(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
射出シリンダと、前記射出シリンダ内に収容されたスクリューと、前記射出シリンダ内で前記スクリューを回転および前後進させる駆動部と、を有する射出成形機であって、
前記射出シリンダ内における前記スクリューの前方空間に複数回分の射出量の樹脂を計量して溜めるように、前記駆動部により前記スクリューを回転させながら後退させる計量制御部と、
前記前方空間に溜められた樹脂から1回分の射出量の樹脂を射出する射出動作を複数回行うように、前記駆動部により前記スクリューを複数回に分けて前進させる射出制御部と、
前記射出制御部による一つの射出動作とその次の射出動作との間に、前記前方空間に溜められた樹脂の圧力が射出圧保証時間にわたって基準圧力値となるように、前記駆動部により前記スクリューの前後方向の位置を調整する射出圧保証制御部と、を有し、
前記射出制御部による前記射出動作は、前記前方空間に溜められた樹脂から1回分の射出量の樹脂を射出する動作、および、前記1回分の射出量の樹脂の射出したあとの前記前方空間に溜められた樹脂の圧力が保圧時間にわたって保圧圧力値となるように、前記駆動部により前記スクリューの前後方向の位置を調整する動作、であり、
前記基準圧力値は、前記保圧圧力値より小さくかつ0より大きい値であることを特徴とする射出成形機。
前記射出制御部による一つの射出動作とその次の射出動作との間に、前記射出圧保証時間の終了時の前記スクリューの位置を開始位置としてサックバック動作を行うように、前記駆動部により前記スクリューを後退させるサックバック制御部をさらに有していることを特徴とする請求項1に記載の射出成形機。
射出シリンダと、前記射出シリンダ内に収容されたスクリューと、前記射出シリンダ内で前記スクリューを回転および前後進させる駆動部と、を有する射出成形機で用いられる射出成形方法であって、
前記射出シリンダ内における前記スクリューの前方空間に複数回分の射出量の樹脂を計量して溜めるように、前記駆動部により前記スクリューを回転させながら後退させる計量制御ステップと、
前記前方空間に溜められた樹脂から1回分の射出量の樹脂を射出する射出動作を複数回行うように、前記駆動部により前記スクリューを複数回に分けて前進させる射出制御ステップと、
前記射出制御ステップにおける一つの射出動作とその次の射出動作との間に、前記前方空間に溜められた樹脂の圧力が射出圧保証時間にわたって基準圧力値となるように、前記駆動部により前記スクリューの前後方向の位置を調整する射出圧保証制御ステップと、を含み、
前記射出制御ステップにおける前記射出動作は、前記前方空間に溜められた樹脂から1回分の射出量の樹脂を射出する動作、および、前記1回分の射出量の樹脂の射出したあとの前記前方空間に溜められた樹脂の圧力が保圧時間にわたって保圧圧力値となるように、前記駆動部により前記スクリューの前後方向の位置を調整する動作、であり、
前記基準圧力値は、前記保圧圧力値より小さくかつ0より大きい値であることを特徴とする射出成形方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記射出成形機では、上述のようにスクリューのトルクをゼロにして樹脂圧を抜くことにより次回の射出開始位置を設定している。しかしながら、1回の計量動作に対して複数回の射出動作を行う構成では、各回の射出動作時において、例えば、射出シリンダ内の樹脂の量や樹脂の加熱時間等が異なるなど射出シリンダ内の状態に差異が生じる場合がある。そのため、樹脂による押し戻しにより射出開始位置を決定した場合、各射出動作時の射出シリンダ内の樹脂密度にばらつきが生じてしまうおそれがあり、成形品の品質が不安定になってしまうことがあった。
【0006】
