【文献】
V Chitu, et al.,Studies of foliar applied clay effects on the apple fruit quality,Acta Horticulturae,2010年,No.884,p.441-447,(Proceedings of the XIth International Symposium on Plant Bioregulators in Fruit Production, 2009, Volume 2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示のリンゴ用葉面散布剤について説明する。本開示のリンゴ用葉面散布剤はベントナイトを含む。ベントナイトは粘土鉱物の一種である。ベントナイトは、モンモリロナイトを主成分とし、その他に、例えば、石英、雲母、長石、ゼオライト等を含む。
【0008】
リンゴ用葉面散布剤におけるベントナイトの配合比は、30重量%以上、100重量%以下であることが好ましく、50重量%以上、99重量%以下であることがより好ましく、60重量%以上、99重量%以下であることが特に好ましい。リンゴ用葉面散布剤におけるベントナイトの配合比が上記の範囲内である場合、リンゴのさび果病を抑制する効果が一層高い。ベントナイトの配合比とは、リンゴ用葉面散布剤の全固形分を100重量%としたときの、ベントナイトの重量%濃度である。
【0009】
本開示のリンゴ用葉面散布剤は、リグニンスルホン酸マグネシウムをさらに含むことが好ましい。リンゴ用葉面散布剤がリグニンスルホン酸マグネシウムを含む場合、ベントナイトとリグニンスルホン酸マグネシウムとの相乗効果により、リンゴのさび果病を抑制する効果が一層高い。
【0010】
リンゴ用葉面散布剤におけるリグニンスルホン酸マグネシウムの配合比は、1重量%以上、50重量%以下であることが好ましく、3重量%以上、30重量%以下であることがより好ましく、10重量%以上、20重量%以下であることが特に好ましい。リンゴ用葉面散布剤におけるリグニンスルホン酸マグネシウムの配合比が上記の範囲内である場合、リンゴのさび果病を抑制する効果が一層高い。リグニンスルホン酸マグネシウムの配合比とは、リンゴ用葉面散布剤の全固形分を100重量%としたときの、リグニンスルホン酸マグネシウムの重量%濃度である。
【0011】
本開示のリンゴ用葉面散布剤は、硫酸カルシウムをさらに含むことが好ましい。リンゴ用葉面散布剤が硫酸カルシウムを含む場合、リンゴ果実のビターピット、及び「油あがり」と呼ばれる現象を抑制できる。ビターピットとは、果実の生理障害の一種であり、果実の表面に黒く、周囲よりも凹んだ斑点が生じるものである。「油あがり」とは、収穫後の果実の表面にワックス成分が出てくる現象である。
【0012】
リンゴ用葉面散布剤における硫酸カルシウムの配合比は、5重量%以上、60重量%以下であることが好ましく、10重量%以上、50重量%以下であることがより好ましく、20重量%以上、40重量%以下であることが特に好ましい。リンゴ用葉面散布剤における硫酸カルシウムの配合比が上記の範囲内である場合、ビターピット及び「油あがり」を抑制する効果が一層高い。硫酸カルシウムの配合比とは、リンゴ用葉面散布剤の全固形分を100重量%としたときの、硫酸カルシウムの重量%濃度である。
【0013】
本開示のリンゴ用葉面散布剤は、さらに他の成分を含んでいてもよい。他の成分として、例えば、リン酸1カリウム、硫酸マグネシウム等が挙げられる。それ以外にも、肥料の成分として公知の成分を適宜選択してリンゴ用葉面散布剤に配合することができる。
【0014】
