(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
<加締め用ダイ>
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る加締め用ダイ(以下、「ダイ」と言うことがある。)について、
図1および
図2を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態のダイ1Aは、上面2と、下面3と、上面2および下面3のそれぞれと接続している端面4を備えている。
【0014】
端面4は、後述する加締め部材であるソケット202を押圧する部位である(
図8参照)。端面4は、
図1に示すように、下面3側から上面2側に向かって順に、第1凸部41、凹溝42および第2凸部43を有している。第1凸部41、凹溝42および第2凸部43はいずれも、
図1(a)に示すように、端面4の幅方向aに沿って延びている。これらの構成によれば、以下のような効果が得られる。
【0015】
すなわち、第1凸部41および第2凸部43のそれぞれを、ソケット202に食い込ませてソケット202を加締めることができる。また、第1凸部41および第2凸部43が食い込むことによって変形したソケット202の一部を、第1凸部41および第2凸部43の間に位置している凹溝42内に案内することができる。したがって、凹溝42を、変形したソケット202の逃げ代として機能させることができる。それゆえ、上述した構成によれば、変形したソケット202の一部を凹溝42内に案内しつつ第1凸部41および第2凸部43によってソケット202を確実に加締めることができる。その結果、ダイ1Aを優れた加締め性を有する2段加締めのダイとして機能させることができる。
【0016】
ここで、第1凸部41は、第1頂部411を有している。また、第2凸部43は、第2頂部431を有している。そして、
図2に示す幅方向aに垂直な断面視において、ダイ1Aは、以下の(I)および(II)の構成を備えている。
(I)
図2(b)に示すように、第2頂部431の長さL2が、第1頂部411の長さL1よりも大きい。
(II)
図2(b)に示すように、第2凸部43の高さH2が、第1凸部41の高さH1よりも大きい。高さH1、H2はいずれも、端面4を基準とした高さである。
【0017】
上述した構成によれば、次のような効果が得られる。第1頂部411の長さL1および第2頂部431の長さL2はいずれも、ダイ1Aの加締め幅に対応する。また、第1凸部41の高さH1および第2凸部43の高さH2はいずれも、ダイ1Aの加締め率(加締め径)に対応する。したがって、上述した構成によれば、第1凸部41は、第2凸部43よりも相対的に加締め幅が狭くなり、加締め率が低くなる。また、第2凸部43は、第1凸部41よりも相対的に加締め幅が広くなり、加締め率が高くなる。そして、高圧用の加締め継手を作製するときに必要な加締め幅を第1凸部41および第2凸部43によって確保しつつ、高圧用の加締め継手を作製するときに必要な加締め率を相対的に加締め率が高い第2凸部43によって確保することができる。また、第1凸部41は、上述のとおり、相対的に加締め幅が狭くて加締め率が低いことから、後述するニップル203のうち第1凸部41によって加締められる部位に加わる負荷を小さくすることができる(
図8参照)。その結果、高圧用の加締め継手を作製するときのニップル変形量を小さくすることができる。ダイ1Aは、例えば、第1凸部41が第2凸部43よりも後述するホース開口205B側に位置している状態で使用するのが好ましい(
図8参照)。
【0018】
図2(b)に示すように、第2頂部431の長さL2は、第1頂部411の長さL1の1.5〜5.0倍であるのが好ましい。第1頂部411の長さL1としては、3.0〜4.5mm、第2頂部431の長さL2としては、4.5〜22.5mmが挙げられ、例示した数値範囲内で、第2頂部431の長さL2を、第1頂部411の長さL1よりも大きくするのが好ましい。また、上述したダイ1Aの加締め幅は、第1頂部411の長さL1および第2頂部431の長さL2の合計値である。加締め幅は、7.5〜27.0mmであるのが好ましい。なお、第1頂部411の長さL1および第2頂部431の長さL2はいずれも、例示した数値範囲に限定されるものではない。第1頂部411および第2頂部431はいずれも、平面状である。