そこで、本発明は、1回の計量動作に続いて行われる複数回の射出動作における射出シリンダ内の樹脂密度のばらつきを抑制できる射出成形機および射出成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様の射出成形機は、射出シリンダと、前記射出シリンダ内に収容されたスクリューと、前記射出シリンダ内で前記スクリューを回転および前後進させる駆動部と、を有する射出成形機であって、前記射出シリンダ内における前記スクリューの前方空間に複数回分の射出量の樹脂を計量して溜めるように、前記駆動部により前記スクリューを回転させながら後退させる計量制御部と、前記前方空間に溜められた樹脂から1 回分の射出量の樹脂を射出する射出動作を複数回行うように、前記駆動部により前記スクリューを複数回に分けて前進させる射出制御部と、前記射出制御部による一つの射出動作とその次の射出動作との間に、前記前方空間に溜められた樹脂の圧力が射出圧保証時間にわたって基準圧力値となるように、前記駆動部により前記スクリューの前後方向の位置を調整する射出圧保証制御部と、を有し
、前記射出制御部による前記射出動作は、前記前方空間に溜められた樹脂から1回分の射出量の樹脂を射出する動作、および、前記1回分の射出量の樹脂の射出したあとの前記前方空間に溜められた樹脂の圧力が保圧時間にわたって保圧圧力値となるように、前記駆動部により前記スクリューの前後方向の位置を調整する動作、であり、前記基準圧力値は、前記保圧圧力値より小さくかつ0より大きい値であることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、複数回行われる射出動作のうちの一つの射出動作とその次の射出動作との間に、射出シリンダ内におけるスクリューの前方空間に溜められた樹脂の圧力が射出圧保証時間にわたって基準圧力値となるように、駆動部によりスクリューの前後方向の位置を調整する。このようにしたことにより、複数回の射出動作のそれぞれにおいて射出シリンダ内の樹脂圧力が均等となるので、射出シリンダ内の樹脂状態のムラを抑制して、各射出動作において樹脂密度をそろえることができる。
また、前記射出制御部による前記射出動作が、前記前方空間に溜められた樹脂から1回分の射出量の樹脂を射出する動作、および、前記1回分の射出量の樹脂の射出したあとの前記前方空間に溜められた樹脂の圧力が保圧時間にわたって保圧圧力値となるように、前記駆動部により前記スクリューの前後方向の位置を調整する動作、である。このようにすることで、各射出動作における樹脂の充填不足を抑制することができる。
【0009】
本発明においては、前記射出制御部による一つの射出動作とその次の射出動作との間に、前記射出圧保証時間の終了時の前記スクリューの位置を開始位置としてサックバック動作を行うように、前記駆動部により前記スクリューを後退させるサックバック制御部をさらに有していることが好ましい。このようにすることで、サックバック動作により射出シリンダのノズルからの樹脂垂れを抑制することができる。また、サックバック動作のためのスクリューの後退量を一定とすることで、サックバック動作後においても、複数回の射出動作のそれぞれにおいて射出シリンダ内の樹脂密度をそろえることができる。
【0010】
本発明においては、
前記基準圧力値として、大きさの異なる複数の圧力値が設定され、
前記射出圧保証制御部は、前記前方空間に溜められた樹脂の圧力が前記射出圧保証時間において前記複数の圧力値のうちの大きい圧力値から小さい圧力値に順次なるように前記スクリューの前後方向の位置を調整することが好ましい
。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様の射出成形方法は、射出シリンダと、前記射出シリンダ内に収容されたスクリューと、前記射出シリンダ内で前記スクリューを回転および前後進させる駆動部と、を有する射出成形機で用いられる射出成形方法であって、前記射出シリンダ内における前記スクリューの前方空間に複数回分の射出量の樹脂を計量して溜めるように、前記駆動部により前記スクリューを回転させながら後退させる計量制御ステップと、前記前方空間に溜められた樹脂から1回分の射出量の樹脂を射出する射出動作を複数回行うように、前記駆動部により前記スクリューを複数回に分けて前進させる射出制御ステップと、前記射出制御ステップにおける一つの射出動作とその次の射出動作との間に、前記前方空間に溜められた樹脂の圧力が射出圧保証時間にわたって基準圧力値となるように、前記駆動部により前記スクリューの前後方向の位置を調整する射出圧保証制御ステップと、を含
