(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記磁性シートは、前記アンテナコイルの前記開口部に挿入されることによって、前記他方側部と前記導電体開口部との間の前記部位と、前記一方側部の前記外部機器との前記対向面に重畳するように設けられる請求項6に記載のアンテナ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、NFCやFeliCa(登録商標)等のRFIDでは、外部機器とのより高い通信性能を確保するために、結合係数のピークに当該外部機器との非接触通信の動作ポイントが来ることが好ましい。また、RFIDを搭載する携帯電子機器の構成上の制約のために、アンテナコイルの結合係数のピークとなる箇所が遮蔽されて、外部機器との通信性能が十分に確保されないことが懸念されている。すなわち、外部機器とのより高い通信性能を確保するために、外部機器と非接触通信する動作ポイントを結合係数のピークに来るように、適宜調整できるようにすることが好ましい。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、外部機器と非接触通信する動作ポイントが結合係数のピークに来るように調整可能とすることによって、より高い通信性能を確保することの可能な、新規かつ改良されたアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、電子機器に組み込まれ、外部機器と電磁界信号を介して通信するアンテナ装置であって、その開口部を介して幅方向に対向する導線が互いに近接するように巻回して設けられ、前記外部機器と誘導結合されるアンテナコイルと、前記アンテナコイルの前記外部機器に対向する面と反対側の面に設けられるシート状導電体と、を備え、前記アンテナコイルは、前記開口部を縦断する中心線を介して前記導線が一方向に周回する一方側部と前記導線が他方向に周回する他方側部に二分され、前記シート状導電体は、前記アンテナコイルの
前記他方側部と重畳する導電体側開口部と、前記導電体側開口部と前記シート状導電体の外縁部の何れかとの間にかけて形成されるスリット部が
設けられ、前記導電体側開口部は、前記アンテナコイルの前記他方側部と略同一の大きさである構成となっている。
【0009】
本発明の一態様によれば、シート状導電体の所望の位置に設けられる導電体側開口部にアンテナコイルの
他方側部を重畳させ、かつ、当該導電体側開口部とシート状導電体の外縁部と連接するスリット部を設けることによって、外部機器と非接触通信する動作ポイントが結合係数のピークに来るように調整されるので、より高い通信性能を確保できる。
しかも、前記導電体側開口部は、前記アンテナコイルの前記他方側部と略同一の大きさとすることにより、外部機器からの磁束が導電体側開口部を通り抜けてループが形成され易くなるので、より高い通信性能を確保できる。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記
導電体側開口部は、前記シート状導電体の中心の近傍となる中央側に設けられていることとしてもよい。
【0013】
このようにすれば、導電体側開口部の周辺の磁束をより多く集められるようになるので、より高い通信性能を確保できる。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記シート状導電体は、前記電子機器に備わる金属板からなる第1の導電体と前記アンテナコイルとを架橋する第2の導電体であることとしてもよい。
【0015】
このようにすれば、通信動作ポイントを所望の位置に調整し易くなるので、より高い通信性能を確保できる。
【0016】
また、本発明の一態様では、前記シート状導体は、前記電子機器に備わる金属板の一部の構成となっていることとしてもよい。
【0017】
このようにすれば、電子機器の内部構造物を利用することによって、より高い通信性能を確保できる。
【0018】
また、本発明の一態様では、前記アンテナコイルの前記他方側部と前記導電体開口部との間の部位に、磁性体から形成される磁性シートが設けられることとしてもよい。
【0019】
このようにすれば、外部機器からの磁束を逃がす方向に磁性シートが設けられることによって、当該磁束がアンテナコイルの開口部に導入し易くなるので、より高い通信性能を確保できる。
【0020】
また、本発明の一態様では、前記磁性シートは、前記アンテナコイルの前記一方側部の前記外部機器との対向面側にも設けられることとしてもよい。
