特許第6774633号(P6774633)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社安川電機の特許一覧

<>
  • 特許6774633-ロボットシステム 図000002
  • 特許6774633-ロボットシステム 図000003
  • 特許6774633-ロボットシステム 図000004
  • 特許6774633-ロボットシステム 図000005
  • 特許6774633-ロボットシステム 図000006
  • 特許6774633-ロボットシステム 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774633
(24)【登録日】2020年10月7日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】ロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20201019BHJP
【FI】
   B25J19/00 E
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-141377(P2017-141377)
(22)【出願日】2017年7月20日
(65)【公開番号】特開2019-18320(P2019-18320A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2019年1月24日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】特許業務法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今野 剛志
(72)【発明者】
【氏名】石岡 圭悟
(72)【発明者】
【氏名】三浦 弘信
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 毅
【審査官】 松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−212562(JP,A)
【文献】 特開平08−010948(JP,A)
【文献】 特開2000−176867(JP,A)
【文献】 特開2003−285166(JP,A)
【文献】 特開2017−043477(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0226139(US,A1)
【文献】 特開2012−121105(JP,A)
【文献】 特開平07−148683(JP,A)
【文献】 米国特許第4644897(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 − 21/02
B05B 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース、及び、前記ベースに対して第1旋回軸周りに旋回するロボットアームを備え、ワークに対して所定の作業を行う作業ロボットと、
前記作業ロボットの下部に配置され、前記ワークを第2旋回軸周りに旋回させて前記作業ロボットによる作業位置に供給するワーク供給装置と、
前記作業ロボットと前記ワーク供給装置とを結合し、前記第1旋回軸が前記第2旋回軸に対して交差するように前記作業ロボットを支持する支持部材と、を有し、
前記支持部材は、
前記第2旋回軸が内側を通るように貫通穴が形成され、前記ワーク供給装置に連結されたベース部と、
前記第1旋回軸が内側を通るように開口部が形成され、前記作業ロボットの前記ベースに連結された連結部と、
前記第2旋回軸に対して当該第2旋回軸に垂直な方向且つ前記作業位置から離れる方向に所定距離だけずれた位置に立設され、前記ベース部と前記連結部とを連結する支柱と、を有し、
前記貫通穴を介して前記ワーク供給装置より導入され前記開口部を介して前記作業ロボットに導出されるケーブル又はチューブが配設されるスペースを内部に有する
ことを特徴とするロボットシステム。
【請求項2】
前記支持部材は、
前記ワーク供給装置と結合される部分の、前記作業位置と前記第2旋回軸とを結ぶ方向の幅が、前記作業ロボットと結合される部分の、前記作業位置と前記第2旋回軸とを結ぶ方向の幅よりも大きい
ことを特徴とする請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記ケーブルは前記ロボットアームの給電ケーブルを含み、
