(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、製品として実際に提供される本発明の粘着シートのサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
【0014】
また、本明細書における粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称され得るものが包含される。また、ここに開示される粘着シートは、ロール状であってもよく、枚葉状であってもよい。あるいは、さらに種々の形状に加工された形態のシートであってもよい。
【0015】
図1は一実施形態に係る粘着シートを模式的に示す上面図であり、
図2は
図1のII−II線における断面図である。図面を参照しながら、この実施形態の粘着シートについて説明する。
【0016】
図1,2に示すように、この実施形態に係る粘着シート1は、フィルム状基材10と粘着剤層20との積層構造を有する。フィルム状基材10は、粘着剤層20を支持している。粘着シート1において、粘着剤層20側の表面20Aは接着面1Aを構成している。粘着シート1の他方の表面(フィルム状基材10側の表面)1Bは非接着面である。
【0017】
粘着剤層20の表面20Aには、コート層30が部分的に配置されている。換言すると、粘着剤層表面20Aは、コート層30によって部分的に覆われている。コート層30は、粘着シート1の被着体への貼り合わせ時に、粘着シート1と被着体との間で空気等が通るパスとなり、空気抜け性を付与する。
【0018】
コート層30は、粘着シート1の接着面1Aにおいて所定のパターン(コート層パターン)40を呈している。この実施形態では、コート層30は格子状パターン40を呈している。コート層30の格子状パターン40は、具体的には、粘着シート1の接着面1Aにおいて第1ストライプ状パターン部42と、第1ストライプ状パターン部42と交差するように配置された第2ストライプ状パターン部44とからなる。
【0019】
第1ストライプ状パターン部42は、接着面1Aの一端から他端に向かって直線状に延びる複数の部分(線状に延びる部分。本実施形態では帯状部分)50から構成されており、これら複数の線状に延びる部分50は、その幅方向にて間隔をおいて平行に配置されている。この実施形態では、線状に延びる部分50は、その長手方向が粘着シート1の幅方向の端部と交差する角度で配置されており、それぞれ接着面1Aの両端に到達している。
【0020】
第2ストライプ状パターン部44も、第1ストライプ状パターン部42と同様に、接着面1Aの一端から他端に向かって直線状に延びる複数の部分(線状に延びる部分。本実施形態では帯状部分)50から構成されており、これら複数の線状に延びる部分50は、その幅方向にて間隔をおいて平行に配置されている。この実施形態では、線状に延びる部分50は、その長手方向が粘着シート1の幅方向の端部と交差する角度で配置されており、それぞれ接着面1Aの両端に到達している。なお、この実施形態では、線状に延びる部分50は直線状の帯状部分であるが、これに限定されず、各線状に延びる部分は曲線状に延びるものであってもよい。その場合、複数の線状に延びる部分が形成し得るストライプ状パターンは波状等であり得る。また、線状に延びる部分の本数は、粘着シートの接着面の形状やサイズ等との関係で決定され得るため、特定の本数に制限されるものではない。
【0021】
また、この実施形態では、第1ストライプ状パターン部42と第2ストライプ状パターン部44とは、第1ストライプ状パターン部42の線状に延びる部分50と第2ストライプ状パターン部44の線状に延びる部分50とがほぼ直交するように交差している。したがって、第1ストライプ状パターン部42の線状に延びる部分50と第2ストライプ状パターン部44の線状に延びる部分50とは、部分的に重なっている。
【0022】
なお、本明細書において格子状パターンとは、典型的には、互いに交差する2つのストライプ状パターン部を含むパターンを指し、本実施形態のような斜方格子だけでなく、正方格子、三角格子等の各種の格子形状を包含する。線状に延びる部分が直線状の場合、2つのストライプ状パターン部の交差角度(鋭角側)は、10度〜90度(好ましく45度〜90度、典型的には60度〜90度)の範囲内で設定され得る。また、ここに開示される格子状パターンには、屈曲を繰り返す複数の線状に延びる部分から構成されるストライプ状パターン部を含むパターン、例えば六角格子のようなパターンも包含されるものとする。そのようなパターンは、隣りあう線状に延びる部分同士が一部で接続したものであり得る。空気抜け性の観点から、コート層は、1または2以上のストライプ状パターン部を有することが好ましい。コート層パターン(典型的には格子状パターン)は、第3のストライプ状パターン部を有するものであってもよい。
【0023】
コート層30の各線状に延びる部分50の幅(W1)は、本実施形態では約200μmであるが、これに限定されない。好ましい一態様では、コート層の各線状に延びる部分の幅(W1)は、0.1〜2mmの範囲内で設定される。これにより、粘着力と空気抜け性とをバランスよく両立することができる。上記線状に延びる部分の幅(W1)は、空気抜け性向上の観点から、より好ましくは0.2mm以上、さらに好ましくは0.3mm以上、特に好ましくは0.5mm以上である。他の好ましい一態様では、コート層の各線状に延びる部分の幅(W1)は凡そ10μm以上である。空気抜け性の観点から、コート層の各線状に延びる部分の幅(W1)は、好ましくは50μm以上、より好ましくは100μm以上、さらに好ましくは150μm以上である。また、粘着力や外観等の観点からは、上記線状に延びる部分の幅(W1)は、より好ましくは1.2mm以下、さらに好ましくは1.0mm以下、特に好ましくは0.7mm以下、さらに特に好ましくは0.5mm以下、最も好ましくは0.4mm以下である。第1ストライプ状パターン部の線状に延びる部分の幅(W1)と、第2ストライプ状パターン部の線状に延びる部分の幅(W1)とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0024】
好ましい一態様では、空気抜け性の観点から、線状に延びる部分は、その厚さTに対する幅Wの比(W/T)が凡そ50以上である。上記比(W/T)は、より好ましくは凡そ80以上であり、さらに好ましくは100以上(典型的には120以上)である。また、空気抜け性と接着性とのバランスの観点から、上記比(W/T)は、凡そ500以下(例えば200以下、典型的には165以下)であることが好ましい。
【0025】
コート層30の第1ストライプ状パターン部42を構成する線状に延びる部分50の間隔(W2)は、本実施形態では約1.8mmであり、第2ストライプ状パターン部44を構成する線状に延びる部分50の間隔(W2)も同様であるが、これに限定されない。第1ストライプ状パターン部を構成する線状に延びる部分の間隔(W2)は1.0〜10mmの範囲内に設定することが好ましい。これにより、粘着力と空気抜け性とがバランスよく両立される傾向が高まる。ここで線状に延びる部分の間隔(W2)とは、粘着シートの接着面において隣りあう2つの線状に延びる部分の間に存在する部分の幅を指す。上記線状に延びる部分の間隔(W2)は、粘着力向上等の観点から、より好ましくは1.5mm以上、さらに好ましくは2.5mm以上である。上記線状に延びる部分の間隔(W2)は、8mm以下(例えば5mm以下、典型的には3mm以下)程度であってもよい。第2ストライプ状パターン部を構成する線状に延びる部分の間隔(W2)も、上記第1ストライプ状パターン部を構成する線状に延びる部分の間隔(W2)として例示した範囲内から好ましく設定される。上記間隔(W2)は等間隔であることが好ましい。なお、第1ストライプ状パターン部を構成する線状に延びる部分の間隔(W2)と第2ストライプ状パターン部を構成する線状に延びる部分の間隔(W2)は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0026】
線状に延びる部分のピッチは、粘着力と空気抜け性とをバランスよく両立する観点から、1〜20mmの範囲内とすることが好ましい。上記線状に延びる部分のピッチは、より好ましくは1.5mm以上、さらに好ましくは2mm以上(例えば2.5mm以上)であり、より好ましくは15mm以下(例えば12mm以下)であり、さらに好ましくは5mm以下である。なお、上記ピッチは、上記線状に延びる部分の幅方向の中心線間の距離(間隔)を指すものとする。
【0027】
上記実施形態の構成は、粘着剤層20の表面20Aに着目すると、粘着剤層20の表面20Aには、コート層30が配置されたコート層配置部70と、コート層30が配置されておらず粘着剤層20が外表面に露出したコート層非配置部72と、を有すると表現することができる。この粘着剤層表面20Aにおけるコート層配置部70の構成(形状、配置状態、配置関係、サイズ等)は、粘着シート1の接着面1Aにおけるコート層30の構成と同じである。したがって、コート層配置部70は、コート層パターン40と同じ構成のパターン(格子状パターン)を有し、第1ストライプ状パターン部42と同じ構成の第1ストライプ状パターン部を有し、第2ストライプ状パターン部44と同じ構成の第2ストライプ状パターン部を有する。また、コート層配置部70の第1ストライプ状パターン部は、第1ストライプ状パターン部42が有する線状に延びる部分50と同じ構成の線状に延びる部分を有し、コート層配置部70の第2ストライプ状パターン部は、コート層30の第2ストライプ状パターン部44が有する線状に延びる部分50と同じ構成の線状に延びる部分を有する。したがって、それらコート層配置部70およびコート層非配置部72の構成に関する説明はここでは省略する。
【0028】
粘着シート1は、使用前においては、
