(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
図1に示す第1実施形態の空気調和機1は、外気を熱源として室内空気(熱負荷)の加熱、つまり暖房が可能な冷凍サイクル装置である。
以下、空気調和機1について説明するが、以下で述べる構成は、熱負荷としての水を加熱する給湯器等の冷凍サイクル装置にも同様に適用することができる。
【0019】
空気調和機1は、圧縮機3、第1熱交換器4、減圧部5(51〜53)、および第2熱交換器6を含む冷媒回路2を有している。冷媒回路2に含まれる各要素は、配管により接続されている。
冷媒回路2には、非共沸混合冷媒が封入されている。
圧縮機3、減圧部5、および第2熱交換器6は、室外機7を構成している。第2熱交換器6は、ファン61により送風される外気と冷媒との間で熱交換させる。
第1熱交換器4は、室内機8を構成している。第1熱交換器4は、ファン41により送風される室内空気と冷媒との間で熱交換させる。
冷媒回路2には、非共沸混合冷媒が封入されている。非共沸混合冷媒は、
図1に矢印で示す向きに冷媒回路2を循環する。
【0020】
本実施形態の空気調和機1は、冷房には用いられないで暖房のみに用いられるため、冷媒の流れの向きを切り替える四方弁19(切替弁)を省略することができる。冷媒の流れの向きを切り替える必要性にかかわらず、室外機ユニットを共通化するため、冷媒回路2は四方弁19を含んで構成されている。
空気調和機1は暖房運転されるため、本実施形態においては、第1熱交換器4のことを凝縮器4と称し、第2熱交換器6のことを蒸発器6と称する。
【0021】
非共沸混合冷媒は、沸点の異なる冷媒が混合されたものであり、本実施形態の非共沸混合冷媒は、第1冷媒としてのR32と、R32よりも沸点が高い第2冷媒としてのR1234yfと、第3冷媒としてのCO
2とを含んでいる。R32は、HFC(hydrofluorocarbon)冷媒であり、R1234yfは、HFO(Hydro Fluoro Olefin)冷媒である。
【0022】
冷媒回路2に封入された非共沸混合冷媒の全体におけるR32の混合比率、すなわち濃度は、重量%濃度で、30〜70wt%である。
つまり、凝縮圧力、体積能力、および冷凍効果に優れるR32を採用しつつ、GWPが小さい第2冷媒(R1234yf)の混合比率を十分に高くすることにより、所定値以下のGWPを担保している。冷媒回路2に封入される混合冷媒の組成として、第2冷媒の混合比率が第1冷媒の混合比率よりも多いことが好ましい。
また、冷媒回路2に封入された非共沸混合冷媒の全体におけるCO
2の混合比率は、5wt%以下である。体積能力に優れるCO
2を加えることで、圧縮機3の小型化が可能となる。
【0023】
第2冷媒として、R1234yfに代えて、R1234ze(E)を用いることもできる。その場合は、以下の説明における「R1234yf」を「R1234ze(E)」に読み替えればよい。
また、第2冷媒として、R1234yfおよびR1234ze(E)の両方を用いることもできる。
【0024】
空気調和機1が暖房運転されている間、蒸発器6を流れる非共沸混合冷媒(以下、混合冷媒)におけるR32の混合比率は、冷媒回路2に封入されている混合冷媒の全体におけるR32の混合比率である40wt%よりも高い。蒸発器6を流れる混合冷媒におけるR32の混合比率は、概ね、50wt%前後である(重量濃度)。
上記のように封入混合比率とは異なる運転時の混合比率を実現するため、空気調和機1は、減圧部51〜53と、気液分離器11と、気液分離器11における気相の冷媒を蒸発器6へと供給する第1経路121と、気液分離器11における液相の冷媒を蒸発器6に供給せずにバイパスする第2経路122と、インタークーラー13(冷媒間熱交換器)とを備えている。そして、凝縮器4から流れ出て減圧部51(第1減圧部)により減圧された気液二相の混合冷媒を気液分離器11により気液分離し、液相から分離された気相をインタークーラー13により液相との熱交換により凝縮させてから蒸発器6へと供給することで、R1234yfリッチな液冷媒から分離されたR32リッチな冷媒が蒸発器6に流れるようにしている。
