においては、前記メッシュ作成のための制御用データは、逆解析による展開計算手法を用いて得たデータである。
【0018】
本態様によれば、前記メッシュ作成のための制御用データは、逆解析による展開計算手法を用いて得られるので、前記移動ベクトルを容易に得ることができる。
【0019】
上述の課題を解決するために、本発明の高精度成形解析用メッシュ作成方法の第1の態様は、
製品形状データまたはプレス金型データに基づいて、成形解析用メッシュを作成する高精度成形解析用メッシュ作成方法であって、
逆解析による展開計算手法を用いて得たメッシュ作成のための制御用データを格納するステップと、
前記制御用データに基づいて、所定の小さい半径で曲げられる領域を抽出するステップと
前記制御用データに含まれる移動ベクトルに基づいて、前記領域の移動方向に合わせた向きのメッシュを作成するステップと、
を備えることを特徴とする。
【0020】
本発明の前記第1の態様によれば、所定の小さい半径で曲げられる領域においては、前記領域の移動方向に合わせた向きのメッシュが作成される。したがって、被成形材の移動方向とメッシュの向きのずれを抑えることができる、高精度の成形解析が可能となる。
【0021】
上述の課題を解決するために、本発明の高精度成形解析用メッシュ作成プログラムの第1の態様は、
コンピュータに、製品形状データまたはプレス金型データに基づいて、成形解析用メッシュを作成させる高精度成形解析用メッシュ作成プログラムであって、前記プログラムは、前記コンピュータに、
逆解析による展開計算手法を用いて得たメッシュ作成のための制御用データを格納するステップと、
前記制御用データに基づいて、所定の小さい半径で曲げられる領域を抽出するステップと
テップと、
前記制御用データに含まれる移動ベクトルに基づいて、前記領域の移動方向に合わせた向きのメッシュを作成するステップと、を実行させる、
ことを特徴とする。
【0022】
本発明の前記第1の態様によれば、所定の小さい半径で曲げられる領域においては、前記領域の移動方向に合わせた向きのメッシュが作成される。したがって、被成形材の移動方向とメッシュの向きのずれを抑えることができる、高精度の成形解析が可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、被成形材の移動方向とメッシュの向きのずれを抑えることができるので、高精度の成形解析が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る一実施形態の精度成形解析用メッシュ作成システムの概略構成を示す図である。
図2】精度成形解析用メッシュ作成システムの機能ブロックを示す図である。
図3】精度成形解析用メッシュ作成システムの動作を示すフローチャートである。
図4】曲げ成形用のCADの展開形状におけるフィレット面グループのような小さなアールで曲げられる領域を示す図である。
図5】(A)は、フィレット面の一例を示す図である、(B)は(A)の外形線を示す図である。
図6】(A)〜(E)は、本発明の第1実施形態におけるメッシュ作成方法を説明するための図である。
図7】(A)〜(C)は、本発明の第1実施形態におけるメッシュ作成方法を説明するための図である。
図8】中間点の計算方法を説明するための図である。
図9】中間点の計算方法を説明するための図である。
図10】(A)〜(B)は、本発明の第1実施形態におけるメッシュ作成方法を説明するための図である。
図11】本発明の第2実施形態で用いる絞り金型のCADデータにビード位置を示した図である。
図12】展開解析により、成形後にビードに係る成形前の位置を示した図である。
図13】(A)〜(C)は、本発明の第2施形態におけるメッシュ作成方法を説明するための図である。
図14】(A)はブランクメッシュと注目面部を示す図、(B)は従来の方法による全体が直交格子型のメッシュを示す図、(C)は、本発明による注文面部に注文面部の移動方向に沿ったメッシュを作成した図である。
図15】(A)〜(C)は、車両のドア部内板をドア部外板で挟む際のヘム解析を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る高精度成形解析用メッシュ作成システムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
[概略構成]
図1は、本実施形態に係る高精度成形解析用メッシュ作成システム100の概略構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態の高精度成形解析用メッシュ作成システム100は、中央演算装置1、表示装置2、記憶装置3、入力装置4、および出力装置5を備えている。
【0027】
