(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記調製工程において、第1の導入部及び第2の導入部と前記導出部との温度差を検出し、前記有機リチウムと2級アミンとの反応率を調整する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の変性重合体の連続的製造方法。
前記調製工程において、下記式で算出される前記開始剤溶液のリチウム濃度が、0.01%〜3%である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の変性ジエン系重合体の連続的製造方法。
リチウム濃度(%)=(前記有機リチウムの平均供給速度)/(前記反応器に供給する全成分の平均供給速度の合計)×(リチウム原子量)/(前記有機リチウムの分子量)×100
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0012】
本実施形態に係る変性ジエン系重合体の連続的製造方法は、不活性有機溶媒中で、有機リチウムと2級アミンとを連続的に反応させ、アミノリチウムを含む開始剤溶液を得る調製工程と、前記開始剤溶液を連続的に重合器に導入する工程と、共役ジエン単量体50部〜100部、及び共重合可能な単量体50部〜0部を含む重合用単量体を連続的に前記重合器に導入する工程と、不活性有機溶媒中で、前記重合用単量体を単独重合又は共重合して重合体溶液を得る重合工程と、前記重合体溶液を前記重合器から連続的に排出する工程と、を含み、前記調製工程が、前記有機リチウムを導入する第1の導入部と、前記2級アミンを導入する第2の導入部と、前記開始剤溶液を導出する導出部と、前記有機リチウムと前記2級アミンと前記不活性有機溶媒とを撹拌する混合手段と、を備える反応器で行われ、前記調製工程における前記開始剤溶液の平均滞留時間が1時間以内である。
このように構成されているため、本実施形態に係る変性ジエン系重合体の連続的製造方法によれば、アミノリチウムを調製する反応における収率(すなわち、2級アミンの転化率)が高く、かつ、難溶性の3量体又は4量体のクラスター組成物の生成を抑えられるため、重合開始位置にアミノ基を有する変性ジエン系重合体を効率良く得ることができ、当該変性ジエン系重合体は、加硫物とした際のウェットグリップ性及び省燃費性に優れる。上記のように得られた変性ジエン系重合体は、低ヒステリシスロスを指向したタイヤ用ゴム、防振ゴム、履物などに好適な加硫ゴム組成物とすることができる。特に、加硫ゴム組成物が補強性充填材を含み、補強性充填剤が沈降性シリカ、又は沈降性シリカ及びカーボンブラックである場合、その効果はより顕著となる。
【0013】
本実施形態に係る変性ジエン系重合体の連続的製造方法は、変性ジエン系重合体を連続的に製造する方法であり、特に、開始剤の調製工程及び重合工程を連続的に行う製造方法であることが特徴である。ここで、「連続的製造方法」とは、反応の原材料を連続的に反応系に供給し、反応物を反応系外に連続的に排出するものである。すなわち、反応系に所定量の原材料を供給して、反応を進行させ、反応物を反応系外に排出した後に改めて反応系に所定量の原材料を供給するといった、都度重合を行う方法は、本実施形態にいう連続的製造方法には該当しない。
【0014】
<調製工程>
本実施形態における調製工程は、不活性有機溶媒中で、有機リチウムと2級アミンとを連続的に反応させ、アミノリチウムを含む開始剤溶液を得る工程である。
【0015】
本実施形態における有機リチウムは、有機基の炭素とリチウムが結合している化合物として一般に知られているものを含む。有機リチウムとしては、炭素数1から20の脂肪族リチウム、脂環族リチウム、及び芳香族リチウムが好ましく、モノリチウム化合物であってもポリリチウム化合物であってもよい。具体例としては、以下に限定されないが、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、オクチルリチウム等のアルキルリチウム、ビニルリチウム、プロペニルリチウム等に代表されるアルケニルリチウムに代表される脂肪族リチウム、フェニルリチウム、トリルリチウム、リチウムナフチリド等に代表される芳香族リチウム、テトラメチレンジリチウム、ペンタメチレンジリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、デカメチレンジリチウム等に代表されるアルキレンジリチウムが挙げられる。このうち、貯蔵安定性、有機溶剤可溶性、工業的入手しやすさの観点からn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムがより好ましい。
【0016】
本実施形態における2級アミンとしては、特に限定されず、種々公知のものが使用できるが、一般式(A)、一般式(1)及び一般式(2)で表されるイミン化合物、並びに一般式(B)で表されるアミン化合物から選ばれる少なくとも1つの化合物であることが好ましい。
【0017】
【化1】
(一般式(A)中、Xはヒドロカルビレン基である。)
【0019】
【化3】
(一般式(1)〜(2)中、R
1はヒドロカルビレン基であり、Qは、−N(−A
1)−、−O−、−P(−A
1)−、−Si(−A
1)(−A
2)−、−Sn(−A
1)(−A
2)−、又は−C(−A
1)(−A
2)−である。ここで、A
1は、活性水素原子を有さず、N、P、O、S、Si及びSnからなる群より選ばれる1種以上の原子を含んでもよい置換若しくは非置換のヒドロカルビル基又はヒドロカルビレン基である。A
2は、ヒドロカルビル基又はヒドロカルビレン基である。A
1とA
2は結合して環を形成していてもよい。式中に複数存在するR
1及びQは、各々、同じでも異なってもよい。)
【0020】
【化4】
(R
2及びR
3は脂肪族、脂環族及び芳香族の各炭化水素基から選ばれる炭素数1〜20の炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよい。)
【0021】
一般式(A)中のX(ヒドロカルビレン基)としては、以下に限定されないが、例えば、アルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基等が挙げられる。該ヒドロカルビレン基の炭素数は、特に限定されないが、例えば、3〜20である。
【0022】
一般式(1)及び(2)中のR
1(ヒドロカルビレン基)としては、以下に限定されないが、例えば、メチレン基、アルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基等が挙げられる。該ヒドロカルビレン基の炭素数は、特に限定されないが、例えば、1〜10である。一般式(1)及び(2)中のA
1における「N、P、O、S、Si及びSnからなる群より選ばれる1種以上の原子を含んでもよい置換もしくは非置換の」とは、ヒドロカルビル基もしくはヒドロカルビレン基中の炭素原子の一部が、N、P、O、S、Si又はSnによって置換されていてもよいし、置換されていなくてもよいことを表す。
【0023】
一般式(1)及び(2)中のQに含まれるA
1で表されるヒドロカルビル基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。該ヒドロカルビル基の炭素数は、特に限定されないが、例えば、1〜10である。
【0024】
一般式(1)及び(2)中のQに含まれるA
1で表されるヒドロカルビレン基としては、以下に限定されないが、例えば、メチレン基、アルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基等が挙げられる。該ヒドロカルビレン基の炭素数は、特に限定されないが、例えば、1〜10である。
【0025】
一般式(1)及び(2)中のQに含まれるA
2で表されるヒドロカルビル基としては、以下に限定されないが、例えば、アルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。該ヒドロカルビル基の炭素数は、好ましくは1〜6である。
【0026】
一般式(1)及び(2)中のQに含まれるA
2で表されるヒドロカルビレン基としては、以下に限定されないが、例えば、例えば、メチレン基、アルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基等が挙げられる。該ヒドロカルビレン基の炭素数は、好ましくは1〜6である。
【0027】
前記一般式(A)で表されるイミン化合物としては、以下に限定されないが、例えば、トリメチレンイミン、ピロリジン、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン、ヘプタメチレンイミン、オクタメチレンイミン、デカメチレンイミン、ドデカメチレンイミン、2−メチルピペリジン、3−メチルピペリジン、4−メチルピペリジン、3,5−ジメチルピペリジン、2−エチルピペリジン等を挙げることができる。
【0028】
前記一般式(1)で表されるイミン化合物としては、以下に限定されないが、例えば、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、N,N−ジメチル−3−ピペラジノプロピルアミン、1−(2,4,6−トリメチルベンジル)ピペラジン、1−(2−ピリジル)ピペラジン、N−メチルイミダゾリジン、N−エチルイミダゾリジン、4−ピペリジノピペリジン、モルホリン、フェノキサジン、5−ブチル−1−アザ−5−ホスファスピロ[5.5]ウンデカン、4,4−ジメチル−1,4−アザシラン、4,4−ジブチル−1,4−アザスタンニナン等を挙げることができる。
【0029】
前記一般式(2)で表されるイミン化合物としては、以下に限定されないが、例えば、3,5−ビス(ジメチルアミノ)ピペリジン、3,5−ジピペリジノピペリジン等を挙げることができる。
【0030】
前記一般式(B)のアミン化合物において、R
2、R
3が炭素数1〜10の脂肪族、脂環族、芳香族の各炭化水素基から選ばれる基を有するアミン化合物が好ましく、具体例としては、以下に限定されないが、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジアリルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ブチルイソプロピルアミン、ジベンジルアミン、メチルベンジルアミン、メチルヘキシルアミン、エチルヘキシルアミン等を挙げることができる。中でも、更に好ましいのはR
2、R
3が炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基から選ばれる基を有するアミンである。
【0031】
本実施形態における2級アミンとしては、上記の一般式(A)、一般式(1)及び一般式(2)で表されるイミン化合物、並びに一般式(B)で表されるアミン化合物から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
【0032】
<不活性有機溶剤>
本実施形態における不活性有機溶媒は、有機リチウムと2級アミンに対し不活性な有機溶媒として一般に知られているものを含む。好ましい不活性有機溶剤としては、炭化水素溶媒である。炭化水素溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、飽和炭化水素、芳香族炭化水素等が挙げられる。より詳細には、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素及びそれらの混合物からなる炭化水素等を用いることができる。特に、調製工程及び後述する重合工程で共通して使用できるような、各工程における溶解性及び後述する仕上げ工程における溶媒の除去の容易性から、ヘキサン、シクロヘキサン又はそれらの混合物が好ましい。
【0033】
本実施形態において、有機リチウムと2級アミンは、どちらか又はそれぞれが不活性有機溶媒の溶液であることが好ましい。