【0019】
第2凸部43の高さH2は、第1凸部41の高さH1の1.1〜2.0倍であるのが好ましい。第1凸部41の高さH1としては、0.8〜1.2mm、第2凸部43の高さH2としては、0.9〜2.4mmが挙げられ、例示した数値範囲内で、第2凸部43の高さH2を、第1凸部41の高さH1よりも大きくするのが好ましい。なお、第1凸部41の高さH1および第2凸部43の高さH2はいずれも、例示した数値範囲に限定されるものではない。
【0020】
ダイ1Aの加締め率は、25〜45%であるのが好ましい。加締め率は、加締める前のホースの肉厚をT1、加締めた後のホースの肉厚をT2としたとき、式:〔(T1−T2)/T1〕×100から算出される値である。加締めた後のホースの肉厚であるT2は、式:(加締め径/2)−ソケットの肉厚−(ニップルの外径/2)から算出される値である。加締め径は、ダイ1Aで加締めるとき、第2凸部43によって形成される内径である(
図7および
図8参照)。なお、ダイ1Aの加締め率は、例示した数値範囲に限定されるものではない。
【0021】
一方、本実施形態では、
図2に示す断面視において、第1凸部41が台形状である。このような構成によれば、第1頂部411の縁部周辺を厚肉にして第1頂部411の強度を向上させることができるので、加締めるときに第1凸部41が欠損するのを抑制することができる。
【0022】
上述した断面視において、第1頂部411の長さL1は、第1頂部411および第2頂部431の間の長さL3よりも小さい。このような構成によれば、第1頂部411の長さL1が相対的に小さくなることから、第1凸部41がソケット202に食い込みやすくなる。また、第1頂部411および第2頂部431の間の長さL3が相対的に大きくなることから、第1凸部41が食い込むことによって変形したソケット202の一部が、凹溝42内に案内されやすくなる。
【0023】
ダイ1Aは、第1頂部411から下面3の一部にわたって位置している傾斜部5をさらに備えている。このような構成によれば、第1凸部41がソケット202に食い込みやすくなる。
【0024】
図2(b)に示すように、傾斜部5の傾斜角度θ1は、鋭角である。このような構成によれば、傾斜部5による効果を向上させることができる。本実施形態の傾斜角度θ1は10°であるが、これに限定されるものではない。傾斜角度θ1は、上述した断面視において、端面4に垂直な基準線Xに対する角度である。この点は、後述する他の傾斜角度θ2〜θ4についても同様である。
【0025】
凹溝42は、第1凸部41の基端部412および第2凸部43の基端部432のそれぞれに連続している。このような構成によれば、第1凸部41および第2凸部43のそれぞれが、凹溝42に連続している構成になるので、第1凸部41および第2凸部43が食い込むことによって変形したソケット202の一部を凹溝42内にスムーズに案内することができる。
【0026】
凹溝42は、その溝幅Wが凹溝42の底部421に向かうにつれて小さくなっている。このような構成によれば、変形したソケット202の一部が凹溝42内に引き込まれやすくなるので、変形したソケット202の一部を凹溝42内にスムーズに案内することができる。
【0027】
上述した断面視において、第2凸部43は台形状である。このような構成によれば、上述した第1凸部41と同様に、第2頂部431の縁部周辺を厚肉にして第2凸部43の強度を向上させることができるので、加締めるときに第2凸部43が欠損するのを抑制することができる。
【0028】
第2凸部43は、
図2(a)に示すように、端面4のうち上面2側に位置している上端部4aとの間に間隔Mをおいて位置している。このような構成によれば、第2凸部43が食い込むことによって変形したソケット202の一部を、間隔Mへ逃がすことができる。
