特許第6774654号(P6774654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774654
(24)【登録日】2020年10月7日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】排ガス浄化触媒及び排ガス浄化方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20201019BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20201019BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   B01J23/63 AZAB
   B01D53/94 222
   B01D53/94 280
   B01D53/94 245
   F01N3/10 A
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-44099(P2017-44099)
(22)【出願日】2017年3月8日
(65)【公開番号】特開2018-144000(P2018-144000A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2020年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】特許業務法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊川 将嗣
(72)【発明者】
【氏名】加藤 千和
(72)【発明者】
【氏名】濱口 豪
【審査官】 山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−150268(JP,A)
【文献】 特開2015−226890(JP,A)
【文献】 MORLANG, A. et al.,Bimetallic Pt/Pd diesel oxidation catalysts Structual characterization and catalytic behaviour,Applied Catalysis B: Environmental,Elsevier,2005年 4月19日,Vol.60, No.3-4,p.191-199,DOI:10.1016/j.apcatb.2005.03.007
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
B01D53/73,86−90,94−96
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ及びイットリアからなる担体と、前記担体に担持された白金及びパラジウムとを備え、
前記担体におけるイットリウムの含有量が、イットリア換算で16〜36質量%であり、
前記白金と前記パラジウムとの含有比率が、金属換算での質量比(白金:パラジウム)で10:1〜1:10の範囲にあり、
前記白金と前記パラジウムとの少なくとも一部が固溶しており、かつ、
CuKα線を用いたX線回折測定において2θ角が81.3°〜82.1°の間に現れる回折ピークのメインピーク位置Aと、前記含有比率からベガード則に基づいて求められる白金及びパラジウムの固溶体のメインピーク位置の計算値Bと、の関係が次式(1):
0≦(A−B)≦0.15 … (1)
で示される条件を満たすこと、
を特徴とする排ガス浄化触媒。
【請求項2】
前記メインピーク位置Aが白金及びパラジウムの固溶体の(311)面に起因するピーク位置にあることを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項3】
前記白金の担持量が、金属換算で、前記アルミナ100質量部に対して0.1〜15質量部であり、かつ、
前記パラジウムの担持量が、金属換算で、前記アルミナ100質量部に対して0.01〜15質量部である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒に内燃機関からの排ガスを接触せしめて前記排ガスを浄化することを特徴とする排ガス浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化触媒及びそれを用いた排ガス浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガソリン車のエンジン、ディーゼルエンジン、燃料消費率の低い希薄燃焼式(リーンバーン)エンジン等の内燃機関から排出されるガス中に含まれる有害な成分(例えば一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等)を浄化するために、様々な種類の排ガス浄化触媒が研究されてきた。そして、そのような排ガス浄化触媒として、金属酸化物等の担体と前記担体に担持された貴金属等の活性種とを備える排ガス浄化触媒が提案されている。
【0003】
このような排ガス浄化触媒としては、例えば、特開平9−308829号公報(特許文献1)において、白金、ルテニウム、ロジウム及びパラジウムからなる群から選択された少なくとも一種の元素と、プラセオジムと、イットリウムとを含む触媒成分とを有し、前記触媒成分をジルコニアやアルミナ等の耐火性担体に担持させたディーゼルエンジン排ガス浄化触媒が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載されているような従来の排ガス浄化触媒においては、低温でのCOやHCに対する酸化活性が必ずしも十分なものではなかった。
【0004】
また、特開平8−266865号公報(特許文献2)には、触媒担持層と、該触媒担持層に担持された白金族元素と、を有するディーゼルエンジン用排ガス浄化触媒が記載されており、前記触媒担持層がアルミナ、シリカ、チタニア、ゼオライト、シリカ−アルミナ及びチタニア−アルミナ等の耐火性無機酸化物により形成されること、並びに、前記触媒担持層には、更にバナジウムと、ランタン、セリウム、イットリウム及びタングステンの少なくとも一種との複合酸化物が担持されること、が開示されている。特許文献2の記載によれば、CO等の酸化・分解性能の維持・向上と、SOの生成のより十分な抑制とを同時に実現可能なディーゼルエンジン用排ガス浄化触媒を提供することが可能となっている。しかしながら、近年は排ガス浄化触媒に対する要求特性が益々高まっており、より低温においてもCOやHCの酸化活性に優れる排ガス浄化触媒が求められるようになってきた。
