(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)ガラス転移温度が−10℃以上35℃以下且つ酸価が5.0mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であるカルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂と、(B)二酸化ケイ素粉末と、(C)エポキシ化合物と、(D)酸化チタンと、を含有し、
前記(A)ガラス転移温度が−10℃以上35℃以下且つ酸価が5.0mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であるカルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂100質量部に対して、前記(B)二酸化ケイ素粉末を10質量部以上50質量部以下含有する白色樹脂組成物。
前記(C)エポキシ化合物のエポキシ当量が100g/eq以上500g/eq以下であり、前記(A)ガラス転移温度が−10℃以上35℃以下且つ酸価が5.0mgKOH以上50mgKOH以下であるカルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂100質量部(固形分)に対して、前記(C)エポキシ化合物を2.0質量部以上20質量部以下含有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の白色樹脂組成物。
前記(A)ガラス転移温度が−10℃以上35℃以下且つ酸価が5.0mgKOH以上50mgKOH以下であるカルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂100質量部(固形分)に対して、前記(D)酸化チタンを200質量部以上800質量部以下含有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の白色樹脂組成物。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートパソコンやデスクトップパソコンのモニター、テレビ、スマートフォンなどのディスプレイ装置として、薄型化が可能な液晶等の表示装置が数多く用いられている。例えば、液晶表示装置は、それ自体は発光体でないために、バックライトと呼ばれる面光源を設置する。面光源には、高い利用効率が求められており、これに使用される光反射材についても、より一層の高性能化、すなわち、光反射率のさらなる向上が求められている。
【0003】
また、面光源として、低電力で発光する発光ダイオード(LED)が使用されるようになってきていることから、ソルダーレジス塗膜等の保護膜が被覆形成されたフレキシブルプリント配線板に発光ダイオードを、直接、実装することも行われている。
【0004】
そこで、長期にわたって高反射率を維持できる白色部材として、白色ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ポリエステル系樹脂組成物と無機系紫外線吸収剤から構成される塗布層を有し、前記無機系紫外線吸収剤として酸化チタンを用いた面光源反射部材用白色フィルムが提案されている(特許文献1)。
【0005】
一方で、電気機器等の小型化から、ディスプレイ装置が狭小空間に搭載されることがある。これに伴い、フレキシブルプリント配線板も狭小空間に設置されることから、フレキシブルプリント配線板は曲げが加えられた状態で設置されることがある。しかし、特許文献1等では、樹脂組成物の硬化物の光反射率を約80%程度以上まで向上させるために酸化チタンの配合量を増大させると、樹脂組成物の硬化膜が柔軟性を失って硬くなってしまう。その結果、樹脂組成物の硬化膜を有する基板の柔軟性、すなわち、フレキシブル性が低下してしまう。従って、特許文献1等では、基板に曲げが加えられた状態で設置することが難しいという問題があった。また、酸化チタンの配合量を増大させると、酸化チタンが沈殿しやすくなるので、樹脂組成物の保存安定性が低下してしまうという問題や、基板との密着性が低下してしまうという問題あった。
【0006】
一方で、樹脂組成物の硬化膜が硬くなったり、保存安定性が低下してしまうことを防止するために、酸化チタンの配合量を抑えると、樹脂組成物の光反射率を向上させることができないという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記事情に鑑み、本発明の目的は、高い光反射率を得つつ、柔軟性と密着性に優れた硬化物を得ることができ、また、保存安定性にも優れた白色樹脂組成物、該白色樹脂組成物の白色硬化物及び該白色硬化物を有するフレキシブルプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様は、(A)ガラス転移温度が−10℃以上35℃以下且つ酸価が5.0mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であるカルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂と、(B)二酸化ケイ素粉末と、(C)エポキシ化合物と、(D)酸化チタンと、を含有する白色樹脂組成物である。
【0010】
本発明の態様は、さらに、(E)非反応性希釈剤を含有する白色樹脂組成物である。
【0011】
