(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774734
(24)【登録日】2020年10月7日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】回転ドラム型磁気分離装置
(51)【国際特許分類】
B03C 1/14 20060101AFI20201019BHJP
B03C 1/00 20060101ALI20201019BHJP
B03C 1/12 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
B03C1/14
B03C1/00 A
B03C1/12
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-202824(P2014-202824)
(22)【出願日】2014年10月1日
(65)【公開番号】特開2016-68057(P2016-68057A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年4月17日
【審判番号】不服2018-12494(P2018-12494/J1)
【審判請求日】2018年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000145448
【氏名又は名称】住友重機械ファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】特許業務法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】西澤 信也
【合議体】
【審判長】
日比野 隆治
【審判官】
村岡 一磨
【審判官】
後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭52−19080(JP,U)
【文献】
特開2007−978(JP,A)
【文献】
特開2011−25391(JP,A)
【文献】
特開2009−172589(JP,A)
【文献】
特開2014−151314(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3050340(JP,U)
【文献】
特開昭52−50507(JP,A)
【文献】
特開2014−126140(JP,A)
【文献】
実開昭48−53668(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 1/00- 1/32
B23Q 11/00-11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の磁石を配置した第1の回転ドラムを備え、使用済みクーラント液中の磁性体を分離する回転ドラム型磁気分離装置において、
複数の磁石を配置した第2の回転ドラムを、前記第1の回転ドラムよりも使用済みクーラント液が流入してくる手前側に備え、
前記使用済みクーラント液は、第2の回転ドラムから第1の回転ドラムに向かって流れ、
前記第2の回転ドラムが使用済みクーラント液中の磁性体を磁化することで、該磁性体を互いに吸着させて大きくするとともに、
前記第2の回転ドラムに付着した磁性体を掻き取るスクレパーと、
前記第1の回転ドラム下部の流路を形成する底部材とを備え、
前記スクレパーにより掻き取られた磁性体が大きくなった状態のまま、前記使用済みクーラント液の流れに沿って前記第1の回転ドラムへ誘導されることを特徴とする回転ドラム型磁気分離装置。
【請求項2】
前記第2の回転ドラムは、外筒と内筒とで構成されており、
前記外筒は固定されており、複数の磁石が配置された前記内筒は、前記外筒の内側を回転することができるよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の回転ドラム型磁気分離装置。
【請求項3】
前記第2の回転ドラムは、外筒と内筒とで構成されており、
複数の磁石が配置された前記内筒は固定されており、前記外筒は、前記内筒の外側を回転することができるよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の回転ドラム型磁気分離装置。
【請求項4】
前記第2の回転ドラムは、外筒と内筒とで構成されており、
