特許第6774659号(P6774659)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6774659光硬化性樹脂組成物およびそれを用いた三次元光造形物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6774659
(24)【登録日】2020年10月7日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】光硬化性樹脂組成物およびそれを用いた三次元光造形物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20201019BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20201019BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20201019BHJP
【FI】
   C08F290/06
   C08F2/50
   B29C64/314
【請求項の数】18
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2020-523822(P2020-523822)
(86)(22)【出願日】2020年2月14日
(86)【国際出願番号】JP2020005904
【審査請求日】2020年5月28日
(31)【優先権主張番号】特願2019-27834(P2019-27834)
(32)【優先日】2019年2月19日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000214250
【氏名又は名称】ナガセケムテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】特許業務法人河崎・橋本特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡部 功治
(72)【発明者】
【氏名】尾添 弘章
【審査官】 松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−065212(JP,A)
【文献】 特開2016−112824(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/047615(WO,A1)
【文献】 特開2008−133460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00 − 2/60
B29C 64/00 − 64/40
C08F290/00 − 290/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性モノマーと、反応性オリゴマーと、光重合開始剤と、を含む、光硬化性樹脂組成物であって、
前記反応性モノマーは、非芳香族性環を有するアクリル系モノマー、および脂肪族ヒドロキシ化合物またはそのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選択される少なくとも一種を含み、かつ、前記反応性モノマーの硬化物のガラス転移点は、20℃未満であり、
前記反応性オリゴマーは、(メタ)アクリロイル基を有する反応性オリゴマーを含み、かつ、前記反応性オリゴマーの硬化物のガラス転移点は、20℃未満であり、
前記光硬化性樹脂組成物の厚み500μmの液膜に対してLED光を光照射して液膜を完全に硬化させることにより得られる硬化物の25℃における損失正接tanδは、0.2以下であり、
前記硬化物のASTM D638に準拠した破断時伸びは、150%以上である、光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
光硬化により形成される層状の硬化パターンが複数層積層された積層構造を有する三次元光造形物を形成するために用いられる、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
3Dプリンタ用の三次元光造形用材料である、請求項1または2に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
DLP方式の3Dプリンタを用いて、1層当たりの照射時間30秒およびz軸のピッチ100μmの条件で、前記光硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる縦40mm、横20mm、および前記z軸に平行な方向の厚み4mmの短冊状の硬化物について測定される、23℃におけるショアA硬度は、100以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記反応性オリゴマーの重量平均分子量は、10,000より大きく30,000以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記反応性モノマーと、前記反応性オリゴマーとの質量比は、20/80〜80/20である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記反応性モノマーは、非芳香族性環を有する単官能のアクリル系モノマーを含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記反応性オリゴマーは、ポリオキシアルキレン鎖を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
25℃において200mPa・s以上3,000mPa・s以下の粘度を有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
さらに、セラミックス粒子を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
前記セラミックス粒子は、表面官能基として、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、アクリロイルオキシアルキル基、およびメタクリロイルオキシアルキル基からなる群より選択される少なくとも一種を有する、請求項10に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
前記セラミックス粒子は、前記表面官能基として、芳香族炭化水素基、ビニル基、アクリロイルオキシアルキル基、およびメタクリロイルオキシアルキル基からなる群より選択される少なくとも一種を有する、請求項11に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
前記セラミックス粒子は、少なくともシリカ粒子を含む、請求項1012のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項14】
前記セラミックス粒子の含有量は、1質量%以上50質量%以下である、請求項1013のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項15】
前記セラミックス粒子の平均粒子径は、100nm以下である、請求項1014のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物の光硬化物である三次元光造形物。
【請求項17】
反応性モノマーと反応性オリゴマーとを含む光硬化性樹脂組成物の光硬化物である層状の硬化パターンが複数層積層された積層構造を有し、
前記反応性モノマーは、非芳香族性環を有するアクリル系モノマー、および脂肪族ヒドロキシ化合物またはそのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選択される少なくとも一種を含み、
前記反応性オリゴマーは、(メタ)アクリロイル基を有する反応性オリゴマーを含み、
前記光硬化性樹脂組成物の硬化物のガラス転移点が20℃未満であり、25℃における損失正接tanδが、0.2以下であり、ASTM D638に準拠した破断時伸びが、150%以上である、三次元光造形物。
【請求項18】
前記破断時延びが、900%以下である、請求項17に記載の三次元光造形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性樹脂組成物および光硬化性樹脂組成物を用いた三次元光造形物に関する。
【背景技術】
【0002】
3Dプリンタなどの造形技術の発達に伴い、光造形用途に適した光硬化性樹脂組成物の開発が進んでいる。
特許文献1では、インクジェット光造型法によりモデル材を造形するために使用され、かつ光硬化成分として単官能モノマー(A)とオリゴマー(B)とを含有するモデル材用組成物であって、樹脂組成物全体100重量部に対して、(A)成分として20〜90重量部の特定の(メタ)アクリレートモノマーを含み、(B)成分として、5重量部以上の多官能オリゴマーを含む組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/222025号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、硬化物の柔軟性を高めることができても、ゴムのような高伸縮性(以下、ゴム弾性とも言う。)を確保することは難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一局面は、反応性モノマーと、反応性オリゴマーと、光重合開始剤と、を含む、光硬化性樹脂組成物であって、
