【実施例】
【0029】
図1〜
図9に示すように、この実施例のドラム巻条材の引出機は、前端両側部及び後端両側部にそれぞれ自在車(車輪)1、1…を配した機台2と、該機台2に、その前後端に対して平行に配したドラム載置用の一対の載置用ローラ3、3と、前記機台2の後端部に両側の縦板部(縦棒部)4a、4aの基部を起伏回動自在に取り付けた該縦板部4a、4a及び上端横棒部4bからなる逆U字状の起伏アーム4と、該起伏アーム4を内側に伏動作させた場合に、前記載置用ローラ3、3に載置したドラムdを上から抑えることができるように、該起伏アーム4に取り付けた上部抑えローラ5と、該上部抑えローラ5で前記載置用ローラ3、3に載置されたドラムdを抑えた状態の前記起伏アーム4のその状態を保持するアーム状態保持手段と、前記機台2の後端部中央に取り付けた回転中心軸6a及び該回転中心軸6aを昇降させるための昇降操作手段6bからなる回転中心手段6と、前記起伏アーム4の先端(外端)に構成した移動操作手段7とで、基本的に構成する。
【0030】
前記機台2は、特に
図1〜
図3、
図7及び
図8に示すように、平面から見て長方形の長辺に沿った側板2a、2a及び短辺に各々沿った前端片2bと後端片2cとからなり、前記二つの側板2a、2aはそれぞれ帯状の長尺金属板で構成し、前記前端片2b及び前記後端片2cは、側面視L型の長尺金属部材であるアングル材を用いて構成したものである。該アングル材はその一片を、前記前端片2b及び前記後端片2cの底部側を構成する底部片とし、他の一片を直立側を構成する直立片としたものである。同図に示すように、前記側板2a、2aの各前端は、前記前端片bの両側部でその底部片上に載せ、かつ直立片の内面に当接させて溶接結合し、該側板2a、2aの各後端は、前記後端片2cの両側部でその底部片上に載せ、直立片の内面に当接させて溶接結合したものである。
【0031】
前記自在車1、1…は、前記し、
図1〜
図3及び
図6〜
図9に示すように、前記機台2の前端片2b及び後端片2cにそれぞれ2個づつ配する。各2個の自在車1、1はそれぞれ前端片2b及び後端片2cの両側部でその直立片の外面に固設する。なお、前記自在車1、1…は、いずれの方向にも移動可能な一般的なそれを採用したものである。
【0032】
前記一対の載置用ローラ3、3は、前記機台2の前後方向の中心から前後にそれぞれ等距離の位置に、相互に平行に配する。また、該載置用ローラ3、3は、それぞれその中心軸を前記機台2の側板2a、2aに固設することで、そのローラ部を相互に平行かつ回転自在に配する。なお、一対の載置用ローラ3、3の間隔は、云うまでもなく、これらに載置するドラムdの径に対応して設定する。また該載置用ローラ3、3のローラ部には、
図1〜
図3及び
図6〜
図9に示すように、これらに載置するドラムdが極端に側方にずれたりしないように、それらの両側部から若干内側の位置に、それぞれ横ずれ防止鍔3a、3aを取り付ける。これらの横ずれ防止鍔3a、3aの該載置用ローラ3、3のローラ部への取付は、この実施例では、溶接によって行った。
【0033】
前記起伏アーム4は、前記し、
図1〜
図3及び
図6〜
図9に示すように、前記上端横棒部4bとその両側端から垂下する前記縦板部4a、4aとからなる逆U字状の構成である。同図に示すように、前記縦板部4a、4aの下端(基部)は、前記機台2のそれぞれ対応する側の側板2a、2aの後端内面側から立ち上げた板状のブラケット4c、4cの外面側に回動自在にピン結合する。該ブラケット4c、4cの高さは、特に
図3(a)、(b)に示すように、前記載置用ローラ3、3にドラムdが載っていない状態で、該ブラケット4c、4cに前記縦板部4a、4aの基部をピン結合した起伏アーム4を前記機台2上に伏状態に折り畳んだ場合に、該機台2の側板2a、2a上に伏状態に折り畳んだアーム状態保持手段の後記保持アーム8、8上にほぼ隙間無く相互に平行に載った状態になるように設定する。