前記支持部材の前記スペースに配置され、前記給電ケーブルを保持する保持部材をさらに有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記ワーク供給装置は、
前記ワークが載置されるテーブルを備えた少なくとも1つのアームと、
前記アームを前記第2旋回軸周りに回転させる回転装置と、
前記回転装置の中心部に配置され、前記給電ケーブルが挿通される中空部と、を有する
ことを特徴とする請求項3に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記支持部材に配置され、前記作業ロボットが前記所定の作業を行う際に駆動される機器をさらに有する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記支持部材は、
前記第1旋回軸と前記第2旋回軸との角度が略90°となるように前記作業ロボットを支持する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項7】
前記作業ロボットは、
前記ワークに対して塗装作業を行う塗装ロボットである
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、ロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、加工対象物であるワークを加工ブースに搬送可能で、かつ、加工ブースの内部においてワークを加工可能な加工設備が記載されている。この加工設備は、加工ブースの内部に設けられる加工装置と、ワークを載置可能なターンテーブルと、旋回アームによりターンテーブルを旋回することによりワークを加工ブースの外部から内部へと搬送可能な搬送手段とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−43477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記加工設備においては、ワークを加工ブースの外部から内部へと搬送可能とするために、旋回アームはブースの大きさに応じた所定の長さを有する。一方で、加工設備においては省スペース化が要望されている。このため、搬送手段の上部に設けられる加工装置を小型化した場合、旋回アームの長さに比べて可動範囲が狭くなり、ワークに対して適正に加工を実行できなくなる可能性がある。
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、ワークに対して適正に作業を行うことができ、且つ、小型化が可能なロボットシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一の観点によれば、ベース、及び、前記ベースに対して第1旋回軸周りに旋回するロボットアームを備え、ワークに対して所定の作業を行う作業ロボットと、前記作業ロボットの下部に配置され、前記ワークを第2旋回軸周りに旋回させて前記作業ロボットによる作業位置に供給するワーク供給装置と、前記作業ロボットと前記ワーク供給装置とを結合し、前記第1旋回軸が前記第2旋回軸に対して交差するように前記作業ロボットを支持する支持部材と、を有するロボットシステムが適用される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ワークに対して適正に作業を行うことができ、且つ、小型化が可能なロボットシステムが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るロボットシステムの全体構成の一例を表す説明図である。
図2】作業ロボットを支持する支持部材の構成の一例を表す斜視図である。
図3】第1の比較例のロボットシステムにおける作業ロボットの可動範囲の一例を表す説明図である。
図4】第2の比較例のロボットシステムにおける作業ロボットの可動範囲の一例を表す説明図である。
図5】実施形態のロボットシステムにおける作業ロボットの可動範囲の一例を表す説明図である。
図6】塗料チューブの配設位置をロボットアームの内周側とした変形例におけるロボットシステムの全体構成の一例を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下において、ロボットシステム等の構成の説明の便宜上、上下左右前後等の方向を適宜使用する場合があるが、ロボットシステム等の各構成の位置関係を限定するものではない。