複数の磁石が配置された前記内筒と前記外筒とは、互いに回転することができるよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の回転ドラム型磁気分離装置。
【請求項5】
前記スクレパーは、前記第2の回転ドラム側から前記第1の回転ドラム側に向かって下降するよう傾斜していることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の回転ドラム型磁気分離装置。
【請求項6】
前記第2の回転ドラムは、磁力が周囲と比較して強い強磁部分と、磁力が周囲と比較して弱い弱磁部分とを有することを特徴とする請求項2乃至5のいずれか一項に記載の回転ドラム型磁気分離装置。
【請求項7】
前記第2の回転ドラムの前記内筒は、極性の異なる2つの磁石を一組とし、複数組の磁石が装着されていることを特徴とする請求項6に記載の回転ドラム型磁気分離装置。
【請求項8】
前記第2の回転ドラムの前記内筒に装着された一組の磁石は、一方の磁石の厚みの方が他方の磁石の厚みよりも厚くなるよう構成されていることを特徴とする請求項7に記載の回転ドラム型磁気分離装置。
【請求項9】
前記第2の回転ドラムの前記内筒に偶数組の磁石が装着された場合、互いに隣接する一組の磁石は、極性が逆になるよう構成されていることを特徴とする請求項7に記載の回転ドラム型磁気分離装置。
【請求項10】
前記第1の回転ドラムは、使用済みクーラント液に一部が浸漬し、他部が浸漬しないように構成されており、
前記第2の回転ドラムは、使用済みクーラント液に全体が浸漬するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至第9のいずれか一項に記載の回転ドラム型磁気分離装置。
【請求項11】
使用済みクーラント液は、前記第2の回転ドラムの上部の近傍を通過し、その後前記第1の回転ドラムの下部と前記底部材との間を通過するように流れが形成されることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の回転ドラム型磁気分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クーラント液に含まれるスラッジから金属成分を回収する回転ドラム型磁気分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料、特に鉄鋼材料に代表される磁性材料の研磨加工、切削加工等において、クーラント液とともに排出されるスラッジ状の切削屑、切粉等は、液分と分離させて回収する。切削屑、切粉等は様々な形状を有しているため、回収効率の観点から種々の磁気分離(回収)装置が開発されている。
【0003】
例えば切粉は、粉状であるために容易に集合して液分を含みやすい。したがって、スラッジの液分の分離に優れた磁気分離装置が要求される。例えば
図1は、従来の回転ドラム型磁気分離装置の構成を示す回転ドラムの回転軸に直交する面での断面図である。
【0004】
図1に示すように、従来の回転ドラム型磁気分離装置は、箱型の本体1内にクーラント液を溜め置く液溜め部2が設けられている。そして、液溜め部2を二分するように、本体1の中央部近傍に回転ドラム3が略水平方向に軸支されている。回転ドラム3は、ステンレス鋼等の非磁性材からなる円筒体をなしており、外周面に複数の磁石4、4、・・・を所定の配列で配置してある内筒5を、外筒9の内部に同軸に固定してある。複数の磁石4、4、・・・は、クーラント液に含まれる切削屑、切粉等を磁着させることができるように、回転ドラム3の外周面に所定の磁束を発生させるよう、磁極が配置されている。
【0005】
図1の例では、回転ドラム3の液溜め部2に浸漬する部分から頂上部までの間、すなわち回転ドラム3の外周の略4分の3に相当する部分に対応する内筒5に、複数の磁石4、4、・・・が配置されている。残りの略4分の1に相当する部分には内筒5に磁石4、4、・・・が配置されておらず、磁力が作用しないように構成されている。
【0006】
磁石4、4、・・・の磁力によって液溜め部2の底部にて外筒9の外周面に磁着された切削屑、切粉等は、外筒9の回転に伴って回転ドラム3の頂上部へと搬送され、頂上部を通過した時点で磁石4、4、・・・の磁力による磁着力から解放され、回転ドラム3に当接するスクレパー7にて掻き取られて回収される。回転ドラム3の頂上部近傍には、ゴム等の弾性体を表面に配してある絞りローラ6が設けられており、所定の押圧で回転ドラム3の外筒9の外周面に当接されている。外筒9と絞りローラ6との間を磁着されたスラッジが通過することにより、スラッジの液分が絞り取られ、回転ドラム3の頂上部を通過した時点、すなわち磁石4の磁力が及ばない位置にて切削屑、切粉等のみが分離回収される。
