(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774771
(24)【登録日】2020年10月7日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】全固体二次電池およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20201019BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20201019BHJP
H01M 4/70 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M4/70 A
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-66957(P2016-66957)
(22)【出願日】2016年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-183024(P2017-183024A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河瀬 弘和
【審査官】
結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−231969(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/140565(WO,A1)
【文献】
特開2017−073374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0585
H01M 4/70
H01M 10/0562
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極合材層と、負極合材層と、これら正極合材層と負極合材層との間に配置される固体電解質層と、前記正極合材層の表面に設けられる正極集電体と、前記負極合材層の表面に設けられる負極集電体と、をそれぞれ有する複数の仮電池体を備えるとともに、
互いに向かい合った状態の前記複数の仮電池体の正極集電体同士、又は負極集電体同士を接合している接合材を備え、
前記正極集電体および前記負極集電体は、表面が粗化されたものであり、
前記接合材は、前記粗化された表面に密着していることを特徴とする全固体二次電池。
【請求項2】
正極合材層と、負極合材層と、これら正極合材層と負極合材層との間に配置される固体電解質層と、前記正極合材層の表面に設けられる正極集電体と、前記負極合材層の表面に設けられる負極集電体と、をそれぞれ有する複数の仮電池体を備えるとともに、
互いに向かい合った状態の前記複数の仮電池体の正極集電体と負極集電体とを接合している接合材を備え、
前記正極集電体および前記負極集電体は、表面が粗化されたものであり、
前記接合材は、前記粗化された表面に密着していることを特徴とする全固体二次電池。
【請求項3】
正極合材、固体電解質および負極合材が積層されたものを、正極集電体と負極集電体との間で押圧することによって、複数の仮電池体をそれぞれ形成する工程と、
前記形成された複数の仮電池体の正極集電体同士または負極集電体同士が、接合材を挟んで向き合うように複数の仮電池体を重ねあわせた状態で加圧成型する工程と、を備えることを特徴とする全固体二次電池の製造方法。
【請求項4】
正極合材、固体電解質および負極合材が積層されたものを、正極集電体と負極集電体との間で押圧することによって、複数の仮電池体をそれぞれ形成する工程と、
前記形成された複数の仮電池体の正極集電体および負極集電体が、接合材を挟んで向き合うように複数の仮電池体を重ねあわせた状態で加圧成型する工程と、を備え、
前記正極集電体および負極集電体として、表面が粗化されたものを用い、
前記接合材を、前記加圧成型によって、前記粗化された表面と密着させることを特徴とする全固体二次電池の製造方法。
【請求項5】
正極集電体と、正極合材と、固体電解質と、負極合材と、負極集電体とを積層することによって、複数の積層体をそれぞれ形成する工程と、
前記形成された複数の積層体の正極集電体同士または負極集電体同士が、接合材を挟んで向き合うように複数の積層体を重ねあわせた状態で加圧成型する工程と、を備えることを特徴とする全固体二次電池の製造方法。
【請求項6】
正極集電体と、正極合材と、固体電解質と、負極合材と、負極集電体とを積層することによって、複数の積層体をそれぞれ形成する工程と、