【0010】
<1.ロボットシステムの構成>
まず、図1及び図2を参照しつつ、本実施形態に係るロボットシステム1の構成の一例について説明する。
【0011】
図1に示すように、ロボットシステム1は、作業ロボット2と、ワーク供給装置3と、支持部材4とを有する。
【0012】
(1−1.作業ロボットの構成)
図1に示すように、作業ロボット2は、ロボットアーム7の先端に塗装ガン16を有する塗装ロボットである。作業ロボット2は、ワーク供給装置3の上部に設置された支持部材4により、ロボットアーム7が前方向に突出するように横倒しの姿勢で支持されている。
【0013】
作業ロボット2は、ベース6と、ベース6に対しS軸AxS(第1旋回軸に相当)周りに旋回するロボットアーム7とを備える。ベース6は、S軸AxSがワーク供給装置3の旋回軸AxFに対して交差する方向(本実施形態では略90°となる方向)となるように、支持部材4の上部に設置されている。
【0014】
ロボットアーム7は、この例では、6つの可動部を有しており、6軸垂直多関節型の単腕ロボットとして構成されている。なお、本明細書では、ロボットアーム7の各可動部におけるベース6側の端を当該可動部の「基端」、ベース6とは反対側の端を当該可動部の「先端」と定義する。ロボットアーム7は、旋回ヘッド8と、第1腕部9と、第2腕部11と、3つの可動部を備えた手首部12とを有する。
【0015】
旋回ヘッド8は、ベース6に、上記S軸AxS周りに旋回可能に支持されている。旋回ヘッド8は、ベース6又は旋回ヘッド8に収容されたモータ(図示せず)の駆動により、ベース6に対しS軸AxS周りに旋回する。
【0016】
第1腕部9は、旋回ヘッド8の先端部に、S軸AxSに直交する回転軸であるL軸AxL周りに回転可能に支持されている。第1腕部9は、旋回ヘッド8との間の関節部近傍に設けられたモータ(図示せず)の駆動により、旋回ヘッド8の先端部に対しL軸AxL周りに回転する。
【0017】
第2腕部11は、第1腕部9の先端部に、L軸AxLに平行な回転軸であるU軸AxU周りに回転可能に支持されている。第2腕部11は、第1腕部9との間の関節部近傍に設けられたモータ(図示せず)の駆動により、第1腕部9の先端部に対しU軸AxU周りに回転する。
【0018】
手首部12は、第2腕部11の先端部に連結されている。手首部12は、第1手首可動部13と、第2手首可動部14と、第3手首可動部15とを有する。
【0019】
第1手首可動部13は、第2腕部11の先端部に、U軸AxUに直交する回転軸であるR軸AxR周りに回転可能に支持されている。第1手首可動部13は、第2腕部11との間の関節部近傍に配置されたモータ(図示せず)の駆動により、第2腕部11の先端部に対しR軸AxR周りに回転可能である。
【0020】
第2手首可動部14は、第1手首可動部13の先端部に、R軸AxRに直交する回転軸であるB軸AxB周りに回転可能に支持されている。第2手首可動部14は、第1手首可動部13に配置されたモータ(図示せず)の駆動により、第1手首可動部13の先端部に対しB軸AxB周りに回転する。
【0021】
第3手首可動部15は、第2手首可動部14の先端部に、B軸AxBに直交する回転軸であるT軸AxT周りに回転可能に支持されている。第3手首可動部15は、上記第1手首可動部13に配置されたモータ(図示せず)の駆動により、第2手首可動部14の先端部に対しT軸AxT周りに回転する。第3手首可動部15の先端には、エンドエフェクタとして塗装ガン16がホルダ16aを介して取り付けられている。
【0022】
作業ロボット2は、取り付けられるエンドエフェクタの種類によって、例えば、塗装、溶接、組立、加工等、多種多様な用途に使用することが可能である。本実施形態では、第3手首可動部15の先端に塗装ガン16が取り付けられ、作業ロボット2は塗装用途に使用される。
【0023】
なお、上述した作業ロボット2の構成は一例であり、上記以外の構成としてもよい。例えば、ロボットアーム7の各可動部の回転軸方向は、上記方向に限定されるものではなく、他の方向であってもよい。また、手首部12やロボットアーム7の可動部の数は、それぞれ3つ及び6つに限定されるものではなく、他の数であってもよい。
【0024】
(1−2.ワーク供給装置の構成)
【0025】
図1に示すように、ワーク供給装置3は、作業ロボット2の下部に配置され、塗装対象であるワークWを床FLに垂直な旋回軸AxF(第2旋回軸に相当)の周りに旋回させて、交換位置Ar2から作業ロボット2による作業位置Ar1に供給する。