【0007】
上述した従来の回転ドラム型磁気分離装置でも一定水準までクーラント液を浄化することができるが、昨今、さらに清浄度の高いクーラント液へと浄化することが要求されている。これに対して、例えば特許文献1では、多段階に複数の磁気分離装置を配置することで、より清浄度の高いクーラント液を提供している。
【0008】
また、特許文献2では、外周面に複数の磁石を配置してある第1の回転ドラムと、第1の回転ドラムと近接して配置され、第1の回転ドラムに吸着されて搬送されてきた浮遊固形物を受け渡される、外周面に複数の磁石を配置してある第2の回転ドラムとを備える浄化装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実用新案登録第3057175号公報
【特許文献2】特開2003−038907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1に示すような多段階に磁気分離装置を配置する方法では、複数の磁気分離装置を備える必要があり、製造コストの観点から現実的な解ではない。
【0011】
また、特許文献2では、最終的に回収する浮遊固形物の大きさを第2の回転ドラムに装着する磁石の磁力の大きさにより分類することはできる。しかし、クーラント液から回収する浮遊固形物の大きさは従来と変わらないので、循環するクーラント液中の浮遊固形物の総量に変化はなく、クーラント液の清浄度の向上を図ることができないという問題点があった。
【0012】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、簡単な構造で、循環するクーラント液の清浄度を向上させることが可能な回転ドラム型磁気分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために第1発明に係る回転ドラム型磁気分離装置は、複数の磁石を配置した第1の回転ドラムを備え、使用済みクーラント液中の
磁性体を分離する回転ドラム型磁気分離装置において
、複数の磁石を配置した第2の回転ドラムを、前記第1の回転ドラムよりも使用済みクーラント液が流入してくる手前側に備え、
前記第2の回転ドラムが使用済みクーラント液中の磁性体を磁化することで、該磁性体を互いに吸着させて大きくするとともに、前記第2の回転ドラムに付着した
磁性体を掻き取るスクレパー
と、前記第1の回転ドラム下部の流路を形成する底部材
とを備え、前記スクレパーにより掻き取られた磁性体が大きくなった状態のまま、前記使用済みクーラント液の流れに沿って前記第1の回転ドラムへ誘導されることを特徴とする。
【0014】
第1発明では
、複数の磁石を配置した第2の回転ドラムを、第1の回転ドラムよりも使用済みクーラント液が流入してくる手前側に備え、
第2の回転ドラムが使用済みクーラント液中の磁性体を磁化することで、該磁性体を互いに吸着させて大きくするとともに、第2の回転ドラムに付着した
磁性体を掻き取るスクレパー
と、第1の回転ドラム下部の流路を形成する底部材
とを備え、スクレパーにより掻き取られた磁性体が大きくなった状態のまま、使用済みクーラント液の流れに沿って第1の回転ドラムへ誘導される。これにより、第2の回転ドラムにおいて吸着された
磁性体が磁化されることにより互いに引き寄せあい、細かい粒子が集まることで1粒あたりの大きさが大きくなる。したがって、
磁性体が大きな粒子となっ
た状態のまま第1の回転ドラムへと誘導されるので、第1の回転ドラムにより確実に
磁性体を回収することができ、クーラント液の清浄度をより向上させることが可能となる。
【0015】
また、第2発明に係る回転ドラム型磁気分離装置は、第1発明において、前記第2の回転ドラムは、外筒と内筒とで構成されており、前記外筒は固定されており、複数の磁石が配置された前記内筒は、前記外筒の内側を回転することができるよう構成されていることが好ましい。
【0016】
第2発明では、第2の回転ドラムは、外筒と内筒とで構成されており、外筒は固定されており、複数の磁石が配置された内筒は、外筒の内側を回転することができるので、第1の回転ドラムにより確実に