本発明の態様は、前記(C)エポキシ化合物が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である白色樹脂組成物である。
【0012】
本発明の態様は、前記(C)エポキシ化合物のエポキシ当量が100g/eq以上500g/eq以下であり、前記(A)ガラス転移温度が−10℃以上35℃以下且つ酸価が5.0mgKOH以上50mgKOH以下であるカルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂100質量部(固形分)に対して、前記(C)エポキシ化合物を2.0質量部以上20質量部以下含有する白色樹脂組成物である。
【0013】
本発明の態様は、前記(A)ガラス転移温度が−10℃以上35℃以下且つ酸価が5.0mgKOH以上50mgKOH以下であるカルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂100質量部(固形分)に対して、前記(D)酸化チタンを200質量部以上800質量部以下含有する白色樹脂組成物である。
【0014】
本発明の態様は、上記白色樹脂組成物の白色硬化物である。前記白色硬化物には、例えば、白色硬化膜を挙げることができる。
【0015】
本発明の態様は、上記白色硬化物を有するフレキシブルプリント配線板である。前記フレキシブルプリント配線板には、例えば、白色硬化膜を有するフレキシブルプリント配線板を挙げることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の態様によれば、(A)ガラス転移温度が−10℃以上35℃以下且つ酸価が5.0mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であるカルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂と、(B)二酸化ケイ素粉末と、(C)エポキシ化合物と、(D)酸化チタンと、を含有することにより、高い光反射率を得つつ、柔軟性と密着性に優れた硬化物を得ることができ、また、保存安定性にも優れた白色樹脂組成物を得ることができる。
【0017】
本発明の態様によれば、(C)エポキシ化合物が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であることにより、反り性がさらに低減され、また長期間に渡って高い反射率をより確実に維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の白色樹脂組成物について、以下に説明する。本発明の白色樹脂組成物は、(A)ガラス転移温度が−10℃以上35℃以下且つ酸価が5.0mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であるカルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂と、(B)二酸化ケイ素粉末と、(C)エポキシ化合物と、(D)酸化チタンと、を含有する。従って、カルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂ではない、カルボキシル基含有樹脂は含まれなくてもよい。
【0019】
(A)ガラス転移温度が−10℃以上35℃以下且つ酸価が5.0mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であるカルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂(以下、単に、「(A)カルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂」ということがある。)
(A)カルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂が用いられることにより、光反射率を向上させるために酸化チタンが多く配合されても、白色樹脂組成物の硬化物に柔軟性と密着性が付与される。
【0020】
(A)カルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂のガラス転移温度は、−10℃以上35℃以下であれば、特に限定されないが、その下限値は、白色樹脂組成物の硬化物に密着性を付与しつつ、優れた耐熱性を付与する点から、0℃が好ましく、5℃が特に好ましい。一方で、(A)カルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂のガラス転移温度の上限値は、白色樹脂組成物の硬化物の柔軟性をさらに向上させる点から、30℃が好ましく、25℃が特に好ましい。
【0021】
また、(A)カルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂の酸価は5.0mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であれば、特に限定されないが、その下限値は、基板に対する白色樹脂組成物の硬化物の密着性をさらに向上させる点から、7.0mgKOH/gが好ましく、10mgKOH/gが特に好ましい。一方で、(A)カルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂の酸価の上限値は、保存安定性の低下と硬化収縮を確実に防止する点から、45mgKOH/gが好ましく、40mgKOH/gが特に好ましい。なお、上記酸価は、(A)カルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂のカルボキシル基の酸価である。