【0005】
さらに、国際公開第2013/150271号(特許文献3)には、耐火性金属酸化物担体上に合計1〜10重量%の1又は複数の貴金属を含み、合計1〜20重量%の安定化金属を更に含み、少なくとも前記貴金属の一部が前記安定化金属との混合金属酸化物として存在する、炭化水素の高温燃焼用に担持された貴金属触媒が記載されており、前記貴金属として白金及び/又はパラジウムが記載され、これらが金属酸化物を形成することが記載されている。しかしながら、特許文献3に記載の貴金属触媒は高温における炭化水素燃焼や水蒸気改質反応を目的とするものであって、同文献に記載されているような酸化物状態の貴金属では、低温でのCOやHCの酸化活性が低いという問題があった。
【0006】
また、特開2015−226890号公報(特許文献4)には、アルミナ及びイットリアからなる担体と、該担体に担持された白金及びパラジウムとを備え、前記担体における前記イットリアの含有量が2〜15質量%であり、前記白金と前記パラジウムとの含有比率(質量比)が1:1〜10:1の範囲にあり、前記白金と前記パラジウムとの少なくとも一部が固溶しており、かつ、前記白金、前記パラジウム及び/又はその固溶体に起因するCuKα線を用いたX線回折法における(311)面由来の回折線ピークが81.5°以上である排ガス浄化触媒が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−308829号公報
【特許文献2】特開平8−266865号公報
【特許文献3】国際公開第2013/150271号
【特許文献4】特開2015−226890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献4によれば、前記担体におけるイットリウムの含有量を多くすると白金とパラジウムとの固溶度が低くなって低温でのCOやHCに対する酸化活性が低下する場合があった。他方、前記担体にイットリウムを含有させることによってCOやHCをより低温で酸化させることが可能となるため、前記担体におけるイットリウムの含有量が多くとも、低温においてCO及びHCに対して十分に高い酸化活性を発揮することが可能な排ガス浄化触媒が要求される。
【0009】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、低温でのCO及びHCに対する酸化活性に優れた排ガス浄化触媒、及びそれを用いた排ガス浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、アルミナ及びイットリアからなる担体と、前記担体に担持された白金及びパラジウムとを備える排ガス浄化触媒において、前記白金及び前記パラジウムの担持比率を特定の範囲内にすると共に、前記白金と前記パラジウムとを特に固溶度の高い固溶体とすることにより、前記担体におけるイットリウムの含有量が多くとも、低温でのCO及びHCに対する酸化活性が十分に高くなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の排ガス浄化触媒は、
アルミナ及びイットリアからなる担体と、前記担体に担持された白金及びパラジウムとを備え、
前記担体におけるイットリウムの含有量が、イットリア換算で16〜36質量%であり、
前記白金と前記パラジウムとの含有比率が、金属換算での質量比(白金:パラジウム)で10:1〜1:10の範囲にあり、
前記白金と前記パラジウムとの少なくとも一部が固溶しており、かつ、
CuKα線を用いたX線回折測定において2θ角が81.3°〜82.1°の間に現れる回折ピークのメインピーク位置Aと、前記含有比率からベガード則に基づいて求められる白金及びパラジウムの固溶体のメインピーク位置の計算値Bと、の関係が次式(1):
0≦(A−B)≦0.15 … (1)
で示される条件を満たすこと、
を特徴とするものである。
【0012】
本発明の排ガス浄化触媒としては、前記メインピーク位置Aが白金及びパラジウムの固溶体の(311)面に起因するピーク位置にあることが好ましい。また、本発明の排ガス浄化触媒においては、前記白金の担持量が、金属換算で、前記アルミナ100質量部に対して0.1〜15質量部であり、かつ、前記パラジウムの担持量が、金属換算で、前記アルミナ100質量部に対して0.01〜15質量部であることが好ましい。
【0013】
本発明の排ガス浄化方法は、上記本発明の排ガス浄化触媒に内燃機関からの排ガスを接触せしめて前記排ガスを浄化することを特徴とする方法である。
【0014】
なお、本発明における「CuKα線を用いたX線回折測定において2θ角が81.3°〜82.1°の間に現れる回折ピーク」とは、排ガス浄化触媒について、CuKαを用いたX線回折(XRD)測定をすることで得られるX線回折パターンから求められる回折ピークであり、前記X線回折パターンの2θ角が81.3°〜82.1°の間に現れる回折ピークのことをいう。かかる回折ピークは、白金結晶、パラジウム結晶、及びそれらの固溶体の(311)面に起因する回折ピークである。また、その「メインピーク位置A」とは、前記回折ピークのうち、ピークトップまでの高さが最も高いもの(メインピーク)の、ピークトップがある位置(°)のことをいう。
【0015】
他方、均質な2成分系の固溶体(連続固溶体)においては、固溶体の組成と格子定数とが比例関係にあるという経験則(ベガード(Vegard)則)が知られている。また、白金及びパラジウムからなる均質な2成分系の固溶体において上記のメインピーク位置Aを求めたとすると、かかるメインピーク位置Aと格子定数とは対応する関係にある。然るに、前記ベガード則に基づくと、白金結晶、パラジウム結晶、及びそれらの連続固溶体については、白金結晶のみの場合(Pd=0[%])のメインピーク位置(81.3°)とパラジウム結晶のみの場合(Pd=100[%])のメインピーク位置(82.1°)とから、図1に示す直線が求められる。よって、測定対象における白金とパラジウムとが均質な2成分系の固溶体となっている場合のメインピーク位置の計算値(B値)は、かかる直線(但し、白金結晶のみの場合のピーク位置及びパラジウム結晶のみの場合のピーク位置を除く)と、測定対象における白金とパラジウムとの含有比率(C値:Pd/(Pt+Pd)×100[%])とから求めることができる。本発明における「メインピーク位置の計算値B」とは、このように求められるメインピーク位置の計算値(B値[°])のことをいう。
