【実施例】
【0062】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
(1)測定方法
油脂の融点は、基準油脂分析法(公益社団法人日本油化学会)の「3.2.2.2−2013 融点(上昇融点)」で測定した。
【0063】
油脂のヨウ素価は、基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.3.4.1−2013ヨウ素価(ウィイス−シクロヘキサン法)」で測定した。
【0064】
油脂における飽和脂肪酸の含有量は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2−2013 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」)で測定した。なお、飽和脂肪酸の含有量は、上記試験法のとおりガスクロマトグラフィーで測定した全ピーク面積である油脂全量(油脂の構成脂肪酸全体の質量)を基準としている。
【0065】
油脂におけるトリグリセリドの2位に結合されたラウリン酸の含有量、トリグリセリドの2位に結合されたオレイン酸の含有量は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2−2013 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」と「奨2−2013 2位脂肪酸組成」)で測定した。なお、トリグリセリドの2位に結合されたラウリン酸の含有量とトリグリセリドの2位に結合されたオレイン酸の含有量は、上記試験法のとおり、リパーゼ溶液で処理後のモノアシルグリセリン画分をガスクロマトグラフィーで測定した全ピーク面積である油脂全量(油脂の2位構成脂肪酸全体の質量)を基準としている。
【0066】
油脂におけるP2Oの含有量(PPOおよびPOPの合計量)は、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2−2013 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」と「奨2−2013 2位脂肪酸組成」)で測定し、脂肪酸量を用いて計算にて求めた。
【0067】
(2)エステル交換油脂組成物の作製
(エステル交換油脂1〜13)
表1に示すエステル交換油脂1〜13を作製した。
【0068】
エステル交換油脂1〜6は次の方法で作製した。表1に示す割合でラウリン系油脂(A1)とパーム系油脂(A2)とヨウ素価が100以上である油脂(A3)を混合して減圧下で80〜120℃に加熱し、十分に脱水させた後、化学触媒としてナトリウムメチラートを油脂量の0.05〜0.15質量%添加し、0.5〜1.0時間攪拌しながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応後、水洗して触媒を除去し、活性白土を用いて脱色し、さらに脱臭を行ってエステル交換油脂を得た。
【0069】
エステル交換油脂7〜13は、表1に示す配合でエステル交換油脂1〜6の製法に準じて作製した。
【0070】
【表1】
(3)可塑性油脂組成物の作製と評価
(3−1)スプレッド用可塑性油脂組成物
<可塑性油脂組成物の作製>
表2に示す配合比の油脂を75℃で溶解、混合し、乳化剤を添加後、溶解させ、75℃に調温して84.1質量部の油相とした。一方、水に対し脱脂粉乳および食塩を添加し、85℃で加熱殺菌して水相を得た。次に、該油相に該水相を15.8質量部添加し、プロペラ攪拌機で撹拌して、油中水型に乳化した後、ミルクフレーバーを添加し、撹拌後、パーフェクターによって急冷捏和して、下記の配合割合のスプレッド用マーガリンを可塑性油脂組成物として得た。得られたスプレッド用マーガリンは、5℃で保管した。なお、下記スプレッド用マーガリンの配合は全体で100質量部である。
〈スプレッド用マーガリンの配合〉
油脂 84質量部
乳化剤 0.1質量部
脱脂粉乳 1質量部
食塩 1質量部
ミルクフレーバー 0.1質量部
水 13.8質量部
【0071】
なお、このスプレッド用マーガリンは、油脂の構成脂肪酸としてベヘン酸を含有しないものである。
【0072】
<評価>
以下の各評価において、パネルは、五味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準嗅覚テストを実施し、その各々のテストで適合と判断された20〜40代の男性8名、女性12名を選抜した。
【0073】
[もたつき感(5℃)]
5℃で3日間、保管したマーガリンをパネル20名で試食し、口中でのもたつき感を以下の基準により評価した。なお、「もたつき感なし」とは、口中で10秒以内に溶解し、油脂が残存しないことを意味する。
評価基準
◎:パネル20名中16名以上が、もたつき感なしと評価した。
○:パネル20名中11〜15名が、もたつき感なしと評価した。