【0022】
(A)カルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂は、例えば、カルボキシ基を有するポリエステル(a1)とポリイソシアネート化合物(a2)とを反応させて得ることができる。
【0023】
カルボキシ基を有するポリエステル(a1)としては、例えば、ポリカルボン酸とポリオールとの反応により得られる、1分子中に少なくとも1つのカルボキシ基を有するエステル化合物が挙げられる。
【0024】
カルボキシ基を有するポリエステル(a1)に用いられるポリカルボン酸としては、例えば、ジカルボン酸を挙げることができ、ジカルボン酸として、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸を挙げることができる。芳香族ジカルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、フタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等を挙げることができる。脂肪族ジカルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、エイコサン二酸、ダイマー酸等を挙げることができる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
カルボキシ基を有するポリエステル(a1)に用いられるポリオールとしては、1分子中に2つ以上の水酸基を有する化合物であれば、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオールを挙げることができる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
ポリカルボン酸とポリオールとを反応させてカルボキシ基を有するポリエステル(a1)を調製する方法は、特に限定されず、例えば、ポリカルボン酸とポリオールとを適当な希釈剤中で加熱することにより反応させてカルボキシ基を有するポリエステル(a1)を調製することができる。
【0027】
ポリイソシアネート化合物(a2)としては、1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されないが、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネアート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンジイソシアネート(MDI)、メチレンビスシクロヘキシルイソシアネート、トリメチルヘキサメチルジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、ヘキサメチルアミンジイソシアネート、メチレンビスシクロヘキシルイソシアネート、トルエンジイソシアネート、1,2−ジフェニルエタンジイソシアネート、1,3−ジフェニルプロパンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメチルジイソシアネートなどのジイソシアネートが挙げられる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
カルボキシ基を有するポリエステル(a1)とポリイソシアネート化合物(a2)とを反応させて(A)カルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂を製造する方法は、特に限定されず、カルボキシ基を有するポリエステル(a1)とポリイソシアネート化合物(a2)とを適当な希釈剤中で加熱することにより反応させて(A)カルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂を製造することができる。
【0029】
(A)カルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂の質量平均分子量は、特に限定されないが、その下限値は、硬化物の強靭性の点から6000が好ましく、7000が特に好ましい。一方で、(A)カルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂の質量平均分子量の上限値は、白色樹脂組成物の相溶性の点から200000が好ましく、100000が特に好ましい。
【0030】
(B)二酸化ケイ素粉末
二酸化ケイ素粉末が配合されることにより、白色樹脂組成物の貯蔵中に酸化チタン等の成分が沈殿してしまうことを防止して、白色樹脂組成物の保存安定性が向上する。二酸化ケイ素粉末としては、例えば、火炎加水分解法シリカ、フュームドシリカ、熱分解法シリカ、高熱法シリカ、湿式法シリカ、石英ガラス等が挙げられ、いずれを使用してもよい。
【0031】
二酸化ケイ素粉末の平均一次粒子径は、特に限定されないが、その下限値は、白色樹脂組成物中における均一な分散性の点から0.5nmが好ましく、1.0nmがより好ましく、5.0nmが特に好ましい、一方で、二酸化ケイ素粉末の平均一次粒子径の上限値は、白色樹脂組成物の硬化物の柔軟性の低下を確実に防止する点から、500nmが好ましく、100nmがより好ましく、50nmが特に好ましい。なお、上記平均粒子径は、レーザー光回折法等による粒度分布測定装置を用いて、累積体積百分率が50体積%の粒子径(D50)として求めることができる。