【0029】
第2凸部43は、
図2(b)に示すように、上面2側に位置している第2上側壁部433および下面3側に位置している第2下側壁部434をさらに有している。そして、上述した断面視において、第2上側壁部433の傾斜角度θ2が、第2下側壁部434の傾斜角度θ3よりも大きい。これらの構成によれば、傾斜角度が相対的に大きい第2上側壁部433によって第2凸部43の強度を確保することができるので、加締めるときに第2凸部43が欠損するのを抑制することができる。また、第2凸部43が食い込むことによって変形したソケット202の一部を、傾斜角度が相対的に大きい第2上側壁部433に沿って速やかに間隔Mへ逃がすことができる。さらに、傾斜角度が相対的に小さい第2下側壁部434によって第2凸部43の第2下側壁部434側がソケット202に食い込みやすくなる。しかも、第2凸部43の第2下側壁部434側は、凹溝42に隣接しているので、変形したソケット202の一部を凹溝42内にスムーズに案内することができる。本実施形態の傾斜角度θ2は30°、傾斜角度θ3は10°であるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
一方、第1凸部41は、上面2側に位置している第1上側壁部413をさらに有している。本実施形態では、上述した断面視において、第1上側壁部413の傾斜角度θ4が、第2下側壁部434の傾斜角度θ3と同一である。このような構成によれば、第1凸部41および第2凸部43が食い込むことによって変形したソケット202の一部をバランスよく凹溝42内に案内することができる。なお、傾斜角度θ4が傾斜角度θ3と同一であるとは、両者の値が実質的に同一であればよく、その効果が得られる限り両者の値に若干の差があってもよいことを意味するものとする。本実施形態の傾斜角度θ4は、傾斜角度θ3と同様に10°であるが、これに限定されるものではない。
【0031】
上述した構成を有する本実施形態のダイ1Aは、
図2(a)に示すように、上面2および下面3の間を貫通している貫通孔6をさらに備えている。ダイ1Aは、貫通孔6を介して、後述する加締め治具20が備える本体部100に取り付けられる(
図7参照)。
【0032】
また、端面4は、
図1(c)に示す上面視において、内方に凸の円弧状である。上面視とは、上面2側からダイ1Aを見た状態を意味するものとする。内方とは、貫通孔6側のことを意味するものとする。
【0033】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るダイについて、
図3および
図4を参照して詳細に説明する。なお、
図3および
図4においては、上述した
図1および
図2と同一の構成部分には同一の符号を付して説明は省略する場合がある。
【0034】
図3および
図4に示す本実施形態のダイ1Bは、第2頂部431の長さL2と、第1頂部411および第2頂部431の間の長さL3との関係が、上述した第1実施形態と異なっている。具体的に説明すると、第1実施形態に係るダイ1Aでは、
図2(b)に示す断面視において、第2頂部431の長さL2が、第1頂部411および第2頂部431の間の長さL3よりも大きい。これに対し、本実施形態のダイ1Bでは、
図4(b)に示す断面視において、第2頂部431の長さL2が、第1頂部411および第2頂部431の間の長さL3と同一である。このような構成によれば、第2凸部43および凹溝42がバランスよく機能するようになり、結果として高圧用の加締め継手を作製するときのニップル変形量をより小さくすることが可能となる。なお、長さL2が長さL3と同一であるとは、両者の値が実質的に同一であればよく、その効果が得られる限り両者の値に若干の差があってもよいことを意味するものとする。
その他の構成は、上述した第1実施形態に係るダイ1Aと同様であるので、説明を省略する。
【0035】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係るダイについて、
図5および
図6を参照して詳細に説明する。なお、