前記形成された複数の積層体の正極集電体および負極集電体が、接合材を挟んで向き合うように複数の積層体を重ねあわせた状態で加圧成型する工程と、を備え、
前記正極集電体および負極集電体として、表面が粗化されたものを用い、
前記接合材を、前記加圧成型によって、前記粗化された表面と密着させることを特徴とする全固体二次電池の製造方法。
【請求項7】
前記正極集電体および負極集電体として、表面が粗化されたものを用い、
前記接合材を、前記加圧成型によって、前記粗化された表面と密着させることを特徴とする請求項3又は5に記載の全固体二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばリチウムイオン伝導性の固体電解質を用いた全固体二次電池およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電池の電解質としてリチウムイオン伝導性の固体電解質を用いた全固体二次電池がある。この全固体二次電池は、正極合材層と、負極合材層と、固体電解質層と、正極集電体と、負極集電体と、を有する。ここで、正極合材層は、正極活物質とリチウムイオン伝導性の固体電解質とからなる。負極合材層は、負極活物質とリチウムイオン伝導性の固体電解質とからなる。固体電解質層は、これら正極合材層と負極合材層との間に配置されている。正極集電体は、金属製であって、正極合材層の表面に設けられている。負極集電体は、金属製であって、負極合材層の表面に設けられている。
【0003】
この全固体二次電池は、例えば、筒状の金型内に粉末状の正極合材層を充填した後、粉末状の固体電解質を充填し、次に粉末状の負極合材層を充填した後、プレスピンなどの押さえ具により高圧力で押圧することによって製造されていた。
【0004】
ところで、上記の製造方法によると、高圧力でプレスが行われるため、正極合材層及び負極合材層(以下、両者をまとめて「電極合材層」と総称することがある。)に内部応力が発生する。さらに、押圧力を解放すると、正極合材と負極合材と正極集電体と負極集電体との延び率の相違に起因する摩擦力が電極合材層に作用する。そのため、電池がその厚み方向に湾曲してしまうこととなる。
【0005】
このような湾曲を防ぐ方法として、正極集電体及び負極集電体(以下、両者をまとめて「電極集電体」と総称することがある。)の両面に、互いに対称に変形する電極合材層を配置して、電池自体が湾曲しないようにしたものがある(例えば、特許文献1)。そして、この電池を例えば乾式により製造する場合には、電極集電体の両面に電極合材層が静電塗布などにより形成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5131686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1の製造方法によると、電極集電体の両面に電極合材層を形成するのに、静電塗布が用いられている。そのため、実際に製造する場合には、一方の表面に電極合材を静電塗布した後、反転させて、他方の表面に電極合材を静電塗布することになる。そして、反転させて他方の表面に電極合材を静電塗布する際に、一方の表面に静電塗布された電極合材が落下するおそれがある。また、このような事態を回避するために、電極集電体を鉛直にしてその両面に電極合材を静電塗布することも考えられるが、その作業が非常に難しくなるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、製造時に生じる電池自体の湾曲を容易に防止し得る全固体二次電池及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の全固体二次電池は、正極合材層と、負極合材層と、これら正極合材層と負極合材層との間に配置される固体電解質層と、前記正極合材層の表面に設けられる正極集電体と、前記負極合材層の表面に設けられる負極集電体と、をそれぞれ有する複数の仮電池体を備えるとともに、互いに向かい合った状態の前記複数の仮電池体の正極集電体同士、又は負極集電体同士を接合している接合材を備
え、前記正極集電体および前記負極集電体は、表面が粗化されたものであり、前記接合材は、前記粗化された表面に密着していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の全固体二次電池によれば、
正極集電体および負極集電体の表面には、粗化処理が施されている。さらに、正極集電体同士、又は負極集電体同士の間に接合材が介在して、複数の仮電池体が接合される。これにより、