本開示のリンゴ用葉面散布剤の剤形は、例えば、粉末、液状等とすることができる。粉末である場合、リンゴ用葉面散布剤を水等の溶媒に溶解又は分散して溶液又は分散液を作成し、その溶液又は分散液をリンゴの葉面に散布することができる。リンゴ用葉面散布剤の剤形が液状である場合、そのまま、又は水等の溶媒で希釈して、リンゴの葉面に散布することができる。
【0015】
(実施例1)
1.リンゴ用葉面散布剤の製造
(1)リンゴ用葉面散布剤S1
以下の各成分を混合して、リンゴ用葉面散布剤S1を製造した。
【0016】
リン酸1カリウム:1重量部
硫酸マグネシウム:15重量部
ベントナイト:74重量部
リグニンスルホン酸マグネシウム:10重量部
なお、リンゴ用葉面散布剤S1の総重量(固形分)は100重量部である。リンゴ用葉面散布剤S1の剤形は粉末である。
【0017】
(2)リンゴ用葉面散布剤S2
以下の各成分を混合して、リンゴ用葉面散布剤S2を製造した。
リン酸1カリウム:1重量部
硫酸カルシウム:39重量部
ベントナイト:60重量部
なお、リンゴ用葉面散布剤S2の総重量(固形分)は100重量部である。リンゴ用葉面散布剤S2の剤形は粉末である。
【0018】
(3)リンゴ用葉面散布剤S3
以下の各成分を混合して、リンゴ用葉面散布剤S3を製造した。
リン酸1カリウム:1重量部
ベントナイト:99重量部
なお、リンゴ用葉面散布剤S3の総重量(固形分)は100重量部である。リンゴ用葉面散布剤S3の剤形は粉末である。
【0019】
2.リンゴ用葉面散布剤の使用
(1)散布液の調製
水1Lあたり5gの比率で、リンゴ用葉面散布剤S1を水に投入して、散布液(以下ではS1散布液とする)を調製した。また、水1Lあたり5gの比率で、リンゴ用葉面散布剤S2を水に投入して、散布液(以下ではS2散布液とする)を調製した。また、水1Lあたり5gの比率で、リンゴ用葉面散布剤S3を水に投入して、散布液(以下ではS3散布液とする)を調製した。
【0020】
(2)リンゴに対する散布液の散布
リンゴの果樹園を第1〜第4区画に区分した。第1区画にあるリンゴの果樹にS1散布液を散布し、第2区画にあるリンゴの果樹にS2散布液を散布し、第3区画にあるリンゴの果樹にS3散布液を散布し、第4区画にあるリンゴの果樹には何も散布しなかった。S1、S3散布液の散布は、落花直後から、10〜15日間隔にて、2〜3回行った。S2散布液の散布は、落花直後から、10〜15日間隔にて、3〜5回行った。
【0021】
(3)リンゴ果実の評価
その後、収穫したリンゴ果実を評価したところ、S1〜S3散布液を散布した第1〜第3区画から収穫したリンゴ果実では、無処理の第4区画から収穫したリンゴ果実に比べて、さび果病の発症が抑制されていた。
【0022】
特に、S1散布液を散布した第1区画から収穫したリンゴ果実では、さび果病の発症が一層抑制されていた。これは、リンゴ用葉面散布剤S1に含まれるベントナイトとリグニンスルホン酸マグネシウムとの相乗効果によると考えられる。
【0023】
また、S2散布液を散布した第2区画から収穫したリンゴ果実では、無処理の第4区画から収穫したリンゴ果実に比べて、ビターピット及び油上がりの出現が抑制されていた。これは、リンゴ用葉面散布剤S2に含まれる硫酸カルシウムの作用によると考えられる。
(実施例2)
1.リンゴ用葉面散布剤の製造
(1)リンゴ用葉面散布剤S1〜S3
前記実施例1と同様にして、リンゴ用葉面散布剤S1〜S3を製造した。本実施例におけるリンゴ用葉面散布剤S1〜S3は、前記実施例1におけるリンゴ用葉面散布剤S1〜S3と同一である。
【0024】
(2)リンゴ用葉面散布剤S4
以下の各成分を混合して、リンゴ用葉面散布剤S4を製造した。
リン酸1カリウム:1重量部
硫酸マグネシウム:15重量部