【0016】
したがって、本発明に係る「メインピーク位置A」と「メインピーク位置の計算値B」との差(A−B)が小さいほど、測定対象である白金、パラジウム及びそれらの固溶体において、白金とパラジウムとが均質に固溶していること、すなわち、白金とパラジウムとの固溶度が高いことを示す。
【0017】
なお、前記X線回折測定の方法としては、測定装置として株式会社リガク製の商品名「UltimaIV」を用いて、CuKα線を用い、40kV、40mA、スキャン速度:0.2°/分の条件で測定する方法を採用することができる。
【0018】
本発明の排ガス浄化触媒において、低温でのCO及びHCに対する酸化活性が十分に高くなる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、先ず、本発明の排ガス浄化触媒においては、担体としてアルミナ及びイットリアからなる担体を備え、かつ、白金及びパラジウムが、金属換算での質量比で10:1〜1:10の範囲となる割合で前記担体に担持されていると共に、これら白金とパラジウムとの少なくとも一部が固溶して担持されている。本発明の排ガス浄化触媒においては、白金とパラジウムとの少なくとも一部がこのように固溶しているため、触媒活性種となる金属粒子(活性金属粒子)である白金粒子、パラジウム粒子、及び白金とパラジウムとの固溶体粒子のうち、白金及びパラジウムからなるメタル状態にあって低温でCO及びHCに対する最も高い酸化活性を発現することが可能な固溶体粒子を前記担体に担持させることができる。さらに、本発明の排ガス浄化触媒においては、白金とパラジウムとが高い固溶度で固溶しているため、担体におけるイットリウムの含有量が16質量%(イットリア換算)より多くとも、固溶体が白金とパラジウムとに分相することが抑制され、前記金属粒子が十分に小さい粒子径のまま、高分散の状態で保持される。そのため、反応の活性サイト数が多くなって、低温においても十分に高い酸化活性が発現するものと本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、低温でのCO及びHCに対する酸化活性に優れた排ガス浄化触媒、及びそれを用いた排ガス浄化方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】白金結晶、パラジウム結晶及びそれらの固溶体における、白金及びパラジウムの組成比とメインピーク位置の計算値との関係を示すグラフである。
図2】実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた排ガス浄化触媒の50%CO酸化温度及び50%HC酸化温度を示すグラフである。
図3】実施例4〜5及び比較例4〜5で得られた排ガス浄化触媒の50%CO酸化温度及び50%HC酸化温度を示すグラフである。
図4】比較例6〜7で得られた排ガス浄化触媒の50%CO酸化温度及び50%HC酸化温度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0022】
[排ガス浄化触媒]
先ず、本発明の排ガス浄化触媒について説明する。本発明の排ガス浄化触媒は、アルミナ及びイットリアからなる担体と、前記担体に担持された白金及びパラジウムとを備え、
前記担体におけるイットリウムの含有量が、イットリア換算で16〜36質量%であり、
前記白金と前記パラジウムとの含有比率が、金属換算での質量比(白金:パラジウム)で10:1〜1:10の範囲にあり、
前記白金と前記パラジウムとの少なくとも一部が固溶しており、かつ、
CuKα線を用いたX線回折測定において2θ角が81.3°〜82.1°の間に現れる回折ピークのメインピーク位置Aと、前記含有比率からベガード則に基づいて求められる白金及びパラジウムの固溶体のメインピーク位置の計算値Bと、の関係が次式(1):
0≦(A−B)≦0.15 … (1)
で示される条件を満たすこと、
を特徴とするものである。
【0023】
(担体)
本発明に係る担体は、アルミナ(Al)及びイットリア(Y)からなり、前記担体におけるイットリウム(Y)の含有量がイットリア換算で16〜36質量%であるものである。本発明においては、前記イットリウムの含有量が16質量%(イットリア換算)以上であっても、白金とパラジウムとの固溶体粒子、並びに、存在する場合には白金粒子及び/又はパラジウム粒子(以下、これらを場合により「活性金属粒子」という)を高分散状態で担持することができる。前記イットリウムの含有量が前記下限未満、或いは、前記上限を超えると、前記固溶体粒子が粒成長し、高分散状態で担持することが困難となる。このようなイットリウムの含有量としては、前記固溶体粒子をより高分散状態で担持することができる傾向にある観点から、16〜30質量%であることがより好ましく、17〜25質量%であることが更に好ましい。
【0024】
ここで、「アルミナ及びイットリアからなる」とは、前記担体がアルミナ及びイットリアのみから構成されるもの;アルミナ、並びに、イットリア及び/又はアルミナとイットリアとの複合金属酸化物(Al等)から構成されるもの;或いは、主としてアルミナ及びイットリア(又は、アルミナ、並びに、イットリア及び/又はアルミナとイットリアとの複合金属酸化物)からなり本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を含み構成されるものであることを意味する。また、本発明に係る担体において、本発明に係る担体が前記他の成分を含む場合、該担体におけるアルミナ、イットリア及びこれらの複合金属酸化物の合計含有量は、担体の全質量100質量%に対して50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。前記担体におけるアルミナ、イットリア及びこれらの複合金属酸化物の含有量が前記下限未満では、本発明の効果が十分に奏されない傾向にある。
【0025】
本発明に係るアルミナ(Al)としては、ベーマイト型、擬ベーマイト型、χ型、κ型、ρ型、η型、γ型、擬γ型、δ型、θ型及びα型からなる群から選択される少なくとも一種のアルミナとすることができるが、耐熱性の観点から、α−アルミナ、γ−アルミナ及びθ−アルミナからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましく、低温でのCO及びHCに対する酸化活性がより高くなる傾向にある観点から、γ−アルミナ及び/又はθ−アルミナであることがより好ましい。
【0026】
