(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被着体に貼り付けた粘着ラベルの剥離方法であって、加熱剥離型粘着層を介して被着体に貼り付けた加熱剥離型粘着ラベルを、該被着体に貼り付けた前記加熱剥離型粘着ラベルを覆う空間で囲い、該空間内に80℃以上の水蒸気を噴霧し、該空間内の温度を前記加熱剥離型粘着ラベルの剥離温度以上に加熱して前記被着体から前記加熱剥離型粘着ラベルを剥離するラベル剥離方法であって、
前記空間が、前記水蒸気を噴霧するためのノズルの先端部に形成され、前記被着体に貼り付けた加熱剥離型粘着ラベル全体を覆うカバー部材で前記加熱剥離型粘着ラベルを覆い囲って、前記加熱剥離型粘着ラベルにカールを発生させることで、前記被着体から前記加熱剥離型粘着ラベルを剥離する、剥離方法。
被着体に貼り付けた粘着ラベルの剥離装置であって、水蒸気を生成するためのボイラーと、少なくとも加熱剥離型粘着層を介して被着体に貼り付けた加熱剥離型粘着ラベルを囲う空間と、前記ボイラーと前記空間をつなぐ配管とを少なくとも備え、該空間内に80℃以上の水蒸気を噴霧し、該空間内の温度を前記加熱剥離型粘着ラベルの剥離温度以上に加熱するラベル剥離装置であって、
前記配管の先端に取り付けられた先端ノズルをさらに有し、該先端ノズルに形成されたカバー部材で前記加熱剥離型粘着ラベルを覆い囲う空間を形成する、ラベル剥離装置。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス瓶、プラスチックボトルなどの容器や、プラスチックコンテナなどの運搬用の容器には、日付や内容表示、バーコードなど様々な情報を表示したラベルが使用されている。このようなラベルの中には、それら容器を再利用するために容器の使用後に容器から剥離されるものであって、容器の回収後にラベルの剥離を容易に行なうことができるようにされているものがある。
従来採用されている容器からラベルを剥離するための手段として、被着体に貼り付けたラベルに高圧の水を吹き付けて剥がす高圧水洗浄を用いるものがある。
しかしながら、高圧水による剥離は、剥離時に大量の水を使用する必要があるばかりでなく、汚れた水の処理を行う必要があるため、ランニングコストや環境的に問題がある。
【0003】
そこで、ラベル自身に剥がれやすくする細工を施すことが検討されている。たとえば、熱をかけることで粘着力がなくなり被着体から剥がれやすくする加熱剥離型粘着体を使用した、加熱剥離型粘着ラベルがある。
加熱剥離型粘着ラベルを加熱する手段としては、赤外線加熱、熱風加熱、ホットプレート加熱などが知られている。
【0004】
例えば、特開平11−302610号公報(特許文献1)には、粘着シートを構成する少なくとも1つの層に赤外線吸収性を付与することにより、赤外線加熱により熱膨張性微小球を含む熱膨張性層を速やかに膨張させて、加熱剥離型粘着シートを被着体から容易に剥離させる剥離方法が記載されている。
また、特開平11−302614号公報(特許文献2)には、熱膨張性層に含まれる熱膨張性微小球を強磁性体で被覆されているものとすることにより、高周波誘電加熱により熱膨張性層を速やかに膨張させて、加熱剥離型粘着シートを被着体から容易に剥離させる剥離方法が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これら従来の方法には、剥離に時間がかかってしまうという問題がある一方、短時間で剥離を行おうとすると、被着体側にダメージが残ってしまうという課題があった。
例えば、赤外線加熱を用いる剥離方法では、高速で剥離をしようと出力を上げると、ラベル貼り付け部分以外の被着体(例えば樹脂部分)も融解してしまう恐れがある。また、この剥離方法には、サーマル紙のような白色基材では熱効率のよい加熱ができない場合がある、という問題点もある。