磁性体を回収することができ、クーラント液の清浄度をより向上させることが可能となる。
【0017】
また、第3発明に係る回転ドラム型磁気分離装置は、第1発明において、前記第2の回転ドラムは、外筒と内筒とで構成されており、複数の磁石が配置された前記内筒は固定されており、前記外筒は前記内筒の外側を回転することができるよう構成されていることが好ましい。
【0018】
第3発明では、第2の回転ドラムは、外筒と内筒とで構成されており、複数の磁石が配置された内筒は固定されており、外筒は、内筒の外側を回転することができるよう構成されているので、第1の回転ドラムにより確実に
磁性体を回収することができ、クーラント液の清浄度をより向上させることが可能となる。
【0019】
また、第4発明に係る回転ドラム型磁気分離装置は、第1発明において、前記第2の回転ドラムは、外筒と内筒とで構成されており、複数の磁石が配置された前記内筒と前記外筒とは、互いに回転することができるよう構成されていることが好ましい。
【0020】
第4発明では、第2の回転ドラムは、外筒と内筒とで構成されており、複数の磁石が配置された内筒と外筒とは、互いに回転することができるよう構成されているので、第1の回転ドラムにより確実に
磁性体を回収することができ、クーラント液の清浄度をより向上させることが可能となる。
【0021】
また、第5発明に係る回転ドラム型磁気分離装置は、第2乃至第4発明のいずれか1つにおいて、前記スクレパーは、前記第2の回転ドラム側から前記第1の回転ドラム側に向かって下降するよう傾斜していることが好ましい。
【0022】
第5発明では、スクレパーは、第2の回転ドラム側から第1の回転ドラム側に向かって下降するよう傾斜しているので、第2の回転ドラムの周面で互いに引き寄せあって
(吸着させて)大きくなった
磁性体を第2の回転ドラムから分離しやすく、
大きくなった状態のまま確実に第1の回転ドラムへと誘導することが可能となる。
【0023】
また、第6発明に係る回転ドラム型磁気分離装置は、第2乃至第5発明のいずれか1つにおいて、前記第2の回転ドラムは、磁力が周囲と比較して強い強磁部分と、磁力が周囲と比較して弱い弱磁部分とを有することが好ましい。
【0024】
第6発明では、第2の回転ドラムは、磁力が周囲と比較して強い強磁部分と、磁力が周囲と比較して弱い弱磁部分とを有するので、強磁部分で磁着させた
磁性体を弱磁部分で剥離させることができ、第1の回転ドラムへ1粒あたりの大きさが大きくなった
磁性体をより確実に誘導することが可能となる。
【0025】
また、第7発明に係る回転ドラム型磁気分離装置は、第6発明において、前記第2の回転ドラムの前記内筒は、極性の異なる2つの磁石を一組とし、複数組の磁石が装着されていることが好ましい。
【0026】
第7発明では、第2の回転ドラムの内筒は、極性の異なる2つの磁石を一組とし、複数組の磁石が装着されているので、隣接する二組の磁石の極性を逆にする等、配列を工夫することにより、より強い強磁部分、あるいはより弱い弱磁部分を形成することができ、第1の回転ドラムへ1粒あたりの大きさが大きくなった
磁性体をより確実に誘導することが可能となる。
【0027】
また、第8発明に係る回転ドラム型磁気分離装置は、第7発明において、前記第2の回転ドラムの前記内筒に装着された一組の磁石は、一方の磁石の厚みの方が他方の磁石の厚みよりも厚くなるよう構成されていることが好ましい。
【0028】
第8発明では、第2の回転ドラムの内筒に装着された一組の磁石は、一方の磁石の厚みの方が他方の磁石の厚みよりも厚くなるよう構成されているので、より強い強磁部分、あるいはより弱い弱磁部分を形成することができ、第1の回転ドラムへ1粒あたりの大きさが大きくなった
磁性体をより確実に誘導することが可能となる。
【0029】
また、第9発明に係る回転ドラム型磁気分離装置は、第7発明において、前記第2の回転ドラムの前記内筒に偶数組の磁石が装着された場合、互いに隣接する一組の磁石は、極性が逆になるよう構成されていることが好ましい。
【0030】
第9発明では、第2の回転ドラムの内筒に偶数組の磁石が装着された場合、互いに隣接する一組の磁石は、極性が逆になるよう構成することにより、各組の磁石間に磁力の比較的弱い弱磁部分を確実に形成することができ、第1の回転ドラムへ1粒あたりの大きさが大きくなった
磁性体をより確実に誘導することが可能となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、第2の回転ドラムにおいて吸着された