【0026】
ワーク供給装置3は、ベース部39と、2つのアーム34と、回転装置35と、支持台36とを有する。
【0027】
ベース部39には、支持部材4のベース板41が設置される。2つのアーム34には、ワークWが載置されるテーブル33がそれぞれ設けられている。2つのアーム34は、ベース部39に対して回転可能に構成されており、旋回軸AxF周りに180°間隔で配置され、ベース部39から外周方向に延設されている。回転装置35は、2つのアーム34を旋回軸AxF周りに回転させる。支持台36は、回転装置35の下部に配置され、床FLに設置される。
【0028】
ベース部39、回転装置35及び支持台36は、中空部38を有している。中空部38には、作業ロボット2に電力を供給する給電ケーブル51、塗料の色替えを行うためのカラーチェンジバルブ(CCV)54に色ごとに塗料を供給する塗料チューブ52、作業ロボット2内を掃気するためのエアホース53等が挿通され、ワーク供給装置3の上方に引き出される。塗料チューブ52は色数に応じた数(単数でも複数でもよい)だけ設置されており、カラーチェンジバルブ54と反対側の端部は各色の塗料タンク57等(図示を省略しているが、ポンプ等を含む)に接続されている。エアホース53は、往路と復路の2本で構成されており(図1図6では簡略化して1本で図示)、作業ロボット2と反対側の端部は圧力スイッチボックス31に接続されている。また、給電ケーブル51の作業ロボット2と反対側の端部は、ロボットコントローラ32に接続されている。
【0029】
ワーク供給装置3は、2つのアーム34を旋回軸AxF周りに旋回させることによって、ワークWを、例えば塗装ブースの内部(防爆領域)に位置する作業位置Ar1と、例えば塗装ブースの外部(非防爆領域)に位置する交換位置Ar2との間で移送する。ワークWは、作業位置Ar1において作業ロボット2により塗装される。また塗装済みのワークWは、交換位置Ar2において塗装前の新たなワークWに交換される。
【0030】
なお、上述したワーク供給装置3の構成は一例であり、上記以外の構成としてもよい。例えば、アーム34の数は2本(180°間隔)に限定されるものではなく、1本(360°間隔)としてもよいし、3本(120°間隔)又は4本(90°間隔)以上としてもよい。
【0031】
(1−3.支持部材の構成)
図1に示すように、支持部材4は、ワーク供給装置3の上部に立設され、作業ロボット2とワーク供給装置3とを結合する。図2に示すように、支持部材4は、ベース板41と、2本の支柱42と、2枚の側板43と、保持部材44と、連結板47とを有する。
【0032】
ベース板41は、上下方向に貫通する貫通穴48を有する。ベース板41は、ワーク供給装置3のベース部39の上部に設置され、貫通穴48は、ベース部39及び回転装置35等に形成された中空部38に連通する。中空部38に挿通された上記給電ケーブル51、塗料チューブ52及びエアホース53は、貫通穴48を通ってベース板41の上方に引き出される。
【0033】
2本の支柱42は、例えば角柱状の部材であり、ベース板41の上面の後側に左右方向に所定の間隔を開けて立設されている。図1に示すように、2本の支柱42の中心軸AxCは、ワーク供給装置3の旋回中心である旋回軸AxFに対して当該旋回軸AxFに垂直な方向(この例では後方向)に所定距離Lだけずれている。これにより、支柱42を旋回軸AxFに立設した場合に比べて作業ロボット2の設置位置を後方にずらすことができ、作業ロボット2の可動範囲が作業位置Ar1に供給されたワークWに適合するように、作業ロボット2の設置位置を最適化している。
【0034】
図2に示すように、2枚の側板43は、ベース板41の左右の側面と、2本の支柱42の左右の側面にそれぞれ取り付けられている。各側板43は、中間部43aと、中間部43aの下方に形成された連結部43bと、中間部43aの上方に形成された搭載部43cとを有する。連結部43bは、下方に向けて円弧状に前後方向の幅が拡大されており、支柱42の側面とベース板41の側面とを連結する。搭載部43cは、上方に向けて前後方向の幅が拡大されており、作業ロボット2が塗装作業を行う際に駆動される機器が搭載される。本実施形態では、2枚の側板43のうちの一方の側板43、この例では右側の側板43の搭載部43cに、塗装作業の際に駆動される機器として、塗料の色替えを行うためのカラーチェンジバルブ(CCV)54と、塗料の噴射圧力を調節するためのエアオペレートバルブ(AOPR)56とが配置されている。なお、図2では塗料チューブ52やエアホース53等の図示を省略している。