また、高周波誘導加熱を用いる剥離方法には、加熱の加減が難しいという問題点がある。また、粘着層中に強磁性体のような金属材料を含有させる必要があるため、金属探知の観点から食品関係のラベルには使用できないという問題があった。
【0007】
上述のような従来技術の問題点に鑑み、本発明者らは、加熱剥離型粘着層を介して被着体に貼り付けた加熱剥離型粘着ラベルを、少なくとも加熱剥離型粘着ラベルを覆う空間で囲い、空間内に80℃以上の水蒸気を噴霧し、空間内の温度を加熱剥離型粘着ラベルの剥離温度以上に加熱することにより、被着体にダメージをほとんど与えることなく、安全に且つ粘着力を高速に低下でき、容易に被着体からラベルを剥離できることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、ランニングコストが安価で実用的であるとともに高性能な加熱剥離型粘着ラベルの剥離方法及び剥離装置を提供することを、その目的とするものである。
本発明は、被着体に貼り付けた粘着ラベルの剥離方法であって、加熱剥離型粘着層を介して被着体に貼り付けた加熱剥離型粘着ラベルを、少なくとも加熱剥離型粘着ラベルを覆う空間で囲い、空間内に80℃以上の水蒸気を噴霧し、空間内の温度を加熱剥離型粘着ラベルの剥離温度以上に加熱して被着体から加熱剥離型粘着ラベルを剥離するラベル剥離方法である。
本発明の一つの実施形態では、空間が、水蒸気を噴霧するためのノズルの先端部であり、先端部で少なくとも加熱剥離型粘着ラベルを囲って、被着体から加熱剥離型粘着ラベルを剥離する。
本発明の別の一つの実施形態では、空間が、両端に開口が設けられた、断面の高さあるいは幅に比べて軸方向に細長いトンネル状の空間であり、空間内に被着体を通すことで被着体から加熱剥離型粘着ラベルを剥離する。
【0009】
本発明はまた、被着体に貼り付けた粘着ラベルの剥離装置であって、水蒸気を生成するためのボイラーと、少なくとも加熱剥離型粘着層を介して被着体に貼り付けた加熱剥離型粘着ラベルを囲う空間と、ボイラーと空間をつなぐ配管とを少なくとも備え、空間内に80℃以上の水蒸気を噴霧し、空間内の温度を加熱剥離型粘着ラベルの剥離温度以上に加熱するラベル剥離装置である。
本発明の剥離装置の一つの実施形態では、配管の先端に取り付けられた先端ノズルをさらに有し、先端ノズルが少なくとも前記加熱剥離型粘着ラベルを覆う空間である。
本発明の剥離装置の別の一つの実施形態では、配管の先端に直接又は先端ノズルを介して取り付けられた、両端に開口が設けられた、断面の高さあるいは幅に比べて軸方向に細長いトンネル状の空間をさらに有する。
この場合、開口の少なくとも一方に、カーテン状の仕切りを設けるのが好ましい。開口にカーテン状の仕切りを設けることで、空間内の温度を高速に加熱することができ、また、空間内の温度・湿度を安定に保つことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、加熱剥離型粘着ラベルを80℃以上の水蒸気で加熱した空間内に接触させることで、被着体にダメージを与えることなく、加熱剥離型粘着層の剥離開始温度以上の温度に高速に加熱することができ、且つ粘着力を高速に低下させて被着体から剥離することができる。
特に、加熱剥離型粘着層が粘着層の内部に加熱により膨張する未膨張の熱膨張性フィラーを内包する加熱剥離型粘着ラベルであれば、空間を加熱することで熱エネルギーが熱膨張性フィラーの膨張に効率的に使用され、熱膨張性フィラーの膨張開始温度以上の温度に高速で加熱することができ、開放系で吹き付けた場合に比べ著しく剥離時間が短縮できる。
【0011】
水蒸気を用いた加熱は、他の加熱方式と比べて優位な理由として、水蒸気の持つ優れた熱伝導性が挙げられる。そのため水蒸気の温度が他の加熱方式の熱源に比べて低い状態でも高速に他の物質に熱を伝えることができ、且つ長時間吹き付けた場合でもラベルや被着体が水蒸気の温度以上の温度にならないため、高速かつ低ダメージでの加熱剥離が可能となる。