【0034】
本実施形態における調製工程において、不活性有機溶媒中で、有機リチウムと2級アミンを連続的に反応させる際に、有機リチウムを導入する第1の導入部と、2級アミンを導入する第2の導入部と、開始剤溶液を導出する導出部と、有機リチウムと2級アミンと不活性有機溶媒とを撹拌する混合手段と、を備える反応器を用い、開始剤溶液の平均滞留時間が1時間以内とすることが必要である。混合手段としては、有機リチウムと2級アミンを素早く混合し反応させるに十分な混合手段であることが必要であり、従来から公知の混合手段を用いることが出来る。
【0035】
本実施形態における反応器としては、特に限定されないが、例えば、槽型反応器、管状反応器等を挙げることができる。本実施形態における好ましい反応器としては、混合手段としての回転式攪拌機を備える槽型反応器、及び混合手段としてのスタティックミキサーを備える管状反応器である。上記槽型反応器を用いる場合、反応レートの変動に対しても安定して高いアミノリチウム収率を達成できる傾向にある。
より反応の進行を促進する観点から、槽型反応器を用いる場合、単位体積当たりの撹拌動力を0.1〜10kW/m
3とすることが好ましい。ここで、撹拌動力とは、撹拌に要する動力であり、混合時の消費電力を測定することで容易に求めることができる。また、同様の観点から、管状反応器、すなわち、スタティックミキサーを用いる場合、レイノルズ数が乱流領域(好ましくはRe=4000以上)となるようにし、かつ、内径及びエレメント数を適宜調整することが好ましい。例えば、供給する物質の基本物性と想定する総流量と反応器内径から線速度が決定され、レイノルズ数が決定される。このレイノルズ数の領域に応じて、適宜エレメント数を選択することができる。さらに、使用する反応原料の反応速度から予め滞留時間を想定しておき、それに応じた配管長を算出し、かかる配管長に応じて必要となるエレメント数を決定できる。上記要領で反応器の内径やエレメント数を選定し、さらにその際の圧力損失も考慮することが好ましい。
【0036】
本実施形態における調製工程では、不活性有機溶媒中で、有機リチウムと2級アミンを連続的に反応させる際に、開始剤溶液の平均滞留時間が1時間以内であることが必須である。平均滞留時間とは、有機リチウムと2級アミンが反応器中で混合された時点から反応器出口までの平均滞留時間を意味するものである。平均滞留時間は、反応器容積(反応器中において混合手段が占める体積を除いた容積)を2級アミンの平均供給速度及び溶媒の平均供給速度の和で除した値として算出することができる。より詳細には、後述する実施例に記載の方法により測定できる。平均滞留時間は、好ましくは1秒以上、より好ましくは2秒以上であり、また、好ましくは40分以内、より好ましくは30分以内である。平均滞留時間が上記範囲内であると、溶剤に難溶性の3量体又は4量体のクラスター組成物が生成しにくく、配管での析出、詰まり等の発生や、次の重合工程において開始速度の遅延やばらつきが生じない。すなわち、平均滞留時間が上記範囲内であると、開始位置にアミノ基を有している変性ジエン系重合体を効率良く得ることができる。なお、平均供給速度とは、単位時間当たりの供給速度を意味し、速度が経時的に変化する場合はその平均値とする。
上記平均滞留時間は、例えば、反応器容積や開始剤溶液中のリチウム濃度(すなわち、全供給量に対する有機リチウム量)等により上記範囲に調整することができる。具体的には、下流側の重合工程において必要なリチウム量(レート)が変動すると、調製工程における反応レートが変動し、結果として平均滞留時間も変動する傾向にある。ここで、下流側の重合工程において必要なリチウム量(レート)は、当該重合工程において得られるポリマーが目標とする分子量の高低に応じて決定される。より具体的には、重合工程で必要なリチウム量レートをy(kg/min)、調製工程における反応器の容積をV(L)とし、反応器へのリチウム供給レート(平均供給速度)をx(kg/min)とし、(反応器内の)開始剤溶液中のリチウム濃度をd(kg/L)とすると、y=x×dが成立する。また、平均滞留時間をθとすると、θ=V/x=(d×V)/yとなる。ここで、製造する重合体の分子量をほぼ均一とする観点から、yは一定とすることが通常であり、Vも一定であるため、上記式からわかるようにθはdに比例する。したがって、リチウム濃度が上昇すると平均滞留時間も上昇する傾向にある。
本実施形態におけるリチウム濃度は、具体的には、(有機リチウムの平均供給速度)/(反応器に供給する全成分の平均供給速度の合計)×(リチウム原子量)/(有機リチウム分子量)×100で算出することができ、上記のとおり重合工程において所望とするポリマーの分子量に応じて決定すればよいが、0.01%〜3%であることが好ましく、より好ましくは0.1%〜2.5%である。上記範囲である場合、開始剤溶液中に難溶性の3量体又は4量体のクラスター組成物が生成することをより効果的に防止できる傾向にあり、結果として配管での析出、詰まり等の発生や、次の重合工程において開始速度の遅延やばらつき発生をより効果的に防止できる傾向にある。
【0037】
本実施形態における調製工程で用いる反応器から重合工程で用いる重合器まで開始剤溶液を移送する際の平均滞留時間は、短いほど良いが、好ましくは10分以内、より好ましくは5分以内である。反応器から重合器までの平均滞留時間を短くするための手段として、反応器を出たあとに溶剤を加えて、溶剤の流れとともに重合器にフィードする手段を選択することができる。
【0038】
本実施形態における開始剤調製工程において、回転式攪拌機を備える槽型反応器を用いる場合、反応効率をより高める観点から、回転式攪拌機が、槽型反応器に対して垂直に配置され、第1の導入部及び第2の導入部が、回転式攪拌機における攪拌羽根の最下端よりも下側に位置し、導出部が、前記攪拌羽根の最上端よりも上側に位置するような構成を採用することが好ましい。上記において、「下側」とは、第1の導入部及び第2の導入部と導出部との位置関係において、第1の導入部及び第2の導入部側を意味する。また、「上側」とは、第1の導入部及び第2の導入部と導出部との位置関係において、導出部側を意味する。さらに、「垂直に配置」とは、回転式攪拌機の本体が、槽型反応器中の幅方向に対して略垂直に伸びていることを意味する。なお、「垂直」を換言すれば、前述の「下側」から「上側」へ向かう方向(槽型反応器内における有機リチウム及び2級アミンの進行方向)と略平行である。
上述の構成を有する槽型反応器の一例を表す説明図を
図1に示す。本実施形態における槽型反応器10は、反応原料である有機リチウムと2級アミンとを反応系内に供給するための第1の導入部1及び第2の導入部2を備えており、反応原料は回転式撹拌機6により撹拌されながら反応し、開始剤溶液として導出部3から導出される。
回転式撹拌機6は、回転軸の上下方向に沿って複数の撹拌羽根を備えるものであってよく、
図1では最上端に位置する攪拌羽根最上部4、及び最下端に位置する攪拌羽根最下部5のみを図示している。
図1においては、第1の導入部1及び第2の導入部2は回転式攪拌機6における攪拌羽根最下部5よりも下側に位置しており、導出部3は攪拌羽根最上部4よりも上側に位置している。槽型反応器10がこのような構成を有する場合、反応効率が一層向上する傾向にある。
【0039】
本実施形態において、反応効率の観点から、槽型反応器10は、槽型反応器の長さLと槽型反応器の径Dに基づいて第1の導入部1、第2の導入部2、導出部3及び回転式撹拌機6の位置関係を調整することが好ましい。具体的には、第1の導入部1及び第2の導入部2は、攪拌羽根最下部5よりL/10以上の下に位置することが好ましく、導出部3は、攪拌羽根最上部4よりL/10以上の上の高さに位置することが好ましい。
【0040】
本実施形態における調製工程では、反応効率の観点から、槽型反応器10は、槽型反応器の長さLと槽型反応器の径Dとの比(L/D)を2以上とするか、槽型反応器に仕切り板を入れて多段形状とするなどの手段で、ショートパスあるいはバックミックスを防止する形状とすることが好ましい。
【0041】
本実施形態における調製工程では、混合手段としてスタティックミキサーを用いることもできる。その場合、単位体積あたりの圧力損失が0.01〜10kW/m
3であることが好ましく、より好ましくは混合素子数が4〜100個であり、レイノルズ数が乱流領域(2300以上)となる反応器であり、反応器としては管状反応器であることがさらに好ましい。その場合、反応効率がより安定して高くなる傾向にある。
【0042】
本実施形態における調製工程では、第1の導入部及び第2の導入部と導出部との温度差を検出し、有機リチウムと2級アミンとの反応率を調整することが好ましい。その場合、変性ジエン系重合体がより効率良く安定して得られる傾向にある。第1の導入部及び第2の導入部の温度は、反応器内の第1の導入部及び第2の導入部の温度、又は有機リチウム及び2級アミン若しくはそれぞれの溶液の温度の平均温度として管理することができる。また、導出部の温度は、反応器内の導出部の温度、又は吐出配管内の温度として管理することができる。第1の導入部及び第2の導入部と導出部との温度差としては、不活性有機溶媒で希釈されているため、有機リチウムと2級アミンの濃度にも影響されるが、好ましくは1℃〜30℃の範囲、より好ましくは2℃〜20℃である。上記温度差に変動がある場合は、有機リチウム又は2級アミン、不活性有機溶媒等のいずれかのフィード速度に変動がある場合、平均滞留時間に変動がある場合、反応率に変動がある場合、反応器外部への放熱量に変動がある場合等が考えられる。平均温度とは、ΣMnCpnTn/ΣMnCpnで表される温度である。ここで、Mn、Cpn、Tnはそれぞれ、成分nにおける質量、比熱、温度を表す。
【0043】
本実施形態における調製工程では、後述する重合の際にランダマイザーとして使用できる極性化合物又はその一部を原料とともに加えてもよい。その場合、有機リチウムと2級アミンの反応がより促進される傾向にある。
【0044】
本実施形態において、有機リチウムと2級アミンのフィード比率は、有機リチウムのリチウムと2級アミンのNH基のモル比が1:0.1〜1:1.5であることが好ましく、1:0.2〜1がより好ましく、1:0.4〜0.9が更に好ましい。上記範囲である場合、性能に優れる変性ジエン系重合体がより効率よく得られる傾向にある。
【0045】
本実施形態においては、有機リチウムと2級アミンが反応してアミノリチウムを含む開始剤溶液が得られる。ここで、開始剤溶液は、アミノリチウムと一部の未反応有機リチウムを含んでいてもよく、好ましくは2級アミンの転化率が90%以上、より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは2級アミンの残存量が微量又はほとんど含まないものとする。残存2級アミンが少ないと、重合工程において連鎖移動が少なく、分子量分布の拡大が抑制され、変性ジエン系重合体の収率、すなわち重合体全体における変性ジエン系重合体の質量割合である変性率が向上する傾向になる。2級アミンの転化率は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0046】
本実施形態において、有機リチウム及び2級アミン、又はこれらの各溶液は、別々のノズルから反応器に導入されることが好ましい。また、これらは反応器導入後ただちに十分な攪拌域に導入されることが好ましい。上記の場合、溶剤不溶性析出物の生成がより効果的に防止される傾向にある。
【0047】
本実施形態では、得られたアミノリチウムを含む開始剤溶液を連続的に重合器に導入する工程を必須とする。アミノリチウムを含む開始剤溶液におけるリチウム量は不純物量に由来して失活する量にもよるが、重合に供する総単量体1モルに対し、0.05〜3ミリモルが好ましく、0.1〜1.5ミリモルがより好ましい。開始剤におけるリチウム量は、目標とする変性ジエン系重合体の数平均分子量に関係し、数平均分子量を上げようとする場合は開始剤におけるリチウム量を減らし、逆に数平均分子量を下げようとする場合は開始剤におけるリチウム量を増やす操作を行う。通常、開始剤におけるリチウム量を増減する操作は、有機リチウムと2級アミンのフィード比率は一定のままで行うことが好ましい。上記リチウム量は、有機リチウムと2級アミンとの仕込み量から算出することができる。