接合材が粗化処理された両表面に噛み込み、アンカー効果によって正極集電体同士、又は負極集電体同士が強固に接合されるとともに、仮電池体が湾曲しようとする力を打ち消して、湾曲のない全固体二次電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る全固体二次電池の製造方法を説明する断面図である。
【
図2】同全固体二次電池に作用する応力を説明する断面図である。
【
図3】同全固体二次電池に作用する応力を説明する断面図である。
【
図4】同全固体二次電池の製造方法を説明する断面図である。
【
図5】同全固体二次電池の製造方法を説明する断面図である。
【
図6】本発明の実施の形態1及び2に係る全固体二次電池の断面図である。
【
図7】本発明の実施の形態1に係る全固体二次電池の製造方法の他の例を示す断面図である。
【
図8】凹凸部の一例であるピットを説明する図である。
【
図10】凹凸部の一例である山谷を説明する図である。
【
図11】本発明の実施の形態2に係る全固体二次電池の製造方法を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態に係る全固体二次電池及びその製造方法を、図面に基づき説明する。
【0013】
(仮電池体の形成工程)
まず、
図1に示すように、厚み20μm程度の薄い板状の金属製の正極集電体1と、この正極集電体1の上面に配置される正極合材層2と、この正極合材層2の上面に配置されるリチウムイオン伝導性の固体電解質層3と、この固体電解質層3の上面に配置される負極合材層4と、この負極合材層4の上面に配置される厚み18μm程度の薄い板状の金属製の負極集電体5とを積層して、積層体を形成する。
【0014】
正極合材層2、固体電解質3、負極合材層4としては粉末(粉体)のものが用いられる。なお、正極集電体1および負極集電体5についてはハッチングが省略されている。他の図面においても同様である。正極合材層2、固体電解質3、及び負極合材層4の各層の具体的な形成方法は、静電スクリーン法、静電スプレー法、その他粉体を堆積させる方法ならば、どのような方法であってもよい。
【0015】
その後、所要の力(例えば、0.1〜100MPaの力)でこの積層体を押圧(仮押圧)することによって仮電池体7を形成する。ここで、正極集電体1の両面(両方の表面)及び負極集電体5の両面には、粗化処理が施された表面(以下、凹凸部とも表現することがある)が形成されており、この押圧により、内側表面(正極合材層2又は負極合材層4と接する表面)の凹凸部に粉末状の正極合材及び負極合材が噛み込んだ状態(喰い込んだ状態とも表現できる)となる。また、このときの押圧力は仮電池体7が変形しない程度の大きさであるため、仮電池体7は略平坦な形状である。
【0016】
(加圧成型工程)
次に、
図2に示すように、一対の仮電池体7、7をそれぞれの正極集電体1、1同士が互いに向かい合うように重ねあわせ、所定の成型圧力(例えば、100MPa〜1000MPaの圧力)で加圧成型する。この工程は、例えば、一対の平板ブロックの間に一対の仮電池体7、7を挟んで押圧することによって行われる。
【0017】
ここで、1個の仮電池体7に対して加圧成型を行うと、仮電池体7、7は大きく湾曲することとなる。1個の仮電池体7が湾曲するメカニズムについて、
図3〜5を参照しながら説明する。
図3の破線部分は加圧成型工程の前の仮電池体7を示し、実線部分は加圧成型中の仮電池体7を示す。
図3に示すように、仮電池体7に成型圧力pを加えて圧縮すると、鉛直方向の内部応力a及び水平方向の内部応力bが発生する。このとき、仮電池体7は平板ブロックから摩擦力cを受けることとなる。加圧成型中において、鉛直方向の内部応力aは成型圧力pと相殺し、水平方向の内部応力bは摩擦力cと相殺する。
【0018】
図4の破線部分は加圧成型工程中の仮電池体7、実線部分は成型圧力p(
図3参照)が解除された後の仮電池体7を示す。
図3に示す成型圧力pが解除されると、同時に摩擦力cも解除されるため、
図4に示すように、鉛直方向の内部応力a及び水平方向の内部応力bが開放される。そのため、仮電池体7は水平方向及び鉛直方向に延びることとなる。
【0019】
ここで、水平方向の延び率は、各層の材料や電極合材層の粒径、厚さに依存する。負極合材層4の延び率が正極合材層2の延び率を上回る場合、成型圧力pの解除とともに水平方向の内部応力bが開放されることによって、
図5に示すように、仮電池体7は負極合材層4が外側に膨らむように円弧形状に変形する。言い換えれば、仮電池体7の正極集電体1側には凹状部8が形成されたことになる。
【0020】