【0021】
このようにすれば、外部機器からの磁束をアンテナコイルの開口部に直接導入し易くなるので、より高い通信性能を確保できる。
【0022】
また、本発明の一態様では、前記磁性シートは、前記アンテナコイルの前記開口部に挿入されることによって、前記他方側部と前記導電体開口部との間の前記部位と、前記一方側部の前記外部機器との前記対向面に重畳するように設けられることとしてもよい。
【0023】
このようにすれば、外部機器からの磁束をアンテナコイルの開口部に直接導入し易くなるので、より高い通信性能を確保できる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように本発明によれば、外部機器と非接触通信する動作ポイントが結合係数のピークに来るように調整可能とすることによって、より高い通信性能を確保できる。
前記導電体側開口部は、前記アンテナコイルの前記他方側部と略同一の大きさとすることにより、外部機器からの磁束が導電体側開口部を通り抜けてループが形成され易くなるので、より高い通信性能を確保できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0027】
まず、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置の構成について、図面を使用しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置が適用される無線通信システムの概略構成を示す斜視図である。
【0028】
本実施形態に係るアンテナ装置1は、電子機器30に組み込まれ、外部機器と電磁界信号を介して通信する装置であって、例えば、
図1に示すようなRFID用の無線通信システム100に組み込まれて使用される。
【0029】
無線通信システム100は、
図1に示すように、電子機器30に備わるアンテナ装置1と、アンテナ装置1に対するアクセスを行う外部機器となるリーダライタ40とを含む。ここで、アンテナ装置1とリーダライタ40とは、
図1に示す三次元直交座標系XYZのXY平面において互いに対向するように配置されているものとする。
【0030】
リーダライタ40は、XY平面において互いに対向するアンテナ装置1に対して、Z軸方向に磁界を発信する発信器として機能し、具体的には、アンテナ装置1に向けて磁界を発信するアンテナ41と、アンテナ41を介して誘導結合されたアンテナ装置1と通信を行う制御基板42とを備える。
【0031】
すなわち、リーダライタ40は、アンテナ41と電気的に接続された制御基板42が配設されている。この制御基板42には、一又は複数の集積回路チップ等の電子部品からなる制御回路43が実装されている。この制御回路43は、アンテナ装置1から受信されたデータに基づいて、各種の処理を実行する。
【0032】
例えば、制御回路43は、アンテナ装置1に対してデータを送信する場合、データを符号化し、符号化したデータに基づいて、所定の周波数(例えば、13.56MHz)の搬送波を変調し、変調した変調信号を増幅し、増幅した変調信号でアンテナ41を駆動する。また、制御回路43は、アンテナ装置1からデータを読み出す場合、アンテナ41で受信されたデータの変調信号を増幅し、増幅したデータの変調信号を復調し、復調したデータを復号する。
【0033】
なお、制御回路43では、一般的なリーダライタで用いられる符号化方式及び変調方式が用いられ、例えば、マンチェスタ符号化方式やASK(Amplitude Shift Keying)変調方式が用いられている。また、以下では、非接触通信システムにおけるアンテナ装置等について説明をするが、Qi(チー)等の非接触充電システムについても同様に適用することができるものとする。
【0034】
アンテナ装置1は、例えば、リーダライタ40とXY平面において対向するように配置される携帯電話機等の電子機器30の筐体内部に組み込まれる。本実施形態では、アンテナ装置は、誘導結合されたリーダライタ40との間で通信可能となるアンテナコイル12が実装されたアンテナ基板11を有するアンテナモジュール2と、アンテナコイル12に流れる電流により駆動し、リーダライタ40との間で通信を行う通信処理部13と、金属板3とを備える。
【0035】
アンテナモジュール2は、電子機器30の筐体内部に設けられ、誘導結合されたリーダライタ40との間で通信を行う。本実施形態では、
図1に示すように、アンテナモジュール2は、アンテナ基板11と、通信処理部13と、接続部14とを備える。
【0036】