【0048】
<重合工程>
本実施形態における重合工程で用いられる重合用単量体は、共役ジエン単量体50部〜100部、及び共重合可能な単量体50部〜0部を含む。すなわち、本実施形態における重合は、共役ジエン単量体の単独重合、及び共役ジエン単量体及びこれに共重合可能な1種以上の単量体との共重合のいずれであってもよい。なお、上記した各含有量については、本実施形態に係る変性ジエン系重合体の連続的製造方法に使用される重合用単量体の供給比率として示している。
【0049】
本実施形態で用いられる共役ジエン単量体の具体例としては、以下に限定されないが、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられ、一種又は二種以上を組み合わせて用いられる。本実施形態で用いられる共役ジエン単量体の好ましい例としては、1,3−ブタジエン、イソプレンが挙げられる。
【0050】
また、本実施形態で用いられる共重合可能な単量体としては、各種のビニル化合物があり、特に限定されないが、例えば、芳香族ビニル化合物、ビニルシラン化合物などが挙げられる。芳香族ビニル化合物の例としては、以下に限定されないが、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレン、3−(2−ジメチルアミノエチル)スチレン、(ジメチルアミノ)ジメチル−4−ビニルフェニルシラン等が挙げられ、一種又は二種以上を組み合わせて用いられる。本実施形態で用いられる芳香族ビニル化合物の好ましい例としては、スチレンが挙げられる。また、共役ジエン系重合体のコールドフローを防止するために、分岐をコントロールする観点から、ジビニルベンゼン等の多官能芳香族ビニル化合物を使用することもできる。ビニルシラン化合物としては、以下に限定されないが、例えば、(ジメチルアミノ)ジメチルビニルシラン、(ジエチルアミノ)ジエチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジエチルアミノ)エチルビニルシラン、トリス(ジメチルアミノ)ビニルシラン等が挙げられる。
【0051】
本実施形態において、重合用単量体を連続的に重合器に導入する工程が必須である。重合用単量体は、不活性有機溶媒とともに、又は不活性有機溶剤の溶液として、あるいは重合用単量体の不活性有機溶剤の溶液と残りの不活性有機溶剤とともに、連続的に重合器に導入する。本実施形態の重合工程における不活性有機溶剤としては、特に限定されず、例えば、調製工程における不活性有機溶剤と同じものが使用可能である。
【0052】
本実施形態において、重合用単量体の濃度は5質量%〜50質量%が好ましく、8質量%〜30質量%がより好ましい。重合用単量体の濃度は、重合熱による昇温を調節する手段となる。重合体を排出する重合器出口の温度を所望とする温度にするために、重合用単量体及び溶媒の温度、すなわち重合用単量体を導入する重合器入口の温度と、重合熱による昇温、及ジャケット等による除熱・加熱手段等により制御することができる。重合器の出口温度を下げるためには、入口温度を下げる方法、重合用単量体の濃度を下げて重合熱による昇温を少なくする方法、ジャケット等による除熱を行う方法、溶剤の気化熱を利用する方法などがあり、これらの方法を組み合わせて行うことができる。一方、出口温度を上げるには、その逆の方法を行う。ジャケット等による除熱、加熱手段としては、ジャケットの使用、コイル・配管の使用による方法がある。
【0053】
本実施形態において、重合体を排出する重合器出口の温度は、40℃〜100℃が好ましく、45℃〜85℃がより好ましい。この範囲であれば開始位置にアミノ基を有している変性ジエン系重合体がより高い収率で得られる傾向にある。
【0054】
本実施形態における重合器としては、回転式攪拌機を有する重合反応槽であることが好ましい。該重合器を単独で、又は2基以上を直列に配管で繋いで用いることが出来る。重合器の平均滞留時間は10分〜4時間が好ましく、20分〜2時間がより好ましい。
【0055】
本実施形態において、重合体溶液が重合器から連続的に排出される工程を含む。
【0056】
本実施形態において、2種以上の単量体を用いる場合、ランダム共重合体、テーパーランダム共重合体、ブロック共重合体又はそれらの中間的な構造の共重合体が得られる。
低ヒステリシスロスを指向した加硫ゴム組成物を得る目的においては、ランダム共重合体が好ましい。
【0057】
一般に反応性比の異なる単量体をランダム共重合体とする方法としては、ランダマイザーとして特定の極性化合物を添加する方法、重合が進行するに従って、残存単量体比が異なってくるのに合わせ、先に反応する単量体を重合途中に追加フィードする、インクレメント法、又はその併用法が採用される。
【0058】
本実施形態において、ランダマイザーが好ましく用いられる。ここで言うランダマイザーとは、共役ジエン重合体のミクロ構造のコントロール、例えば、ブタジエン重合体又はブタジエン−スチレン共重合体のブタジエン部の1,2結合、イソプレン重合体の3,4結合の増量等、及び、共役ジエン−ビニル芳香族炭化水素共重合体のモノマー単位の組成分布のコントロール、例えば、ブタジエン−スチレン共重合体のブタジエン単位、スチレン単位のランダム化等、の作用を有する化合物である。本実施形態において、ランダマイザーは特に限定されないが、一般に用いられているもの全てを含む。用いられるランダマイザーの代表例としては、次のようなものが挙げられる。
(1)エーテル類
(2)オルトジメトキシベンゼン類
(3)アルカリ金属とケトン又は亜リン酸トリエステルとのコンプレックス
(4)下記一般式で表される化合物
R(OM
1)
n、(RO)
2M
2、R(COOM
1)
n、ROCOOM
1、RSO
3M
1、ROSO
3M
1
(ここで、Rは脂肪族、脂環族及び芳香族の各炭化水素基から選ばれるものであり、M
1はアルカリ金属であり、特に、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム又はセシウムを表し、M
2はアルカリ土類金属であり、具体的にはカルシウム又はバリウムを表し、nは1〜3の整数である。)
(5)第3級アミン
(6)エーテル結合を有する第3級アミン
以下、ランダマイザーについて具体的に説明するが、これらのランダマイザーは、単独で用いることもできるし、これらを併用してもよい。
【0059】
(1)エーテル類の具体例としては、以下に限定されないが、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メトキシメチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン等が挙げられる。
(2)オルトジメトキシベンゼン類の具体例としては、以下に限定されないが、ベラトロール、イソホモベラトロール等が挙げられる。
(3)アルカリ金属とケトン又は亜リン酸トリエステルとのコンプレックスの具体例としては、以下に限定されないが、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソプロピルケトン、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ジベンジルケトン、フルオレノン、キサントン、ミヒラーケトン、アセチルアセトンのようなケトン類及び、トリエチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリベンジルホスファイト、トリノニルホスファイトのような亜リン酸トリエステルと、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム又はセシウムとのコンプレックス等が挙げられる。
【0060】
(4)において、一般式で示したランダマイザーについて説明する。
一般式R(OM
1)
n又は(RO)
2M
2で示されるアルコール、フェノールのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の具体的な例には、以下に限定されないが、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール、tert−アミルアルコール、シクロヘキシルアルコール、アリルアルコール、2−ブテニルアルコール、ベンジルアルコール、フェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、1−ナフチルアルコール、p−ノニルフェノール、ピロガロール等のリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、カルシウム及びバリウムの各塩が含まれる。好ましくは、tert−アミルアルコキシナトリウム、p−ノニルフェノキシナトリウムである。
【0061】
一般式R(COOM
1)
n又はROCOOM
1により示されるアルカリ金属のカルボン酸及び酸性炭酸エステル塩の具体例としては、以下に限定されないが、イソ吉草酸、ラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ロジン酸、安息香酸、ピメリン酸、酸性炭酸n−ドデシル、酸性炭酸フェニル等のリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウム塩等を挙げることができる。
【0062】
一般式RSO
3M
1又はROSO
3M
1により表されるアルカリ金属のスルホン酸及び硫酸エステル塩の具体例としては、以下に限定されないが、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジイソプロピルナフタリンスルホン酸、N−メチル−N−メタンスルホン酸塩ラウリルアミド、ラウリルアルコールの硫酸エステル塩、カプロイルエチレングリコール硫酸エステル等のリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウム塩が含まれる。
【0063】
(5)第3級アミンの具体例としては、以下に限定されないが、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等が挙げられる。
【0064】
(6)エーテル結合を有する第3級アミンの具体例としては、以下に限定されないが、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス[2−(1−ピペリジル)エチル]エーテルが挙げられる。
【0065】
上記した中で、好ましいランダマイザーとしては、前記(1)エーテル類及び前記(5)第3級アミンが挙げられる。
【0066】
ランダマイザーの使用量は有機リチウム化合物1モル当量当たり、0.01〜1000モル当量の範囲で用いることが好ましい。
【0067】
本実施形態において、ランダム化の方法としてインクレメント法も好ましく用いられる。以下、インクレメント法を具体的に説明すると、重合器の第1反応帯域に重合開始剤とともに2種又はそれ以上の単量体をフィードし、第2反応帯域に、又は、必要により第3反応帯域に、反応性比が高い単量体を追加フィードする方法である。追加フィードをインクレメントフィードと呼ぶ。ここで、重合の開始反応段階を第1反応帯域と呼び、以降成長反応段階を第2、第3反応帯域とする。反応性比が高い単量体は、好ましくは第1反応帯域に全体の50質量%から95質量%をフィードし、第2反応帯域以降に残りの50質量%から5質量%を加える。追加フィードする単量体としては、反応性比が高い単量体にさらに反応性比の低い単量体を混合して用いてもよい。
【0068】