このことは特に被着体がプラスチック等、熱に弱い物質の場合に優位に働く。一方。被着体がガラスや金属等、耐熱性のある物質であっても、水蒸気の高い熱伝導性はラベル剥離作業の時間短縮等に十分利用価値があり、高速で加熱は行いたいが、ある一定の温度以上にはしたくない場面では非常に有効である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照して、本発明のラベル剥離方法の一態様について説明する。
図1を参照して、
図1(a)は、被着体2の表面に加熱剥離型粘着ラベル1を貼り付けた状態を示す。加熱剥離型粘着ラベル1は、例示的に、基材11と、基材11の表側に感熱記録層13を備え、基材11の裏側に加熱剥離型粘着層12であって、例えば感圧粘着層15の内部に加熱により膨張する未膨張の熱膨張性フィラー14を内包するようなものを備えている。
図1(b)に示すように、本発明では、被着体2の表面に貼り付けた加熱剥離型粘着ラベル1を空間3aで囲い、空間3aに水蒸気4を噴霧する。
図1(c)に示すように、空間3a内に水蒸気4を噴霧することにより、空間3a内の温度と湿度が高まり、加熱剥離型粘着ラベル1を剥離開始温度以上に加熱することにより加熱剥離型粘着層12と被着体2との密着力が低下し、かつ基材11と加熱剥離型粘着層12の熱膨張の違いからカールが発生することで、被着体2から加熱剥離型粘着ラベル1を容易に剥離、除去することができる。
図1(b)及び
図1(c)では、例えば、被着体2に貼り付けられた加熱剥離型粘着ラベル1を水蒸気を噴霧するためのノズルの先端部で形成された空間3aで囲われている場合を例示している。
【0014】
図2は、両端に開口が設けられた、断面の高さあるいは幅に比べて軸方向に細長いトンネル状の空間3bを例示している。空間3bに水蒸気4を噴霧して空間3b内を加熱し、表面に加熱剥離型粘着ラベル1を貼り付けた被着体2の全体をこの空間3bに通すことで被着体2から加熱剥離型粘着ラベル1を剥離することができる。
【0015】
本発明のラベル剥離方法に使用できる粘着ラベルとしては、粘着ラベルと被着体との貼り付けに加熱剥離型の粘着層を用いた加熱剥離型粘着ラベルを使用できる。加熱剥離型粘着ラベルの一般的な構成は、基材の裏面に加熱剥離型粘着層を有し、この加熱剥離型粘着層を介して被着体に貼り付けるものである。加熱剥離型粘着ラベルの表面には、絵柄や文字などからなる印刷層、感熱記録層、熱転写受像層などを設けることができる。加熱剥離型粘着ラベルは、商業用、工業用の製品ラベル、商品ラベルなどのほか、シールやステッカー、シート状やテープ状などの形態のものであってもよい。
加熱剥離型粘着ラベルの基材としては、ラベルとして機能するものであれば特に限定されるものではなく、任意の物を使用することができるが、例えば合成紙等の紙基材、ポリエチレンテレフタレートなどプラスチックのフィルムやシートなどの基材が挙げられる。特に、合成紙等の紙基材を用いた場合は、基材と加熱剥離型粘着層の熱膨張の違いからカールが発生しやすくなり、被着体から加熱剥離型粘着ラベルを容易に剥離、除去することができ好ましい。
加熱剥離型粘着層としては、加熱により粘着力が低下するものであれば、その原理は特に制限されないが、例えば粘着層としてポリアクリルエステルの側鎖の結晶化を利用したものや、熱膨張性フィラーを粘着層に混ぜたものなどを使用することが可能である。またこれらの加熱剥離型粘着層を単独、又は2種以上組み合わせて使用することができる。特に、熱膨張性フィラーを粘着層の内部に分散させた加熱剥離型粘着層は、水蒸気の優れた熱伝導性により熱エネルギーが粘着層の内部に分散させた熱膨張性フィラーの膨張に効率的に作用することができ好適に用いることができる。
【0016】