アンテナ基板11には、例えば、フレキシブルフラットケーブルなどの可撓性の導線12a(
図2(A)参照)がパターンニング処理などをすることによって形成されるアンテナコイル12と、アンテナコイル12と通信処理部13とを電気的に接続する端子部14とが実装されている。
【0037】
アンテナコイル12は、リーダライタ40から発信される磁界を受けると、リーダライタ40と誘導結合によって磁気的に結合され、変調された電磁波を受信して、端子部14を介して受信信号を通信処理部13に供給する機能を有する。なお、アンテナコイル12の構成の詳細な説明については、後述する。
【0038】
通信処理部13は、アンテナコイル12に流れる電流により駆動し、リーダライタ40との間で通信を行う。具体的に、通信処理部13は、受信された変調信号を復調し、復調したデータを復号して、復号したデータを、当該通信処理部13が有する内部メモリに書き込む。また、通信処理部13は、リーダライタ40に送信するデータを内部メモリから読み出し、読み出したデータを符号化し、符号化したデータに基づいて搬送波を変調し、誘導結合によって磁気的に結合されたアンテナコイル12を介して変調された電波をリーダライタ40に送信する。なお、通信処理部13は、アンテナコイル12に流れる電力ではなく、電子機器内に組み込まれたバッテリパックや外部電源などの電力供給手段から供給された電力によって駆動してもよい。
【0039】
金属板3は、電子機器30の筐体内に設けられ、外部機器となるリーダライタ40に対向する第1の導電体となる。金属板3は、例えば、携帯電話やスマートフォン、又はタブレットPC等の電子機器の筐体内に設けられ、アンテナモジュール2の通信時にリーダライタ40に対向する第1の導電体を構成するものである。当該第1の導電体として、例えば、スマートフォンの筐体の内面に貼付されたメタルカバーや、スマートフォン内に収納されたバッテリパックの金属筐体、あるいは、タブレットPCの液晶モジュールの裏面に設けられた金属板等の内部構造物が相当する。
【0040】
このような内部構造物である金属板3は、電気を比較的よく流すので、外部から交流磁界が加わると渦電流が発生し、磁界を跳ね返してしまう。このような外部から交流磁界が加わるときの磁界分布を調べると、リーダライタ40と対向した金属板3の外縁側の磁界が強いという特性を有する。このため、従来では、携帯電話機等の電子機器30に組み込んだ際に当該電子機器30の小型化を図りつつ、リーダライタ40との間で良好な通信特性を確保するために、アンテナモジュール2のアンテナコイル12を携帯電話機30の筐体内に設けられた金属筐体等の金属板3の外縁側に設けることが行われていた。
【0041】
しかしながら、電子機器30の小型化や多機能化に伴い、筐体内において金属板3の外縁側にアンテナコイル12を設置するスペースが十分に確保されないために、金属板3の外縁側にアンテナコイル12を設置できない場合がある。また、RFIDを搭載する携帯電子機器の構成上の制約のために、アンテナコイル12の結合係数kのピークとなる箇所が遮蔽されて、外部機器40との通信性能が十分に確保されない場合もある。すなわち、電子機器30の小型化や多機能化に伴い、かつ、当該電子機器の構成上の制約を受けることによって、金属板3による磁気シールド効果を利用したアンテナの通信特性を十分に高められないことが懸念される。
【0042】
本発明者は、前述した本発明の目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、金属板3の内側に開口部を設けて、かつ、当該開口部と金属板3の外縁部とをスリット部で連接して、当該開口部にアンテナコイル12の他方側部を重畳させることによって、外部機器40と非接触通信する動作ポイントが結合係数kのピークに来るように調整されるので、金属板3の外縁側にアンテナコイル12を設ける場合よりも、より良好な磁気シールド効果によるアンテナ通信特性を確保できることを見出した。かかる知見に基づき更に研究を行った結果、本発明を完成するに至った。
【0043】
次に、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置の構成について、図面を使用しながら説明する。
図2(A)は、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置の概略構成の一例を示す斜視図であり、
図2(B)は、
図2(A)のA−A断面図であり、
図2(C)は、
図2(A)に示すアンテナ装置のアンテナコイルを除いたシート状導電体の斜視図である。