み、前記射出制御ステップにおける前記射出動作は、前記前方空間に溜められた樹脂から1回分の射出量の樹脂を射出する動作、および、前記1回分の射出量の樹脂の射出したあとの前記前方空間に溜められた樹脂の圧力が保圧時間にわたって保圧圧力値となるように、前記駆動部により前記スクリューの前後方向の位置を調整する動作、であり、前記基準圧力値は、前記保圧圧力値より小さくかつ0より大きい値であることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、複数回行われる射出動作のうちの一つの射出動作とその次の射出動作との間に、射出シリンダ内におけるスクリューの前方空間に溜められた樹脂の圧力が射出圧保証時間にわたって基準圧力値となるように、駆動部によりスクリューの前後方向の位置を調整する。このようにしたことにより、複数回の射出動作時のそれぞれにおいて射出シリンダ内の樹脂圧力が均等となるので、射出シリンダ内の樹脂状態のムラを抑制して、各射出動作において樹脂密度をそろえることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、1回の計量動作に続いて行われる複数回の射出動作における射出シリンダ内の樹脂密度のばらつきを抑制できる。これにより、成形品の品質が不安定になってしまうことを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る射出成形機について、
図1〜
図4を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る射出成形機の概略構成を示す図である。
図2は、
図1の射出成形機における動作の条件値の設定画面の一例を示す図である。
図3、
図4は、
図1の射出成形機における動作の流れの一例(サックバック動作あり/なし)を説明する図である。
【0017】
図1に示すように、射出成形機1は、射出ユニット10と、制御ユニット30と、を有している。
【0018】
射出ユニット10は、射出シリンダ11と、スクリュー12と、回転制御用サーボモータ13と、回転制御用タイミングベルト14と、スクリュープーリ15と、位置制御用サーボモータ16と、位置制御用タイミングベルト17と、ボールネジ機構18と、回転検出用エンコーダ19と、位置検出用エンコーダ20と、ロードセル21と、を有している。
【0019】
射出シリンダ11は、一端にノズル11aが設けられた筒状に形成されており、その外周面に図示しないヒータを備えている。スクリュー12は、射出シリンダ11内に回転および前後方向に移動可能(すなわち、前後進可能)に収容されている。なお、本明細書において、
図1の射出シリンダ11のノズル11a側を前側、その反対側を後側としている。
【0020】
回転制御用サーボモータ13は、スクリュー12を回転させる駆動部である。回転制御用サーボモータ13は、その出力プーリ13aの回転が回転制御用タイミングベルト14を介してスクリュー12に同軸に固定されたスクリュープーリ15に伝達される。これにより、スクリュー12は軸を中心に回転される。
【0021】
位置制御用サーボモータ16は、スクリュー12を前後進させる駆動部である。位置制御用サーボモータ16は、その出力プーリ16aの回転が位置制御用タイミングベルト17を介してボールネジ機構18のねじ軸18aに同軸に固定されたねじ軸プーリ18bに伝達される。これにより、ねじ軸18aは軸を中心に回転される。そして、ねじ軸18aの回転によりボール(図示なし)を介して螺合されたナット部18cが軸方向(すなわち前後方向)に移動する。このナット部18cの移動に伴って当該ナット部18cに固定されたスクリュー12も前後方向に移動される。位置制御用サーボモータ16によって、スクリュー12が前後方向に移動されることにより、スクリュー12の位置および射出シリンダ11内におけるスクリュー12の前方空間Eに溜められている樹脂に加わる圧力(以下、単に「樹脂圧力P」という。)を調整する。
