特許第6774600号(P6774600)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774600
(24)【登録日】2020年10月7日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】モータおよびディスク駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/10 20060101AFI20201019BHJP
   H02K 5/22 20060101ALI20201019BHJP
   G11B 19/20 20060101ALI20201019BHJP
   G11B 33/14 20060101ALI20201019BHJP
   G11B 33/12 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   H02K5/10 Z
   H02K5/22
   G11B19/20 D
   G11B33/14 501Z
   G11B33/12 313T
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-244078(P2016-244078)
(22)【出願日】2016年12月16日
(65)【公開番号】特開2018-98988(P2018-98988A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】下村 巧
(72)【発明者】
【氏名】杉信 進悟
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 勝也
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−185553(JP,A)
【文献】 特開2014−96884(JP,A)
【文献】 特開2016−171717(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0113314(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/10
G11B 19/20
G11B 33/12
G11B 33/14
H02K 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止部と、
上下に延びる中心軸を中心として回転する回転部と、
前記静止部に対して、前記回転部を回転可能に支持する軸受部と、
を有し、
前記静止部は、
複数のコイルが前記中心軸を中心として環状に配置されたステータユニットと、
前記ステータユニットの下側に位置するベース部と、
前記回転部、前記軸受部および前記ステータユニットを収容する内部空間を構成するハウジングと、
を有し、
前記ベース部は、
軸方向に貫通し、前記ハウジングの外側と前記内部空間とをつなぐ貫通孔と、
前記貫通孔の上側開口に被せられ、前記貫通孔を塞ぐシートと、
前記貫通孔の下側開口を覆う充填部材と、
前記ベース部および前記シートの、少なくとも一方に設けられ、前記貫通孔と前記内部空間とをつなぐ通気路と、
を有するモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のモータであって、
前記充填部材の少なくとも一部は、前記貫通孔の内部に充填される、モータ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のモータであって、
前記ベース部は、上面から上側に突出した突出部を有し、
前記貫通孔および前記通気路は、前記突出部に設けられ、
前記通気路は、前記貫通孔に対して直交する方向に延びる、
モータ。
【請求項4】
請求項3に記載のモータであって、
前記回転部は、
前記ステータユニットよりも径方向外側に位置するマグネットを有し、
前記突出部は、
前記マグネットの径方向内面よりも、径方向内側に設けられている、
モータ。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のモータであって、
前記コイルは、前記貫通孔を通って前記ベース部の上面から下面に引き出されるリード線を備え、
前記シートは絶縁性材料であり、前記リード線を通す孔を有し、
前記通気路は、前記シートに設けられ、前記孔とつながる、または、独立した孔である、モータ。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のモータであって、
前記通気路は、
前記シートと前記ベース部との接触部分であって、前記シートおよび前記ベース部の、少なくとも一方に設けられた凹部である、
モータ。
【請求項7】
請求項6に記載のモータであって、