図3に示すように、接着面1A側が剥離面となっている剥離ライナー100によって保護された構成を有する剥離ライナー付き粘着シート1の形態であり得る。あるいはまた、フィルム状基材10の背面(粘着剤層20側の表面とは反対側の面)が剥離面となっており、粘着シート1を巻回することにより該背面に粘着剤層20が当接して、粘着剤層20がフィルム状基材10の背面で保護された構成であってもよい。このような片面のみが接着性を有する片面接着性の粘着シート(片面粘着シート)は、例えば、接着面とは反対側の表面に装飾性、表面保護性等の特性が要求される場合や、塗料代替シートとして用いられる場合に好適である。
【0029】
また、ここに開示される粘着シートが、
図4に示す両面接着タイプの基材付き粘着シート(両面粘着シート)の場合には、粘着シート2は、フィルム状基材10の各面(いずれも非剥離性)に粘着剤層21,22がそれぞれ設けられ、それらの粘着剤層21,22が、少なくとも該粘着剤層側が剥離面となっている剥離ライナー101,102によってそれぞれ保護された構成を有するものであり得る。なお、この粘着シート2では、粘着剤層21の表面にのみコート層30が部分的に配置されており、粘着剤層22の表面にはコート層は設けられていないが、コート層30は粘着剤層21,22の各表面に部分的に設けられていてもよい。また、特に図示しないが、両面粘着シートは、フィルム状基材の各面(いずれも非剥離性)にそれぞれ粘着剤層が設けられ、それらのうち一方の粘着剤層が、両面が剥離面となっている剥離ライナーにより保護された構成を有していてもよい。この種の粘着シートは、該粘着シートを巻回して他方の粘着剤層を剥離ライナーの裏面に当接させることにより、2つの粘着剤層が1つの剥離ライナーによって保護された構成となる。さらに、ここに開示される粘着シートは、粘着剤層のみからなる基材レスの両面粘着シートの形態であってもよい。その場合、コート層は粘着剤層の片面に設けられていてもよく、両面に設けられていてもよい。上記両面粘着シートは、例えば接合固定用途等に好ましく利用される。
【0030】
<粘着シートの特性等>
ここに開示される粘着シートは、その粘着剤層表面におけるコート層非配置部の面積割合(粘着シートの接着面における粘着剤層露出領域の面積割合でもあり得る。)が50%よりも大きいことが適当であり、好ましくは70%以上である。これにより、良好な粘着力を確保することができる。上記面積割合は、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上である。換言すると、粘着シートの接着面におけるコート層の面積割合は50%未満であることが適当であり、好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下、さらに好ましくは20%以下である。良好な空気抜け性を得る観点からは、上記粘着剤層表面におけるコート層非配置部の面積割合は、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下である。換言すると、粘着シートの接着面におけるコート層の面積割合は、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上である。
【0031】
好ましい一態様では、粘着シートの接着面(典型的には粘着剤層の露出面とコート層表面とから構成される)は、1N/20mm以上の180度剥離強度を示す。上記180度剥離強度は、好ましくは2N/20mm以上(例えば5N/20mm以上)である。なお、上記180度剥離強度は、下記の方法で測定することができる。具体的には、粘着シートを幅20mm、長さ100mmのサイズにカットした測定サンプルにつき、23℃、50%RHの環境下にて、上記測定サンプルの接着面をステンレス鋼板(SUS304BA板)の表面に、2kgのローラを1往復させて圧着する。これを同環境下に30分放置した後、万能引張圧縮試験機を使用して、JIS Z 0237:2000に準じて、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で、剥離強度(N/20mm)を測定する。
【0032】
好ましい一態様では、粘着シートの接着面(典型的には粘着剤層の露出面とコート層表面とから構成される)のライナー剥離力(剥離ライナーに対する剥離強度)は1N/50mm未満(例えば0.5N/50mm以下、典型的には0.4N/50mm以下)であり得る。ライナー剥離力が所定値以下に制限された粘着シートは剥離ライナーの除去がしやすいため、貼り付け時の作業性に優れる。また、上記ライナー剥離力が小さすぎると作業性が低下する場合があることを考慮して、粘着シートの接着面のライナー剥離力は、凡そ0.01N/50mm以上であることが好ましい。上記ライナー剥離力は、23℃、50%RHの環境下にて、JIS Z 0237に準じて、剥離角度180度、引張速度300mm/分の条件で測定される。
【0033】
好ましい一態様では、粘着シートは透明(半透明を包含する。)である。このような粘着シートでは、粘着シートと被着体との間に気泡等が混入すると、粘着シート越しに当該気泡等が視認されて外観性が損なわれやすい。ここに開示される技術によると、粘着シートと被着体との間における気泡等の発生が防止されるので、透明な粘着シートにおいて優れた外観性が得られる。なお、粘着シートが透明であることは、粘着シートの構成要素(粘着剤層、コート層等)が透明であることを意味する。本明細書において、粘着シートやその構成要素(粘着剤層、コート層等)が透明であるとは、粘着シートやその構成要素が50%以上の全光線透過率を示すことを意味し、具体的には80%以上(例えば90%以上、典型的には95%以上)の全光線透過率を示すものであり得る。また、粘着シートのヘイズ値は10%以下(例えば5%以下)であることが好ましい。上記全光線透過率およびヘイズ値は、JIS K 7136:2000に準拠して、市販の透過率計(例えば、商品名「HAZEMETER HM−150」、村上色彩技術研究所社製)を使用して測定することができる。後述のフィルム状基材の全光線透過率およびヘイズ値も同様の方法で測定される。
【0034】
ここに開示される粘着シート(粘着剤層と基材とを含むが、剥離ライナーは含まない。)の総厚さは特に限定されず、凡そ2μm以上とすることが適当であり、好ましくは5μm以上(例えば10μm以上、典型的には30μm以上)である。また上記総厚さは、凡そ1000μm以下とすることが適当であり、好ましくは500μm以下(例えば300μm以下、典型的には100μm以下)である。好ましい一態様では、粘着シートの総厚さは、50μm以下であり、より好ましくは30μm以下(例えば15μm以下、典型的には5μm以下)である。ここに開示される技術によると、上記のように総厚さが制限された粘着シートであっても、良好な空気抜け性が得られる。また、総厚さが制限された粘着シートは、該粘着シートが適用される製品の小型化、軽量化、省資源化等の点で有利なものとなり得る。
【0035】
ここに開示される粘着シートの厚み公差は50%以下であることが好ましい。厚み公差の少ない粘着シートによると、より優れた粘着特性が発揮され得る。上記厚み公差は、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下、特に好ましくは20%以下である。粘着シートの厚み公差は、下記の方法で測定される。すなわち、測定対象の粘着シートにつき、ダイヤルゲージを用いて、コート層配置部10点と、コート層非配置部10点につき、厚さを測定し、そのなかの最大値T
M(μm)と標準厚さT
S(μm)とを、式:(T
M−T
S)/T
S×100;に代入し、得られた値を厚み公差(%)とする。コート層が格子状パターンを有する場合は、コート層の格子の交点10点と、格子状パターンのコート層に囲まれた矩形状の粘着剤層露出部分の中心10点につき、厚さを測定することが好ましい。
【0036】
<剥離ライナー>
ここに開示される剥離ライナー(剥離フィルム)は、剥離面(粘着シートの接着面(コート層形成接着面)に接する側の面)の算術平均粗さが0.1μm以上である。かかる特徴を有する剥離ライナーは、ここに開示される剥離ライナー付き粘着シートに使用される。剥離ライナー剥離面の算術平均粗さを0.1μm以上とすることによって、上記剥離面に対向するコート層表面に上記粗さで表わされる凹凸が転写される。これにより、粘着シートの接着面を被着体に貼り合わせたときに、コート層と被着体との間に空隙が形成されて、コート層表面における空気の通りがよくなり、より優れた空気抜け性が実現される。上記算術平均粗さは、好ましくは0.2μm以上であり、例えば1μm(具体的には1.0μm)よりも大きい。剥離ライナー剥離面の形状は、接着面を構成する粘着剤層表面にも転写され得るため、粘着力等の粘着特性の観点から、上記算術平均粗さは5μm以下程度とすることが適当である。上記算術平均粗さは、剥離ライナー(典型的には剥離ライナー基材)の表面に、エンボスロール加工やサンドブラスト加工等の処理を施すことにより調節することができる。例えば、サンドブラスト加工や、サンドブラストを施したロールによるロール加工を採用することにより、剥離ライナーの剥離面に不規則な凹凸が形成される。あるいはまた、剥離ライナー基材の表面に粗化処理層(例えば、粒子含有インクから形成され得る。)を形成した後、その上から剥離処理を行うことによっても、剥離ライナーの剥離面の算術平均粗さを0.1μm以上に調節することができる。なお、本明細書において算術平均粗さは、一般的な表面粗さ測定装置(例えば、Veeco社製の非接触3次元表面形状測定装置、型式「Wyko NT−3300」)を用いて測定することができる。後述の実施例でも同様の方法が採用される。
【0037】
剥離ライナーとしては、慣用の剥離紙等を使用することができ、特に限定されない。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂フィルムや紙等のライナー基材の表面に剥離処理層を有する剥離ライナーや、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)やポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等)の低接着性材料からなる剥離ライナー等を用いることができる。ここに開示される剥離ライナーの好適例として、PET等のポリエステル製フィルムの少なくとも一方の表面に剥離処理層を有する剥離ライナーや、両面にプラスチックフィルム(例えばPE樹脂)がラミネートされた紙(例えば上質紙)が挙げられる。上記剥離処理層は、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により上記ライナー基材を表面処理して形成されたものであり得る。
