(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の吸収要素の反身体面に設けられた弾性伸縮シートによって、吸収体に多量の排泄物が吸収された場合においても外部に排泄物の漏れを防止し、また、吸収体の垂れ下がり、よれ、割れに起因するもたつき感を防止する構造の理解を容易にするために、先ずパンツタイプ使い捨ておむつ100について添付図面を参照して説明する。
図1に示すように、パンツタイプ使い捨ておむつ100は、製品の外面をなす外装体12と、外装体12の内面に貼り付けられた内装体200とから形成されている。
【0021】
<内装体>
図2に示すように、内装体200は、平面視において長方形に形成されているが、任意の形状にすることもできる。なお、本明細書において「前後方向」とは、腹側と背側を結ぶ方向を言い、「幅方向」とは、前後方向と直交する方向を言い、「上下方向」とは、パンツタイプ使い捨ておむつ100の装着状態において胴回り方向と直交する方向を言うものとする。
【0022】
図4,5に示すように、内装体200は、身体面の表面シート30と、反身体面の液不透過性の弾性伸縮シート11と、これらの間に介在された吸収要素50とを備えている。また、表面シート30を透過した液を速やかに吸収要素50へ移行させるために、表面シート30と吸収要素50との間には、中間シート40が設けられ、内装体200の両脇に排泄物が漏れるのを防止するために、内装体200の両側には、身体側に起立する立体ギャザー60が設けられている。なお、
図4,5等の点模様部分は各構成部材を接合する接合部分を示しており、ホットメルト接着剤などのベタ、ビード、カーテンなどにより形成されるものである。
【0023】
(表面シート)
表面シート30は、液を透過する性質を有するものであり、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを例示することができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンボンド法、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであればエアスルー法、ポイントボンド法、サーマルボンド法が、好ましい加工方法である。
また、表面シート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、表面シート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。また、立体ギャザー60を設ける場合、表面シート30の両側部は、弾性伸縮シート11と立体ギャザー60との間を通して、吸収要素50の裏側まで回りこませ、液の浸透を防止するために、弾性伸縮シート11及び立体ギャザー60に対してホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。
【0024】
(中間シート)
表面シート30を透過した液を速やかに吸収体へ移行させるために、表面シート30より液の透過速度が速い、中間シート40を設けることができる。この中間シート40は、液を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高めるばかりでなく、吸収した液の吸収体からの「逆戻り」現象を防止し、表面シート30上を常に乾燥した状態とすることができる。中間シート40は省略することもできる。
中間シート40は、表面シート30と同様の素材や、スパンレース、スパンボンド、SMS、パルプ不織布、パルプとレーヨンとの混合シート、ポイントボンド又はクレープ紙を例示できる。特にエアスルー不織布が嵩高であるため好ましい。エアスルー不織布には芯鞘構造の複合繊維を用いるのが好ましく、この場合芯に用いる樹脂はポリプロピレン(PP)でも良いが剛性の高いポリエステル(PET)が好ましい。目付けは20〜80g/m
2が好ましく、25〜60g/m
2がより好ましい。不織布の原料繊維の太さは2.2〜10dtexであるのが好ましい。不織布を嵩高にするために、原料繊維の全部又は一部の混合繊維として、芯が中央にない偏芯の繊維や中空の繊維、偏芯且つ中空の繊維を用いるのも好ましい。なお、目付けとは、次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度20±5℃、相対湿度65%以下)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を相対湿度10〜25%、温度50℃を超えない環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から米坪板(200mm×250mm、±2mm)を使用し、200mm×250mm(±2mm)の寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、20倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