【0034】
前記ブラケット4c、4cは、前記のように、前記機台2の側板2a、2aの後端部の内側面に当接状態にし、かつ溶接して固定したものである。従って前記起伏アーム4の縦板部4a、4aは、先に説明したように、該起伏アーム4を、前記載置用ローラ3、3にドラムdが載っていない状態で、伏状態に折り畳むと、
図3(a)、(b)に示すように、前記保持アーム8、8を挟んで前記機台2の側板2a、2aの直上に位置する状態になる。
【0035】
前記起伏アーム4の上端横棒部4bは、
図1、
図2、
図6及び
図9に示すように、金属管で構成し、その両端は、前記縦板部4a、4aの各上端内面に溶接結合したものである。また該上端横棒部4bの中央部には、後述するように、前記移動操作手段7を構成する。
【0036】
前記上部抑えローラ5は、
図1〜
図3及び
図6〜
図9に示すように、前記起伏アーム4の高さ(長さ)方向途中に、その上端横棒部4bに平行になるように配する。
図1、
図2、
図6及び
図9に示すように、前記上部抑えローラ5は、該起伏アーム4の各縦板部4a、4a間に配し、かつそれに配した中心軸とこれに回動自在に外装したローラ部とで構成するものである。それ自体の構成は、前記載置用ローラ3、3と同様である。また該上部抑えローラ5は、該載置用ローラ3、3上に載置したドラムdを、その上から脱落しないように、上方から抑えるものであるから、当然、対象となるドラムdのサイズに合わせて、該起伏アーム4に於ける取り付け高さ位置を設定する。
【0037】
前記アーム状態保持手段は、
図1〜
図3及び
図6〜
図9に示すように、係止突起9、9と前記保持アーム8、8とからなる。前記係止突起9、9は、同図に示すように、前記起伏アーム4の両側の縦板部4a、4aの外面から各々突出させたものであり、突出位置は、該縦板部4a、4aの長さ方向中央部から若干基部寄りの位置に設定してある。
【0038】
前記保持アーム8、8の各下端(基部)は、
図3及び
図6〜
図9に示すように、前記機台2のそれぞれ対応する側の側板2a、2aの前端内面側から立ち上げた板状のブラケット8a、8aに回動起伏自在にピン結合する。該ブラケット8a、8aの高さは、特に
図3(a)、(b)、
図7及び
図8に示すように、前記載置用ローラ3、3にドラムdが載っていない状態で、該ブラケット8a、8aにピン結合した該保持アーム8、8を前記機台2上に伏状態に折り畳んだ場合に、該機台2の側板2a、2a上にほぼ隙間無く平行に載った状態になるように設定する。また該保持アーム8、8の該ブラケット8a、8aへのピン結合は、
図1、
図2、
図6及び
図9に示すように、ピン外端の拡大部と該保持アーム8、8との間に若干の間隔を空け、その間に該ピンに外装状態にした圧縮バネ8c、8cを介在させ、該保持アーム8、8を、
図6及び
図9に示すように、それらの先端で前記起伏アーム4、4のそれぞれの縦板部4a、4aの厚さ分を若干越える程度外方に開くことが可能であるようにしておく。
【0039】
また前記保持アーム8、8には、予め起立又は前部側外方に倒してある該両保持アーム8、8を内側(機台2の上側)に伏回動させた場合に、前記上部抑えローラ5で前記載置用ローラ3、3に載置したドラムdを上から抑えた状態になっている起伏アーム4の両側縦板部4a、4a外面の各係止突起9、9を進入係止させることとなるように、それぞれその先端側の対応する部位に、係止溝8b、8bを向きを定めて開口する。
【0040】