△:パネル20名中6〜10名が、もたつき感なしと評価した。
×:パネル20名中もたつき感なしと評価したのは5名以下であった。
【0074】
[10℃での塗りやすさ]
10℃に調温したマーガリン5gをスパテラに取り、ステンレス製の板に塗布し塗りやすさを以下の基準で評価した。
評価基準
◎:薄く、非常に滑らかに伸展する。
○:薄く、滑らかに伸展する。
△:若干厚みがあるが、滑らかに伸展する。
×:厚みあり、伸展性悪い、若しくは伸展するが途中で途切れる。
【0075】
[フレーバーリリース]
10℃に調温したマーガリンをパネル20名で試食し、フレーバーリリースを以下の基準で評価した。
評価基準
◎:パネル20名中16名以上が良好であると評価した。
○:パネル20名中11〜15名が良好であると評価した。
△:パネル20名中6〜10名が良好であると評価した。
×:パネル20名中良好であると評価したのは5名以下であった。
【0076】
上記の評価結果を表2に示す。また可塑性油脂組成物の配合と油脂組成も併せて表2に示した。
【0077】
【表2】
(3−2)練り込み用可塑性油脂組成物
<可塑性油脂組成物の作製>
表3に示す配合比の油脂を75℃で溶解、混合し、乳化剤を添加後、溶解させ、75℃に調温して83.6質量部の油相とした。一方、水に対し脱脂粉乳および食塩を添加し、85℃で加熱殺菌して水相を得た。次に、該油相に該水相を16.3質量部添加し、プロペラ攪拌機で撹拌して、油中水型に乳化した後、ミルクフレーバーを添加し、撹拌後、パーフェクターによって急冷捏和して、下記の配合割合の練り込み用マーガリンを可塑性油脂組成物として得た。得られた練り込み用マーガリンは、5℃で保管した。なお、下記練り込み用マーガリンの配合は全体で100質量部である。
〈練り込み用マーガリンの配合〉
油脂 83.5質量部
乳化剤 0.1質量部
脱脂粉乳 1質量部
食塩 0.5質量部
ミルクフレーバー 0.1質量部
水 14.8質量部
【0078】
なお、この練り込み用マーガリンは、油脂の構成脂肪酸としてベヘン酸を含有しないものである。
【0079】
<練り込み用マーガリンを使用した焼成品の作製>
上記練り込み用マーガリンを用いて、下記の配合と工程により食パンを製造した。
〈食パンの配合および工程〉
・中種配合
強力粉 70質量部
イースト 2.5質量部
イーストフード 0.1質量部
水 40質量部
・中種工程
ミキシング 低速3分 中低速1分(フック使用)
捏上温度 24℃
発 酵 発酵室温27℃ 湿度75% 4時間
・本捏配合
強力粉 30質量部
上白糖 6質量部
食塩 1.8質量部
脱脂粉乳 2質量部
練り込み用マーガリン 5質量部
水 25質量部
・本捏工程(本捏配合の全素材および中種生地全量を添加)
ミキシング 低速3分 中低速3分
(練り込み用マーガリンを投入)、低速3分 中低速4分
捏上温度 28℃
フロアータイム 28℃ 20分
生地分割 230g
ベンチタイム 28℃ 20分
成 型 モルダーで延ばしロール型に成型
U型にしてプルマン型に6本詰め
ホイロ 室温38℃ 湿度80% 40分
焼 成 200℃ 40分
【0080】
<評価>
以下の各評価において、パネルは、五味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準嗅覚テストを実施し、その各々のテストで適合と判断された20〜40代の男性8名、女性12名を選抜した。
【0081】
[生地への分散性]
食パン作製時に15℃で練り込み用マーガリンを生地に添加したときのマーガリンの塊がなくなる時間を目視により評価した。
評価基準
◎:1分超〜1分30秒以内で分散した。
○:1分30秒超〜2分15秒以内で分散した。
△:2分15秒超〜3分以内で分散した。
×:3分超で分散した。
【0082】
[ヒキ(10℃)]
食パンを焼成後24時間室温で放冷し、放冷後10℃で1日保管したものについて、喫食したときにヒキ(パン様の繋がりが残存する食感)を感じるかをパネル20名により以下の基準で評価した。
評価基準
◎:パネル20名中16名以上が、ヒキがないと評価した。
○:パネル20名中11〜15名が、ヒキがないと評価した。
△:パネル20名中6〜10名が、ヒキがないと評価した。
×:パネル20名中ヒキがないと評価したのは5名以下であった。
【0083】
[シトリ(10℃)]
食パンを焼成後24時間室温で放冷し、放冷後10℃で1日保管したものについて、食パンのシトリ(うるおい感)をパネル20名により以下の基準で評価した。
評価基準
◎:パネル20名中16名以上が良好であると評価した。
○:パネル20名中11〜15名が良好であると評価した。
△:パネル20名中6〜10名が良好であると評価した。
×:パネル20名中良好であると評価したのは5名以下であった。
【0084】
[フレーバーリリース]
食パンを焼成後24時間室温で放冷し、放冷後10℃で1日保管したものについて、食パンのフレーバーリリースをパネル20名により以下の基準で評価した。