図5および
図6においては、上述した
図1〜
図4と同一の構成部分には同一の符号を付して説明は省略する場合がある。
【0036】
図5および
図6に示す本実施形態のダイ1Cでは、
図6(b)に示す断面視において、第1頂部411の長さL1が、第1頂部411および第2頂部431の間の長さL3よりも大きい。
その他の構成は、上述した第1、第2実施形態に係るダイ1A、1Bと同様であるので、説明を省略する。
【0037】
<加締め治具>
次に、本発明の一実施形態に係る加締め治具について、上述した第1実施形態に係るダイ1Aを備える場合を例にとって、
図7を参照して詳細に説明する。
【0038】
図7に示すように、本実施形態の加締め治具20は、複数のダイ1Aと、複数のダイ1Aが取り付けられている本体部100を備えている。
【0039】
本実施形態では、本体部100に取り付けられているダイ1Aの数が、8つである。したがって、加締め治具20は、後述する加締め継手200を八方締めによって作製することができる。
【0040】
また、複数のダイ1Aはいずれも、端面4を加締め方向bに移動可能な状態で、本体部100に取り付けられている。加締め方向bとは、ソケット202を加締める方向のことを意味するものとする。各ダイ1Aが備えている端面4は、上述のとおり、上面視において内方に凸の円弧状である。それゆえ、複数のダイ1Aを加締め方向bに動かして、
図7(a)に示す状態から
図7(b)に示す加締め状態にすると、8つのダイ1Aのそれぞれの端面4によって所定の内径(加締め径)を有する略円筒状の領域Sが形成される。したがって、領域Sが形成される位置にソケット202をセットすると、8つのダイ1Aによってソケット202を外側から八方締めで加締めることができる。
【0041】
なお、本実施形態では、加締め治具20がダイ1Aを備える場合を例にとって説明したが、ダイ1Aに代えて、ダイ1B、1Cを備える場合であっても、同様の効果を奏することができる。
【0042】
<加締め継手の製造方法>
次に、本発明の一実施形態に係る加締め継手の製造方法について、上述した一実施形態に係る加締め治具20を使用する場合を例にとって、
図8を参照して詳細に説明する。
【0043】
本実施形態に係る加締め継手の製造方法は、以下の(i)および(ii)の工程を備えている。
(i)
図8(a)に示すように、継手部201における筒状のソケット(フェルール)202を、ホース205の一端部205Aに被せ、継手部201のニップル203を、ホース205の一端部205Aにおけるホース開口205Bからホース205内に挿入する工程。
(ii)
図8(b)に示すように、加締め治具20によってソケット202を外側から加締め、ホース205の一端部205Aをニップル203に加締め固定する工程。
【0044】
具体的に説明すると、(i)の工程における継手部201は、ソケット202およびニップル203を備えている。ソケット202は、加締め部材であり、一般的に金属製である。ニップル203は、流体をシールするとともにホース抜けを抑制する部品である。継手部201は、ニップル203の基端部203Aに取り付けられているナット204をさらに備えている。ナット204は、油圧機器などに対する取り付け部位として機能する部品である。なお、継手部201は、ナット204を備える構成に限定されるものではない。
【0045】
(ii)の工程を経ると、加締め継手200が得られる。本実施形態では、ダイ1Aを備える加締め治具20を使用することから、高圧用の加締め継手を作製するときのニップル変形量が小さい。それゆえ、得られる加締め継手200は、高圧用でありながらニップル変形量が小さく、優れたシール性などを発揮することができる。
【0046】
本実施形態では、(ii)の工程において、ダイ1Aの第1凸部41が第2凸部43よりもホース開口205B側に位置している状態で、加締め治具20によってソケット202を外側から加締める。言い換えれば、ダイ1Aの第1凸部41が第2凸部43よりもナット204側に位置している状態で、加締め治具20によってソケット202を外側から加締める。このような構成によれば、高圧用の加締め継手を作製するときのニップル203に加わる負荷がより低減される傾向にあり、ニップル変形量を小さくすることができる。