具体的には、ブタジエン−スチレンランダム共重合体を製造する場合には、例えば、2基連続重合において、第1の重合器の底部に開始剤、溶媒とともにブタジエン単量体の全体の80質量%とスチレンの100質量%をフィードし、第1重合器の上部にブタジエン単量体の全体の10質量%をフィードし、第2重合器の底部に重合反応液とともにブタジエン単量体の全体の10質量%をフィードするという方法が挙げられる。
【0069】
本実施形態において得られる変性ジエン系重合体が、変性ランダム共重合体である場合、反応性比が高い単量体と反応性比が低い単量体の共重合体における単量体の構成が、ランダムに分布していることが好ましいが、不均一であると反応性比が低い単量体が連なる連鎖構造が生成する場合がある。その連鎖構造を分析する方法として、ブタジエンとスチレンの共重合体の場合、Kolthoffの方法(I.M.KOLTHOFF.et al.,J.Polym.Sci. 1,429(1946)に記載の方法)により重合体を分解し、メタノールに不要な芳香族ビニル単位が30以上の連鎖となっているポリスチレン部を定量分析する公知の方法が用いられる。芳香族ビニル単位が30以上の連鎖となっているポリスチレン部が、重合体の総量に対して、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
【0070】
本実施形態において、開始剤溶液と重合用単量体及び溶媒は、重合器へ連続的にフィードする。フィード方法については種々の方法が選択できる。以下に限定されないが、例えば、アミノリチウムを含む開始剤溶液と、重合用単量体又は重合用単量体の溶液及び溶媒をそれぞれ別々の導入口から重合器にフィードする方法、アミノリチウムを含む開始剤溶液と、重合用単量体又は重合用単量体の溶液及び溶媒を別の導入口から重合器にフィードする方法、アミノリチウムを含む開始剤溶液と溶媒の一部を1つの導入口から、重合用単量体又は重合用単量体の溶液と残りの溶媒を他の導入口からフィードする方法、アミノリチウムを含む開始剤溶液と、重合用単量体の少なくとも一種を混合してフィードする方法、アミノリチウムを含む開始剤溶液、重合用単量体又は重合用単量体の溶液及び溶媒をあらかじめ混合して、一つの導入口からフィードする方法、などが選択できる。これらのうち、アミノリチウムを含む開始剤溶液と溶媒の一部を1つの導入口から、重合用単量体又は重合用単量体の溶液と残りの溶媒を他の導入口からフィードする方法がより好ましい。この場合、副反応が起こりにくく、重合工程がより安定する傾向にある。
【0071】
本実施形態において、重合用単量体又は重合用単量体の溶液に有機金属化合物を混合することにより、当該重合用単量体に含まれる不純物を不活性化する工程と、不活性化後の重合用単量体又は重合用単量体の溶液を重合器に導入する工程と、をさらに含むことが好ましい。より好ましくは、有機金属化合物としてはアミノリチウムを含まないものを用いることである。有機金属としてアミノリチウムを含む場合、不純物と反応した後に2級アミンが生成し、重合工程において連鎖移動を含む副反応を起こす傾向がある。
【0072】
重合用単量体に含まれる不純物の例としては、特に限定されないが、微量の水、アセチレン類、1,2−ジエン化合物、重合禁止剤としてのフェノール化合物等である。重合用単量体としては、共役ジエン単量体、共重合可能な他の単量体のうちいずれか、又は全ての単量体若しくは少なくともその一部である。アセチレン類としては、特に限定されないが、例えば、ビニルアセチレン、メチルアセチレン、フェニルアセチレンが挙げられ、1,2−ジエン化合物としては、特に限定されないが、例えば、1,2−ブタジエン、プロパジエンが挙げられる。
【0073】
有機金属化合物としては、特に限定されないが、有機基の炭素と金属の結合を有し、溶剤に可溶であって、後の重合に影響が小さいものが好ましい。金属としては、特に限定されないが、1族、2族、13族が好ましく、具体例としては、以下に限定されないが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム等が挙げられる。有機金属化合物の具体例としては、以下に限定されないが、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム等のアルキルリチウム、ジブチルマグネシウム、ブチルエチルマグネシウム等のジアルキルマグネシウム、トリエチルアルミニウム、ジエチルイソプロピルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウムが挙げられる。さらに好ましい有機金属化合物としては、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムである。
【0074】
上述した重合用単量体に有機金属化合物を混合してフィードする方法は、単量体中の不純物の影響を少なくするため重合工程の安定化に寄与し、分子量の変動を抑える効果がある。
【0075】
有機金属化合物を加える量については、使用する重合用単量体中の不純物量をあらかじめ測定しておき、それに相当する量を過不足なく加えることが好ましい。すなわち、有機金属化合物を加える量については、使用する重合用単量体中の不純物量により適宜調整できるが、好ましくは重合用単量体1モル当たり0.01〜1ミリモルである。
【0076】
本実施形態において、開始剤溶液と溶剤その他との混合、重合用単量体又は重合用単量体の溶液と有機金属化合物の混合は、公知の種々の方法が実施可能であるが、好ましくは連続的に混合する方法であり、例えば配管の結合、スタティックミキサー、ベンチュリ管等の混合手段を用いることが出来る。重合器の入口までに、重合用単量体が重合反応を開始しない十分低い温度で、かつ短い平均滞留時間であることが好ましい。好ましくは重合器入口配管内温度は、40℃以下、より好ましくは30℃以下である。好ましくは混合後重合器入口までの平均滞留時間は10分以内、より好ましくは5分以内である。
【0077】
本実施形態における調製工程において、有機リチウムと2級アミンを連続的に反応させる際に、反応器中に重合用単量体の少なくとも一種を存在させることができる。その場合は、重合用単量体中の不純物と有機リチウムが早期に反応して、高い収率でアミノリチウムを含む開始剤溶液を得ることができ、さらに重合工程の安定化に効果がある。
【0078】
<変性工程>
本実施形態における重合体溶液を重合器から連続的に排出する工程で、さらに、重合体溶液に末端変性剤を連続的に加える工程を含むことが好ましく、より好ましくは重合体溶液に末端変性剤を連続的に加える変性工程と、変性工程を経た重合体溶液から溶剤を除去する工程と、をさらに含む。末端変性剤を連続的に加える工程により、終了末端が変性された変性ジエン系重合体とすることができる。末端変性剤としては、特に限定されないが、単官能の化合物を用いると、直鎖状の両末端変性ジエン系重合体が得られ、多官能の化合物を用いると、分岐状の両末端変性ジエン系重合体が得られる。好ましくは、末端変性剤として窒素、ケイ素、スズ、リン、酸素、硫黄、ハロゲンからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む単官能又は多官能の化合物が用いられる。また、オニウム生成剤を含む末端変性剤を加えて反応させ、上記変性共役ジエン系重合体にオニウム構造を導入することができる。また、これらの元素を含む官能基を分子中に複数含有する末端変性剤、又はこれらの元素を複数含む官能基を含有する末端変性剤を用いることもできる。これらの末端変性剤を連続的に加える工程により、より低ヒステリシスロスを指向した加硫ゴム組成物が得られる傾向にある。
【0079】
(各種末端変性剤)
末端変性剤としての窒素含有化合物としては、以下に限定されないが、例えば、イソシアナート化合物、イソチオシアナート化合物、イソシアヌル酸誘導体、窒素基含有カルボニル化合物、窒素基含有ビニル化合物、窒素基含有エポキシ化合物等が挙げられる。
【0080】
末端変性剤としてのケイ素含有化合物としては、以下に限定されないが、例えば、ハロゲン化ケイ素化合物、エポキシ化ケイ素化合物、ビニル化ケイ素化合物、アルコキシケイ素化合物、窒素含有基を含むアルコキシケイ素化合物等が挙げられる。
【0081】
末端変性剤としてのスズ含有化合物としては、以下に限定されないが、例えば、ハロゲン化スズ化合物、有機スズカルボキシレート化合物等が挙げられる。
【0082】
末端変性剤としてのリン含有化合物としては、以下に限定されないが、例えば、亜リン酸エステル化合物、ホスフィノ化合物等が挙げられる。
【0083】
末端変性剤としての酸素含有化合物としては、以下に限定されないが、例えば、エポキシ化合物、エーテル化合物、エステル化合物等が挙げられる。
【0084】
末端変性剤としての硫黄含有化合物としては、以下に限定されないが、例えば、メルカプト基誘導体、チオカルボニル化合物、イソチオシアナート等が挙げられる。
【0085】
末端変性剤としてのハロゲン含有化合物としては、以下に限定されないが、例えば、上記のハロゲン化ケイ素化合物、ハロゲン化スズ化合物等が挙げられる。
【0086】
末端変性剤としてのオニウム生成剤としては、以下に限定されないが、例えば、1級又は2級のアミンを形成しうる保護化アミン化合物(アンモニウムを生成する)、ヒドロホスフィンを形成しうる保護化ホスフィン化合物(ホスフォニウムを生成する)、水酸基、チオールを形成しうる化合物(オキソニウム、スルホニウムを生成する)等が挙げられ、オニウム生成剤と上記変性共役ジエン系重合体を結合するための官能基をそれぞれ分子中に有する末端変性剤を用いることが好ましい。上記変性共役ジエン系重合体を結合するための官能基としては、以下に限定されないが、例えば、カルボニル基(ケトン、エステル等)、ビニル基等の不飽和基、エポキシ基、ハロゲン化ケイ素基、アルコキシケイ素基等が挙げられる。
【0087】
末端変性剤の具体例としては、以下に限定されないが、イソシアナート化合物として、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメリックタイプのジフェニルメタンジイソシアナート(C−MDI)、フェニルイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、ブチルイソシアナート、1,3,5−ベンゼントリイソシアナート等が挙げられる。また、イソシアヌル酸誘導体として、以下に限定されないが、例えば、1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−トリ(オキシラン−2−イル)−1,3,5−トリアジナン−2,4,6−トリオン、1,3,5−トリス(イソシアナトメチル)−1,3,5−トリアジナン−2,4,6−トリオン、1,3,5−トリビニル−1,3,5−トリアジナン−2,4,6−トリオン、等が挙げられる。
【0088】
末端変性剤としての窒素基含有カルボニル化合物の具体例としては、以下に限定されないが、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−エチル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−3−(2−メトキシエチル)−2−イミダゾリジノン、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピペリドン、N−メチル−2−キノロン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、メチル−2−ピリジルケトン、メチル−4−ピリジルケトン、プロピル−2−ピリジルケトン、ジ−4−ピリジルケトン、2−ベンゾイルピリジン、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、N,N−ジメチル−N’,N’−ジフェニル尿素、N,N−ジエチルカルバミン酸メチル、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチル−N’,N’−ジメチルアミノアセトアミド、N,N−ジメチルピコリン酸アミド、N,N−ジメチルイソニコチン酸アミド等が挙げられる。