【0035】
保持部材44は、例えば矩形状の板部材であり、2本の支柱42の前面の高さ方向略中間位置に取り付けられている。保持部材44は、後側の背面に設置された図示しないクランプ部により給電ケーブル51やエアホース53等を保持(クランプ)する。
【0036】
連結板47は、例えば矩形状の板部材であり、2枚の側板43の搭載部43c間を連結する。図1に示すように、連結板47には作業ロボット2のベース6が設置される。連結板47には、給電ケーブル51やエアホース53等を挿通するための開口部47aが形成されており、給電ケーブル51やエアホース53等が支持部材4から作業ロボット2内に導入される。
【0037】
上記構成である支持部材4において、給電ケーブル51は次のように配設される。図2に示すように、ベース板41上に引き出された給電ケーブル51は、2枚の側板43の連結部43b間において後方向に屈曲され、支柱42間の隙間Sに導入される。隙間S内を上方に向かって配設された給電ケーブル51は、保持部材44により保持される。隙間S内をさらに上方に向かって配設された給電ケーブル51は、2枚の側板43の搭載部43c間において前方向に屈曲され、連結板47の開口部47aを通って作業ロボット2のベース6内に導入される。給電ケーブル51は、図示しないコネクタを介してロボットアーム7の各関節部のモータと接続される。なお、図2では図示を省略しているが、エアホース53の配設も上記給電ケーブル51と同様である。
【0038】
一方、塗料チューブ52は次のように配設される。図1に示すように、ベース板41上に引き出された塗料チューブ52は、2枚の側板43の連結部43b間において後方向に屈曲されると共に、右側の側板43の外面に導かれる。右側の側板43の外面上を上方に向かって配設された塗料チューブ52は、搭載部43cの外面に設置されたカラーチェンジバルブ54に接続される。カラーチェンジバルブ54の一次側には色ごとに単数または複数の塗料チューブ52が接続されるが、カラーチェンジバルブ54の二次側には一本の塗料チューブ55が接続される。この塗料チューブ55は、エアオペレートバルブ56に接続され、その後、ロボットアーム7の外周側を引き回すように配設されて塗装ガン16に接続される。塗料チューブ55は、複数のブラケット58、例えばロボットアーム7の第1腕部9の外側(上側)に設けられたブラケット58と、手首部12の第1手首可動部13の外側(前側)に設けられたブラケット58とにより支持される。
【0039】
なお、上述した支持部材4の構成は一例であり、上記以外の構成としてもよい。例えば、側板43に塗料チューブ52を保持する保持部材を設けてもよい。また例えば、カラーチェンジバルブ54とエアオペレートバルブ56を左右の側板43に分けて配置してもよい。また例えば、塗料チューブ52を給電ケーブル51と共に支柱42間の隙間Sに配設してもよい。この場合、カラーチェンジバルブ54とエアオペレートバルブ56を例えば搭載部43cの内側に配置してもよい。また、側板43の搭載部43cに搭載される機器として、上記カラーチェンジバルブ54やエアオペレートバルブ56以外の機器、例えばフラッシャブルギヤポンプ(FGP)等を搭載してもよい。
【0040】
なお、以上では説明を省略したが、カラーチェンジバルブ54、エアオペレートバルブ56及び塗装ガン16には、それぞれの動作をエア圧のON/OFFでコントロールするためのコントロールエア用のチューブ(図示省略)が接続されている。これらのチューブについても、上記給電ケーブル51又は塗料チューブ52と同様に配設してもよい。
【0041】
また、カラーチェンジバルブ54やエアオペレートバルブ56を支持部材4上に配置せずに、塗装ブースの内部(防爆領域)の別の場所(塗装ブースの内壁面等)に配置してもよい。
【0042】
また、支持部材4を一部材で構成するのではなく、例えば上下方向に搭載部43c、中間部43a、連結部43bで分割する等、複数の部材で構成してもよい。
【0043】
<2.ロボットシステムにおける作業ロボットの可動範囲>
次に、図3図5を用いて、比較例のロボットシステム及び本実施形態のロボットシステムにおける作業ロボットの可動範囲の一例について説明する。
【0044】
(2−1.大型の作業ロボットを設置する場合)
図3は、第1の比較例のロボットシステム1Aにおける作業ロボット2Aの可動範囲の一例を表す説明図である。