【0044】
本実施形態のアンテナ装置1は、
図2(A)及び
図2(B)に示すように、その開口部12bを介して幅方向(Y方向)に対向する導線12aが互いに近接するように巻回して設けられるアンテナコイル12と、アンテナコイル12の外部機器40に対向する面と反対側の面に設けられるシート状導電体5と、を備える。
【0045】
本実施形態では、アンテナコイル12は、中央側に有する開口部12bを縦断する中心線L1を介して導線12aが一方向に周回する一方側部12a1と、導線12aが他方向に周回する他方側部12a2に二分される細長い略短冊形状のコイルである。また、アンテナコイル12は、導線12aが周回する主面が通信時にリーダライタ40と
図1に示すXY平面において対向するように配置される。さらに、アンテナコイル12の開口部12bには、外部機器からの磁束をアンテナコイルの開口部に直接誘導し易くするために、磁性体から形成される磁性シート20が他方側部12a2と導電体開口部12との間の部位と、一方側部12a1の外部機器40との対向面に重畳するように挿入されて設けられている。
【0046】
シート状導電体5は、アンテナコイル12の外形より大きい金属性シートであり、アンテナコイル12の
他方側部12a2と重畳する大きさの導電体側開口部6と、当該導電体側開口部6とシート状導電体5の外縁部5aの先端との間にかけて形成されるスリット部7が設けられる構成となっている。本実施形態では、シート状導電体5として、電子機器30に備わる金属板3を利用して、当該金属板3の内側に導電体側開口部6となる開口部を設けて、かつ、当該導電体側開口部6と金属板3(シート状導電体5)の外縁部5aとをスリット部7で連接して、当該導電体側開口部6にアンテナコイル12の他方側部12a2を重畳させる構成となっている。すなわち、本実施形態では、シート状導体5は、電子機器30に備わる金属板3の一部の構成となっている。
【0047】
スリット部7は、幅方向に対して長さ方向が大きい細隙であり、導電体側開口部6とシート状導電体5の外縁部5aの先端との間にかけて連接するように形成される。スリット部7を設けることで、通信時にシート状導電体5(金属板3)に流れる渦電流のループを遮断するので、渦電流が生じるのを防止して、通過する磁束の損失を抑制することができる。なお、シート状導電体5(金属板3)に渦電流の発生を防止できればよいため、スリット部7の幅は、特に限定されない。また、スリット部7は、シート状導電体5の外縁部5aの何れかと導電体側開口部6とを連接するように設けられていればよいので、シート状導電体5の外縁部5aの両側部の何れかと連接する構成としてもよい。
【0048】
このように、本実施形態では、アンテナ装置1は、シート状導電体5(金属板3)の所望の位置に、アンテナコイル12の他方側部12a2と略同一の大きさの導電体側開口部6を設け、かつ、当該導電体側開口部6とシート状導電体5の外縁部5aと連接するスリット部7を設けた上で、アンテナコイル12の他方側部12a2が当該導電体側開口部6と重畳するように、アンテナコイル12をシート状導電体5の内側に設ける構成としている。このような構成とすることによって、リーダライタ40からの磁束が磁性シート20に沿って、シート状導電体5に設けられた導電体側開口部6を通り抜けることでループが形成されるので、アンテナとしての通信性能が向上するようになる。なお、ここで言及する「略同一の大きさ」とは、完全に同一の大きさであることに限らず、例えば、通信性能に影響のない範囲で多少のずれが許容される大きさを意味する。
【0049】
また、導電体側開口部6をシート状導電体5 の所望の位置に設けることによって、リーダライタ等の外部機器40と非接触通信する動作ポイントが双方のコイル間の結合係数kのピークに来るように調整されるので、より高い通信性能を確保できるようになる。すなわち、本実施形態では、電子機器30の内部構造物となる金属板3を利用して、シート状導電体5 となる金属板3の所望の位置に
導電体側開口部6を設けることによって、非接触通信する動作ポイントが双方のコイル間の結合係数k のピークに来るように調整されるので、より高い通信性能が確保される。特に、導体側開口部6をシート状導電体5 の中心の近傍となる中央側に設けることによって、導電体側開口部6の周辺の磁束をより多く集められるようになるので、より高い通信性能を確保できるようになる。
【0050】