【0038】
また、ここに開示される粘着シートの作製に用いられる剥離ライナーは、
図5に示すように、剥離面120Aを有する剥離性支持体120を備えるコート層付きの剥離ライナー110であり得る。剥離性支持体120は、ライナー基材の少なくとも一方の表面に剥離処理層を有するものであってもよく、低接着性材料からなる支持体であってもよい。この剥離性支持体120の剥離面120A上に、粘着シートに転写可能なコート層30が設けられる。つまり、コート層30は、粘着剤の粘着力等によって剥離面120Aから分離可能な状態で剥離面120A上に配置されている。このような、転写可能なコート層30を表面に有する剥離ライナー110を用いることにより、ここに開示される粘着シートが好ましく作製される。剥離性支持体の剥離面上に設けられるコート層の構成(形状、配置状態、配置関係、サイズ、パターン等)は、上述した粘着シートの接着面におけるコート層の構成と基本的に同じであるので、説明は省略する。なお、ライナー基材の両面に剥離処理層を有する場合、剥離作業性等の観点から、例えばコート層を形成する予定の剥離面の剥離力を反対側の剥離面よりも低く設定するなど、各剥離面の剥離力を異ならせてもよい。上記剥離力は、前述のライナー剥離力と同様の方法で測定される。
【0039】
剥離ライナーの厚さ(総厚さ)は特に限定されないが、剥離作業性や取扱い性、強度等の観点から、10μm以上(例えば15μm以上)程度とすることが好ましく、また500μm以下(例えば100μm以下)程度とすることが好ましい。
【0040】
<粘着剤層>
ここに開示される粘着剤層は、典型的には、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する材料(粘着剤)から構成された層をいう。ここでいう粘着剤は、「C. A. Dahlquist, “Adhesion : Fundamental and Practice”, McLaren & Sons, (1966) P. 143」に定義されているとおり、一般的に、複素引張弾性率E
*(1Hz)<10
7dyne/cm
2を満たす性質を有する材料(典型的には、25℃において上記性質を有する材料)である。
【0041】
ここに開示される粘着剤層は、粘着剤の分野において公知のアクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、フッ素系ポリマー等の1種または2種以上をベースポリマーとして含むものであり得る。粘着特性(例えば剥離強度や耐反撥性)や分子設計等の観点から、アクリル系ポリマーを好ましく採用し得る。換言すると、粘着剤層は、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含むアクリル系粘着剤層であることが好ましい。なお、粘着剤の「ベースポリマー」とは、該粘着剤に含まれるポリマー成分の主成分(典型的には、50重量%を超えて含まれる成分)をいう。
【0042】
上記アクリル系ポリマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含み、該主モノマーと共重合性を有する副モノマーをさらに含み得るモノマー原料の重合物が好ましい。ここで主モノマーとは、上記モノマー原料におけるモノマー組成の50重量%超を占める成分をいう。
【0043】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば下記式(1)で表される化合物を好ましく使用することができる。
CH
2=C(R
1)COOR
2 (1)
ここで、上記式(1)中のR
1は水素原子またはメチル基である。また、R
2は炭素原子数1〜20の鎖状アルキル基(以下、このような炭素原子数の範囲を「C
1−20」と表すことがある。)である。粘着剤の貯蔵弾性率等の観点から、R
2がC
1−12(例えばC
2−10、典型的にはC
4−8)の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。上記R
2がC
1−20の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましいアルキル(メタ)アクリレートとして、n−ブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートが挙げられる。
【0044】
主モノマーであるアルキル(メタ)アクリレートと共重合性を有する副モノマーは、アクリル系ポリマーに架橋点を導入したり、アクリル系ポリマーの凝集力を高めたりするために役立ち得る。副モノマーとして、例えばカルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、窒素原子含有環を有するモノマー等の官能基含有モノマーの1種または2種以上を使用することができる。副モノマーはまた、酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマー、スチレン等の芳香族ビニル化合物、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー等であり得る。例えば、凝集力向上の観点から、上記副モノマーとしてカルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマーが共重合されたアクリル系ポリマーが好ましい。カルボキシ基含有モノマーの好適例としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。水酸基含有モノマーの好適例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレートや4−ヒドロキシブチルアクリレートが挙げられる。
【0045】
上記副モノマーの量は、アクリル系ポリマーの全モノマー成分中の0.5重量%以上とすることが適当であり、好ましくは1重量%以上である。また、副モノマーの量は、全モノマー成分中の30重量%以下が適当であり、好ましくは10重量%以下(例えば5重量%以下)である。アクリル系ポリマーにカルボキシ基含有モノマーが共重合されている場合、粘着力と凝集力との両立の観点から、カルボキシ基含有モノマーの含有量は、アクリル系ポリマーの合成に使用する全モノマー成分中、凡そ0.1重量%以上(例えば0.2重量%以上、典型的には0.5重量%以上)であることが好ましく、また凡そ10重量%以下(例えば8重量%以下、典型的には5重量%以下)であることが好ましい。アクリル系ポリマーに水酸基含有モノマーが共重合されている場合、粘着力と凝集力との両立の観点から、水酸基含有モノマーの含有量は、アクリル系ポリマーの合成に使用する全モノマー成分中、凡そ0.001重量%以上(例えば0.01重量%以上、典型的には0.02重量%以上)であることが好ましく、また凡そ10重量%以下(例えば5重量%以下、典型的には2重量%以下)であることが好ましい。また、上記副モノマーとして酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマーが共重合されている場合には、上記ビニルエステル系モノマーの含有量は、アクリル系ポリマーの合成に使用する全モノマー成分中、凡そ30重量%以下(典型的には10重量%以下)とすることが好ましく、また例えば0.01重量%以上(典型的には0.1重量%以上)であり得る。
【0046】
アクリル系ポリマーを得る方法は特に限定されず、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、懸濁重合法等の、アクリル系ポリマーの合成手法として知られている各種の重合方法を適宜採用することができる。UV等を照射して行う活性エネルギー線照射重合を採用してもよい。例えば、適当な重合溶媒(トルエン、酢酸エチル、水等)中にモノマー混合物を溶解または分散させ、アゾ系重合開始剤や過酸化物系開始剤等の重合開始剤を用いて重合操作を行うことにより、所望のアクリル系ポリマーを得ることができる。
【0047】
ここに開示されるアクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、粘着力と凝集力とをバランスよく両立する観点から、好ましくは10×10
4以上、より好ましくは20×10
4以上(例えば30×10
4以上)であり、また、好ましくは100×10
4以下、より好ましくは70×10
4以下(例えば50×10
4以下)である。なお、この明細書においてMwとは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により得られた標準ポリスチレン換算の値をいう。
【0048】
粘着剤組成物は、凝集力を高める観点から架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤の種類は特に制限されず、従来公知の架橋剤の1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。架橋剤の好適例としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤が挙げられる。架橋剤の使用量は特に制限されず、例えば、アクリル系ポリマー100重量部に対して凡そ10重量部以下(好ましくは凡そ5重量部以下)とすることが適当であり、また、例えば凡そ0.005重量部以上(好ましくは凡そ0.01重量部以上)であり得る。
【0049】
ここに開示される粘着剤層は、粘着付与剤を含む組成であり得る。粘着付与剤としては、特に制限されないが、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂等の各種粘着付与樹脂を用いることができる。このような粘着付与樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