【0047】
得られる加締め継手200は、例えば、油圧機器などに使用される配管の継手として好適に使用することができる。なお、加締め継手200は、油圧機器用に限定されるものではなく、例えば、高い圧力に耐え得ることが要求される分野の継手として好適に使用することができる。
【0048】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0049】
[実施例1〜3]
上述した第1〜第3実施形態に係る2段加締めのダイ1A〜1Cを使用して加締め継手を作製した。使用したダイ1A〜1Cの構成は、以下のとおりである。
【0050】
<ダイ1Aの構成>
第1凸部の高さH1:1.0mm
第2凸部の高さH2:1.5mm
第1頂部の長さL1:3.5mm
第2頂部の長さL2:11.0mm
第1頂部および第2頂部の間の長さL3:4.0mm
加締め幅:14.5mm
加締め率:27〜32%
その他:上述した以外の構成は、
図1および
図2に示したとおりである。
【0051】
<ダイ1Bの構成>
第1凸部の高さH1:1.0mm
第2凸部の高さH2:1.5mm
第1頂部の長さL1:4.2mm
第2頂部の長さL2:8.0mm
第1頂部および第2頂部の間の長さL3:8.0mm
加締め幅:12.2mm
加締め率:37〜43%
その他:上述した以外の構成は、
図3および
図4に示したとおりである。
【0052】
<ダイ1Cの構成>
第1凸部の高さH1:1.0mm
第2凸部の高さH2:1.5mm
第1頂部の長さL1:4.2mm
第2頂部の長さL2:19.0mm
第1頂部および第2頂部の間の長さL3:3.0mm
加締め幅:23.2mm
加締め率:32〜39%
その他:上述した以外の構成は、
図5および
図6に示したとおりである。
【0053】
上述したダイ1A〜1Cの加締め幅および加締め率はいずれも、設計値である。
【0054】
加締め継手の作製に使用したホースは、以下のとおりである。
ホースA:肉厚が3.2mmであるニッタ株式会社製の「N3130−04」
ホースB:肉厚が3.3mmであるニッタ株式会社製の「N3130−06」
ホースC:肉厚が3.8mmであるニッタ株式会社製の「N3130−08」
【0055】
加締め継手の作製に使用した継手部は、以下のとおりである。
継手部A:肉厚が1.7mmであるスチール製のソケットと、内径が3.9mmであり外径が6.4mmであるニップルと、ナットを備えるニッタ株式会社製の「SE―PF−04」
継手部B:肉厚が1.7mmであるスチール製のソケットと、内径が6.8mmであり外径が9.8mmであるニップルと、ナットを備えるニッタ株式会社製の「SE―PF−06」
継手部C:肉厚が1.7mmであるスチール製のソケットと、内径が10.0mmであり外径が12.8mmであるニップルと、ナットを備えるニッタ株式会社製の「SE―PF−08」
【0056】
上述したダイ1A〜1C、ホースA〜Cおよび継手部A〜Cを表1に示す組み合わせで使用して加締め継手を作製した。具体的には、まず、上述したダイ1A〜1Cを、それぞれ8つ、
図7に示すような状態で本体部に取り付けて八方締め可能な加締め治具を構成した。本体部は、Lillbacka Powerco Oy社製の「FINN-Power MT043」を使用した。
【0057】
次に、ソケットをホースの一端部に被せ、ニップルをホース開口からホース内に挿入し、加締め治具によってソケットを外側から八方締めで加締め、ホースの一端部をニップルに加締め固定した。このとき、第1凸部が第2凸部よりもホース開口側に位置している状態で、加締め治具によってソケットを外側から加締めて加締め継手を作製した。
【0058】
そして、作製した加締め継手について、ニップル変形量、破壊圧力、衝撃圧力およびシール性を評価した。各評価方法を以下に示すとともに、その結果を表1に示す。
【0059】
<ニップル変形量>