【0045】
図3に示すように、ロボットシステム1Aでは、ワーク供給装置3の上部に作業ロボット2Aが支持部材を介さずに設置されている。作業ロボット2Aは、本実施形態の作業ロボット2よりも大型のロボットである。作業ロボット2Aのロボットアーム7Aは、本実施形態の作業ロボット2の第1腕部9、第2腕部11及び第1手首可動部13よりもリーチがそれぞれ長い、第1腕部9A、第2腕部11A及び第1手首可動部13Aを有している。なお、作業ロボット2Aのその他の構成は作業ロボット2と同様であるので、説明を省略する。
【0046】
第1の比較例では、ロボットアーム7Aの全長が長いため、作業ロボット2Aの可動範囲H1は比較的広く、作業位置Ar1に供給されたワークWの全範囲をカバーすることができる。したがって、作業ロボット2AはワークWの全範囲に対して適正に塗装作業を行うことができる。しかしながら、第1の比較例では、作業ロボット2Aが大型であることからロボットシステム1Aが大型化し、設置スペースの増大等を招く可能性がある。
【0047】
(2−2.小型の作業ロボットを支持部材を介さずに設置する場合)
図4は、第2の比較例のロボットシステム1Bにおける作業ロボット2の可動範囲の一例を表す説明図である。
【0048】
図4に示すように、ロボットシステム1Bでは、ワーク供給装置3の上部に作業ロボット2が支持部材を介さずに設置されている。作業ロボット2は、本実施形態の作業ロボット2と同じロボットであり、上記第1比較例の作業ロボット2Aよりも小型のロボットである。すなわち、作業ロボット2のロボットアーム7は、上記第1比較例の作業ロボット2Aの第1腕部9A、第2腕部11A及び第1手首可動部13Aよりもリーチがそれぞれ短い、第1腕部9、第2腕部11及び第1手首可動部13を有している。なお、作業ロボット2のその他の構成は本実施形態の作業ロボット2と同様であるので、説明を省略する。
【0049】
第2の比較例では、上記第1の比較例に比べて作業ロボット2が小型であることから、ロボットシステム1Bを小型化でき、省スペース化できる。しかしながら、ロボットアーム7の全長が短いため、作業ロボット2の可動範囲H2は比較的狭く、作業位置Ar1に供給されたワークWの全範囲をカバーすることができない。したがって、作業ロボット2はワークWの全範囲に対して適正に塗装作業を行うことができない可能性がある。
【0050】
(2−3.小型の作業ロボットを支持部材を介して設置する場合)
図5は、本実施形態のロボットシステム1における作業ロボット2の可動範囲の一例を表す説明図である。
【0051】
図5に示すように、ロボットシステム1では、ワーク供給装置3の上部に支持部材4を介して作業ロボット2を設置する。支持部材4は、作業ロボット2のS軸AxSがワーク供給装置3の旋回軸AxFに対して略90°で交差する姿勢となるように、作業ロボット2を所定の高さ位置に支持する。また、支持部材4(支柱42の中心軸AxC)は、旋回軸AxFに対して当該旋回軸AxFに垂直な方向に所定距離Lだけずれた位置に立設されている。これにより、作業ロボット2の高さ方向(上下方向)の位置及び水平方向(前後方向)の位置を、作業ロボット2の可動範囲H0が作業位置Ar1に供給されたワークWの全範囲をカバーできるように、最適化できる。また、作業ロボット2が動作不可能な領域Ar3(ロボットアーム7の懐近傍の領域)を上方向に移動させ、ワークWから離間させることができる。
【0052】
以上のように、本実施形態では、作業ロボット2が小型であることからロボットシステム1を小型化でき、省スペース化できる。さらに、作業ロボット2の設置位置及び姿勢を最適化することにより、可動範囲H0をワークWに適合させ、作業ロボット2はワークWの全範囲に対して適正に塗装作業を行うことができる。
【0053】
<3.実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態のロボットシステム1は、ベース6、及び、ベース6に対してS軸AxS周りに旋回するロボットアーム7を備え、ワークWに対して塗装作業を行う作業ロボット2と、作業ロボット2の下部に配置され、ワークWを旋回軸AxF周りに旋回させて作業ロボット2による作業位置Ar1に供給するワーク供給装置3と、作業ロボット2とワーク供給装置3とを結合し、S軸AxSが旋回軸AxFに対して交差するように作業ロボット2を支持する支持部材4とを有する。これにより、次の効果を奏する。
【0054】