評価基準
◎:パネル20名中16名以上が良好であると評価した。
○:パネル20名中11〜15名が良好であると評価した。
△:パネル20名中6〜10名が良好であると評価した。
×:パネル20名中良好であると評価したのは5名以下であった。
【0085】
上記の評価結果を表3に示す。また可塑性油脂組成物の配合と油脂組成も併せて表3に示した。
【0086】
【表3】
(3−3)折り込み用可塑性油脂組成物
<可塑性油脂組成物の作製>
表4に示す配合比の油脂を75℃で溶解、混合し、乳化剤を添加後、溶解させ、75℃に調温して85.2質量部の油相とした。一方、水に対し脱脂粉乳および食塩を添加し、85℃で加熱殺菌して水相を得た。次に、該油相に該水相を14.7質量部添加し、プロペラ攪拌機で撹拌して、油中水型に乳化した後、ミルクフレーバーを添加し、撹拌後、パーフェクターによって急冷捏和し、25cm×21cm×1cmのシート状に成型し、下記の配合割合のロールイン用マーガリンを可塑性油脂組成物として得た。得られたロールイン用マーガリンは、5℃で保管した。なお、下記ロールイン用マーガリンの配合は全体で100質量部である。
〈ロールイン用マーガリンの配合〉
油脂 85質量部
乳化剤 0.2質量部
脱脂粉乳 1.5質量部
食塩 1質量部
ミルクフレーバー 0.1質量部
水 12.2質量部
【0087】
なお、このロールイン用マーガリンは、油脂の構成脂肪酸としてベヘン酸を含有しないものである。
【0088】
<ロールイン用マーガリンを使用した焼成品の作製>
下記の配合および製造条件でデニッシュを作製した。具体的には実施例および比較例のロールイン用マーガリンおよびショートニングZ(ミヨシ油脂株式会社製)以外の材料をミキサーに投入し、低速3分、中低5分ミキシングを行った後、ショートニングZを入れ低速2分、中低速4分ミキシングを行い、生地を得た。この生地を、フロアータイムをとった後、0℃で一晩リタードさせた。この生地にロールイン用マーガリンを折り込み、3つ折り2回を加え−10℃にて30分リタードし、3つ折り1回を加え−10℃にて60分リタードさせた。その後シーターゲージ厚3mmまで延ばし、10cm角(10cm×1cm)にカットし、ホイロ後、焼成してデニッシュを得た。
〈デニッシュの配合〉
強力粉 85質量部
薄力粉 15質量部
上白糖 10質量部
食塩 1.8質量部
脱脂粉乳 3質量部
全卵 6質量部
ショートニングZ 8質量部
イースト 5質量部
イーストフード 0.1質量部
水 53質量部
ロールイン用マーガリン 生地100質量部に対して21質量部
〈デニッシュ生地の作製条件〉
ミキシング: 低速3分、中低速5分、(ショートニングを投入)、低速2分、
中低速4分
捏上温度: 25℃
フロアータイム:27℃ 75% 30分
リタード: 0℃ 一晩
ロールイン: 3つ折り×2回 −10℃にてリタード30分
3つ折り×1回 −10℃にてリタード60分
成型: シーターゲージ厚3mm 10cm角(10cm×10cm)にカット
ホイロ: 35℃ 75% 60分
焼成: 200℃ 14分
【0089】
<評価>
以下の各評価において、パネルは、五味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準嗅覚テストを実施し、その各々のテストで適合と判断された20〜40代の男性8名、女性12名を選抜した。
【0090】
[油脂の伸び]
デニッシュ作製時における、10℃でのロールイン用マーガリンの伸びを以下の基準で評価した。
評価基準
◎:生地中で油脂が油切れなく均一に伸び、非常に伸展性が良好である。
〇:生地中で油脂が油切れなく均一に伸び、伸展性が良好である。
△:伸展性はあるものの、やや油脂切れがある。
×:油脂が均一に伸びず、油脂切れがある。
【0091】
[口溶け]
デニッシュを焼成後24時間室温で放冷し、放冷後10℃で1日保管したものについて、喫食したときの口溶けをパネル20名により以下の基準で評価した。
評価基準
◎:パネル20名中16名以上が良好であると評価した。
○:パネル20名中11〜15名が良好であると評価した。
△:パネル20名中6〜10名が良好であると評価した。
×:パネル20名中良好であると評価したのは5名以下であった。
【0092】
[フレーバーリリース]
デニッシュを焼成後24時間室温で放冷し、放冷後10℃で1日保管したものについて、デニッシュのフレーバーリリースをパネル20名により以下の基準で評価した。
評価基準
◎:パネル20名中16名以上が良好であると評価した。
○:パネル20名中11〜15名が良好であると評価した。
△:パネル20名中6〜10名が良好であると評価した。
×:パネル20名中良好であると評価したのは5名以下であった。
【0093】
上記の評価結果を表4に示す。また可塑性油脂組成物の配合と油脂組成も併せて表4に示した。
【0094】
【表4】