中央演算装置1は、パーソナルコンピュータ等のプログラムを実行可能な装置であり、CPUおよびメモリ等を含む。表示装置2は、液晶ディスプレイ等の文字および画像を表示可能な装置である。記憶装置3は、HDD(Hard Disk Drive)等のプログラムおよびデータを記憶可能な装置であり、外部のデータベースサーバ等を用いてもよい。本発明の金型形状作成プログラムは、記憶装置3に格納されているものとする。入力装置4は、キーボード等のユーザによるデータまたは指示入力が可能な装置である。出力装置5は、プリンタ等の文字および画像を出力可能な装置である。本実施形態の高精度成形解析用メッシュ作成システム100においては、出力装置5は省略してもよい。
【0028】
[機能ブロック]
図2は、中央演算装置1が本発明の高精度成形解析用メッシュ作成プログラムを実行することにより機能する機能ブロックを示す図である。図2に示すように、中央演算装置1は制御部10として機能する。また、制御部10は、本発明の高精度成形解析用メッシュ作成プログラムに応じて、メッシュ制御用データ格納部11、領域抽出部12、長辺選択部13、中間線設定部14、メッシュ作成部15、として機能する。
【0029】
メッシュ制御用データ格納部11は、メッシュ作成のための制御用データを記憶装置3に格納する。メッシュ制御用データは、製品CADデータ、または製品FEMメッシュデータ、さらには、絞り金型CADデータ、または絞り金型FEMメッシュデータが用いられる。メッシュ制御用データの詳細については後述する。
【0030】
領域抽出部12は、所定の小さい半径で曲げられる領域を抽出する。所定の小さい半径で曲げられる領域とは、絞り、曲げ、ヘムなど各成形時において、小さい半径によって曲げられる領域、主として絞り成形時において、ビード部を通過する領域、および、主として絞り成形時において、ダイアール部を通過する領域等が挙げられる。具体的な例については後述する。
【0031】
長辺選択部13は、上記の領域を形成する所定の第1の長辺としての枠線1と、第2の長辺としての枠線2とを選択する。また、長辺選択部13は、第1の長辺と第2の長辺の始点と終点とを選択する。長辺選択部13の詳細については後述する。
【0032】
中間線設定部14は、第1の長辺としての枠線1と、第2の長辺としての枠線2とを構成する節点の対応する移動ベクトルから、枠線1と枠線2の間の中間点を計算して中間線を設定する。中間線設定部14の詳細については後述する。
【0033】
メッシュ作成部15は、枠線1と枠線2と中間線とから、所定の小さい半径で曲げられる領域の移動方向に合わせた向きのメッシュを作成する。メッシュ作成部15の詳細については後述する。
【0034】
[動作]
次に、本実施形態の高精度成形解析用メッシュ作成システム100における動作について、図面を参照しつつ説明する。図3は、本実施形態の高精度成形解析用メッシュ作成システム100における動作を示すフローチャートである。本実施形態の高精度成形解析用メッシュ作成システム100は、記憶装置3に予め記憶された高精度成形解析用メッシュ作成プログラムを中央演算装置1が実行することにより以下のように動作する。
【0035】
まず、メッシュ制御用データ格納部11として機能する中央演算装置1は、メッシュ制御用データ入力処理を行う(図1:S1)。より詳しくは、以下のように、データ入力処理を行う。
【0036】
メッシュ制御用データ格納部11は、製品のCADデータ、製品のFEMメッシュデータ、絞り金型のCADデータ、または絞り金型FEMメッシュデータ等から、メッシュ制御用データを入力し(図3:S1)、記憶装置3に格納する。メッシュ制御用データとしては、上述したCADデータ、およびFEMメッシュデータの他、既存の特許技術(例えば、特許第4583145号、または、特許第6427704号)の逆解析による展開計算手法を用いて得たデータも含まれる。
【0037】
メッシュ制御用データの具体例としては、ブランク材の外形線、展開解析の結果として得られる展開形状、移動ベクトル、主曲率ベクトル、曲げ半径が小さい領域の位置情報等が含まれる。例えば、曲げ解析において、製品CADデータまたはFEMメッシュデータを用いる場合には、ブランク材の外形線、CAD面単位の外形線、曲率半径およびその値が小さい面の順番、曲げ半径の主方向ベクトル、成形前の位置と成形時の移動方向ベクトル、成形前位置の主曲率ベクトルが含まれる。これらのデータにより、成形により小さい半径状態に曲げられる曲げ前での場所と曲げられる方向、および成形中にビード等のアール部を通過する範囲と通過する際の移動方向が分かる。
【0038】
領域抽出部12は、入力されたメッシュ制御用データに基づいて、所定の小さい半径で曲げられる領域を抽出する(図3:S2)。この領域は、例えば、絞り、曲げ、ヘムなど各成形時における小さい半径によって曲げられる部分、主として絞り成形時におけるビード部を通過する部分、主として絞り成形時におけるダイアール部を通過する部分が挙げられる。