前記反応性モノマーは、非芳香族性環を有するアクリル系モノマー、および脂肪族ヒドロキシ化合物またはそのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選択される少なくとも一種を含み、かつ、前記反応性モノマーの硬化物のガラス転移点は、20℃未満であり、
前記反応性オリゴマーは、(メタ)アクリロイル基を有する反応性オリゴマーを含み、かつ、前記反応性オリゴマーの硬化物のガラス転移点は、20℃未満であり、
前記光硬化性樹脂組成物の厚み500μmの液膜に対してLED光を光照射して液膜を完全に硬化させることにより得られる硬化物の25℃における損失正接tanδは、0.2以下であり、
前記硬化物のASTM D638に準拠した破断時伸びは、150%以上である、光硬化性樹脂組成物に関する。
【0006】
本発明の他の局面は、上記の光硬化性樹脂組成物の光硬化物である三次元光造形物に関する。
【0007】
本発明のさらに他の局面は、反応性モノマーと反応性オリゴマーとを含む光硬化性樹脂組成物の光硬化物である層状の硬化パターンが複数層積層された積層構造を有し、
前記反応性モノマーは、非芳香族性環を有するアクリル系モノマー、および脂肪族ヒドロキシ化合物またはそのアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選択される少なくとも一種を含み、
前記反応性オリゴマーは、(メタ)アクリロイル基を有する反応性オリゴマーを含み、
前記光硬化性樹脂組成物の硬化物のガラス転移点が20℃未満であり、25℃における損失正接tanδが、0.2以下であり、前記光硬化性樹脂組成物の硬化物のASTM D638に準拠した破断時伸びは、150%以上である、三次元光造形物に関する。
【発明の効果】
【0008】
優れたゴム弾性を有する硬化物が得られる光硬化性樹脂組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る光硬化性樹脂組成物を用いて、三次元光造形物を形成する工程を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の新規な特徴を添付の請求の範囲に記述するが、本発明は、構成および内容の両方に関し、本発明の他の目的および特徴と併せ、図面を照合した以下の詳細な説明によりさらによく理解されるであろう。
【0011】
光硬化性樹脂組成物の硬化物に高いゴム弾性を付与するには、硬化物の伸び性や柔軟性を高めるだけでなく、伸びた硬化物が切れずに元の状態に戻るための強度を確保する必要がある。伸び性や柔軟性と強度とは通常トレードオフの関係となり易いため、両立することは難しい。ある程度の強度を確保しつつ、伸び性や柔軟性が高い場合でも、粘性が高く変形に伴う応力が緩和される場合がある。このような場合、伸びた硬化物の収縮性が低く、優れたゴム弾性を得ることは難しい。また、光造形用途では、光硬化性樹脂組成物が速やかに硬化することが求められる。硬化速度を高めると、硬化反応の制御が難しくなるため、伸び性や柔軟性と強度とを制御しながら、応力緩和がないものを得ることがさらに難しくなる。そのため、従来は、優れたゴム弾性を有する硬化物を得ることは困難であった。
【0012】
本発明の一局面に係る光硬化性樹脂組成物は、反応性モノマーと、反応性オリゴマーと、光重合開始剤と、を含む、光硬化性樹脂組成物である。ここで、反応性モノマーの硬化物のガラス転移点(Tg)は、20℃未満であり、反応性オリゴマーの硬化物のTgは、20℃未満である。光硬化性樹脂組成物の硬化物の25℃における損失正接tanδは、0.2以下であり、光硬化性樹脂組成物の硬化物のASTM D638に準拠した破断時伸びは、150%以上である。
【0013】
本発明の上記局面によれば、反応性モノマーおよび反応性オリゴマーの双方のTg<20℃であるとともに、硬化物のtanδ≦0.2とし、破断時伸びを150%以上とする。これにより、高い柔軟性および/または伸び性を確保することができる。また、硬化物の応力緩和を抑制することができ、ある程度の強度を確保することができる。さらに、反応性モノマーおよび反応性オリゴマーを用いることで、硬化速度が高い場合でも、硬化反応を制御し易くなり、硬化物の伸び性、柔軟性、強度を制御し易くなるとともに、応力緩和を低減し易くなる。よって、優れたゴム弾性を有する硬化物を得ることができる。そのため、このような光硬化性樹脂組成物は、三次元光造形用材料として用いるのに適している。
【0014】
反応性モノマーおよび反応性オリゴマーにおける「反応性」とは、光重合開始剤を利用する硬化反応に関与する反応性基を有するものであることを意味する。
反応性オリゴマーとは、少なくとも、構成ユニットの繰り返し部分(繰り返し数は2以上)を含むものを言い、反応性モノマーと区別される。
本明細書中、反応性モノマーおよび反応性オリゴマーを単に反応性化合物と称する場合がある。
【0015】
損失正接tanδは、温度tにおける光硬化性樹脂組成物の貯蔵せん断弾性率G’と損失せん断弾性率(G”)との比:G”/G’である。貯蔵せん断弾性率G’および損失せん断弾性率G”は、JISK 7244−1:1998に準拠した粘弾性測定装置により測定することができる。具体的には、貯蔵せん断弾性率G’および損失せん断弾性率G”は、厚み500μmの試験片について、市販の動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて、周波数1Hz、昇温速度5℃/分の条件で所定の温度範囲(例えば、−100℃から+100℃)について測定される。
【0016】
反応性モノマーの硬化物のTgは、例えば、反応性モノマーの硬化物について、市販のDMAを用いて測定されるTgである。同様に、反応性オリゴマーの硬化物のTgは、反応性オリゴマーの硬化物について、DMAを用いて測定することができる。各反応性化合物のTgは、光硬化性樹脂組成物から分離した各反応性化合物を硬化させた硬化物について測定してもよく、光硬化性樹脂組成物から反応性化合物を同定し、別途準備した同じ化合物を硬化させた硬化物について測定してもよい。同じ化合物の入手が難しい場合には、類似の構造を有する化合物を用いて測定したTgを、上記の反応性化合物の硬化物のTgとしてもよい。なお、光硬化性樹脂組成物からの反応性化合物の分離は、例えば、遠心分離、抽出、晶析、カラムクロマトグラフィー、および/または再結晶などの公知の分離法を利用して行うことができる。反応性化合物の同定は、例えば、光硬化性樹脂組成物を、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、および/またはマススペクトルなどを用いて分析することにより行うことができる。
【0017】
破断時伸びは、光硬化性樹脂組成物の硬化物で形成された試験片を用いて測定される。試験片としては、通常、厚み500μmで、幅15mmのものが使用される。測定は、23℃、チャック間距離20mm、引張速度200mm/分の条件で行われる。なお、測定には、市販の引張試験機が使用される。破断時伸びは、破断時の試験片の長さL1と初期の試験片の長さL0との差(=L1−L0)のL0に対する比率(=(L1−L0)/L0×100(%))である。複数(例えば、5つ)の試験片について、各物性を測定し、平均化することにより平均値を求める。
【0018】
光硬化性樹脂組成物の硬化物の23℃におけるショアA硬度は、100以下であることが好ましい。この場合、硬化物の高い柔軟性を確保することができる。
本明細書中、硬化物のショアA硬度は、JIS K6253:2012に準拠して、厚み4mm以上の硬化物を用い、市販のデュロメーターを用いて、荷重1kgの条件で測定できる。
【0019】
反応性オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、10,000より大きく30,000以下であることが好ましい。この場合、硬化物の高い強度を確保できるとともに、変形による応力緩和の抑制効果を高めることができる。
本明細書中、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定されるポリスチレン基準の重量平均分子量である。
【0020】
反応性モノマーと、反応性オリゴマーとの質量比は、20/80〜80/20が好ましい。この場合、硬化物の高い強度を確保できるとともに、変形による応力緩和の抑制効果を高めることができる。
【0021】
反応性モノマーは、非芳香族性環を有する単官能のアクリル系モノマーを含むことが好ましい。このようなモノマーを用いる場合、より高い柔軟性および/または伸び性が得られ易く、変形による応力緩和を抑制する効果が高い。また、高い光造形性が得られるとともに、Tgを低く保ち易い。
【0022】
反応性オリゴマーは、ポリオキシアルキレン鎖を含むことが好ましい。この場合、硬化物のより高いゴム弾性が得られやすく、伸びおよび強度に優れる硬化物が得られる。
【0023】
高い光造形性を確保し易い観点からは、反応性オリゴマーは、アクリル系オリゴマーを含むことが好ましい。
【0024】