【0022】
回転検出用エンコーダ19は、回転制御用サーボモータ13の回転位置を検出し、この回転位置に基づいて後述する制御ユニット30の制御部33がスクリュー12の回転速度Rを検出する。位置検出用エンコーダ20は、位置制御用サーボモータ16の回転位置を検出し、この回転位置に基づいて制御部33がスクリュー12の前後方向の位置Lや移動速度Vを検出する。ロードセル21は、スクリュー12に加わる圧力を検出し、この圧力に基づいて制御部33が樹脂圧力Pを検出する。
【0023】
制御ユニット30は、設定格納部31と、表示操作部32と、制御部33と、回転制御用サーボアンプ34と、位置制御用サーボアンプ35と、を有している。
【0024】
設定格納部31は、例えばハードディスク装置や不揮発性メモリ等の書き換え可能な記憶媒体などを含んで構成されている。設定格納部31には、各種動作時におけるスクリュー12の回転速度R、位置Lおよび移動速度V、ならびに射出シリンダ11内における樹脂圧力Pなどの条件値が格納(すなわち記憶)されている。各種動作には、(1)射出シリンダ11内の前方空間Eに複数回分の射出量の樹脂を計量して溜める計量動作、(2)計量動作後に樹脂圧力Pを補正する計量後圧力補正動作、(3)前方空間Eに溜められた樹脂から1回分の射出量の樹脂を射出・保圧する射出動作、(4)一つの射出動作とその次の射出動作との間に、射出圧保証時間Tsにわたって樹脂圧力Pが基準圧力値Psとなるように保持する射出圧保証動作、(5)射出圧保証動作の後にオプションとして実行されるサックバック動作などが含まれる。設定格納部31は、後述する表示操作部32により設定値が書き込まれ、制御部33により設定値が読み出されて各種動作において用いられる。
【0025】
本実施形態において、設定格納部31には、計量動作の条件値である、
(a)計量完了時におけるスクリュー12の後退位置である計量後退位置Xm[mm]、
(b)スクリュー12の最も前進した位置0から計量後退位置Xmに至るまでのスクリュー12の計量回転速度Rm[rpm]、
(c)位置0から計量後退位置Xmに至るまでに前方空間Eに溜められている樹脂に加える圧力値である計量圧力値Pm[MPa]、および
(d)スクリュー12の位置により再計量の実行要否を判定するための計量実行判定位置Xe[mm]についての設定値が格納されている。
【0026】
また、設定格納部31には、計量後圧力補正動作の条件値である、
(e)計量動作後に前方空間Eに溜められている樹脂に加える圧力値である計量後補正圧力値Pc[MPa]および
(f)その圧力値を保持する期間である計量後補正時間Tc[s]についての設定値が格納されている。
【0027】
また、設定格納部31には、射出動作の条件値である、
(g)射出動作を行う射出区間Li(mm)、
(h)射出区間Liにおけるスクリュー12の射出移動速度Vi[mm/s]、
(i)射出動作時における樹脂に加える圧力の上限値である1次圧力値Pi[MPa]、
(j)1回の射出動作におけるスクリュー12のストローク量である射出ストロークDi[mm]、
(k)射出により金型のキャビティに樹脂を充填したあとに前方空間Eに溜められている樹脂に加える圧力値である保圧圧力値Ph[MPa]、および
(l)その圧力値を保持する期間である保圧時間Th[s]についての設定値が格納されている。
【0028】
射出区間Liを複数の区間(1速、2速、・・・、n速)に分けて、各区間において異なる射出移動速度Viを設定することが可能である。また、保圧時間Thを複数の時間(1、2、・・・、n)に分けて、各時間において異なる保圧圧力値Phを設定することが可能である。
【0029】
また、設定格納部31には、射出圧保証動作の条件値である、
(m)一つの射出動作とその次の射出動作との間に、前方空間Eに溜められた樹脂に加える圧力値である基準圧力値Ps[MPa]、および
(n)とその圧力値を保持する期間である射出圧保証時間Ts[s]についての設定値が格納されている。基準圧力値Psは、保圧圧力値Phより小さいことが好ましい。
