【実施例】
【0013】
[無人飛行体(ドローン)の概要]
本願明細書において、ドローンとは、複数の回転翼または飛行手段を有する無人飛行体全般を指すこととする。動力手段が電動モーターであるか、内燃機関等の原動機であるかを問わない。操縦方式が無線であるか有線であるか、自律飛行型であるか手動操縦型であるか等を問わない。
【0014】
図1乃至
図3において、ドローン100を飛行させるための手段として、ローターあるいはプロペラとも呼ばれる8機の回転翼101−1a、101−1b、101−2a、101−2b、101−3a、101−3b、101−4a、101−4bを有する。飛行の安定性、機体サイズ、および、バッテリー消費量のバランスを考慮し、2段構成の回転翼が4セット、合計8機の回転翼が備えられている。
【0015】
上記各回転翼を個別に回転駆動する手段として8個のモーター102−1a、102−1b、102−2a、102−2b、102−3a、102−3b、102−4a、102−4bが設けられている。回転翼の駆動手段は、典型的には電動モーターであるが、ガソリンエンジンなどの発動機類であってもよい。1セット内の上下の回転翼、および、それらに対応するモーターは、ドローンの飛行の安定性等のために軸が同一直線上にある。1セットの上下の回転翼は互いに反対方向に回転駆動され、共に上方に向かう推力が発生する。なお、一部の回転翼101−3bおよびモーター102−3bは図示されていないが、その位置は自明であり、左側面図があれば示される位置にある。
【0016】
薬剤ノズル103−1、103−2、103−3、103−4は、薬剤を下方に向けて散布するための手段である。なお、薬剤とは、農薬、除草剤、液肥、殺虫剤、種、および、水など、圃場に散布される液体または粉体を指す。
【0017】
薬剤タンク104は散布される薬剤を保管するためのタンクであり、重量バランスの観点からドローン100の重心に近い位置でかつ重心より低い位置に設けられている。薬剤ホース105は、薬剤タンク104と各薬剤ノズル103−1、103−2、103−3、103−4とを接続する手段である。薬剤ホース105は硬質の素材からなり、上記各薬剤ノズルを支持する役割を兼ねていてもよい。ポンプ106は、薬剤をノズルから放出させるための手段である。
【0018】
図4に本願発明に係るドローン100の薬剤散布用途の実施例を使用したシステムの全体概念図を示す。本図は模式図であって、縮尺は正確ではない。操縦器401は、使用者402の操作によりドローン100に指令を送信し、また、ドローン100から受信した例えば、位置、薬剤量、電池残量、カメラ映像等の情報を表示するための手段を有する。操縦器401は、コンピューター・プログラムを稼働する一般的なタブレット端末等の携帯情報機器によって実現することができる。
【0019】
本願発明に係るドローン100は自律飛行を行なうよう制御されることが望ましいが、離陸や帰還などの基本操作、および、緊急時にはマニュアル操作が行なえるようになっていることが望ましい。携帯情報機器に加えて、緊急停止専用の機能を有する非常用操作機を使用してもよい。非常用操作機は緊急時に迅速に対応できるように大型の緊急停止ボタン等を備えた専用機器であることが望ましい。操縦器401とドローン100はWi-Fi等による無線通信を行なうことができる。
【0020】
圃場403は、ドローン100による薬剤散布の対象となる田圃や畑等である。実際には、圃場403の地形は複雑であり、事前に地形図が入手できない場合、あるいは、地形図と現場の状況が食い違っている場合がある。通常、圃場403は家屋、病院、学校、他作物圃場、道路、鉄道等と隣接している。また、圃場403内に、建築物や電線等の障害物が存在する場合もある。通常、ドローン100は圃場403の外部にある発着地点から離陸し、圃場403に薬剤を散布した後に、あるいは、薬剤補充や充電等が必要になった時に発着地点に帰還する。
【0021】
基地局404は、Wi-Fi通信の親機機能等を提供する装置であり、RTK−GPS基地局としても機能し、ドローン100の正確な位置を提供することができる。Wi−Fi通信の親機機能とRTK−GPS基地局が独立した装置であってもよい。営農クラウド405は、典型的にはクラウドサービス上で運営されているコンピューター群であり、操縦器401と携帯電話回線等で無線接続されていることが望ましい。営農クラウド405は、ドローン100が撮影した圃場403の画像を分析し、作物の生育状況を把握して、飛行ルートを決定するための処理を行う。また、保存していた圃場403の地形情報等をドローン100に提供してもよい。加えて、ドローン100の飛行および撮影映像の履歴を蓄積し、様々な分析処理を行なってもよい。