光硬化性樹脂組成物の粘度は、25℃において、例えば、10mPa・s以上7000mPa・s以下である。この場合、ゴム弾性をより容易に高めることができる。光造形性し易い観点からは、光硬化性樹脂組成物の25℃における粘度は、3000mPa・s以下が好ましい。光硬化性樹脂組成物の25℃における粘度が200mPa・s以上3,000mPa・s以下であってもよい。
なお、光硬化性樹脂組成物の粘度は、例えば、コーンプレート型のE型粘度計を用いて、20rpmの回転速度で測定したものとすることができる。
【0025】
本発明の他の側面には、上記の光硬化性樹脂組成物の光硬化物である三次元光造形物も包含される。本発明のさらに他の側面には、光硬化性樹脂組成物の光硬化物であり、Tgが20℃未満であり、25℃における損失正接tanδが、0.2以下であり、ASTM D638に準拠した破断時伸びが、150%以上である、三次元光造形物も包含される。このような三次元光造形物は、ゴム弾性に優れており、様々な弾性部材(一例を挙げると靴のクッション材など)として利用するのに適している。
以下に、光硬化性樹脂組成物および硬化物(光造形物)の構成についてより具体的に説明する。
【0026】
[光硬化性樹脂組成物]
光硬化性樹脂組成物は、反応性モノマーと、反応性オリゴマーと、光重合開始剤とを含む。光硬化性樹脂組成物は、さらにセラミックス粒子を含んでもよい。
【0027】
(反応性モノマー)
反応性モノマーとしては、光照射により発生したラジカル、カチオン、および/またはアニオンなどの作用により硬化または重合可能な化合物が使用される。反応性モノマーとしては、硬化物のTgが20℃未満である反応性モノマー(第1反応性モノマー)が少なくとも用いられる。第1反応性モノマーの硬化物のTgは、20℃未満であればよいが、実用上安定して高いゴム弾性を確保し易い観点からは、0℃以下が好ましく、−5℃以下であってもよい。
【0028】
第1反応性モノマーは、硬化反応に関与する重合性官能基(第1反応性基)を有している。第1反応性モノマーは、第1反応性基を1つ有する単官能化合物、2つ以上の第1反応性基を有する多官能化合物のいずれであってもよい。単官能化合物と多官能化合物とを組み合わせて用いてもよい。多官能化合物における第1反応性基の個数は、例えば、2〜8個であり、2〜4個であってもよい。第1反応モノマーの重合により線状ポリマーが得られ易い観点からは、第1反応性モノマーとしては、少なくとも単官能化合物を用いることが好ましい。線状のポリマーが得られることで、高い柔軟性や伸び性を確保し易くなる。より高いゴム弾性を確保し易い観点からは、第1反応性モノマーの1分子当たりの第1反応性基の平均的な個数は、1〜1.5が好ましく、1〜1.2がより好ましい。第1反応性モノマーとして、単官能化合物のみを用いてもよい。
【0029】
第1反応性基としては、重合性炭素−炭素不飽和結合を有する基、エポキシ基などが例示できる。重合性炭素−炭素不飽和結合を有する基としては、ビニル基、アリル基、ジエニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。高い硬化速度が得られ易く、光造形性に優れる観点からは、第1反応性基のうち、アクリロイル基およびメタクリロイル基などのラジカル重合性の官能基が好ましい。なお、本明細書中、アクリロイル基およびメタクリロイル基を、(メタ)アクリロイル基と称することがある。
【0030】
第1反応性モノマーとしては、例えば、ビニル系モノマー、アリル系モノマー、アクリル系モノマー、エポキシ化合物などが挙げられる。ビニル系モノマーとしては、ビニル基を有するモノマー、例えば、ヒドロキシ化合物のビニルエーテル、芳香族ビニルモノマー(スチレンなど)、脂環族ビニルモノマー、ビニル基を有する複素環化合物(N−ビニルピロリドンなど)などが例示できる。アリル系モノマーとしては、アリル基を有するモノマー、例えば、ヒドロキシ化合物のアリルエーテルなどが挙げられる。アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基を有するモノマー、例えば、ヒドロキシ化合物の(メタ)アクリル酸エステル、窒素含有化合物と(メタ)アクリル酸との酸アミド、(メタ)アクリル酸などが挙げられる。なお、本明細書中、アクリル酸およびメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と称することがある。アクリル酸エステル(またはアクリレート)およびメタクリル酸エステル(またはメタクリレート)を、(メタ)アクリル酸エステル(または(メタ)アクリレート)と称することがある。
【0031】
上記ヒドロキシ化合物は、脂肪族ヒドロキシ化合物、芳香族ヒドロキシ化合物、脂環族ヒドロキシ化合物、複素環式ヒドロキシ化合物のいずれであってもよい。ヒドロキシ化合物は、一価アルコール、およびポリオールのいずれであってもよいが、硬化物のTgを低くし易い観点からは一価アルコールまたは二価アルコール(ジオール)が好ましい。脂肪族ヒドロキシ化合物は、芳香環、脂肪族環、および/または複素環を有してもよい。脂肪族環は、架橋環であってもよい。なお、第1反応性モノマーにおいて、ヒドロキシ化合物がポリオールの場合、全てのヒドロキシ基がエーテル化またはエステル化されていてもよく、一部のヒドロキシ基がエーテル化またはエステル化されていてもよい。
【0032】
ヒドロキシ化合物は、脂肪族アルコール、脂環式アルコール、芳香族アルコール(または芳香族ヒドロキシ化合物(フェノール類も含む))、複素環式アルコール、またはこれらのアルキレンオキサイド付加物のいずれであってもよい。脂肪族アルコールは、芳香環、脂肪族環、または複素環を有してもよい。脂肪族環は、架橋環であってもよい。これらのヒドロキシ化合物において、ヒドロキシ基は、1つまたは2つ以上であり、1つまたは2つが好ましい。
【0033】
脂肪族アルコールとしては、例えば、アルキルアルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコールなどのアルキルアルコールなど)、グリコール(エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリアルキレングリコール(ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、テトラメチレングリコールなど)、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、キシリレングリコール、フタル酸とエチレングリコールとのモノエステル、フェノキシエチルアルコール、シクロヘキサンメタノール、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。脂肪族アルコールとしては、例えば、C1−20脂肪族アルコールが挙げられ、C1−10脂肪族アルコールであってもよく、C1−6脂肪族アルコール(またはC1−4脂肪族アルコール)であってもよい。脂環式アルコールとしては、シクロヘキサノール、メントール、ボルネオール、イソボルネオール、ジシクロペンタニルアルコールなどの脂環式C5−20アルコール(脂環式C5−10アルコールなど)などが挙げられる。芳香族アルコールとしては、フェノール、ナフトールなどの芳香族C6−10アルコールなどが挙げられる。
【0034】
複素環式アルコールとしては、例えば、ヘテロ原子を環の構成原子として含む複素環基を有するアルコールなど)が挙げられる。複素環を有する脂肪族アルコールとしては、ヘテロ原子を環の構成原子として含む複素環基を有する脂肪族アルコールなどが挙げられる。これらの複素環基としては、例えば、4員〜8員の複素環基が挙げられ、5員または6員の複素環基であってもよい。複素環基は、不飽和複素環基であってもよく、飽和複素環基であってもよい。ヘテロ原子としては、窒素、酸素、および/または硫黄などが挙げられる。複素環基に対応する複素環としては、酸素含有複素環(フラン、テトラヒドロフラン、オキソラン、ジオキソラン、テトラヒドロピラン、ジオキサンなど)、窒素含有複素環(ピロール、イミダゾリン、ピロリジン、イミダゾール、ピペリジン、ピリジンなど)、硫黄含有複素環(チオフェン、テトラヒドロチオフェンなど)、複数種のヘテロ原子を含む複素環(モルホリン、チアジンなど)などが挙げられる。複素環基を有する脂肪族アルコールとしては、複素環基を有するC1−6脂肪族アルコールまたは複素環基を有するC1−4脂肪族アルコールが好ましい。
【0035】
(メタ)アクリル酸と酸アミドを構成する窒素含有化合物としては、脂肪族アミン(トリエチルアミン、エタノールアミンなど)、脂環式アミン(シクロヘキシルアミンなど)、芳香族アミン(アニリンなど)、窒素含有環状化合物などが挙げられる。窒素含有環状化合物としては、ピロール、ピロリジン、ピペリジン、ピリミジン、モルホリン、チアジンなどが挙げられる。窒素含有環状化合物は、5員環〜8員環が好ましく、5環や6員環であってもよい。
【0036】
アルキレンオキサイド付加物の1分子中に含まれるオキシアルキレン基の個数は、例えば、1以上10以下であり、1以上6以下であってもよく、1以上4以下であってもよい。オキシアルキレン基としては、例えば、オキシC1−4オキシアルキレン基(オキシメチレン、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシトリメチレン基など)が挙げられる。
【0037】