磁性体が磁化されることにより互いに引き寄せあい、細かい粒子が集まることで1粒あたりの大きさが大きくなる。したがって、
磁性体が大きな粒子となっ
た状態のまま第1の回転ドラムへと誘導されるので、第1の回転ドラムにより確実に
磁性体を回収することができ、クーラント液の清浄度をより向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】従来の回転ドラム型磁気分離装置の構成を示す回転ドラムの回転軸に直交する面での断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る回転ドラム型磁気分離装置の構成を示す回転ドラムの回転軸に直交する面での断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る回転ドラム型磁気分離装置の回転ドラムの磁束密度の分布を示す例示図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る第2の回転ドラムの複数の磁石の配置例を示す第2の回転ドラムの回転軸に直交する面での模式断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る第2の回転ドラムの複数の磁石の他の配置例を示す第2の回転ドラムの回転軸に直交する面での模式断面図である。
【
図6】不要物である磁性スラッジの回収率の変動を示すグラフである。
【
図7】本発明の実施の形態に係る回転ドラム型磁気分離装置の他の構成を示す回転ドラムの回転軸に直交する面での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明を実施の形態を示す図面に基づいて詳細に説明する。
図2は、本発明の実施の形態に係る回転ドラム型磁気分離装置の構成を示す回転ドラムの回転軸に直交する面での断面図である。
【0034】
図2に示すように、本実施の形態に係る回転ドラム型磁気分離装置は、箱型の本体10内にクーラント液を溜め置く液溜め部12が設けられ、研磨加工後、あるいは切削加工後の切削屑、切粉等を含むスラッジが混入している使用済みクーラント液は、投入口20から液溜め部12へ投入される。
【0035】
液溜め部12を二分するように、本体10の中央部近傍に第1の回転ドラム13が略水平方向に回転することが可能に軸支されている。第1の回転ドラム13は、ステンレス鋼等の非磁性材からなる円筒体をなしており、外周面に複数の磁石14、14、・・・を所定の配列で配置してある内筒15を、外筒19の内部に外筒19と同軸に固定してある。複数の磁石14、14、・・・は、使用済みクーラント液に含まれる磁性体である切削屑、切粉等を磁着させることができるように、外筒19の外周面に所定の磁束を発生させるよう、極性が配置されている。なお、
図2に示すように、隣接する磁石14、14は、それぞれ極性が逆になるように配置されており、具体的には外周面側が「N」極の磁石、外周面側が「S」極の磁石、・・・というように交互に内筒15の外周面に配置されている。
【0036】
図2では、第1の回転ドラム13の液溜め部12に浸漬する部分から頂上部までの間、すなわち第1の回転ドラム13の外周の略4分の3に相当する部分に対応する内筒15に、複数の磁石14、14、・・・が配置されている。残りの略4分の1に相当する部分には内筒15に磁石14が配置されておらず、磁力が作用しないように構成されている。
【0037】
複数の磁石14、14、・・・の磁力によって液溜め部12の底部にて第1の回転ドラム13の外筒19の外周面に磁着された磁性体である切削屑、切粉等は、外筒19の回転に伴って第1の回転ドラム13の頂上部へと搬送され、頂上部を通過した時点で複数の磁石14、14、・・・による磁着力から解放され、外筒19に当接するスクレパー17にて掻き取られて回収される。第1の回転ドラム13の頂上部近傍には、ゴム等の弾性体を表面に配してある絞りローラ16が設けられており、所定の押圧で第1の回転ドラム13の外筒19の外周面に当接されている。外筒19と絞りローラ16との間を磁着された切削屑、切粉等を含むスラッジが通過することにより、スラッジの液分が絞り取られ、第1の回転ドラム13が頂上部を通過した時点、すなわち磁力が及ばない位置にて切削屑、切粉等のみが分離回収される。
【0038】