【0025】
つまり、本実施形態の空気調和機1は、冷媒回路2に封入されている混合冷媒全体におけるR32の混合比率を減らしてR1234yfの混合比率を増やすことによって所定値以下のGWPを担保していながら、気液分離器11およびインタークーラー13を含む回路10により、運転時に冷媒回路2を流通する混合冷媒におけるR32の混合比率(見かけの混合比率)を十分に高めている。
図7に、温度すべりと、R32の混合比率(濃度)との関係を示すように、温度すべりのピークである20wt%を超える領域では、R32の混合比率(濃度)が高いほど、温度すべりが小さい。
【0026】
本実施形態では、R32の見かけの混合比率を十分に高めることで、蒸発の温度すべりが、7.0℃〜7.5℃程度にまで抑えられている。それによって、蒸発器6への着霜の発生を回避できている。R1234yfと比べて凝縮圧力、体積能力、および冷凍効果に優れるR32の運転時の混合比率が高いことにより、空気調和機1の性能も向上し、小型化にも寄与できる。
【0027】
以下、
図1および
図2を参照し、気液分離器11およびインタークーラー13を含む回路10について説明する。
図1および
図2において、対応する位置には同じ番号((1)、(2)等)を付している。
本実施形態で用いる混合冷媒には、若干量のCO
2も含まれているが、以下で説明する回路10の作用に基本的には影響しないため、CO
2についての記載は省略する。CO
2は、R32およびR1234yfと比べて沸点が低いので、以下で述べる作用の間を通じて、基本的には気相の状態である。
本実施形態で用いられる混合冷媒が、CO
2を含まずに、R32とR1234yfのみから構成されていてもよい。
【0028】
回路10は、減圧部5を構成する減圧部51〜53と、気液分離器11と、受液器110と、インタークーラー13とを含んで構成されている。
減圧部51〜53、気液分離器11、受液器110、およびインタークーラー13は、室外機7を構成している。
【0029】
減圧部51〜53は、いずれも混合冷媒を絞り膨張させる。これらの減圧部51〜53はそれぞれ、絞り量が調節可能となっている。
【0030】
減圧部51は、凝縮器4と気液分離器11との間に位置している。この減圧部51は、凝縮器4の出口(3)から流れ出た冷媒を、気液二相の状態となる中間圧力p1(
図2参照)にまで減圧させる(4)。減圧部51の絞り量に応じて、気液分離器11に供給される冷媒の圧力(中間圧力p1)がコントロールされる。この中間圧力p1に応じて、気液分離器11における乾き度が決まる。
【0031】
気液分離器11は、減圧部51を経た気液二相の冷媒を気相と液相とに分離する。
減圧部51により気液二相の中間圧力p1まで減圧された混合冷媒は、沸点が高いR1234yfの方がR32よりも液化している状態で気液分離器11に流入する。
流入した冷媒は、気液分離器11において、中間圧力p1に対応する乾き度に従って気液分離される。気液分離器11に溜まる飽和液(5)は、R32よりもR1234yfを多く含んでいる。気液分離器11内の液相は、受液器110を介してインタークーラー13の低温経路13Lへと供給される。
気液分離器11において液相の冷媒は、第2経路122(バイパス経路)を通じて蒸発器6を迂回される。
図1および
図2には、第2経路122を破線で示している。
【0032】
受液器110は、気液分離器11から液冷媒を受け入れて貯留する。受液器110内で所定の液位を超える液冷媒が、インタークーラー13の低温経路13Lへと流れ込む。R1234yfリッチな液冷媒を貯留し、蒸発器6を流れる混合冷媒におけるR32の混合比率を増加させるため、第2経路122に受液器110が備えられていることが好ましい。
【0033】
気液分離器11内の気液分離状況は、中間圧力p1に対応する乾き度によって決まる。本実施形態では、R1234yfリッチな液冷媒を蒸発器6に対して供給せずにバイパスし、その液相とは分離されたR32リッチな冷媒のみを蒸発器6に流入させることで、蒸発器6を流れる混合冷媒におけるR32の混合比率を、実際の混合比率(冷媒回路2に封入された混合冷媒全体における混合比率)よりも高めている。