粘着付与樹脂の軟化点(軟化温度)は、凡そ60℃以上(好ましくは凡そ80℃以上、典型的には100℃以上)であることが好ましい。これにより、粘着力により優れた粘着シートが実現され得る。粘着付与樹脂の軟化点の上限は特に制限されず、凡そ180℃以下(例えば凡そ140℃以下)とすることができる。なお、ここでいう粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K5902:2006およびJIS K2207:2006のいずれかに規定する軟化点試験方法(環球法)によって測定された値として定義される。
【0051】
粘着付与剤の使用量は特に制限されず、目的とする粘着性能(粘着力等)に応じて適宜設定することができる。例えば、固形分基準で、ベースポリマー(好適にはアクリル系ポリマー)100重量部に対して、粘着付与剤を凡そ10重量部以上(より好ましくは20重量部以上、さらに好ましくは30重量部以上)の割合で使用することが好ましい。また粘着付与剤の使用量は、固形分基準で、ベースポリマー100重量部に対して、凡そ100重量部以下(より好ましくは80重量部以下、さらに好ましくは60重量部以下)であることが好ましい。
【0052】
上記粘着剤組成物は、必要に応じて、レベリング剤、架橋助剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の、粘着剤組成物の分野において一般的な各種の添加剤を含有するものであり得る。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用すればよい。
【0053】
ここに開示される粘着剤層は、水系、溶剤型、ホットメルト型、活性エネルギー線硬化型等の粘着剤組成物から形成された粘着剤層であり得る。水系粘着剤組成物とは、水を主成分とする溶媒(水系溶媒)中に粘着剤(粘着剤層形成成分)を含む形態の粘着剤組成物のことをいい、典型的には、水分散型粘着剤組成物(粘着剤の少なくとも一部が水に分散した形態の組成物)等と称されるものが含まれる。また、溶剤型粘着剤組成物とは、有機溶媒中に粘着剤を含む形態の粘着剤組成物のことをいう。環境負荷低減の観点からは水系粘着剤組成物が好ましく、粘着特性等の観点からは溶剤型粘着剤組成物が好ましく用いられる。
【0054】
ここに開示される粘着剤層は、従来公知の方法によって形成することができる。例えば、剥離性を有する表面(剥離面)に粘着剤組成物を付与して乾燥させることにより該表面上に粘着剤層を形成し、その粘着剤層を基材に転写する方法(転写法)を好ましく採用することができる。あるいは、基材に粘着剤組成物を直接付与(典型的には塗布)して乾燥させることにより粘着剤層を形成する方法(直接法)を採用することもできる。上記剥離面としては、剥離ライナーの表面や、剥離処理された基材背面等を利用し得る。
【0055】
粘着剤組成物の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、コンマコーター、ディップロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の、公知ないし慣用のコーターを用いて行うことができる。あるいは、含浸やカーテンコート法等により粘着剤組成物を塗布してもよい。
架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、粘着剤組成物の乾燥は加熱下で行うことが好ましい。乾燥温度は、例えば40〜150℃程度とすることができ、通常は60〜130℃程度とすることが好ましい。粘着剤組成物を乾燥させた後、さらに、粘着剤層内における成分移行の調整、架橋反応の進行、基材や粘着剤層内に存在し得る歪の緩和等を目的としてエージングを行ってもよい。
【0056】
ここに開示される粘着剤層の厚さは特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。通常は、乾燥効率等の生産性や接着特性等の観点から、0.5μm以上程度とすることが適当であり、2μm以上(例えば5μm以上、典型的には10μm以上)程度とすることが好ましく、また200μm以下(例えば100μm以下、典型的には50μm以下)程度とすることが好ましい。好ましい一態様では、粘着剤層の厚さは、20μm以下であり、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは7μm以下(例えば5μm以下)である。ここに開示される技術によると、上記のように粘着剤層の厚さが制限された構成であっても、良好な空気抜け性が得られる。また、粘着剤層の厚さを制限することは、粘着シートの薄膜化、小型化、軽量化、省資源化等の点で有利である。ここに開示される技術が、基材の両面に粘着剤層を備える両面粘着シートの形態で実施される場合、各粘着剤層の厚さは同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0057】
<コート層>
粘着剤層表面を部分的に覆うコート層は、空気抜け性を付与し得るものであればよく、その限りにおいて特に制限はない。コート層材料の好適例としては樹脂材料が挙げられる。外観性の観点から、透明または半透明の樹脂材料から形成されたコート層が好ましい。
【0058】
コート層を構成し得る樹脂材料としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、尿素メラミン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリシラザン系樹脂、フッ素系樹脂、フェノキシ樹脂、メタクリル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリル−ウレタン系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、セルロース類、ポリアセタール等が挙げられる。これらの樹脂は、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、二液混合型樹脂等の各種タイプの樹脂から選択される1種または2種以上の樹脂であり得る。
【0059】
ここに開示されるコート層は、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、架橋剤、滑剤、着色剤(顔料、染料等)、帯電防止剤、流動性調整剤(チクソトロピー剤、増粘剤等)、造膜助剤等の各種添加剤を、必要に応じて含んでよい。
【0060】
コート層は、典型的には非粘着性または弱粘着性である。これにより、良好な空気抜け性が好ましく実現される。ここで、コート層が非粘着性または弱粘着性であるとは、コート層の180度剥離強度が3N/25mm未満(典型的には1N/25mm未満、粘着力が低すぎて測定不可能な場合を包含する。)であることをいう。コート層の180度剥離強度は、具体的には下記の方法で測定される。すなわち、粘着剤層表面の全面にコート層を配置した粘着シートを幅25mm、長さ100mmのサイズにカットした測定サンプルにつき、23℃、50%RHの環境下にて、上記測定サンプルのコート層表面をステンレス鋼板(SUS304BA板)の表面に、2kgのローラを1往復させて圧着し(接着しない場合には、この時点で非粘着性とみなされる。)、これを同環境下に30分間放置した後、万能引張圧縮試験機を使用して、JIS Z 0237:2000に準じて、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で、剥離強度(N/25mm)を測定する。
【0061】
典型的な一態様では、コート層表面の算術平均粗さは0.1μm以上であり得る。このように構成することで、粘着シートの接着面を被着体に貼り合わせたときに、コート層表面における空気の通りがよくなり、より優れた空気抜け性が実現される。上記算術平均粗さは、好ましくは0.2μm以上であり、例えば1μmよりも大きい。上記算術平均粗さの上限は特に制限されず、例えば5μm以下程度とすることが適当である。
【0062】
粘着剤層表面にコート層を配置する方法は特に限定されないが、典型的には、次のような方法が採用される。具体的には、コート層形成用組成物を、必要に応じて適当な溶媒に溶解または分散する等して調製する。次いで、公知または慣用の各種の印刷処理方法のうち適当な方法を採用して、当該組成物を剥離性支持体(「コート層転写用フィルム」ともいう。典型的には剥離ライナー)の剥離面に付与して硬化させる。そして、コート層が形成された剥離性支持体表面を粘着剤層表面に当接させてコート層を粘着剤層表面に転写する。このようにして、粘着剤層表面にコート層を部分的に配置することができる。例えば、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、凸版印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷等の方法を採用することにより、格子状パターン等の所望のコート層パターンを好ましく形成することができる。空気抜け性の観点から、グラビア印刷がより好ましい。あるいは、上記のようにしてコート層が形成された剥離面上に、該コート層を覆うように粘着剤層をさらに形成することによっても、上記と同様の構成が得られる。基材付き粘着シートの場合、形成された粘着剤層は、その後フィルム状基材の表面に転写される。当業者であれば、上記のような方法を採用して、本技術分野における技術常識に基づき、剥離性支持体の剥離面に対する濡れ性を考慮してコート層材料を選択し、コート層形成用組成物の粘度を適切な範囲に調節し、さらに例えば適当な印刷手段を選択することによって、ここに開示されるコート層を形成することができる。
【0063】
コート層の厚さは、所望の空気抜け性が得られるよう設計すればよく特に限定されないが、粘着シート接着面の平滑性や粘着剤層上への積層性の観点から、コート層の厚さは、粘着剤層の厚さと同程度か、粘着剤層の厚さよりも薄いことが好ましい。好ましい一態様では、粘着剤層の厚さT
Aに対するコート層の厚さT
Cの比(T
C/T