絞りローラ16の第1の回転ドラム13の外周面との当接面に用いる弾性体としては、CR(クロロプレン)系ゴム、NBR(ニトリル)系ゴム等の弾性体を用いるのが主流であるが、例えばポリエステルポリオールを主成分とした未架橋のポリウレタン材を用いても良い。
【0039】
本実施の形態では、第1の回転ドラム13に加えて、第1の回転ドラム13よりも小径である第2の回転ドラム21を、第1の回転ドラム13よりも使用済みクーラント液が流入してくる手前側に配置している。つまり、まず第2の回転ドラム21により磁性体である切削屑、切粉を吸着させた後、再度、第1の回転ドラム13により集約された切削屑、切粉を吸着する構造となっている。
【0040】
第2の回転ドラム21は、第1の回転ドラム13と同様、ステンレス鋼等の非磁性材からなる円筒体をなしており、外周面に複数の磁石24、24、・・・を所定の配列で配置してある内筒25を、外筒29の内部に外筒29と同軸に回転することが可能に支持してある。複数の磁石24、24、・・・は、使用済みクーラント液に含まれる磁性体である切削屑、切粉等を磁着させることができるように、外筒29の外周面に所定の磁束を発生させるよう、極性が配置されている。なお、
図2に示す「N」、「S」は、それぞれ磁石24の外筒29の外周面側と逆の面側の極性を示している。
【0041】
図2では、第2の回転ドラム21は液溜め部12に全体が浸漬している。そして、内筒25に、複数の磁石24、24、・・・が配置されている。複数の磁石24、24、・・・の磁力によって液溜め部12の底部にて第2の回転ドラム21の外筒29の外周面に磁着された磁性体である切削屑、切粉等は、内筒25の回転に伴って外筒29の外周面を移動し、第2の回転ドラム21の頂上部を通過して外筒29に当接するスクレパー27にて掻き取られる。スクレパー27は、第1の回転ドラム13の下部の流路を形成する底部材30に連結されており、掻き取られた不要物(磁性体)は第1の回転ドラム13へと誘導される。
【0042】
ここで、複数の磁石24、24、・・・は、磁極が互いに交互になるように配置されており、外筒29の外周面から出ている磁束は不連続となっている。
図3は、本発明の実施の形態に係る回転ドラム型磁気分離装置の第2の回転ドラム21の磁束密度の分布を示す例示図である。
図3の「疎」、「密」は、それぞれ磁束密度の大きい部分、小さい部分を示している。
【0043】
図3に示すように、複数の磁石24、24、・・・は、2つの磁石24、24を一組とした磁石群241が内筒25の外周面に配置されており、外周面側の磁極が順次、N極、S極、N極、S極、・・・と互いに交互になるように配置されている。このように配置することで、磁石群241の正面と、磁石群241、241の間の間隙部とでは、外筒29の外周面から出ている磁束の磁束密度に差異が生じる。例えば磁束密度の大きい、すなわち磁力の強い強磁部分と、磁束密度の小さい、すなわち磁力の弱い弱磁部分とが生じる。
【0044】
そして、強磁部分では、外筒29の表面において磁化された切削屑、切粉等が吸着しやすく、細かい粒子状であっても引き寄せあって大きくなりやすい。一方、弱磁部分では、外筒29の表面から剥離しやすい。したがって、内筒25の回転によりスクレパー27に弱磁部分が到達した時点で、比較的大きくなった切削屑、切粉等の不要物(磁性体)が剥離しやすく、使用済みクーラント液の流れに沿って、1粒あたりの大きさが大きくなった状態のまま第1の回転ドラム13へと誘導される。
【0045】
本実施の形態に係る回転ドラム型磁気分離装置の第2の回転ドラム21の複数の磁石24、24、・・・の配置は特に限定されるものではない。
図4は、本発明の実施の形態に係る第2の回転ドラム21の複数の磁石24、24、・・・の配置例を示す第2の回転ドラム21の回転軸に直交する面での模式断面図である。
【0046】
図4(a)の例では、2つの磁石24、24を一組とした磁石群241を3組配置しており、
図4(b)の例では、磁石群241を4組配置している。
図4(a)のように、磁石群241が奇数組配置されている場合には、隣接する磁石群241、241の間に弱磁部分を形成するために、隣接する磁石群241の極性が逆になるよう配置しても、異なる極性の磁石24、24が対向する部分が生じる。
【0047】
それに対して、