前記凹部は、
径方向に沿って設けられている、
モータ。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載のモータであって、
前記凹部は、
周方向に沿って設けられている、
モータ。
【請求項9】
請求項6から請求項8までのいずれか1項に記載のモータであって、
前記凹部は、前記シートに設けられ、
前記シートは、基材と、前記基材を前記ベース部に粘着させる粘着層とを有し、
前記凹部が設けられる部分には、前記粘着層が設けられていない、
モータ。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載のモータと、
前記ハウジングの前記内部空間において、前記回転部に支持されるディスクと、
前記ディスクに対して情報の読み出しおよび書き込みの少なくとも一方を行うアクセス部と、
を有するディスク駆動装置。
【請求項11】
請求項10に記載のディスク駆動装置であって、
前記ハウジングの前記内部空間に、空気よりも低密度の気体が充填されているディスク駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータおよびディスク駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハードディスクドライブ等のディスク駆動装置が知られている。ディスク駆動装置には、ディスクを回転させるためのモータが搭載されている。従来のディスク駆動装置については、例えば、特開2014−239597号公報に記載されている。当該公報のディスク駆動装置は、モータの全体的な構成要素を支持する静止部を備える。静止部は、ベース貫通孔が設けられたベースプレートを有する。このベース貫通孔には、コイルから延びる引出線が通っている。そして、ベース貫通孔と、そのベース貫通孔を経由する引出線の全周との間に接着剤を充填して、ディスク駆動装置の気密性を向上させている。
【特許文献1】特開2014−239597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特開2014−239597号公報に記載のディスク駆動装置では、ベース貫通孔内への接着剤の充填をより確実に行うために、ベース貫通孔に空気抜き用の補助凹部を、ベースプレートの下面に設けている。しかしながら、接着剤は、ベースプレートの下面側から充填するため、接着剤が補助凹部に流れ込み、接着剤をベース貫通孔内に確実に充填できないおそれがある。接着剤をベース貫通孔内に確実に充填できないと、ディスク駆動装置の気密性が損なわれるおそれがある。このため、従来の構造では、接着剤の充填後に気密性を入念に検査する必要があった。
【0004】
このような問題を鑑みて、本発明の目的は、モータおよびディスク駆動装置において、充填部材を貫通孔内に充填しやすい構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本願の例示的な第1実施形態は、静止部と、上下に延びる中心軸を中心として回転する回転部と、前記静止部に対して、前記回転部を回転可能自在に支持する軸受部と、を有し、前記静止部は、複数のコイルが前記中心軸を中心として環状に配置されたステータユニットと、前記ステータユニットの下側に位置するベース部と、前記回転部、前記軸受部および前記ステータユニットを収容する内部空間を構成するハウジングと、を有し、前記ベース部は、軸方向に貫通し、前記ハウジングの外側と前記内部空間とをつなぐ貫通孔と、前記貫通孔の上側開口に被せられ、前記貫通孔を塞ぐシートと、前記貫通孔の下側開口を覆う充填部材と、前記ベース部および前記シートの、少なくとも一方に設けられ、前記貫通孔と前記内部空間とをつなぐ通気路と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本願の例示的な第1実施形態によれば、貫通孔の下側から、例えば接着剤等の充填部材を充填する場合、貫通孔内の空気は、通気路を経て、内部空間に逃げる。これにより、貫通孔内の空気により、貫通孔内に充填部材が流れ込まず、貫通孔を充填部材で充填できなくなるおそれを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本願の例示的な第1実施形態に係るディスク駆動装置の断面図である。
図2図2は、図1のスピンドルモータ部分の拡大図である。
図3図3は、ベース部を上面側から視た平面図である。
図4図4は、本願の例示的な第2実施形態のスピンドルモータの一部を拡大した図である。
図5図5は、本願の例示的な第3実施形態のスピンドルモータの一部を拡大した図である。
図6図6は、本願の例示的な第4実施形態において、通気路を第2突出部に設けた場合のスピンドルモータの一部を拡大した図である。