【0022】
図5に、薬剤散布用ドローンの制御系統の例を示す。フライトコントローラー501は、ドローン全体の制御を司る構成要素であり、具体的にはCPU、メモリー、関連ソフトウェア等を含む組み込み型コンピューターを備えている。フライトコントローラー501は、操縦器401から受信した入力情報、および、後述の各種センサーから得た入力情報に基づき、ESC(Electronic Speed Control)等の制御手段を介して、前記8機のモーター102−1a、102−1b、102−2a、102−2b、102−3a、102−3b、104−a、104−bの回転数を個別に制御して、ドローン100の飛行を制御する。上記各モーターの実際の回転数はフライトコントローラー501にフィードバックされ、正常な回転が行なわれているかを監視できる構成になっている。
【0023】
フライトコントローラー501が使用するソフトウェアは、機能拡張・変更、問題修正等のために記憶媒体等を通じて、または、Wi−FiやUSB等の通信手段を通じて書き換え可能になっていることが望ましい。この場合において、不正なソフトウェアによる書き換えが行なわれないように、暗号化、チェックサム、電子署名、ウィルスチェックソフト等による保護を行なうことが望ましい。また、フライトコントローラー501が制御に使用する計算処理の一部が、操縦器401上、または、営農クラウド405上や他の場所に存在する別のコンピューターによって実行されてもよい。フライトコントローラー501は重要性が高いため、その構成要素の一部または全部が二重化されていてもよい。
【0024】
バッテリー502は、フライトコントローラー501、および、ドローンのその他の構成要素に電力を供給する手段であり、充電式であることが望ましい。バッテリー502はヒューズ、または、サーキットブレーカー等を含む電源ユニットを介してフライトコントローラー501に接続されていることが望ましい。バッテリー502は電力供給に加えて、その内部状態(蓄電量、積算使用時間等)をフライトコントローラー501に伝達する機能を有するスマートバッテリーであることが望ましい。
【0025】
バッテリー502からの電力供給系統は、前記モーターにその駆動電力を供給する動力系の電力供給系統と、フライトコントローラー501などの制御系への電力供給系統に分かれている。こうすることによって、後で説明する動力系への電源供給遮断と制御系への電源供給遮断に時間差を与えることができる。
【0026】
フライトコントローラー501は、Wi−Fi子機機能503を介して、さらに、基地局404を介して操縦器401と信号を送受信する機能を有する。すなわち、フライトコントローラー501は、必要な指令を操縦器401から受信すると共に、必要な情報を操縦器401に送信する機能を有する。この通信には、暗号化を施し、傍受、成り済まし、機器の乗っ取り等の不正行為を防止できるようにしておくことが望ましい。基地局404は、Wi−Fiによる通信機能に加えて、RTK−GPS基地局の機能も備えていることが望ましい。RTK基地局の信号とGPS測位衛星からの信号を組み合わせることで、GPSモジュール504により、ドローン100の絶対位置を数センチメートル程度の精度で測定可能である。
【0027】
6軸ジャイロセンサー505は、ドローン機体の互いに直交する3軸方向の加速度を測定し、上記3軸を中心とした回転方向すなわちローリング方向、ピッチング方向およびヨーイング方向の角速度を測定するものである。6軸ジャイロセンサー505によって検出される加速度または角速度の積分により速度を計算することができる。地磁気センサー506は、地磁気の測定によりドローン機体の方向を測定する手段である。気圧センサー507は、気圧を測定する手段であり、間接的にドローンの高度も測定することもできる。赤外線レーザーセンサー508は、赤外線レーザーの反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定する手段である。ソナー509は、超音波の反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定する手段である。