第1反応性モノマーのうち、ビニル系モノマーとしては、ビニルエーテル(例えば、一価アルコールのビニルエーテルなど)、脂環族ビニルモノマーなどが例示できる。アリル系モノマーとしては、例えば、アリルエーテル(一価アルコールのアリルエーテルなど)などが挙げられる。
【0038】
第1反応性モノマーのうち、エポキシ化合物としては、エポキシ基を有する化合物(グリシジル基を有する化合物も含む)が挙げられる。エポキシ化合物は、例えば、エポキシシクロヘキサン環または2,3−エポキシプロピロキシ基を含むものであってよい。
【0039】
光硬化性樹脂組成物は、第1反応性モノマーを一種含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。高い光造形性を確保し易い観点からは、光硬化性樹脂組成物は、少なくともアクリル系モノマーを含むことが好ましい。
【0040】
より高い柔軟性および/または伸び性が得られ易く、変形による応力緩和を抑制する効果が高い観点からは、第1反応性モノマーは、非芳香族性環を有する単官能のアクリル系モノマーを含むことが好ましい。また、このようなアクリル系モノマーを用いると、硬化反応が効率よく進行し易く、高い光造形性が得られるとともに、Tgを低く保ち易い。反応性モノマー全体に占めるこのようなアクリル系モノマーの比率は、例えば、80質量%以上であり、90質量%以上であってもよく、95質量%以上としてもよい。反応性モノマーをこのようなアクリル系モノマーのみで構成してもよい。
【0041】
非芳香族性環を有する単官能のアクリル系モノマーとしては、例えば、下記式(1):
【化1】
(式中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、アルキレン基またはアルキレンオキシ基であり、Zは、ヘテロ原子を環の構成原子として含む非芳香族性環である。)で表されるモノマーが挙げられる。
【0042】
で表されるアルキレン基は、例えば、C1−20アルキレンであり、C1−10アルキレンであってもよく、C1−6アルキレンまたはC1−4アルキレンであってもよい。アルキレン基としては、上記例示のアルキルアルコールに対応するアルキレン基(例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、ブチレンなど)が例示できる。アルキレンオキシ基としては、アルキレン基に対応するアルキレンオキシ基であってもよい。アルキレンオキシ基としては、C1−4アルキレンオキシ基(メチレンオキシ、エチレンオキシ、プロピレンオキシ、トリメチレンオキシ基など)が好ましい。なお、アルキレンオキシ基の酸素原子は、環Zに結合している。
【0043】
環Zで表される非芳香族性環としては、脂肪族環、および複素環が挙げられる。非芳香族性環は、架橋環であってもよい。脂肪族環は、例えば、5員〜20員であり、5員〜14員であってもよく、5員〜10員であってもよい。脂肪族環としては、例えば、シクロヘキサン、シクロヘキセン、ノルボルナン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロジシクロペンタジエンなどが挙げられる。複素環(つまり、環Z)が環の構成原子として有するヘテロ原子としては、窒素、酸素、および/または硫黄などが挙げられる。複素環としては、例えば、複素環式アルコールについて例示した複素環が挙げられる。環Zは、置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、ヒドロキシ基、オキソ基(=O)、メルカプト基、アミノ基、アルコキシ基などが挙げられる。アルキル基としては、例えば、C1−6アルキル基が挙げられ、C1−4アルキル基であってもよい。アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、2−プロピル、ブチルなどが例示できる。アルキル基としては、メチル、エチルなどが好ましい。アルコキシ基としては、これらのアルキル基に対応するアルコキシ基が挙げられる。
【0044】
光硬化性樹脂組成物は、第1反応性モノマー以外の反応性モノマー(第2反応性モノマー)を含んでもよい。第2反応性モノマーは、硬化物のTgが20℃以上の反応性モノマーである。第2反応性モノマーは、硬化反応に関与する重合性官能基(第2反応性基)を有している。第2反応性基は、例えば、第1反応性基について記載したものから選択できる。しかし、反応性モノマー全体に占める第2反応性モノマーの比率は少ない方が好ましい。反応性モノマー全体に占める第1反応性モノマーの比率は、例えば、80質量%以上であり、90質量%以上であってもよく、95質量%以上としてもよい。また、反応性モノマーを第1反応性モノマーのみで構成してもよい。
【0045】
(反応性オリゴマー)
反応性オリゴマーとしては、光照射により発生したラジカル、カチオン、および/またはアニオンなどの作用により硬化または重合可能なオリゴマーが使用される。反応性オリゴマーとしては、硬化物のTgが20℃未満である反応性オリゴマー(第1反応性オリゴマー)が少なくとも用いられる。第1反応性オリゴマーの硬化物のTgは、20℃未満であればよく、実用上安定して高いゴム弾性を確保し易い観点からは、0℃以下が好ましく、−20℃以下がより好ましく、−25℃以下がさらに好ましい。
【0046】
第1反応性オリゴマーは、硬化反応に関与する重合性官能基(第3反応性基)を有している。第3反応性基は、第1反応性基について例示したものから選択できる。第1反応性オリゴマーは、第3反応性基を1つ有する単官能のオリゴマーであってもよいが、高いゴム弾性を確保し易い観点からは、2つ以上の第3反応性基を有する多官能のオリゴマーを少なくとも含むことが好ましい。硬化物のTgが20℃未満の多官能のオリゴマーは、硬化により高い柔軟性が得られやすいが、このようなオリゴマーが反応性モノマーの重合物間を架橋する架橋剤として機能することで、硬化物の高い伸び性を確保しながらも、伸びた後の収縮性を高めることができ、さらに高いゴム弾性を確保できると考えられる。多官能のオリゴマーにおいて、第3反応性基の個数は、例えば、2〜8個であり、2〜4個であってもよい。より高いゴム弾性を確保し易い観点からは、多官能のオリゴマーの1分子当たりの第3反応基の平均的な個数が1.5〜2.5であることが好ましい。同様の理由で、少なくとも第3反応基を2つ有する二官能の反応性オリゴマーを用いてもよく、第1反応性オリゴマーを二官能の反応性オリゴマーのみで構成してもよい。
【0047】
第1反応性オリゴマーのMwは、例えば、8,000以上であり、10,000以上であってもよい。硬化物の高い強度を確保し易い観点からは、10,000より大きいことがより好ましく、11,000以上または13,000以上がさらに好ましい。第1反応性オリゴマーのMwは、例えば、40,000以下であり、30,000以下であってもよい。Mwがこのような範囲である場合、変形による応力緩和の抑制効果を高めることができるとともに、反応性モノマーとより均一に混合することができるため、高い強度を確保し易くなる。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。
【0048】
第1反応性オリゴマーのMwは、8,000以上40,000以下(または30,000以下)、10,000以上40,000以下(または30,000以下)、11,000以上40,000以下(または30,000以下)、あるいは13,000以上40,000以下(または30,000以下)であってもよい。
【0049】
第1反応性オリゴマーは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、種類の異なるものを二種以上組み合わせてもよく、Mwの異なるものを二種以上組み合わせてもよい。
【0050】
高い光造形性を確保し易い観点からは、光硬化性樹脂組成物は、第3反応性基として(メタ)アクリロイル基を有する第1反応性オリゴマー(アクリル系オリゴマー)を含むことが好ましい。反応性オリゴマー全体に占める(メタ)アクリロイル基を有する第1反応性オリゴマーの含有量は、例えば、80質量%以上であり、90質量%以上であってもよく、95質量%以上としてもよい。また、反応性オリゴマーを(メタ)アクリロイル基を有する第1反応性オリゴマーのみで構成してもよい。
【0051】
第1反応性オリゴマーとしては、例えば、ポリヒドロキシ化合物の(メタ)アクリレートが挙げられる。ポリヒドロキシ化合物としては、ポリアルキレングリコール、脂肪族ポリオールまたは脂肪族ポリアミン(トリエタノールアミン、エチレンジアミンなど)のアルキレンオキサイド付加物、脂環式ポリオール(水添ビスフェノール類など)または脂環式ポリアミンのアルキレンオキサイド付加物、芳香族ポリオール(ビスフェノール類など)または芳香族ポリアミンのアルキレンオキサイド付加物、オリゴマータイプのポリオールなどが挙げられる。脂肪族ポリオールとしては、3つ以上のヒドロキシ基を有する脂肪族ポリオール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなど)、糖類(ソルビトール、スクロースなど)などが挙げられる。
【0052】
オリゴマータイプのポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリエステルウレタンポリオール、ポリエーテルウレタンポリオール、ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。これらのポリオールは、芳香環、脂肪族環、および/または複素環(ヘテロ原子(酸素、窒素、および/または硫黄など)を環の構成元素として含む複素環など)を有していてもよい。靱性と硬化物の強度とのバランスを取り易い観点から、ポリウレタンポリオールの(メタ)アクリレート、および/またはポリエーテルウレタンポリオールの(メタ)アクリレートを用いてもよい。ウレタン構造を有するポリオールの(メタ)アクリレートを用いる場合、耐熱性を高めることもできる。
【0053】
第1反応性オリゴマーは、ポリオキシアルキレン鎖を含むことが好ましい。ポリオキシアルキレン鎖を含む第1反応性オリゴマーを用いると、第3反応性基以外の部分での架橋が抑制されるため、反応性モノマーの重合により線状ポリマーが得られ易い。このような線状ポリマーと第1反応性オリゴマーとが反応することで、tanδの低減効果が高まるとともに、応力緩和を抑制する効果を高めることができる。よって、伸びおよび強度に優れるとともに、伸びた後の収縮性が高い硬化物が得られ易くなり、より高いゴム弾性を確保し易くなる。
【0054】
ポリオキシアルキレン鎖は、通常、ポリヒドロキシ化合物に含まれる。例えば、アルキレンオキサイド付加物では、アルキレンオキサイドが付加した部分がポリオキシアルキレン鎖である。また、ポリオキシアルキレン鎖は、ポリアルキレングリコール、ポリエーテル鎖を有するオリゴマータイプのポリオール(具体的には、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエーテルウレタンポリオールなど)などにも含まれるため、このようなポリオールを用いた第1反応性オリゴマーも好ましい。より高い強度を確保する観点から、中でも、ポリエーテル鎖(より具体的には、ポリオキシアルキレン鎖)を有するオリゴマータイプのポリオールが好ましい。
【0055】
ポリオキシアルキレン鎖としては、例えば、ポリオキシC2−4アルキレン鎖が挙げられる。ポリオキシアルキレン鎖としては、例えば、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシトリメチレン、オキシブチレンなどから選択される少なくとも一種のオキシアルキレン単位の繰り返し構造が挙げられる。第1反応性オリゴマーの1分子中に含まれるオキシアルキレン基の個数は、例えば、10より多く、20以上または50以上であってもよい。第1反応性オリゴマーの1分子中に含まれるオキシアルキレン基の個数の上限は特に制限されず、例えば、第1反応性オリゴマーのMwの上限に応じて選択できる。第1反応性オリゴマーの1分子中に含まれるオキシアルキレン基の個数は、例えば、800以下であり、600以下であってもよい。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。
【0056】
第1反応性オリゴマーの1分子中に含まれるオキシアルキレン基の個数は、10より多く800以下(または600以下)、20以上800以下(または600以下)、あるいは50以上800以下(または600以下)であってもよい。
【0057】
第1反応性オリゴマーとしては、市販品を用いてもよく、公知の方法により合成したものを用いてもよい。例えば、アクリル系の第1反応性オリゴマーは、ポリヒドロキシ化合物(例えば、上記のポリヒドロキシ化合物)と(メタ)アクリル酸とをエステル化することにより合成してもよく、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート(CH=CH(−R)−C(=O)O−R−OH)と、ヒドロキシ基と反応する官能基を有するオリゴマーとを反応させることにより合成してもよい。なお、後者の場合、−O−R−O−R−基を有するオリゴマー部分が、上記のポリヒドロキシ化合物に対応する。ここで、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、二価の有機基(アルキレン基など)であり、Rは、上記官能基の、ヒドロキシ基との反応により形成される残基である。例えば、ウレタン構造を有するアクリル系オリゴマーは、ポリヒドロキシ化合物(上記のポリヒドロキシ化合物の中でも、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなど)と、ポリイソシアネートとの反応により、ポリヒドロキシ化合物の末端にイソシアネート基を導入し、導入された末端のイソシアネート基とヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとを反応させることにより得ることができる。ポリイソシアネートとしては、特に制限されず、脂肪族ポリイソシアネート(無黄変タイプのポリイソシアネートなど)、芳香族ポリイソシアネート(黄変タイプのポリイソシアネートなど)、および/または難黄変タイプのポリイソシアネートなどが挙げられる。ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートは、芳香族、脂環族、および脂肪族のいずれであってもよいが、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(ヒドロキシC1−6アルキル(メタ)アクリレート(ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなど)など)が用いられる場合が多い。各反応はよく知られた反応であり、公知の反応条件を採用すればよい。
【0058】
光硬化性樹脂組成物は、第1反応性オリゴマー以外の反応性オリゴマー(第2反応性オリゴマー)を含んでもよい。第2反応性オリゴマーは、硬化物のTgが20℃以上の反応性オリゴマーである。第2反応性オリゴマーは、硬化反応に関与する重合性官能基(第4反応性基)を有している。第4反応性基は、例えば、第1反応性基について記載したものから選択できる。しかし、反応性オリゴマー全体に占める第2反応性オリゴマーの比率は少ない方が好ましい。反応性オリゴマー全体に占める第1反応性オリゴマーの比率は、例えば、80質量%以上であり、90質量%以上であってもよく、95質量%以上としてもよい。また、反応性オリゴマーを第1反応性オリゴマーのみで構成してもよい。
【0059】
光硬化性樹脂組成物中の反応性オリゴマーの含有量は、例えば、15質量%以上であってもよく、20質量%以上または30質量%以上であってもよい。反応性オリゴマーの含有量がこのような範囲である場合、硬化時の歪みを抑制しながらも、高い硬化速度を確保することができる。また、硬化物の強度をさらに高めることができる。光硬化性樹脂組成物中の反応性オリゴマーの含有量は、例えば、80質量%以下であり、60質量%以下であってもよい。反応性オリゴマーの含有量がこのような範囲である場合、光硬化性樹脂組成物の粘度を調節し易い。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。
【0060】
光硬化性樹脂組成物中の反応性オリゴマーの含有量は、15質量%以上80質量%以下(または60質量%以下)、20質量%以上80質量%以下(または60質量%以下)、あるいは30質量%以上80質量%以下(または60質量%以下)であってもよい。
【0061】
光硬化性樹脂組成物において、第1反応性モノマーと、第1反応性オリゴマーとの質量比(=反応性モノマー/反応性オリゴマー)は、例えば、20/80〜80/20であり、25/75〜70/30であってもよく、30/70〜70/30であってもよい。第1反応性モノマーおよび第1反応性オリゴマーの質量比がこのような範囲である場合、硬化物の高い強度を確保し易くなるとともに、変形による応力緩和の抑制効果を高めることができる。ポリオキシアルキレン鎖を有する第1反応性オリゴマーを用いる場合には、光硬化性樹脂組成物の粘度が過度に上昇することを抑制し易い。そのため、このような場合には、上記質量比が、例えば、20/80〜50/50または30/70〜50/50と第1反応性オリゴマーの比率が多くても高い光造形性を確保することができ、硬化物の優れたゴム弾性を得ることができる。
【0062】
光硬化性樹脂組成物中の第1反応性オリゴマーの含有量は、例えば、20質量%より多く、25質量%以上であることが好ましい。第1反応性オリゴマーの含有量がこのような範囲である場合、高い硬化速度を確保し易いことに加え、硬化物のより強度を確保することができる。第1反応性オリゴマーの含有量は、例えば、80質量%未満であり、75質量%以下であることが好ましい。第1反応性オリゴマーの含有量がこのような範囲である場合、硬化反応が進行し易くなるとともに、光硬化性樹脂組成物の粘度を低く保ち易い。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。
【0063】
光硬化性樹脂組成物中の第1反応性オリゴマーの含有量は、20質量%より多く80質量%未満(または75質量%以下)、あるいは25質量%以上80質量%未満(または75質量%以下)であってもよい。
【0064】
(光重合開始剤)