該係止溝8b、8bは、前記保持アーム8、8のピン結合部位を中心とし、前記の状態で位置する係止突起9、9を通過する仮想円弧に沿って該保持アーム8、8に形成したものである。該係止溝8b、8bは、該保持アーム8、8を伏回動させて係止突起9、9に係止させるものであるから、その際の下方側に開口し、該係止突起9、9を適切に係止可能なサイズに構成する。なお、該係止突起9、9は、前記起伏アーム4を起伏回動させると、該起伏アーム4の縦板部4a、4aのピン結合部位を中心とする仮想円弧に沿って移動するものであり、この仮想円弧は、前記保持アーム8、8を起伏回動させた場合の前記係止溝8b、8bの通過する仮想円弧とは、該係止突起9、9が係止溝8b、8bに係止した位置で交差するものであり、それ故、前記起伏アーム4は、両者の係止状態では起立動作することができず、該起伏アーム4によるドラムdの保持状態は確実に維持されることになるものである。一方、保持アーム8、8は、係止溝8b、8bが対応する仮想円弧に沿って形成されているので、当然、起立回動が可能であり、保持状態の解除は可能になっている。
【0041】
なお、この実施例では、該保持アーム8、8には、該係止溝8b、8bをそれぞれ一箇所にしか設けていないが、用いるドラムdのサイズが種々ある場合は、それに応じて、複数箇所に設けることができる。より大サイズのドラムdを併せて用いる場合は、それに対応させて該保持アーム8、8の現在の係止溝8b、8bより先端側に他の係止溝を設ける。前記係止突起9、9との対応関係は先に述べたとおりである。
【0042】
前記機台2の両側板2a、2aには、それらの後部側で、前記起伏アーム4のためのブラケット4c、4cより僅かに前部側の位置に、前記保持アーム8、8のための挟持保持部8d、8dを構成する。これらの挟持保持部8d、8dは、
図1〜
図3(a)、(b)及び
図6〜
図9に示すように、両側板2a、2aの前記位置の表裏両面に固設して立ち上げた二枚の金属板からなるものであり、前記保持アーム8、8を、前記載置用ローラ3、3にドラムdが載っていない状態で、前記機台2上に伏状態に折り畳んだ場合に、該機台2の側板2a、2a上に平行に載った状態になりながら、該各保持アーム8、8がそれぞれ対応する挟持保持部8d、8dの両側の金属板で挟持保持され、安定してその状態を維持することができることになる。この挟持保持部8d、8dは、この実施例では、
図3(a)、(b)、
図7及び
図8に示すように、その高さが、該保持アーム8、8を挟持するだけのものになっているが、これをより高くすれば、同様に、前記起伏アーム4、4を折り畳んだ場合に、その縦板部4a、4aも同時に挟持保持することができることになる。この場合には、これらの挟持保持部8d、8dを設置する位置は、前記機台2の側板2a、2aの現在の設置位置より前方寄りの方が好ましい。
【0043】
前記回転中心手段6は、前記し、
図4(a)〜(e)に示すように、前記回転中心軸6a及び該回転中心軸6aを昇降させるための前記昇降操作手段6bからなる。
前記回転中心軸6aは、同図に示すように、円柱状を基本とする軸体であり、その下部は、
図4(c)に示すように、それより上方の部位より小径の小径部6a1に形成し、それより上方の部位と同径になるように該小径部6a1に合成ゴム製の緩衝材6a2を被覆して構成したものである。
【0044】
前記昇降操作手段6bは、
図4(a)、(b)、(d)及び(e)に示すように、前記回転中心軸6aの上端に直角に結合した操作棒6cと、該回転中心軸6aを昇降方向に案内する昇降案内管6dと、該昇降案内管6dをその中に固設し、軸昇降空間6e、天板部6f、正面開口部6g及び下端開口部6hを有するケース部材6iと、圧縮バネ部材6jと、係合溝10とで構成したものである。
【0045】
前記昇降案内管6dは、