図2に図示する中間シート40は、吸収体56の幅より短く中央に配置されているが、吸収体56の全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の前後方向長さは、吸収体56の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。
【0025】
(弾性伸縮シート)
弾性伸縮シート11は、少なくとも一方向に伸長可能であり、且つ、伸長された状態において弾性的に収縮する性質を発現し得るシート材を広く用いることができる。例えば、弾性伸縮性シート11としては、天然ゴム、ネオプレン等の合成ゴム、ポリブタジエン、ポリウレタン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、エチレンと1−オクテンとの共重合体等のエチレン−αオリフィン共重合体やエチレンとアクリル酸エチルとの共重合体、スパンデックス、発泡ポリウレタン等の弾性素材等からなる材料自体が伸縮性を有するフィルム、不織布、織物等、及びこれらの弾性素材と他の材料との複合材等を使用することができる。
弾性伸縮性シート11のシートの構造としては弾性素材からなるフィルム、編み物、不織布、織物及びネット等、及びこれらと他の材料との積層体、交絡体等を挙げることができる。積層体、交絡体は、不織布のような柔軟な材の間に、弾性素材を、ホットメルト、ヒートシールなどの接着手段によって挟み込んで一体化して形成される。
また、伸縮性を有する材料からなる糸状や細幅の伸縮材料を、伸張した状態で幅方向に数本並べて、不織布、フィルム、織物等と接着固定し伸縮性をもたせたシートを用いてもよい。この糸状や細幅の伸縮材料と貼り合わせる不織布、フィルム、織物等としては、伸縮材料からなる材料や、従来当業界公知であるポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルやそれらのポリエチレン−ポリプロピレン複合材料、ポリエチレンーポリエステル複合材料からなる不織布、フィルムなどでも良い。
特に、弾性伸縮シート11は、多層フィルムを用いるのが好ましい。多層フィルムは、少なくとも1つのポリオレフィンポリマーを含有する第1層を含む。また、第2層が提供され、これは少なくとも1つのポリマー化合物を含み、ポリオレフィンポリマー、エチレンコポリマー樹脂、スチレンブロックコポリマー、フルオロポリマー、ポリ塩化ビニルまたは他の好適なポリマーあるいはその混合物であってもよい。
多層フィルムのより好ましい形態は、次の配列:外側コア層/内側コア層/外側コア層のである。外側コア層は、全フィルムの約18〜24重量%であり、好ましくは全フィルムの約20〜24重量%であり、より好ましくは全フィルムの約24重量%である。内側コア層は、全フィルムの約48〜60重量%であり、好ましくは全フィルムの約48重量%〜54重量%であり、より好ましくは全フィルムの約48重量%である。
外側コア層は、好ましくは少なくとも1つのポリオレフィンポリマーからなる。好ましいポリオレフィンポリマーには、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレン、そのコポリマー、そのターポリマー、α−オレフィンプロピレンコポリマー、およびその混合物がある。好ましいプロピレンポリマーは10重量%以下のα−オレフィン内容物を有するプロピレンとC4〜C8α−オレフィンとのコポリマー、10重量%以下のエチレン内容物と15重量%以下のブチレン内容物とを有するプロピレン、エチレンおよびブチレンとのターポリマーである。
内側コア層は、好ましくは約67重量%の中和剤、たとえば、CaCO3と、約33重量%の高SEBSブロックコポリマーを含有する。他の好適な化合物、たとえば、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン熱可塑性エラストマー、または高機能熱可塑性ゴムが使用されてもよい。
多層フィルムは、多層フィルムを製造するのに使用される常套の方法、たとえば、共押出および押出ラミネーション技術によって製造することができる。たとえば、多層フィルムを共押出で製造する場合は、個々の層材料の溶融可塑化されたストリームを共押出ダイに送る。一方、ダイでは、層は並列配置され組み合わされた後、ポリマー状材料の単一の多層フィルムの形でダイから出る。共押出技術は、標準的ダイ、マルチマニホールドダイ、たとえば、円形ダイだけでなく、フラットキャストフィルムおよびキャストシートを形成するのに使用されるマルチマニホールドダイと共にフィードブロックの使用を含む。