図7図7は、本願の例示的な第4実施形態において、通気路を絶縁シートに設けた場合のスピンドルモータ一部を拡大した図である。
図8図8は、絶縁シートの積層構造を利用して、通気路を設ける場合を説明する図である。
図9図9は、通気路を周方向に沿って設けた場合の、ベース部を上面側から視た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本願の例示的な第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本願では、モータの中心軸と平行な方向を「軸方向」、モータの中心軸に直交する方向を「径方向」、モータの中心軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。また、本願では、軸方向を上下方向とし、ベース部に対してステータユニット側を上として、各部の形状や位置関係を説明する。ただし、この上下方向の定義により、本願に係るモータ、およびディスク駆動装置の使用時の向きを限定する意図はない。
【0009】
また、本願において「平行な方向」とは、略平行な方向も含む。また、本願において「直交する方向」とは、略直交する方向も含む。
【0010】
<1.ディスク駆動装置の構成>
図1は、本願の例示的な第1実施形態に係るディスク駆動装置100の断面図である。図2は、図1のスピンドルモータ1部分の拡大図である。
【0011】
ディスク駆動装置100はハードディスクドライブである。ディスク駆動装置100は、スピンドルモータ1と、複数(図1では3枚)のディスク101と、複数(図1では3つ)のアクセス部102と、これらを収容するハウジング103とを備える。
【0012】
ハウジング103は、ベース部40と、カバー部材104と、を有する。ベース部40は、後述のスピンドルモータ1の一部でもある。ベース部40は開口を有し、その開口にカバー部材104が嵌められて、ハウジング103が構成される。ハウジング103の内部空間には、後述するスピンドルモータ1のシャフト10、回転部20、およびステータユニット30、が収容される。ベース部40とカバー部材104とは、ハウジング103内の気密性が損なわれないように、組み合わされる。ハウジング103の内部空間には、空気よりも低密度の気体、例えば、ヘリウムガスが充填されている。なお、ハウジング103の内部空間には、水素ガス、空気等が充填されていてもよい。
【0013】
複数のディスク101は、情報が記録される媒体である。複数のディスク101は、間に、スペーサ105と、スペーサ106とが配置され、上下方向に延びる中心軸9に沿って積層される。そして、複数のディスク101は、後に詳述するスピンドルモータ1に支持される。複数のディスク101は、スピンドルモータ1により、中心軸9を中心として回転する。
【0014】
アクセス部102は、ヘッド107と、アーム108と、ヘッド移動機構109とを有する。ヘッド107は、ディスク101の表面に接近して、ディスク101に記録された情報の読み出し、および、ディスク101への情報の書き込み、の少なくともいずれか一方を磁気的に行う。ヘッド107は、アーム108に支持される。アーム108は、ヘッド移動機構109に支持される。
【0015】
スピンドルモータ1は、シャフト10と、回転部20と、ステータユニット30と、ベース部40と、を有する。本願の例示的な各実施形態にかかるスピンドルモータ1は、三相モータである。ステータユニット30と、ベース部40と、ベース部40を含むハウジング103と、により、本願の例示的な各実施形態にかかる「静止部」が構成される。
【0016】
シャフト10は、中心軸9に沿って配置された、略円柱形状の部材である。シャフト10は、回転部20を、中心軸9を中心として回転可能に支持する。シャフト10は、例えば、ステンレス等の金属により形成される。シャフト10の上端部は、ハウジング103のカバー部材104に固定される。シャフト10の下端部は、ベース部40に固定される。
【0017】
回転部20は、スリーブ21と、ロータハブ22と、クランプ部材23と、ロータマグネット24と、ヨーク25と、を備える。
【0018】
スリーブ21は、中心軸9を中心として回転可能に支持される。スリーブ21は、シャフト10の周囲において、シャフト10との間に隙間を介し対向する。隙間には、潤滑油、ガス等の流体が充填される。本願の例示的な各実施形態においては、シャフト10の外周面と、スリーブ21の内周面と、それらの間に介在する流体とで、軸受部が構成される。
【0019】
ロータハブ22は円筒状である。ロータハブ22は、スリーブ21に支持される。そして、ロータハブ22は、スリーブ21と共に、中心軸9を中心として回転する。スリーブ21とロータハブ22とは、一繋がりの部材で形成されてもよいし、別部材であってもよい。スリーブ21およびロータハブ22の材料には、例えば、アルミニウム合金または強磁性ステンレス鋼等の金属が使用される。