リグニンスルホン酸マグネシウム:10重量部
なお、リンゴ用葉面散布剤S4の総重量(固形分)は26重量部である。リンゴ用葉面散布剤S4の剤形は粉末である。
【0025】
(3)リンゴ用葉面散布剤S5
以下の各成分を混合して、リンゴ用葉面散布剤S5を製造した。
リン酸1カリウム:1重量部
硫酸マグネシウム:15重量部
ベントナイト:74重量部
なお、リンゴ用葉面散布剤S5の総重量(固形分)は90重量部である。リンゴ用葉面散布剤S5の剤形は粉末である。
【0026】
(4)リンゴ用葉面散布剤S6
以下の各成分を混合して、リンゴ用葉面散布剤S6を製造した。
リン酸1カリウム:1重量部
硫酸カルシウム:39重量部
なお、リンゴ用葉面散布剤S6の総重量(固形分)は40重量部である。リンゴ用葉面散布剤S6の剤形は粉末である。
【0027】
(5)リンゴ用葉面散布剤S7
以下の各成分を混合して、リンゴ用葉面散布剤S7を製造した。
リン酸1カリウム:1重量部
ベントナイト:60重量部
なお、リンゴ用葉面散布剤S7の総重量(固形分)は61重量部である。リンゴ用葉面散布剤S7の剤形は粉末である。
【0028】
2.リンゴ用葉面散布剤の使用
(1)散布液の調製
水1Lあたり2gの比率で、リンゴ用葉面散布剤S1を水に投入して、散布液(以下ではS1−500倍散布液とする)を調製した。水1Lあたり1gの比率で、リンゴ用葉面散布剤S1を水に投入して、散布液(以下ではS1−1000倍散布液とする)を調製した。
【0029】
水1Lあたり2gの比率で、リンゴ用葉面散布剤S2を水に投入して、散布液(以下ではS2−500倍散布液とする)を調製した。水1Lあたり1gの比率で、リンゴ用葉面散布剤S2を水に投入して、散布液(以下ではS2−1000倍散布液とする)を調製した。
【0030】
水1Lあたり2gの比率で、リンゴ用葉面散布剤S3を水に投入して、散布液(以下ではS3−500倍散布液とする)を調製した。水1Lあたり1gの比率で、リンゴ用葉面散布剤S3を水に投入して、散布液(以下ではS3−1000倍散布液とする)を調製した。
【0031】
水1Lあたり2gの比率で、リンゴ用葉面散布剤S4を水に投入して、散布液(以下ではS4−500倍散布液とする)を調製した。水1Lあたり1gの比率で、リンゴ用葉面散布剤S4を水に投入して、散布液(以下ではS4−1000倍散布液とする)を調製した。
【0032】
水1Lあたり2gの比率で、リンゴ用葉面散布剤S5を水に投入して、散布液(以下ではS5−500倍散布液とする)を調製した。水1Lあたり1gの比率で、リンゴ用葉面散布剤S5を水に投入して、散布液(以下ではS5−1000倍散布液とする)を調製した。
【0033】
水1Lあたり2gの比率で、リンゴ用葉面散布剤S6を水に投入して、散布液(以下ではS6−500倍散布液とする)を調製した。水1Lあたり1gの比率で、リンゴ用葉面散布剤S6を水に投入して、散布液(以下ではS6−1000倍散布液とする)を調製した。
【0034】
水1Lあたり2gの比率で、リンゴ用葉面散布剤S7を水に投入して、散布液(以下ではS7−500倍散布液とする)を調製した。水1Lあたり1gの比率で、リンゴ用葉面散布剤S7を水に投入して、散布液(以下ではS7−1000倍散布液とする)を調製した。
【0035】
(2)リンゴに対する散布液の散布
リンゴの果樹園を第1〜第15区画に区分した。表1に示すように、各区画に所定の散布液を散布した。リンゴの品種は「つがる」である。
【0037】
すなわち、第1区画にあるリンゴの果樹にS1−500倍散布液を散布し、第2区画にあるリンゴの果樹にS1−1000倍散布液を散布した。