【0030】
また、設定格納部31には、サックバック動作の条件値である、
(o)サックバック動作におけるスクリュー12のストローク量であるサックバックストロークDs[mm]、および
(p)サックバック移動速度Vs[mm/s]についての設定値が格納されている。
【0031】
サックバック動作は、オプション動作であって、サックバックストロークDsに0を設定することによりサックバック動作を省略できる。
【0032】
表示操作部32は、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイで構成された表示部32aと、この表示部32aの表示面に重ねて配置されたタッチパネルを備えた操作部32bとを有している。表示部32aは、数値や画像、グラフ等の各種情報、および、キーボード、テンキー、チェックボックス、選択リスト、操作ボタン等の各種操作スイッチ画像などを表示する。操作部32bのタッチパネルには、オペレータなどの利用者によって指やタッチ操作ペンなどの操作体によりタッチ操作が入力される。
【0033】
表示操作部32では、表示部32aに表示している操作スイッチ画像と操作部32bのタッチパネルとを組み合わせてソフトウエア操作スイッチを実現している。以下、操作部31bのタッチパネルにおける表示部32aに表示している操作スイッチ画像に対応する箇所をタッチ操作することを、単に「タッチ操作する」という。なお、操作部32bはマウスを備え、このマウスにより各種操作を行ってもよい。
【0034】
図2に、表示部32aに表示される設定画面G1の一例を示す。設定画面G1は、各種動作の条件値の設定値を表示および入力するための画面である。表示操作部32は、表示部32aに設定画面G1を表示している状態において、(a)〜(p)の各条件値の設定値表示箇所がタッチ操作されると設定画面G1に重ねてテンキー(図示なし)を表示する。そして、表示操作部32は、テンキーがタッチ操作されて値が入力されると、入力された値が設定格納部31に送られて条件値の設定値として格納される。
【0035】
制御部33は、マイクロコンピュータ等により構成されている。制御部33は、各種動作において制御信号を生成し、この制御信号を回転制御用サーボアンプ34および位置制御用サーボアンプ35に出力して、回転制御用サーボモータ13および位置制御用サーボモータ16を制御する。
【0036】
計量動作として、制御部33は、設定格納部31から計量回転速度Rm、計量圧力値Pmおよび計量後退位置Xmを読み出す。そして、制御部33は、スクリュー12が計量回転速度Rmで回転しかつ樹脂圧力Pが計量圧力値Pmとなるようにしながら、スクリュー12が計量後退位置Xmまで後退するように制御信号を生成する(計量制御ステップ)。
【0037】
計量後圧力補正動作として、制御部33は、設定格納部31から計量後補正時間Tcおよび計量後補正圧力値Pcを読み出す。そして、制御部33は、計量後補正時間Tcにわたって樹脂圧力Pが計量後補正圧力値Pcとなるように、スクリュー12の前後方向の位置を調整する制御信号を生成する(計量後圧力補正制御ステップ)。
【0038】
射出動作として、制御部33は、設定格納部31から射出区間Li、射出移動速度Vi、1次圧力値Pi、射出ストロークDi、計量実行判定位置Xe、保圧圧力値Phおよび保圧時間Thを読み出す。そして、制御部33は、樹脂圧力Pが1次圧力値Piを超えないようにしながら、スクリュー12が射出移動速度Viで射出ストロークDiに示される距離を前進するように制御信号を生成し、さらに、制御部33は、保圧時間Thにわたって樹脂圧力Pが保圧圧力値Phとなるように、スクリュー12の前後方向の位置を調整する制御信号を生成する(射出制御ステップ)。また、制御部33は、スクリュー12が計量実行判定位置Xeより後側にあるとき、後述する射出圧保証動作およびサックバック動作の終了を待ったのち次の射出動作を行い、スクリュー12が計量実行判定位置Xeまたはそれより前側にあるとき、計量動作を行う。次の射出動作では、直前のサックバック動作終了時のスクリュー12の位置を射出開始位置とし、サックバック動作を省略したときは、直前の射出圧保証動作終了時のスクリュー12の位置を射出開始位置としている。