また、多層フィルムをブローフィルム共押出によって製造することもできる。多層フィルムは、同心の円形オリフィスを有するマルチマニホールド円形ダイヘッドを備えるブローフィルム装置を用いて形成される。多層フィルムは、溶融状態の層を円形ダイを通じて、かつ第1層と別の側または各対面側では溶融状態の層を第1の円形ダイと同心のさらなる円形ダイを通じて共押出することによって形成される。次に、ガス、典型的には空気を円形ダイと同心の噴射口を通じて吹き付け、これによって個々の層を広げるバブルを形成する。次に、バブルを取除いて2つの対面エッジが付着した1対の多層フィルムを形成する。なお、得られた多層フィルムは、所定の幅に切断して巻き取ることができる。
弾性伸縮シート11の目付けは、15〜25g/m
2である。後述する評価試験の結果から、吸収要素50の反身体面に弾性伸縮シート11を固定する場合は、前後方向の伸張率を125〜145%に伸張した弾性伸縮シート11を固定するのが好適である。表1、
図10,11に示すように、前後方向の伸張率が125%未満の場合は、装着者の股間から下側に向けて吸収体56の股間部における中央部が大きく垂れ下がるために装着者にもたつき感を与える虞がある。一方、前後方向の伸張率が145%超の場合には、装着者の股間から下側に向けて吸収体56の股間部における両側部が大きく垂れ下がるために排泄物が外部に漏れ出す虞がある。
【0026】
前後方向の伸張率が125%における弾性伸縮シート11の引張強度は0.19〜0.30Nであり、前後方向の伸長率145%における弾性伸縮シート11の引張強度は0.35〜0.45Nである。なお、弾性伸縮シート11の引張強度は、試料を伸張方向に100mm、非伸長方向に50mmに試料を形成し、オートグラフ(島津製作所AG‐X)にて、チャック間70mmに設定し、試料の伸張方向の端部をチャックで挟み、300mm/secの速度で150mm伸張させて測定した測定値である。
【0027】
図7〜9に示すように、吸収要素50の反身体面に前後方向の伸張率を125〜145%に伸張した弾性伸縮シート11を固定した場合、弾性伸縮シート11の幅方向の長さX2は、吸収要素50の吸収体56の幅方向の長さX1の55〜90%に形成されている。
【0028】
吸収要素50の反身体面に弾性伸縮シート11を固定する方法については、特に制限はなく、吸収要素50の反身体面に弾性伸縮シート11を全面固定したり、部分固定することもできる。なお、吸収要素50の通気性を高めるために、
図14(a)、(b)に示すように相互に離間したドット状の接着剤70を用いて固定するのが好ましい。
部分固定する場合には、弾性伸縮シート11と吸収要素50の反身体面を接合する接合パターンを均一に分散して、接合パターンによって接合される部位の面積を弾性伸縮シート11と吸収要素50の反身体面とが重なる部位に対して少なくとも50%以上にするのが好ましい。
ホットメルト接着剤による接合の場合は、スロット・カーテン・シグネチャーなどにより全面塗布して全面固定してもよいし、間欠塗布して部分固定することもできる。さらに、超音波による場合は、ドットエンボスによって部分固定することもできる。
本明細書において接合される部位の割合は、弾性伸縮シート11と吸収要素50の反身体面が接合パターンによって接合される部位の面積を弾性伸縮シート11と吸収要素50とが重なる部位の面積で除算して算出するものとする。
【0029】
(立体ギャザー)
立体ギャザー60は、内装体200の両側部に沿って前後方向全体にわたり延在する帯状部材であり、表面シート30上を伝わって横方向に移動する尿や軟便を遮断し、横漏れを防止するために設けられているものである。本実施の形態の立体ギャザー60は、内装体200の側部から起立するように設けられ、付け根側の部分は幅方向中央側に向かって斜めに起立し、中間部より先端側の部分は幅方向外側に向かって斜めに起立するものである。