なお、本実施形態では、磁性シート20は、アンテナコイル12の開口部12bに挿入されることによって、他方側部12a2と導電体開口部6との間の部位と、一方側部12a1の外部機器30との対向面に重畳するように設けられるが、磁性シート12は、少なくともアンテナコイル12の他方側部12a2と導電体開口部6との間の部位に、設けられていればよい。
【0051】
例えば、
図3(A)乃至(C)に示すように、アンテナコイル112の他方側部112a2と導電体開口部106との間の部位にのみ磁性シート120が設けられ、かつ、導電体側開口部106とシート状導電体105の外縁部105aと連接するスリット部107を設けて、アンテナコイル112の他方側部112a2が当該導電体側開口部106と重畳するように、アンテナコイル112をシート状導電体105の内側に設ける構成としても、上述した作用・効果を奏する。
【0052】
次に、本発明の他の一実施形態に係るアンテナ装置の構成について、図面を使用しながら説明する。
図4(A)は、本発明の他の一実施形態に係るアンテナ装置の概略構成の一例を示す斜視図であり、
図4(B)は、
図4(A)のC−C断面図である。
【0053】
本実施形態のアンテナ装置201は、
図4(A)及び
図4(B)に示すように、その開口部212bを介して幅方向(Y方向)に対向する導線212aが互いに近接するように巻回して設けられるアンテナコイル212と、アンテナコイル212の外部機器40に対向する面と反対側の面に設けられるシート状導電体205と、当該シート状導電体205の一端側に重畳する金属板203とを備える。
【0054】
本実施形態では、アンテナコイル212は、中央側に有する開口部212bを縦断する中心線を介して導線212aが一方向に周回する一方側部212a1と、導線212aが他方向に周回する他方側部212a2に二分される細長い略短冊形状のコイルである。また、アンテナコイル212は、導線212aが周回する主面が通信時にリーダライタ40と
図1に示すXY平面において対向するように配置される。さらに、アンテナコイル212の開口部212bには、外部機器からの磁束をアンテナコイルの開口部に直接誘導し易くするために、磁性体から形成される磁性シート220が他方側部212a2と導電体開口部212との間の部位と、一方側部212a1の外部機器40との対向面に重畳するように挿入されて設けられている。
【0055】
シート状導電体205は、アンテナコイル212の外形より大きい金属性シートであり、アンテナコイル212の
他方側部212a2と重畳する大きさの導電体側開口部206と、当該導電体側開口部206とシート状導電体205の外縁部205aの先端との間にかけて形成されるスリット部207が設けられる構成となっている。本実施形態では、シート状導電体205は、電子機器に備わるメタルカバーや、バッテリパックの金属筐体等の金属板203からなる第1の導電体とアンテナコイル212とを架橋するように設けられるアルミ箔等からなる第2の導電体である。
【0056】
すなわち、本実施形態では、リーダライタ40と対向した金属板203の外縁側の磁界が強い特性を利用して、リーダライタ40との間で良好な通信特性を確保するために、アンテナコイル212を携帯電話機30の筐体内の金属板203の外縁側に設ける際に、導電体側開口部206とスリット部207が形成されるシート状導電体206を介して、アンテナコイル212を金属板203と接続する構成となっている。
【0057】
スリット部207は、幅方向に対して長さ方向が大きい細隙であり、導電体側開口部206とシート状導電体205の外縁部205aの先端との間にかけて連接するように形成される。スリット部207を設けることで、通信時にシート状導電体205に流れる渦電流のループを遮断するので、渦電流が生じるのを防止して、通過する磁束の損失を抑制することができる。なお、シート状導電体205に渦電流の発生を防止できればよいため、スリット部207の幅は、特に限定されない。また、スリット部207は、シート状導電体205の外縁部205aの何れかと導電体側開口部206とを連接するように設けられていればよいので、シート状導電体205の外縁部205aの両側部の何れかと連接する構成としてもよい。
【0058】
このように、本実施形態では、アンテナ装置201は、シート状導電体205の所望の位置に、アンテナコイル212の他方側部212a2と略同一の大きさの導電体側開口部206を設け、かつ、当該導電体側開口部206とシート状導電体205の外縁部205aと連接するスリット部207を設けた上で、アンテナコイル212の他方側部212a2が当該導電体側開口部206と重畳するように、アンテナコイル212をシート状導電体205の内側に設けて、かつ、当該シート状導電体205を金属板3の一端側に連結させる構成としている。このような構成とすることによって、リーダライタ40からの磁束が磁性シート220に沿って、シート状導電体205に設けられた導電体側開口部206を通り抜けることでループが形成されるので、アンテナとしての通信性能が向上するようになる。