【0039】
本実施形態では、一例として、領域抽出部12は、曲げ成形用のCADの展開形状と、移動ベクトルとから、図4に示すようにフィレット面グループのような小さなアールで曲げられる領域を抽出する。図5(A)は、フィレット面A4の一例を示し、図5(B)は、その外形線OL1を示している。
【0040】
長辺選択部13は、図6(A)に示すように、外形線OL1のうち、右側の枠線1の候補線OL1−1を第1の長辺として選択する(図3:S2)。また、長辺選択部13は、枠線1の候補線OL1−1の始点SP1と終点EP1のデータを選択し、さらに、図6(B)に示すように、枠線1としての線OL1−1を指定メッシュサイズSの2倍の長さ2Sで均等間隔化する(図3:S2)。なお、この指定メッシュサイズSは、メッシュ制御用データとして入力される。
【0041】
長辺選択部13は、第2の長辺としての枠線2の作成方法の選択を行う(図3:S3)。長辺選択部13は、フィレット面A4のような領域から枠線1としての線OL1−1を選択した場合には、図6(B)に示すように、枠線2としての線OL1−2は、枠線1の線OL1−1を長さLoでオフセットして作成する(図3:S4)。この場合、長辺選択部13は、線OL1−2は、線OL1−1をオフセットしたものなので、線OL1−2の始点SP2と終点EP2についても取得することができる。
【0042】
次に、中間線設定部14は、図6(C)に示すように、枠線1の線OL1−1の始点SP1と終点EP1と、枠線2の線OL1−2の始点SP2と終点EP2とを、長さLaだけ延長する(図3:S7)。なお、この長さLaも、メッシュ制御用データとして入力される。
【0043】
次に、中間線設定部14は、図6(D)に示すように、枠線1の線OL1−1と、枠線2の線OL1−2とを、それぞれ離れる方向に、それぞれ長さLb1および長さLb2だけオフセットする(図3:S8)。図6(E)は、枠線1の線OL1−1と、枠線2の線OL1−2とを、それぞれ長さLb1および長さLb2だけオフセットした状態を示している。
【0044】
次に、中間線設定部14は、図7(A)〜(C)に示すように、枠線1の線OL1−1を構成する節点n1〜n1と、節点n1〜n1に対応する移動ベクトルv1〜v1、および枠線2の線OL1−2とを構成する節点n2〜n2と、節点n2〜n2に対応する移動ベクトルv2〜v2から、中間点m〜mを計算し、中間線M1を作成する(図3:S9)。
【0045】
図8に、移動ベクトルを考慮した、枠線1と枠線2の中間点を計算する方法の例を示す。図8において、N1は、枠線1側の節点を示す。節点N1の座標は、C1(x1,y1)で表す。また、節点N1に対応する移動ベクトルは、V1(Vx1,Vy1)で表す。同様に、N2は、枠線2側の節点を示す。節点N2の座標は、C2(x2,y2)で表す。また、節点N2に対応する移動ベクトルは、V2(Vx2,Vy2)で表す。そして、節点N1と節点N2の距離はLとする。
【0046】
そして、図9に示すように、節点N1側から移動ベクトルを考慮した点Cm1を次式により計算する。
【0047】
(数1)
Cm1=C1−L/2*V1
【0048】
同様に、図9に示すように、節点N2側から移動ベクトルを考慮した点Cm2を次式により計算する。
【0049】
(数2)
Cm2=C2+L/2*V2
【0050】
そして、中間点N3は、点Cm1の点Cm2の平均座標として求める。
【0051】
(数2)
C3=(Cm1+Cm2)/2
【0052】
次に、中間線設定部14は、図10(A)に示すように、枠線1の線OL1−1と、枠線2の線OL1−2と、中間線M1とにおいて、それぞれ対応する節点n1〜n1、n2〜n2、および中間点m〜mを結び、図10(B)に示すように、メッシュを作成する(図3:S10)。
【0053】
以上のように、本実施形態によれば、ブランク材の移動方向に沿った向きのメッシュを作成することができるので、ブランク材の移動方向とメッシュの向きとのずれを抑えることができるので、高精度の成形解析が可能となる。
【0054】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る高精度成形解析用メッシュ作成システムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0055】
高精度成形解析用メッシュ作成システム100の概略構成、および機能ブロックは、第1実施形態と同様である。
【0056】
第1実施形態では、曲げ解析に製品データを使用した態様について説明したが、本実施形態では、絞り解析にビードデータを参考にした態様について説明する。
【0057】
図11は、絞り金型のCADデータD1に、ビード位置B1を示した図である。さらに、図12は、展開解析により、成形後にビードに係る成形前の位置B2を示した図である。
【0058】