【0032】
二酸化ケイ素粉末の粒子形状は、特に限定されず、球状、楕円状、扁平形状、角形状、不定形状等、特に限定されず、いずれも使用可能である。
【0033】
二酸化ケイ素粉末の含有量は、特に限定されないが、例えば、その下限値は、白色樹脂組成物の保存安定性を確実に向上させる点から、(A)カルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂100質量部(固形分、以下、同じ。)に対して、5.0質量部が好ましく、7.0質量部がより好ましく、10質量部が特に好ましい。一方で、二酸化ケイ素粉末の含有量の上限値は、光反射率をより確実に向上させる点から、(A)カルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂100質量部に対して、50質量部が好ましく、30質量部がより好ましく、20質量部が特に好ましい。
【0034】
(C)エポキシ化合物
エポキシ化合物が配合されることにより、白色樹脂組成物の硬化物の架橋密度を上げて、十分な機械的強度を有する硬化膜等の硬化物を得ることができるとともに、基板に対する前記硬化物の密着性が向上する。エポキシ化合物には、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂(ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂など)、ビスフェノールFやビスフェノールSにエピクロルヒドリンを反応させて得られたビスフェノールF型やビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、基板に対する白色樹脂組成物の硬化物の密着性がより向上する点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、白色樹脂組成物の硬化物の反り性がさらに低減され、また、長期間に渡って高い反射率をより確実に維持することができる点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0035】
エポキシ化合物のエポキシ当量は、特に限定されず、白色樹脂組成物の硬化物の機械的強度を得つつ、密着性を付与する点から、100g/eq以上1000g/eq以下が好ましく、100g/eq以上500g/eq以下が特に好ましい。
【0036】
エポキシ化合物の含有量は、特に限定されず、例えば、その下限値は、白色樹脂組成物の基板に対する密着性を確実に向上させる点から、(A)カルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂100質量部に対して、1.0質量部が好ましく、2.0質量部がより好ましく、3.0質量部が特に好ましい。一方で、エポキシ化合物の含有量の上限値は、光反射率をより確実に向上させる点から、(A)カルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂100質量部に対して、30質量部が好ましく、20質量部がより好ましく、15質量部が特に好ましい。
【0037】
(D)酸化チタン
酸化チタンは、硬化物を白色化するための白色着色剤である。酸化チタンには、例えば、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタンを挙げることができる。アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、はいずれも使用できるが、アナターゼ型酸化チタンは、ルチル型酸化チタンと比較して白色度は高いものの、光触媒活性を有するので、長期間経過すると、白色樹脂組成物中の樹脂の変色を引き起こすことがある。ルチル型酸化チタンは、光触媒活性をほとんど有さないので、長期間にわたって、硬化物の変色を防止できる。
【0038】
酸化チタンの平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、0.01〜1.0μmである。ルチル型酸化チタンには、例えば、富士チタン工業(株)製「TR−600」、「TR−700」、「TR−750」、「TR−840」、石原産業(株)製「R−550」、「R−580」、「R−630」、「R−820」、「CR−50」、「CR−60」、「CR−90」、「CR−93」、チタン工業(株)製「KR−270」、「KR−310」、「KR−380」、テイカ(株)製「JR−1000 」、「JR−805」, 「JR−806」等が挙げられる。
【0039】
酸化チタンの含有量は、特に限定されないが、その下限値は、白色樹脂組成物の硬化物に長期間にわたって高い光反射率(例えば、80%以上)を付与する点から、(A)カルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂100質量部に対して、200質量部が好ましく、300質量部がより好ましく、350質量部が特に好ましい。一方で、酸化チタンの含有量の上限値は、白色樹脂組成物の塗工性と白色樹脂組成物の硬化物の柔軟性の点から800質量部が好ましく、600質量部がより好ましく、500質量部が特に好ましい。
【0040】