図4(b)のように、磁石群241が偶数組配置されている場合には、隣接する磁石群241、241の間に弱磁部分を形成するために、隣接する磁石群241の極性が逆になるよう配置しても、異なる極性の磁石24、24が対向する部分が生じない。つまり、第2の回転ドラム21の周面では強磁部分と弱磁部分とが等間隔に生じるので、一定の大きさの不要物(磁性体)を第1の回転ドラム13へと誘導することができる。
【0048】
また、第2の回転ドラム21の内筒25に装着された一組の磁石群241は、一方の磁石24の厚みの方が他方の磁石24の厚みよりも厚くなるよう構成されていても良い。磁束密度は磁石24の厚みに比例しており、磁石群241の中においても、強磁部分と弱磁部分とが生じるからである。
【0049】
図5は、本発明の実施の形態に係る第2の回転ドラム21の複数の磁石24a、24b、・・・の他の配置例を示す第2の回転ドラム21の回転軸に直交する面での模式断面図である。
図5(a)の例では、2つの磁石24a、24bを一組とした磁石群241を3組配置しており、
図5(b)の例では、磁石群241を4組配置している。
【0050】
図5(a)及び(b)のように、本実施の形態では、磁石群241ごとに、2つの磁石24a、24bのうち、第2の回転ドラムの回転方向で先にスクレパー27に到達する一方の磁石24aの厚みを、隣接する他方の磁石24bの厚みよりも厚くなるようにしている。これにより、磁石群241の中においても強磁部分と弱磁部分とが生じるので、より確実に互いに引き寄せあうことで1粒あたりの大きさが大きくなった不要物(磁性体)を第1の回転ドラム13へと誘導することができる。
【0051】
図6は、不要物である磁性スラッジの回収率の変動を示すグラフである。
図6(a)は、従来の回転ドラム型磁気分離装置の磁性スラッジ等の不要物の回収率を示している。
【0052】
一方、
図6(b)は、従来の回転ドラム型磁気分離装置に、第2の回転ドラム21を設けた場合の磁性スラッジ等の不要物の回収率を示している。
図6(a)と
図6(b)とを比較してわかるように、
図6(b)の方が
図6(a)よりも回収率が向上している。
【0053】
ここで、スクレパー27は、
図2に示すように水平方向に設けることに限定されるものではない。例えば、スクレパー27は、第1の回転ドラム13の下部の流路を形成する底部材に連結されていれば足りるので、第2の回転ドラム21側から第1の回転ドラム13に向かって下降するよう傾斜していても良い。
【0054】
図7は、本発明の実施の形態に係る回転ドラム型磁気分離装置の他の構成を示す回転ドラムの回転軸に直交する面での断面図である。
図7に示すように、本実施の形態に係る回転ドラム型磁気分離装置は、第2の回転ドラム21の外筒29に当接するスクレパー27が、第2の回転ドラム21側から第1の回転ドラム13側へ傾斜するよう設けられている。
【0055】
これにより、スクレパー27で書き取られた第2の回転ドラム21に付着した不要物が、傾斜に沿って第1の回転ドラム13側へと流れに乗って移動しやすく、第1の回転ドラム13により確実に回収することが可能となる。
【0056】
以上のように本実施の形態によれば、第2の回転ドラム21において吸着された不要物(磁性体)が磁化されることにより互いに引き寄せあい、細かい粒子が集まることで1粒あたりの大きさが大きくなる。したがって、不要物が大きな粒子となって第1の回転ドラム13へと誘導されるので、第1の回転ドラム13により確実に不要物を回収することができ、クーラント液の清浄度をより向上させることが可能となる。
【0057】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において上記実施の形態に種々の変更、例えば第2の回転ドラム21の磁石24の配置の変更、スクレパー27の傾斜角度の変更等を付加した形態で実施することが可能である。
【0058】
また、上述した実施の形態では、第2の回転ドラム21の外筒29は固定されており、複数の磁石24が配置された内筒25は、外筒29の内側を回転することができるよう構成されているが、特にこれに限定されるものではない。例えば、複数の磁石24が配置された内筒25は固定されており、外筒29は、内筒25の外側を回転することができるよう構成されていても良いし、複数の磁石24が配置された内筒25と外筒29とは、互いに回転することができるよう構成されていても良い。
【符号の説明】
【0059】
10 本体
13 第1の回転ドラム
21 第2の回転ドラム
14、24 磁石
15、25 内筒
17、27 スクレパー
19、29 外筒
241 磁石群