ここで、冷媒回路2に封入されているR1234yfの混合比率が高いため、主としてR1234yfを含む液冷媒を分離し、蒸発器6をバイパスさせることで、蒸発器6に流入する混合冷媒におけるR32の混合比率を大幅に高め、その分だけ温度すべりを小さくすることができる。
本実施形態では、気液分離器11の乾き度を決める中間圧力p1を減圧部51により適宜にコントロールすることにより、R32の見かけの混合比率を高めて温度すべりを十分に小さくすることができる。
【0034】
気液分離器11として、公知の適宜な方式の気液分離器を用いることができる。例えば、タンク内で冷媒を静置状態とすることで、気相と液相とを比重の違い(密度差)により分離する重力分離式、旋回する流れを冷媒に与えて気相と液相とを遠心分離する方式、および流路の内周部に設けられた蛇腹部分に液を保持する表面張力式等を採用することができる。
室外機7を小型化する観点からは、遠心分離式および表面張力式が好ましい。
【0035】
気液分離器11により液相と分離された気相(6)は、インタークーラー13の高温経路13Hを通り、蒸発器6に供給される。
インタークーラー13は、気相が流れる高温経路13Hと、液相が流れる低温経路13Lとを備えている。高温経路13Hは、気液分離器11における気相を蒸発器6へと供給する第1経路121の一部に相当する。低温経路13Lは、気液分離器11における液相を
、蒸発器6
を経ないで圧縮機3へと供給する第2経路122の一部に相当する。
インタークーラー13は、高温経路13Hを流れる気相と、低温経路13Lを流れる液相との間で熱交換させる。熱交換により、高温経路13Hの気相は、低温経路13Lの液相へと放熱されて凝縮される。凝縮された冷媒が蒸発器6に流入し、外気との熱交換によりガス化してこそ、潜熱によりエネルギー変化を得る冷凍サイクルを成立させることができる。
気液分離器11から流れ出た気相が、インタークーラー13により飽和液まで凝縮されることが好ましい(7)。
【0036】
減圧部52(第2減圧部)は、第1経路121において、インタークーラー13の高温経路13Hと、それよりも下流の蒸発器6との間に位置している。高温経路13Hから流れ出た冷媒は、減圧部52の絞り量に応じて、蒸発開始の圧力である蒸発圧力p2にまで減圧され(8)、蒸発器6に流入する。流入するのは、上述したように、R32リッチな混合冷媒である。蒸発器6を流れる混合冷媒は、外気から吸熱することで蒸発する(9)。
【0037】
一方、
気液分離器11から流れ出た液相は、第2経路122に位置する減圧部53(第3減圧部)によ
る減圧を
経た後(10)、
インタークーラー13の低温経路13Lに流入する。インタークーラー13の低温経路13Lを流れ出た液相は、高温経路13Hの気相から吸熱した分だけ蒸発し
、さらに、蒸発器6の出口から流れ出た低圧の冷媒が流れる経路に第2経路122が接続されている(11)
ため、その低圧冷媒の影響を受け、減圧部53
およびインタークーラー13よりも下流側では、冷媒が蒸発しながら下流側へ流れていく。
【0038】
図2は、一例として、空気調和機1のp−h線図を模式的に示している。
図2を参照し、冷媒回路2の作用を説明する。
圧縮機3から吐出された高温高圧の冷媒は(1)、凝縮器4へと流入する(2)。凝縮器4により室内空気へと放熱することで凝縮された冷媒は(3)、減圧部51により中間圧力p1にまで減圧されて気液二相の状態となり(4)、気液分離器11により気液分離される(5)・(6)。
気液分離器11により液相(5)と分離されたR32リッチな気相(6)は、インタークーラー13により液相(5)と熱交換されることで凝縮される(7)。さらに、減圧部52により蒸発圧力p2にまで減圧されてから(8)、蒸発器6に流入する。蒸発器6を流れる混合冷媒におけるR32の混合比率が高いため、蒸発開始温度と蒸発終了温度との温度すべりは小さい。蒸発器6により蒸発したガス冷媒は(9)、圧縮機3へと供給される。
一方、液相(5)は、受液器11