【0028】
これらのセンサー類は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよい。また、機体の傾きを測定するジャイロセンサー(角速度センサー)、風力を測定するための風力センサーなどが追加されていてもよい。これらのセンサー類は、二重化または多重化されていることが望ましい。同一目的の複数のセンサーが存在する場合には、フライトコントローラー501は複数のセンサーのうちの一つのみを使用し、それが障害を起こした際には、代替のセンサーに切り替えて使用するようにしてもよい。あるいは、複数のセンサーを同時に使用し、それぞれの測定結果が一致しない場合には障害が発生したと見なすようにしてもよい。
【0029】
流量センサー510は薬剤の流量を測定するための手段であり、薬剤タンク104から薬剤ノズル103に至る経路の複数の場所に設けられていることが望ましい。液切れセンサー511は薬剤の量が所定の量以下になったことを検知するセンサーである。マルチスペクトルカメラ512は圃場403を撮影し、画像分析のためのデータを取得する手段である。障害物検知カメラ513はドローンに対する障害物を検知するためのカメラであり、画像特性とレンズの向きがマルチスペクトルカメラ512とは異なる。
【0030】
障害物接触センサー514はドローン100、特に、そのローターやプロペラガード部分が電線、建築物、人体、立木、鳥、または、他のドローン等の障害物に接触したことを検知するためのセンサーである。カバーセンサー515は、ドローン100の操作パネルや内部保守用のカバーが開放状態であることを検知するセンサーである。薬剤注入口センサー516は薬剤タンク104の注入口が開放状態であることを検知するセンサーである。これらのセンサー類はドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよく、二重化・多重化してもよい。
【0031】
フライトコントローラー501はポンプ106に対して制御信号を送信し、薬剤吐出量の調整や薬剤吐出の停止を行なう。ポンプ106の現時点の状況、例えば、回転数等は、フライトコントローラー501にフィードバックされる構成であることが望ましい。
【0032】
LED107は、ドローンの操作者に対して、ドローンの状態を知らせるための表示手段である。LEDに替えて、または、それに加えて液晶ディスプレイ等の表示手段を使用してもよい。ブザー518は、音声信号によりドローンの状態(特にエラー状態)を知らせるための出力手段である。
【0033】
Wi−Fi子機519は、操縦器401とは別に、例えば、ソフトウェアの転送などのために外部のコンピューター等と通信するためのオプショナルな構成要素である。Wi−Fi子機519に替えて、または、それに加えて、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、NFC等の他の無線通信手段、または、USB接続などの有線通信手段を使用してもよい。
【0034】
スピーカー520は、録音した人声や合成音声等により、ドローンの状態、特にエラー状態を知らせる出力手段である。天候状態によっては飛行中のドローンの視覚的表示が見にくい場合があり、その場合には音声による状況伝達が有効である。警告灯521はドローンの状態、特にエラー状態を知らせるストロボライト等の表示手段である。これらの入出力手段は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよく、二重化・多重化してもよい。
【0035】
[本発明の特徴的な制御系統の例]
以下、本発明の特徴的な制御系統の例について、
図6を参照しながら説明する。
図6において、フライトコントローラー501は、衝突・墜落検出部551、メモリー552、薬液供給制御部553、モーター制御部554、電源遮断司令部556を有している。これらの構成部分は、フライトコントローラー501の主体をなすコンピューターが実現する機能をブロックごとに表している。
図6では、8機のモーターを、群をなすモーター102として表している。
【0036】