すなわち、ワーク供給装置3の上部に作業ロボット2を備えたロボットシステム1においては、ワークWを交換位置Ar2(例えば塗装ブースの外部)から作業位置Ar1(例えば塗装ブースの内部)へと搬送可能とするために、ワーク供給装置3のアーム34(旋回アーム)は搬送距離に応じた所定の長さを有する。一方で、ロボットシステム1においては省スペース化が要望されている。このため、ワーク供給装置3の上部に設けられる作業ロボット2を小型化した場合、上述した第2比較例(図4)のように、アーム34の長さに比べて作業ロボット2の可動範囲H2が狭くなり、ワークWに対して適正に作業を実行できなくなる可能性がある。
【0055】
本実施形態によれば、ワーク供給装置3の上部に支持部材4を立設し、作業ロボット2のS軸AxSがワーク供給装置3の旋回軸AxFに対して交差する姿勢となるように、支持部材4により作業ロボット2を支持する。これにより、作業ロボット2を小型化した場合でも、作業ロボット2の可動範囲H0が作業位置Ar1に供給されたワークWに適合するように作業ロボット2の設置位置や姿勢を最適化することができる。したがって、ワークWに対して適正に作業を行うことができ、且つ、小型化が可能なロボットシステム1を実現できる。
【0056】
また、本実施形態によれば、作業ロボット2、ワーク供給装置3及び支持部材4が一体的に連結されている。これにより、例えば作業ロボット2とワーク供給装置3とを別々に設置する場合に比べて、作業ロボット2の支持部材4の設計、製作等に要する工数を削減できると共に、設置作業(位置決め作業等)に要する工数を削減でき、コストを大幅に削減できる。
【0057】
また、本実施形態では特に、支持部材4(支柱42の中心軸AxC)は、旋回軸AxFに対して当該旋回軸AxFに垂直な方向に所定距離Lだけずれた位置に立設されている。
【0058】
これにより、作業ロボット2の可動範囲H0が作業位置Ar1に供給されたワークWに適合するように作業ロボット2の水平方向(旋回軸AxFに垂直な方向)の位置を最適化することができる。
【0059】
また、本実施形態では特に、ロボットシステム1は、支持部材4に配置され、ロボットアーム7の給電ケーブル51を保持する保持部材44を有する。
【0060】
これにより、支持部材4の中間部分で給電ケーブル51を保持できるので、ケーブル51の揺れや振動を抑制できると共に、摩擦や衝突による摩耗や損傷等を抑制できる。
【0061】
また、本実施形態では特に、ワーク供給装置3は、ワークWが載置されるテーブル33を備えた少なくとも1つのアーム34と、アーム34を旋回軸AxF周りに回転させる回転装置35と、回転装置35の中心部に配置され、給電ケーブル51や塗料チューブ52等が挿通される中空部38とを有する。
【0062】
これにより、給電ケーブル51や塗料チューブ52等と回転するアーム34とが干渉するのを防止できる。また、支持部材4に沿って配置した給電ケーブル51や塗料チューブ52等をそのままワーク供給装置3の中空部38を通して下方に引き回すことができるので、ケーブルやチューブのレイアウトをシンプル化できる。
【0063】
また、本実施形態では特に、ロボットシステム1は、支持部材4に配置され、作業ロボット2が塗装作業を行う際に駆動される機器(カラーチェンジバルブ54やエアオペレートバルブ56)を有する。これにより、次の効果を奏する。
【0064】
すなわち、作業ロボット2が塗装作業を行う際に駆動される機器の中には、ロボットアーム7の近傍に配置するのが望ましい機器がある。しかし、作業ロボット2を小型化した場合、ロボットアーム7の可搬重量の制約によりそのような機器をロボットアーム7に取り付けることができない場合がある。
【0065】
本実施形態によれば、上記機器を支持部材4に設けるので、作業ロボット2を小型化した場合でも、上記機器の重量によらずにロボットアーム7の近傍に配置することができる。
【0066】
また、カラーチェンジバルブ54を支持部材4に設けることにより、例えばカラーチェンジバルブ54をワーク供給装置3や床FL等に設ける場合に比べて、塗装ガン16に近づけることができる。これにより、塗料の色替えを行う際の排出塗料やシンナーの量を低減できるので、ランニングコストを削減できると共に、環境への負荷を低減できる。また、エアオペレートバルブ56を支持部材4に設けることにより、塗料の吐出量をより精度良く制御することができる。
【0067】
また、本実施形態では特に、支持部材4は、S軸AxSと旋回軸AxFとの角度が略90°となるように作業ロボット2を支持する。これにより、次の効果を奏する。