【0089】
末端変性剤としての窒素基含有ビニル化合物の具体例としては、以下に限定されないが、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチルマレイミド、N−メチルフタルイミド、N,N−ビストリメチルシリルアクリルアミド、モルホリノアクリルアミド、3−(2−ジメチルアミノエチル)スチレン、(ジメチルアミノ)ジメチル−4−ビニルフェニルシラン、4,4’−ビニリデンビス(N,N−ジメチルアニリン)、4,4’−ビニリデンビス(N,N−ジエチルアニリン)、1,1−ビス(4−モルホリノフェニル)エチレン、1−フェニル−1−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)エチレン等が挙げられる。
【0090】
末端変性剤としての窒素基含有エポキシ化合物の具体例としては、以下に限定されないが、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、4,4−メチレン−ビス(N,N−ジグリシジルアニリン)、1,4−ビス(N,N−ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、4,4’−ビス(ジグリシジルアミノ)ベンゾフェノン、4−(4−グリシジルピペラジニル)−(N,N−ジグリシジル)アニリン、2−[2−(N,N−ジグリシジルアミノ)エチル]−1−グリシジルピロリジン、ビス(グリシジルメチルアニリン)、N,N‘−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、4,4’−ジグリシジル−ジフェニルメチルアミン、4,4’−ジグリシジル−ジベンジルメチルアミン、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルオルソトルイジン、N,N−ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0091】
末端変性剤としてのハロゲン化ケイ素化合物の具体例としては、以下に限定されないが、ジブチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、テトラクロロシラン、トリス(トリメチルシロキシ)クロロシラン、トリス(ジメチルアミノ)クロロシラン、ヘキサクロロジシラン、ビス(トリクロロシリル)メタン、1,2−ビス(トリクロロシリル)エタン、1,2−ビス(メチルジクロロシリル)エタン、1,4−ビス(トリクロロシリル)ブタン、1,4ビス(メチルジクロロシリル)ブタン等が挙げられる。
【0092】
末端変性剤としてのエポキシ化ケイ素化合物の具体例としては、以下に限定されないが、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、エポキシ変性シリコーン等が挙げられる。
【0093】
末端変性剤としてのアルコキシケイ素化合物の具体例としては、以下に限定されないが、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリフェノキシメチルシラン、メトキシ置換ポリオルガノシロキサン等が挙げられる。
【0094】
末端変性剤としての窒素含有基を含むアルコキシケイ素化合物の具体例としては、以下に限定されないが、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−モルホリノプロピルトリメトキシシラン、3−ピペリジノプロピルトリエトキシシラン、3−ヘキサメチレンイミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−(4−メチル−1−ピペラジノ)プロピルトリエトキシシラン、1−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−3−メチルヘキサヒドロピリミジン、3−(4−トリメチルシリル−1−ピペラジノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(3−トリエチルシリル−1−イミダゾリジニル)プロピルメチルジエトキシシラン、3−(3−トリメチルシリル−1−ヘキサヒドロピリミジニル)プロピルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノ−2−(ジメチルアミノメチル)プロピルトリメトキシシラン、ビス(3−ジメトキシメチルシリルプロピル)−N−メチルアミン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)−N−メチルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)メチルアミン、トリス(トリメトキシシリル)アミン、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン、N,N,N’,N’−テトラ(3−トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3−シアノプロピルトリメトキシシラン、2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジメトキシ−1−(4−トリメトキシシリルブチル)−1−アザ−2−シラシクロヘキサン、2,2−ジメトキシ−1−(3−ジメトキシメチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジメトキシ−1−フェニル−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−ブチル−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジメトキシ−1−メチル−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジメトキシ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタン、2,2−ジメトキシ−8−(N,N−ジエチルアミノ)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタン等が挙げられる。
【0095】
末端変性剤としての1級又は2級のアミンを形成しうる保護化アミン化合物として、不飽和結合と保護化アミンを分子中に有する化合物の具体例として、以下に限定されないが、4,4’−ビニリデンビス〔N,N−ビス(トリメチルシリル)アニリン〕、4,4’−ビニリデンビス〔N,N−ビス(トリエチルシリル)アニリン〕、4,4’−ビニリデンビス〔N,N−ビス(t−ブチルジメチルシリル)アニリン〕、4,4’−ビニリデンビス〔N−メチル−N−(トリメチルシリル)アニリン〕、4,4’−ビニリデンビス〔N−エチル−N−(トリメチルシリル)アニリン〕、4,4’−ビニリデンビス〔N−メチル−N−(トリエチルシリル)アニリン〕、4,4’−ビニリデンビス〔N−エチル−N−(トリエチルシリル)アニリン〕、4,4’−ビニリデンビス〔N−メチル−N−(t−ブチルジメチルシリル)アニリン〕、4,4’−ビニリデンビス〔N−エチル−N−(t−ブチルジメチルシリル)アニリン〕、1−〔4−N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノフェニル〕−1−〔4−N−メチル−N−(トリメチルシリル)アミノフェニル〕エチレン、1−〔4−N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノフェニル〕−1−〔4−N,N−ジメチルアミノフェニル〕エチレン等が挙げられる。1級又は2級のアミンを形成しうる保護化アミン化合物として、アルコキシシランと保護化アミンを分子中に有する化合物の具体例として、以下に限定されないが、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−(4−トリメチルシリル−1−ピペラジノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(3−トリエチルシリル−1−イミダゾリジニル)プロピルメチルジエトキシシラン、3−(3−トリメチルシリル−1−ヘキサヒドロピリミジニル)プロピルトリメトキシシラン、2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジメトキシ−1−(4−トリメトキシシリルブチル)−1−アザ−2−シラシクロヘキサン、2,2−ジメトキシ−1−(3−ジメトキシメチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジメトキシ−1−フェニル−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−ブチル−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジメトキシ−1−メチル−1−アザ−2−シラシクロペンタン等が挙げられる。
【0096】
ハロゲン化スズ化合物の具体例としては、以下に限定されないが、テトラクロロスズ、テトラブロムスズ、トリクロロブチルスズ、トリクロロオクチルスズ、ジブロムジメチルスズ、ジクロロジブチルスズ、クロロトリブチルスズ、クロロトリオクチルスズ、クロロトリフェニルスズ、1,2−ビス(トリクロロスタニル)エタン、1,2−ビス(メチルジクロロスタニル)エタン、1,4−ビス(トリクロロスタニル)ブタン、1,4ビス(メチルジクロロスタニル)ブタン等が挙げられる。
【0097】
有機スズカルボキシレート化合物の具体例としては、以下に限定されないが、エチルスズトリステアレート、ブチルスズトリオクタノエート、ブチルスズトリスステアレート、ブチルスズトリラウレート、ジブチルスズビスオクタノエート等が挙げられる。
【0098】
亜リン酸エステル化合物の具体例としては、以下に限定されないが、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリブチル、亜リン酸トリフェノキシド等が挙げられる。
【0099】
ホスフィノ化合物の具体例としては、以下に限定されないが、P,P−ビス(トリメチルシリル)ホスフィノプロピルトリメトキシシシラン、P,P−ビス(トリエチルシリル)ホスフィノプロピルメチルエトキシシラン等の保護化ホスフィノ化合物、3−ジメチルフォスフィノプロピルトリメトキシシシラン、3−ジフェニルフォスフィノプロピルトリメトキシシシラン等が挙げられる。
【0100】
酸素含有化合物の具体例として、以下に限定されないが、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル、1,4−ジグリシジルベンゼン、1,3,5−トリグリシジルベンゼン、ポリエポキシ化液状ポリブタジエン、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のポリエポキシ化合物、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル等のエステル化合物が挙げられ、これらは重合体末端に水酸基を生成する。
【0101】
硫黄含有化合物の具体例として、以下に限定されないが、S−トリメチルシリルチオプロピルトリメトキシシシラン、S−トリエチルシリルチオプロピルメチルジエチルシラン等の保護化チオール化合物、S−メチルチオプロピルトリメトキシシシラン、S−エチルチオプロピルメチルジエトキシシシラン、N,N−ジエチルジチオカルバミン酸エチル、フェニルイソチオシアナート、フェニル−1,4−ジイソチオシアナート、ヘキサメチレンジイソチオシアナート、ブチルイソチオシアナート等が挙げられる。