より詳細には、立体ギャザー60は、内装体200の前後方向長さに等しい長さを有する帯状のギャザーシート62を幅方向に折り返して二つに折り重ねるとともに、折り返し部分及びその近傍のシート間に、細長状弾性伸縮部材63を長手方向に沿って伸長状態で、幅方向に間隔をあけて複数本固定してなるものである。立体ギャザー60のうち先端部と反対側に位置する基端部(幅方向においてシート折り返し部分と反対側の端部)は内装体200の側縁部の裏面に固定された取付部分65とされ、この取付部分65以外の部分は取付部分65から突出する突出部分66(折り返し部分側の部分)とされている。また、突出部分66は、幅方向中央側に向かう付け根側部分と、この付け根側部分の先端から幅方向外側に折り返された先端側部分とからなる。この形態は面接触タイプの立体ギャザーであるが、幅方向外側に折り返されない線接触タイプの立体ギャザー(図示省略)も採用することができる。そして、突出部分66のうち前後方向両端部が倒伏状態で表面シート30の側部表面に対してホットメルト接着剤(これに代えて又はこれとともにヒートシールや超音波シール等の素材溶着による固定手段を用いることもできる)により固定された前後固定部とされる一方で、これらの間に位置する前後方向中間部は非固定の自由部分とされ、この自由部分に前後方向に沿う細長状弾性部材63が伸長状態で固定されている。
【0030】
ギャザーシート62としてはスパンボンド不織布(SS、SSS等)やSMS不織布(SMS、SSMMS等)、メルトブロー不織布等の柔軟で均一性・隠蔽性に優れた不織布に、必要に応じてシリコンなどにより撥水処理を施したものを好適に用いることができ、繊維目付けは10〜30g/m
2とするのが好ましい。細長状弾性伸縮部材63としては糸ゴム等を用いることができる。スパンデックス糸ゴムを用いる場合は、太さは470〜1240dtexが好ましく、620〜940dtexがより好ましい。固定時の伸長率は、150〜350%が好ましく、200〜300%がより好ましい。なお、ギャザーシート62は、特に制限はなく他の不織布を使用することもできる。また、二つに折り重ねたギャザーシートの間に折り返し部分から弾性伸縮シート11の幅方向の両側部まで延在する防水フィルム64を介在させることもできる
【0031】
立体ギャザー60の自由部分に設けられる弾性伸縮部材63の本数は2〜6本が好ましく、3〜5本がより好ましい。配置間隔は3〜10mmが適当である。このように構成すると、弾性伸縮部材63を配置した範囲で肌に対して面で当たりやすくなる。先端側だけでなく付け根側にも弾性伸縮部材63を配置しても良い。
立体ギャザー60の取付部分65の固定対象は、内装体200における表面シート30、液不透過性シート11、吸収要素50等適宜の部材とすることができる。これにより、立体ギャザー60は、細長状弾性伸縮部材63の収縮力が前後方向両端部を近づけるように作用するが、突出部分66のうち前後方向両端部が起立しないように固定されるのに対して、それらの間は非固定の自由部分とされているため、自由部分のみが
図3に示すように身体側に当接するように起立する。特に、取付部分65が内装体200の裏面側に位置していると、股間部及びその近傍において立体ギャザー60が幅方向外側に開くように起立するため、立体ギャザー60が脚周りに面で当接するようになり、フィット性が向上するようになる。
立体ギャザー60の寸法は適宜定めることができるが、乳幼児用紙おむつの場合は、立体ギャザー60の起立高さは15〜60mm、特に20〜40mmであるのが好ましい。また、立体ギャザー60を表面シート30表面と平行になるように、平坦に折り畳んだ状態において最も内側に位置する折り目間の離間距離60〜190mm、特に70〜140mmであるのが好ましい。なお、図示形態と異なり、内装体200の左右各側において立体ギャザーを二重に(二列)設けることもできる。
【0032】
防水シート64は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂等からなるプラスチックフィルムや、不織布の表面にプラスチックフィルムを設けたラミネート不織布、プラスチックフィルムに不織布等を重ねて接合した積層シートなどを例示することができる。なお、防水シート64の幅方向の内側部は、弾性伸縮シート11の幅方向の両側部にホットメルト接着剤等で固定されている。
防水シート64には、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている不透液性かつ透湿性を有する素材を用いることが好ましい。透湿性を有するプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性プラスチックフィルムが広く用いられている。このほかにも、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂または疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、プラスチックフィルムを用いずに液不透過性としたシートも、防水シート64として用いることができる。
【0033】
(吸収要素)
吸収要素50は、吸収体56と、吸収体56を包む包装シート58とから形成されている。また、包装シート58は、省略することもできる。