フライトコントローラー501は、バッテリー502からの電源供給ラインをオン・オフするスイッチ557を有している。スイッチ557は電源遮断司令部556からの指令によってオン・オフし、スイッチ557がオフになると電源供給が遮断され、モーター102を起動することができなくなる。
【0037】
衝突・墜落検出部551は、ドローンに装着されたセンサーからの信号によってドローンが物体や人などの障害物に衝突し、または墜落したことを検出する。この実施例では、上記センサーとして、6軸ジャイロセンサ505と障害物接触センサー514が用いられている。6軸ジャイロセンサ505は、既に説明したように構成されていて、ドローンの姿勢を制御するために搭載されている。
【0038】
6軸ジャイロセンサを構成する加速度センサーや角速度センサーは、ドローンの飛行中に障害物に衝突し、あるいは小鳥や木の葉などの異物が引っ掛かると、異常な加速度を検出する。例えば、バードストライクと称する飛翔中の小鳥に衝突した場合は比較的小さな加速度が加わる。これに対して強固な構造物などに衝突した場合は、例えば最大20Gといった大きな加速度が加わる。そこで、加速度センサーや角速度センサーによる検出の閾値を大小2段階に設定しておけば、比較的軽度の衝突か、または重度の衝突かを検出することができる。いずれにせよ、6軸ジャイロセンサは、通常の飛行ではありえない加速度や角速度が加わるとこれに応じた信号を出力するので、ドローンの衝突または墜落検出部として利用することができる。6軸ジャイロセンサを構成するセンサーのうち少なくとも一つのセンサーからの信号を、6軸ジャイロセンサ505の検出信号として利用することができる。
【0039】
障害物接触センサー514は、ドローンが備えているプロペラガードに連動するセンサーで構成することができる。プロペラガードは、プロペラが障害物に接触するのを防止するとともに、プロペラが人体などに接触して人体などに損傷を与えることを防止するために設けられている。このプロペラガードに異常な衝撃力が加わった場合に、この衝撃力によって動作するセンサーを設けると、このセンサーを障害物接触センサー514として利用することができる。
【0040】
メモリー552は、衝突・墜落検出部551がドローンの衝突または墜落を検出したとき、その検出信号を記憶することにより、ドローンの履歴を残す。メモリー552の記憶データは、薬液供給制御部553、モーター制御部554、電源遮断司令部556に入力される。
【0041】
薬液供給制御部553は、薬液を散布するときにポンプ106を稼働させるものである。薬液供給制御部553は、ドローンの衝突または墜落によって衝突・墜落検出部551から出力される検出信号により、またはメモリー552に記憶されている検出信号によってポンプ106を停止させ、薬液の散布を停止させる機能を有する。
【0042】
モーター制御部554は、
図5に示す8機のモーターを、それぞれESCを介して個々に制御し、ドローンの上昇下降、前進後退、左右への移動、さらには速度を制御する。モーター制御部554には、衝突・墜落検出部551から前記検出信号が入力され、またはメモリーから前記検出信号が入力される。モーター制御部554は、前記検出信号が入力されると、群をなすモーター102への給電を停止してすべてのモーター102を停止させ、前記回転体を停止させる。
【0043】
電源遮断司令部556にも、衝突・墜落検出部551から前記検出信号が入力され、また、メモリー552が前記検出信号を記憶しているとメモリー552からも検出信号が入力される。電源遮断司令部556は、前記検出信号が入力されると、スイッチ557をオフに切り替え、バッテリー502からの電力供給を遮断する。
【0044】
図6に示す診断機60は、ドローンの各部の動作を診断するもので、ドローンとは別の場所、例えば整備場などに設置されている。診断機60によるドローンの診断結果はメモリー552に入力されるようになっている。ドローンに衝突や墜落などの履歴があるとメモリー552に記憶されて上述のとおり電力供給が遮断され、ドローンを起動することができない。あるいは、ドローンを起動できたとしても飛行させることはできない。ドローンをメンテナンスし、センサー類や制御系などのダメージを受けた部分が正常に動作するように復旧すると、診断機60はメモリー552に向けてクリア信号を出力する。
【0045】