0を経た後、減圧部53により減圧され(10)、
次いでインタークーラー13を流れ、第2経路122の終端(11)に向けて蒸発しながら下流側へ流れていく。
【0039】
本実施形態によれば、R1234yfリッチな液冷媒とR32リッチなガス冷媒とに気液分離し、R1234yfリッチな冷媒を蒸発器6に対して供給せずにバイパスさせていることにより、冷媒回路2に封入されている混合冷媒の組成から逆転するほどにまでR32の混合比率を高めて蒸発器6へと流入させることができる。それによって温度すべりが抑制されるので、蒸発器6への着霜を回避することができる。
また、蒸発器6から圧縮機3を経て凝縮器4へと流入する混合冷媒の組成もR32リッチであるため、凝縮の温度すべりも抑えることができる。
以上により、空気調和機1の運転範囲を広い運転範囲に亘り成立させることが可能となる。
【0040】
本実施形態の空気調和機1によれば、冷媒回路2に封入される非共沸混合冷媒において低GWPであるR1234yfの混合比率が高いため、300未満のGWPを実現することができる。
【0041】
気液分離の状況は、中間圧力p1に対応する気液分離器11の乾き度に従うので、減圧部51の絞り量に応じて中間圧力p1をコントロールすることにより、気液分離状況を制御することができる。中間圧力p1は、例えば、乾き度が0.3〜0.5の範囲内となるようにコントロールされることが好ましい。冷凍サイクルを正常に成立させるため、乾き度の下限を例えば0.1に定めることができる。
エネルギーの収支を考慮し、気液分離器11により分岐した液相(5)と気相(6)との流量を設定することが好ましい。例えば、気液分離器11の乾き度が0.5の場合は、液相と気相との流量が等しくなるように(1:1)、第2減圧部51および第3減圧部52の各々の絞り量を調整するとよい。
【0042】
〔第1実施形態の変形例〕
図3に示す空気調和機1は、受液器110と、気液分離器11および受液器110の間の流路11Aを開閉する弁14とを第2経路122に備えている。
第1実施形態で説明したように、気液分離器11の気相を蒸発器6に流入させ、気液分離器11の液相をバイパスしながら運転していると、受液器110における液位が増加する。
【0043】
いずれも第2経路122に位置する受液器110および弁14を用いて、以下に述べるような制御が可能である。
受液器110内に液冷媒が貯留されている適宜なタイミングで、弁14を閉じ、気液分離器11から受液器110への液受け入れを停止する。このとき、減圧部53を開放する(開度が全開)。
そのまま運転を継続すると、第2経路122の終端(11)が接続されている経路の低圧に引っ張られるように、受液器110内の液冷媒が、終端(11)に向けて、蒸発しながら下流側へ流れていく。このとき、主として、沸点の低いR32が蒸発し、第2経路122の終端(11)から放出される。放出されたR32リッチな冷媒が圧縮機3へと吸入され、冷媒回路2を循環することにより、R32の運転時の混合比率が高められることとなる。
R32リッチな冷媒の放出に伴い、第2経路122内では、R1234yfが濃縮される。
【0044】
以上で述べた制御によれば、気液分離器11によりR32リッチな気相と分離されたR1234yfリッチな液冷媒から、さらに、R32リッチな冷媒を抽出し、冷媒回路2に放出させることができるので、R32の運転時の混合比率をより一層増加させることができる。
【0045】
以上で述べたR32放出制御は、所定の頻度で繰り返すことができる。R32放出の運転モードを終えたならば、弁14を開くとともに、減圧部53の絞り量を設定し、第1実施形態で説明したのと同様の通常運転モードに移行することができる。
なお、受液器110内の液位を検知し、所定の開始液位以上に貯留されているならばR32放出運転モードを開始し、受液器110内の液位が所定の終了液位を下回ればR32放出運転モードを終了するようにしてもよい。
【0046】
弁14に代えて、気液分離器11と受液器110との間の流路11Aを流れる冷媒の流量を変更可能な流量調整弁を用いて、同様の制御を行うことも許容される。