なお、本発明に係る担体が上記の他の成分を含む場合、かかる他の成分としては、この種の用途の担体として用いられる他の金属酸化物や添加剤等が挙げられる。前記他の金属酸化物としては、排ガス浄化触媒の担体に用いることが可能な金属酸化物であればよく、特に制限されず、例えば、担体の熱安定性や触媒活性の観点からは、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、スカンジウム(Sc)、バナジウム(V)等の、希土類、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属などの金属の酸化物、これらの金属の酸化物の混合物、これらの金属の酸化物の固溶体、これらの金属の複合酸化物が挙げられる。
【0027】
本発明に係る担体としては、その形状は特に制限されず、リング状、球状、円柱状、粒子状、ペレット状等、従来公知の形状のものを適宜用いることができる。これらの中でも、前記活性金属粒子を分散性の高い状態でより多く担持することができるという観点から、粒子状であることが好ましい。前記担体が粒子状である場合、該粒子(担体粒子)の平均一次粒子径としては、1〜300nmであることが好ましく、3〜200nmであることがより好ましい。前記平均一次粒子径が前記下限未満になると、微細化にコストがかかるとともに、その取扱いが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、前記活性金属粒子の分散性が低下したり、排ガス浄化触媒を下記の基材に固定する場合に安定に固定することが困難となる傾向にある。なお、本発明において、粒子の平均一次粒子径は、X線回折装置を用いて粉末X線回折ピークの半値幅からシェラーの式(Scherrer’s equation)を用いて算出することにより測定することができる。或いは、電子顕微鏡による画像の解析によって任意の100個の一次粒子径(粒子の断面の最大直径。粒子の断面が円形ではない場合には、その粒子の断面の外接円の直径)の平均としても算出することができる。
【0028】
本発明に係る担体としては多孔質体であることが好ましく、前記多孔質体の比表面積としては、特に制限されないが、5〜300m/gであることが好ましく、10〜200m/gであることがより好ましい。前記比表面積が前記下限未満になると、前記活性金属粒子の分散性が低下して触媒性能(低温でのCO及びHCに対する酸化活性)が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、低温でも該担体の上に担持された前記活性金属粒子の粒成長が促進されるために触媒性能が低下する傾向にある。なお、このような比表面積は、吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。
【0029】
また、前記多孔質体の平均細孔直径としては、特に制限されないが、10〜1000nmであることが好ましく、50〜500nmであることがより好ましい。前記平均細孔直径が前記下限未満になると、細孔内におけるガス拡散性が低下して触媒性能が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、比表面積が低下して触媒性能が低下する傾向にある。なお、このような平均細孔直径は、窒素吸着等温線を測定し、BJH法により細孔径分布曲線を作成することによって求めることができる。
【0030】
本発明に係る担体の製造方法としては、特に制限されず、従来公知の方法を適宜採用することができる。また、前記担体としては、市販のものを適宜用いてもよい。
【0031】
(白金及びパラジウム)
本発明の排ガス浄化触媒においては、前記担体に白金(Pt)及びパラジウム(Pd)が担持されている。これらの白金及びパラジウムとしては、粒子状で担持されていることが好ましく、前記粒子としては、各金属粒子(白金粒子、パラジウム粒子)、酸化物粒子(白金酸化物粒子、パラジウム酸化物粒子、白金及びパラジウムの複合酸化物の粒子、白金及び/又はパラジウムと他の金属との複合酸化物の粒子)、白金とパラジウムとの固溶体粒子が挙げられる。本発明の排ガス浄化触媒においては、白金及びパラジウムの少なくとも一部が固溶していることが必要であり、少なくとも白金とパラジウムとの固溶体粒子が前記担体に担持されているか、或いは、前記固溶体粒子と白金粒子及び/又はパラジウム粒子とが前記担体に担持されていることが好ましい。また、前記担体に白金粒子及びパラジウム粒子が担持されている場合、白金とパラジウムとの固溶体が高効率に形成され、また、同固溶体が粒成長しにくい傾向にある観点から、白金粒子とパラジウム粒子とがより近傍に担持されていることが好ましい。
【0032】
前記白金粒子、前記パラジウム粒子、及び前記固溶体粒子の平均一次粒子径としては、それぞれ、1〜100nmであることが好ましく、2〜50nmであることがより好ましく、5〜20nmであることが更に好ましい。前記平均一次粒子径が前記下限未満になると、メタル状態になりにくくなって活性サイト特性(活性サイトあたりの活性)が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、活性サイトの数が著しく減少する傾向にある。なお、これらの平均一次粒子径の測定方法は上述のとおりである。
【0033】
本発明の排ガス浄化触媒において、前記白金の担持量としては、金属換算で、前記担体のアルミナ100質量部に対して0.1〜15質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましい。また、前記パラジウムの担持量としては、金属換算で、前記担体のアルミナ100質量部に対して0.01〜15質量部であることが好ましく、0.1〜10質量部であることがより好ましい。前記白金の担持量又はパラジウムの担持量が前記下限未満になると、低温でのCO及びHCに対する酸化活性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、白金やパラジウムのシンタリングが起こりやすくなったり、粒子の分散度が低下したりして、貴金属の有効利用及びコスト面で不利になる傾向にある。
【0034】