光硬化性樹脂組成物に含まれる光重合開始剤は、光の作用により活性化して、光硬化性モノマーの硬化(具体的には重合)を開始させる。光重合開始剤としては、例えば、光の作用によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤のほか、光の作用により酸(またはカチオン)を生成するもの(具体的には、カチオン発生剤)が挙げられる。光重合開始剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。光重合開始剤は、重合性化合物のタイプ、例えば、ラジカル重合性であるか、カチオン重合性であるかなどに応じて選択される。ラジカル重合開始剤(ラジカル光重合開始剤)としては、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤などが挙げられる。
【0065】
アルキルフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンなどが挙げられる。
【0066】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニル−ホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
しかし、これらの光重合開始剤は、単なる例示に過ぎず、これらに限定されるものではない。
【0067】
(セラミックス粒子)
光硬化性樹脂組成物がセラミックス粒子を含む場合、硬化物の伸び性をさらに向上することができるとともに、より高い強度を確保することができる。よって、より優れたゴム弾性を有する硬化物を得ることができる。セラミックス粒子は、通常表面に、無機性のヒドロキシ基などの官能基(第1官能基)を有する。第1官能基が、水素結合等により、反応性モノマー、反応性オリゴマー、またはこれらの重合物と相互作用することで、疑似架橋点が形成され、伸び性および/または強度を高めることができる。
【0068】
セラミックス粒子としては、例えば、シリカ粒子、チタニア粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子が挙げられる。光硬化性樹脂組成物は、これらのセラミックス粒子を一種含んでいてもよく、二種以上組み合わせて含んでいてもよい。高い透明性が得られやすい観点から、セラミックス粒子は、少なくともシリカ粒子を含むことが好ましい。
【0069】
光硬化性樹脂組成物中により均一に分散して、高いゴム弾性を確保し易い観点からは、単分散タイプ(例えば、コロイダルタイプ)のセラミックス粒子を用いることが好ましい。
【0070】
セラミックス粒子の平均粒子径は、10μm以下であってもよく、1μm以下であってもよく、500nm以下であってもよい。光硬化性樹脂組成物中により均一に分散して、より高い伸び性および強度を確保し易い観点からは、セラミックス粒子の平均粒子径は、100nm以下が好ましい。セラミックス粒子の平均粒子径は、5nm以上であってもよく、10nm以上であってもよい。
【0071】
セラミックス粒子の平均粒子径は、5nm以上(または10nm以上)10μm以下、5nm以上(または10nm以上)1μm以下、5nm以上(または10nm以上)500nm以下、5nm以上(または10nm以上)100nm以下、5nm以上(または10nm以上)10μm以下、5nm以上(または10nm以上)1μm以下、5nm以上(または10nm以上)500nm以下、あるいは5nm以上(または10nm以上)100nm以下であってもよい。
【0072】
なお、本明細書中、平均粒子径は、レーザー回折・散乱方式の粒度分布測定装置を用いて測定される体積基準の粒度分布の累計体積50%における粒子径(D50)として求められる。なお、平均粒子径が100nm以下の場合には、動的光散乱法による粒度分布測定装置を用いて平均粒子径を求めるものとする。
【0073】
セラミックス粒子の形状は特に制限されず、例えば、球状(楕円球状を含む)、ロッド状、フレーク状、角柱状、不定形状のいずれであってもよい。光硬化性樹脂組成物中により均一に分散し易い観点からは、球状のセラミックス粒子を用いることが好ましい。
【0074】
セラミックス粒子は、表面に有機の官能基(表面官能基または第2官能基と称する。)を有していてもよい。第2官能基により、反応性モノマー、反応性オリゴマー、またはこれらの重合物と相互作用の程度を制御することができ、より高い伸び性および/または強度(特に、伸び性)を確保することができる。第2官能基は、例えば、カップリング剤により第1官能基に導入することができる。カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤が挙げられる。
【0075】
第2官能基としては、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、アクリロイルオキシアルキル基、メタクリロイルオキシアルキル基、アルコキシ基などが好ましい。中でも、第2官能基としては、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、アクリロイルオキシアルキル基、メタクリロイルオキシアルキル基などがより好ましい。炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基を構成する炭化水素基としては、飽和または不飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基が挙げられる。飽和脂肪族炭化水素基としては、アルキル基(例えば、C1−10アルキル基またはC1−6アルキル基)が挙げられる。不飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数2〜10または炭素数2〜6の不飽和脂肪族炭化水素基(ビニル基、アリル基、プロパルギル基など)が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、アリール基(例えば、C6−10アリール基(フェニル基など))、不飽和脂肪族炭化水素基(例えば、炭素数2〜10または2〜6の不飽和脂肪族炭化水素基)を有するアリール基(例えば、C6−10アリール基)(スチリル基など)などが挙げられる。ハロゲン化炭化水素基に含まれるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子などが挙げられる。アクリロイルオキシアルキル基およびメタクリロイルオキシアルキル基を構成するアルキル基としては、C1−10アルキル基またはC1−6アルキル基が挙げられる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。アルコキシ基としては、C1−6アルコキシ基またはC1−4アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基など)が挙げられる。セラミックス粒子は、第2官能基を一種有していてもよく、二種以上組み合わせて有していてもよい。
【0076】
セラミックスは、第2官能基として、芳香族炭化水素基、ビニル基、アクリロイルオキシアルキル基、およびメタクリロイルオキシアルキル基からなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。セラミックス粒子が芳香族炭化水素基(特に、不飽和脂肪族炭化水素基を有さない芳香族炭化水素)を有する場合、芳香族炭化水素環のπ−π相互作用により、さらに高い伸び性を確保することができる。セラミックス粒子が、ビニル基、アクリロイルオキシアルキル基および/またはメタクリロイルオキシアルキル基を有する場合、重合性不飽和結合の作用により、高い伸び性を確保しながらも、より高い強度を確保し易くなる。
【0077】
光硬化性樹脂組成物中のセラミックス粒子の含有量は、例えば、0.1質量%以上である。より高い伸び性および強度を確保し易い観点からは、セラミックス粒子の含有量は、1質量%以上であってもよく、5質量%以上であってもよい。硬化物のより高い柔軟性を確保し易い観点からは、セラミックス粒子の含有量は、50質量%以下が好ましく、40質量%以下であってもよい。
【0078】
光硬化性樹脂組成物中のセラミックス粒子の含有量は、0.1質量%以上50質量%以下(または40質量%以下)、1質量%以上50質量%以下(または40質量%以下)、あるいは5質量%以上50質量%以下(または40質量%以下)であってもよい。
【0079】
(その他)
光硬化性樹脂組成物は、さらに、その他の公知の硬化性樹脂などを含んでもよい。また、光硬化性樹脂組成物は、チオール化合物、アミン化合物、および/または公知の添加剤(例えば、着色剤、酸化防止剤、消泡材、充填剤、安定剤など)を含むことができる。
【0080】
光硬化性樹脂組成物の25℃における粘度は、例えば、30mPa・s以上7,000mPa・s以下(または3,000mPa・s以下)である。光硬化性樹脂組成物がこのような粘度を有する場合、様々な造形方法を採用することができるとともに、光造形物の精度を高めることができる。また、作業性を高めることもできる。より高いゴム弾性が得られ易い観点から、光硬化性樹脂組成物の25℃における粘度は、100mPa・s以上3,000mPa・s以下が好ましく、200mPa・s以上3,000mPa・s以下がより好ましく、400mPa・s以上3,000mPa・s以下としてもよい。
【0081】
光硬化性樹脂組成物の硬化物(より具体的には、光硬化物)の25℃における損失正接tanδは、0.2以下であればよく、0.15以下が好ましく、0.14以下がより好ましい。tanδがこのような範囲であることで、硬化物の優れたゴム弾性を確保することができる。