A)が0.75以下であり、より好ましくは0.70以下、さらに好ましくは0.5以下(例えば0.4以下)である。例えば、粘着剤層の厚さが1μm以上(好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上)であって、かつ上記比(T
C/T
A)を満足する場合に、より良好な平滑性が得られる。他の一態様では、コート層の厚さは、空気抜け性と外観性とを両立する観点から、粘着剤層の厚さの半分以下(例えば1/3以下、典型的には1/5以下)とすることが好ましい。
【0064】
具体的なコート層の厚さは、空気抜け性や生産性等の観点から、0.1μm以上(例えば0.5μm以上、典型的には1μm以上)とすることが好ましい。また、粘着シート接着面の平滑性や積層性、外観性の観点から、コート層の厚さは、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは4μm以下(例えば4μm未満、典型的には3μm以下)、特に好ましくは3μm未満(例えば2μm以下、典型的には2μm未満)である。ここに開示される技術によると、コート層が上記のような薄層であっても、良好な空気抜け性が得られる。また、上記のような薄厚のコート層を有する粘着シートは、薄厚化が要求される用途(典型的には携帯電子機器用途)に特に好ましい。なお、コート層の厚さは、粘着シートの断面をSEM(走査型電子顕微鏡)またはTEM(透過型電子顕微鏡)で観察することにより把握することができる。
【0065】
<フィルム状基材>
ここに開示される粘着シートがフィルム状基材を備える場合、フィルム状基材としては、例えば、樹脂フィルム、紙、布、ゴムフィルム、発泡体フィルム、金属箔、これらの複合体や積層体等を用いることができる。なかでも、貼り付け性や外観性の観点から、樹脂フィルム層を含むことが好ましい。樹脂フィルム層を含むことは、寸法安定性、厚さ精度、加工性、引張強度等の観点からも有利である。樹脂フィルムの例としては、PE、PP、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂フィルム;PET、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂フィルム;塩化ビニル系樹脂フィルム;酢酸ビニル系樹脂フィルム;ポリイミド系樹脂フィルム;ポリアミド系樹脂フィルム;フッ素系樹脂フィルム;セロハン;等が挙げられる。好適例としては、PE、PP、PETから形成された樹脂フィルムが挙げられる。樹脂フィルムのなかでは、ポリエステルフィルムがより好ましく、そのなかでもPETフィルムがさらに好ましい。フィルム状基材は、単層構造であってもよく、2層または3層以上の多層構造を有してもよい。
【0066】
好ましい一態様では、フィルム状基材は、発泡体フィルムを備える基材(発泡体含有基材)である。これによって、粘着シートに衝撃吸収機能が付与される。ここで発泡体フィルムとは、気泡(気泡構造)を有する部分を備えたフィルム状構造体をいう。発泡体含有基材は、発泡体フィルムから構成された単層構造体であってもよく、2層以上の多層構造のうちの少なくとも1層が発泡体フィルム(発泡体層)で構成された多層構造体であってもよい。発泡体含有基材の構成例としては、発泡体フィルム(発泡体層)と非発泡体フィルム(非発泡体層)とが積層された複合基材が挙げられる。非発泡体フィルム(非発泡体層)とは、発泡体とするための意図的な処理(例えば気泡導入処理)を行っていないフィルム状構造体をいい、気泡構造を実質的に有しないフィルムをいう。非発泡体フィルムの典型例としては、発泡倍率が1.1倍未満(例えば1.05倍未満、典型的には1.01倍未満)の樹脂フィルム(例えばPET等のポリエステル系樹脂フィルム)が挙げられる。フィルム状基材が2層以上の発泡体層を含む場合、それらの発泡体層の材質や構造は、同一であってもよく異なってもよい。また、発泡体フィルムが発泡体層を含む多層構造を有する場合、各層の間には層間密着性向上の観点から接着層が配置されていてもよい。
【0067】
上記発泡体フィルムの平均気泡径は特に限定されないが、通常は10μm以上であることが適当であり、好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上である。平均気泡径を10μm以上とすることにより、衝撃吸収性が向上する傾向がある。また上記平均気泡径は、通常は200μm以下であることが適当であり、好ましくは180μm以下であり、さらに好ましくは150μm以下である。平均気泡径を200μm以下とすることにより、取扱い性や防水性(止水性)が向上する傾向がある。発泡体フィルムの平均気泡径(μm)は、市販の低真空走査電子顕微鏡を用いて、発泡体断面の拡大画像を取り込み、画像解析することにより求めることができる。解析する気泡数は10〜20個程度とすればよい。低真空走査電子顕微鏡としては、例えば、日立ハイテクサイエンスシステムズ社製の商品名「S−3400N型走査電子顕微鏡」を用いることができる。
【0068】
上記発泡体フィルムの密度(見掛け密度)は、特に限定されないが、通常は0.01g/cm
3以上とすることが適当であり、好ましくは0.01g/cm
3以上、さらに好ましくは0.02g/cm
3以上である。密度を0.01g/cm
3以上とすることにより、発泡体フィルムの強度(ひいては粘着シートの強度)が向上し、耐衝撃性や取扱性が向上する傾向にある。また上記密度は、好ましくは0.7g/cm
3以下、さらに好ましくは0.5g/cm
3以下である。密度を0.7g/cm
3以下とすることにより、柔軟性が低下し過ぎず、段差追従性が向上する傾向にある。発泡体フィルムの密度(見掛け密度)は、JIS K 7222:1999に記載の方法に準拠して測定される。具体的には、発泡体フィルムを100mm×100mmのサイズに打抜いて試料を作製し、当該試料の寸法を測定する。また、測定端子の直径が20mmである1/100ダイヤルゲージを用いて試料の厚さを測定する。これらの値から発泡体フィルム試料の体積を算出する。また、上記試料の重量を最小目盛り0.01g以上の上皿天秤にて測定する。これらの値から発泡体フィルムの見掛け密度(g/cm
3)を求めることができる。
【0069】
上記発泡体フィルムの50%圧縮荷重は特に限定されない。耐衝撃性の観点からは、発泡体フィルムは0.1N/cm
2以上の50%圧縮荷重を示すことが適当である。50%圧縮荷重が所定値以上であることにより、例えば発泡体フィルムが薄厚(例えば100μm程度の厚さ)の場合にも、圧縮された際に十分な抵抗(圧縮された際に押し戻そうとする力)を示し、良好な耐衝撃性を保つことができる。上記50%圧縮荷重は、好ましくは0.2N/cm
2以上であり、より好ましくは0.5N/cm
2以上である。また、柔軟性と耐衝撃性とをバランスよく両立する観点から、上記50%圧縮荷重は、8N/cm
2以下であることが適当であり、好ましくは6N/cm
2以下であり、より好ましくは3N/cm
2以下である。発泡体フィルムの50%圧縮荷重(硬さ)は、JIS K 6767:1999に準拠して測定される。具体的には、発泡体フィルムを100mm×100mmに切り抜き、総厚さが2mm以上になるように積層し、これを測定サンプルとする。室温条件にて、圧縮試験機を用いて上記測定サンプルに対して10mm/分の速度で圧縮を行い、圧縮率が50%に達したところ(初期厚さに対して厚さが50%まで圧縮された時点)で、10秒保持した後の値(反発応力:N/cm
2)を50%圧縮荷重として記録する。その他の条件(例えば治具や計算方法等)については、JIS K 6767:1999に準じればよい。
【0070】
ここに開示される発泡フィルムを構成する発泡体の気泡構造は特に制限されない。気泡構造としては、連続気泡構造、独立気泡構造、半連続半独立気泡構造のいずれであってもよい。衝撃吸収性の観点からは、連続気泡構造、半連続半独立気泡構造が好ましい。
【0071】
発泡体フィルムの材質は特に制限されない。発泡体フィルムは、典型的にはポリマー成分(例えば熱可塑性ポリマー)を含む材料から形成され得る。通常は、プラスチック材料の発泡体(プラスチック発泡体)により形成された発泡体フィルムが好ましい。プラスチック発泡体を形成するためのプラスチック材料(ゴム材料を包含する意味である。)は、特に制限されず、公知のプラスチック材料のなかから適宜選択することができる。プラスチック材料(典型的には熱可塑性ポリマー)は1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。なお、フィルム状基材や発泡体フィルムに含まれるポリマー成分の主成分(典型的には、50重量%を超えて含まれる成分)を、以下「ベースポリマー」ということがある。
【0072】
発泡体の具体例としては、PE製発泡体、PP製発泡体等のポリオレフィン製樹脂発泡体;PET製発泡体、ポリエチレンナフタレート製発泡体、ポリブチレンテレフタレート製発泡体等のポリエステル系樹脂製発泡体;ポリ塩化ビニル製発泡体等のポリ塩化ビニル系樹脂製発泡体;酢酸ビニル系樹脂製発泡体;アクリル系樹脂製発泡体;ポリフェニレンスルフィド樹脂製発泡体;ポリアミド(ナイロン)樹脂製発泡体、全芳香族ポリアミド(アラミド)樹脂製発泡体等のアミド系樹脂製発泡体;ポリイミド系樹脂製発泡体;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)製発泡体;ポリスチレン製発泡体等のスチレン系樹脂製発泡体;ポリウレタン樹脂製発泡体等のウレタン系樹脂製発泡体;等が挙げられる。また、発泡体として、ポリクロロプレンゴム製発泡体等のゴム系樹脂製発泡体を用いてもよい。
【0073】