【0034】
(第1実施形態の吸収体)
第1実施形態の吸収体56は、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100〜300g/m
2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30〜120g/m
2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ(2.54cm)当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。吸収体56中には高吸収性ポリマー粒子を分散保持させるのが好ましい。
【0035】
図7に示すように、吸収体56は、吸収体56における腹部と背部の間の中間部の両側部に円弧状の切欠き部57が設けられている。中間部における切欠き部57が設けられた幅方向の長さX3(請求項における「最狭幅」)は、吸収体56の幅方向の長さX1の55〜95%に形成され、中間部における切欠き部57が設けられた前後方向の長さY2は、吸収体56の前後方向の長さY1の25〜67%に形成されている。これにより、表1、
図10(a)、(b)に示すように、吸収体56の幅方向における全域で排泄物を吸収して排泄物の外部への漏れを防止し、装着者の股間から下側に向けて吸収体56の股間部における中央部の垂れ下がりを抑制して装着者に与えるもたつき感を低減することができる。なお、
図10(a)は、弾性伸縮シート11の前後方向の伸張率が140%の評価試験結果を示す股間部の写真であり、
図10(b)は、弾性伸縮シート11の前後方向の伸張率が130%の評価試験結果を示す股間部の写真である。
【0036】
(高吸収性ポリマー粒子)
吸収体56には、その一部又は全部に高吸収性ポリマー粒子を含有させることができる。高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子54としては、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、例えば500μmの標準ふるい(JIS Z8801−1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)でふるい上に残る粒子の割合が30重量%以下のものが望ましく、また、180μmの標準ふるい(JIS Z8801−1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)でふるい上に残る粒子の割合が60重量%以上のものが望ましい。高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量(JIS K7223−1996「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」)が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0037】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が70秒以下、特に40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が遅すぎると、吸収体56内に供給された液が吸収体56外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0038】
また、高吸収性ポリマー粒子としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、嵩高な吸収体56とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。なお、ゲル強度とは、次のようにして測定されるものである。人工尿(尿素:20wt%、食塩:8wt%、塩化カルシウム二水和物:0.3wt%、酸化マグネシウム七水和物:0.8wt%、純水:70.01wt%)49.0gに、高吸収性ポリマーを1.0g加え、スターラーで攪拌させる。生成したゲルを40℃×60%RHの恒温恒湿槽内に3時間放置したあと常温にもどし、カードメーター(I.techno Engineering社製:Curdmeter−MAX ME−500)でゲル強度を測定する。
【0039】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体56の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜350g/m
2とすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m
2未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/m
2を超えると、効果が飽和する。必要であれば、高吸収性ポリマー粒子は、吸収体56の平面方向で散布密度あるいは散布量を調整できる。たとえば、液の排泄部位を他の部位より散布量を多くすることができる。男女差を考慮する場合、男用は前側の散布密度(量)を高め、女用は中央部の散布密度(量)を高めることができる。また、吸収体56の平面方向において局所的(例えばスポット状)にポリマーが存在しない部分を設けることもできる。
【0040】
(第2実施形態の吸収体)
次に、第2実施形態の吸収体56について説明する。なお、第1実施形態の吸収体56と同一部品には、同一符号を付して説明を省略する。
【0041】
図8に示すように、吸収体56は、吸収体56における腹部と背部の間の中間部の両側部に円弧状の切欠き部57が設けられている。中間部における切欠き部57が設けられた幅方向の長さX3(請求項における「最狭幅」)は、吸収体56の幅方向の長さX1の35〜75%で、且つ、弾性伸縮シート11の伸長時の幅方向の長さX2の60〜95%に形成され、中間部における切欠き部57が設けられた前後方向の長さY2は、吸収体56の前後方向の長さY1の25〜67%に形成されている。すなわち、吸収体56のおける切欠き部57が設けられた幅方向の長さX3が、弾性伸縮シート11の幅方向の長さX2よりも狭く形成されている。これにより、表1、
図10(c)に示すように、吸収体56の幅方向における全域で排泄物を吸収して排泄物の外部への漏れを防止し、装着者の股間から下側に向けて吸収体56の股間部における中央部の垂れ下がりをより抑制して装着者に与えるもたつき感を防止することができる。なお、
図10(c)は、弾性伸縮シート11の前後方向の伸張率が140%の評価試験結果を示す股間部の写真である。
【0042】
(第3実施形態の吸収体)
次に、第3実施形態の吸収体56について説明する。なお、第1実施形態の吸収体56と同一部品には、同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
図9に示すように、吸収体56は、長方形状に形成され、吸収体56における腹部と背部の間の中間部の両側部に円弧状のエンボス等によって形成されたスリット57Aが設けられている。中間部におけるスリット57Aが設けられた幅方向の長さX3(請求項における「最狭幅」)は、吸収体56の幅方向の長さX1の10〜45%に形成され、中間部におけるスリット57Aが設けられた前後方向の長さY2は、吸収体56の前後方向の長さY1の30〜60%に形成されている。すなわち、吸収体56のおけるスリット57Aが設けられた幅方向の長さX3が、弾性伸縮シート11の幅方向の長さX2よりも狭く形成されている。これにより、表1、
図10(d)に示すように、吸収体56の幅方向における全域で排泄物を吸収して排泄物の外部への漏れを防止し、装着者の股間から下側に向けて吸収体56の股間部における中央部の垂れ下がりをより抑制して装着者に与えるもたつき感を防止することができる。なお、
図10(d)は、弾性伸縮シート11の前後方向の伸張率が140%の評価試験結果を示す股間部の写真である。
スリットの幅方向の長さは特に限定されないが、スリットの幅方向の長さは5mm〜20mmが好ましい。また、スリット部分には吸収体を構成する高吸収性ポリマーやパルプが存在していても良いし、存在していなくても良い。好ましくは、スリットの吸収体厚み方向の長さは、吸収体の厚みに対して50%〜100%であることが好ましい。
【0044】
(包装シート)
包装シート58を用いる場合、その素材としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMS不織布(SMS、SSMMS等)が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン複合材などを使用できる。目付けは、5〜40g/m
2、特に10〜30g/m
2のものが望ましい。
包装シート58の包装形態は適宜定めることができるが、製造容易性や前後端縁からの高吸収性ポリマー粒子の漏れ防止等の観点から、吸収体56の表裏面及び両側面を取り囲むように筒状に巻き付け、且つその前後縁部を吸収体56の前後から食み出させ、この食み出し部分を表裏方向に潰してホットメルト接着剤等の接合手段により接合する形態が好ましい。また、包装シート58は、包装シート58の外面における前後方向に伸長した状態で弾性伸縮シート11が接合された部位に、弾性伸縮シート11が収縮することで襞が形成される。