図4(a)、(b)に示すように、前記ケース部材6iの下部内側に固設し、前記のように、前記回転中心軸6aを昇降自在に案内しかつ支持するものであり、該回転中心軸6aが不使用時で上昇状態にあるときはそのほぼ中央部から下方の部位を外装した状態にする。この昇降案内管6dの長さは限定されないが、確実な案内と支持のためには可能な限り長い方が良い。
【0046】
前記軸昇降空間6eは、
図4(a)、(b)に示すように、前記昇降案内管6dの上端より上方の前記ケース部材6i内部の空間である。この軸昇降空間6eは、同図に示すように、両側は該ケース部材6iの側部によって区画され、上端は、前記天板部6fによって区画される。正面は前記正面開口部6gによって開口しており、前記操作棒6cは、
図4(a)、(d)に示すように、該正面開口部6gを通じてその先端側が外部に突出できるようになっている。前記天板部6fは、前記昇降案内管6dで昇降案内される前記回転中心軸6aのそれ以上の上昇を規制する規制面になるものでもある。
【0047】
なお前記軸昇降空間6eの高さ方向の寸法は、前記回転中心軸6aを下降操作した場合の、前記昇降案内管6d及びケース部材6iの下端開口部6hからの下降量寸法に対応させて決定するものである。該下降量寸法は、該回転中心軸6aの下端が床面f等に到達し、その両側の自在車1、1を若干浮かせることができるだけの下降量である。
【0048】
前記正面開口部6gは、前記のように、そこを通じて前記操作棒6cを外部に突出させるためのものであるから、該操作棒6cの上下方向の移動範囲内でのみ開口していればよいが、この実施例では、前記ケース部材6iの上端から下端までの正面側に開口するものとなっている。
【0049】
前記下端開口部6hは、前記ケース部材6iの下端の開口部であり、全面開口となっている。この実施例では、前記したように、該ケース部材6i内の下部側に前記昇降案内管6dが配置固定してあり、その下端の開口部もこの下端開口部6hと同一高さ位置に開口している。従って、前記したところからも理解されるように、前記回転中心軸6aは、該昇降案内管6dの下端開口から突出下降するとき、同時に、該ケース部材6iのこの下端開口部6hからも突出下降することになる。
【0050】
前記ケース部材6iは、前記し、
図4(a)、(b)、(d)、(e)に示すように、正面側に前記正面開口部6gを全面的に開口し、下端も前記下端開口部6hを全面的に開口したほぼ直方体状の部材であり、その背面を、
図1、
図2、
図6及び
図9に示すように、前記機台2の後端片2cの幅方向中央部において、該後端片2cの直立片の外面に溶接固定したものである。取り付け高さは、前記回転中心軸6aを所定量下降させた場合に、床面f等に到達した該回転中心軸6aで押し上げられて、その両側の自在車1、1が若干浮くこととなるように設定する。
【0051】
前記圧縮バネ部材6jは、
図4(a)、(b)に示すように、前記回転中心軸6aに外装状態で、前記昇降案内管6dの上端と前記操作棒6cの基部との間に配する圧縮コイルバネ(圧縮バネ部材)であり、該回転中心軸6aを、これの不使用時には、その上端が、前記軸昇降空間6eの上端であり、前記ケース部材6iの天板でもある前記天板部6fに当接状態となっているように作用するものである。
【0052】
前記係合溝10は、
図4(a)、(b)、(d)、(e)に示すように、前記ケース部材6iの両側部の内、正面側から見た場合の右側(左側でも不都合ではない)の側部に切欠形成した溝部であり、前記操作棒6cを係合できる高さ方向の幅寸法で、該操作棒6cを前記回転中心軸6aに直交する仮想面に沿って該ケース部材6iの背面と平行になるまで右側に回転させることができる深さに形成したものである。
【0053】
またこの係合溝10の高さ位置は、特に