【0059】
また、導電体側開口部6をシート状導電体5の所望の位置に設けることによって、リーダライタ等の外部機器40と非接触通信する動作ポイントが双方のコイル間の結合係数kのピークに来るように調整されるので、より高い通信性能を確保できるようになる。すなわち、本実施形態では、電子機器30の内部構造物となる金属板3を利用して、シート状導電体5となる金属板3の所望の位置に導電体側開口部6を設けることによって、非接触通信する動作ポイントが双方のコイル間の結合係数kのピークに来るように調整されるので、より高い通信性能が確保される。
【0060】
特に、本実施形態では、電子機器30の内部構造物となる金属板203に直接、導電体側開口部206やスリット部207を設けずに、アルミニウムをはじめとする金属箔等の薄いシート状導電体205に導電体側開口部206やスリット部207を設ける構成としている。このため、アンテナコイル212の通信動作ポイントをより所望の位置に調整し易くなるので、より高い通信性能を確実に確保できるようになる。また、電子機器30の内部構造物となる金属板203に直接、導電体側開口部206やスリット部207を設けないので、これら内部構造物の強度を低下させることなく、より高い通信性能を確保できるようになる。
【0061】
なお、前述した本発明の一実施形態及び他の一実施形態では、アンテナコイル12、112、212には、それぞれ磁性シート20、120、220が設けられているが、当該磁性シート20、120、220が設けられていない場合でも、上述した作用・効果を奏する。すなわち、シート状導電体5、105、205に導電体側開口部6、106、206とスリット部7、107、207を設けて、当該アンテナコイル12、112、212の他方側部12a2、112a2、212a2が当該導電体側開口部6、106、206と重畳する構成となっていれば、同様にして高い通信性能を確保できるようになる。
【実施例】
【0062】
次に、本発明の各実施形態に係るアンテナ装置の検討評価の実施例について、図面を使用しながら説明する。本発明の各実施形態に係るアンテナ装置における作用・効果を以下の実施例1乃至4及び比較例1及び2を用いて検証した。なお、本発明は、本実施例に限定されるものではない。
【0063】
本発明の一実施形態に係るアンテナ装置のシート状導電体に導電体側開口部とスリット部を設けることによるリーダライタとの結合係数の変動に係る効果の確認をするための基礎検討評価について、図面を使用しながら説明する。
【0064】
図5(A)は、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置の比較例1となるアンテナ装置の要部の概略構成の一例を示す斜視図であり、
図5(B)は、当該比較例1となるアンテナ装置の概略構成の一例を示す斜視図である。
図6(A)及び
図6(B)は、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置の作用・効果を確認するための評価方法の説明図である。
図7(A)は、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置の実施例1に設けられるシート状導電体の構成を示す斜視図であり、
図7(B)は、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置の実施例2に設けられるシート状導電体の構成を示す斜視図である。
図8は、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置の作用・効果を確認するための通信性能の評価結果を示すグラフである。
【0065】
従来例となる比較例1では、
図5(A)及び
図5(B)に示すように、その開口部12bを介して幅方向(Y方向)に対向する導線12aが互いに近接するように巻回して設けられ、当該開口部12bに磁性シート20を挿入したアンテナコイル12をシート状導電体305の外縁部に設けた。具体的には、一方側部12a1と他方側部12a2からなる短冊形状のアンテナコイル12の中央部側に有する開口部12bに磁性シート20(フェライトシート)を挿入するスリムな形状のNFCアンテナ(外形30mm×10mmの4巻コイル)の周囲に、シート状導電体305となる50mm×50mm×0.05mmのアルミ箔を貼りつけて、通信特性を評価した。通信特性の評価は、