好ましい一態様では、発泡体としてアクリル系樹脂発泡体(アクリル系樹脂製発泡体)が用いられる。ここでアクリル系樹脂発泡体とは、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含む発泡体のことをいう。本明細書におけるアクリル系ポリマーの定義は前述のとおりである。アクリル系ポリマーを構成するアルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素原子数1〜20(好ましくは1〜8、典型的には1〜4)の鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの1種または2種以上が好ましく用いられる。アルキル(メタ)アクリレートの好適例としては、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートが挙げられる。主モノマーとしてのアルキル(メタ)アクリレートの量は、アクリル系ポリマーの全モノマー成分中の70重量%以上とすることが適当であり、好ましくは75重量%以上(例えば80重量%以上)である。また、上記アルキル(メタ)アクリレートの量は、全モノマー成分中の98重量%以下が適当であり、好ましくは97重量%以下(例えば96重量%以下)である。
【0074】
主モノマーであるアルキル(メタ)アクリレートと共重合性を有する副モノマーは、アクリル系ポリマーに架橋点を導入したり、アクリル系ポリマーの凝集力を高めたりするために役立ち得る。副モノマーとして、例えばカルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、窒素原子含有環を有するモノマー等の官能基含有モノマーの1種または2種以上を使用することができる。副モノマーはまた、酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマー、スチレン等の芳香族ビニル化合物、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー等であり得る。上記副モノマーの量は、アクリル系ポリマーの全モノマー成分中の0.5重量%以上とすることが適当であり、好ましくは1重量%以上である。また、副モノマーの量は、全モノマー成分中の30重量%以下が適当であり、好ましくは10重量%以下である。
【0075】
エマルション型の樹脂組成物を使用し、撹拌など機械的に空気等の気体を混入させる発泡方法を採用して発泡体を形成する場合には、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分に、副モノマーとして窒素原子含有モノマーが含まれていることが好ましい。これにより、発泡時には気泡が発生しやすく、また、発泡体形成時(典型的には、上記樹脂組成物の乾燥時)には、上記組成物の粘度が上昇して発泡体内に気泡が保持されやすいという作用が発揮され得る。
【0076】
上記窒素原子含有モノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基含有モノマー;N−ビニル−2−ピロリドン等のラクタム環含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアミド基含有モノマー;等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、アクリロニトリル等のシアノ基含有モノマー、N−ビニル−2−ピロリドン等のラクタム環含有モノマーが好ましい。
【0077】
上記窒素原子含有モノマーの量は、アクリル系ポリマーの全モノマー成分中の2重量%以上とすることが適当であり、好ましくは3重量%以上(例えば4重量%以上)である。また、上記窒素原子含有モノマーの量は、全モノマー成分中の30重量%以下が適当であり、好ましくは25重量%以下(例えば20重量%以下)である。
【0078】
アクリル系ポリマーを得る方法は特に限定されず、溶液重合法、エマルション重合法、塊状重合法、懸濁重合法、活性エネルギー線重合法(例えばUV重合法)等の、アクリル系ポリマーの合成手法として知られている各種の重合方法を適宜採用することができる。例えば、適当な重合溶媒(トルエン、酢酸エチル、水等)中にモノマー混合物を溶解または分散させ、アゾ系重合開始剤や過酸化物系開始剤等の重合開始剤を用いて重合操作を行うことにより、所望のアクリル系ポリマーを得ることができる。起泡性や環境面から、エマルション重合法により得られたアクリル系樹脂発泡体(エマルション型アクリル系樹脂発泡体)が好ましく用いられる。
【0079】
アクリル系樹脂発泡体形成用組成物は、凝集力を高める観点から架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤の種類は特に制限されず、各種架橋剤の1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。架橋剤の好適例としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、メラミン系架橋剤、金属酸化物系架橋剤が挙げられる。なかでも、オキサゾリン系架橋剤が好ましい。架橋剤の使用量は特に制限されず、アクリル系ポリマー100重量部に対して凡そ10重量部以下(好ましくは凡そ5重量部以下)とすることが適当であり、また、例えば凡そ0.005重量部以上(好ましくは凡そ0.01重量部以上)であり得る。
【0080】
他の好ましい一態様では、発泡体としてポリオレフィン系樹脂発泡体(ポリオレフィン製樹脂発泡体)が用いられる。上記ポリオレフィン系発泡体を構成するプラスチック材料としては、公知または慣用の各種のポリオレフィン系樹脂を特に限定なく用いることができる。例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、メタロセン触媒系直鎖状低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。このようなポリオレフィン系樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0081】
ここに開示される技術における発泡体フィルムの好適例としては、耐衝撃性や防水性等の観点から、ポリエチレン系樹脂の発泡体から実質的に構成されるポリエチレン系発泡体フィルム、ポリプロピレン系樹脂の発泡体から実質的に構成されるポリプロピレン系発泡体フィルム等が挙げられる。ここで、ポリエチレン系樹脂とは、エチレンを主モノマー(すなわち、モノマーのなかの主成分)とする樹脂を指し、HDPE、LDPE、LLDPE等のほか、エチレンの共重合割合が50重量%を超えるエチレン−プロピレン共重合体やエチレン−酢酸ビニル共重合体等を包含し得る。同様に、ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンを主モノマーとする樹脂を指す。ここに開示される技術における発泡体フィルムとしては、ポリプロピレン系発泡体フィルムを好ましく採用し得る。
【0082】
発泡体フィルムの発泡方法は、特に限定されず、目的や操作性等に応じて化学的手法、物理的手法等の手法を単独でまたは組み合わせて採用することができる。汚染性等の観点から物理的発泡法が好ましい。具体的には、炭化水素等の低沸点化合物や熱膨張微小球等の発泡剤をフィルム形成材料中に含有させておき、当該発泡剤から気泡を形成する発泡方法、機械的に空気等の気体を混入させる発泡方法、水等の溶媒の除去を利用した溶媒除去発泡法、超臨界流体を利用した発泡法等が挙げられる。また例えば、発泡体フィルム形成用ポリマー中に加圧条件下で不活性ガス(例えば二酸化酸素)を注入し、それを減圧することで発泡体フィルムを形成する方法も好ましく採用され得る。この方法によると、平均気泡径を所定以下に制限しやすく、かつ発泡体フィルムを低密度化しやすい。
【0083】
上記のような発泡方法を採用することにより、発泡体フィルムは作製される。発泡体フィルムの形成は、特に制限されず、例えば、機械的に空気等の気体を混入させる発泡方法を採用する場合には、その後、気泡を含む樹脂組成物(例えばエマルション型樹脂組成物)を基材または剥離紙等の上に塗布し、乾燥させることにより発泡体フィルムを得ることができる。乾燥は、気泡安定性等の観点から、50℃以上125℃未満の予備乾燥工程と、125℃〜200℃の本乾燥工程を含むことが好ましい。あるいは、カレンダや押出機、コンベアベルトキャスティング等を用いて連続的にフィルム状の発泡体を形成してもよく、発泡体形成材料の混練物をバッチ方式で発泡成形する方法を採用してもよい。発泡体フィルムの形成にあたっては、表層部分をスライス加工により除去し、所望の厚さ、発泡特性となるよう調整してもよい。
【0084】
上記発泡体フィルムに含まれ得る熱可塑性ポリマー(例えばポリオレフィン系ポリマー)には、常温ではゴムとしての性質を示し、高温では熱可塑性を示す熱可塑性エラストマーが含まれ得る。柔軟性や追従性の観点から、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリブテン、ポリイソブチレン、塩素化ポリエチレン等のオレフィン系エラストマー;スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体等のスチレン系エラストマー;熱可塑性ポリエステル系エラストマー;熱可塑性ポリウレタン系エラストマー;熱可塑性アクリル系エラストマー;等の熱可塑性エラストマーのうち1種または2種以上を用いることができ、そのなかでも、ガラス転移温度が室温以下(例えば20℃以下)である熱可塑性エラストマーが好ましく用いられる。上記発泡体フィルムにおける熱可塑性エラストマーの含有割合は、発泡体フィルム中の熱可塑性ポリマーの凡そ10重量%以上(例えば20重量%以上)程度とすることが好ましく、また90重量%以下(例えば80重量%以下)程度とすることが好ましい。
【0085】
気泡形成ガスの混入性や気泡の安定性の観点から、発泡体フィルム形成材料(例えばエマルション型アクリル系樹脂組成物)には、起泡剤として、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の各種界面活性剤を用いることができる。炭化水素系やフッ素系の界面活性剤を用いてもよい。なかでも、気泡径の微細化や気泡安定性の観点から、アニオン系界面活性剤が好ましく、ステアリン酸アンモニウム等の脂肪酸アンモニウム(典型的には高級脂肪酸アンモニウム)系界面活性剤がより好ましい。上記界面活性剤は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記界面活性剤の含有量は、発泡体フィルムのベースポリマー100重量部に対して、0.1重量部以上(例えば0.5重量部以上)程度とすることが好ましく、また10重量部以下(例えば8重量部以下)程度とすることが好ましい。なお、本明細書における起泡剤には、起泡作用を示す剤だけでなく、気泡径を微細化する気泡径調整剤や、整泡剤等の気泡安定剤が含まれるものとする。