本発明に好適に用いられる加熱剥離型粘着層としては、加熱剥離型粘着層が感圧粘着層の内部に加熱により膨張する未膨張の熱膨張性フィラーを内包する加熱剥離型粘着ラベルを用いることができる。このような加熱剥離型粘着ラベルの例としては、熱膨張性フィラーが、熱可塑性高分子からなる外殻と、該外殻内に膨張成分を内包した熱膨張性マイクロカプセルを用いたものがある。例えば、熱膨張成分が液状の炭化水素であり、未膨張の熱膨張性フィラーの膨張開始温度が60℃〜260℃である熱膨張性マイクロカプセルを、好適に使用することができる。
加熱剥離型粘着ラベルの加熱剥離型粘着層が上記のような未膨張の熱膨張性フィラーを内包するものである場合、加熱剥離型粘着ラベルを水蒸気で加熱する際、加熱剥離型粘着ラベルを空間で囲い、空間内に水蒸気を噴霧し、空間内の温度・湿度を高めることで、加熱剥離型粘着層の未膨張の熱膨張性フィラーの膨張開始温度以上の温度に加熱剥離型粘着層を加熱することにより、被着体からラベルを剥離することができる。
【0017】
本発明は、被着体に貼り付けた粘着ラベルの剥離方法であって、加熱剥離型粘着層を介して被着体に貼り付けた加熱剥離型粘着ラベルを、少なくとも加熱剥離型粘着ラベルを覆う空間で囲い、空間内に80℃以上の水蒸気を噴霧し、空間内の温度を加熱剥離型粘着ラベルの剥離温度以上に加熱して被着体からラベルを剥離するラベル剥離方法である。
本発明の剥離方法は80℃以上の水蒸気を使用するものであり、具体的には80℃〜100℃の水蒸気を好適に使用することができるが、水蒸気を標準気圧下で100℃以上に加熱した過熱水蒸気を、本発明の水蒸気として使用することもできる。過熱水蒸気とは一般に、所定の圧力において飽和温度以上の蒸気温度をもつ蒸気のことを指す。過熱水蒸気の発生方法としては、特に制限はないが、例えば水をボイラーで水蒸気とし、その後熱線や高周波誘導加熱により水蒸気を過熱して過熱水蒸気を生成する過熱水蒸気発生装置を用いることにより、過熱水蒸気を発生させることができる。
【0018】
本発明において、加熱剥離型粘着ラベルを水蒸気で加熱する際、加熱剥離型粘着ラベルを空間で囲い、空間内に水蒸気を噴霧し、空間内の温度・湿度を高めることにより、加熱剥離型粘着層の剥離開始温度以上の温度に加熱剥離型粘着層を加熱する。
ラベルを囲う空間内の温度は加熱剥離型粘着ラベルの剥離温度以上の温度になれば良く、かつ被着体にダメージがない温度以下にするとよい。また、ラベルを囲う空間内の湿度は高ければ高いほどラベルに効率よく熱を伝えられるため良く、囲う空間の大きさに対し十分な蒸気量を吹き入れることで湿度を高めるとよい。
【0019】
本発明に好適に用いられる被着体としては、プラスチック製の容器、例えば、プラスチックボトルなどの容器や、プラスチックコンテナなどの運搬用の容器を使用することができる。このようなプラスチック製の被着体に貼り付けた加熱剥離型粘着ラベルを、水蒸気を噴霧した空間内で剥離する場合、空間内に噴霧する水蒸気の温度は80℃以上、空間内の温度は80℃〜120℃であるとよい。温度が80℃より低すぎると加熱するエネルギーが弱くなり、剥離自体が困難になるか、剥離までに時間がかかってしまう。一方、空間内の温度が120℃より高すぎると貼りつけたプラスチック製の被着体が熱に弱いため、被着体が融解する恐れがある。空間内に噴霧する水蒸気の温度は空間内の温度を80℃〜120℃にできるよう、空間の体積や吹き入れ方によって適宜選択すればよい。
本発明では、被着体として、ガラス製の容器、例えば、化粧品用や飲料用などのガラス容器、窓ガラスなどの建材用や自動車用のガラス部材を使用することができる。このようなガラス製の被着体に貼り付けた加熱剥離型粘着ラベルを水蒸気を噴霧した空間内で剥離する場合、空間内に噴霧する水蒸気の温度は80℃以上、空間内の温度は、80℃〜500℃であるようにするとよい。ガラス製品の融点は一般に600〜700℃であるため、高温の過熱水蒸気を用いることで、より短時間でラベルを剥離することができる。
【0020】