一方で、本実施の形態に係る全固体二次電池10の製造方法では、
図2に示す加圧成型工程のときに、正極集電体1、1同士または負極集電体5、5同士の間に接合材9を介在させた状態で、仮電池体7、7同士を重ね合わせて加圧成型することとしている。ここで、接合材9は、塑性変形可能なものであって、例えば樹脂シートである。
【0021】
この加圧成型工程によって接合材9が塑性変形して正極集電体1の外側表面(正極合材層2が形成される表面と反対側の表面)の凹凸部に噛み込み、アンカー効果によって正極集電体1、1同士が強固に接合される。すなわち、接合材9が正極集電体1の粗化された表面に密着することによって、接合材9を介して正極集電体1、1同士が接合一体化し、仮電池体7、7が湾曲しようとする力を打ち消して、
図6に示すように、湾曲の無い全固体二次電池10を得ることができる。
【0022】
この全固体二次電池10は、例えば、円形または正方形のもので、具体的な大きさ(例えば、直径)としては、30〜300mm程度である。全固体二次電池10の厚さは例えば0.6〜5.0mm程度の薄さである。
【0023】
ところで、上記実施の形態においては、正極集電体1、1同士が向き合うようにして、仮電池体7、7を接合する態様を述べたが、これに限られない。正極集電体1、1同士ではなく、負極集電体5、5同士を向き合うようにしてもよい。
【0024】
また、上記実施の形態においては、2個の仮電池7、7で構成された全固体二次電池10について説明したが、本発明はこの態様に限られない。2個に限られず、3個以上の仮電池体7で全固体二次電池が構成される態様であってもよい。3個以上の場合、向かい合う正極集電体1、1同士の間のみならず、負極集電体5、5同士の間にも接合材9が介在する。接合材9が負極集電体5の粗化された表面に密着することによって、負極集電体5、5同士が互いに接合される。
【0025】
さらに、
図7に示すように、正極集電体1と負極集電体5とが向かい合うようにして仮電池体7、7同士を接合してもよい。この場合、加圧成型工程において、一対の仮電池体7、7が同じ方向に湾曲しやすくなるため、全固体二次電池の湾曲を防止できないのではないかとも考えられる。しかしながら、仮電池体7、7を加圧成型すると、接合材9と、接合材9に接触する電極集電体1、5との間で摩擦力が発生する。この摩擦力は、電極集電体1、5の粗化された表面に接合材9が噛み込むことによって発生する。成型圧力を解除すると、仮電池体7、7は内部応力が開放されることによって湾曲しようとするが、この力は上記の摩擦力によって打ち消される。これにより、湾曲の無い全固体二次電池を得ることが可能となる。
【0026】
ここで、正極合材層2は、正極活物質にリチウムイオン伝導性の無機固体電解質が混合されたものである。正極活物質としては、例えば酸化物系のコバルト酸リチウム(LiCoO
2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO
2)、マンガン酸リチウム(LiMnO
2)などが用いられる。また無機固体電解質としては、例えば硫化物系のLi
2S(80mol%)−P
2S
5(20mol%)が用いられる。これら正極活物質と固体電解質との混合比率は95対5〜30対70の範囲とされ、例えば70対30である。
【0027】
負極合材層4は、負極活物質にリチウムイオン伝導性の無機固体電解質が混合されたものである。負極活物質としては、例えば天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維、樹脂焼成炭素などの炭素材料、シリコン、錫、リチウムなどが用いられ、また固体電解質としては、上記正極合材層2の場合と同様のLi
2S(80mol%)−P
2S
5(20mol%)が用いられる。これら負極活物質と固体電解質との混合比率は95対5〜30対70の範囲とされ、例えば60対40である。
【0028】
固体電解質層3には、上述したように、硫化物系の無機固体電解質であるLi
2S−P
2S
5(例えば、組成比が80対20のもの)が用いられる。また、1000MPaでの圧縮時の歪が40%以上となるものが用いられる。
【0029】
正極集電体1としては、例えば、厚さ20μmのエッチドアルミニウム(表面電解処理アルミ箔ともいう)が用いられる。このエッチドアルミニウムは、その両面(両方の表面)に粗化処理が施されたもので、具体的には、
図8に示すように、エッチングにより拡面処理が施されて多数のピット(細い穴)dが形成されたものである。なお、エッチドアルミニウムの粗化処理としては、ピットdの代わりに、