図4(a)、(b)に示すように、前記回転中心軸6aを所定量下降させ、床面f等の上までその下端が到達した該回転中心軸6aによって押し上げられてその両側の自在車1、1が若干浮くこととなった段階で、該回転中心軸6aを中心に前記操作棒6cを右側に回動させて進入係合させることができる位置に設定する。
【0054】
前記移動操作手段7は、
図1、
図2、
図6及び
図9に示すように、金属管で構成した前記起伏アーム4の上端横棒部4bの長さ方向中央部に取り付けたもので、該上端横棒部4bに回転自在に外装した取付管7aと、該取付管7aにアングル材7bを介して取り付けた引っ張り操作桿7cと、該操作桿7cの先端に取り付けたグリップ部7dと、前記取付管7aの両側に前記上端横棒部4bに固定して配した固定管7e、7eと、該固定管7e、7eにその両側部を固定したストッパ部材7fとで構成したものである。
【0055】
前記取付管7aは、前記し、
図5(a)〜(d)に示すように、前記起伏アーム4の上端横棒部4bの中央部に回転自在に外装したものであり、該取付管7aは、両側で該上端横棒部4bに溶接固定した固定管7e、7eによって、該上端横棒部4bの長さ方向中央部に位置決めされる。
【0056】
前記引っ張り操作桿7cは、その基部を、
図2、
図3(a)、(b)、
図5(a)〜(f)及び
図6〜
図9に示すように、前記アングル材7bを介して前記取付管7aに固設する。該アングル材7bは、同図に示すように、該取付管7aと同一長さ寸法の部材であり、その1片側を該取付管7aに溶接固定し、他の1片側に前記引っ張り操作桿7cの基部を溶接固定する。該アングル材7bの1片側の該取付管7aへの溶接固定は、特に
図3(a)及び
図5(c)に示すように、その外面側を該取付管7aの下側に固定するように行い、この状態で該取付管7aの前面側から垂下する他の1片の外面側に、前記引っ張り操作桿7cの基部を、この引っ張り操作桿7cが前記起伏アーム4から延長する方向に延びるように溶接固定する。
【0057】
なお、以上の状態で、前記アングル材7bの前記取付管7aに溶接した側の外端部が、前記ストッパ部材7fの下部側に当接し、該取付管7aはそれ以上に前記引っ張り操作桿7cを下降させる方向の回転が阻止されるようになっている。また該取付管7aは、これを逆方向に180度回転させると、該引っ張り操作桿7cは、
図3(b)に示すように、その先端側が前記起伏アーム4の基部側を向くことになり、かつこのとき該引っ張り操作桿7cの基部を固設したアングル材7bの1片と他の1片との結合部が前記ストッパ部材7fの反対側に当接状態となり、該取付管7aのその方向へのそれ以上の回転は阻止されるようになっている。
【0058】
以上の引っ張り操作桿7cは、
図2及び
図3(b)に示すように、前記起伏アーム4の長さを僅かに越える程度とした。なお、この長さはこれに限定されない。
【0059】
前記グリップ部7dは、金属管で構成するものであり、
図1、
図2、
図5(a)、
図6及び
図9に示すように、前記引っ張り操作桿7cの先端に、これとによりT字形をなすように溶接結合する。
【0060】
前記固定管7e、7eは、
図5(a)、(b)に示すように、前記取付管7aの両側に配して前記上端横棒部4bに溶接固定したものであり、前記したように、該取付管7aを、該上端横棒部4bの中央部に位置するように規制するものである。更に該固定管7e、7eは、
図5(a)、(b)、(e)、(f)に示すように、前記ストッパ部材7fを、これらを介して該上端横棒部4bに固設するものである。該ストッパ部材7fは、
図5(a)〜(f)に示すように、金属板材からなるものであり、その両側の内側の部位を前記固定管7e、7eに溶接固定し、前記取付管7aに面する部位は、若干隙間を空け、該取付管7aとは結合しないようにしたものである。
【0061】