本発明において好ましい空間としては、水蒸気を噴霧するためのノズルの先端部である。ノズルの先端部で少なくとも加熱剥離型粘着ラベルを覆うように囲ってできた空間内に、水蒸気を噴霧し、空間内の温度・湿度を高めることにより、被着体からラベルを剥離するとよい。ノズル先端部の形状、寸法は、被着体に貼り付けられた加熱剥離型粘着ラベルを覆い囲うことができ、空間内に吹き付ける水蒸気の温度でラベルが効率よく剥離できるような大きさであればよい。
本発明の好ましい別の空間としては、両端に開口が設けられ、断面の高さあるいは幅に比べて軸方向に細長いトンネル状の空間である。トンネル状の空間内に水蒸気を噴霧し、空間内の温度・湿度を高め、一方の開口部から他方の開口部へと、この空間内に加熱剥離型粘着ラベルが貼り付けられた被着体を通すことで被着体からラベルを剥離するとよい。
開口部およびトンネル状の空間の形状、寸法は、被着体がトンネル内を通過でき、トンネル内に吹き付ける水蒸気の温度でラベルが効率よく剥離できるような大きさであればよい。
【0021】
次に、図面を参照して、本発明のラベル剥離装置の一態様について説明する。
図3を参照して、本発明のラベル剥離装置は、水蒸気を生成するボイラー51と、ボイラー51に水蒸気配管52で連結された、水蒸気を過熱して吹き出し口から過熱された水蒸気を放出するための過熱装置53と、過熱装置53の吹き出し口に水蒸気配管54で連結された空間55を備えている。
本発明において100℃以下の水蒸気を用いる場合は、ボイラー51で水蒸気を生成させてよく、この場合は、過熱装置53は必ずしも必要ではない。また過熱水蒸気を用いる場合は、ボイラー51で水蒸気を生成させ、水蒸気を加熱装置53でさらに過熱して過熱水蒸気を生成し、吹き出し口から過熱水蒸気を放出すればよい。
水蒸気の吐出圧力は、高いほど空間内を素早く加熱することができ、加熱剥離型粘着ラベル1を被着体2から剥離するまでの時間が短縮できるため好ましい。ボイラー51等から供給する水蒸気量は、高速剥離する観点から、2kg/h以上であるのが好ましく、さらに好ましくは10kg/h以上である。過熱装置53を用いた場合の水蒸気の供給量も、これと同じか、これよりも多いのが望ましい。水蒸気の供給量が多い場合、空間を大きくしても、空間内の温度・湿度を安定に保つことができる。
【0022】
本発明の剥離装置の一つの実施形態によると、ボイラー51に直接又は間接につながれた水蒸気配管52、54の先端に、例えば
図1(b)に3aとして示したような先端ノズルが取り付けられ、この先端ノズルが少なくとも加熱剥離型粘着ラベルを覆う空間となり、この空間内に水蒸気を噴霧し、空間内の温度を加熱剥離型粘着ラベルの剥離温度以上に加熱するラベル剥離装置とするとよい。
ノズル先端部の形状、寸法は、被着体に貼り付けられた加熱剥離型粘着ラベルを覆い囲うことができ、空間内に吹き付ける水蒸気の温度でラベルが効率よく剥離できるような大きさであればよい。
【0023】
本発明の剥離装置の別の一つの実施形態によると、ボイラー51に直接又は間接につながれた水蒸気配管52、54の先端に直接又は先端ノズルを介して、両端に開口が設けられた、断面の高さあるいは幅に比べて軸方向に細長いトンネル状の空間が取り付けられ、この空間内に水蒸気を噴霧し、この空間内の温度を加熱剥離型粘着ラベルの剥離温度以上に加熱するラベル剥離装置とするとよい。
この場合において、
図4に例示するように、加熱剥離型粘着ラベル1を貼り付けた被着体2をベルトコンベアに載置し、トンネル状の空間55の一方の開口部からトンネル状の空間55内へ搬送し、トンネル状の空間55内で加熱剥離型粘着ラベル1を被着体2から剥離し、他方の開口部から搬出させる構成とするとよい。開口部およびトンネル状の空間の形状、寸法は、被着体がトンネル状の空間内を通過でき、トンネル状の空間内に吹き付ける水蒸気の温度でラベルが効率よく剥離できるような大きさであればよい。
このようなトンネル状の空間とする構成により、被着体2から加熱剥離型ラベル1を剥離する作業を自動化することが可能となる。また、トンネル状の空間を用いる場合は、トンネル状の空間の開口部の少なくとも一方に、カーテン状の仕切りを設けることにより、空間内の温度を高速に加熱することができ、また、空間内の温度・湿度を安定に保つことができ好ましい。