【0086】
発泡体フィルム形成材料が水性分散液(例えばアクリルエマルション)の場合には、上記起泡剤としてシリコーン系化合物を使用することが好ましい。これにより、圧縮後の厚さ回復性(回復の程度や速度)が向上する傾向がある。シリコーン系化合物としては、シロキサン結合が2000以下のシリコーン系化合物が好ましい。シリコーン系化合物として、例えば、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、シリコーンレジン等が挙げられる。なかでも、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルが好ましい。シリコーン系化合物として、シリコーン変性ポリマー(例えば、シリコーン変性アクリル系ポリマー、シリコーン変性ウレタン系ポリマー等)を用いてもよい。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。シリコーン系化合物の含有量は、発泡体フィルムのベースポリマー100重量部に対して、0.01重量部以上(例えば0.05重量部以上、典型的には0.1重量部以上)程度とすることが好ましく、また5重量部以下(例えば4重量部以下、典型的には3重量部以下)程度とすることが好ましい。
【0087】
また、気泡安定性、成膜性向上の観点から、発泡体フィルム形成材料(例えばエマルション型アクリル系樹脂組成物)は、増粘剤を含んでもよい。増粘剤としては、特に制限されず、例えばアクリル酸系増粘剤、ウレタン系増粘剤、ポリビニルアルコール系増粘剤等が挙げられる。なかでも、ポリアクリル酸系増粘剤、ウレタン系増粘剤が好ましい。増粘剤の含有量は、発泡体フィルムのベースポリマー100重量部に対して、0.1〜10重量部(例えば0.1〜5重量部)程度とすることが好ましい。
【0088】
上記フィルム状基材として発泡体含有基材を用いる場合には、発泡体フィルムは、例えば、金属水酸化物(例えば水酸化マグネシウム)等の気泡核剤を含むことが好ましい。これによって、発泡体フィルム中の平均気泡径の調整が容易となり、所望の衝撃吸収性や柔軟性等が得られやすくなる傾向がある。気泡核剤は、金属酸化物、複合酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩等であってもよい。気泡核剤の含有量は、発泡体フィルムのベースポリマー100重量部に対して、0.5重量部以上(例えば1重量部以上)程度とすることが好ましく、また125重量部以下(例えば120重量部以下)程度とすることが好ましい。
【0089】
上記フィルム状基材として発泡体含有基材を用いる場合には、発泡体フィルムは、気泡形成時における発泡体からのガス成分の透過を抑制する観点から、脂肪酸アミド等のガス透過抑制剤を含むことが好ましい。脂肪酸アミドは、ビスアミド構造を有するものがより好ましい。ガス透過抑制剤は、脂肪酸金属塩であってもよい。ガス透過抑制剤の含有量は、発泡体フィルムのベースポリマー100重量部に対して0.5重量部以上(例えば0.7重量部以上、典型的には1重量部以上)程度とすることが好ましく、また10重量部以下(例えば8重量部以下、典型的には6重量部以下)程度とすることが好ましい。
【0090】
上記フィルム状基材(例えば発泡体フィルム)は、フィルム形成材料に所望の流動性を持たせ柔軟性等の特性を改善する目的で軟化剤を含んでもよい。また、発泡体フィルムに軟化剤を含ませることにより、フィルム延伸性や発泡倍率等の特性が好ましく調節され得る。例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス等の炭化水素系軟化剤や、ステアリン酸モノグリセリド等のエステル系軟化剤、脂肪酸系軟化剤の1種または2種以上を好ましく使用することができる。軟化剤の含有量は、フィルム状基材(例えば発泡体フィルム)のベースポリマー100重量部に対して0.5重量部以上(例えば0.8重量部以上、典型的には1重量部以上)程度とすることが好ましく、また50重量部以下(例えば40重量部以下、典型的には30重量部以下)程度とすることが好ましい。
【0091】
また、エマルション型アクリル系樹脂発泡体を使用する場合、発泡体フィルムに隣接する金属部材の腐食防止のため、任意の防錆剤を含んでいてもよい。防錆剤として、アゾール環含有化合物が好ましい。アゾール環含有化合物を用いることにより、金属腐食防止性と被着体への密着性とを高いレベルで両立することができる。なかでも、アゾール環がベンゼン環等の芳香環と縮合環を形成している化合物が好ましく、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾチアゾール系化合物が特に好ましい。防錆剤の含有量は、発泡体フィルムのベースポリマー100重量部に対して、0.2重量部以上(例えば0.3重量部以上)程度とすることが好ましく、また5重量部以下(例えば2重量部以下)程度とすることが好ましい。
【0092】
好ましい一態様では、フィルム状基材は透明(半透明を包含する。)である。このようなフィルム状基材を備える粘着シートでは、粘着シートと被着体との間に気泡等が混入すると、粘着シート越しに当該気泡等が視認されて外観性が損なわれやすい。ここに開示される技術によると、粘着シートと被着体との間における気泡等の発生が防止されるので、透明基材を備える構成において優れた外観性が得られる。具体的には、上記フィルム状基材は80%以上(例えば90%以上、典型的には95%以上)の全光線透過率を示すものであり得る。また、フィルム状基材のヘイズ値は10%以下(例えば5%以下)であることが好ましい。
【0093】
上記フィルム状基材(例えば樹脂フィルム)は、所望の意匠性や光学特性を付与するために、各種着色剤(例えば顔料)を含ませて黒色、白色その他の色に着色されていてもよい。黒色系着色剤としてはカーボンブラックが好ましい。また、フィルム状基材の少なくとも一方の表面(片面または両面)に印刷等により1層または2層以上の着色層(例えば黒色層や白色層)を積層する方法を採用してもよい。
【0094】
上記フィルム状基材(例えば樹脂フィルム基材や発泡体フィルム基材)には、必要に応じて、充填剤(無機充填剤、有機充填剤等)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤等の各種添加剤がさらに配合されていてもよい。
【0095】
粘着シートが片面粘着シートである場合、フィルム状基材の表面のうち、粘着剤層が設けられる面とは反対側の表面(背面)は、平滑に形成されていることが好ましい。上記の平滑表面は粘着シートの外面となり得るため、当該平滑表面を有する粘着シートを例えば装飾シートや表面保護シートとして使用する場合には、より良好な外観性(意匠性)を与え得る。好ましい一態様では、粘着特性、外観性(意匠性)の観点から、フィルム状基材の背面における算術平均粗さは1μm以下(例えば凡そ0.75μm以下、典型的には凡そ0.5μm以下)であり、また例えば凡そ0.05μm以上(典型的には凡そ0.1μm以上)であり得る。
【0096】
また、片面粘着シートを巻回して、フィルム状基材の背面に粘着剤層の表面を当接させる場合には、該フィルム状基材の背面(粘着剤層が設けられる面とは反対側の面)に、必要に応じて、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系等の剥離処理剤による剥離処理が施されていてもよい。剥離処理を施すことにより、粘着シートをロール状に巻回した巻回体の巻き戻しを容易にする等の効果が得られる。一方、上記フィルム状基材の粘着剤層側表面には、基材と粘着剤層との密着性を高めること等を目的として、コロナ放電処理、下塗り剤の塗布等の従来公知の表面処理が施されていてもよい。
【0097】
フィルム状基材の厚さは特に限定されず、目的に応じて適宜選択できる。一般的には、上記厚さは、通常は1μm以上(例えば2μm以上程度)とすることが適当であり、5μm以上(例えば10μm以上、典型的には15μm以上)程度とすることが好ましい。また上記厚さは、例えば500μm以下程度とすることが適当であり、200μm以下(典型的には100μm以下)程度とすることが好ましい。好ましい一態様では、フィルム状基材の厚さは、凡そ30μm以下であり、より好ましくは12μm以下であり、さらに好ましくは10μm未満(例えば5μm未満、典型的には3μm未満)である。フィルム状基材の厚さを制限することは、粘着シートの薄膜化、小型化、軽量化、省資源化等の点で有利である。
【0098】
フィルム状基材が発泡体フィルムを含む場合、発泡体含有基材(例えば発泡体フィルム基材)の厚さは、粘着シートの強度や柔軟性、使用目的等に応じて適宜設定することができる。衝撃吸収性等の観点からは、発泡体含有基材の厚さを30μm以上とすることが適当であり、好ましくは50μm以上、より好ましくは60μm以上(例えば80μm以上)である。粘着シートの薄膜化、小型化、軽量化、省資源化等の観点から、通常は、発泡体含有基材の厚さを1mm以下とすることが適当である。ここに開示される発泡体フィルムを使用することにより、上記厚さが350μm以下(より好ましくは250μm以下、例えば180μm以下)程度でも、優れた衝撃吸収機能を発揮することができる。なお、発泡体含有基材における発泡体フィルム(発泡体層であり得る。)の厚さも、上述の発泡体含有基材の厚さとして例示した範囲から好ましく選定され得る。
【0099】