前記ストッパ部材7fは、先に述べたところから理解されるように、前記引っ張り操作桿7cを、前記取付管7aを回動させることにより、前記起伏アーム4に沿ってその基部側を向けて延長状態になるように折り畳んだ場合に、該取付管7aがそれ以上に同方向に回動しないように制限し、かつ該引っ張り操作桿7cを逆回動操作し、該取付管7aを逆方向に回動させることにより、該引っ張り操作桿7cが前記起伏アーム4の延長方向に延びた状態になるようにした場合に、該取付管7aがそれ以上にその方向に回動しないように制限するものでもある。
【0062】
したがってこの実施例のドラム巻条材の引出機によれば、種々の条材、例えば、電線類w、ケーブル類、コード類又はホース類その他を巻いたドラムdを、
図6〜
図9に示すように、セットして、それらの条材の引き出しのために使用することができる。
【0063】
ここでは電気工事にこの実施例のドラム巻条材の引出機を使用する場合を例にとって説明する。
そこでここでは、条材としては電線類w又は各種のケーブル類が対象となる。
まずこの引出機の使用に際しては、必要な種類の電線類wを巻いたドラムdを用意する。通常6種類程度の電線類を使用するが、それらの各種類毎に使用予定長さ分の電線類wを巻いた数個のドラムd、d…を用意する。引出機は一台で良い。ドラムdの直径が異なる複数種がある場合は、それらに対応する引出機を用意する。具体的には、前記したように、前記保持アーム8、8に対応する複数の係止溝8bを形成した引出機を用意する。
【0064】
引出機には、電線類wを巻いたドラムdをセットする。即ち、ドラムdを、
図6及び
図7に示すように、前記一対の載置用ローラ3、3上に、それらと同軸方向に向けて載せ、前記機台2の後端の外方に開いた状態にしてある前記起伏アーム4を、特に
図7に示すように、起こしてそれに配してある上部抑えローラ5で前側上方から該ドラムdを抑えた状態にし、前記機台2の前端の外方に開いた状態にしてある前記アーム状態保持手段の保持アーム8、8を、特に
図7及び
図8に示すように、起こし、これによって、特に
図6及び
図9に示すように、その先端側を前記起伏アーム4の前記縦板部4a、4aの厚さ分を若干越える程度外側に開いた上で、
図7及び
図8に示すように、該保持アーム8、8に形成してある係止溝8b、8bを該縦板部4a、4aに突設してある前記係止突起9、9に係止させる。こうして非常に簡単に引出機にドラムdをセットすることができる。
【0065】
このようにセットした引出機は、
図6及び
図7に示すように、前記移動操作手段7の引っ張り操作桿7cを前記起伏アーム4の延長外方向に延ばした状態にした上で、該引っ張り操作桿7cの先端のグリップ部7dを掴んで、引っ張れば、その機台2を所望の場所まで容易に移動させることができる。前記したように、該機台2には、4個の自在車1、1…が配してあり、これによって床面f等の上を自由な方向に移動することが可能になる。引出機の機台2を持ち上げて運ぶような必要はないので、大きな労力を要しない。途中に段差等がありこれを越える場合は、前記起伏アーム4の一部、例えば、上端横棒部4b、或いは上部抑えローラ5等を掴んでこの引出機を持ち上げる必要が生じるが、これは、通常、僅かな距離又は時間であり、全体として大きな労力を必要とすることにはならない。引出機の移動操作は大きな労力を必要とせず、簡単に行えることになる。
【0066】
なお、以上の引っ張り操作桿7cは、そのグリップ部7dを掴んで押すような操作をしても、この引出機を移動させることは可能である。また、前記引っ張り操作桿7cは、引出機の移動の際以外において、これが邪魔になるような場合には、前記したところから理解されるように、これを起伏アーム4の基部側に折り返しておくことができる。
【0067】