メモリー552はクリア信号が入力されることにより、衝突・墜落検出部551から入力されて記憶していた前記検出信号を消去し、衝突や墜落に関する履歴を消去する。したがって、ドローンの各構成部分がすべて正常に動作するように復旧すると、メモリー552の履歴がクリアされ、起動不可能の状態すなわちインターロックの状態が解消され、ドローンは再び飛行可能になる。
【0046】
メモリー552は、不揮発性メモリーであってもよい。この構成によれば、電源遮断司令部556により電源が遮断された場合であっても、衝突または墜落の記憶を保持することができるので、衝突または墜落の履歴を有するドローンに電源が投入されたり、飛行を許可してしまうことがない。すなわち、衝突や墜落により不具合を有する可能性のあるドローンの飛行を行わせず、確実にメンテナンスを実施することで、安全を担保することができる。
【0047】
以上、本発明に係る無人飛行体の実施例の全体の構成を説明した。次に、いくつかの実施例について特徴部分を
図7以下のフローチャートを参照しながら説明する。各フローチャートにおいて、符号S1,S2,・・・は動作ステップを示す。本発明は、無人飛行体すなわちドローンの発明でもあり、ドローンの制御システムおよびドローンの制御プログラムとしても捉えることができる。
【0048】
[実施例1]
図7において、ドローンの稼働状態では、6軸ジャイロセンサ505(
図6参照)および障害物接触センサー514の検出信号を衝突・墜落検出部551が常時監視する(S1)。6軸ジャイロセンサ505および障害物接触センサー514は、ドローンの衝突または墜落を検出するセンサーである。衝突・墜落検出部551が衝突または墜落を検出すると、この検出信号がモーター制御部554に入力される。モーター制御部554はすべてのモーター102を停止させるように指令信号を出力し、すべての回転体を停止させる(S2)。ドローンはその場に降下または墜落する。その後電源遮断司令部556から電源遮断指令を出し、スイッチ557をオフにして前記動力計の電源の供給を遮断する(S3)。
【0049】
ドローンが障害物などに衝突し、あるいは墜落すると、機体にダメージを与え、そのまま再び稼働させると、制御不能あるいは墜落のどの確率が高くなり、人や物などに大きな損害を与える可能性がある。上記第1の実施例によれば、ドローンが衝突しまたは墜落することを検出すると、まず回転体を停止させ、ドローンをその場で降下させ、あるいは墜落させる。回転体が回転しているまま降下または墜落すると、周囲の人や物に大きな損傷を与える可能性がある。そこで、まず回転体の回転を停止させ、人や物の損傷をなくすかできるだけ小さな損傷にと留める。このあと電源を遮断する。電源の遮断が先になると、各部の制御動作が一斉に不能になり、ドローンの挙動が予測不能になるので、電源を遮断する前に回転体を停止させる。
【0050】
[実施例2]
第2の実施例を
図8、
図9に示す。この実施例が第1の実施例と異なる点は、前記メモリー552に衝突・墜落の履歴を記憶させる点である。
図8に示すように、障害物接触センサー514の検出信号を衝突・墜落検出部551が衝突または墜落を常時監視する(S11)。衝突または墜落を検出すると、この検出信号をメモリー552に記憶させる(S12)。次に、衝突・墜落検出部551の検出信号により、またはメモリー552から上記検出信号を読み出すことにより、モーター制御部554からすべてのモーター102を停止させるように指令信号を出力する。これによってすべての回転体を停止させ(S13)、次に電源を遮断する(S14)。
【0051】
衝突・墜落検出部551が衝突または墜落を検出すると、メモリー552で検出信号を記憶し、その後モーター102の停止、電源の遮断、という順に処理される。これによってメモリー552への記憶が確実に行われる。
【0052】
図9は、第2実施例における起動時の動作を示す。ドローンを起動するために電源スイッチをオンする(S21)。電源スイッチは、
図6に示すバッテリー502から電源供給を可能にするスイッチであって、
図6に示すスイッチ557とは別の前記制御系への電源供給スイッチである。上記電源スイッチのオンによってメモリー552の記憶データを読み出す(S22)。
【0053】
メモリー552の読み出し信号から、衝突・墜落の履歴の有無を判断し(S23)、衝突・墜落の履歴があれば起動を禁止する(S24)。起動の禁止は電源遮断司令部556がスイッチ557をオフにすることによって行われる。衝突・墜落の履歴がなければ、電源遮断司令部556がスイッチ557をオンにすることによってドローンを起動する(S25)。