【0045】
<外装体>
外装体12は、
図3に示すように、股間部から腹側に延在する前身頃Fを構成する部分と、股間部から背側に延在する後身頃Bを構成する部分とを有し、これら前身頃Fの両側部と後身頃Bの両側部とを接合することのよって、
図1に示すように、装着者の胴を通すためのウエスト開口部WOと、脚を通すための左右一対の脚開口部LOが形成される。なお、外装体12は、特に制限はなく前身頃Fを構成する部分と後身頃Bを構成する部分を別体にすることもできる。
【0046】
外装体12の内面に弾性伸縮シート11を固定する方法については、特に制限はなく、外装体12の内面に対向して設けられる弾性伸縮シート11を全面固定したり、部分固定することもできる。また、外装体12前身頃Fを構成する部分と後身頃Bを構成する部分を別体とされている場合、前身頃F等に対向する弾性伸縮シート11の腹側部を全面固定したり、前身頃F等に対向する弾性伸縮シート11を部分固定することもできる。部分固定する場合には、弾性伸縮シート11と吸収要素50の反身体面を接合する接合パターンを均一に分散して、接合パターンによって接合される部位の面積を弾性伸縮シート11と吸収要素50の反身体面とが重なる部位に対して少なくとも50%以上にするのが好ましい。
ホットメルト接着剤による接合の場合は、スロット・カーテン・シグネチャーなどにより全面塗布して全面固定してもよいし、間欠塗布して部分固定することもできる。さらに、超音波による場合は、ドットエンボスによって部分固定することもできる。
本明細書において接合される部位の割合は、弾性伸縮シート11と吸収要素50の反身体面が接合パターンによって接合される部位の面積を弾性伸縮シート11と吸収要素50とが重なる部位の面積で除算して算出するものとする。また、外装体12は、外装体12の内面における前後方向に伸長させた弾性伸縮シート11が接合された部位に、弾性伸縮シート11が収縮することで襞が形成される。
【0047】
図5,6に示すように、外装体12は、二枚の第1シート材12Sと第2シート12Hを接合して形成されている。内側に位置する第2シート材12Hはウエスト開口部WOの縁までしか延在していないが、外側に位置する第1シート材12Sは第2シート材12Hのウエスト側の縁を回り込んでその内側に折り返されている。また、第1シート材12Sと第2シート12Hの間には、ウエスト縁部Wに配置される細長状のウエスト縁部弾性伸縮部材17と、ウエスト下部Uに配置される細長状のウエスト下部弾性伸縮部材15と、前身頃F及び後身頃Bの中間部Lに配置される細長状の中間部弾性伸縮部材16が固定されている。
【0048】
ウエスト縁部弾性伸縮部材17は、ウエスト開口部WOの近傍部位に、幅方向全体にわたり連続するように、上下方向に所定の間隔を隔てて、かつ所定の伸長率で幅方向に沿って伸長された状態で固定されている。ウエスト縁部弾性伸縮部材17は、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm
2、特に0.1〜1.0mm
2程度)の糸ゴムを、4〜12mmの間隔で3〜22本程度、それぞれ伸長率150〜400%、特に220〜320%程度で固定するのが好ましい。なお、ウエスト縁部弾性伸縮部材17における内装体200側に配置された数本のウエスト縁部弾性伸縮部材17を内装体200と重ねて配置することもできる。
【0049】
ウエスト下部弾性伸縮部材15は、内装体200と重なる幅方向中央部を除いて、幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり連続するように、上下方向に所定の間隔を隔てて、かつ所定の伸長率で幅方向に沿って伸長された状態で固定されている。また、ウエスト下部弾性伸縮部材15としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm
2、特に0.1〜1.0mm
2程度)の糸ゴムを、1〜15mm、特に3〜8mmの間隔で5〜30本程度、それぞれ伸長率200〜350%、特に240〜300%程度で固定するのが好ましい。
【0050】
中間部弾性伸縮部材16は、内装体200と重なる幅方向中央部を除いて、その幅方向両側の各部位に、幅方向全体にわたり連続するように、上下方向に所定の間隔を隔てて、かつ所定の伸長率で幅方向に沿って伸長された状態で固定されている。また、中間部弾性伸縮部材16としては、太さ155〜1880dtex、特に470〜1240dtex程度(合成ゴムの場合。天然ゴムの場合には断面積0.05〜1.5mm
2、特に0.1〜1.0mm