領域抽出部12は、図12のようなデータが入力されると、絞り成形時におけるビード部を通過する領域を抽出する。図13(A)は、ビードの位置と、成形後にビードに係る成形前の位置の一例を示している。
【0059】
長辺選択部13は、図13(A)に示すように、外形線のうち、右側の枠線1の候補線OL3を選択し、図13(B)に示すように、所定の始点SP3から終点EP3までを枠線1としての線OL3−1を選択する(図3:S2)。また、第1実施形態と同様に、指定メッシュサイズSの2倍の長さ2Sで均等間隔化する(図3:S2)。
【0060】
長辺選択部13は、第2の長辺としての枠線2の作成方法の選択を行う(図3:S3)。本実施形態の場合には、図13(A)に示すように枠線2の候補線OL4が存在するため、長辺選択部13は、図13(B)に示すように、所定の始点SP4から終点EP4までを枠線2としての線OL4−1を選択する(図3:S5)。また、第1実施形態と同様に、指定メッシュサイズSの2倍の長さ2Sで線OL4−1を均等間隔化する(図3:S2)。
【0061】
以下、中間線設定部14は、第1実施形態と同様に、枠線1としての線OL4−1と、枠線2としての線OL4−2の中間点および中間線を求め、図13(C)に示すように、枠線1としての線OL4−1と、枠線2としての線OL4−2と、中間線とから、メッシュを作成する(図3:S6〜S10)
【0062】
以上のように、本実施形態においても、ブランク材の移動方向に沿った向きのメッシュを作成することができるので、ブランク材の移動方向とメッシュの向きとのずれを抑えることができるので、高精度の成形解析が可能となる。
【0063】
上述した第1実施形態および第2実施形態から分かるように、本発明は、図14(A)に示すようなブランクメッシュの注目面部において、図14(C)に示すように所定の小さい半径で曲げられる領域については、この領域の移動方向に合わせた向きのメッシュを作成する。したがって、図14(B)に示すような従来の全体を直交格子型のメッシュする態様に比べて、ブランク材の移動方向とメッシュの向きとのずれを抑えることができるので、高精度の成形解析が可能となる。
【0064】
(変形例)
以上の実施形態は例示であり、この発明の範囲から離れることなく様々な変形が可能である。
【0065】
上述した実施形態では、絞り成形、曲げ成形に本発明を適用した例について説明したが、図15(A)〜(C)に示すように、車両のドア部内板をドア部外板で挟む際のヘム解析に製品データを用いる場合にも適用可能である。この場合に所定の小さい半径で曲げられる領域R1を注目面部として、注目面部の移動方向に合わせた向きのメッシュを作成すればよい。
【0066】
また、本発明によるメッシュ作成のタイミングは、初期の平坦時、または、トリム後の曲げ成形等の工程間での引継ぎ時等が挙げられる。
【0067】
さらに、本発明は、成形解析の精度だけでなく、スプリングバック解析の精度も向上させることができる。
【0068】
以上の態様に係る高精度成形解析用メッシュ作成システムのプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に格納された形態で提供されてコンピュータにインストールされ得る。記録媒体は、例えば非一過性(non-transitory)の記録媒体であり、CD-ROM等の光学式記録媒体が好例であるが、半導体記録媒体や磁気記録媒体等の公知の任意の形式の記録媒体を包含し得る。なお、通信網を介した配信の形態で前述のプログラムを提供してコンピュータにインストールすることも可能である。
【0069】
以上、本発明の実施形態に係る高精度成形解析用メッシュ作成システム、高精度成形解析用メッシュ作成方法、および高精度成形解析用メッシュ作成プログラムについて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 中央演算装置
2 表示装置
3 記憶装置
4 入力装置
5 出力装置
10 制御部
11 メッシュ制御用データ格納部
12 領域抽出部
13 長辺選択部
14 中間線設定部
15 メッシュ作成部15
100 高精度成形解析用メッシュ作成システム
【要約】
【課題】ブランク材の移動方向とメッシュの向きのずれを抑える。
【解決手段】製品形状データまたはプレス金型データに基づいて、成形解析用メッシュを作成する高精度成形解析用メッシュ作成システムであって、このシステムは、メッシュ作成のための制御用データを格納するメッシュ制御用データ格納部11と、制御用データに基づいて、所定の小さい半径で曲げられる領域を抽出する領域抽出部12と、前記制御用データに含まれる移動ベクトルに基づいて、前記領域の移動方向に合わせた向きのメッシュを作成するメッシュ作成部15を備える。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15