つまり、弁14を開くことに代えて流量調整弁により流路11Aの流量を増加し、弁14を閉じることに代えて流量調整弁により流路11Aの流量を減少させるとよい。
【0047】
〔第2実施形態〕
次に、
図4〜
図6を参照し、第2実施形態を説明する。
第2実施形態に係る空気調和機9は、外気を熱源として室内空気(熱負荷)の加熱および冷却が可能である。つまり、空気調和機9は、冷房の用途と暖房の用途とに兼用される。
図4〜
図6は、同一の空気調和機9が備える構成を示している。
空気調和機9は、四方弁19により、冷媒の流れの向きを切り替えることで、
図4に示す暖房運転と、
図5および
図6に示す冷房運転とが可能である。
【0048】
暖房運転時は(
図4)、第1熱交換器4が凝縮器4として機能し、第2熱交換器6が蒸発器として機能する。
冷房運転時は(
図5および
図6)、第1熱交換器4が蒸発器として機能し、第2熱交換器6が凝縮器として機能する。
図4〜
図6では、圧縮機3の吐出口から蒸発器の入口までの経路を実線で示し、蒸発器の出口から圧縮機3の吸入口までの経路を二点鎖線で示している。
【0049】
以下、第2実施形態の空気調和機9が第1実施形態の空気調和機1と相違する事項を中心に説明する。
図4に示すように、空気調和機9には、絞り膨張させる第1実施形態の減圧部53に代えて、気液分離器11により気相と分離された液相が導入されるバイパス区間15A(破線で示す)と、バイパス区間15Aを開閉する開閉弁151とを備えている。
バイパス区間15Aの終端は、蒸発器6から流れ出て圧縮機3へと向かう経路15Bに接続されている。バイパス区間15Aは、冷媒の圧力を減少させる第3減圧部に相当する。
バイパス区間15Aおよび経路15Bにより、気液分離器11における液相を蒸発器6に供給せずにバイパスさせる第2経路122が構成されている。
【0050】
また、空気調和機9は、暖房運転時だけでなく、冷房運転時にも、必要に応じて、凝縮器(4,6)から流れ出た冷媒を気液二相の状態にまで減圧してから気液分離し、R32リッチな冷媒を蒸発器(6,4)に流入させる処理を行う。
その処理が暖房運転時にも冷房運転時にも成立するように、空気調和機9は、ブリッジ回路16を備えている。
ブリッジ回路16は、冷媒の流れの向きを一方向に定める4つの逆止弁161〜164から構成されている。
【0051】
(暖房運転)
図4を参照し、暖房運転について説明する。
暖房運転時は、開閉弁151を開き、バイパス区間15Aを開通させておく。
また、冷房運転で気液分離しないときのために受液器110に用意されている合流経路17の開閉弁171を閉じておく。合流経路17は、受液器110内と、気液分離器11内の気相が取り出される第1経路121とを結んでいる。
なお、
図4〜
図6では、閉じている弁を黒色で示している。
【0052】
凝縮器4から流れ出た冷媒は、減圧部51により気液二相の中間圧力にまで減圧され、ブリッジ回路16の逆止弁161を通って気液分離器11へと流入する。気液分離器11内の液相は、受液器110を介してバイパス区間15Aへと流入し、バイパス区間15Aの終端に接続された経路15Bを流れる低圧の冷媒の影響によって減圧され、経路15Bを流れる冷媒に合流する。そして、経路15Bを蒸発しながら圧縮機3に向けて流れる。経路15Bは、インタークーラー13の低温経路13Lを含んでいる。
【0053】
気液分離器11において液相と分離された気相は、インタークーラー13の高温経路13Hを流れ、低温経路13Lを流れる冷媒と熱交換されることで凝縮される。そして、ブリッジ回路16の逆止弁163を通過し、減圧部52により減圧されてから蒸発器6へと流入する。
【0054】
(冷房運転)
次に、
図5および
図6を参照し、冷房運転について説明する。
冷房運転時については、冷凍サイクルの向きが暖房運転時とは逆になるため、第1熱交換器4のことを蒸発器4と称し、第2熱交換器6のことを凝縮器6と称する。
これに伴い、減圧部51および減圧部52の各々の機能が暖房運転時とは入れ替わっている。