図9に示すように内部が膨らむように窪んだ穴eであってもよく、また
図10に示す鋭角状の山谷fが形成されたものでもよい。また、正極集電体1の厚さは、例えば5〜100μmの範囲であるのに対し、ピットd、穴e、山谷fなどの深さhは、2〜20μmとすることができ、4〜10μmとすることが好ましい。前述した粗化処理が施された表面は、まとめて凹凸部と称されている。
【0030】
負極集電体5としては、両面が粗化処理された、つまり凹凸部が形成された厚さ18μm程度の薄い板状の銅が用いられる。具体的には、負極集電体5の表面に銅粒子を析出させる粗化処理が施される。この板状の銅を表面電解処理銅箔とも言う。負極集電体5の厚さは、例えば、5〜100μmの範囲である。この場合の凹凸部の深さについては、2〜20μm(負極集電体5の板厚が20μm以下の場合は、その板厚以下)とすることができ、4〜10μmとすることが好ましい。
【0031】
接合材9としては、塑性変形可能な樹脂シートに限定されず、流体の接着剤やハンダ等でも良い。これらの接着剤やハンダは、電極集電体の凹凸部に流れ込んだ状態で硬化することによって、アンカー効果による接合力が得られる。そのため、接着剤やハンダが電極集電体と密着することによって、電極集電体同士を接合一体化することが可能である。
【0032】
ところで、電極集電体1、5は、両面が粗化処理されたものに限定されない。電極合材層2、4や接合材9と接触する表面のみが粗化処理される態様であってもよい。すなわち、電極合材層2、4及び接合材9と接触する表面については、電極合材層2、4の粉末や接合材9が電極集電体1、5の凹凸部に噛み込んでアンカー効果による接合力を得るために、粗化処理が施される必要がある。一方で、電極合材層2、4及び接合材9のいずれにも接触しない表面は粗化される必要はない。
【0033】
さらに、電極集電体1、5は、接合材9と接触する表面が粗化されたものである態様を述べたが、これに限られない。粗化処理が施されない場合、アンカー効果による接合力は期待できないが、他の接合法、例えば、静電気力や減圧吸着、あるいは化学的接合法等によって電極集電体同士を接合させることができる。静電気力は、接合材9を摩擦帯電させることによって得られる。減圧吸着は、例えば、表面に微細な孔が形成された接合材9を加圧することで、その微細な孔から接合材9の外部へ空気が抜けだすことにより、吸盤の原理を利用して得られる。化学的接合法としては、ファンデルワールス力や共有結合などが挙げられる。また、これらの接合法を組み合わせて接合してもよい。接合材9と接触する電極集電体1、5の表面に粗化処理が施されない場合、接合材9は、例えば両面粘着テープであって、その粘着力によって電極集電体1、5と密着する。
【0034】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係る全固体二次電池の製造方法について、
図11を参照しながら説明する。以下、実施の形態1と同様の部分については、説明を省略し、異なる部分について主に説明する。
【0035】
実施の形態1に係る全固体二次電池の製造方法は、
図1及び2に示すように、積層体を仮押圧して仮電池体7、7をそれぞれ形成した後に、接合材9を介して正極集電体1同士が向かい合う状態で一対の仮電池体7、7をさらに加圧成型することによって、
図6に示す全固体二次電池10を得る態様である。
【0036】
これに対して、実施の形態2に係る全固体二次電池の製造方法は、
図11に示すように、積層体6を形成した後に仮押圧することなく、接合材9を介して正極集電体1、1同士を向かい合わせ、その状態で一対の積層体6、6を加圧成型して、
図6に示す全固体二次電池10を得る態様である。すなわち、積層体6を押圧して仮電池7、7を個別に形成せずに、1対の積層体6、6を重ねた状態で押圧することによって、一対の仮電池7、7を形成すると同時に全固体二次電池10を得ることとなる。
【0037】
実施の形態1では、一方の仮電池体7の仮押圧と、他方の仮電池体7の仮押圧と、これらの仮電池体7、7を重ねた状態での押圧(加圧成型)とで3回の押圧が必要となる。一方で、本実施の形態に係る全固体二次電池の製造方法によれば、1回の押圧(加圧成型)によって全固体二次電池10を得ることが可能となる。そのため、実施の形態1に係る全固体二次電池の製造方法と比較して、より生産性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 正極集電体
2 正極合材層
3 固体電解質層
4 負極合材層
5 負極集電体
6 積層体
7 仮電池体
8 凹状部
9 接合材
10 全固体二次電池