(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774708
(24)【登録日】2020年10月7日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】メイクアップ化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20201019BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20201019BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20201019BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/25
A61K8/29
A61Q1/00
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-139873(P2016-139873)
(22)【出願日】2016年7月15日
(65)【公開番号】特開2018-8906(P2018-8906A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】國廣 理沙
【審査官】
池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−209346(JP,A)
【文献】
特開2014−141483(JP,A)
【文献】
特開2002−212032(JP,A)
【文献】
特開2016−124846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)、(B)及び(C)を含有し、成分(A)と成分(B)との含有質量比(B)/(A)が1.5以上8以下であるメイクアップ化粧料。
(A) 平均粒径30μm以上50μm以下の窒化ホウ素 5質量%以上40質量%以下
(B) 光輝性顔料 30質量%以上70質量%以下
(C) 合成金雲母 10質量%以上65質量%以下
【請求項2】
成分(B)が、酸化チタン被覆ガラスフレークである請求項1に記載のメイクアップ化粧料。
【請求項3】
成分(A)の含有量が、10質量%以上40質量%以下である請求項1又は2に記載のメイクアップ化粧料。
【請求項4】
成分(C)の平均粒径が、10μm以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載のメイクアップ化粧料。
【請求項5】
成分(A)と成分(B)との含有質量比(B)/(A)が、2.5以上8以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載のメイクアップ化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メイクアップ化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アイシャドウ等のメイクアップ化粧料において、塗布膜の均一なツヤや高い透明感を得るため、雲母チタン、酸化チタン被覆ガラスフレーク等のパール光沢を有する光輝性顔料が用いられている。しかしながら、光輝性顔料が十分な効果を発揮するためには、ある程度大きな粒径が必要となる一方で、大きな粒径では肌上に塗布する際に不自然な感触を伴うという問題があった。
【0003】
一方、塗布時の感触を滑らかにするため、メイクアップ化粧料に球状粉体を配合する技術が知られている(例えば特許文献1)。このような技術により滑らかな塗布感触はある程度得られるものの、耐衝撃性に劣るという問題があった。
【0004】
また、塗布時の感触を滑らかにするために、メイクアップ化粧料にアスペクト比の大きい板状粉体を配合する技術も知られているが(例えば特許文献2)、この技術を用いても、高い透明感を得るには不十分であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-083423号公報
【特許文献2】特開2006-282510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来、塗布膜の高い透明感と塗布時の滑らかな感触を両立させることは大変困難であったところ、本発明は、透明感の高い塗布膜を実現しつつ、感触も滑らかであり、かつ、耐衝撃性も確保したメイクアップ化粧料に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、かかる実情において鋭意検討を行った結果、メイクアップ化粧料において、光輝性顔料及び合成金雲母と共に窒化ホウ素を併用することを試みた結果、窒化ホウ素としてある特定の範囲の平均粒径のものを用いることによって、上記要求を満たすものが得られることを見出した。
【0008】
すなわち本発明は、下記成分(A)、(B)及び(C)を含有するメイクアップ化粧料を提供するものである。
(A) 平均粒径30μm以上50μm以下の窒化ホウ素
(B) 光輝性顔料
(C) 合成金雲母
【発明の効果】
【0009】
本発明のメイクアップ化粧料は、塗布膜の透明感に優れるため、化粧料による隠蔽感なくツヤやきらめきを付与することができ、更に塗布時の感触も良好で滑らかであり、また、メイクアップ化粧料としての十分な耐衝撃性を備えるものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔成分(A):平均粒径30μm以上50μm以下の窒化ホウ素〕
成分(A)の窒化ホウ素としては、平均粒径が上記範囲内であって化粧品に一般的に用いられるものであれば特に制限されずに使用できる。窒化ホウ素の形態としては、六方晶、ウルツ鉱型構造、立方晶、菱面体晶、乱層構造等のものがあるが、六方晶のものが使用性の面から最も好ましい。