2程度)の糸ゴムを、5〜40mm、特に5〜20mmの間隔で2〜10本程度、それぞれ伸長率150〜300%、特に180〜260%で固定するのが好ましい
【0051】
<評価試験>
実施例1,2は、外装体12の内面に第1実施形態の吸収体56を有する内装体200を固定した試料であり、実施例3は、外装体12の内面に第2実施形態の吸収体56を有する内装体200を固定した試料であり、実施例4は、外装体12の内面に第3実施形態の吸収体56を有する内装体200を固定した試料である。また、比較例1は、実施例1の弾性伸縮シート11の伸張率を100%にした試料であり、比較例2は、実施例1の弾性伸縮シート11の伸張率を120%にした試料であり、比較例3は、実施例1の弾性伸縮シート11の伸張率を150%にした試料である。
【0052】
幼児の形態に類似して製作されたダミー人形に試料を装着し、ダミー人形(カトーテック製 ベビー用Lサイズ座位ウォーキングダミー)の排出口から試料に5分間の間隔を隔てて、人工尿70cc/回を3回、合計人工尿210ccを排出した後に、試料からの人工尿の漏れ、もたつき感を引き起す試料の垂れ下がり状態、試料のよじれ状態を目視観察した。
【0053】
(各例共通の仕様)
・おむつ寸法
全長Y:500mm
全幅X:374mm
・内装体200の寸法
全長:425mm
全幅:140mm
・吸収体56の寸法
全長56Y:375mm
全幅56X:140mm
・吸収体の目付け等
パルプ繊維:109g/m
2
高吸収性ポリマー:204g/m
2
高吸収性ポリマーの吸水量:60g/g
【0054】
目視観察の結果を表1に整理し、
図10(a)〜(d)、
図11(a)〜(d)、
図12(e)〜(h)、及び
図13(i)に目視観察した試料の状態を示す。なお、表1のX1〜3,Y1,2は、
図7〜9に図示したX1〜3,Y1,2に対応する。人工尿の漏れの有無は、ダミー人形に試料から漏れた人工尿の付着が有るか否かで評価した。吸収体の垂れ下がり、吸収体のよじれ形は、目視観察によって評価した。
【0056】
<明細書中の用語の説明>
明細書中で以下の用語が使用される場合、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
・「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。
・「人口尿」は、尿素:20wt%、食塩:8wt%、塩化カルシウム二水和物:0.3wt%、酸化マグネシウム七水和物:0.8wt%、及び純水:70.01wt%を混合したものであり、特に記載の無い限り、温度40度で使用される。
・「ゲル強度」は次のようにして測定されるものである。人工尿49.0gに、高吸収性ポリマーを1.0g加え、スターラーで攪拌させる。生成したゲルを40℃×60%RHの恒温恒湿槽内に3時間放置したあと常温にもどし、カードメーター(I.techno Engineering社製:Curdmeter−MAXME−500)でゲル強度を測定する。
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度20±5℃、相対湿度65%以下)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を相対湿度10〜25%、温度50℃を超えない環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から米坪板(200mm×250mm、±2mm)を使用し、200mm×250mm(±2mm)の寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、20倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
・「吸水量」は、JIS K7223−1996「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」によって測定する。
・「吸水速度」は、2gの高吸収性ポリマー及び50gの生理食塩水を使用して、JIS K7224‐1996「高吸水性樹脂の吸水速度試験法」を行ったときの「終点までの時間」とする。
・試験や測定における環境条件についての記載が無い場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度20±5℃、相対湿度65%以下)の試験室又は装置内で行うものとする。
・各部の寸法は、特に記載が無い限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味し、展開状態とは、収縮や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。