【0082】
硬化物のTgは20℃未満であり、実用上安定して高いゴム弾性を確保し易い観点からは、5℃以下が好ましく、0℃以下または−5℃以下がより好ましい。
【0083】
本発明では、硬化物の高いゴム弾性を確保することができる。硬化物のゴム弾性が高い場合、硬化物のASTM D638に準拠した破断時伸びが大きくなる。光硬化性樹脂組成物の硬化物のASTM D638に準拠した破断時伸びは、150%以上であり、160%以上または200%以上が好ましく、300%以上、400%以上、または500%以上の伸びを得ることもできる。破断時伸びの上限は特に制限されないが、例えば、1000%以下であり、900%以下、800%以下、700%以下、600%以下、500%以下、または400%以下であってもよい。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。
【0084】
光硬化性樹脂組成物の硬化物のASTM D638に準拠した破断時伸びは、150%以上(または160%以上)1000%以下、150%以上(または160%以上)900%以下、150%以上(または160%以上)800%以下、150%以上(または160%以上)700%以下、150%以上(または160%以上)600%以下、150%以上(または160%以上)500%以下、150%以上(または160%以上)400%以下、200%以上(または300%以上)1000%以下、200%以上(または300%以上)900%以下、200%以上(または300%以上)800%以下、200%以上(または300%以上)700%以下、200%以上(または300%以上)600%以下、200%以上(または300%以上)500%以下、200%以上(または300%以上)400%以下、400%以上(または500%以上)1000%以下、400%以上(または500%以上)900%以下、400%以上(または500%以上)800%以下、400%以上(または500%以上)700%以下、400%以上(または500%以上)600%以下、あるいは400%以上500%以下であってもよい。
【0085】
硬化物の高い強度を確保することもできる。硬化物のASTM D638に準拠した破断強度は、例えば、0.5MPa以上であり、0.7MPa以上または0.8MPa以上であってもよく、1MPa以上または1.5MPa以上であってもよく、2MPa以上または3MPa以上の強度を得ることもできる。破断強度の上限は、特に制限されないが、高い破断時伸びを確保し易い観点からは、5MPa以下または4.5MPa以下が好ましく、4MPa以下または3MPa以下であってもよい。これらの下限値と上限値とは任意に組み合わせることができる。
【0086】
光硬化性樹脂組成物の硬化物のASTM D638に準拠した破断強度は、0.5MPa以上5MPa以下(または4.5MPa以下)、0.7MPa以上5MPa以下(または4.5MPa以下)、0.8MPa以上5MPa以下(または4.5MPa以下)、1MPa以上5MPa以下(または4.5MPa以下)、1.5MPa以上5MPa以下(または4.5MPa以下)、2MPa以上5MPa以下(または4.5MPa以下)、3MPa以上5MPa以下(または4.5MPa以下)、0.5MPa以上4MPa以下(または3MPa以下)、0.7MPa以上4MPa以下(または3MPa以下)、0.8MPa以上4MPa以下(または3MPa以下)、1MPa以上4MPa以下(または3MPa以下)、1.5MPa以上4MPa以下(または3MPa以下)、2MPa以上4MPa以下(または3MPa以下)、あるいは3MPa以上4MPa以下であってもよい。
【0087】
破断強度は、光硬化性樹脂組成物の硬化物で形成された試験片を用いて測定される。試験片としては、破断時伸びの測定と同様のものが使用できる。測定条件も、破断時伸びと同じ条件が使用される。
【0088】
硬化物は、柔軟性も高い。柔軟性は、ショアA硬度で評価できる。光硬化性樹脂組成物の硬化物の23℃におけるショアA硬度は、100以下であることが好ましく、60以下または50以下がより好ましく、40以下であってもよい。ショアA硬度の下限は特に制限されないが、ある程度の強度を確保する観点からは、15以上が好ましく、20以上であってもよい。これらの上限値と下限値とは任意に組み合わせることができる。
【0089】
光硬化性樹脂組成物の硬化物の23℃におけるショアA硬度は、15以上(または20以上)100以下、15以上(または20以上)60以下、15以上(または20以上)50以下、あるいは15以上(または20以上)40以下であってもよい。
【0090】
硬化物の破断時伸びが高くても、硬化物に力を加えて変形させたときの応力が緩和される場合には、粘性が強くなり、ゴム弾性の向上効果が不十分である。そのため、硬化物の応力緩和が小さいことが好ましい。応力緩和の程度は、ショアA硬度を測定する際に、デュロメーターの圧子を硬化物に押し込んだときの初期のショアA硬度rと、押し込んだ状態で15秒経過したときのショアA硬度rとの差D(=r−r)により評価できる。このショアA硬度の差Dが小さいことが好ましい。差Dは、2以下が好ましく、1以下がより好ましく、0.5未満または0.1以下がさらに好ましい。
【0091】
光硬化性樹脂組成物は、構成成分を混合することにより得ることができる。光硬化性樹脂組成物は、一液硬化型であってもよく、二液硬化型であってもよい。
【0092】
光硬化性樹脂組成物は、光照射により硬化させて三次元光造形物(硬化物)を形成するのに適している。本発明には、光硬化性樹脂組成物の光硬化物(特に、三次元光造形物)も含まれる。
【0093】
[光造形物]
本発明には、光硬化性樹脂組成物の光硬化物(光造形物)も含まれる。光造形物は、優れたゴム弾性を発揮できる三次元光造形物が好ましい。光造形物は、上記の光硬化性樹脂組成物の硬化物について記載した物性を有している。
【0094】
このような光造形物は、高いゴム弾性が求められる様々な用途に用いることができるが、特に、弾性部材として有用である。弾性部材は、ゴムやエラストマーの代替品として使用することもできる。弾性部材の用途は、特に制限されないが、例えば、衝撃吸収性、防振性、制震性などが求められる用途に利用してもよい。弾性部材の用途としては、例えば、電子機器、電気機器、医療機器、電化製品、ロボット関連製品、車両関連製品(車両に搭載される機器や部品、ECU、スマートキーなど)、靴(クッション材など)、マット、グローブ、ヘルメット、プロテクター、グリップ(自転車のグリップ、ペンのグリップなど)、時計のモジュール、スーツケース、低反発材料などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、靴のクッション材としては、例えば、靴のインソールやミッドソールに組み込まれるものが挙げられる。
【0095】
三次元光造形物は、例えば、光硬化性樹脂組成物の液膜を形成し、液膜を硬化させてパターンを形成する工程(i)と、パターンに接するように別の液膜を形成する工程(ii)と、パターン上の別の液膜を硬化させて別のパターンを積層する工程(iii)と、を含む製造方法により製造できる。
【0096】
以下にバット式の光造形の手順について例示する。
図1は、樹脂槽(バット)を備える光造形装置(パターニング装置)を用いて三次元造形物を形成する場合の一例である。図示例では、吊り下げ方式の造形について示したが、光硬化性樹脂組成物を用いて三次元光造形することができる方法であれば特に制限されない。また、光照射(露光)の方式についても特に制限されず、点露光でも、面露光でもよい。
【0097】
パターニング装置1は、パターン形成面2aを備えるプラットフォーム2と、光硬化性樹脂組成物5を収容した樹脂槽3と、面露光方式の光源としてのプロジェクタ4とを備える。
(i)液膜を形成し、硬化させてパターンを形成する工程
工程(i)では、(a)に示すように、まず、樹脂槽3に収容された光硬化性樹脂組成物5に、プラットフォーム2のパターン形成面2aを、プロジェクタ4(つまり、樹脂槽3の底面)に向けた状態で浸漬させる。このときに、パターン形成面2aとプロジェクタ4(または樹脂槽3の底面)との間に液膜7a(液膜a)が形成されるように、パターン形成面2a(またはプラットフォーム2)の高さを調整する。次いで、(b)に示すように、プロジェクタ4から液膜7aに向けて、光Lを照射(面露光)することで、液膜7aを光硬化させてパターン8a(パターンa)を形成する。
【0098】
パターニング装置1では、樹脂槽3が、光硬化性樹脂組成物5の供給ユニットとしての役割を有する。液膜に光源から光が照射されるように、樹脂槽の少なくとも、液膜とプロジェクタ4との間に存在する部分(図示例では、底面)は露光波長に対して透明であることが望ましい。プラットフォーム2の形状、材質、およびサイズなどは特に制限されない。
【0099】
液膜aを形成した後、光源から液膜aに向かって光照射することにより、液膜aを光硬化させる。光照射は、公知の方法で行うことができる。露光方式は、特に制限されず、点露光でも面露光でもよい。光源としては、光硬化に使用される公知の光源が使用できる。点露光方式の場合には、例えば、プロッター式、ガルバノレーザ(またはガルバノスキャナ)方式、SLA(ステレオリソグラフィー)方式などが挙げられる。面露光方式の場合には、光源としてプロジェクタを用いると簡便である。プロジェクタとしては、LCD(透過型液晶)方式、LCoS(反射型液晶)方式、およびDLP(登録商標、Digital Light Processing)方式などが例示できる。露光波長は、光硬化性樹脂組成物の構成成分(特に、開始剤の種類)に応じて適宜選択できる。