【0054】
第2の実施例によれば、ドローンが衝突し、あるいは墜落したりすると、その履歴がメモリーに記憶され、ドローンにインターロックがかかり、再起動することができなくなる。このようにして、事故発生確率の高いドローンの起動を規制することにより、安全性の高いドローン、その制御システムおよび制御プログラムを提供することができる。
【0055】
[実施例3]
第3の実施例を
図10に示す。第3の実施例は、
図6に示す診断機60とドローンとを連携し、ドローンが正常に動作し得るものか否かを診断し、正常に動作し得るものと判断した場合は、いわゆるインターロックを解除するものである。診断機60とドローンは、ドローンを診断機の所定位置にセットすることにより、あるいは、ドローンのフライトコントローラー501と診断機60とをケーブルで接続することによって連携することができる。
【0056】
診断機60は6軸ジャイロセンサ505を構成する加速度センサーが正常に動作するか否かを診断し(S31)、正常と判断すれば、6軸ジャイロセンサ505の検出信号に関するメモリー552の記憶データをクリアし(S32)、ステップS33に進む。上記ステップS31において6軸ジャイロセンサ505を構成する加速度センサーの動作が異常であると判断した場合は、6軸ジャイロセンサ505に関するメモリー552の記憶データを維持する(S35)。
【0057】
ステップS33では、プロペラガードが正常か否かを判断する。プロペラガードは、前述のように障害物接触センサー514を兼ねている。ステップS33は、障害物接触センサー514と衝突・墜落検出部551が正常に動作するか否かの判断ステップである。プロペラガードが正常であれば、プロペラガードの検出信号に関するメモリー552の記憶データをクリアする(S34)。ステップS33においてプロペラガードの動作が異常であると判断した場合はプロペラガードに関するメモリー552の記憶データを維持する(S35)。
【0058】
上記実施例によれば、障害物接触センサー514を構成するプロペラガードや6軸ジャイロセンサ505の動作を診断し、これらがすべて正常であると診断されると、メモリー552がクリアされる。メモリー552がクリアされると、この場合のメモリー552のクリアは、衝突や墜落の履歴が消去されることであり、電源遮断司令部556がスイッチ557をオンさせ、電源供給を復活させる。このようにしてインターロックが解除され、ドローンは再稼働可能になる。
【0059】
診断機60による診断は、衝突や墜落の履歴があるドローンを修理して再使用するときに、修理が完全に行われたかどうかを確認するために行うことができる。また、衝突や墜落の履歴のないドローンであっても、新規に購入したドローンであっても、診断機60によって、動作が正常に行われるか否かの診断を行うことができる。
【0060】
診断機60は、ドローンのサービス部門またはメンテナンス部門に配置されていて、これらの部門で診断した結果、ドローンの動作がすべて正常であると診断されて初めてインターロックが解除されドローンの再使用が可能になる。
【0061】
[実施例4]
第4の実施例は、農業用ドローンのように、薬液の散布を行うことができるドローンにおいて、衝突または墜落した場合の安全性確保を図った例である。動作フローは、
図7に示すフローにおいて、ステップS2を「薬剤散布停止」に置き換えることによって実現できる。「薬剤散布停止」は、
図6に示す薬液供給制御部553によってポンプ106を停止させることによって行うことができる。
【0062】
第4の実施例によれば、薬液供給制御部553は、ドローンの衝突あるいは墜落が検出されると、電源遮断司令部556によって電源供給を遮断する前に、薬液の散布を停止させ、薬液の散乱を防止することができる。
【0063】
ドローンの衝突あるいは墜落が検出されて薬液の散布を停止させるタイミングは、前記回転体を停止させるタイミングと同じであってもよい。したがって、
図7に示す動作フローのステップS2は「回転体停止および薬液散布停止」としてもよい。
【0064】
[産業上の利用可能性]
本発明は、ドローンと称する無人飛行体に関する発明であるが、本発明の技術思想は、陸上、水上および水中における移動体にも適用可能である。