本発明の白色樹脂組成物では、必要に応じて、さらに、(E)非反応性希釈剤を配合してもよい。非反応性希釈剤は、白色樹脂組成物の粘度、乾燥性、塗工性等を調節するためのものである。非反応性希釈剤として、例えば、有機溶剤を挙げることができる。有機溶剤には、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルジグリコールアセテート等のエステル類等を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
非反応性希釈剤の含有量は、使用状況に応じて、適宜調整可能であるが、例えば、(A)カルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂100質量部に対して100質量部以上800質量部以下である。
【0042】
本発明では、上記(A)成分〜(E)成分の他に、必要に応じて、他の成分、例えば、体質顔料、各種添加剤、難燃剤等を、適宜、配合してもよい。
【0043】
体質顔料としては、例えば、タルク、硫酸バリウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、マイカ等を挙げることができる。各種添加剤には、シリコーン系、炭化水素系及びアクリル系等の消泡剤、ジシアンジアミド(DICY)及びその誘導体、メラミン及びその誘導体、三フッ化ホウ素−アミンコンプレックス、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル(DAMN)及びその誘導体、グアナミン及びその誘導体、アミンイミド(AI)並びにポリアミン等の硬化促進剤などを挙げることができる。
【0044】
難燃剤としては、例えば、リン系化合物を挙げることができる。リン系の難燃剤としては、例えば、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2−クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ブロモプロピル)ホスフェート、トリス(ブロモクロロプロピル)ホスフェート、2,3−ジブロモプロピル−2,3−クロロプロピルホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなどの含ハロゲン系リン酸エステル;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェートなどのノンハロゲン系脂肪族リン酸エステル;トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ジイソプロピルフェニルフェニルホスフェート、トリス(トリメチルフェニル)ホスフェート、トリス(t−ブチルフェニル)ホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェートなどのノンハロゲン系芳香族リン酸エステル;トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスジエチルホスフィン酸チタン、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスメチルエチルホスフィン酸チタン、ビスジフェニルホスフィン酸チタニル、テトラキスジフェニルホスフィン酸チタンなどのホスフィン酸の金属塩、ジフェニルビニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリアルキルホスフィンオキサイド、トリス(ヒドロキシアルキル)ホスフィンオキサイドなどのホスフィンオキサイド系化合物等が挙げられる。
【0045】
本発明の白色樹脂組成物の製造方法は、特定の方法に限定されず、例えば、上記各成分を所定割合で配合後、室温にて、三本ロール、ボールミル、サンドミル等の混練手段、またはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の攪拌手段により混練または混合して製造することができる。また、前記混練または混合の前に、必要に応じて、予備混練または予備混合してもよい。
【0046】
次に、本発明の白色樹脂組成物の使用方法例を説明する。例えば、上記のようにして得られた白色樹脂組成物を、フレキシブルプリント配線板上に塗工することで光反射機能を備えた被覆を有するフレキシブルプリント配線板を製造できる。本発明の白色樹脂組成物を、フレキシブルプリント配線板上に塗工する方法は、特に限定されないが、例えば、フレキシブルプリント配線板の表面を3質量%の硫酸水溶液で処理して表面を洗浄後、洗浄した表面に、スクリーン印刷法、バーコータ法、ブレードコータ法、ナイフコータ法、ロールコータ法等、公知の塗工方法を用いて白色樹脂組成物を所定の厚さ、例えば、硬化後の膜厚が20〜23μmとなるように、所望の部位に塗工する。塗工後、必要に応じて、例えば、120〜140℃程度の温度で1〜10分間程度加熱する予備乾燥を行って、塗膜をタックフリーの状態にする。次いで、130〜170℃程度の温度で10〜80分間ポストキュアを行うことにより、フレキシブルプリント配線板上に目的とする白色の反射膜(すなわち、白色の熱硬化膜)を形成させて、高い反射機能を有する白色硬化膜を有するフレキシブルプリント配線板を製造することができる。
【実施例】
【0047】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
【0048】
実施例1〜5、比較例1〜4
下記表1に示す各成分を下記表1に示す配合割合にて配合し、3本ロールを用いて室温にて混合分散させて、実施例1〜5、比較例1〜4にて使用する白色樹脂組成物を調製した。下記表1に示す各成分の配合量は、特に断りのない限り質量部を示す。なお、下記表1中の配合量の空欄部は、配合なしを意味する。