また、本発明の排ガス浄化触媒においては、前記担体に担持される白金とパラジウムとの比率が、金属換算での質量比(白金:パラジウム)で10:1〜1:10の範囲にあることが必要である。白金の量が前記下限未満になると(すなわち、パラジウムの量が前記上限を超えると)、低温でのCO及びHCに対する高い酸化活性が十分に得られなくなり、他方、白金の量が前記上限を超えると(すなわち、パラジウムの量が前記下限未満になると)、白金とパラジウムとを固溶させてこれらの固溶体粒子を前記担体に十分に担持させることが困難となる。なお、このような白金とパラジウムとの比率としては、白金とパラジウムとをより十分に固溶させることができる傾向にあるという観点から、金属換算での質量比(白金:パラジウム)で2:1〜8:1の範囲にあることが好ましく、2:1〜4:1の範囲にあることがより好ましい。
【0035】
本発明の排ガス浄化触媒においては、上記のように白金とパラジウムとの少なくとも一部が固溶していることにより、COやHC等との反応の活性サイト特性(活性サイトあたりの活性)が向上する。白金とパラジウムとの固溶体の存在は、例えば、前記担体に担持されている白金及びパラジウムに対してCuKαを用いたX線回折(XRD)測定をすることによって得られるX線回折パターンにおいて、2θ角が81.3°〜82.1°の間の、白金とパラジウムとの固溶体の(311)面に由来する位置に回折ピークがあることによって、好ましくはかかる位置にメインピーク位置があることによって、確認することができる。このような白金とパラジウムとの固溶体の含有量としては、金属換算で、白金及びパラジウムの全量を100質量%として、50〜100質量%であることが好ましい。前記固溶体の含有量が前記下限未満の場合には、COやHC等との反応の活性サイト特性(活性サイトあたりの活性)を十分に向上させることが困難となる傾向にある。
【0036】
また、本発明の排ガス浄化触媒においては、CuKα線を用いたX線回折法における81.3°〜82.1°の間に現れる回折ピークのメインピーク位置Aと、白金とパラジウムとの含有比率からベガード則に基づいて求められる白金及びパラジウムの固溶体のメインピーク位置の計算値Bと、の関係が次式(1):
0≦(A−B)≦0.15 … (1)
で示される条件を満たすことが必要である。メインピーク位置Aと、メインピーク位置の計算値Bとが前記式(1)で示される条件を満たすことは、上述したように、白金とパラジウムとの固溶度が高いことを示す。前記式(1)としては、次式:0≦(A−B)≦0.12で示されることがより好ましい。本発明の排ガス浄化触媒においては、このように高い固溶度で白金とパラジウムとが固溶体となっていることにより、低温でのCO及びHCに対する酸化活性が十分に高くなる。
【0037】
本発明の排ガス浄化触媒の形態としては、特に制限されず、粉末状であっても、ペレット状に成形したものであっても、基材上に固定されたものであってもよい。前記基材の形状としては特に制限されず、ペレット状、ハニカム状等の公知の形状を適宜採用することができ、前記基材としては、特に制限されず、排ガス浄化触媒の用途等に応じて適宜選択されるが、例えば、モノリス状基材、ペレット状基材、プレート状基材等が挙げられる。また、これら基材の材質としても特に制限されないが、例えば、コーディエライト、炭化ケイ素、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材が挙げられる。また、本発明の排ガス浄化触媒は、他の触媒と組み合わせて利用してもよく、このような他の触媒としては特に制限されず、公知の触媒(例えば、酸化触媒、NOx還元触媒、NOx吸蔵還元型(NSR触媒)等)を適宜用いることができる。
【0038】
[排ガス浄化触媒の製造方法]
次に、本発明の排ガス浄化触媒の製造方法について説明する。本発明の排ガス浄化触媒の製造方法としては、例えば、アルミナ粒子及びイットリウム塩溶液を用いてアルミナ及びイットリアからなる担体を得る工程(担体準備工程)と、白金塩溶液及びパラジウム塩溶液を用いて前記担体に白金及びパラジウムを担持せしめる工程(活性金属担持工程)と、白金及びパラジウムが担持された前記担体を500〜1000℃の範囲内の温度で焼成せしめることにより前記本発明の排ガス浄化触媒を得る工程(焼成工程)と、を含む方法を用いることが好ましい。ただし、本発明の排ガス浄化触媒の製造方法はこれに制限されず、適宜公知の方法を採用することができる。
【0039】
(担体準備工程)
前記担体準備工程において用いるアルミナ粒子としては、特に制限されないが、例えば、公知のアルミナの製造方法を適宜採用して得られるアルミナや、市販のアルミナを用いることができる。このようなアルミナの製造方法としては、例えば、硝酸アルミニウム溶液にアンモニア水を添加して中和して得られる沈殿物を500〜1200℃程度で0.5〜10時間程度焼成した後、乾式粉砕してアルミナを得る方法が挙げられる。
【0040】
また、このようなアルミナ粒子の粒子径としては、平均粒子径が0.05〜100μmであることが好ましく、0.1〜10μmであることがより好ましい。前記アルミナ粒子の平均粒子径が前記下限未満になると、得られる担体の粒成長が起こりやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、前記活性金属粒子が高分散で担持されなくなる傾向にある。なお、前記平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における累積体積が50%となる粒子径D50のことをいう。
【0041】
また、このようなアルミナ粒子の比表面積としては、5〜300m/gであることが好ましく、10〜200m/gであることがより好ましい。前記比表面積が前記下限未満になると、前記活性金属粒子の分散度が低下して十分な活性を得ることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られる担体の粒成長が起こりやすくなる傾向にある。
【0042】
前記担体準備工程において用いるイットリウム塩溶液としては、特に制限されないが、例えば、イットリウム(Y)の硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物(弗化物、塩化物等)、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等のイットリウム塩、又はその錯体の溶液が挙げられ、中でも、担体への均一な担持の観点から、酢酸塩、硝酸塩、クエン酸錯体の溶液が好ましい。また、かかる溶液の溶媒としては、特に制限されないが、例えば、水(好ましくはイオン交換水及び蒸留水等の純水)が挙げられる。なお、このようなイットリウム塩溶液の濃度としては、特に制限されないが、イットリウム(Y)イオンとして0.01〜1.0mol/Lであることが好ましい。