図6(A)及び
図6(B)に示すように、アンテナ装置301と、NFC Forumの定めるリーダライタ40となるListener−1との結合係数kをリーダライタ40のアンテナ41との距離を40mmとしながら、当該リーダライタ40をy軸方向に移動して、通信特性の指標となる結合係数kの分布を評価した。
【0066】
一方、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置1に対応する実施例1では、
図7(A)に示すように、上述した比較例1と同じ大きさのシート状導電体5´には、その内側の外縁寄りに形成され、アンテナコイル12の他方側部12a2とほぼ同じ大きさの導電体側開口部6´と、当該導電体側開口部6´と当該外縁を連接するスリット部7´を設けた。そして、当該シート状導電体5´の導電体側開口部6´とアンテナコイル12の他方側部12a2を重畳させるようにして、アンテナコイル12をシート状導電体5´の外縁寄りの内側に設けた。
【0067】
また、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置1に対応する実施例2では、
図7(B)に示すように、シート状導電体5には、その内側の中心の近傍となる中央側に形成され、アンテナコイル12の他方側部12a2とほぼ同じ大きさの導電体側開口部6と、当該導電体側開口部6とシート状導電体5の外縁を連接するスリット部7を設けた。そして、当該シート状導電体5の導電体側開口部6とアンテナコイル12の他方側部12a2を重畳させるようにして、アンテナコイル12をシート状導電体5の外縁寄りの内側に設けた。これらの実施例1及び実施例2に対しても、前述した比較例1と同様にして、通信特性の指標となる結合係数kの分布を評価した。
【0068】
これらの評価試験における評価結果を
図8に示す。
図8に示すように、スリムアンテナを金属板の周辺部に置いた比較例1よりも、実施例1及び実施例2の方がより高い結合係数kが得られた。このことから、金属板の内側に導電体側開口部を設けて、かつ、当該導電体側開口部と金属板の外縁部とをスリット部で連接して、当該導電体側開口部にアンテナコイルの他方側部を重畳させることによって、金属板の外縁側にアンテナコイルを設ける場合よりも、より良好な磁気シールド効果によるアンテナ通信特性を確保できることが分かった。また、導電体側開口部を金属板の内側端部よりも、シート状導電体の中心の近傍となる中央側に設けた方がより高い結合係数kが得られ、より良好な通信性能を確保できることが分かった。
【0069】
次に、本発明の他の一実施形態に係るアンテナ装置のシート状導電体に導電体側開口部とスリット部を設けることによるリーダライタとの結合係数の変動に係る効果の確認をするための基礎検討評価について、図面を使用しながら説明する。
【0070】
図9(A)及び
図9(B)は、本発明の他の一実施形態に係るアンテナ装置の比較例2となるアンテナ装置の要部の概略構成の一例を示す斜視図であり、
図9(C)は、本発明の他の一実施形態に係るアンテナ装置の比較例2となるアンテナ装置の概略構成の一例を示す斜視図である。
図10(A)は、本発明の他の一実施形態に係るアンテナ装置の実施例3のシート状導電体の構成を示す平面図であり、
図10(B)は、当該実施例3の作用・効果を確認するための評価方法の説明図である。
図11(A)は、本発明の他の一実施形態に係るアンテナ装置の実施例4のシート状導電体の構成を示す平面図であり、
図11(B)は、当該実施例4の作用・効果を確認するための評価方法の説明図である。
図12は、本発明の他の一実施形態に係るアンテナ装置の作用・効果を確認するための通信性能の評価結果を示すグラフである。
【0071】
従来例となる比較例2では、
図9(A)乃至
図9(C)に示すように、その開口部12bを介して幅方向(Y方向)に対向する導線12aが互いに近接するように巻回して設けられ、当該開口部12bに磁性シート12を挿入したアンテナコイル12をシート状導電体405の外縁部に設けたものを金属板からなる第1の導電体403に連結した。具体的には、一方側部12a1と他方側部12a2からなる短冊形状のアンテナコイル12の中央部側に有する開口部12bに磁性シート20(フェライトシート)を挿入するスリムな形状のNFCアンテナ(外形30mm×10mmの4巻コイル)の周囲に、シート状導電体405となる50mm×50mm×0.05mmのアルミ箔を貼りつけて、さらに、150mm×150mm×0.3mmのSUS板からなる金属板403に近接配置して、通信特性を評価した。通信特性の評価は、前述した