この引出機を、現場のこれを使用する場所に移動させた後は、前記回転中心手段6の操作棒6cの押し下げ操作をしておく。この押し下げ操作は、前記機台2の後端側である後端片2cを掴んで該後端片2cに取り付けた自在車1、1を若干浮かせた上で行う。該操作棒6cを、前記圧縮バネ部材6jに抗して、前記回転中心軸6の下端が前記後端片2cに取り付けた自在車1、1の下端より若干下方に突出することとなるまで押し下げ、該操作棒6cをその時点で右側に回転させ、これを、
図4(b)、(e)、
図8及び
図9に示すように、前記ケース部材6iの正面開口部6gの側方に構成してある前記係合溝10内に滑り込ませて係合する。こうして前記回転中心軸6bは、その下方への突出状態が保持され、
図8及び
図9に示すように、該機台2の後端部側は該回転中心軸6aで、前端部側は前端片2bに取り付けた二つの自在車1、1で、それぞれ支持され、全体として三点支持による安定した支持が確保されることになる。
【0068】
この後は、この引出機の機台2に載置してあるドラムdから必要に応じてこれに巻いてある電線類wを引き出すことができる。電線類wは、既述のような理由から、ドラムdの下側から引き出すこととする。
【0069】
ドラムdは、以上の状態に於いて、下部側は前記載置用ローラ3、3に転動自在に載置され、かつ上方側は前記上部抑えローラ5により同様に転動自在に抑えられているので、電線類wの引き出しの際には、その位置に保持されつつ、スムーズな転動が行われることとなる。
【0070】
電線類wが、例えば、ドラムdの巻胴の軸方向に対して斜め方向から引き出されるような場合には、該電線類wが引かれるのにともなって、前記機台2が前記回転中心軸6aを中心として回転し、該ドラムdの巻胴の軸方向を引出方向に対して直交する向きに変えることとなる。該機台2は、前記のように、前記後端片2cの中央に配した前記回転中心手段6の回転中心軸6a及び前端片2bに取り付けた自在車1、1による三点支持であり、前記の電線類wの引き出しが行われる場合には、自在車1、1が必要な方向に向きを変え、該回転中心軸6aを中心に回転することになる。
【0071】
このとき、前記のように、前記載置用ローラ3、3には、それぞれそれらの両側部付近に前記横ずれ防止鍔3a、3aが配してあるため、以上のように、電線類wが、ドラムdの巻胴の軸方向に対して斜め方向から引っ張られた場合、該ドラムdが該載置用ローラ3、3上を若干横ずれ移動することはあり得るが、該ドラムdは、その鍔部が、いずれ横ずれした側の該横ずれ防止鍔3a、3aに当接することとなり、それ以上には移動できなくなるため、該載置用ローラ3、3のローラ部からずれ落ちるようなおそれはない。
【0072】
また該機台2は、該回転中心軸6aで移動が封じられているので、以上のように、電線類wが引き出しされる場合に、該機台2自体が引き出し方向に移動してしまうようなおそれはない。更に該回転中心軸6aは、その下部の小径部6a1に合成ゴム製の緩衝材6a2を被覆してあるため、該回転中心軸6aが床面f等に圧接状態になっても、該床面f等を痛めるような問題も生じない。
【0073】
こうして引出機の機台2は、電線類wの引き出しにともない、おのずとこれに対して安定した方向に向くこととなるため、該電線類wの引き出しの際に、引出機の機台2自体が転倒して引き出しが不能になる等の問題が生じるおそれはない。またその引き出しの際に機台2自体が引き出し方向に移動するようなおそれもない。それ故、その引出しは何時でも安定して滞りなく行え、引出しを利用する電気工事の作業がスムーズに行えるものである。
【0074】