【0039】
射出圧保証動作として、制御部33は、設定格納部31から射出圧保証時間Tsおよび基準圧力値Psを読み出す。そして、制御部33は、一つの射出動作とその次の射出動作との間に、射出圧保証時間Tsにわたって樹脂圧力Pが基準圧力値Psとなるように、スクリュー12の前後方向の位置を調整する制御信号を生成する(射出圧保証制御ステップ)。
【0040】
サックバック動作として、制御部33は、設定格納部31からサックバック移動速度VsおよびサックバックストロークDsを読み出す。そして、制御部33は、射出圧保証時間Tsの終了時におけるスクリュー12の位置を開始位置として、スクリュー12がサックバック移動速度VsでサックバックストロークDsに示される距離を後退するように制御信号を生成する(サックバック制御ステップ)。
【0041】
制御部33は、上述した各種動作において、回転検出用エンコーダ19の回転位置出力A1、位置検出用エンコーダ20の回転位置出力A2およびロードセル21の圧力出力A3に基づいて、上述したスクリューの回転速度R、移動速度Vおよび位置L、ならびに樹脂圧力Pについてフィードバック制御を行う。
【0042】
制御部33は、計量制御部、計量後圧力補正制御部、射出制御部、射出圧保証制御部およびサックバック制御部などの各種機能部として動作する。
【0043】
次に、上述した射出成形機1が実行する射出成形サイクルの一例について、
図3を参照して説明する。
【0044】
射出成形機1は、まず表示操作部32の表示部32aに設定画面G1を表示するとともに操作部32bから(a)〜(p)の各条件値の設定値が入力されて、各設定値を設定格納部31に格納する。
【0045】
そして、射出成形機1は、
図3に示すように、計量動作、計量後圧力補正動作、複数の射出動作および複数の射出圧保証動作を含む1つの射出成形サイクルを複数回実行する。
【0046】
すなわち、射出成形機1は、計量動作1を実行して、スクリュー12を計量回転速度Rmで回転させかつ樹脂圧力Pが計量圧力値Pmとなるようにしながら、スクリュー12を計量後退位置Xmまで後退させる。これにより、複数回分の射出量の樹脂が計量されて、射出シリンダ11内におけるスクリュー12の前方空間Eに溜められる。
【0047】
次に、射出成形機1は、計量後圧力補正動作1を実行して、スクリュー12の前後方向の位置を調整することで、計量後補正時間Tcにわたって樹脂圧力Pを計量後補正圧力値Pcになるようにする。これにより、射出シリンダ11内において樹脂状態のムラが抑制されて樹脂密度が均等になる。また、射出成形機1は、必要に応じて、各計量後圧力補正動作後に、金型を開いて成形品を取り出すとともに、金型を閉じて再度射出シリンダ11のノズル11aとキャビティとを連通させる。
【0048】
次に、射出成形機1は、射出動作1を実行して、樹脂圧力Pが1次圧力値Piを超えないようにしながら、スクリュー12を射出移動速度Viで射出ストロークDiに示される距離を前進させる。さらに、射出成形機1は、スクリュー12の前後方向の位置を調整することで、保圧時間Thにわたって樹脂圧力Pが保圧圧力値Phとなるようにする。これにより、図示しない金型のキャビティに樹脂が射出されたのち、保圧により樹脂がキャビティに確実に充填される。
【0049】
ここで、射出成形機1は、射出動作1の終了時点でスクリュー12が計量実行判定位置Xeより後側にあるので、続いて射出圧保証動作1を実行する。すなわち、射出成形機1は、射出動作1とその次の射出動作2との間に、スクリュー12の前後方向の位置を調整することにより、射出圧保証時間Tsにわたって樹脂圧力Pが基準圧力値Psとなるようにする。これにより、射出シリンダ11内において樹脂圧力Pのムラが抑制されて樹脂密度が均等になる。
【0050】
次に、射出成形機1は、サックバック動作1を実行して、スクリュー12をサックバック移動速度VsでサックバックストロークDsに示される距離を後退させる。これにより、射出シリンダ11のノズル11aからの樹脂垂れを抑制できる。