冷房運転時、減圧部52は、凝縮器6から流れ出た冷媒の圧力を気液二相の状態にまで減少させる第1減圧部に相当し、減圧部51は、液相と気液分離されて第1経路121を流れる冷媒の圧力を蒸発器4の入口の圧力にまで減少させる第2減圧部に相当する。
【0055】
冷房運転時は、蒸発器4を流れる冷媒と熱負荷(室内空気)との温度差が小さいため温度すべりとの関係で着霜が発生する可能性がある場合にだけ、R32の見かけの混合比率を高める処理を行って温度すべりを抑制する。
ここでは、センサ18により検知された室内空気の温度が所定値を下回っている場合に、温度すべりを抑える処理を行い(
図6)、室内空気の温度が所定値以上である場合には、この処理は行わない(
図5)。なお、蒸発器4を流れる冷媒の温度も検知し、その温度と室内空気の検知温度との差に基づいて、温度すべりを抑える処理を行うか否かを判定することもできる。その他にも、適宜な判定基準を用いることができる。
【0056】
まず、
図5を参照し、蒸発器4を流れる冷媒と室内空気との温度差が十分に大きいため、温度すべりを抑える処理を行わない場合について説明する。
この場合は、バイパス区間15Aの開閉弁151を閉じ、受液器110に用意されている合流経路17の開閉弁171を開く。
気液分離器11における液相は、受液器110を介して合流経路17へと流入し、合流経路17から第1経路121へと流出する。つまり、気液分離器11から液相の状態で流出した冷媒が、気液分離器11から気相の状態で流出した冷媒と合流する。
なお、気液分離器11に十分な容量が確保されていれば、受液器110は必ずしも必要でない。
【0057】
凝縮器6の出口から流れ出て、第1減圧部(ここでは減圧部52)により中間圧力まで減圧された冷媒は、ブリッジ回路16の逆止弁164を通過して気液分離器11へと流入する。この気液分離器11において冷媒が液相と気相とに一旦分離されるものの、これらの液相と気相とをその後に合流させている(
図5の20参照)。つまり、気液分離器11におけるR1234yfリッチな液相をバイパスさせる必要がないので、気相と共に蒸発器4へと供給する。合流された冷媒は、インタークーラー13の高温経路13Hを通りながら低温経路13L内の冷媒と熱交換され、ブリッジ回路16の逆止弁162を通り、さらに、第2減圧部(ここでは減圧部51)により減圧されてから、蒸発器4へと流入する。
【0058】
次に、
図6を参照し、温度すべりを抑える処理を行う場合について説明する。
この場合は、暖房運転時(
図4)と同様に、バイパス区間15Aの開閉弁151を開き、受液器110に用意されている合流経路17の開閉弁171を閉じることにより、中間圧力にまで減圧された冷媒を気相と液相とに分離する。
なお、冷房運転時でも常時、温度すべりを抑える処理を行うのであれば、開閉弁151は必要ない。
【0059】
気液分離器11から受液器110を介してバイパス区間15Aへと流入した液相は、経路15Bを流れる低圧冷媒の影響によって減圧され、経路15Bを蒸発しながら圧縮機3に向けて流れる。
気液分離器11において液相と分離されたR32リッチな気相は、経路15Bから低温経路13Lに流入した冷媒と熱交換されることで凝縮される。そして、ブリッジ回路16の逆止弁162を通過し、第2減圧部(減圧部51)により減圧されてから蒸発器4へと流入する。
以上により、冷媒回路2を循環するR32の見かけの混合比率を高めることができるので、温度すべりを抑え、室内空気と冷媒温度との温度差が大きい場合であっても、蒸発器6への着霜を回避することができる。
【0060】
第1実施形態の変形例(
図3)と同様にして、第2実施形態の暖房運転時(
図4)と冷房運転時(
図6)とにおいても、受液器110および弁14を用いてR32リッチな冷媒を第2経路122から冷媒回路2へと放出させる制御が可能である。
【0061】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
本発明における非共沸混合冷媒として、沸点が異なる適宜な冷媒を用いることができる。冷媒回路に封入される混合冷媒において、低GWPである沸点の高い冷媒の混合比率を増やすことにより、GWPを低減することができる。