【0043】
前記アルミナ粒子及び前記イットリウム塩溶液を用いてアルミナ及びイットリアからなる担体を得る方法としては、特に制限されないが、例えば、前記イットリウム塩溶液に前記アルミナ粒子を含浸せしめる方法や、前記イットリウム塩溶液を前記アルミナ粒子に吸着担持せしめる方法等の公知の方法を適宜採用して前記アルミナ粒子に前記イットリウム塩溶液を接触せしめた後、これを大気中又は窒素(N)等の不活性ガス中で500〜1000℃において3〜20時間焼成する方法が挙げられる。このような方法により、アルミナ及びイットリアからなる担体、より好ましくは、前記アルミナ粒子表面がイットリアで修飾された担体を得ることができる。
【0044】
前記アルミナ粒子に前記イットリウム塩溶液を接触せしめる際においては、前記アルミナ粒子に対する前記イットリウム塩溶液中のイットリウムのモル数(水溶液中のイットリウム元素のモル数/アルミナ粒子の質量)が、0.5〜5mmol/gとなる量比であることが好ましく、0.1〜3mmol/gとなる量比であることがより好ましい。前記アルミナ粒子に対するイットリウムのモル数が前記下限未満になると、前記活性金属粒子の分散性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、前記活性金属粒子のメタル化が困難になる傾向にある。
【0045】
(活性金属担持工程)
前記活性金属担持工程において用いる白金塩としては、特に制限されないが、例えば、白金(Pt)の酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、アンモニウム塩、クエン酸塩、水酸化物、テトラアンミン塩、ジニトロジアンミン塩等又はそれらの錯体が挙げられ、中でも、担持されやすさと高分散性の観点、並びに、パラジウムとより固溶度の高い固溶体を得られる傾向にある観点から、水溶液が塩基性となる塩であることが好ましく、より具体的には、テトラアンミン白金水酸塩等の、酸性イオン(硝酸イオン等)を含まないアンミン系の塩基性塩が好ましい。
【0046】
また、パラジウム塩としては、特に制限されないが、例えば、パラジウム(Pd)の酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、アンモニウム塩、クエン酸塩、水酸化物、テトラアンミン塩、ジニトロジアンミン塩等又はそれらの錯体の溶液が挙げられ、中でも、担持されやすさと高分散性の観点、並びに、白金とより固溶度の高い固溶体を得られる傾向にある観点から、水溶液が塩基性となる塩であることが好ましく、より具体的には、テトラアンミンパラジウム水酸塩等の、酸性イオン(硝酸イオン等)を含まないアンミン系の塩基性塩が好ましい。
【0047】
また、前記白金塩溶液及び前記パラジウム塩溶液の溶媒としては、特に制限されないが、例えば、水(好ましくはイオン交換水及び蒸留水等の純水)等の前記白金塩及び前記パラジウム塩をイオン状に溶解せしめることが可能な溶媒、より好ましくは、前記白金塩及び前記パラジウム塩を溶解せしめた際に塩基性溶液となることが可能な溶媒が挙げられる。なお、このような白金塩溶液及びパラジウム塩溶液の濃度としては、特に制限されないが、それぞれ、白金又はパラジウムのイオンとして0.0002〜0.04mol/Lであることが好ましい。
【0048】
前記白金塩溶液及び前記パラジウム塩溶液を用いて前記担体に白金及びパラジウムを担持せしめる方法としては、特に制限されないが、固溶度の高い固溶体をより十分に得ることができる傾向にあるという観点から、白金とパラジウムとを近傍に担持せしめられる方法であることが好ましく、例えば、前記白金塩溶液と前記パラジウム塩溶液とに前記担体を含浸せしめる方法、前記白金塩溶液と前記パラジウム塩溶液とを前記担体に吸着担持せしめる方法が挙げられる。このような方法により、前記担体に白金及びパラジウムが担持された活性金属担持担体を得ることができる。
【0049】
また、このように前記担体に白金及びパラジウムを担持せしめる際において、前記アルミナ粒子に対する前記白金塩溶液中の白金元素及び前記パラジウム塩溶液中のパラジウム元素の量としては、それぞれ、上記の白金の担持量及びパラジウムの担持量の好ましい範囲を満たす量であることが好ましく、これらの合計量が、金属換算で、前記アルミナ100質量部に対して0.1〜20質量部となる量比であることがより好ましく、0.5〜12質量部となる量比であることがさらに好ましい。前記白金元素及びパラジウム元素の合計量が前記下限未満になると、低温でのCO及びHCに対する酸化活性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、貴金属の有効利用及びコスト面で不利になる傾向にある。
【0050】
(焼成工程)
前記焼成工程においては、前記活性金属担持担体を500〜1000℃の範囲内の温度、より好ましくは750〜900℃の範囲内の温度、更に好ましくは750〜850℃の範囲内の温度で焼成せしめることが好ましい。前記焼成の温度(焼成温度)が前記下限未満になると、白金及びパラジウムの固溶体が十分に生成しないため、低温においてCO及びHCに対する酸化活性が十分に発揮されない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、固溶体を高分散で担持させることが困難となる傾向にある。また、前記焼成の時間(加熱時間)としては、前記焼成温度により異なるものであるため一概には言えないが、1〜20時間であることが好ましく、4〜15時間であることがより好ましい。また、このような焼成工程における雰囲気としては、特に制限されないが、大気中又は窒素(N)等の不活性ガス中であることが好ましい。このような方法により、アルミナ及びイットリアからなる担体と、前記担体に担持された白金及びパラジウムとを備える本発明の排ガス浄化触媒を得ることができる。
【0051】
[排ガス浄化方法]
次に、本発明の排ガス浄化方法について説明する。本発明の排ガス浄化方法は、前記本発明の排ガス浄化触媒に内燃機関からの排ガスを接触せしめて前記排ガスを浄化することを特徴とする方法である。
【0052】
前記排ガスとしては、一酸化炭素(CO)及び/又は炭化水素(HC)を含むものであることが好ましく、例えば、ガソリン車のエンジン、ディーゼルエンジン、燃料消費率の低い希薄燃焼式(リーンバーン)エンジン等の内燃機関から排出される排ガスが挙げられる。
【0053】