ここに開示される粘着シートは、上述のように、被着体への貼り付け時において、被着体との間における気泡等の発生を効率よく防止することができる。したがって、手作業による貼り付け(手貼り)や、自動貼り機等を用いての貼り付け(自動貼り)のいずれの貼り付け方法においても、貼り付け性が向上する。例えば、手貼りで貼り付ける場合には、個人の技量への依存度を低減し得るので、貼り付け効率や貼り付け品質の向上、安定化等の利点が得られる。また、自動貼りで貼り付ける場合には、気泡の混入等の貼り付け不良の低減や、貼り直し作業の低減が実現され得る。したがって、手貼り、自動貼りいずれの場合も、貼り付け効率や品質の向上、品質の安定化等を実現することが可能となり、これによって粘着シートを使用して構築される物品の生産性や品質も向上する。ここに開示される技術は、より均一な貼り付けを実現し得ることから、自動貼り機を用いて貼り付けられる態様の粘着シートとして、特に好適である。
【0100】
また、粘着シートと被着体との間には、貼り付け時だけでなく、貼り付け後、時間が経過するにつれて気泡等が発生する場合がある。典型的には、粘着シートを貼り付けた後に、比較的高温(例えば35℃以上)環境下で保管、使用等された場合に、上述の気泡等が粘着シートと被着体との間に発生し、外観性の低下を引き起こし得る。例えば、夏場の工場内や屋外、電子機器内部等は、上記のような高温状態となりやすい。ここに開示される技術によると、上記のような高温環境に曝される用途に用いられても、気泡等の発生を防止することができる。
【0101】
ここに開示される粘着シートは、上述したような特徴を活かして、各種物品の表面に貼り付ける用途に好ましく利用され得る。好ましい一態様では、各種の装飾シートや表面保護シート、フレキソ印刷等の印刷板の固定シート、遮光シート等として利用され得る。例えば、車両の外装や住宅建材等に貼り付けられる装飾シート(典型的には塗装代替シート)として好適である。また、ディスプレイ(典型的にはテレビのディスプレイ)等の電子機器の内部において、例えばシャーシ外面の平滑性を向上する目的や、各種部材表面のネジ穴等の不均一部分を覆う目的で使用される被覆シートとしても好適である。このような被覆シートを用いることで、被着体外面における外観ムラの低減や寸法精度の均一化が実現され得る。また、外観性が重視されるバッテリーパックの外装シートとしても好ましく使用され得る。
【0102】
また、ここに開示される粘着シートは、薄厚に構成した場合であっても、貼り付け後の外観品質の低下を防ぎつつ、良好な粘着特性を維持することが可能である。したがって、薄厚化や軽量化が求められており、かつ省資源化が望ましい用途(例えば携帯電子機器用途)に好ましく適用され得る。具体的には、携帯電話、スマートフォン、タブレット型パソコン、ノート型パソコン、各種ウェアラブル機器(例えば、腕時計のように手首に装着するリストウェア型、クリップやストラップ等で体の一部に装着するモジュラー型、メガネ型(単眼型や両眼型。ヘッドマウント型も含む。)を包含するアイウェア型、シャツや靴下、帽子等に例えばアクセサリの形態で取り付ける衣服型、イヤホンのように耳に取り付けるイヤウェア型等)、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、音響機器(携帯音楽プレーヤー、ICレコーダー等)、計算機(電卓等)、携帯ゲーム機器、電子辞書、電子手帳、電子書籍、車載用情報機器、携帯ラジオ、携帯テレビ、携帯プリンター、携帯スキャナ、携帯モデム等の携帯電子機器の表面保護シート、上記携帯電子機器の液晶表示装置における接合固定用途、上記携帯電子機器の表示部を保護する保護パネル(レンズ)固定、携帯電話のキーモジュール部材固定、リムシート固定、デコレーションパネル固定、バッテリー固定、その他各種部材の固定、ロゴ(意匠文字)や各種デザイン等の表示物(各種標章を含む。)の固定等の用途に好ましく適用され得る。上記携帯電子機器に用いられる場合、粘着シートは、目的等に応じて、枠状(額縁状)、帯状(ストリップ状)等の形状を有するものであり得る。なお、本明細書において「携帯」とは、単に携帯することが可能であるだけでは十分ではなく、個人(標準的な成人)が相対的に容易に持ち運び可能なレベルの携帯性を有することを意味するものとする。
【0103】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明を実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
【0104】
<例1>
(粘着剤組成物の調製)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、滴下ロートを備えた反応容器に、n−ブチルアクリレート70部と、2−エチルヘキシルアクリレート30部と、アクリル酸3部と、4−ヒドロキシブチルアクリレート0.05部と、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.08部と、重合溶媒としてのトルエンとを仕込み、60℃で6時間溶液重合してアクリル系ポリマーのトルエン溶液(粘度28Pa・s、固形分40%)を得た。得られたアクリル系ポリマーのMwは約44万であった。
上記トルエン溶液に含まれるアクリル系ポリマー100部に対し、粘着付与樹脂としての重合ロジンペンタエリスリトールエステル(荒川化学工業社製、商品名「ペンセルD−125」、軟化点125℃)30部を加えた後、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、商品名「コロネートL」)3部を添加、混合して、アクリル系粘着剤組成物を調製した。
【0105】
(剥離ライナー付き粘着シートの作製)
剥離面の算術平均粗さ(Ra)が表1に示す値である厚さ75μmのポリエステル製剥離フィルム(商品名「ルミラーS10」、東レ社製)に剥離処理を塗布し、剥離フィルムを作製した。上記剥離処理としては、一方の面にC1処理を施し、他方の面にCA1処理を施す方法を採用した(いずれもフジコー社による。)。この剥離フィルムの剥離面(CA1処理面)にコート層形成材料(ウレタン系:2液混合硬化型インク)をグラビア印刷により付与し、格子状パターンを有するコート層(塗布厚約1.5μm、透明)を形成した。このようにして、コート層が剥離面に部分的に形成されたコート層形成剥離フィルムを得た。
上記で得たコート層形成剥離フィルムのコート層形成面に、コンマコーターを用いて、上記粘着剤組成物を最終的な厚さが4μmとなるように塗布、乾燥し、剥離フィルムに支持された形態の粘着剤層を得た。そして、厚さ2μmのPETフィルム基材(商品名「ルミラー SDC61」、東レ社製)を用意し、このPET基材の第1面(コロナ放電処理面)に、上記で得た粘着剤層を剥離フィルムに支持された状態で転写した。剥離フィルムは、そのまま粘着剤層表面の保護に用いた。
また、厚さ38μmの剥離フィルム(商品名「ダイヤホイルMRF38」、三菱樹脂社製)の剥離処理面に、上記粘着剤組成物を最終的な厚さが4μmとなるように塗布、乾燥し、剥離フィルムに支持された形態の粘着剤層を得た。そして、上記PET基材の第2面(コロナ放電処理面)に、上記で得た粘着剤層を剥離フィルムに支持された状態で転写した。剥離フィルムは、そのまま粘着剤層表面の保護に用いた。
上記の方法で各粘着剤層をPET基材の両面に転写することにより、PET基材の一方の面にコート層形成粘着剤層が配置され、他方の面にコート層非形成粘着剤層が配置された剥離ライナー付き両面粘着シートを作製した。この粘着シートの一方の接着面は、
図1に示すコート層からなる格子状パターンが形成されたコート層形成接着面であり、コート層の帯状部分の幅(線幅)は約0.2mm、帯状部分の間隔は約1.8mm、帯状部分のピッチは約2mmであり、粘着シートの接着面におけるコート層の面積割合は19%であった。上記粘着シートの他方の接着面は、コート層非形成接着面である。
【0106】
<例2>
例1で使用したものと同種のポリエステル製剥離ライナー基材と剥離処理剤とを使用して、該剥離ライナー基材の表面に粗化処理を施した後、その上に剥離処理層を形成することにより、剥離面の算術平均粗さ(Ra)が表1に示す値である厚さ75μmの剥離フィルムを得た。その他は例1と同様にして本例に係る剥離ライナー付き両面粘着シートを得た。したがって、本例の剥離フィルムも、一方の面にC1処理が施され、他方の面にCA1処理が施されており、そのCA1処理面にコート層が部分的に形成されている。
【0107】
<例3>
粗化処理方法を変更した他は例2と同様にして、剥離面の算術平均粗さ(Ra)が表1に示す値である厚さ75μmの剥離フィルムを用意した。その他は例1と同様にして本例に係る剥離ライナー付き両面粘着シートを得た。
【0108】
[空気抜け性]
各例に係る剥離ライナー付き両面粘着シートを用意し、その一方の剥離ライナーを剥がして、一方の接着面(コート層形成接着面)を露出させた。そして、水平に載置された被着体としてのステンレス鋼板(SUS板)の上に、上記コート層形成接着面が被着体側となるように粘着シートを乗せた(圧着はしない)。次いで、上記粘着シートを上面側(他方の剥離ライナー側)から指で直径2cm程度の円を描くように押圧し、上記円内にて粘着シートと被着体との間に空気が留まるよう粘着シートを被着体に圧着した。そして、上記円が周方向に狭まるように指で円を描きながら円の中心に向かって圧着していき、円の中心に所定サイズの気泡を形成した。この気泡を指で押しつぶし、そのときの空気抜け性を官能により評価した。例1を基準として、空気抜け性が改善された場合を「○」と評価した。結果を表1に示す。
【0110】
表1に示されるように、剥離面の算術平均粗さRaが0.1μm以上である剥離ライナーを使用した例2および3に係る粘着シートは、剥離面のRaが0.1μm未満の剥離ライナーを使用した例1と比べて、優れた空気抜け性が得られた。これは、剥離ライナーの剥離面と対向するコート層表面に、所定以上のRaで表わされる凹凸形状が転写された結果、その凹凸の存在により、空気抜け性が改善されたものと考えられる。なお、特に示さないが、粘着剤層の厚さが13μmで総厚が30μmの基材付き両面粘着シートを用いて上記と同様の試験を行った結果、同様の空気抜け性の改善が認められた。
上記の結果から、ここに開示される粘着シートによると、より優れた空気抜け性が得られることがわかる。
【0111】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。