【0049】
なお、表1中の各成分についての詳細は、以下の通りである。
(A)ガラス転移温度が−10℃以上35℃以下且つ酸価が5.0mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であるカルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂
・UR−3500:固形分(樹脂分)40質量%、東洋紡績(株)製
・SD−7000:固形分(樹脂分)40質量%、東洋紡績(株)製
(B)二酸化ケイ素粉末
・レオロシールDM20−S:熱分解法シリカ粉末、(株)トクヤマ製
【0050】
(C)エポキシ化合物
・EPICLON 850−S:エポキシ当量188g/eq、DIC(株)製
・EPICLON N770:エポキシ当量186g/eq、DIC(株)製
・EHPE3150:エポキシ当量180g/eq、(株)ダイセル・オルネクス製
(D)酸化チタン
・タイペークCR−93:ルチル型酸化チタン、石原産業(株)製
(E)非反応性希釈剤
EDGAC:三洋化成品(株)製
【0051】
難燃剤
・Exolit OP 935:クラリアントジャパン(株)製
【0052】
(A)カルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂以外のカルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂
・UR−3600:固形分(樹脂分)40質量%、東洋紡績(株)製
・UR−2300:固形分(樹脂分)30質量%、東洋紡績(株)製
【0053】
試験片作製工程
基板:ポリイミドフィルム(カプトン100H(東レ・デュポン(株)製)、フィルムの厚さ25μm)
印刷法:バーコータ法
DRY膜厚:15μm
予備乾燥:130℃、3分
ポストキュア:150℃、60分
【0054】
評価項目
(1)反射率(初期値)
分光光度計(U−4100、日立ハイテクノロジーズ(株)製)を用いて、試験片作製直後の硬化塗膜について、波長450nmの反射率を測定した。
(2)反射率(リフロー後)
試験片に対して、プレヒート温度180℃にて60秒間、ピーク温度260℃にて10秒間の加熱条件としたリフロー処理を2回行った後に、分光光度計(U−4100、日立ハイテクノロジーズ(株)製)を用いて、波長450nmの反射率を測定した。
【0055】
(3)折り曲げ性
試験片を基板が外側になる状態で180°折り曲げて2kN/mの荷重をかけた後、フラットに戻し、さらに、上記折り曲げた部分を基板が内側になる状態で180°折り曲げて2kN/mの荷重をかけるサイクルを、30回まで繰り返して、試験片の硬化塗膜にひびや割れなどの異常がないかを拡大鏡で確認した。
表1には、硬化塗膜にひびや割れなどの異常が発生したときの繰り返し数を記載し、上記サイクルを30回繰り返しても硬化塗膜にひびや割れなどの異常がない場合を「30回以上」と表記した。
【0056】
(4)反り性
試験片を20mm×25mmの長方形に切断して、硬化塗膜が上になるように平坦部に載置し、試験片の4角について平坦部から反り上がっている寸法をそれぞれ測定し、その平均値から反り性を評価した。
【0057】
(5)密着性
JIS−K−5600 5−6に準拠したクロスカット試験にて、硬化塗膜の剥離が見られない格子数を計測した。
【0058】
(6)保存安定性
白色樹脂組成物の調製後、25℃にて30日間、密閉容器中に放置し、放置後、容器底部にケーキ状の沈降物が視認できなかった場合は「○」、容器底部にケーキ状の沈降物が視認できた場合は「×」と評価した。
【0059】
評価結果を下記表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
上記表1に示すように、(A)ガラス転移温度が−10℃以上35℃以下且つ酸価が5.0mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であるカルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂と、(B)二酸化ケイ素粉末と、(C)エポキシ化合物と、(D)酸化チタンと、を含有する白色樹脂組成物の硬化膜である実施例1〜5では、初期値で87%以上、リフロー後で80%以上と高い反射率を有しつつ、折り曲げ性と反り性に優れており、優れた柔軟性を得ることができた。また、実施例1〜5では、密着性と保存安定性にも優れていた。また、実施例1と実施例3の対比から、エポキシ化合物としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いると、リフロー後における反射率の低下を抑制でき、長期間に渡って高い反射率を維持できることが判明した。
【0062】
一方で、二酸化ケイ素粉末が配合されていない比較例1の硬化膜では、白色樹脂組成物の保存安定性が得られなかった。また、エポキシ化合物が配合されていない比較例2の硬化膜では、基板に対する密着性が得られなかった。また、ガラス転移温度が40℃のカルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂を用いた比較例3の硬化膜では、折り曲げ性と反り性が得られなかったことから、硬化膜が硬くなってしまっていた。また、酸価が1.0mgKOH/g未満であるカルボキシル基含有ポリエステルウレタン樹脂を用いた比較例4の硬化膜では、基板に対する密着性が得られなかった。