また、第3区画にあるリンゴの果樹にS4−500倍散布液を散布し、第4区画にあるリンゴの果樹にS4−1000倍散布液を散布した。
【0038】
また、第5区画にあるリンゴの果樹にS5−500倍散布液を散布し、第6区画にあるリンゴの果樹にS5−1000倍散布液を散布した。
また、第7区画にあるリンゴの果樹にS2−500倍散布液を散布し、第8区画にあるリンゴの果樹にS2−1000倍散布液を散布した。
【0039】
また、第9区画にあるリンゴの果樹にS6−500倍散布液を散布し、第10区画にあるリンゴの果樹にS6−1000倍散布液を散布した。
また、第11区画にあるリンゴの果樹にS7−500倍散布液を散布し、第12区画にあるリンゴの果樹にS7−1000倍散布液を散布した。
【0040】
また、第13区画にあるリンゴの果樹にS3−500倍散布液を散布し、第14区画にあるリンゴの果樹にS3−1000倍散布液を散布した。
第15区画にあるリンゴの果樹には何も散布しなかった。S1−500倍分散液、S1−1000倍分散液、S3−500倍分散液、S3−1000倍分散液、S4−500倍分散液、S4−1000倍分散液、S5−500倍分散液、S5−1000倍分散液の散布は、落花直後から、10〜15日間隔にて、2〜3回行った。
【0041】
S2−500倍分散液、S2−1000倍分散液、S6−500倍分散液、S6−1000倍分散液、S7−500倍分散液、S7−1000倍分散液の散布は、落花直後から、10〜15日間隔にて、3〜5回行った。
【0042】
(3)リンゴ果実の評価
その後、収穫したリンゴ果実について、さび果病の発生率を算出した。その結果を上記表1に示す。また、一部の区画について、ビターピット及び油上がりの発生率を算出した。その結果を上記表1に示す。
【0043】
表1に示されているように、リンゴ用葉面散布剤S1、S2、S3、S5、S7を使用した場合は、リンゴ用葉面散布剤S4、S6を使用した場合、及び無処理の場合に比べて、さび果病の発症が抑制されていた。リンゴ用葉面散布剤S1、S3を使用した場合は、特に、さび果病の発症が抑制されていた。リンゴ用葉面散布剤S1を使用した場合の効果は、ベントナイトとリグニンスルホン酸マグネシウムとの相乗効果であると考えられる。リンゴ用葉面散布剤S3を使用した場合の効果は、ベントナイトとリン酸1カリウムとの相乗効果であると考えられる。
【0044】
リンゴ用葉面散布剤S2を使用した場合は、リンゴ用葉面散布剤S7を使用した場合、及び無処理の場合に比べて、ビターピットの発生が抑制されていた。
リンゴ用葉面散布剤S2、S7を使用した場合は、無処理の場合に比べて、油上がりの発生が抑制されていた。リンゴ用葉面散布剤S2を使用した場合は、特に、油上がりの発生が抑制されていた。
【0045】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
(1)リンゴ用葉面散布剤における各成分の配合比は適宜設定することができる。
【0046】
(2)散布液を調製するときの、水とリンゴ用葉面散布剤との混合比は適宜設定することができる。例えば、水1Lと、1〜10gのリンゴ用葉面散布剤とを混合することが好ましい。この場合、リンゴのさび果病を抑制する効果が一層高い。
【0047】
(3)上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を、課題を解決できる限りにおいて省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【0048】
(4)上述したリンゴ用葉面散布剤の他、当該リンゴ用葉面散布剤を構成要素とする製品セット、リンゴ育成方法等、種々の形態で本発明を実現することもできる。