【0011】
窒化ホウ素の平均粒径は、塗布膜の透明感とツヤ、塗布時の滑らかさ、耐衝撃性に優れる観点から、30μm以上であって、好ましくは35μm以下であり、また、50μm以下であって、好ましくは45μm以下である。
【0012】
なお本明細書において、粒径の測定は、レーザー回折/散乱式粒度分布計:LMS-350(セイシン企業社製)を用い、「平均粒径」は、得られる累積粒度分布曲線におけるD50(累積粒度分布が50%である粒径)の点、すなわち体積中位径を意味する。
【0013】
これら窒化ホウ素は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。メイクアップ化粧料中における成分(A)の含有量は、塗布時の滑らかな感触と塗布膜の十分な透明感が得られる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
【0014】
〔成分(B):光輝性顔料〕
本発明に用いられる成分(B)の光輝性顔料は、化粧品に一般的に用いられるものであれば特に制限されずに使用できるが、化粧料塗布膜の高い透明感が得られる観点から、板状粉体の最表層が酸化チタン、酸化鉄及びシリカから選ばれる1種又は2種以上で被覆されたものが好ましいものとして挙げられ、母材である板状粉体としては、マイカ、合成マイカ(合成金雲母)、アルミナ、ガラスフレーク等が挙げられ、ガラスフレークがより好ましいものとして挙げられる。
【0015】
具体的には、マイカ表面に酸化チタンを被覆した酸化チタン被覆マイカ、マイカ表面に酸化鉄を被覆した酸化鉄被覆マイカ、マイカ表面に酸化鉄を被覆した後、更に酸化チタンを被覆した酸化鉄・酸化チタン被覆マイカ、合成マイカ表面に酸化チタンを被覆した酸化チタン被覆合成マイカ、合成マイカ表面に酸化鉄を被覆した酸化鉄被覆合成マイカ、合成マイカ表面に酸化鉄を被覆した後、更に酸化チタンを被覆した酸化鉄・酸化チタン被覆合成マイカ、ガラスフレーク表面に酸化チタンを被覆した酸化チタン被覆ガラスフレーク、ガラスフレーク表面に酸化鉄を被覆した酸化鉄被覆ガラスフレーク、ガラスフレーク表面に酸化鉄を被覆した後、更に酸化チタンを被覆した酸化鉄・酸化チタン被覆ガラスフレーク、ガラスフレーク表面に酸化チタンを被覆した後、更にシリカを被覆した酸化チタン・シリカ被覆ガラスフレーク等が例示される。
【0016】
これら光輝性顔料は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。メイクアップ化粧料中における成分(B)の含有量は、十分な透明感が得られる観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、更に好ましくは40質量%以上であり、また、十分な耐衝撃性を得る観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。また、化粧料基材総量中に成分(B)の含有量の具体的範囲は、好ましくは30〜70質量%、より好ましくは35〜65質量%、更に好ましくは40〜60質量%である。
【0017】
また、成分(A)と成分(B)との含有質量比(B)/(A)は、塗布膜の透明感とツヤ、塗布時の滑らかさ、耐衝撃性の観点から、好ましくは1.5以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは2.5以上であり、また、好ましくは8以下、より好ましくは7以下、更に好ましくは5以下である。
【0018】
〔成分(C):合成金雲母〕
本発明に用いられる成分(C)は、合成金雲母であって化粧品に一般的に用いられるものであれば特に制限されずに使用することができ、本発明の効果を妨げない範囲で、シリコーン等の処理剤で表面処理されたものも使用することができる(ただし、成分(B)に該当するものを除く)。
【0019】
成分(C)の合成金雲母は、高い透明感が得られる観点から、平均粒径が10μm以上、更には20μm以上、また、50μm以下のものが好ましく、またアスペクト比が50以上のものが好ましく、60以上100以下のものがより好ましい。
【0020】
これらの合成金雲母は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。メイクアップ化粧料中における成分(C)の含有量は、十分な透明感が得られる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは35質量%以上、更に好ましくは40質量%以上であり、また、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
【0021】
〔その他の成分〕
本発明のメイクアップ化粧料には、更に成分(A)〜(C)以外の粉体、油剤、界面活性剤、添加剤等、通常の化粧料に用いられる化粧料基材を適宜使用することができる。
【0022】
・粉体
成分(A)〜(C)以外の粉体としては、例えば、赤色104号、赤色202号、赤色226号、黄色4号、黄色5号、青色1号、黒色401号等の有機色素顔料;黄色4号Alレーキ、青色1号Alレーキ等のレーキ有機色素顔料;黄酸化鉄、赤色酸化鉄、黒酸化鉄、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、群青、紺青、マンガンバイオレット等の無機有色顔料;酸化亜鉛、酸化チタン等の白色顔料;タルク、マイカ、セリサイト、窒化ホウ素等の体質顔料;硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム等の金属塩顔料;シリカ、アルミナ等の無機顔料;ポリエチレンパウダー、ポリプロピレンパウダー、ポリメタクリル酸メチルパウダー、ナイロンパウダー、ポリテトラフルオロエチレンパウダー、シリコーンパウダー、シリコーンゴムパウダー、シルクパウダー、ウレタンパウダー、セルロースパウダー、ポリフッ化エチレン等の樹脂粉体;ラウロイルリジン等のアシル化リジン粉体;高級脂肪酸金属塩である金属石鹸粉体等が挙げられる。また、これらの粉体は、適宜表面処理されていてもよい。これらの粉体の大きさ、形状等は限定されず、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