【0102】
本実施形態において、重合体溶液に、水、アルコールなどの重合停止剤、フェノール系、リン系、硫黄系などの酸化防止剤、硼酸、カルボン酸などの中和着色防止剤、伸展油などを加えることができる。
【0103】
酸化防止剤としては、特に限定されず、公知のものが用いられるが、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェノール)プロピオネート、2−メチル−4,6−ビス[(オクチルチオ)メチル]フェノール等が好ましい。
【0104】
本実施形態において、変性ジエン系重合体の加工性を改善するために、必要に応じて伸展油を変性ジエン系重合体に添加することができる。伸展油を変性ジエン系重合体に添加する方法としては、特に限定されないが、重合体溶液に伸展油を加え、混合した後、脱溶剤する方法で油展変性ジエン系重合体を得る方法が好ましい。伸展油としては、以下に限定されないが、例えば、アロマ油、ナフテン油、パラフィン油等が挙げられる。これらの中でも、環境安全上の観点や、オイルブリード防止及びウェットグリップ特性の観点から、IP346法による多環芳香族(PCA)成分が3質量%以下であるアロマ代替油が好ましい。アロマ代替油としては、以下に限定されないが、例えば、Kautschuk Gummi Kunststoffe 52(12)799(1999)に示されるTDAE(Treated Distillate Aromatic Extracts)、MES(Mild Extraction Solvate)等の他、RAE(Residual Aromatic Extracts)等が挙げられる。伸展油の添加量は、特に限定されないが、通常は、変性ジエン系重合体100質量部に対し、0〜60質量部であり、5〜55質量部が好ましい。
【0105】
本実施形態において、重合体溶液から溶剤を除去する方法としては、特に限定されず、公知の手段が実施可能である。以下に限定されないが、例えば、スチームストリッピングで脱溶剤後、脱水、乾燥する方法、フラッシュタンクで濃縮し、さらにベント押出機等で脱揮する方法、ベント押出機又はドラムドライヤー等で直接脱揮する方法等が用いられる。
【0106】
本実施形態において、得られる変性ジエン系重合体は、好ましくは重量平均分子量が5万から200万であり、非油展の重合体の110℃でのムーニー粘度は30〜150であることがより好ましい。油展の重合体であれば、100℃のムーニー粘度が20から100であることがより好ましい。重量平均分子量及びムーニー粘度は、それぞれ、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0107】
本実施形態において得られる共役ジエン系重合体中の結合共役ジエン量は、特に限定されないが、50〜100質量%であることが好ましく、60〜80質量%であることがより好ましい。また、本実施形態において得られる共役ジエン系重合体中の結合芳香族ビニル量は、特に限定されないが、0〜50質量%であることが好ましく、20〜40質量%であることがより好ましい。結合共役ジエン量及び結合芳香族ビニル量が上記範囲であると、省燃費性とウェットグリップ性のバランスにさらに優れる加硫物が得られる傾向にある。ここで、結合芳香族ビニル量は、フェニル基の紫外吸光によって測定でき、この値から結合共役ジエン量も求めることができる。具体的には、後述する実施例に従った方法により測定することができる。
【0108】
また、本実施形態において得られる共役ジエン系重合体のビニル結合量は、特に限定されないが、10〜75モル%であることが好ましく、25〜65モル%であることがより好ましい。ビニル結合量が上記範囲であると、省燃費性とウェットグリップ性のバランスにさらに優れる加硫物が得られる傾向にある。ここで、変性共役ジエン系重合体がブタジエンとスチレンの共重合体である場合には、ハンプトンの方法(R.R.Hampton,Analytical Chemistry,21,923(1949))により、ブタジエン結合単位中のビニル結合量(1,2−結合量)を求めることができる。
ミクロ構造(上記変性共役ジエン系重合体中の各結合量)が上記範囲にあり、さらに変性共役ジエン系重合体のガラス転移温度が−45〜−15℃の範囲にあるときに、省燃費性とウェットグリップ性のバランスにより一層優れた加硫物が得られる傾向にある。ガラス転移温度については、ISO22768:2006に従い、所定の温度範囲で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度とする。
【0109】
本実施形態において得られる変性共役ジエン系重合体の、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって得られるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、好ましくは20,000〜2,000,000、より好ましくは100,000〜1,000,000、さらに好ましくは150,000〜800,000であり、よりさらに好ましくは200,000〜600,000である。上記下限値以上の分子量とすることで、加硫物としたときの強度が一層向上する傾向にあり、上記上限値以下の分子量とすることで、加工性が一層向上する傾向にある。また、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)は、加硫物の物性の観点から、好ましくは1.05〜3.0、より好ましくは1.1〜2.5である。
【0110】
<変性ゴム状重合体の組成物>
本実施形態において、得られる変性ジエン系重合体は、必要により他のゴム状重合体を配合し、補強性充填材を配合した組成物とすることができる。さらに架橋剤を配合して加硫ゴム組成物とすることができる。
【0111】
他のゴム状重合体としては、本実施形態で得られる変性ゴム状重合体以外のゴム状重合体である。このようなゴム状重合体としては、特に限定されず、例えば、ポリブタジエン、SBR、天然ゴム、合成ポリイソプレンの他、EPゴム、ブチルゴム等の非ジエン系ゴム状重合体が挙げられる。
【0112】
補強性充填剤としては、以下に限定されないが、例えば、シリカ系無機充填材、カーボンブラック等が挙げられる。シリカ系充填剤としては、以下に限定されないが、例えば、シリカ、クレイ、タルク、マイカ、珪藻土、ウォラストナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、ガラス繊維等の無機繊維状物質が挙げられる。シリカとしては、以下に限定されないが、例えば、湿式シリカ、乾式シリカ、合成珪酸塩シリカ等が挙げられる。これらの中でも湿式シリカが性能バランスに優れ、好ましく用いられる。シリカ系無機充填材のBET吸着法で求められる窒素吸着比表面積は、100〜300m
2/gであることが好ましく、170〜250m
2/gであることがより好ましい。また必要に応じて、比較的比表面積が小さい(例えば、比表面積が200m
2/g以下の)シリカ系無機充填剤と、比較的比表面積の大きい(例えば、比表面積が200m
2/g以上の)シリカ系無機充填剤とを組み合わせて用いることが出来る。変性共役ジエン系重合体の組成物におけるシリカ系無機充填材の配合量は、本実施形態で得られる変性ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対し、0.5〜300質量部であることが好ましい。
【0113】
カーボンブラックとしては、特に限定されず、例えば、SRF、FEF、HAF、ISAF、SAF等の各クラスのカーボンブラックが使用できる。カーボンブラックの配合量は、本実施形態で得られる変性ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対し、0.5〜100質量部であることが好ましい。
【0114】
本実施形態において、得られる変性ジエン系重合体の組成物としては、さらにシランカップリング剤、ゴム用軟化剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤を加えることができ、さらに必要により、その他の軟化剤、液状樹脂、その他の充填材、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、着色剤、滑剤を加えることができる。これらは、特に限定されず、各種の公知のものが使用できる。
【0115】
シランカップリング剤としては、ゴム成分とシリカ系無機充填剤との相互作用を緊密にする機能を有するものであり、一般的には、硫黄結合又はチオール部分とアルコキシシリル基又はシラノール基部分を1分子中に有する化合物が用いられる。具体的には、以下に限定されないが、例えば、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−ジスルフィド、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、エボニックデグッサ社製のSi363、Momentive社製のNXT−Z30、NXT−Z45、NXT−Z60等が挙げられる。シランカップリング剤の配合量は、上述したシリカ系無機充填剤100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましい。
【0116】
加硫剤としては、以下に限定されないが、例えば、有機過酸化物及びアゾ化合物等のラジカル発生剤、オキシム化合物、ニトロソ化合物、ポリアミン化合物、硫黄、硫黄化合物が使用できる。加硫剤の使用量は、ゴム成分100質量部に対して0.01〜15質量部が好ましい。また、加硫促進剤としては、以下に限定されないが、例えば、スルフェンアミド系、グアニジン系、チウラム系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、チアゾ−ル系、チオ尿素系、ジカルバメート系が用いられる。加硫促進剤の使用量としては、ゴム成分100質量部に対して0.01〜20質量部が好ましい。加硫助剤としては、以下に限定されないが、例えば、亜鉛華、ステアリン酸等が使用できる。
【0117】
本実施形態において、得られる変性ジエン系重合体の組成物の製造方法としては、各種の混錬り機を用いる方法が選択できる。例えば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機等による溶融混練り法が好ましい。一般に加硫温度としては、120〜200℃が好ましい。
【実施例】
【0118】
以下に実施例を挙げて本実施形態を更に具体的に説明するが、本実施形態はその要旨を越えない限り、これら実施例によって限定されるものではない。
各種の測定は下記の方法によった。
【0119】
[平均滞留時間]
平均滞留時間は、反応器容積(撹拌翼/エレメントの体積を除いた容積)を2級アミンの平均供給速度及び溶媒の平均供給速度の和で除した値として算出した。具体的には、表1に示されている「供給アミン(mL/分)」(ピペリジン単体の平均供給速度)の値と、「溶媒(mL/分)」(n−ブチルリチウムを溶解する溶媒及びピペリジンと合流する溶媒の全体としての平均供給速度)の値とを用いて算出した。
【0120】
[2級アミンの残存量(転化率)]
アミノリチウムを含む開始剤溶液に、リチウムに対し過剰量のテトラメトキシシランを加え、反応を停止させた。反応停止後の溶液を試料として、ガスクロマトグラフィー(GC)測定装置(Agilent社製の商品名「GC7890A」)を使用して、FID検出器を用いて残存する2級アミン量を測定した。濃度既知の試料により作成した検量線に基づき、2級アミン量を定量し、仕込量に対する減少率を転化率とした。カラムはAgilent社製の商品名「CP7447」を使用し、その他の測定条件は以下のとおりとした。
<注入口条件>
注入口温度:270℃
注入方法:スプリット法 30:1
注入量:3μL
<カラム条件>