前記排ガス浄化触媒に前記排ガスを接触せしめる方法としては、特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、前記排ガスが流通する排ガス管内に上記本発明の排ガス浄化触媒を配置し、前記排ガスを前記排ガス浄化触媒に接触させる方法を採用することができる。
【0054】
本発明の排ガス浄化触媒は低温でのCO及びHCに対する酸化活性に優れるため、本発明の排ガス浄化方法は低温から前記排ガスにおけるCO及びHCを酸化して無害化(CO、HO等に転化)することが可能である。
【実施例】
【0055】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
先ず、イットリウム塩溶液として、クエン酸(和光純薬工業株式会社製、特級)230gをイオン交換水220gに溶解させた溶液に、酢酸イットリウム四水和物(和光純薬工業株式会社製)101gを加え、室温(25℃)において約6時間撹拌して、イットリウムクエン酸錯体水溶液を準備した。次いで、得られたイットリウムクエン酸錯体水溶液を用いて、イットリウムの金属換算での担持量が0.2molとなるようにアルミナ粉末(θ−Al、商品名:puralox、sasol社製)100gにイットリウムを担持せしめ、ロータリエバポレータで乾燥後、大気中、800℃の温度条件で5時間焼成することにより、アルミナの表面がイットリアで修飾された、イットリア表面修飾アルミナ担体(イットリウムのイットリア換算含有量:18.4質量%)を得た。
【0057】
次いで、得られたイットリア表面修飾アルミナ担体を、テトラアンミン白金水酸塩水溶液及びテトラアンミンパラジウム水酸塩水溶液に、前記アルミナ粉末100gに対して白金の担持量(金属換算)が6g、パラジウムの担持量(金属換算)が1.5gとなるように(白金:パラジウム=4:1(金属換算質量比))含浸させ、前記担体に白金及びパラジウムを担持せしめた。これをロータリエバポレータで乾燥後、大気中、550℃の温度条件で2時間焼成することにより、前記イットリア表面修飾アルミナ担体に白金及びパラジウムが担持された、粉末状の排ガス浄化触媒を得た。
【0058】
(実施例2)
前記アルミナ粉末100gに対するイットリウム担持量(金属換算)が0.4molとなるようにしたこと以外は実施例1と同様にして、排ガス浄化触媒を得た(イットリア表面修飾アルミナ担体におけるイットリウムのイットリア換算含有量:31.1質量%)。
【0059】
(実施例3)
前記イットリウム塩溶液として、イットリウムクエン酸錯体水溶液に代えて、酢酸イットリウム四水和物(和光純薬工業株式会社製)をイオン交換水に溶解させた酢酸イットリウム四水和物水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、排ガス浄化触媒を得た。
【0060】
(実施例4)
前記アルミナ粉末としてγ−Alの粉末(商品名:MI307、WRグレース社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、排ガス浄化触媒を得た。
【0061】
(実施例5)
前記アルミナ粉末としてγ−Alの粉末(商品名:MI307、WRグレース社製)を用いたこと以外は実施例3と同様にして、排ガス浄化触媒を得た。
【0062】
(比較例1)
アルミナ粉末(θ−Al、商品名:puralox、sasol社製)を、テトラアンミン白金水酸塩水溶液及びテトラアンミンパラジウム水酸塩水溶液に、前記アルミナ粉末100gに対して白金の担持量(金属換算)が6g、パラジウムの担持量(金属換算)が1.5gとなるように(白金:パラジウム=4:1(金属換算質量比))含浸させ、前記アルミナ粉末(アルミナ担体)に白金及びパラジウムを担持せしめた。これをロータリエバポレータで乾燥後、大気中、550℃の温度条件で2時間焼成することにより、前記アルミナ担体に白金及びパラジウムが担持された、粉末状の排ガス浄化触媒を得た。
【0063】
(比較例2)
前記アルミナ粉末100gに対するイットリウム担持量(金属換算)が0.067molとなるようにしたこと以外は実施例1と同様にして、排ガス浄化触媒を得た(イットリア表面修飾アルミナ担体におけるイットリウムのイットリア換算含有量:7.0質量%)。
【0064】
(比較例3)
前記アルミナ粉末100gに対するイットリウム担持量(金属換算)が0.6molとなるようにしたこと以外は実施例1と同様にして、排ガス浄化触媒を得た(イットリア表面修飾アルミナ担体におけるイットリウムのイットリア換算含有量:40.4質量%)。
【0065】
(比較例4)
前記アルミナ粉末としてγ−Alの粉末(商品名:MI307、WRグレース社製)を用いたこと以外は比較例1と同様にして、排ガス浄化触媒を得た。
【0066】
(比較例5)
前記アルミナ粉末としてγ−Alの粉末(商品名:MI307、WRグレース社製)を用いたこと以外は比較例2と同様にして、排ガス浄化触媒を得た。
【0067】
(比較例6)
テトラアンミン白金水酸塩水溶液に代えてジニトロジアンミン白金硝酸水溶液を用い、テトラアンミンパラジウム水酸塩水溶液に代えて硝酸パラジウム水溶液を用い、かつ、前記アルミナ粉末100gに対して白金の担持量(金属換算)が3.6g、パラジウムの担持量(金属換算)が0.9gとなるようにしたこと以外は比較例4と同様にして、排ガス浄化触媒を得た。
【0068】
(比較例7)
テトラアンミン白金水酸塩水溶液に代えてジニトロジアンミン白金硝酸水溶液を用い、テトラアンミンパラジウム水酸塩水溶液に代えて硝酸パラジウム水溶液を用い、かつ、前記アルミナ粉末100gに対して白金の担持量(金属換算)が3.6g、パラジウムの担持量(金属換算)が0.9gとなるようにしたこと以外は実施例4と同様にして、排ガス浄化触媒を得た。
【0069】
実施例1〜5及び比較例1〜7で得られた排ガス浄化触媒について、アルミナの種類、担体中のイットリウムのイットリア換算含有量(イットリア含有量[質量%])、貴金属(白金(Pt)及びパラジウム(Pd))の担持に用いた貴金属溶液の性質(貴金属溶液)、アルミナ100gあたり貴金属担持量(g)、並びに、白金とパラジウムとの含有比率(Pt:Pd[質量比])を示す。
【0070】
【表1】
【0071】
<活性評価試験>
(実施例1〜5、比較例1〜5)