【0051】
また、射出成形機1は、射出圧保証動作1が終了した時点で、金型を開いて成形品を取り出すとともに、金型を閉じて再度射出シリンダ11のノズル11aとキャビティとを連通させる。
【0052】
そして、射出成形機1は、上記と同様にして、順に射出動作2、射出圧保証動作2、サックバック動作2、・・・、射出動作n−1、射出圧保証動作n−1、サックバック動作n−1、射出動作nを実行する。
【0053】
射出成形機1は、射出動作nの終了時点でスクリュー12が計量実行判定位置Xeより前側にあるので、1つの射出成形サイクルを終了する。そして、次の射出成形サイクルを開始し、当該射出成形サイクルに含まれる計量動作2を実行する。
【0054】
これ以降は、同様にして複数回の射出成形サイクルを実行する。
【0055】
なお、上記ではサックバック動作を含む射出成形サイクルについて説明したが、
図4に示すようにサックバック動作を含まない射出成形サイクルを実行してもよい。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の射出成形機1によれば、複数回行われる射出動作のうちの一つの射出動作とその次の射出動作との間に、射出シリンダ11内におけるスクリュー12の前方空間Eに溜められた樹脂の圧力(樹脂圧力P)が射出圧保証時間Tsにわたって基準圧力値Psとなるように、位置制御用サーボモータ16によりスクリュー12の前後方向の位置を調整する。このようにしたことにより、複数回の射出動作のそれぞれにおいて射出シリンダ11内の樹脂圧力Pが均等となるので、射出シリンダ11内の樹脂状態のムラを抑制して、各射出動作において樹脂密度をそろえることができる。
【0057】
また、一つの射出動作とその次の射出動作との間に、射出圧保証時間Tsの終了時のスクリュー12の位置を開始位置としてサックバック動作を行うように、位置制御用サーボモータ16によりスクリュー12を後退させる。このようにすることで、サックバック動作により射出シリンダ11のノズル11aからの樹脂垂れを抑制することができる。また、サックバック動作のためのスクリュー11の後退量を一定とすることで、サックバック動作後においても、複数回の射出動作のそれぞれにおいて射出シリンダ11内の樹脂密度をそろえることができる。
【0058】
また、射出動作において、1回分の射出量の樹脂の射出したあとの樹脂圧力Pが保圧時間Thにわたって保圧圧力値Phとなるように、位置制御用サーボモータ16によりスクリュー12の前後方向の位置を調整する。このようにすることで、各射出動作における樹脂の充填不足を抑制することができる。
【0059】
したがって、本実施形態の射出成形機1によれば、1回の計量動作に続いて行われる複数回の射出動作における射出シリンダ11内の樹脂密度のばらつきを抑制できる。これにより、成形品の品質が不安定になってしまうことを抑制することができる。
【0060】
上述した実施形態では、基準圧力値Psとして1つの圧力値が設定された構成であったが、これに限定されるものではない。これ以外にも、基準圧力値Psとして、大きさの異なる複数の圧力値(例えば、3つの圧力値30MPa、20MPa、10MPa)が設定され、前方空間Eに溜められた樹脂の圧力(樹脂圧力P)が射出圧保証時間Tsにおいて複数の圧力値のうちの大きい圧力値から小さい圧力値に順次なるように、位置制御用サーボモータ16によりスクリュー12の前後方向の位置を調整するようにしてもよい。このようにすることで、射出シリンダ11内の樹脂圧力Pが段階的に下がるので、一気に圧力を変化させた場合に比べて射出シリンダ11内の状態変化度合が小さくなり、そのため、射出シリンダ11内の状態のムラをより抑制して、各射出動作において射出シリンダ11内の樹脂密度をよりそろえることができる。
【0061】
上記に本発明の本実施形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。前述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。