昇温条件:100℃で16分保持し、次いで30℃/分で昇温し、次いで250℃×4分保持
カラム流量:1.8mL/分
<検出器条件>
検出器温度:300℃
【0121】
(物性1)結合スチレン量
変性共役ジエン系重合体を試料として、試料100mgを、クロロホルムで100mLにメスアップし、溶解して測定サンプルとした。スチレンのフェニル基による紫外線吸収波長(254nm付近)の吸収量により、試料である変性共役ジエン系重合体100質量%に対しての結合スチレン量(質量%)を測定した(島津製作所社製の分光光度計「UV−2450」)。
【0122】
(物性2)ブタジエン部分のミクロ構造(1,2−ビニル結合量)
変性共役ジエン系重合体を試料として、試料50mgを、10mLの二硫化炭素に溶解して測定サンプルとした。溶液セルを用いて、赤外線スペクトルを600〜1000cm
-1の範囲で測定して、所定の波数における吸光度によりハンプトンの方法(R.R.Hampton,Analytical Chemistry 21,923(1949)に記載の方法)の計算式に従い、ブタジエン部分のミクロ構造、すなわち、1,2−ビニル結合量(mol%)を求めた(日本分光社製のフーリエ変換赤外分光光度計「FT−IR230」)。
【0123】
(物性3)分子量
共役ジエン系重合体又は変性共役ジエン系重合体を試料として、ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラムを3本連結したGPC測定装置(東ソー社製の商品名「HLC−8320GPC」)を使用して、RI検出器(東ソー社製の商品名「HLC8020」)を用いてクロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンを使用して得られる検量線に基づいて、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)と分子量分布(Mw/Mn)と、変性共役ジエン系重合体のピークトップ分子量(Mp
1)と共役ジエン系重合体のピークトップ分子量(Mp
2)とその比率(Mp
1/Mp
2)と、分子量200万以上500万以下の割合と、を求めた。溶離液はTHFを使用した。カラムは、東ソー社製の商品名「TSKgel SuperMultiporeHZ−H」を3本接続し、その前段にガードカラムとして東ソー社製の商品名「TSKguardcolumn SuperMP(HZ)−H」を接続して使用した。測定用の試料10mgを20mLのTHFに溶解して測定溶液とし、測定溶液10μLをGPC測定装置に注入して、オーブン温度40℃、THF流量0.35mL/分の条件で測定した。
【0124】
(物性4)重合体ムーニー粘度
変性共役ジエン系重合体を試料として、ムーニー粘度計(上島製作所社製の商品名「VR1132」)を用い、JIS K6300に準拠し、L形ローターを用いてムーニー粘度を測定した。まず、試料を1分間試験温度で予熱した後、ローターを2rpmで回転させ、4分後のトルクを測定してムーニー粘度(ML
(1+4))とした。
【0125】
(物性5)変性率
共役ジエン系重合体又は変性共役ジエン系重合体を試料として、シリカ系ゲルを充填剤としたGPCカラムに、変性した塩基性重合体成分が吸着する特性を応用することにより、測定した。試料及び低分子量内部標準ポリスチレンを含む試料溶液を、ポリスチレン系カラムで測定したクロマトグラムと、シリカ系カラムで測定したクロマトグラムと、の差分よりシリカ系カラムへの吸着量を測定し、変性率を求めた。具体的には、以下に示すとおりとした。
試料溶液の調製:試料10mg及び標準ポリスチレン5mgを20mLのTHFに溶解させて、試料溶液とした。
ポリスチレン系カラムを用いたGPC測定条件:東ソー社製の商品名「HLC−8320GPC」を使用して、THFを溶離液として用い、試料溶液10μLを装置に注入し、カラムオーブン温度40℃、THF流量0.35mL/分の条件で、RI検出器を用いてクロマトグラムを得た。カラムは、東ソー社製の商品名「TSKgel SuperMultiporeHZ−H」を3本接続し、その前段にガードカラムとして東ソー社製の商品名「TSKguardcolumn SuperMP(HZ)−H」を接続して使用した。THFを溶離液として用い、試料溶液200μLを装置に注入して測定した。カラムは、ガードカラム:東ソー社製の商品名「TSKguardcolumn SuperH−H」、カラム:東ソー社製の商品名「TSKgel SuperH5000」、「TSKgel SuperH6000」、「TSKgel SuperH7000」を使用した。カラムオーブン温度40℃、THF流量1.0mL/分の条件で、RI検出器(東ソー社製 HLC8020)を用いて測定しクロマトグラムを得た。
シリカ系カラムを用いたGPC測定条件:東ソー社製の商品名「HLC−8320GPC」を使用して、THFを溶離液として用い、試料溶液50μLを装置に注入し、カラムオーブン温度40℃、THF流量0.5ml/分の条件で、RI検出器を用いてクロマトグラムを得た。カラムは、商品名「Zorbax PSM−1000S」、「PSM−300S」、「PSM−60S」を接続して使用し、その前段にガードカラムとして商品名「DIOL 4.6×12.5mm 5micron」を接続して使用した。
変性率の計算方法:ポリスチレン系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、試料のピーク面積をP1、標準ポリスチレンのピーク面積をP2、シリカ系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、試料のピーク面積をP3、標準ポリスチレンのピーク面積をP4として、下記式より変性率(%)を求めた。
変性率(%)=[1−(P2×P3)/(P1×P4)]×100
(ここで、P1+P2=P3+P4=100である。)
【0126】
[実施例1]
<開始剤の調製工程>
内容量230mL(撹拌翼の体積を除いた容積207mL)で、内径53mm、長さ105mmの槽型反応器であって、反応器の底部から15mm上を最下端とする幅20mm、径40mmの攪拌翼及び反応器の頂部から15mm下を最上端とする幅20mm、径40mmの攪拌翼から構成される上下2段の攪拌翼を有し、回転数100rpmである回転式攪拌機を備えた反応器を用いた。すなわち、2級アミンとしてピペリジン、有機リチウムとしてn−ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液を用い、溶媒としてシクロヘキサンを用い、それぞれ一定の供給速度で反応器に連続的に導入した。ピペリジンとシクロヘキサンは反応器手前で予め配管で合流させ混液とし、それぞれの溶液は底部に設けた2本のノズルから導入し、頂部の1本のノズルから排出した。すなわち、導入ノズルは攪拌翼の最下端から15mm下に、排出ノズルは攪拌翼の最上端から15mm上に設けた。各成分の平均供給速度を表1に示す。ここで、n−ブチルリチウム(ノルマルブチルリチウム)の平均供給速度はノルマルブチルリチウムのシクロヘキサン溶液の平均供給速度を示し、ピペリジン(供給アミン)の平均供給速度はシクロヘキサンと合流する前の平均供給速度を示す。
反応器内のリチウム濃度は0.16質量%、ピペリジンとnーブチルリチウムのモル比は0.9:1、反応物の平均滞留時間は13.5分であった。導入したピペリジン溶液及びn−ブチル溶液の温度はそれぞれ15℃であり、出口における反応溶液の温度は26℃であった。
反応器出口からサンプリングした溶液をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、2級アミンの転化率は99.2%であった。また、窒素雰囲気下にてサンプリングした開始剤溶液を目視したところ、難溶性の物質は見られなかった。
上記のように得られた開始剤溶液を反応器から重合器まで移送するまでの滞留時間(表1中、「重合反応器までの滞留時間」と記す。)は2.0分とした。
【0127】
<重合工程>
内容積が110Lで、内部の高さ(L)と直径(D)との比(L/D)が4.0であり、底部に入口、頂部に出口を有し、攪拌機及び温度制御用のジャケットを有する槽型圧力容器を重合反応器とした。予め水分を除去した、1,3−ブタジエンを263g/分、スチレンを197g/分、n−ヘキサンを2779g/分、及び極性物質として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパンを0.219g/分のフィード速度で連続的に混合し、この混合溶液を反応基の入口に供給する配管の途中に設けたスタティックミキサーにおいて、残存不純物不活性処理用有機金属としてn−ブチルリチウム(表1中、「不純物処理NBL」と記す。)を0.854mmol/分で添加、混合した後、反応基の底部に連続的に供給した。更に、1,3−ブタジエン(表1中、「インクレメントBd」と記す。)を87.5g/分、n−ヘキサン(表1中、「インクレメントnHex」と記す。)を204g/分で、その混合液を重合反応機の底部から全体の2/3の高さの位置にあるノズルから供給した。前記開始剤調製工程で得られたアミノリチウムを含む重合開始剤をトータルリチウムとして2.74mmol/分の速度で、攪拌機で激しく混合する重合反応器の底部へ別のノズルから供給し、連続的に重合反応を継続させた。
なお、トータルリチウムとしては、アミドリチウム及び未反応n−ブチルリチウムの両方のリチウムを含むものとした。反応器頂部出口における重合溶液の温度が75℃となるように温度を制御した。重合が十分に安定したところで、反応器頂部出口より、末端変性剤を加える工程前の変性重合体(開始変性重合体)溶液を少量抜出し、酸化防止剤(BHT)を重合体100gあたり0.2gとなるように添加した後に溶媒を除去し、分子量及び変性率を測定した。その他の物性も併せて表1に示す。
【0128】
<末端変性工程>
次に、反応器の出口より流出した変性重合体溶液に、末端変性剤として2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン(DTMPAS)を0.680mmol/分の速度で連続的に添加し、末端変性剤を添加した重合体溶液はスタティックミキサーを通して混合し、終了末端を変性した。終了末端を変性した重合体溶液に、酸化防止剤(BHT)を重合体100gあたり0.2gとなるように0.055g/分(n−ヘキサン溶液)で連続的に添加し、カップリング反応を終了した。酸化防止剤と同時に、重合体100gに対してオイル(JX日鉱日石エネルギー社製 JOMOプロセスNC140)が25.0gとなるように連続的に添加し、スタティックミキサーで混合した。スチームストリッピングにより溶媒を除去して、変性共役ジエン系重合体(試料A)を得た。試料Aの物性を表1に示す。
【0129】
[実施例2]
<開始剤の調製工程>
内容量34.2mL(エレメントの体積を除いた容積31mL)で、内径11mm、長さ360mmであり、エレメント数が21であるスタティックミキサー型反応器を用い、2級アミンとしてピペリジン、有機リチウムとしてn−ブチルリチウムを用い、それぞれシクロヘキサン溶液として、反応器に連続的に導入した。
反応器内のリチウム濃度は0.16質量%、ピペリジンとnーブチルリチウムのモル比は0.6:1、反応物の平均滞留時間は2分であった。導入したピペリジン溶液及びn−ブチル溶液の温度はそれぞれ15℃であり、出口における反応溶液の温度は25℃であった。
反応器出口からサンプリングした溶液をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、2級アミンの反応率は98.9%であった。また、窒素雰囲気下にてサンプリングした開始剤溶液を目視したところ、難溶性の物質は見られなかった。
【0130】
<重合工程及び末端変性工程>
末端変性剤としてビス(3−トリメトキシシリルプロピル)メチルアミン(BTESPA)を用いた以外は、実施例1と同様に連続重合を実施し、末端変性剤を反応させた後に酸化防止剤及びオイルを加え、スチームストリッピングにより溶媒を除去して、変性共役ジエン系重合体(試料B)を得た。試料Bの物性を表1に示す。