各実施例及び比較例で得られた排ガス浄化触媒について、大気中、750℃で37時間の熱処理を施した後、それぞれ、次の方法で活性評価試験を行った。すなわち、先ず、内径15mmの石英反応管にアルミナが1g含まれる量の各触媒を充填し、常圧固定床流通型反応装置(ベスト測器株式会社製、「CATA−8000」)を用い、CO(10容量%)、O(10容量%)、CO(800ppm)、C(400ppmC)、NO(100ppm)、HO(5容量%)及びN(残部)からなるモデルガスを10L/分の流量で前記石英反応管内に供給しながら、触媒への入りガスを500℃で5分間加熱した後、前記石英反応管内の温度が50℃となるまで冷却する処理(前処理)を施した。
【0072】
次いで、前記石英反応管内に前記モデルガスを10L/分の流量で供給しながら、触媒への入りガス温度を10℃/分の昇温速度で50℃から400℃まで昇温させた。この昇温中に触媒からの出ガス(触媒に接触した後に石英反応管から排出されるガス)中のCO濃度を連続ガス分析計を用いて測定し、上記モデルガス(入りガス)中におけるCO濃度と出ガス中におけるCO濃度とからCO転化(酸化)率を算出し、CO転化率が50%に到達したときの温度を50%CO酸化温度(T50[℃])とした。また、同様にして、HC(C)転化(酸化)率が50%に到達したときの温度を50%HC酸化温度(T50[℃])とした。なお、CO及びHCについて各T50が小さいほど、低温でのCO及びHCに対する酸化活性に優れるものと評価できる。
【0073】
(比較例6〜7)
前処理における温度を500℃から300℃に代えたこと以外は上記と同様にして活性評価試験を行い、50%CO酸化温度(T50[℃])及び50%HC酸化温度(T50[℃])をそれぞれ求めた。
【0074】
実施例1〜3及び比較例1〜7で得られた排ガス浄化触媒について活性評価試験を行った結果を表2及び図2〜4に示す。
【0075】
【表2】
【0076】
<X線回折測定>
実施例1〜3及び比較例1〜7で得られた排ガス浄化触媒について、それぞれ、次の方法でX線回折測定を行った。すなわち、先ず、各触媒について、粉末X線回折装置(株式会社リガク製、「UltimaIV」)を用いて、スキャンステップ:0.02°、スキャン速度:0.2°/分、CuKα線、40kV、40mA、の条件でX線回折(XRD)測定を行い、得られたX線回折パターンにおいて、2θ角が81.3°〜82.1°の間に現れる回折ピークの値を読み取った。2θ角が81.3°〜82.1°の間に現れる回折ピークは、白金結晶、パラジウム結晶及び/又はそれらの固溶体の(311)面に帰属する回折ピークである。
【0077】
(粒子径測定)
前記回折ピークの半値幅より、シェラーの式(Scherrer’s equation)を用いて、活性金属粒子である貴金属粒子(白金粒子、パラジウム粒子、それらの固溶体粒子)の平均一次粒子径(nm)を求めた。得られた結果を「貴金属粒子径[nm]」として表3に示す。なお、表3には、担体中のイットリウムのイットリア換算含有量(イットリア含有量[質量%])も併せて示す。
【0078】
(固溶状態評価)
前記回折ピークのうち、ピークトップまでの高さが最も高いもの(メインピーク)の、ピークトップがある位置(°)を「ピークA」とした。また、図1に示す直線と、各実施例及び比較例における白金(Pt)及びパラジウム(Pd)の仕込み比から求められるパラジウム含有量(Pd/(Pt+Pd)×100[%])より、ベガード則に基づいてメインピーク位置の計算値(°)を求め、これを「ピークB」とした。また、これらより、ピークAの値(A)とピークBの値(B)との差(A−B)を求めた。得られた結果を表3に示す。なお、A−Bの値の絶対値が小さいほど、白金とパラジウムとの固溶度が高いものと評価できる。
【0079】
(担体状態評価)
X線回折測定により、担体におけるイットリウムの状態を測定した。その結果、イットリウムは、実施例1、4では一部がAl又はYとして、実施例2ではAlとして、実施例3、5ではYとして、それぞれ含有されていることが確認された。なお、比較例3ではAlとして、比較例7では一部がAl又はYとして、それぞれ含有されていることが確認された。
【0080】
【表3】
【0081】
表2及び図2〜3に示した結果から明らかなように、本発明の排ガス浄化触媒(実施例1〜3)は、イットリウムを含まない場合(比較例1)に比べて50%CO酸化温度及び50%HC酸化温度がいずれもかなり低くなり、イットリウムの含有量が少ない排ガス浄化触媒(比較例2)と同等、或いはそれ以上に、低温でのCO及びHCに対する酸化活性に優れることが確認された。この傾向は、アルミナがγ−Alであっても同様であった(実施例4〜5、比較例4〜5)。他方、イットリウムの含有量が多すぎて本発明に係る範囲から外れる場合(比較例3)には50%CO酸化温度及び50%HC酸化温度がいずれも高く、低温での酸化活性が十分ではなかった。
【0082】
また、表2〜3及び図4に示した結果から明らかなように、比較例6〜7で得られた排ガス浄化触媒では、白金とパラジウムとの固溶度が低く、イットリウムを含有させると(比較例7)、イットリウムを含まない場合(比較例6)よりも50%CO酸化温度及び50%HC酸化温度がいずれも高くなり、低温での酸化活性が低下してしまうことが確認された。なおこれは、白金及びパラジウムの担持の際に用いた酸性溶液によってイットリウムが溶出し、白金とパラジウムとの固溶が阻害されたためと本発明者らは推察する。
【0083】
さらに、表3に示した結果から明らかなように、本発明の排ガス浄化触媒の貴金属(白金、パラジウム、それらの固溶体)の粒子径は、比較例における粒子径と比較して十分に小さく、活性金属粒子である貴金属粒子が高分散な状態で担持されていることが確認された。
【0084】
また、上記担体状態評価の結果にも示したように、本発明の排ガス浄化触媒の担体におけるイットリウムの状態は、イットリウム(Y)に限らず、Al等の複合金属酸化物の状態(実施例1、2、4)を含んでいても、低温でのCO及びHCに対する酸化活性に十分に優れることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上説明したように、本発明によれば、低温でのCO及びHCに対する酸化活性に優れた排ガス浄化触媒、及びそれを用いた排ガス浄化方法を提供することが可能となる。本発明の排ガス浄化触媒は、このように低温からCO及びHCに対する十分に高い酸化活性を発揮することが可能であるため、本発明の排ガス浄化方法では、該排ガス浄化触媒に排ガスを接触させることで、同排ガス中のCO及びHCを十分に浄化することが可能である。そのため、本発明の排ガス浄化触媒及び排ガス浄化方法は、例えば、ディーゼルエンジン等の内燃機関からの排ガス中に含まれるCO及びHCを浄化するための排ガス浄化触媒、排ガス浄化方法等として特に有用である。
図1
図2
図3
図4