【0020】
クランプ部材23は、ロータハブ22に支持される。クランプ部材23は、ロータハブ22との間に、複数のディスク101を支持する。これにより、複数のディスク101は、回転部20に支持され、中心軸9を中心として回転する。
【0021】
ロータマグネット24は、ヨーク25を介して、ロータハブ22の内周面に固定される。ロータマグネット24は、中心軸9を中心とする円環形状をなす。ロータマグネット24の内周面は、周方向に沿ってN極とS極とが交互に配列された磁極面である。
【0022】
ステータユニット30は、ロータハブ22の径方向内側に配置され、ロータマグネット24と隙間をおいて対向する。ステータユニット30は、回転部20を回転させるトルクを発生させる。ステータユニット30は、複数のコイル31と、ステータコア32とを有する。ステータコア32は、中心軸9を中心とする円環状の磁性体が、複数積層された積層構造体であって、ベース部40に固定される。ステータコア32は、径方向外側に突出する複数のティースを有する。複数のコイル31は、複数のティースに巻かれ、中心軸9を中心として環状に配置される。複数のコイル31は、3つのコイル群により構成される。3つのコイル群は、それぞれU相用、V相用、W相用である。各コイル群は、1つの導線により構成される。
【0023】
ベース部40は、例えば、鋳造にて成型される。ベース部40は、アルミダイキャストである。ベース部40は、上面40Aと下面40Bとを有する。上面40Aは、ハウジング103の内側を向く面である。下面40Bは、ハウジング103の外側を向く面である。
【0024】
図3は、ベース部40を上面40A側から視た平面図である。以下、ベース部40について、図1から図3を参照して説明する。
【0025】
ベース部40は、上面40Aから上側に突出した突出部41を有する。突出部41は、第1突出部411と、第2突出部412とを有する。第1突出部411は、シャフト10の外周面において、シャフト10を固定する。また、第1突出部411は、ステータユニット30のステータコア32を、外周面で支持する。第2突出部412は、第1突出部411の外周面に設けられる。第2突出部412は、第1突出部411よりも上下方向の高さが低い。第1突出部411に支持されるステータユニット30は、第2突出部412の上方に配置される。
【0026】
第2突出部412には、上下方向に延びる3つの貫通孔43が設けられる。貫通孔43は、ハウジング103の内部空間と外部とを連通する。図3に示すように、3つの貫通孔43は、周方向に沿って設けられる。貫通孔43には、コイル31のリード線33が通される。コイル31は、三相交流の各相の電流を供給するための3本のリード線33を有する。3つの貫通孔43それぞれには、3本のリード線33のうちのいずれか1本が通される。リード線33は、貫通孔43を通り、ベース部40の下面40Bに配置される、図示しない配線基板に接続される。
【0027】
貫通孔43は、より長い方が好ましい。貫通孔43の長さを長くすると、ハウジング103の内部空間と外部との距離を稼ぐことができ、ハウジング103の内部空間の気密性を確保できる。そこで、ベース部40の上面40Aに第2突出部412を設け、その第2突出部412に貫通孔43を設ける。これにより、貫通孔43の上下方向の長さをより長くできる。
【0028】
第2突出部412には、貫通孔43から、第2突出部412の外周面まで延びる通気路44が設けられる。通気路44は、第2突出部412に形成された、貫通孔43に対して直交する方向に延びる貫通孔である。そして、通気路44は、ハウジング103の内部空間と、貫通孔43内部とを連通する。図3に示すように、通気路44は、3つの貫通孔43それぞれに対して設けられる。
【0029】
第2突出部412の上面には、絶縁シート50が設けられる。第2突出部412の上面は、上下方向において、ステータユニット30に対向する面である。絶縁シート50は、貫通孔43の上側開口に被せられ、貫通孔43を塞ぐ。絶縁シート50には、貫通孔43の開口の略中心部と重なる位置に、不図示の孔が設けられる。リード線33は、この孔から貫通孔43を通り、ベース部40の下面40Bに引き出される。絶縁シート50は絶縁性材料であって、貫通孔43に対するリード線33の位置決めを行い、リード線33と貫通孔43の内壁との接触を防止する。
【0030】
絶縁シート50は、少なくとも、3つの貫通孔43の開口を覆う大きさを有する。ただし、3つの貫通孔43それぞれを、異なる絶縁シート50で覆うようにしてもよい。
【0031】