加締め継手を作製するときに、加締め率を以下の値に設定した。
実施例1:最大値である32%
実施例2:最大値である43%
実施例3:最大値である39%
【0060】
作製した加締め継手におけるニップル変形量(座屈量)を測定した。具体的には、加締め後のニップルの内径をピンゲージで測定し、測定値を式:(加締め前のニップルの内径)−(加締め後のニップルの内径)に当てはめてニップル変形量を算出した。測定は、n=3で行い、平均値を算出した。
【0061】
<破壊圧力>
加締め継手を作製するときに、加締め率を以下の値に設定した。
実施例1:最小値である27%
実施例2:最小値である37%
実施例3:最小値である32%
【0062】
作製した加締め継手に対し、以下の条件で流体を流した。
流体:油(ISO VG 46相当)
流体温度:23℃
昇圧速度
実施例1:77.0MPa/分
実施例2:63.0MPa/分
実施例3:56.0MPa/分
そして、常温破壊物性として、加締め継手が破壊されたときの圧力を破壊圧力として測定した。測定は、n=3で行い、平均値を算出した。
【0063】
<衝撃圧力>
加締め継手を作製するときに、加締め率を以下の値に設定した。
実施例1:最小値である27%
実施例2:最小値である37%
実施例3:最小値である32%
【0064】
作製した加締め継手に対し、以下の条件で流体を流して漏れの有無を評価した。
流体:油(ISO VG 46相当)
流体温度:100℃
圧力波形:矩形波
衝撃サイクル:60c.p.m
衝撃圧力
実施例1:24.4MPa
実施例2:20.0MPa
実施例3:17.5MPa
配管状態:U字
測定回数:n=3
評価基準
〇:40万回で漏れなし
×:40万回で漏れあり
【0065】
<シール性>
シール性試験は、実施例2に対して行った。具体的には、加締め継手を作製するときに、加締め率を以下の値に設定した。
実施例2:最大値である43%
【0066】
作製した加締め継手に対し、エージングを施した。エージングは、100℃で21時間静置した後に23℃で3時間静置する温度サイクルを1サイクルとした。そして、1サイクルごとに、以下の条件で加締め継手に流体を流し、漏れの有無を評価した。
流体:水
圧力:31.5MPa
測定時間:1分
測定回数:n=3
評価基準
〇:5サイクルで漏れなし
×:5サイクルで漏れあり
【0067】
[比較例1〜3]
2段加締めのダイ1A〜1Cに代えて、
図9に示す1段加締めのダイ1a〜1cを使用した。ダイ1a〜1cの具体的な構成は、以下のとおりである。
【0068】
<ダイ1a〜1cの構成>
加締め幅
ダイ1a:24.0mm
ダイ1b:26.0mm
ダイ1c:31.0mm
加締め率
ダイ1a:22〜31%
ダイ1b:29〜39%
ダイ1c:26〜35%
【0069】
上述したダイ1a〜1c、ホースA〜Cおよび継手部A〜Cを表1に示す組み合わせで使用した以外は、上述した実施例1〜3と同様にして加締め継手を作製した。なお、ダイ1a〜1cを使用する加締め継手の製造方法を、
図10に示す。
図10においては、上述した
図1〜
図9と同一の構成部分には同一の符号を付した。
【0070】
作製した加締め継手について、ニップル変形量の測定をn=2で行った以外は、実施例1〜3と同様にして各評価を行った。具体的には、比較例1は実施例1、比較例2は実施例2、比較例3は実施例3と同様にして各評価を行った。その結果を表1に示す。
【0072】
実施例1と比較例1、実施例2と比較例2、実施例3と比較例3をそれぞれ比較すると、実施例1〜3はいずれも、対応する比較例1〜3よりもニップル変形量が小さく、優れた継手物性を有する高圧用の加締め継手が得られていることがわかる。実施例1〜3のうち、第1頂部の長さL1が第1頂部および第2頂部の間の長さL3よりも小さい実施例1、2は、ニップル変形量がより小さくなる結果を示した。第2頂部L2の長さが第1頂部および第2頂部の間の長さL3と同一である実施例2は、ニップル変形量が特に小さくなる結果を示した。なお、シール性の評価において、比較例2は、1サイクルで漏れが発生した。