【実施例】
【0024】
以下に実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
75μmの上質紙に15μmのアクリル系粘着層を設けた粘着紙を準備した。次に、水系アクリルエマルジョン粘着剤に膨張開始温度が75℃〜90℃の熱膨張性フィラーを固形分質量比率で5:1で混合した加熱剥離型粘着剤を用いて、粘着紙の粘着層側に厚み50μmの加熱剥離型粘着層を塗布形成した。これにより剥離開始温度が90±5℃の加熱剥離型粘着ラベルを得た。
本実施例において、膨張開始温度とは、スクリュー瓶に熱膨張性フィラーを入れ、恒温槽に10分間静置した際、熱膨張性フィラーの膨張が確認された恒温槽の温度とした。
また、剥離開始温度とは、ホットプレートに加熱剥離型粘着ラベルを貼り付け、ホットプレートの温度を上げながら加熱したとき、加熱剥離型粘着ラベルがホットプレートから剥離することが確認された温度とした。
次にこの加熱剥離型粘着ラベルを8cm×10cm角に切り、被着体としてポリプロピレン板(PP板)に貼り付け評価サンプルを作製した。
各種加熱方式を比較するため、過熱水蒸気発生装置は新熱工業(株)製ASH45を、水蒸気発生装置はケルヒャー製SC4.001Cを、赤外線ヒーターは(株)ハイベック製HYM-8Aを、恒温槽はヤマト科学(株)製DNE600を使用した。温度の測定は熱電対とキーエンス製GR-3500を使用した。
【0025】
(実施例1)
水蒸気発生装置を用い、被着体に貼り付けた加熱剥離型粘着ラベル全体を覆うような先端ノズルに該当するカバー部材を介して、カバー部材の内部に98℃の水蒸気を吹き入れ、カバー部材内部の温度を93℃とした。10秒間ラベルに水蒸気を接触させた。
【0026】
(実施例2)
水蒸気発生装置の先に過熱水蒸気発生装置を取り付けて、250℃の過熱水蒸気を生成し、被着体に貼り付けた加熱剥離型粘着ラベル全体を覆うようなカバー部材の内部に250℃の過熱水蒸気を吹き入れて、カバー部材内部の温度を98℃とした。10秒間ラベルに水蒸気を接触させた。
【0027】
(実施例3)
水蒸気発生装置を用い、開口部の直径10cm、長さ30cmの円柱状のトンネル内部に98℃の水蒸気を吹き入れ、トンネル内の温度を90℃とした。トンネルの入り口と出口部分は水蒸気が簡単に逃げないようポリエステルフィルムのカーテンを設けた。カーテンはサンプルを出し入れできるように短冊上に切れ込みを入れたものを使用した。ラベルを貼りつけたPP板を水蒸気が満たされたトンネル内に10秒間置いた。
【0028】
(実施例4)
水蒸気発生装置の先に過熱水蒸気発生装置を取り付け250℃の過熱水蒸気を生成し、開口部の直径10cm、長さ30cmの円柱状のトンネル内部に250℃の過熱水蒸気を吹き入れ、トンネル内の温度を95℃とした。トンネルの入り口と出口部分は水蒸気が簡単に逃げないようポリエステルフィルムのカーテンを設けた。カーテンはサンプルを出し入れできるように短冊上に切れ込みを入れたものを使用した。ラベルを貼りつけたPP板を水蒸気が満たされたトンネル内に10秒間置いた。
【0029】
(比較例1)
水蒸気発生装置を用い、評価サンプルの表面の温度が90℃となるように空間で囲わずに水蒸気を吹き付けた。0.35MPaの蒸気吐出圧力で、30秒間吹き付けた。
【0030】
(比較例2)
赤外線ヒーターを用い、評価サンプルの表面の温度が150℃となるように評価用サンプルの正面側から90秒間赤外線加熱を行った。
【0031】
(比較例3)
恒温槽を用い、ラベルを貼りつけたPP板を90℃にした槽内に入れて30秒間静置後、取りだした。
【0032】
実施例及び比較例の方法により、加熱剥離型粘着ラベルがPP板から剥離しているか、PP板に見た目の変質が見られるかを観察した。
得られた結果を、表1に示す。
【0033】
【表1】