貫通孔43には、充填部材である接着剤45が充填される。接着剤45は、絶縁性接着剤である。接着剤45により、貫通孔43が塞がれて、ハウジング103の内部空間は密閉される。接着剤45は、ベース部40の下面40B側から充填される。より詳しくは、貫通孔43からリード線33が引き出された状態で、ベース部40の下面40B側から液体状の接着剤を充填し、それを硬化する。したがって、貫通孔43の少なくとも下側開口は、接着剤45に覆われる。また、接着剤45の少なくとも一部は、貫通孔43の内部に充填される。
【0032】
液体状の接着剤を充填するとき、貫通孔43内の空気は、下側から充填される接着剤により、上側へ押し流される。但し、貫通孔43の上側は、絶縁シート50により封止されている。そのため、仮に、通気路44が設けられていないとすると、貫通孔43内の空気は、逃げ場所がなくなる。そして、逃げ場所がなくなった空気による空気圧で、貫通孔43へ接着剤が流れ込まなくなる充填不良が生じるおそれがある。ここで、ハウジング103の内部空間には、空気よりも低密度の気体が充填されており、この低密度の気体は、僅かな隙間からでも漏れ出しやすい。このため、充填不良が生じると、ハウジング103の内部空間の低密度の気体は、貫通孔43から漏れるおそれがある。
【0033】
そこで、本願の例示的な各実施形態においては、通気路44が設けられる。液体状の接着剤を充填するとき、貫通孔43内の空気は、通気路44を通り、ハウジング103の内部空間へ排出される。このため、前述の接着剤の充填不良を防止できる。なお、接着剤45を貫通孔43に充填した後に、ハウジング103の内部空間にヘリウムガスが充填される。そのため、ハウジング103の内部空間に充填されたヘリウムガスが、貫通孔43からハウジング103の外側へ漏れることを抑制できる。
【0034】
このように、通気路44を設けることで、接着剤45を、貫通孔43に充填しやすくなる。また、この通気路44は、第2突出部412に設けられる。そのため、ベース部40の上面40Aに第2突出部412を設けずに、貫通孔をベース部40に設けた場合と比較すると、貫通孔43の長さをより長く確保することができる。そのため、ハウジング103の内部空間に充填されたヘリウムガスが、貫通孔43からハウジング103の外側へ漏れることを更に抑制できる。
【0035】
ただし、ベース部40の上面40Aに第2突出部412を設けずに、貫通孔43をベース部40に設けてもよい。つまり、貫通孔の長さは、本願の例示的な各実施形態にかかる貫通孔43よりも、短くてもよい。また、通気路44は、貫通孔43内部と、ハウジング103の内部空間を連通すればよく、径方向に沿った直線状でなくてもよい。例えば、通気路44は、上下方向から傾斜して形成されてもよい。また、図2では、上下方向において、貫通孔43の略中央まで接着剤45を充填しているが、ハウジング103の内部空間を密閉できれば、接着剤45の充填量は特に限定されない。
【0036】
<2.他の実施形態>
以上、本願の第1実施形態について説明したが、本願は、上記の実施形態に限定されるものではない。以下では、通気路44の構成を変形させた他の実施形態について説明する。
【0037】
<2−1.第2実施形態>
第2実施形態では、通気路44の長さが、上述の実施形態よりも短い。
【0038】
図4は、本願の例示的な第2実施形態のスピンドルモータ1の一部を拡大した図である。この例では、第2突出部412は、径方向において、ロータマグネット24の径方向内面よりも径方向内側に設けられている。換言すれば、第2突出部412は、上下方向において、ロータマグネット24と重ならない。このため、貫通孔43から、第2突出部412の外周面までの距離は、上述の実施形態に比べて、短い。つまり、通気路44の長さは、第1実施形態に比べて、短い。
【0039】
通気路44を短くすることで、通気路44における流路抵抗は小さくなる。これにより、貫通孔43に接着剤45を充填する際、貫通孔43内の空気を、通気路44を介して、ハウジング103の内部空間へより排出しやすくなる。
【0040】
<2−2.第3実施形態>
第3実施形態では、通気路44を絶縁シート50に設けている点で、上述の各実施形態と相違する。
【0041】
図5は、本願の例示的な第3実施形態のスピンドルモータ1の一部を拡大した図である。絶縁シート50は、リード線用貫通孔50Aと、通気路44とを有する。リード線用貫通孔50Aは、貫通孔43の開口の略中心部と重なる位置であって、上下方向に沿って設けられる。リード線33は、このリード線用貫通孔50Aを通り、貫通孔43から、ベース部40の下面40Bへ引き出される。通気路44は、リード線用貫通孔50Aと平行に、絶縁シート50に設けられる。貫通孔43に接着剤45を充填する際、貫通孔43内の空気は、この通気路44を介して、ハウジング103の内部空間へ排出される。
【0042】
通気路44を絶縁シート50に設けることで、通気路44を設けるために、ベース部40を加工する必要がなく、既存のハウジングにも通気路を設けることができる。
【0043】