図6(A)及び
図6(B)に示すように、アンテナ装置401と、NFC Forumの定めるリーダライタ40となるListener−1との結合係数kをリーダライタ40のアンテナ41との距離を40mmとしながら、当該リーダライタ40をy軸方向に移動して、通信特性の指標となる結合係数kの分布を評価した。
【0072】
一方、本発明の他の一実施形態に係るアンテナ装置201に対応する実施例3のアンテナ装置201´では、
図10(A)に示すように、上述した比較例2と同じ大きさのシート状導電体205´には、その内側の外縁寄りに形成され、上述した比較例2と同じ大きさのアンテナコイル212の他方側部212a2(
図4(B)参照)とほぼ同じ大きさの導電体側開口部206´と、当該導電体側開口部206´と当該外縁を連接するスリット部207´を設けた。そして、当該シート状導電体205´の導電体側開口部206´とアンテナコイル212の他方側部212a2を重畳させるようにして、アンテナコイル212をシート状導電体205´の外縁寄りの内側に設けて、さらに、上述した比較例2と同じ大きさ、材質の金属板203´に近接配置して、通信特性を評価した。通信特性の評価は、
図10(B)に示すように、アンテナ装置201´と、NFC Forumの定めるリーダライタ40となるListener−1との結合係数kをリーダライタ40のアンテナ41との距離を40mmとしながら、当該リーダライタ40をy軸方向に移動して、通信特性の指標となる結合係数kの分布を評価した。
【0073】
また、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置201に対応する実施例4では、
図11(A)に示すように、シート状導電体205には、その内側の中心の近傍となる中央側に形成され、アンテナコイル212の他方側部212a2(
図4(B)参照)とほぼ同じ大きさの導電体側開口部206と、当該導電体側開口部206とシート状導電体205の外縁を連接するスリット部207を設けた。そして、当該シート状導電体205の導電体側開口部206とアンテナコイル212の他方側部212a2を重畳させるようにして、アンテナコイル212をシート状導電体205の外縁寄りの内側に設けて、さらに、上述した比較例2と同じ大きさ、材質の金属板203に近接配置して、通信特性を評価した。通信特性の評価は、
図11(B)に示すように、アンテナ装置201と、NFC Forumの定めるリーダライタ40となるListener−1との結合係数kをリーダライタ40のアンテナ41との距離を40mmとしながら、当該リーダライタ40をy軸方向に移動して、通信特性の指標となる結合係数kの分布を評価した。
【0074】
これらの評価試験における評価結果を
図12に示す。
図12に示すように、スリムアンテナを金属板の周辺部に置いた比較例2よりも、実施例3及び実施例4の方がより高い結合係数kが得られた。このことから、シート状導電体の内側に導電体側開口部を設けて、かつ、当該導電体側開口部とシート状導電体の外縁部とをスリット部で連接して、当該導電体側開口部にアンテナコイルの他方側部を重畳させることによって、シート状導電体の外縁側にアンテナコイルを設ける場合よりも、より良好な磁気シールド効果によるアンテナ通信特性を確保できることが分かった。また、導電体側開口部をシート状導電体の内側端部よりも、シート状導電体の中心の近傍となる中央側に設けた方がより高い結合係数kが得られ、より良好な通信性能を確保できることが分かった。さらに、実施例3及び4では、実施例1及び2よりも結合係数kが大きな値となっているので、シート状導電体を金属板に重畳させる構造とすることによって、金属板に開口部とスリット部を設けるよりも、導電体の面積が小さくても、通信性能を向上させる大きな効果が得られることが分かった。
【0075】
なお、上記のように本発明の各実施形態及び各実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0076】
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、アンテナ装置の構成、動作も本発明の各実施形態及び各実施例で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。