【0068】
すなわち、一般に作業ロボット2は正面方向に広い可動範囲を備える。本実施形態によれば、作業ロボット2をS軸AxSと旋回軸AxFとの角度が略90°となるような姿勢とすることで、作業ロボット2の正面方向にワークWを位置させることができる。したがって、作業ロボット2の可動範囲H0を作業位置Ar1に供給されたワークWに適合させることが容易となる。
【0069】
また、本実施形態では特に、作業ロボット2は、ワークWに対して塗装作業を行う塗装ロボットである。
【0070】
これにより、ワークWに対して適正に塗装作業を行うことができ、且つ、小型化が可能な塗装ロボットシステムを実現できる。
【0071】
<4.変形例>
なお、開示の実施形態は、上記に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を説明する。
【0072】
(4−1.塗料チューブを内周側に配設する場合)
上記実施形態では、塗料チューブ55をロボットアーム7の外周側を引き回すように配設して塗装ガン16に接続したが、塗料チューブ55をロボットアーム7の内周側を引き回すように配設して塗装ガン16に接続してもよい。本変形例のロボットシステム1Cの全体構成の一例を図6に示す。
【0073】
図6に示すように、ロボットシステム1Cでは、エアオペレートバルブ56に接続された塗料チューブ55は、ロボットアーム7の内周側を引き回すように配設されて塗装ガン16に接続される。塗料チューブ55は、複数のブラケット58、例えばロボットアーム7の第1腕部9の内側(下側)に設けられたブラケット58と、手首部12の第1手首可動部13の内側(後側)に設けられたブラケット58とにより支持される。ロボットシステム1Cのその他の構成は上記実施形態のロボットシステム1と同様であるので説明を省略する。
【0074】
本変形例によれば、上記実施形態に比べて塗料チューブ55の全長を短縮できる。これにより、カラーチェンジバルブ54により塗料の色替えを行う際の排出塗料やシンナーの量をさらに低減できるので、ランニングコストの削減効果、環境への負荷の低減効果をさらに高めることができる。
【0075】
(4−2.その他)
上記実施形態では、作業ロボット2が所定の作業として塗装を行う場合を一例に説明したが、作業ロボット2は、塗装以外の作業、例えば溶接、部品の組立、切削などの加工等を行ってもよい。
【0076】
また、支持部材4による作業ロボット2の支持姿勢は、S軸AxSと旋回軸AxFとの角度が略90°となる姿勢に限定されるものではなく、90°以外となる姿勢(例えば70°、80°等)でもよい。
【0077】
なお、以上の説明において、「垂直」「平行」「平面」等の記載がある場合には、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「垂直」「平行」「平面」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」「実質的に平面」という意味である。
【0078】
また、以上の説明において、外観上の寸法や大きさ、形状、位置等が「同一」「同じ」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「同じ」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に同じ」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0079】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。その他、一々例示はしないが、上記実施形態や変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0080】
1 ロボットシステム
1C ロボットシステム
2 作業ロボット
3 ワーク供給装置
4 支持部材
6 ベース
7 ロボットアーム
33 テーブル
34 アーム
35 回転装置
38 中空部
44 保持部材
51 給電ケーブル
54 カラーチェンジバルブ(機器の一例)
56 エアオペレートバルブ(機器の一例)
Ar1 作業位置
AxS S軸(第1旋回軸)
AxF 旋回軸(第2旋回軸)
W ワーク
L 所定距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6