ドラムdの電線類wを全て引き出してしまった場合には、同サイズの電線類wの巻いてある他のドラムdに載せ替える必要があるが、この引出機では、前記保持アーム8、8を引き上げ、その係止溝8b、8bから前記係止突起9、9を外して前記機台2の前端外方側に倒せば、前記起伏アーム4は自由に動けるようになり、これを引き起こして該機台2の後端外方に倒すことができるようになる。そこでこのようにした上で、電線類wの引き出されてしまったドラムdを該機台2の前記載置用ローラ3、3上から取り除き、対応する電線類wの巻いてある他のドラムdに載せ替えることができる。その後は、前記したように、該起伏アーム4及び該保持アーム8、8を操作して該ドラムdの載置状態を保持できるようにすればよい。
【0075】
またこの引出機を、別な場所に移動させたい場合には、
図4(a)、(d)、
図6及び
図7に示すように、前記回転中心手段6の操作棒6cを左側に回転させて前記係合溝10から外し、これを前記圧縮バネ部材6jの作用で上昇させ、これとともに、前記回転中心軸6bを上昇させる。こうして、
図6及び
図7に示すように、この引出機の機台2は、これに配した前後の4個の自在車1、1…で支持されることになり、前記移動操作手段7の引っ張り操作桿7cが前記起伏アーム4の基部側に折り返し状態になっている場合は、前記したように、これを前記起伏アーム4の延長外方向に延ばした状態にした上で、該引っ張り操作桿7cの先端のグリップ部7dを掴んで、引っ張れば良い。該機台2は、所望の場所まで容易に移動できることになる。なお、前記したように、移動途中に段差等がある場合は、前記起伏アーム4の一部等を掴んで引出機を引き上げ、その上を越えることができるのは云うまでもない。
【0076】
この引出機の不使用時には、ドラムdを取り除いて、引出機それ自体をコンパクトに折り畳むことができる。したがってその保管や運搬の際のスペースが非常に小さくて済む。
すなわち、ドラムdを除去すれば、前記保持アーム8、8は、
図3(a)、(b)に示すように、前記機台2の前端側から伏状態に倒して、該機台2の側板2a、2a上にほぼ隙間無く相互に平行な状態に載せる(折り畳む)ことができる。そしてこのとき、該保持アーム8、8は、それぞれ前記機台2の側板2a、2aの後部側の部位に配した挟持保持部8d、8dで挟持保持されることになり、その状態が確実に保持される。
【0077】
前記起伏アーム4は、その後、
図3(a)、(b)に示すように、該機台2の後端側から伏状態に倒して、該側板2a、2a上に載っている該保持アーム8、8上にほぼ隙間無く相互に平行な状態に載せる(折り畳む)ことができる。また該起伏アーム4の上端横棒部4bに前記取付管7a等を介して結合した前記引っ張り操作桿7cは、
図3(a)に示す起伏アーム4の延長方向への伸長状態からこれを上方に約180度回転させて
図3(b)に示す該起伏アーム4の基部方向に向けた折り畳み状態にすることができる。こうして、特に以上の
図3(b)に示すように、この引出機は一枚の板状に近い状態までコンパクトにすることができる。
【0078】
なお、以上の起伏アーム4については、この実施例では、前記挟持保持部8d、8dのような保持手段が用意されていないが、通常の保管や運搬操作等で上記の折り畳み状態が崩れて問題が生じるようなことはほとんど無い。より確実にコンパクトな状態を保持するためには、前記したように、該挟持保持部8d、8dを構成する二枚の金属板として、前記保持アーム8、8の幅を越えて、折り畳みの際にその上に載ることとなる起伏アーム4の縦板部4a、4aを挟持できるだけの寸法のものを採用し、これらで該縦板部4a、4aをも挟持保持するようにすれば良い。この場合は、該挟持保持部8d、8dの配置を若干前方寄りに移動するのが適当である。
【0079】
したがって保管の際や運搬の際には保管又は積み荷スペースを極めて小さくすることができる。具体的には、引出機は、上述のように、折り畳めば、ほぼ板状になってしまうので、保管又は運搬する際には、複数のそれを相互に重ねることができる。