【0131】
[実施例3]
<開始剤の調製工程>
内容量525mL(撹拌翼の体積を除いた容積473mL)で、内径69mm、長さ139mmの槽型反応器であって、反応器の底部から20mm上を最下端とする幅25mm及び反応器の頂部から20mm下を最上端とする幅25mmの、径50mmの上下2段の攪拌翼を有し、回転数60rpmである回転式攪拌機を備えた反応器を用い、2級アミンとしてピペリジン、有機リチウムとしてn−ブチルリチウムを用い、それぞれシクロヘキサン溶液として、反応器に連続的に導入した。それぞれのシクロヘキサン溶液は底部に設けた2本のノズルから導入し、頂部の1本のノズルから排出した。すなわち、導入ノズルは攪拌翼の最下端から20mm下に、排出ノズルは攪拌翼の最上端から20mm上に設けた。
反応器内のリチウム濃度は0.16質量%、ピペリジンとnーブチルリチウムのモル比は0.9:1、反応物の平均滞留時間は30.9分であった。導入したピペリジン溶液及びn−ブチル溶液の温度はそれぞれ15℃であり、出口における反応溶液の温度は26℃であった。
反応器出口からサンプリングした溶液をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、2級アミンの反応率は99.4%であった。また、窒素雰囲気下にてサンプリングした開始剤溶液を目視したところ、難溶性の物質は見られなかった。
【0132】
<重合工程及び末端変性工程>
実施例1と同様に連続重合を実施し、末端変性剤を反応させた後に酸化防止剤及びオイルを加え、スチームストリッピングにより溶媒を除去して、変性共役ジエン系重合体(試料C)を得た。試料Cの物性を表1に示す。
【0133】
[実施例4]
<開始剤の調製工程>
2級アミンのシクロヘキサン溶液及び有機リチウムのシクロヘキサン溶液をそれぞれ反応器に連続的に導入する際に、それぞれのシクロヘキサン溶液は底から25mmの高さに設けた2本のノズルから導入し、頂部から25mm下がった高さに設けた1本のノズルから排出した以外は、実施例1と同様に開始剤の調製を行った。すなわち、導入ノズルは下の攪拌翼の高さにあり、排出ノズルは上の攪拌翼の高さにある。
導入したピペリジン溶液及びn−ブチル溶液の温度はそれぞれ15℃であり、出口における反応溶液の温度は26℃であった。
反応器出口からサンプリングした溶液をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、2級アミンの反応率は97.7%であった。また、窒素雰囲気下にてサンプリングした開始剤溶液を目視したところ、難溶性の物質は見られなかった。
【0134】
<重合工程及び末端変性工程>
実施例1と同様に連続重合を実施し、末端変性剤を反応させた後に酸化防止剤及びオイルを加え、スチームストリッピングにより溶媒を除去して、変性共役ジエン系重合体(試料D)を得た。試料Dの物性を表1に示す。
【0135】
[実施例5]
<開始剤の調製工程>
実施例1と同様に開始剤の調製を行った。反応器出口からサンプリングした溶液をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、2級アミンの反応率は99.1%であった。また、窒素雰囲気下にてサンプリングした開始剤溶液を目視したところ、難溶性の物質は見られなかった。
【0136】
<重合工程及び末端変性工程>
残存不純物不活性処理用有機金属としてのn−ブチルリチウムを添加しない以外は、実施例1と同様に連続重合を実施し、末端変性剤を反応させた後に酸化防止剤及びオイルを加え、スチームストリッピングにより溶媒を除去して、変性共役ジエン系重合体(試料E)を得た。試料Eの物性を表1に示す。
【0137】
[実施例6]
<開始剤の調製工程>
内容量34.2mL(エレメントの体積を除いた容積31mL)で、内径11mm、長さ360mmであり、エレメント数が21であるスタティックミキサー型反応器を用い、2級アミンとしてピペリジン、有機リチウムとしてn−ブチルリチウムを用い、それぞれシクロヘキサン溶液として、反応器に連続的に導入した。
反応器内のリチウム濃度は1.1質量%、ピペリジンとnーブチルリチウムのモル比は0.9:1、反応物の平均滞留時間は15.4分であった。導入したピペリジン溶液及びn−ブチル溶液の温度はそれぞれ15℃であり、出口における反応溶液の温度は25℃であった。
反応器出口からサンプリングした溶液をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、2級アミンの反応率は99.5%であった。また、窒素雰囲気下にてサンプリングした開始剤溶液を目視したところ、難溶性の物質は見られなかった。
【0138】
<重合工程及び末端変性工程>
実施例1と同様に連続重合を実施し、末端変性剤を反応させた後に酸化防止剤及びオイルを加え、スチームストリッピングにより溶媒を除去して、変性共役ジエン系重合体(試料F)を得た。試料Fの物性を表1に示す。
【0139】
[比較例1]
<開始剤の調製工程>
内容量1150mL(撹拌翼の体積を除いた容積1035mL)で、内径90mm、長さ180mmの槽型反応器であって、反応器の底部から25mm上を最下端とする幅30mm及び反応器の頂部から25mm下を最上端とする幅30mmの、径70mmの2枚の攪拌翼を有し、回転数60rpmである回転式攪拌機を備えた反応器を用い、2級アミンとしてピペリジン、有機リチウムとしてn−ブチルリチウムを用い、それぞれシクロヘキサン溶液として、反応器に連続的に導入した。それぞれのシクロヘキサン溶液は底部に設けた2本のノズルから導入し、頂部の1本のノズルから排出した。すなわち、導入ノズルは攪拌翼の最下端から25mm下に、排出ノズルは攪拌翼の最上端から25mm上に設けた。
反応器内のリチウム濃度は0.16質量%、ピペリジンとnーブチルリチウムのモル比は0.9:1、反応物の平均滞留時間は67.7分であった。導入したピペリジン溶液及びn−ブチル溶液の温度はそれぞれ15℃であり、出口における反応溶液の温度は26℃であった。
反応器出口からサンプリングした溶液をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、2級アミンの反応率は99.6%であった。また、窒素雰囲気下にてサンプリングした開始剤溶液を目視したところ、難溶性の物質が確認された。
上記のとおり、比較例1では、反応器の容積に対する各反応原料の平均供給速度が比較的小さかったため、平均滞留時間としては1時間を超える結果となり、開始剤溶液中に難溶性物質が生じたものと考えられる。
【0140】
<重合工程及び末端変性工程>
実施例1と同様に連続重合を実施し、末端変性剤を反応させた後に酸化防止剤及びオイルを加え、スチームストリッピングにより溶媒を除去して、変性共役ジエン系重合体(試料G)を得た。試料Gの物性を表1に示す。
【0141】
[比較例2]
<開始剤の調製工程>
内容量34.2mL(エレメントの体積を除いた容積31mL)で、内径11mm、長さ360mmであり、エレメント数が21であるスタティックミキサー型反応器を用い、2級アミンとしてピペリジン、有機リチウムとしてn−ブチルリチウムを用い、それぞれシクロヘキサン溶液として、反応器に連続的に導入した。
反応器内のリチウム濃度は3.5質量%、ピペリジンとnーブチルリチウムのモル比は0.6:1、反応物の平均滞留時間は66.9分であった。導入したピペリジン溶液及びn−ブチル溶液の温度はそれぞれ15℃であり、出口における反応溶液の温度は25℃であった。
反応器出口からサンプリングした溶液をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、2級アミンの反応率は99.8%であった。また、窒素雰囲気下にてサンプリングした開始剤溶液を目視したところ、難溶性の物質が確認された。
上記のとおり、比較例2では、リチウム濃度が高く、平均滞留時間としては1時間を超える結果となり、開始剤溶液中に難溶性物質が生じたものと考えられる。
【0142】
<重合工程及び末端変性工程>
実施例1と同様に連続重合を実施し、末端変性剤を反応させた後に酸化防止剤及びオイルを加え、スチームストリッピングにより溶媒を除去して、変性共役ジエン系重合体(試料H)を得た。試料Hの物性を表1に示す。
【0143】
【表1】
【0144】
表1において、「NBL」はn−ブチルリチウムを示し、「Bd」は1,3−ブタジエンを示し、「St」はスチレンを示し、「nHex」はn−ヘキサンを示し、「PS」はポリスチレンを示す。
【0145】
(実施例1〜6、及び比較例1〜2)
表1に示す(試料A〜H)を原料ゴムとして、以下に示す配合に従い、それぞれの原料ゴムを含有するゴム組成物を得た。
変性共役ジエン系重合体(試料A〜F):100質量部(オイル抜き)
シリカ1(エボニック デグサ社製の商品名「Ultrasil 7000GR」窒素吸着比表面積170m2/g):50.0質量部
シリカ2(ローディア社製の商品名「Zeosil Premium 200MP」窒素吸着比表面積220m2/g):25.0質量部
カーボンブラック(東海カーボン社製の商品名「シーストKH(N339)」):5.0質量部
シランカップリング剤(エボニック デグサ社製の商品名「Si75」、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド):6.0質量部
S−RAEオイル(JX日鉱日石エネルギー社製の商品名「プロセスNC140」):37.5質量部
亜鉛華:2.5質量部
ステアリン酸:1.0質量部
老化防止剤(N−(1,3−ジメチルブチル)−N‘−フェニル−p−フェニレンジアミン):2.0質量部
硫黄:2.2質量部
加硫促進剤1(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフィンアミド):1.7質量部
加硫促進剤2(ジフェニルグアニジン):2.0質量部
合計:239.4質量部
【0146】
上記した材料を次の方法により混練してゴム組成物を得た。温度制御装置を備える密閉混練機(内容量0.3L)を使用し、第一段の混練として、充填率65%、ローター回転数30〜50rpmの条件で、原料ゴムとしての変性共役ジエン系重合体(試料A〜F)、充填剤(シリカ1、シリカ2、カーボンブラック)、シランカップリング剤、プロセスオイル、亜鉛華、ステアリン酸を混練した。このとき、密閉混合機の温度を制御し、排出温度は155〜160℃で各ゴム組成物(配合物)を得た。
【0147】
次に、第二段の混練として、上記で得た配合物を室温まで冷却後、老化防止剤を加え、シリカの分散を向上させるため再度混練した。この場合も、混合機の温度制御により、配合物の排出温度を155〜160℃に調整した。冷却後、第三段の混練として、70℃に設定したオープンロールにて、硫黄、加硫促進剤1、2を加えて混練した。その後、成型し、160℃で20分間、加硫プレスにて加硫した。加硫前のゴム組成物、及び加硫後のゴム組成物を評価した。具体的には、下記の方法により評価した。その結果を表2に示す。
【0148】
(評価)粘弾性パラメータ
レオメトリックス・サイエンティフィック社製の粘弾性試験機「ARES」を使用し、ねじりモードで粘弾性パラメータを測定した。各々の測定値は、比較例1のゴム組成物に対する結果を100として指数化した。0℃において周波数10Hz、ひずみ1%で測定したtanδをウェットグリップ性の指標とした。値が大きいほどウェットグリップ性が良好であることを示す。また、50℃において周波数10Hz、ひずみ3%で測定したtanδを省燃費性の指標とした。値が小さいほど省燃費性が良好であることを示す。
【0149】
【表2】
【0150】
表2に示すとおり、実施例1〜6の変性共役ジエン系重合体は、比較例1〜2の変性共役ジエン系重合体と比較して、加硫物としたときに、ウェットグリップ性と省燃費性のバランスに優れることが確認された。