メイクアップ化粧料中における成分(A)〜(C)を含めた粉体の総含有量は、色彩や光沢を付与するという化粧効果を十分発揮させる観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、また、良好な保形性の観点から、好ましくは97質量%以下、より好ましくは96質量%以下、更に好ましくは95質量%以下である。また、メイクアップ化粧料中における粉体の総含有量の具体的範囲は、好ましくは70〜97質量%、より好ましくは75〜96質量%、更に好ましくは80〜95質量%である。
【0024】
・油剤
また油剤としては、通常の化粧料に用いられるものであればよく、例えば、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、各種エステル油、シリコーン油、パーフルオロアルキルエーテル等のフッ素系油剤等が挙げられる。
【0025】
これらの油剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。メイクアップ化粧料中における油剤の総含有量は、保形性や、最終製品のしっとり感や肌へのつきなどの効果を十分発揮させるため、好ましくは5質量%以上、より好ましくは6質量%以上、更に好ましくは7質量%以上であり、また、化粧料表面が固化し、使用感が悪化することを回避するため、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。また、メイクアップ化粧料中における油剤の総含有量の具体的範囲は、好ましくは5〜30質量%、より好ましくは6〜25質量%、更に好ましくは7〜20質量%である。
【0026】
・界面活性剤
また、化粧料基材には、成分の均一分散を補助する目的で、界面活性剤を配合することもできる。界面活性剤としては、通常の化粧料に用いられているものであればいずれのものも使用でき、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。例えば、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、レシチン等が挙げられる。
【0027】
・その他の成分
また、化粧料基材中には、製品の性能や品質を向上させるため、通常の化粧料に用いられる成分、例えば、保湿剤、pH調整剤、酸化防止剤、防菌防黴剤、紫外線吸収剤、香料、美容成分等の各種添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有させることができる。
【0028】
〔形態・製造方法〕
本発明のメイクアップ化粧料の形態としては、塗布膜の優れた透明感・ツヤ感と塗布時の滑らかな感触が発現するものであれば特に限定されず、固形粉末化粧料、粉末化粧料、油性化粧料等の形態を採ることができるが、固形粉末化粧料の場合には、優れた耐衝撃性を得ることも可能となる。また本発明のメイクアップ化粧料は、アイシャドウ、チーク、ファンデーション、化粧下地等として用いることができる。
【0029】
本発明のメイクアップ化粧料の製造方法は、各成分を適宜撹拌混合し調製することができるが、固形粉末化粧料とする場合の製造方法には、粉体とバインダーとしての油剤を混合したのち圧密成型する乾式法と、粉体と油剤からなる化粧品基材に揮発性溶剤を加えてスラリーとし、容器に充填した後、揮発性溶剤を乾燥除去して化粧料を得る湿式法がある。湿式法に用いる揮発性溶剤としては、水;エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等の低沸点アルコールが挙げられる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、これらの実施例により本発明の技術範囲が限定されるものではない。なお、表中の含有量の単位は質量%である。実施例に先立ち、各実施例で採用した評価方法を説明する。
【0031】
(1)塗布膜の透明感・ツヤ感、感触(滑らかさ)、及び使用感(伸びの良さ):
女性パネラー20名により、各化粧料を肌に塗布したときの塗布膜の透明感・ツヤ感、感触(滑らかさ)、及び使用感(伸びの良さ)について官能評価した。結果を以下の基準で示した。
(評価基準)
◎:良いと答えた人数が17人以上
○:良いと答えた人数が12〜16人
△:良いと答えた人数が8〜11人
×:良いと答えた人数が7人以下
【0032】
(2)耐衝撃性:
各化粧料を化粧コンパクトに内蔵させ、水平方向で高さ40cmから厚み10mmの塩化ビニル板上に繰り返し落下させ、欠け、割れ、ひび割れ等の異常が生じるまでの回数を評価した。評価基準は以下のとおりである。
(評価基準)
◎:11回以上
○:7〜10回
△:5〜6回
×:4回以下
【0033】
実施例1、比較例1〜2
表1に示す組成でメイクアップ化粧料(アイシャドウ)を製造し、前記試験を行った。結果を表1に併せて示す。
【0034】
(メイクアップ化粧料の製造方法)
A:成分16〜19を混合し、80℃まで加熱して溶解する。
B:成分1〜15を均一に混合する。
C:BにAを加えて均一に分散させ、粉砕後、化粧料基材を得た。
D:C100質量部と溶剤40質量部を混合してスラリー状に調製した。
E:Dを金皿に充填成型して乾燥し、メイクアップ化粧料を得た。
【0035】
【表1】
【0036】
表1の結果から明らかなように、実施例1では、塗布膜の透明感・ツヤ感、感触、及び使用感のいずれも良好であった。