なお、リード線用貫通孔50Aと、通気路44とは、互いに独立していてもよいし、区間が繋がっていてもよい。
【0044】
<2−3.第4実施形態>
第4実施形態では、通気路44が、第2突出部412と絶縁シート50との接触部分であって、第2突出部412および絶縁シート50の少なくとも一方に設けた凹部で構成されている点で、上述の各実施形態と相違する。
【0045】
図6は、本願の例示的な第4実施形態において、通気路44を第2突出部412に設けた場合のスピンドルモータ1の一部を拡大した図である。図6において、円内に示す図は、円で囲んだ部分を、径方向外側から視た図である。
【0046】
通気路44は、第2突出部412の上面に設けられた凹部である。その凹部は、貫通孔43から第2突出部412の外周面まで、径方向に延びる。絶縁シート50は、貫通孔43の開口と、凹部の少なくとも一部とを覆う。これにより、通気路44は、ハウジング103の内部空間と、貫通孔43内部とを連通する。この場合、通気路44が貫通孔である上述の実施形態と比べて、第2突出部412を加工しやすい。
【0047】
図7は、本願の例示的な第4実施形態において、通気路44を絶縁シート50に設けた場合のスピンドルモータ1の一部を拡大した図である。図7において、円内に示す図は、円で囲んだ部分を、径方向外側から視た図である。
【0048】
通気路44は、絶縁シート50の下面に設けられた凹部である。絶縁シート50の下面は、第2突出部412の上面との接触面である。凹部は、絶縁シート50を第2突出部412の上面に設けたときに貫通孔43の開口と重なる位置から、絶縁シート50の端部まで、径方向に延びる。これにより、通気路44は、ハウジング103の内部空間と、貫通孔43内部とを連通する。この場合、ベース部40に対して加工する必要がないため、既存のスピンドルモータに通気路を容易に設けることができる。
【0049】
なお、絶縁シート50に通気路44を設ける場合、絶縁シート50を掘削して通気路44を設けてもよいし、絶縁シート50の積層構造を利用して、通気路44を設けてもよい。
【0050】
図8は、絶縁シート50の積層構造を利用して、通気路44を設ける場合を説明する図である。絶縁シート50は、基材51に粘着層52を積層して構成される。絶縁シート50は、粘着層52を第2突出部412側にして、第2突出部412の上面に設けられる。絶縁シート50は、粘着層52によって、第2突出部412に粘着する。基材51に粘着層52が積層されない領域は、粘着層52が積層された領域よりもハウジング103の内側に凹む。この凹んだ部分を、通気路44とすることができる。つまり、通気路44を設けたい位置の基材51に、粘着層52を積層しないようにすることで、絶縁シート50に通気路44を設けることができる。
【0051】
なお、通気路44は、第2突出部412に設けた凹部と、絶縁シート50に設けた凹部とで構成されてもよい。この場合、2つの凹部は、上下方向で重なっていてもよいし、重なっていなくてもよい。
【0052】
また、通気路44は、周方向に沿って設けられてもよい。
【0053】
図9は、通気路44を周方向に沿って設けた場合の、ベース部40を上面40A側から視た平面図である。通気路44を周方向に設ける場合、図9に示すように、通気路44は、3つの貫通孔43の開口を通過するように、設けられる。つまり、通気路44は、3つの貫通孔43それぞれの内部と、ハウジング103の内部空間とを連通する。この場合、独立して通気路44を複数設ける場合と比べて、絶縁シート50に対する加工が容易である。
【0054】
なお、この図9の構成の場合、通気路44は、第2突出部412に設けられてもよいし、絶縁シート50に設けられてもよいし、第2突出部412および絶縁シート50の両方に設けられてもよい。
【0055】
以上、第2実施形態から第4実施形態について説明したが、上述の実施形態に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本願は、スピンドルモータおよびディスク駆動装置に利用できる。
【符号の説明】
【0057】
1 スピンドルモータ
9 中心軸
10 シャフト
12 スリーブ
20 回転部
21 スリーブ
22 ロータハブ
23 クランプ部材
24 ロータマグネット
25 ヨーク
30 ステータユニット
31 コイル
32 ステータコア
33 リード線
40 ベース部
41 突起部
43 貫通孔
44 通気路
45 接着剤
50 絶縁シート
51 基材
52 粘着層
100 ディスク駆動装置
101 ディスク
102 アクセス部
103 ハウジング
104 カバー部材
107 ヘッド
108 アーム
109 ヘッド移動機構
411 第1突出部
412 第2突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9