【0100】
(ii)パターンaと光源との間に液膜を形成する工程
工程(ii)では、工程(i)で得られたパターンaと、光源との間に、光硬化性樹脂組成物を供給して、液膜(液膜b)を形成する。つまり、パターン形成面に形成されたパターンa上に液膜bを形成する。光硬化性樹脂組成物の供給は、工程(i)についての説明が参照できる。
【0101】
例えば、工程(ii)では、図1の(c)に示すように、二次元パターン8a(二次元パターンa)を形成した後、パターン形成面2aをプラットフォーム2ごと上昇させてもよい。そして、二次元パターン8aと樹脂槽3の底面との間に光硬化性樹脂組成物5を供給することにより、液膜7b(液膜b)を形成することができる。
【0102】
(iii)パターンa上に別のパターンbを積層する工程
工程(iii)では、工程(ii)で形成した液膜bに対して、光源から露光して、液膜bを光硬化させ、パターンaに別のパターン(液膜bの光硬化により得られるパターンb)を積層する。このようにパターンが厚み方向に積層されることで、三次元造形パターンを形成することができる。
【0103】
例えば、図1の(d)に示すように、パターン8a(パターンa)と樹脂槽3の底面との間に形成された液膜7b(液膜b)に、プロジェクタ4から露光して、液膜7bを光硬化させる。この光硬化により、液膜7bがパターン8b(パターンb)に変換される。このようにして、パターン8aにパターン8bを積層することができる。
光源や露光波長などは、工程(i)についての記載を参照できる。
【0104】
(iv)工程(ii)と工程(iii)とを繰り返す工程
第1工程は、工程(ii)と工程(iii)とを複数回繰り返す工程(iv)を含むことができる。この工程(iv)により、複数のパターンbが厚み方向に積層されることになり、さらに立体的な造形パターンが得られる。繰り返し回数は、所望する三次元造形物(三次元造形パターン)の形状やサイズなどに応じて適宜決定できる。
【0105】
例えば、図1の(e)に示すように、パターン形成面2a上にパターン8a(パターンa)およびパターン8b(パターンb)が積層された状態のプラットフォーム2を上昇させる。このとき、パターン8bと樹脂槽3の底面との間に液膜7b(液膜b)が形成される。そして、図1の(f)に示すように、プロジェクタ4から液膜7bに対して露光し、液膜7bを光硬化させる。これにより、パターン8b上に別のパターン8b(パターンb)が形成される。そして、(e)と(f)とを交互に繰り返すことで、複数のパターン8b(二次元パターンb)を積層させることができる。
【0106】
工程(iii)や工程(iv)で得られた三次元造形パターンには、未硬化の光硬化性樹脂組成物が付着しているため、通常、溶剤による洗浄処理が施される。
【0107】
工程(iii)や工程(iv)で得られた三次元造形パターンには、必要に応じて、後硬化を施してもよい。後硬化は、パターンに光照射することで行うことができる。光照射の条件は、光硬化性樹脂組成物の種類や得られたパターンの硬化の程度などに応じて適宜調節できる。後硬化は、パターンの一部に対して行ってもよく、全体に対して行ってもよい。
【0108】
[実施例]
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0109】
実施例1〜21および比較例1〜7
(1)光硬化性樹脂組成物の調製
表1〜表4に示す成分のうち、反応性モノマー、反応性オリゴマーおよび重合性開始剤を表2〜表4に示す質量比で混合し、攪拌しながら80℃のオーブンで加熱して、固形成分を溶解させることにより均一な液状の混合物を調製した。実施例13〜21では、液状の混合物に、さらに表1および表4に示すセラミックス粒子を添加し、混合した。このようにして光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0110】
(2)評価
上記(1)で得られた光硬化性樹脂組成物または光硬化性樹脂組成物に用いた成分について以下の評価を行った。
【0111】
(a)粘度
E型粘度計(TVE−20H、東機産業(株))を用いて、25℃にて、20rpmの回転速度で光硬化性樹脂組成物の粘度を測定した。
【0112】
(b)Tg、弾性率、およびtanδ
トレイに、光硬化性樹脂組成物を注いで、厚み500μmの液膜を作製し、液膜の両方の主面に対して、波長405nmのLED光を光照射して液膜を完全に硬化させることにより、硬化物のサンプルを作製した。トレイには、上記LED光を透過するものを用いた。
得られたサンプルについて、DMA((株)日立ハイテクサイエンス製、DMS6100)を用いて、周波数1Hz、5℃/minの昇温速度にて−100℃から+100℃まで昇温した。そして、25℃のときの弾性率(貯蔵弾性率)(MPa)およびtanδを求めるとともに、tanδがトップピークとなる温度を光硬化性樹脂組成物の硬化物のTgとして求めた。
また、光硬化性樹脂組成物の代わりに反応性モノマーおよび反応性オリゴマーをそれぞれ用いて、上記と同様にして、反応性モノマーの硬化物のTgおよび反応性オリゴマーの硬化物のTgを求めた。
【0113】
(c)破断時伸びおよび破断強度
光硬化性樹脂組成物の液膜に、波長405nmのLED光を光照射して液膜を完全に硬化させることにより、既述の試験片を作製した。この試験片を用いて、既述の条件下、ASTM D638に準拠して破断時伸び(%)および破断強度(MPa)を測定した。
【0114】
(d)ショアA硬度および緩和応力
DLP(登録商標)方式の3Dプリンタ(武藤工業(株)製、ML−48)を用いて、1層当たりの照射時間30秒およびz軸(高さ方向)のピッチ100μmの条件で、短冊状のサンプル(縦40mm×横20mm×厚み(高さ)4mm)を作製した。このサンプルについて、タイプAデュロメーターを用い、荷重1kgの条件で、JIS K6253:2012に準拠して、ショアA硬度を測定した。なお、ショアA硬度は、デュロメーターの圧子をサンプルに押し込んだときの初期のショアA硬度rと、押し込んだ状態で15秒経過したときのショアA硬度rとを測定した。これらのショアA硬度の差D(=r−r)が2以下のときを応力緩和なし、2より大きいときを応力緩和ありとした。
【0115】
実施例および比較例の評価結果を表2〜表4に示す。表1には、実施例および比較例で用いた成分を示す。
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】
【0118】
【表3】
【0119】
【表4】
【0120】
表2〜表4に示されるように、比較例に比べて、実施例の光硬化性樹脂組成物の硬化物では、tanδが0.2以下と小さく、破断時伸びが150%以上と高く、ショアA硬度測定時の応力緩和がなく、優れたゴム弾性が示された。また、実施例の硬化物では、ある程度の破断強度を確保できており、柔軟性も高い。
【0121】
表4に示されるように、光硬化性樹脂組成物がセラミックス粒子を含む場合、さらに高い破断時伸びおよび/または破断強度が得られた。より優れた破断時伸びを確保する観点からは、芳香族炭化水素基を表面官能基(第2官能基)として有するセラミックス粒子を用いることが好ましい。より優れた破断強度を確保する観点からは、重合性不飽和結合を有する表面官能基(ビニル基、メタクリロイルオキシアルキル基など)を有するセラミックス粒子を用いることが好ましい。
【0122】
本発明を現時点での好ましい実施態様に関して説明したが、そのような開示を限定的に解釈してはならない。種々の変形および改変は、上記開示を読むことによって本発明に属する技術分野における当業者には間違いなく明らかになるであろう。したがって、添付の請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、すべての変形および改変を包含する、と解釈されるべきものである。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明の上記局面に係る光硬化性樹脂組成物は、光硬化により優れたゴム弾性を有する硬化物を提供できる。そのため、光造形用途で三次元光造形物を形成する材料として適している。また、光造形物は、弾性部材(例えば、ゴムやエラストマーの代替品)として利用できる。弾性部材は、例えば、衝撃吸収性、防振性、制震性などが求められる用途に利用される。
【符号の説明】
【0124】
1:光造形装置、2:プラットフォーム、2a:パターン形成面、3:樹脂槽、4:プロジェクタ、5:光硬化性樹脂組成物、6:離型剤層、7a:液膜a、7b:液膜b、8a:二次元パターンa、8b:二次元パターンb、L:光
【要約】
光硬化性樹脂組成物は、反応性モノマーと、反応性オリゴマーと、光重合開始剤と、を含む。前記反応性モノマーの硬化物のガラス転移点は、20℃未満であり、前記反応性オリゴマーの硬化物のガラス転移点は、20℃未満である。前記光硬化性樹脂組成物の硬化物の25℃における損失正接tanδは、0.2以下である。前記光硬化性樹脂組成物の硬化物のASTM D638に準拠した破断時伸びは、150%以上である。
図1